説明

圧縮機

【課題】圧縮機の油面検知の精度向上。
【解決手段】スクロール圧縮機(10)は、潤滑油が貯留される油貯留部(12)を有し、内部を冷媒が流れるケーシング(11)を備えている。ケーシング(11)の内部に配置され、油貯留部(12)に貯留される潤滑油の有無を検知するサーミスタ(41)と、サーミスタ(41)を覆い、サーミスタ(41)の周りに潤滑油の流入可能なサーミスタカバー(51)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機に関し、特に、圧縮機の油面検知の精度向上対策に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、密閉容器を有する圧縮機内の潤滑油(冷凍機油)の油面位置の検知手段が知られている(特許文献1)。この検知手段では、密閉容器に設けられたサイトグラスを介して密閉容器の外側から潤滑油の油面を透視できるようにしている。
【0003】
また、液面の検知手段として、サーミスタを用いた液面検知手段が知られている。特許文献2には、サーミスタの発熱が液体中と気体中とで熱拡散係数が異なることを利用して液体の有無の検知を行う装置が開示されている。この装置では、サーミスタに電圧を印加し、その温度上昇によりサーミスタが所定の発熱状態となった条件で、気体中と液体中での熱放散係数の違いによる発熱差(到達温度差)によって液面を検知している。
【0004】
したがって、上述した特許文献2のサーミスタを特許文献1の密閉容器の内部に設置すると、圧縮機内の潤滑油の油面を検知する構成が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−324696号公報
【特許文献2】特開2008−268139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、圧縮機のほぼ静止状態では、冷媒ガスの熱伝達率よりも液体である潤滑油の方が熱伝達率が大きい一方、圧縮機の運転状態では、潤滑油の流れる速度よりも冷媒ガスの対流による循環速度が大きくなるため、潤滑油の熱伝達率よりも冷媒ガスの熱伝達率の方が大きくなる場合がある。これにより、サーミスタは、その周りの冷媒ガスを誤って潤滑油として検知してしまう。つまり、圧縮機内の潤滑油の有無の誤検知が生じるという問題があった。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、圧縮機内の潤滑油の検知精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、潤滑油の有無を検知するサーミスタ(41)をカバー部材(51,61,71)で覆うようにしたものである。
【0009】
第1の発明は、潤滑油が貯留される油貯留部(12)を有し、内部を流体が流れるケーシング(11)を備えた圧縮機であって、上記ケーシング(11)の内部に配置され、上記油貯留部(12)に貯留される潤滑油の有無を検知するサーミスタ(41)と、上記サーミスタ(41)を覆い、該サーミスタ(41)の周りに潤滑油の流入可能なカバー部材(51,61,71)とを備えている。
【0010】
上記第1の発明では、ケーシング(11)の内部には流体が流れ、油貯留部(12)は潤滑油を貯留している。カバー部材(51,61,71)は、サーミスタ(41)を覆って、サーミスタ(41)の周りに流体の流れる空間を形成する。つまり、サーミスタ(41)の周りでは流体の流れる速度は遅くなる。
【0011】
上記油貯留部(12)に貯留された潤滑油は、カバー部材(51,61,71)の内部に流れ込む。このため、カバー部材(51,61,71)で覆われたサーミスタ(41)の周りには、潤滑油、又は流体が存在する。そして、サーミスタ(41)はその周りに存在する潤滑油の有無を検知する。
【0012】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記カバー部材(51,61,71)は、上記潤滑油をサーミスタ(41)の周りに供給する油開口部(55,65,75)を備えている。
【0013】
上記第2の発明では、ケーシング(11)の内部には流体が流れ、油貯留部(12)は潤滑油を貯留している。カバー部材(51,61,71)は、サーミスタ(41)を覆って、サーミスタ(41)の周りに流体の流れる空間を形成する。
【0014】
油貯留部(12)に貯留された潤滑油は、油開口部(55,65,75)を通じてカバー部材(51,61,71)の内部に流れ込む。このため、カバー部材(51,61,71)で覆われたサーミスタ(41)の周りには、潤滑油、又は流体が存在する。そして、サーミスタ(41)はその周りに存在する潤滑油の有無を検知する。
【0015】
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、上記カバー部材(51,61)は、上記流体をサーミスタ(41)の周りに供給する流体開口部(53,63)を備えている。
【0016】
上記第3の発明では、ケーシング(11)の内部には流体が流れ、油貯留部(12)は潤滑油を貯留している。ケーシング(11)の内部を流れる流体は、流体開口部(53,63)を通じてカバー部材(51,61)の内部に流れ込む。そして、カバー部材(51,61)は、サーミスタ(41)を覆って、サーミスタ(41)の周りに流体の流れる空間を形成する。つまり、サーミスタ(41)の周りでは流体の流れる速度は遅くなる。
【0017】
油貯留部(12)に貯留された潤滑油は、油開口部(55,65)を通じてカバー部材(51,61)の内部に流れ込む。また、潤滑油は、流体開口部(53,63)を介してカバー部材(51,61)の内部と外部とに連通している。このため、カバー部材(51,61)で覆われたサーミスタ(41)の周りには、潤滑油、又は流体が存在する。そして、サーミスタ(41)はその周りに存在する潤滑油の有無を検知する。
【0018】
第4の発明は、上記第3の発明において、上記カバー部材(51,61)は、上記流体開口部(53,63)の周縁部に上記流体の流れ方向に沿って延びる廂部材(54,64)を備えている。
【0019】
上記第4の発明では、ケーシング(11)の内部には流体が流れ、油貯留部(12)は潤滑油を貯留している。ケーシング(11)の内部を流れる流体は、その一部が流体開口部(53,63)を通じてカバー部材(51,61)の内部に流れ込んでサーミスタ(41)の周りを流れる一方、残りが廂部材(54,64)によって流体開口部(53,63)からカバー部材(51,61)の内部に侵入することなくケーシング(11)の内部を流れる。
【0020】
油貯留部(12)に貯留された潤滑油は、油開口部(55,65)を通じてカバー部材(51,61)の内部に流れ込む。このため、カバー部材(51,61)で覆われたサーミスタ(41)の周りには、潤滑油、又は流体が存在する。そして、サーミスタ(41)はその周りに存在する潤滑油の有無を検知する。
【0021】
第5の発明は、上記第1又は第2の発明において、上記カバー部材(71)は、上記サーミスタ(41)を覆う第1のカバー部材(71a)と、該第1のカバー部材(71a)を覆う第2のカバー部材(71b)とで構成されている。
【0022】
上記第5の発明では、ケーシング(11)の内部には流体が流れ、油貯留部(12)は潤滑油を貯留している。第1のカバー部材(71a)は、サーミスタ(41)を覆って、該サーミスタ(41)の周りに流体の流れる空間を形成する。つまり、サーミスタ(41)の周りでは流体の流れる速度は遅くなる。第2のカバー部材(71b)は、第1のカバー部材(71a)を覆って、第1のカバー部材(71a)の周りに流体の流れる空間を形成する。
【0023】
上記油貯留部(12)に貯留された潤滑油は、油開口部(75a)を通じて第1のカバー部材(71a)の内部に流れ込む。このため、第1のカバー部材(71a)で覆われたサーミスタ(41)の周りには、潤滑油、又は流体が存在する。そして、サーミスタ(41)はその周りに存在する潤滑油の有無を検知する。
【0024】
第6の発明は、上記第5の発明において、上記第1のカバー部材(71a)は、上記流体をサーミスタ(41)の周りに供給する第1の流体開口部(73a)を備える一方、上記第2のカバー部材(71b)は、上記第1の流体開口部(73a)とずれた位置に形成され、且つ上記流体を内部と連通させる第2の流体開口部(73b)を備えている。
【0025】
上記第6の発明では、ケーシング(11)の内部には流体が流れ、油貯留部(12)は潤滑油を貯留している。上記流体は、第2の流体開口部(73b)を通じて第2のカバー部材(71b)の内部に流れ込んだ後、第1の流体開口部(73a)を通じて第1のカバー部材(71a)の内部に流れ込む。そして、第1のカバー部材(71a)は、サーミスタ(41)を覆って流体の流れる空間を形成する。
【0026】
第2の流体開口部(73b)と第1の流体開口部(73a)とが、ずれた位置に形成されているため、ケーシング(11)の内部を流れる流体は第1の流体開口部(73a)から直接的に第1のカバー部材(71a)の内部に流れ込むことはない。
【0027】
上記油貯留部(12)に貯留された潤滑油は、油開口部(75a)を通じて第1のカバー部材(71a)の内部に流れ込む。このため、第1のカバー部材(71a)で覆われたサーミスタ(41)の周りには、潤滑油、又は流体が存在する。また、潤滑油は、油開口部(75b)を通じて第2のカバー部材(71b)の内部に流れ込む。また、潤滑油は、第2の流体開口部(73b)を介して第2のカバー部材(71b)の内部と外部とに連通し、第1の流体開口部(73a)を介して第1のカバー部材(71a)の内部と外部とに連通している。そして、サーミスタ(41)はその周りに存在する潤滑油の有無を検知する。
【0028】
第7の発明は、上記第1〜第6発明において、上記サーミスタ(41)は、自己発熱型のサーミスタ(41)に構成されている。
【0029】
上記第7の発明では、サーミスタ(41)に電流が流れると該サーミスタ(41)は自己発熱する。そして、サーミスタ(41)は、周りにある流体、又は潤滑油に放熱する。そして、流体と潤滑油に対する熱拡散係数が異なる特性によってサーミスタ(41)の周りの潤滑油の有無を検知する。
【発明の効果】
【0030】
上記第1の発明によれば、サーミスタ(41)をカバー部材(51,61,71)で覆ったため、サーミスタ(41)の周りに流体の淀み空間を形成することができる。つまり、サーミスタ(41)が、流体の流れる速度の影響によって放熱するのを防止することができる。これにより、サーミスタ(41)が流体の流れる速度の影響を受けて潤滑油の有無を誤って検知するのを確実に防止することができる。この結果、サーミスタ(41)による圧縮機内の潤滑油の検知精度を向上させることができる。
【0031】
上記第2の発明によれば、カバー部材(51,61,71)に油開口部(55,65,75)を設けたため、油開口部(55,65,75)を通じてカバー部材(51,61,71)の内部に潤滑油を流入させることができる。これにより、サーミスタ(41)の周りに潤滑油を供給することができる。この結果、サーミスタ(41)による圧縮機内の潤滑油の検知精度を向上させることができる。
【0032】
上記第3の発明によれば、カバー部材(51,61)に流体開口部(53,63)を設けたため、ケーシング(11)の内部を流れる流体をカバー部材(51,61)の内部に流入させることができる。これにより、サーミスタ(41)の周りに流体が流れる空間を形成することができる。
【0033】
また、カバー部材(51,61)に流体開口部(53,63)を設けたため、流体開口部(53,63)をカバー部材(51,61)の内部と外部とに潤滑油を連通させることができる。これにより、サーミスタ(41)の周りへの潤滑油の供給をスムーズにすることができる。
【0034】
これらの結果、サーミスタ(41)による圧縮機内の潤滑油の検知精度を向上させることができる。
【0035】
上記第4の発明によれば、流体開口部(53,63)の周縁部に廂部材(54,64)を設けたため、流速の速い流体が流体開口部(53,63)からカバー部材(51,61)の内部に流入するのを確実に防止することができる。これにより、サーミスタ(41)の周りに流体の淀み空間を形成することができる。この結果、サーミスタ(41)による圧縮機内の潤滑油の検知精度を向上させることができる。
【0036】
上記第5の発明によれば、第1のカバー部材(71a)と第2のカバー部材(71b)とによってカバー部材(71)を構成したため、サーミスタ(41)の周りに流体の淀み空間を確実に形成することができる。これにより、サーミスタ(41)が、流体の流れる速度の影響を受けて潤滑油の有無を誤って検知するのを確実に防止することができる。この結果、サーミスタ(41)による圧縮機内の潤滑油の検知精度を向上させることができる。
【0037】
上記第6の発明によれば、第1の流体開口部(73a)と、第2の流体開口部(73b)とを互いにずれた位置に形成したため、第2のカバー部材(71b)の内部に流入した流体が直接的に第1の流体開口部(73a)を通じて第1のカバー部材(71a)の内部に流入するのを確実に防止することができる。これにより、サーミスタ(41)の周りに流体の淀み空間を形成することができる。
【0038】
また、第1の流体開口部(73a)及び第2の流体開口部(73b)とを設けたため、これらを介してカバー部材(71)の内部と外部に潤滑油を連通させることができる。これにより、サーミスタ(41)の周りへの潤滑油の供給をスムーズにすることができる。
【0039】
これらの結果、サーミスタ(41)による圧縮機内の潤滑油の検知精度を向上させることができる。
【0040】
上記第7の発明によれば、サーミスタ(41)をカバー部材(51,61,71)で覆う構成としたため、自己発熱型のサーミスタ(41)の周りに流体の淀み空間を形成することができる。つまり、流体の流れる速度の影響によって自己発熱型のサーミスタ(41)の放熱が促進されるのを確実に防止することができる。これにより、自己発熱型のサーミスタ(41)による潤滑油の有無の誤検知を確実に防止することができる。この結果、自己発熱型のサーミスタ(41)による圧縮機内の潤滑油の検知精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施形態1に係る圧縮機の縦断面構造を示す図である。
【図2】図1のA−A断面を示す図である。
【図3】実施形態1に係るサーミスタとサーミスタカバーを示す模式図である。
【図4】実施形態1に係るサーミスタの取付構造を模式的に示す断面図である。
【図5】実施形態1に係るサーミスタカバーを示す図である。
【図6】実施形態1の変形例に係るサーミスタの取付構造を模式的に示す断面図である。
【図7】実施形態2に係る圧縮機の縦断面構造を示す図である。
【図8】実施形態2に係るサーミスタとサーミスタカバーを示す模式図である。
【図9】実施形態2に係るサーミスタカバーを示す図である。
【図10】その他の実施形態に係るサーミスタカバーを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0043】
〈発明の実施形態1〉
本実施形態1は、本発明をスクロール圧縮機に適用したものである。図1、及び図2に示すように本実施形態1に係るスクロール圧縮機(10)は、全密閉型の高低圧ドーム型の圧縮機として構成され、冷媒回路に設けられている。
【0044】
上記スクロール圧縮機(10)は、いわゆる縦型で密閉容器を形成するケーシング(11)を備えている。ケーシング(11)の内部には、下から上へ向かって油貯留部(12)と、サーミスタ(41)と、サーミスタカバー(51)と、電動機(13)と、圧縮機構(14)とが配置されている。
【0045】
上記ケーシング(11)は、その内部が円盤状のハウジング(15)によって、上側の吸入空間(16)と下側の吐出空間(17)とに区画されている。吸入空間(16)は、図示しない連通ポートを通じて、吸入ポート(18)に連通している。吐出空間(17)は、固定スクロール(31)とハウジング(15)とに亘って形成された連通通路(図示なし)を通じてマフラー空間(20)に連通している。運転中の吐出空間(17)は、吐出ポート(34)から吐出された冷媒がマフラー空間(20)を通じて流入するので、圧縮機構(14)で圧縮された冷媒で満たされる高圧空間になる。吐出空間には、ケーシング(11)の側面部を貫通する吐出管(21)が開口している。
【0046】
上記電動機(13)は、スクロール圧縮機(10)を駆動させるためのものである。電動機(13)は、ステータ(22)とロータ(23)とを備えている。ステータ(22)は、ケーシング(11)の内側面部に固定されている。一方、ロータ(23)は、ステータ(22)の内側に配置され、クランク軸(24)が連結されている。
【0047】
上記油貯留部(12)は、ケーシング(11)内から集められた冷凍機油を貯留するためのものである。油貯留部(12)は、ケーシング(11)の底部に形成されている。また、クランク軸(24)の内部には、油貯留部(12)に開口する第1給油通路(25)が形成されている。また、後述する可動側鏡板(37)には、第1給油通路(25)に接続する第2給油通路(26)が形成されている。このスクロール圧縮機(10)では、油貯留部(12)の冷凍機油が第1給油通路(25)および第2給油通路(26)を通じて低圧側の圧縮室(図示なし)に供給される。
【0048】
上記圧縮機構(14)は、上記冷媒を圧縮するためのものである。圧縮機構(14)は、可動側ラップ(36)を有する可動側スクロールである可動スクロール(35)と、固定側ラップ(32)を有する固定側スクロールである固定スクロール(31)とを備えている。圧縮機構(14)は、固定側ラップ(32)の内周面と可動側ラップ(36)の外周面との間に構成される圧縮室(図示なし)と、固定側ラップ(32)の外周面と可動側ラップ(36)の内周面との間に構成される圧縮室(図示なし)とを有している。
【0049】
上記可動スクロール(35)は、略円板状の可動側鏡板(37)と、該可動側鏡板(37)の前面(上面)に立設されて渦巻状の可動側ラップ(36)とを備えている。可動側鏡板(37)の背面(下面)には、クランク軸(24)の偏心部が挿入される円筒状の突出部(38)が立設されている。可動スクロール(35)は、オルダムリング(39)を介して可動スクロール(35)の下側に配置されたハウジング(15)に支持されている。
【0050】
上記固定スクロール(31)は、固定側鏡板(33)と、該固定側鏡板(33)の前面(上面)に立設された渦巻状の固定側ラップ(32)とを備えている。
【0051】
上記固定側鏡板(33)は、略円板状に形成され且つその径方向の略中央位置に、圧縮された冷媒を吐出する吐出ポート(34)が設けられている。この吐出ポート(34)は、可動スクロール(35)の公転運動に伴って、圧縮室に間欠的に連通する。また、吐出ポート(34)は固定スクロール(31)の上側に形成されたマフラー空間(20)に開口している。また、固定側鏡板(33)の外縁部には吸入ポート(18)が形成されている。吸入ポート(18)には、ケーシング(11)の頂部を貫通する吸入管(29)が接続されている。吸入ポート(18)は、可動スクロール(35)の公転運動に伴って圧縮室(図示なし)に間欠的に連通する。また、吸入ポート(18)には、圧縮室から吸入管(29)へ戻る冷媒の流れを禁止する吸入逆止弁が設けられている(図示省略)。
【0052】
次に、本発明の特徴部分であるサーミスタ(41)とサーミスタカバー(51)について図面に基づいて説明する。
【0053】
上記サーミスタ(41)は、図1及び図3に示すように、自己発熱型の油面検知センサに構成されている。このサーミスタ(41)は、セラミック半導体からなるNTC型サーミスタに構成され、ケーシング(11)の底部のクランク軸(24)の周囲に設置されている。サーミスタ(41)は、制御回路(図示なし)に接続されている。また、サーミスタ(41)は、温度が上がれば内部抵抗が減少し、温度が下がれば内部抵抗が増加する温度特性を有している。
【0054】
具体的に、制御回路から電圧が印加されるとサーミスタ(41)は電流が流れて自己発熱する。そして、サーミスタ(41)は、その周囲の気体(流体)又は液体に対して放熱する。放熱するとサーミスタ(41)の温度が下がり内部抵抗が増加する。特に、液体と気体とで熱伝達率が違うため、サーミスタ(41)からの放熱量は液体中と気体中とで異なる。
【0055】
サーミスタ(41)は、液体である潤滑油中では放熱量が大きいため温度低下が大きくなり、気体(流体)である冷媒中では温度低下が小さくなる。つまり、サーミスタ(41)の内部抵抗は、潤滑油中で大きくなり、冷媒中で小さくなる。したがって、制御回路がサーミスタ(41)に印加する電圧値を読み取ることでサーミスタ(41)の周囲の潤滑油の有無を検知することができる。
【0056】
尚、サーミスタ(41)は、図4に示すように、取付部材(42)によってケーシング(11)の底部に取り付けられている。
【0057】
上記取付部材(42)は、金属台(43)と、Oリング(44)と、ボルト(45,45)とで構成されている。上記金属台(43)は、略直方体に形成された台であって、ケーシング(11)の底部に形成された貫通口の周縁部に溶接によって取り付けられている。そして、金属台(43)の中央部には、貫通孔が形成され、この貫通孔には、サーミスタ(41)が挿通されている。金属台(43)の底部には、サーミスタ(41)の下部に形成された取付部(41a)が当接する。そして、取付部(41a)と金属台(43)との間には、Oリング(44)が介在する。また、取付部(41a)は、ボルト(45,45)によって金属台(43)に取り付けられている。
【0058】
上記サーミスタカバー(51)は、図3に示すように、サーミスタ(41)を覆って該サーミスタ(41)の周りに冷媒の流れる空間を形成するためのものであって、本発明に係るカバー部材を構成している。上記サーミスタカバー(51)は、図1に示すように、クランク軸(24)の周囲に設置されたサーミスタ(41)を覆うように設置されている。
【0059】
上記サーミスタカバー(51)は、図5に示すように、下端面に下開口部(55)が形成された上下方向に延びる中空の円筒形状に形成され、その側面部には、複数のスリット(53)が形成されている。
【0060】
上記下開口部(55)は、サーミスタカバー(51)の下端面を構成する開口であって、本発明に係る油開口部を構成している。油貯留部(12)に貯留された潤滑油が増えて油面が上昇すると、潤滑油はサーミスタカバー(51)の下開口部(55)からサーミスタカバー(51)の内部に流入する(図5のハッチングを施した矢印方向)。潤滑油の油面が上昇するとサーミスタ(41)の周りに潤滑油が存在することになる。
【0061】
上記サーミスタカバー(51)の上端面には、上部孔(52)が複数個形成されている。ケーシング(11)内の冷媒は、上部孔(52)を介してサーミスタカバー(51)の内部と外部とに連通している。
【0062】
上記スリット(53)は、ケーシング(11)の内部を流れる冷媒をサーミスタ(41)の周りに供給するためのものであって、本発明に係る流体開口部を構成している。このスリット(53)は、図5に示すように、サーミスタカバー(51)の側面部の周囲に亘って上下左右に所定間隔を有して複数個形成されている。
【0063】
ケーシング(11)の内部を流れる冷媒は、各スリット(53)を通じてサーミスタカバー(51)の内部に流入する。つまり、サーミスタカバー(51)は、サーミスタ(41)の周りにスリット(53)を通じて流入された冷媒が流れる空間を形成している。
【0064】
尚、油貯留部(12)の潤滑油が増加して油面が上昇すると、潤滑油は各スリット(53)を介してサーミスタカバー(51)の内部と外部とに連通する。そして、各スリット(53)の下縁部には、上向きに延びる廂(54)が形成されている。
【0065】
上記廂(54)は、ケーシング(11)の底部から上部に向かって流れる冷媒(図5の白抜きの矢印方向)がスリット(53)を介してサーミスタカバー(51)の内部に流入するのを防止するためのものであって、本発明に係る廂部材を構成している。この廂(54)は、各スリット(53)の下縁部から上向き且つ外側に傾斜する方向に延びている。
【0066】
ケーシング(11)の内部を底部から上部に向かって流れる流速の速い冷媒は、廂(54)によってサーミスタカバー(51)の外側へ促され、各スリット(53)からサーミスタカバー(51)の内部に流入するのが防がれる。
【0067】
−運転動作−
本実施形態1に係るスクロール圧縮機(10)の運転動作について説明する。
【0068】
まずクランク軸(24)を回転駆動させると、その回転駆動力が可動スクロール(35)に伝達される。そして、可動スクロール(35)がクランク軸(24)の回転中心の周りで公転動作することで、固定スクロール(31)と可動スクロール(35)との間に形成された圧縮室の容積が変化する。圧縮室(図示なし)では、上記容積変化に伴って吸入ポート(18)から低圧の冷媒が吸引されるとともに、両スクロール(31,35)の中心に向かって移動しながらその容積を減少させて冷媒を圧縮する。圧縮された冷媒は吐出ポート(34)から吐出される。
【0069】
また、圧縮された冷媒は、吐出空間(17)を経てケーシング(11)の底部に向かって流れる。ケーシング(11)の底部では、冷媒は、ケーシング(11)の内側面に沿って下向き(図1の下向きの矢印方向)に流れる。次に、冷媒は、油貯留部(12)の油面上をケーシング(11)の中央部に向いて(図1の横向きの矢印方向)に流れる。その後、クランク軸(24)に沿って上向き(図1の上向きの矢印方向)に流れる。尚、本実施形態1では、サーミスタ(41)がクランク軸(24)の周囲に設けられている。
【0070】
ケーシング(11)の底部を横向きに流れる冷媒は、各スリット(53)に設けられた廂(54)に衝突する。また、クランク軸(24)に沿って上向きに流れる冷媒流れも、廂(54)に衝突してサーミスタカバー(51)の外側へ促される。これらにより、各スリット(53)を介してサーミスタカバー(51)の内部に流速の速い冷媒が直接流れ込むことはないため、サーミスタ(41)の周りには冷媒の淀み空間が形成される。
【0071】
制御回路から電圧が印加されるとサーミスタ(41)は電流が流れて自己発熱する。そして、サーミスタ(41)は、その周囲に存在するガス状態の冷媒に対して放熱する。放熱するとサーミスタ(41)の温度が下がり内部抵抗が増加する。冷媒中ではサーミスタ(41)の放熱量が比較的小さいため温度低下が小さくなり、サーミスタ(41)の内部抵抗が小さくなる。このとき、制御回路がサーミスタ(41)に印加する電圧値を読み取ることでサーミスタ(41)の周囲に冷媒が存在する(すなわち潤滑油が存在しない)ことを検知する。
【0072】
圧縮機構(14)に使用された潤滑油は、ケーシング(11)の下側に流れて油貯留部(12)に貯留される。油貯留部(12)の潤滑油が増加すると油面が上昇し、潤滑油は下開口部(55)からサーミスタカバー(51)の内部に流入する(図5のハッチングを施した矢印方向)。さらに油面が上昇すると、サーミスタ(41)は潤滑油に沈むことになる。
【0073】
制御回路から電圧が印加されるとサーミスタ(41)は電流が流れて自己発熱する。そして、サーミスタ(41)は、その周囲に存在する潤滑油に対して放熱する。放熱するとサーミスタ(41)の温度が下がり内部抵抗が増加する。潤滑油中ではサーミスタ(41)の放熱量が大きいため温度低下が大きくなり、サーミスタ(41)の内部抵抗が大きくなる。このとき、制御回路がサーミスタ(41)に印加する電圧値を読み取ることでサーミスタ(41)の周囲に潤滑油が存在することを検知する。
【0074】
−実施形態1の効果−
本実施形態1によれば、サーミスタ(41)をサーミスタカバー(51)で覆ったため、サーミスタ(41)の周りに冷媒の淀み空間を形成することができる。つまり、サーミスタ(41)が、冷媒の流れる速度の影響によって放熱するのを防止することができる。これにより、サーミスタ(41)が冷媒の流れる速度の影響を受けて潤滑油の有無を誤って検知するのを確実に防止することができる。
【0075】
次に、サーミスタカバー(51)に下開口部(55)を設けたため、下開口部(55)を通じてサーミスタカバー(51)の内部に潤滑油を流入させることができる。これにより、サーミスタ(41)の周りに潤滑油を供給することができる。
【0076】
続いて、サーミスタカバー(51)にスリット(53)を設けたため、サーミスタカバー(51)の内部にケーシング(11)の内部を流れる冷媒を流入させることができる。これにより、サーミスタ(41)の周りに冷媒が流れる空間を形成することができる。また、サーミスタカバー(51)にスリット(53)を設けたため、スリット(53)を介してサーミスタカバー(51)の内部と外部とに潤滑油を連通させることができる。これにより、サーミスタ(41)の周りへの潤滑油の供給をスムーズにすることができる。
【0077】
また、各スリット(53)の周縁部に廂(54)を設けたため、流速の速い冷媒がスリット(53)からカバー部材(51)の内部に流入するのを確実に防止することができる。これにより、サーミスタ(41)の周りに冷媒の淀み空間を形成することができる。
【0078】
さらに、サーミスタ(41)をサーミスタカバー(51)で覆う構成としたため、自己発熱型のサーミスタ(41)の周りに冷媒の淀み空間を形成することができる。つまり、冷媒の流速の影響を受けて自己発熱型のサーミスタ(41)の放熱が促進されるのを防止することができる。これにより、自己発熱型のサーミスタ(41)による潤滑油の有無の誤検知を確実に防止することができる。
【0079】
これらの結果、自己発熱型のサーミスタ(41)によるスクロール圧縮機(10)内の潤滑油の検知精度を向上させることができる。
【0080】
−実施形態1の変形例−
本変形例では、実施形態1のサーミスタ(41)の取付部材(42)に代えて、図6に示すように、取付部材(47)を用いているようにしたものである。
【0081】
具体的に、本変形例の取付部材(47)は、テーパ状のネジ(48)によってケーシング(11)に取り付けられている。その他の構成・作用及び効果は、実施形態1と同様である。
【0082】
〈発明の実施形態2〉
次に、本発明の実施形態2について図面に基づいて説明する。図7〜図9に示すように、実施形態2に係るスクロール圧縮機(10)では、実施形態1に係るスクロール圧縮機(10)におけるサーミスタ(41)の位置と、サーミスタカバー(61)の構成が異なっている。
【0083】
本実施形態2に係るサーミスタ(41)は、図7に示すように、ケーシング(11)の底部、且つ外側寄りでケーシング(11)の内側面の近傍に設置されている。そして、サーミスタ(41)は、図8に示すように、サーミスタカバー(61)に覆われている。
【0084】
上記本実施形態2に係るサーミスタカバー(61)は、サーミスタ(41)を覆って該サーミスタ(41)の周りに冷媒の流れる空間を形成するためのものであって、本発明に係るカバー部材を構成している。上記サーミスタカバー(61)は、図7に示すように、ケーシング(11)の底部、且つ外側寄りでケーシング(11)の内側面の近傍に配置されたサーミスタ(41)を覆うように設置されている。
【0085】
上記サーミスタカバー(61)は、図9に示すように、下端面に下開口部(65)が形成された上下方向に延びる中空の円筒形状に形成され、その側面部には、複数のスリット(63)が形成されている。
【0086】
上記下開口部(65)は、サーミスタカバー(61)の下端面を構成する開口であって、本発明に係る油開口部を構成している。油貯留部(12)に貯留された潤滑油が増えて油面が上昇すると、潤滑油はサーミスタカバー(61)の下開口部(65)からサーミスタカバー(61)の内部に流入する(図9のハッチングを施した矢印方向)。潤滑油の油面が上昇するとサーミスタ(41)の周りに潤滑油が存在することになる。
【0087】
上記スリット(63)は、ケーシング(11)の内部を流れる冷媒をサーミスタ(41)の周りに供給するためのものであって、本発明に係る流体開口部を構成している。このスリット(63)は、図9に示すように、サーミスタカバー(61)の側面部の周囲に亘って上下左右に所定間隔を有して複数個形成されている。ケーシング(11)の内部を流れる冷媒は、各スリット(63)を通じてサーミスタカバー(61)の内部に流入する。つまり、サーミスタカバー(61)は、サーミスタ(41)の周りにスリット(63)を通じて流入された冷媒が流れる空間を形成している。
【0088】
尚、油貯留部(12)の潤滑油が増えて油面が上昇すると、潤滑油は各スリット(63)を介してサーミスタカバー(61)の内部と外部とに連通する。そして、各スリット(63)の上縁部には、下向きに延びる廂(64)が形成されている。
【0089】
上記廂(64)は、ケーシング(11)内の上部から底部に向かって流れる冷媒(図9の白抜きの矢印方向)がスリット(63)を通過してサーミスタカバー(61)の内部に流入するのを防止するためのものであって、本発明に係る廂部材を構成している。この廂(64)は、各スリット(63)の上縁部から下向き且つ外側に傾斜する方向に延びている。ケーシング(11)の内部を上部から底部に向かって流れる流速の速い冷媒は、廂(64)によってサーミスタカバー(61)の外側へ促され、各スリット(63)からサーミスタカバー(61)の内部に流入するのが防がれる。
【0090】
−運転動作−
圧縮された冷媒は、ケーシング(11)の内部を流れて、ケーシング(11)の上部から底部に流れる。ケーシング(11)の底部では、冷媒はケーシング(11)の内側面を下向き(図7の下向きの矢印方向)に流れる。次に、油貯留部(12)の油面上をケーシング(11)の中央部へ向いて(図7の横向きの矢印方向)に流れる。その後、クランク軸(24)に沿って上向き(図7の上向きの矢印方向)に流れる。尚、本実施形態2では、サーミスタ(41)は、ケーシング(11)の底部、且つ外側寄りでケーシング(11)の内側面の近傍にに設けられている。
【0091】
ケーシング(11)の内側面を上方から下向きに流れる冷媒は、サーミスタカバー(61)の上端面に衝突し、サーミスタカバー(61)の側面部に沿って下向きに流れる。下向きに流れる冷媒は、各スリット(63)に設けられた廂(64)に沿ってサーミスタカバー(61)の外側へ促される。つまり、各スリット(63)を介してサーミスタカバー(61)の内部に冷媒が直接的に流れ込むことはないため、サーミスタカバー(61)の周りには冷媒の淀み空間が形成される。その他の構成・作用及び効果は実施形態1と同様である。
【0092】
〈その他の実施形態〉
本発明は、上記実施形態1について、以下のような構成としてもよい。
【0093】
上記実施形態1は、サーミスタカバー(51)、及びスリット(53)に代えて、図10に示されるサーミスタカバー(71)、内側スリット(73a)、及び外側スリット(73b)を用いてもよい。このサーミスタカバー(71)は、外側カバー(71b)と、内側カバー(71a)とで構成されている。
【0094】
上記内側カバー(71a)は、サーミスタ(41)を覆って該サーミスタ(41)の周りに冷媒の流れる空間を形成するためのものであって、本発明に係る第1のカバー部材を構成している。上記内側カバー(71a)は、図示はしないが、クランク軸(24)の周囲に設置されたサーミスタ(41)を覆うように設置されている。
【0095】
上記内側カバー(71a)は、下端面に内側下開口部(75a)が形成された上下方向に延びる中空の円筒形状に形成され、その側面部に内側スリット(73a)が形成されている。
【0096】
上記内側下開口部(75a)は、内側カバー(71a)の下端面を構成する開口であって、本発明に係る油開口部を構成している。油貯留部(12)に貯留された潤滑油が増えて油面が上昇すると、潤滑油は内側カバー(71a)の内側下開口部(75a)から内側カバー(71a)の内部に流入する(図10のハッチングを施した矢印方向)。潤滑油の油面が上昇するとサーミスタ(41)の周りに潤滑油が存在することになる。
【0097】
上記内側スリット(73a)は、外側カバー(71b)内を流れる冷媒をサーミスタ(41)の周りに供給するためのものであって、本発明に係る第1の流体開口部を構成している。尚、図示はしないが、内側スリット(73a)の周縁部に廂等を形成してもよい。
【0098】
この内側スリット(73a)は、図10に示すように、内側カバー(71a)の側面部に上下方向に延びて形成されている。外側カバー(71b)の内部を流れる冷媒は、内側スリット(73a)を通じて内側カバー(71a)の内部に流入する。つまり、内側カバー(71a)は、サーミスタ(41)の周りの冷媒が流れる空間を形成している。
【0099】
尚、油貯留部(12)の潤滑油が増えて油面が上昇すると、潤滑油は内側スリット(73a)を介して内側カバー(71a)の内部と外部とに連通する。
【0100】
上記外側カバー(71b)は、上記内側カバー(71a)を覆うカバーであって、本発明に係る第2のカバー部材を構成している。
【0101】
上記外側カバー(71b)は、その内形が内側カバー(71a)の外形よりも大きく形成され、上記内側カバー(71a)を外側から覆っている。外側カバー(71b)は、下端面に外側下開口部(75b)が形成された上下方向に延びる中空の円筒形状に形成され、その側面部に外側スリット(73b)が形成されている。
【0102】
上記外側下開口部(75b)は、外側カバー(71b)の下端面を構成する開口である。油貯留部(12)に貯留された潤滑油が増えて油面が上昇すると、潤滑油は、外側下開口部(75b)から外側カバー(71b)の内部に流入する(図10のハッチングを施した矢印方向)。
【0103】
尚、上記内側下開口部(75a)と外側下開口部(75b)とは、本発明に係る油開口部を構成する下開口部(75)を形成している。
【0104】
上記外側スリット(73b)は、ケーシング(11)の内部を流れる冷媒を外側カバー(71b)の内部に流入させるためのものであって、本発明に係る第2の流体開口部を構成している。尚、図示はしないが、外側スリット(73b)の周縁部に廂等を形成してもよい。
【0105】
この外側スリット(73b)は、図10に示すようにサーミスタカバー(71)を側面部から視て内側スリット(73a)と重ならない位置(すなわち、ずれた位置)に形成されている。ケーシング(11)の内部を流れる冷媒は、外側スリット(73b)を通じて外側カバー(71b)の内部に流入する。つまり、外側カバー(71b)は、内側カバー(71a)の周りに冷媒が流れる空間を形成している。
【0106】
尚、油貯留部(12)の潤滑油が増えて油面が上昇すると、潤滑油は外側スリット(73b)を介して外側カバー(71b)の内部と外部とに連通する。
【0107】
尚、本形態に係るサーミスタカバー(71)は、図2に示すクランク軸(24)の回転に伴って円周方向に回転する冷媒の流れ(図2の矢印方向)に対し、サーミスタ(41)の周りに冷媒の淀み空間を形成するのに有効である。
【0108】
本形態によれば、外側スリット(73b)をサーミスタカバー(71)を側面部から視て内側スリット(73a)と重ならない位置に形成したため、外側カバー(71b)内に流入した冷媒が直接的に内側スリット(73a)を通じてサーミスタ(41)の内部に流入するのを確実に防止することができる。これにより、サーミスタ(41)の周りに冷媒の淀み空間を形成することができる。
【0109】
また、内側スリット(73a)と外側スリット(73b)とを設けたため、これらを介してサーミスタカバー(71)の内部と外部に潤滑油を連通させることができる。これにより、サーミスタ(41)の周りへの潤滑油の供給をスムーズにすることができる。
【0110】
これらの結果、自己発熱型のサーミスタ(41)によるスクロール圧縮機(10)内の潤滑油の検知精度を向上させることができる。その他の構成・作用、及び効果は実施形態1と同様である。尚、本形態は実施形態2についても適用することができる。
【0111】
その他、本発明に係るサーミスタカバーの形状やスリットの数、位置及び形状は、上記各実施形態に示された態様に限定されるものではない。
【0112】
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0113】
以上説明したように、本発明は、圧縮機の油面検知の手段について有用である。
【符号の説明】
【0114】
11 ケーシング
12 油貯留部
41 サーミスタ
51 サーミスタカバー(実施形態1)
53 スリット(実施形態1)
54 廂(実施形態1)
55 下開口部(実施形態1)
61 サーミスタカバー(実施形態2)
63 スリット(実施形態2)
64 廂(実施形態2)
65 下開口部(実施形態2)
71 サーミスタカバー(その他の形態)
71a 内側カバー
71b 外側カバー
73 スリット(その他の形態)
73a 内側スリット
73b 外側スリット
75 下開口部
75a 内側下開口部
75b 外側下開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油が貯留される油貯留部(12)を有し、内部を流体が流れるケーシング(11)を備えた圧縮機であって、
上記ケーシング(11)の内部に配置され、上記油貯留部(12)に貯留される潤滑油の有無を検知するサーミスタ(41)と、
上記サーミスタ(41)を覆い、該サーミスタ(41)の周りに潤滑油の流入可能なカバー部材(51,61,71)とを備えている
ことを特徴とする圧縮機。
【請求項2】
請求項1において、
上記カバー部材(51,61,71)は、上記潤滑油をサーミスタ(41)の周りに供給する油開口部(55,65,75)を備えている
ことを特徴とする圧縮機。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記カバー部材(51,61)は、上記流体をサーミスタ(41)の周りに供給する流体開口部(53,63)を備えている
ことを特徴とする圧縮機。
【請求項4】
請求項3において、
上記カバー部材(51,61)は、上記流体開口部(53,63)の周縁部に上記流体の流れ方向に沿って延びる廂部材(54,64)を備えている
ことを特徴とする圧縮機。
【請求項5】
請求項1又は2において、
上記カバー部材(71)は、上記サーミスタ(41)を覆う第1のカバー部材(71a)と、該第1のカバー部材(71a)を覆う第2のカバー部材(71b)とで構成されている
ことを特徴とする圧縮機。
【請求項6】
請求項5において、
上記第1のカバー部材(71a)は、上記流体をサーミスタ(41)の周りに供給する第1の流体開口部(73a)を備える一方、
上記第2のカバー部材(71b)は、上記第1の流体開口部(73a)とずれた位置に形成され、且つ上記流体を内部と連通させる第2の流体開口部(73b)を備えている
ことを特徴とする圧縮機。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1つにおいて、
上記サーミスタ(41)は、自己発熱型のサーミスタ(41)に構成されている
ことを特徴とする圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−149326(P2011−149326A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11116(P2010−11116)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】