説明

圧縮機の制御方法及びそのシステム

【課題】本発明による圧縮機の制御方法によって、エネルギーを節約して、圧縮機のサージを避けて、操作効率を向上させる。
【解決手段】本発明に係る凝縮物を有する圧縮機の制御方法は、前記圧縮機10と接続する凝縮器20、及びこの凝縮器20と接続する少なくとも一つの蒸発器50a、50b、50cを提供する工程と、前記圧縮機10の入口圧力及び出口圧力を測定して、前記凝縮物の現在流量を取得する工程と、前記蒸発器50a、50b、50cの総数に基づく需要流量及び安全流量を決定する工程と、前記現在流量、前記安全流量及び前記需要流量からなる群から、少なくとも2つを選び、比較して、比較結果を得る工程と、前記比較結果に基づき圧縮機10を制御する工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は制御方法及びそのシステムに関するものであり、特に圧縮機の制御方法及びそのシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在では、熱交換システムにおける圧縮機は日常生活における人々にとって欠かせないものである。大規模な圧縮機システム(例えば大型空調システム)を利用することは、常に巨額の設備投資を行う必要がある。また、圧縮機の製造業者は、圧縮機を効果的に制御することで、使用者の目的を達成し、圧縮機の寿命を延長し、且つ、エネルギーを節約する当面の課題などを常に考えている。
【0003】
大型空調システムに使用している遠心圧縮機は、通常、冷凍機(例えば冷水機)に適用されるものであり、そのシステムは、大容量に適しているため、大面積な場所に使用され、たとえば、オフィスビル、工場、ホテル、スタジアムなどに使用されている。前記冷凍機にある水は、蒸発器を介して、水の”熱”が伝導や対流することで、冷媒がその熱を吸収する。つまり、前記冷凍機は、熱輸送に水を使って、蒸発器で低温の冷媒によって熱を奪い取るものである。そして、気体の冷媒を圧縮機で圧縮し、熱交換のため凝縮器で冷却して圧力が高い冷媒をつくり、その後、減圧装置で低圧低温の液体冷媒になり、蒸発器で熱交換を行って、サイクルを完了する。
【0004】
今まで、制御システムは、ほとんど冷水機を有する大型空調システムを制御するためのものである。大型空調システムは、その作業曲線と負荷が相対的に安定しているため、従来の制御方法はより簡単であり、例えば、圧縮機構造を再設計すること(US5,145,317)、圧縮機の回転速度を調整すること(WO 0244632)などのようなものが知られている。最近、熱交換に水を使う大型空調システムを徐々に冷媒を使う空調システムに取り替える傾向にあり、又、遠心圧縮機を効果的に制御するとともに、エネルギーを節約して、サージを予防する方法の開発が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、このような従来の課題を解決するため、実験と研究を重ねた結果、ついに本発明の圧縮機の制御方法及びその制御システムを開発した。本発明の主たる目的は、エネルギーを節約して、圧縮機のサージを避け、操作効率を向上させることができる、圧縮機の制御方法及びそのシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために以下のように定義される。
【0007】
本発明に係る凝縮物を有する圧縮機の制御方法は、前記圧縮機と接続する凝縮器及び少なくとも一つの蒸発器を提供する工程と、前記圧縮機の入口圧力及び出口圧力を測定して、前記凝縮物の現在流量を取得する工程と、前記蒸発器の総数に基づく需要流量及び安全流量を決定する工程と、前記現在流量、前記安全流量及び前記需要流量からなる群から、少なくとも2つを選び、比較して、比較結果を得る工程と、前記比較結果に基づき圧縮機を制御する工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
上記工程の本発明に係る制御方法によって、前記圧縮機と前記蒸発器が制御弁を有する凝縮物保存装置と接続され、前記比較結果に基づき前記制御弁を調整する工程を更に有する。
【0009】
上記工程の本発明に係る制御方法によって、前記現在流量が前記需要流量より低くなるならば、前記圧縮機の回転速度を高める工程を更に有する。
【0010】
上記工程の本発明に係る制御方法によって、前記圧縮機は、入口案内翼を含み、ホットガスバイパス(hot gas bypass)と接続され、前記需要流量が前記安全流量より高くなるならば、前記入口案内翼を調節し、前記現在流量が前記需要流量より高くなるならば、前記ホットガスバイパスを開放する工程を更に有する。
【0011】
上記工程の本発明に係る制御方法によって、前記凝縮器の温度を測定して、前記入口圧力、前記出口圧力並びに前記凝縮器温度に基づいて前記凝縮器の圧力を取得し、前記需要流量が前記安全流量より低く、且つ前記出口圧力が前記凝縮器圧力より低くなるならば、前記圧縮機の回転速度を下げる工程を更に有する。
【0012】
上記工程の本発明に係る制御方法によって、記凝縮器はコイル弁(coil valve)及び扇風機を含み、前記出口圧力が前記凝縮器圧力より高くなるならば、前記コイル弁及び前記扇風機の回転速度を調節する工程を更に有する。
【0013】
本発明に係る凝縮物を有する熱交換システムの圧縮機の制御方法は、前記凝縮物の現在流量を測定する工程と、前記現在流量と制御パラメータを比較して、比較結果を得る工程と、前記比較結果に基づき圧縮機を制御する工程と、を有する。
【0014】
上記工程の本発明に係る制御方法によって、前記圧縮機の入口圧力及び出口圧力を測定して、前記現在流量を得る工程を有する。
【0015】
上記工程の本発明に係る制御方法によって、前記熱交換システムは、前記圧縮機と接続する蒸発器及び凝縮器を含む。
【0016】
上記工程の本発明に係る制御方法によって、前記制御パラメータは、安全流量及び需要流量を決定することによって取得する。
【0017】
上記工程の本発明に係る制御方法によって、前記熱交換システムは、凝縮器及び少なくとも一つの蒸発器を含み、前記蒸発器は、前記圧縮機と前記凝縮器と接続され、前記需要流量は、前記蒸発器の総数に基づいて決定する。
【0018】
本発明に係る凝縮物及び圧縮機を有する熱交換システムの制御器は、前記凝縮物の現在流量を測定する計量器と、前記凝縮物の需要流量並びに安全流量を決定する決定装置と、を備え、その中、前記現在流量、前記需要流量及び前記安全流量に基づき前記圧縮機を制御する。
【0019】
上記構成の本発明に係る制御器は、前記現在流量と前記需要流量又は前記安全流量を比較して、比較結果を得る比較器をさらに含み、前記比較結果に基づき前記圧縮機を制御する。
【0020】
上記構成の本発明に係る制御器は、前記計量器は、前記圧縮機の入口圧力、出口圧力並びに凝縮器の温度をさらに測定して、前記圧縮機の入口圧力、出口圧力並びに凝縮器の温度により前記凝縮器の圧力を取得し、そして前記需要流量が前記安全流量より低く、且つ前記出口圧力が前記凝縮器圧力より低くなるならば、前記圧縮機の回転速度を下げる。
【0021】
上記構成の本発明に係る制御器は、前記圧縮機は、入口案内翼を含み、ホットガスバイパス(hot gas bypass)と接続される。
【0022】
上記構成の本発明に係る制御器は、前記圧縮機が、インバータと接続され、前記インバータが、前記制御器と接続される。
【0023】
上記構成の本発明に係る制御器は、前記熱交換システムが、凝縮器及び少なくとも一つの蒸発器を含み、前記蒸発器が、前記圧縮機と前記凝縮器とに接続される。
【0024】
上記構成の本発明に係る制御器は、前記凝縮器がコイル弁(coil valve)及び扇風機を含む。
【0025】
上記構成の本発明に係る制御器は、前記圧縮機と前記凝縮器が、制御弁を有する凝縮物保存装置と接続される。
【発明の効果】
【0026】
本発明による圧縮機の制御方法によって、エネルギーを節約して、圧縮機のサージを避けて、操作効率を向上させることができる。
本発明の上記目的及び効果は、当分野における当業者に対して、以下の詳細な説明及び添付図面を参照することで、さらに容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の好ましい第一実施例による圧縮機の制御システムを示したブロック図である。
【図2】本発明の好ましい第二実施例による圧縮機の制御システムを示したブロック図である。
【図3】本発明の好ましい実施例による遠心圧縮機の性能の曲線図である。
【図4】本発明の好ましい実施例による熱交換システムにある圧縮機の制御方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下のように、本発明を実施例に基づいて詳述するが、あくまでも例示であって、本発明の範囲はこれらの実施形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲に記載されており、さらに特許請求の範囲の記載と均等な意味及び範囲内での全ての変更を含んでいる。
本発明は、以下のように、好ましい実施例に基づいて詳述される。
本発明の好ましい実施例の以下の記述は、ここにおいて例示のみの目的で示されるものであって、包括的で、かつ、細かく限定された形で開示されていることを意図するものではない。
【0029】
まず、本発明の実施例に係る圧縮機の制御システムの構造について説明する。図1は、本発明の第一実施例による圧縮機の制御システムを示したブロック図である。圧縮機の制御システムは、圧縮機10、入口圧力計11、出口圧力計12、インバータ13、凝縮器20、温度計21、凝縮器の扇風機22、制御器30、凝縮物の保存装置40、蒸発器50a(50b,50c)を含んでいる。図1において、実線は、圧縮機10、凝縮器20、保存装置40及び蒸発器50a(50b、50c)と接続された凝縮物の配管を示す。図1の点線は、入口圧力計11、出口圧力計12、インバータ13、温度計21、扇風機22、制御器30を接続する信号線であり、実線は、凝縮物(例えば冷媒)の配管である。
【0030】
入口圧力計11は、圧縮機10の入口圧力Piを測定するものである。出口圧力計12は、圧縮機10の出口圧力Poを測定するものである。入口圧力計11及び出口圧力計12は、それぞれ入口圧力Pi及び出口圧力Poを制御器30に輸送する。本発明の一実施例による圧縮機10は遠心圧縮機であり、インバータ13と接続され、インバータ13は制御器30と接続される。制御器30からの制御信号は、インバータ13を制御することにより、圧縮機10の回転速度を制御でき、システムにある冷媒の流量を調整する。本発明の第1の実施形態に係る圧縮機10は、例えばcentrifugal compressor(遠心圧縮機)のようなpositive displacement compressor、スクロール圧縮機、スクリュー圧縮機又はロータリー圧縮機などである。
【0031】
凝縮器20は圧縮機10と接続されており、ここで前記凝縮物の配管は、(冷媒のような)凝縮物を輸送するために凝縮器20と圧縮機10との間を接続している。圧縮機10からの相対的に高圧と高温の気態冷媒は、凝縮器20へ熱交換を行って、相対的に高圧と中温の気態冷媒に変わる。温度計21は、凝縮温度の測定のために凝縮器20の出口配管に配置しており、冷浴した冷媒の温度を測定して、凝縮器温度Tcが得られる。温度計21は、凝縮器温度Tc信号を制御器30へ出力する。凝縮器20は、更に扇風機22を有し、扇風機22は、制御器30と接続され、制御器30からの制御信号を受信して、凝縮器温度Tcを調整する。
【0032】
凝縮器20は複数のコイルを有し、前記コイルは、制御器30からの制御信号を受信するために、制御器30と接続されるコイル弁を備えている(図示されていない)。制御器30からの制御信号を受信することで、凝縮器20にある機能しているコイルの総数に基づく凝縮器20の効率を変化させて(例えばコイル弁を操作して、10個のコイルから20個のコイルに機能させる)、そして凝縮器温度Tcを調整できる。即ち、制御器30は、コイル弁を開き/閉じて、凝縮器20の動作数を変化させるために機能するコイルの全数を10個から20個或いは8個まで増大/減少させ、凝縮器温度Tcを調節できるようになっている。
【0033】
凝縮器20から出力された冷浴された冷媒は、例えば膨張弁などの減圧装置を介して(図1には示されていない)、相対的に低圧と低温の液態冷媒に変わって、熱交換のために蒸発器50a(50b、50c)或いはもっと多くの蒸発器に輸送され、蒸発器で冷媒が熱を吸収して圧縮機10に戻る。
【0034】
また、凝縮器20と蒸発器50a(50b、50c)の間には、保存装置40が配置されている。また、この保存装置40は、さらに圧縮機10と蒸発器50a(50b、50c)の間に配置されている。保存装置40は、冷媒のようなものを保存し、制御器30と接続される制御弁40aを有するものであるため、制御器30の制御信号により、冷媒を保存又は放出して、冷媒流量を調整できる。
本発明の実施例による圧縮機の制御システム1は、ホットガスバイパス(hot gas bypass)15をバイパス配管に配置し、このホットガスバイパス15も制御器30と接続させる。バイパス配管は、システムの高圧配管と低圧配管の間に配置するものであり、ホットガスバイパス15は、例えば圧縮機の出口と蒸発器の出口の間にあるバイパス配管に配置するものである。それゆえ、制御器30の制御信号により、ホットガスバイパス15を開放して、高圧側にある冷媒を低圧側に輸送して、冷媒流量を調整できる。
【0035】
制御器30は、入口圧力計11、出口圧力計12及び温度計21と接続されるものであり、それらの測定装置から入口圧力Pi、出口圧力Po及び凝縮器温度Tcなどの信号を受信し、入口圧力Pi及び出口圧力Poにより冷媒の現在流量Qaを算出し、凝縮器温度Tcにより凝縮器圧力Pcを算出するものである。又、凝縮器圧力Pcは、凝縮器圧力計によって直接に算出することができる。更に、制御器30は、現在流量Qa、入口圧力Pi、出口圧力Po、凝縮器温度Tc並びに行縮器圧力Pcなどの数値と制御パラメータを比較して、比較結果を得ることにより、その比較結果に基づき圧縮機10を制御する。
【0036】
図2は、本発明の好ましい第二実施例による圧縮機の制御用の熱交換システムを示したブロック図である。
本発明のもう一つの実施例による制御器30aは、計量器31、決定装置32及び比較器33を含むものである。計量器31は、凝縮物(冷媒)の現在流量Qaを測定し、且つ入口圧力Pi、出口圧力Po、凝縮器温度Tc及び凝縮器圧力Pcを測定するものである。決定装置32は、現在流量Qa、需要流量Qd並びに安全流量Qmなどの制御パラメータを決定するものである。圧縮機10は、前記制御パラメータ、入口圧力Pi、出口圧力Po、凝縮器温度Tc又は凝縮器圧力Pcによって制御することができる。比較器33は、凝縮物の現在流量Qa、需要流量Qd及び安全流量Qmなどの前記制御パラメータを比較して、比較結果を得ることにより、圧縮機10を制御する。
【0037】
図2によると、圧縮機10は、入口案内翼14を含み、ホットガスバイパス15と接続されるものである。圧縮機10は、更にインバータ13と接続され、インバータ13は、制御器30aと接続されるものである。熱交換システムは、圧縮機10、凝縮器20並びに少なくとも一つの蒸発器50a、50b、50cを含み、前記蒸発器50a、50b、50cは、圧縮機10と凝縮器20とに接続されるものである。凝縮器20は、コイル弁と扇風機22を備える。圧縮機10と凝縮器20は、制御弁40aを有する凝縮物保存装置40と接続される。
【0038】
又、前記制御パラメータは、入口圧力Pi、出口圧力Po、凝縮器温度Tc、並びに凝縮器圧力Pcなどの数値を更に含むことができる。需要流量Qdは、蒸発器の総数に基づいて決定するものであり、安全流量Qmは、圧縮機10の性能に基づいて決定するものである。
【0039】
本発明による圧縮機の制御方法は、前記システムを利用して実行する。本発明の好ましい一実施例による圧縮機の制御方法は、前述したシステム或いは装置を用いて行うことができる。圧縮機を制御するこのシステムは、凝縮物(冷媒)を備え、圧縮機10、凝縮器20並びに少なくとも一つの蒸発器50a、50b、50cを提供する工程と、圧縮機10の入口圧力Pi及び出口圧力Poを測定して、凝縮物(冷媒)の現在流量Qaを取得する工程と、前記蒸発器の総数に基づく需要流量Qd及び安全流量Qmを決定する工程と、現在流量Qa、需要流量Qd及び安全流量Qmからなる群から、少なくとも2つを選び、比較して、比較結果を得る工程と、前記比較結果に基づく圧縮機を制御する工程と、を有する。
【0040】
本発明による圧縮機の制御方法は、出口圧力Poと凝縮器圧力Pcと比較する工程、現在流量Qaと需要流量Qdと比較する工程、安全流量Qmと需要流量Qdと比較する工程、又は現在流量Qaと安全流量Qmと比較する工程を含むことである。
【0041】
凝縮物の現在流量Qa、入口圧力Pi及び出口圧力Poは、関数関係を持つため、入口圧力Pi及び出口圧力Poから現在流量Qaを算出することができる。又、凝縮器温度Tc及び凝縮器圧力Pcも関数関係を持つため、一つの数値(凝縮器温度Tc又は凝縮器圧力Pc)を測定して、ほかの数値を算出することができる。
【0042】
本発明の実施例において、各々の圧縮機により違った性能を持つため、安全流量Qmも異なっているので、安全流量Qmは、圧縮機10の性能に基づいて決定するものである。図3は、本発明の好ましい実施例に係る遠心圧縮機の性能の曲線図である。この分野の当業者であれば、係る圧縮機の性能を示すグラフについて理解することができるであろう。
図3のY軸は、圧力水頭(pressure head)の百分率比であり、固定の入口圧力Piに対応する出口圧力Poの変化を示す。図3のX軸は、出口圧力Poの変化に対応する流量の変化である。
【0043】
図3によると、B点を通る反り曲線は、サージ(surge)の臨界範囲を表示するものである。A点を通る斜線は、遠心圧縮機の最高効率を表示するものである。C点を通る反り曲線1ηは、望ましい効率を表示するものである。反り曲線1Mは、圧縮機の羽根車の回転速度を表示し、その計量単位はマッハ(Mach)である。本発明に係る遠心圧縮機の安全流量Qmは、その最高効率に基づいて決定することが望ましい。
【0044】
本発明の実施例による圧縮機の制御方法は、ほかの工程を更に含む。図4は、本発明の実施例による熱交換システムにおける圧縮機の制御方法のフローチャートである。
【0045】
需要流量Qdは稼働中の蒸発器の全数に基づいて決定されている。即ち、需要流量Qdは稼働中の蒸発器の全数に応じて変化する。本発明に係る(圧縮機の制御)方法は、1又は2以上の蒸発器に対して、1つの圧縮機を使用することが好ましい。
【0046】
まず、システムが運転を開始する。入口圧力Pi、出口圧力Po及び凝縮器温度Tcを測定して、現在流量Qa及び凝縮器圧力Pcを得る(工程301)。
蒸発器の総数に基づく需要流量Qdを決定し、圧縮機の性能によって安全流量Qmを決定する。そうして、現在流量Qaと需要流量Qdと比較する(工程302)。蒸発器の需要流量に対して現在流量が足りない場合(Qd>Qa)、制御器がインバータ13に命令することで、圧縮機10の回転速度を高める(現在流量Qaを増加させる)(工程303)。これにより、制御工程を終了して、再び工程302へ移行する(工程300)。
蒸発器の需要流量Qdよりも現在流量Qaが多い場合(Qd≦Qa)、更に需要流量Qdと安全流量Qmと比較する(工程304)。もしQd≧Qmが成立していれば、工程308へ移行する。一方、Qd≧Qmが成立しない場合には、工程305へ移行する。
【0047】
図4に示すように、Qd≧Qmが成立しなければ、現在流量を調節してサージを予防するために、制御器30が出口圧力Poと凝縮器圧力Pcと比較することにより、現在流量を調整する必要があるかどうかを決定する(工程305)。
もし、Po≧Pcが成立しないと(Po<Pc)、サージの問題が発生しないので、現在流量Qaを低減させるために、制御器30が、(インバータ30に対して周波数を低下させるような制御を行い)圧縮機10の回転速度を下げる(工程306)。これにより、制御工程を終了し、再び工程302へ移行する(工程300)。
一方、Po≧Pcが成立するときには、サージの問題を考慮すべきである。そこで、制御器30はサージを予防するために、現在流量Qaと安全流量Qmと比較し、Qd≧Qmが成立するかを判断する(工程307)。この工程307では、圧縮機10の安全のために、現在流量Qaがサージの臨界範囲(図3のように)を越えているかどうかを確認する。もし、Qa≧Qmが成立するならば、工程308へ移行する。Qa≧Qmが成立しなければ、工程309へ移行する。
【0048】
本システムでは、図4によると、もし、Qa≧Qmが成立していると、圧縮機の入口案内翼14(IGV)を調節して、圧縮機の入口角度を変化させ(現在流量Qaを減少させ)、制御器30は、調節後の入口角度が調節可能な限界に達しているかどうかを確認(比較)する。そして、Qa<Qmが成立するかどうかを確認する。(工程308)。もし、その調節角度がその限界よりも小さいときには、本システムでは、現在流量Qaを安全流量Qmへ低減させることが可能である。現在の入口角度が前記調節可能な限界より小さいと、現在流量Qaを減少させて安全流量Qmに達すれば、工程305へ移行する。つまり、本システムでは、出口圧力Poを低下させるための次工程を必要とせず、工程305へ戻る(工程310)。
本システムでは、もし、現在の入口角度が調節可能な限界に達して、現在流量Qaが依然として安全流量Qmに達しない場合、ホットガスバイパス(hot gas bypass)15を開いて、圧縮機10の出口配管から蒸発器の出口配管へショートカットさせ、現在流量Qaを減少させる(工程311)。この工程311を終了後、工程305へ移行して、出口圧力Poと凝縮器圧力Pcとについて比較し、Po≧Pcが成立するかを判断する。
【0049】
もし、Qa≧Qmが成立しない場合(つまり、Qa≧Qmの場合)、出口圧力Poをこれ以上低下させることができないので、凝縮器のコイル弁(coil valve)を開いて(凝縮器の稼働配管の長さを増大させて)凝縮器の効率を高め、又は、扇風機22の回転速度を上げて、凝縮器温度Tcを減少させることによって、凝縮器温度Tcを調整する(工程309)必要がある。凝縮器温度Tcを減少させると、凝縮器圧力Pcを低下させることができ、サージの予防のために安全流量Qmも低下させることができる。つまり、凝縮器圧力Pcの減少に伴って、サージの臨界点に対応する安全流量Qmを減少させ、サージを予防させることができる。本システムでは、工程309を終了後、工程305へ移行して、出口圧力Poと凝縮器圧力Pcとを比較して、Po≧Pcが成立するかを判断する。その上、本システムでは、もし出口圧力Poが凝縮器圧力Pcよりも高ければ、コイル弁と扇風機の回転速度を調節してもよい。
【0050】
また、本発明の実施例による圧縮機の制御方法は、上述の工程間に、凝縮物保存装置40の制御弁を調整する工程を更に含んでもよい。例えば、蒸発器による需要流量Qdが現在流量Qaより少ない時(Qa>Qd)、余分な冷媒流量を保存装置40に保存してもよい。もし、必要があれば(Qa<Qdである場合)、保存装置40を使うことで、冷媒を放出して、現在流量Qaを調整できる。
係る工程は圧縮機を制御することを必要するものではなく、或いは現在流量を調節するための他の工程を使用するものではなく、蒸発器に対して十分な凝縮を素早く実行させるようにしてもよい。
【0051】
以上説明した内容を通して、当業者であれば本発明の技術思想を逸脱しない範囲で、多様な変更及び修正が可能であることが分かる。従って、本発明の技術的な範囲は、明細書の詳細な説明に記載された内容に限らず、特許請求の範囲によって定めなければならない。
【符号の説明】
【0052】
10 圧縮機
11 入口圧力計
12 出口圧力計
13 インバータ
14 入口案内翼
15 ホットガスバイパス
20 凝縮器
21 温度計
22 扇風機
30 制御器
30a 制御器
31 計量器
32 決定装置
33 比較器
40 保存装置
40a 制御弁
50a 蒸発器
50b 蒸発器
50c 蒸発器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝縮物を有する圧縮機の制御方法であって、
前記圧縮機と接続する凝縮器及び少なくとも一つの蒸発器を提供する工程と、
前記圧縮機の入口圧力及び出口圧力を測定して、前記凝縮物の現在流量を取得する工程と、
前記蒸発器の総数に基づく需要流量及び安全流量を決定する工程と、
前記現在流量、前記安全流量及び前記需要流量からなる群から、少なくとも2つを選び、比較して、比較結果を得る工程と、
前記比較結果に基づき圧縮機を制御する工程と、
を有することを特徴とする圧縮機の制御方法。
【請求項2】
前記圧縮機と前記蒸発器が制御弁を有する凝縮物保存装置と接続され、前記比較結果に基づき前記制御弁を調整する工程を更に有することを特徴とする請求項1記載の圧縮機の制御方法。
【請求項3】
前記現在流量が前記需要流量より低くなるならば、前記圧縮機の回転速度を高める工程を更に有することを特徴とする請求項1記載の圧縮機の制御方法。
【請求項4】
前記圧縮機は、入口案内翼を含み、ホットガスバイパスと接続され、
前記需要流量が前記安全流量より高くなるならば、前記入口案内翼を調節し、前記現在流量が前記需要流量より高くなるならば、前記ホットガスバイパスを開放する工程を更に有することを特徴とする請求項1記載の圧縮機の制御方法。
【請求項5】
前記凝縮器の温度を測定して、前記入口圧力、前記出口圧力並びに前記凝縮器温度に基づいて前記凝縮器の圧力を取得し、前記需要流量が前記安全流量より低く、且つ前記出口圧力が前記凝縮器圧力より低くなるならば、前記圧縮機の回転速度を下げる工程を更に有することを特徴とする請求項1記載の圧縮機の制御方法。
【請求項6】
前記凝縮器はコイル弁及び扇風機を含み、前記出口圧力が前記凝縮器圧力より高くなるならば、前記コイル弁及び前記扇風機の回転速度を調節する工程を更に有することを特徴とする請求項5記載の圧縮機の制御方法。
【請求項7】
凝縮物を有する熱交換システムの圧縮機の制御方法であって、
前記凝縮物の現在流量を測定する工程と、
前記現在流量と制御パラメータを比較して、比較結果を得る工程と、
前記比較結果に基づく圧縮機を制御する工程と、
を有することを特徴とする熱交換システムの圧縮機の制御方法。
【請求項8】
前記圧縮機の入口圧力及び出口圧力を測定して、前記現在流量を得る工程を有することを特徴とする請求項7記載の熱交換システムの圧縮機の制御方法。
【請求項9】
前記熱交換システムは、前記圧縮機と接続する蒸発器及び凝縮器を含むことを特徴とする請求項7記載の熱交換システムの圧縮機の制御方法。
【請求項10】
前記制御パラメータは、安全流量及び需要流量を決定することによって取得することを特徴とする請求項7記載の熱交換システムの圧縮機の制御方法。
【請求項11】
前記熱交換システムは、凝縮器及び少なくとも一つの蒸発器を含み、
前記蒸発器は、前記圧縮機と前記凝縮器とに接続され、
前記需要流量は、前記蒸発器の総数に基づいて決定することを特徴とする請求項10記載の熱交換システムの圧縮機の制御方法。
【請求項12】
凝縮物及び圧縮機を有する熱交換システムの制御器であって、
前記凝縮物の現在流量を測定する計量器と、
前記凝縮物の需要流量及び安全流量を決定する決定装置と、を備え、
その中、前記現在流量、前記需要流量並びに前記安全流量に基づき前記圧縮機を制御することを特徴とする制御器。
【請求項13】
前記制御器は、前記現在流量と前記需要流量又は前記安全流量を比較して、比較結果を得る比較器をさらに含み、前記比較結果に基づき前記圧縮機を制御することを特徴とする請求項12記載の制御器。
【請求項14】
前記計量器は、前記圧縮機の入口圧力、出口圧力並びに凝縮器の温度をさらに測定して、前記圧縮機の入口圧力、出口圧力並びに凝縮器の温度により前記凝縮器の圧力を取得し、そして前記需要流量が前記安全流量より低く、且つ前記出口圧力が前記凝縮器圧力より低くなるならば、前記圧縮機の回転速度を下げることを特徴とする請求項13記載の制御器。
【請求項15】
前記圧縮機は、入口案内翼を含み、ホットガスバイパスと接続されることを特徴とする請求項12記載の制御器。
【請求項16】
前記圧縮機は、インバータと接続され、
前記インバータは、前記制御器と接続される、
ことを特徴とする請求項12記載の制御器。
【請求項17】
前記熱交換システムは、凝縮器及び少なくとも一つの蒸発器を含み、前記蒸発器は、前記圧縮機と前記凝縮器とに接続される、
ことを特徴とする請求項12記載の制御器。
【請求項18】
前記凝縮器はコイル弁及び扇風機を含むことを特徴とする請求項17記載の制御器。
【請求項19】
前記圧縮機と前記凝縮器は、制御弁を有する凝縮物保存装置と接続されることを特徴とする請求項17記載の制御器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−190563(P2010−190563A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2608(P2010−2608)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(390023582)財団法人工業技術研究院 (524)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】195 Chung Hsing Rd.,Sec.4,Chutung,Hsin−Chu,Taiwan R.O.C
【Fターム(参考)】