説明

圧縮自己着火内燃機関の燃焼時期予測方法、該圧縮自己着火内燃機関の制御方法及び圧縮自己着火内燃機関システム

【課題】圧縮自己着火内燃機関1において、炭化水素燃料の燃焼時期を出来る限り正確に予測できるようにする。
【解決手段】炭化水素燃料に含まれる炭化水素成分の種類及び該種類毎の炭化水素燃料中の割合を特定する工程と、上記各種類毎に、上記内燃機関の燃焼室6内の温度に基づき、該温度の関数として各種類毎にそれぞれ設定した第1関数の値を算出する工程と、上記各種類毎に、当該種類の上記第1関数の値及び上記割合に基づき、該第1関数の値及び割合のいずれが増大しても値が増大する関数として各種類毎にそれぞれ設定した第2関数の値を算出する工程と、上記各種類毎の上記第2関数の値を積算する工程と、上記第2関数の値の積算値に基づき、上記内燃機関における上記炭化水素燃料の燃焼時期を、該積算値の増大に応じて遅くなるように予測する工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼室内の炭化水素燃料を圧縮自己着火させる圧縮自己着火内燃機関の燃焼時期予測方法、該圧縮自己着火内燃機関の制御方法及び圧縮自己着火内燃機関システムに関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、燃焼室内の炭化水素燃料(ガソリン等)を圧縮自己着火させる圧縮自己着火内燃機関(予混合圧縮自己着火(Homogeneous Charge Compression Ignition:HCCI)内燃機関とも呼ばれる)が知られている(例えば特許文献1及び2参照)。この圧縮自己着火内燃機関においては、予め燃焼室内で燃料と空気とを略均一に混合させておき、この混合気が、圧縮行程において圧縮されて温度上昇するのに伴い、燃料分子と酸素分子との間の衝突エネルギーが増大して、その衝突エネルギーが閾値を越えた時点で燃料の自己着火が生じる。この圧縮自己着火内燃機関においては、自己着火のタイミングに応じて、内燃機関の出力トルクが変動するため、自己着火の時期、つまり燃料の燃焼時期を正確に予測する必要がある。
【0003】
そこで、例えば非特許文献1に示されているように、燃料の自己着火のし易さを、その燃料のオクタン価と温度条件とに基づいて予測することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−095539号公報
【特許文献2】特開2001−355449号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】柴田 元、他1名,「炭化水素の自己着火特性と燃料のHCCIインデックスの考え方(第2報)」,自動車技術会 2007 春季大会 学術講演会前刷集 No.54−07,社団法人 自動車技術会,2007年5月,p.29−34
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記提案例の予測方法を検証した結果、同じオクタン価であっても、燃料成分の相違によって自己着火性に差があることが判明し、したがって、上記提案例の予測方法では、自己着火の時期、つまり燃料の燃焼時期を正確に予測することは困難である。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、圧縮自己着火内燃機関において、炭化水素燃料の燃焼時期を出来る限り正確に予測できるようにし、この予測結果に基づいて、上記内燃機関の出力トルクを安定させ得るようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明では、燃焼室内の炭化水素燃料を圧縮自己着火させる圧縮自己着火内燃機関における該炭化水素燃料の燃焼時期を予測する、圧縮自己着火内燃機関の燃焼時期予測方法を対象として、上記炭化水素燃料に含まれる炭化水素成分の種類及び該種類毎の炭化水素燃料中の割合を特定する工程と、上記特定した各種類毎に、上記内燃機関の燃焼室内の温度に基づき、該温度の関数として各種類毎にそれぞれ設定した第1関数の値を算出する工程と、上記特定した各種類毎に、当該種類の上記第1関数の値及び上記割合に基づき、該第1関数の値及び割合のいずれが増大しても値が増大する関数として各種類毎にそれぞれ設定した第2関数の値を算出する工程と、上記各種類毎の第2関数の値を積算する工程と、上記第2関数の値の積算値に基づき、上記内燃機関における上記炭化水素燃料の燃焼時期を、該積算値の増大に応じて遅くなるように予測する工程と、を備えているものとした。
【0009】
上記燃焼時期予測方法により、炭化水素成分の種類毎に、燃焼室内の温度(圧縮上死点温度が好ましい)に基づいて第1関数の値を求め、その第1関数の値とその種類の割合から第2関数の値を求め、各種類毎の第2関数の値の積算値に基づき、燃焼時期を予測する。これにより、炭化水素成分の種類毎に異なる温度依存性を反映した予測燃焼時期が得られ、炭化水素燃料の燃焼時期を正確に予測できるようになる。
【0010】
上記各種類毎の第1関数は、上記燃焼室内の温度と当該種類のモータ法オクタン価との関数であり、上記第1関数の値を算出する工程は、上記特定した各種類毎に、上記温度と当該種類のモータ法オクタン価とに基づき第1関数の値を算出する工程であることが好ましい。
【0011】
これにより、各種類毎のモータ法オクタン価を予測燃焼時期に反映することができ、炭化水素燃料の燃焼時期をより一層正確に予測できるようになる。
【0012】
上記圧縮自己着火内燃機関の燃焼時期予測方法は、燃焼室内の炭化水素燃料を圧縮自己着火させる圧縮自己着火内燃機関の制御方法及び圧縮自己着火内燃機関システムに適用することができる。すなわち、圧縮自己着火内燃機関の制御方法では、上記圧縮自己着火内燃機関の燃焼時期予測方法により予測された燃焼時期に基づき、上記内燃機関の制御パラメータを制御する工程を備えるものとする。
【0013】
また、圧縮自己着火内燃機関システムでは、燃焼室内の炭化水素燃料を圧縮自己着火させる圧縮自己着火内燃機関と、上記内燃機関を制御する制御器と、を備え、上記制御器は、上記炭化水素燃料に含まれる炭化水素成分の種類及び該種類毎の炭化水素燃料中の割合を特定し、かつ、上記特定した各種類毎に、上記内燃機関の燃焼室内の温度に基づき、該温度の関数として各種類毎にそれぞれ設定した第1関数の値を算出し、かつ、上記特定した各種類毎に、当該種類の上記第1関数の値及び上記割合に基づき、該第1関数の値及び割合のいずれが増大しても値が増大する関数として各種類毎にそれぞれ設定した第2関数の値を算出し、かつ、上記各種類毎の第2関数の値を積算し、かつ、上記第2関数の値の積算値に基づき、上記内燃機関における上記炭化水素燃料の燃焼時期を、該積算値の増大に応じて遅くなるように予測し、かつ、上記予測された燃焼時期に基づき、上記内燃機関の制御パラメータを制御するものであるとする。
【0014】
上記圧縮自己着火内燃機関の制御方法及び圧縮自己着火内燃機関システムにより、予測燃焼時期に応じて、燃焼時期が所定の時期になる(例えば着火時期が圧縮上死点付近になる)ように内燃機関の制御パラメータを制御することができ、この制御により、安定した出力トルクが得られるようになる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の圧縮自己着火内燃機関の燃焼時期予測方法によると、炭化水素燃料の燃焼時期を正確に予測できるようになる。また、本発明の圧縮自己着火内燃機関の制御方法及び圧縮自己着火内燃機関システムによると、上記燃焼時期予測方法により予測された燃焼時期に応じて、燃焼時期が所定の時期になるように内燃機関の制御パラメータを制御することで、内燃機関の出力トルクを安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る圧縮自己着火内燃機関システムの構成を示す概略図である。
【図2】エンジンの燃焼モード(HCCIモード又はSIモード)を選択するための制御マップの一例を示す図である。
【図3】エンジン制御ユニットによる制御動作を示すフローチャートである。
【図4】着火遅れ時間と燃料噴射時期との関係を示すグラフである。
【図5】(a)は吸気温度と係数C(詳しくはC/[Fuel])との関係を示すグラフであり、(b)は吸気温度と係数C(詳しくはC/[Fuel])との関係を示すグラフであり、(c)は吸気温度と係数C(詳しくはC/[Fuel])との関係を示すグラフである。
【図6】各種燃料について、吸気温度を変化させたときの、圧縮上死点後のクランク角度と熱発生率との関係を示すグラフである。
【図7】パラフィン系炭化水素のみを含む燃料について、着火遅れ時間と圧縮上死点における燃焼室内の燃料モル密度との関係を調べた結果を示すグラフである。
【図8】パラフィン系炭化水素のみを含む燃料について、パラフィンモデル式を用いた予測結果と実験結果との比較を示すグラフである。
【図9】70RON混合燃料について、吸気温度を変化させたときの、パラフィンモデル式を用いた予測結果と実験結果との比較を示すグラフである。
【図10】70RON混合燃料についての、混合燃料モデル式を用いた予測結果と実験結果との比較を示すグラフである。
【図11】90RON燃料及びレギュラーガソリンについての、混合燃料モデル式を用いた予測結果と実験結果との比較を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る圧縮自己着火内燃機関システムを示し、この圧縮自己着火内燃機関システムは、自動車等の車両に搭載された、圧縮自己着火内燃機関(予混合圧縮自己着火内燃機関とも呼ばれる)としてのエンジン1と、このエンジン1を制御する制御器としてのエンジン制御ユニット30とを備えている。
【0019】
エンジン1は、炭化水素燃料(特にガソリン)を使用する多気筒エンジンであって、図1の紙面に直交する方向に直列配置された複数の気筒2(例えば、4気筒、6気筒、…)を有するシリンダブロック3と、このシリンダブロック3の上側に配置されたシリンダヘッド4とを備えている。各気筒2にはピストン5が嵌挿され、ピストン5の上面とシリンダヘッド4の下面との間に所定容積の燃焼室6が形成されている。ピストン5は、コネクティングロッド8を介して、クランク軸7と連結されている。クランク軸7は、ピストン5の往復運動に伴って、該クランク軸7の中心軸回りに回転する。
【0020】
上記シリンダヘッド4内には、気筒2毎に、燃焼室6の天井部に開口する吸気ポート9と排気ポート10とがそれぞれ形成されている。吸気ポート9は、燃焼室6の天井部から斜め上方に延びてシリンダヘッド4の吸気側(図1では右側)の側壁に開口し、排気ポート10は排気側(図1では左側)の側壁に開口している。吸気ポート9及び排気ポート10の側壁の各開口部には、それぞれ、吸気通路20及び排気通路25が接続されている。
【0021】
シリンダヘッド4には、気筒2毎に、吸気弁11及び排気弁12がそれぞれ設けられている。そして、吸気ポート9及び排気ポート10は、それぞれ、吸気弁11及び排気弁12によって開閉される。吸気弁11及び排気弁12は、それぞれ、シリンダヘッド4に配設された一対のカムシャフト(図示せず)等を含む動弁機構13により、クランク軸7の回転に同期して開閉駆動される。
【0022】
吸気弁11及び排気弁12の各動弁機構13には、それぞれ、可変バルブリフト機構(以下、VVL(Variable Valve Lift)という)14と、可変バルブタイミング機構(以下、VVT(Variable Valve Timing)という)15とが組み込まれている。VVL14は、カムシャフト(図示せず)に取り付けられたカムの揺動軌跡をエンジン制御ユニット30からの指令に基づいて変更することにより、吸気弁11及び排気弁12のリフト量(開弁量)をエンジンの運転状態に応じて変更する。
【0023】
VVT15は、クランク軸7に対するカムシャフト(図示せず)の回転位相をエンジン制御ユニット30からの指令に基づいて変更することにより、吸気弁11及び排気弁12の開閉タイミング(位相角度)をエンジンの運転状態に応じて変更する。そして、VVL14及びVVT15の作動に応じて、吸気弁11及び排気弁12のリフト特性が変更され、その結果、各気筒2への吸入空気量や残留既燃ガス(内部EGR)の量が調整される。なお、VVL14及びVVT15は、一般に用いられているものであって当業者には公知であるので、その詳しい説明は省略する。
【0024】
また、シリンダヘッド4には、各気筒2の燃焼室6に臨むように点火プラグ16が設けられている。点火プラグ16は、その上方に設けられた点火回路17からの給電に応じて、所定のタイミングで放電(火花点火)を行う。さらに、シリンダヘッド4には、吸気側の側方から燃焼室6に臨むように燃料噴射弁18が設けられている。燃料噴射弁18へは、高圧燃料ポンプ19によって、燃料通路を介して、燃料タンクからの燃料が供給される。なお、高圧燃料ポンプ19は、例えばスピール弁によって駆動され、燃料噴射弁18への燃料の供給圧すなわち燃圧を低圧から高圧までの広い範囲で自在に変化させることができる。そして、燃料噴射弁18は、所定の噴射タイミング(吸気行程等)で燃焼室6に対して燃料を直接噴射し、燃焼室6内に所定の空燃比の混合気を生成する。
【0025】
エンジン1の吸気側には、吸気通路20が配設されている。空気の流れ方向(矢印方向)にみて、吸気通路20の下流端は、シリンダヘッド4の吸気側の側壁に接続されていて、吸気ポート9と連通している。そして、エアクリーナ(図示せず)によりダスト等の異物が除去された空気が、吸気通路20と吸気ポート9とを順に通って、各気筒2の燃焼室6に供給される。
【0026】
吸気通路20の途中には、サージタンク21が配設されている。サージタンク21よりも上流側の吸気通路20は、全気筒に共通な単一の通路(以下、共通吸気通路部という)となっている。この共通吸気通路部には、例えばバイワイヤー化した電子制御式のスロットル弁22が配設されている。一方、サージタンク21よりも下流側の吸気通路20は、気筒2毎に分岐した通路(以下、分岐吸気通路部という)となっている。そして、スロットル弁22により流量が調整された空気が、分岐吸気通路部を通って、各気筒2の燃焼室6に導入される。
【0027】
エンジン1の排気側には、排気通路25が配設されている。排気ガスの流れ方向(矢印方向)にみて、排気通路25の上流端は、シリンダヘッド4の排気側の側壁に接続されていて、排気ポート10と連通している。そして、各気筒2の燃焼室6で混合気が燃焼した後、その燃焼によって生成された既燃ガス(排気ガス)が排気通路25を通って外部に排出される。排気通路25の途中には、排気ガス中の有害成分を浄化する三元触媒を用いた触媒コンバータ27が設けられている。このエンジン1では、NOx生成量が少ないので、NOxの処理効率を高めるための特別な装置、例えばNOxトラップ触媒等は設けられていない。
【0028】
上記エンジン制御ユニット30は、中央算出処理装置(CPU)、各種メモリ等を有するコンピュータで構成されている。このエンジン制御ユニット30は、クランク軸7の回転角(クランク角度)を検出するクランク角センサ31、吸気通路20内を流れる空気の量を検出するエアフローセンサ32、アクセルペダル(図示せず)の操作量すなわちアクセル開度を検出するアクセル開度センサ33、各気筒2の燃焼室6内の圧力すなわち筒内圧力を検出する筒内圧センサ34、及び、当該エンジン1を搭載している車両の速度を検出する車速センサ35と電気的に接続されている。ここで、筒内圧34センサは、点火プラグ16と一体形成されたものであって、点火プラグ16内に内蔵されている。なお、筒内圧センサ34を、燃料噴射弁18と一体形成してもよい。
【0029】
また、エンジン制御ユニット30は、サージタンク21内の空気の温度すなわち各気筒2の燃焼室6に供給される空気の温度(以下、吸気温度という)を検出する吸気温度センサ36、高圧燃料ポンプ19から燃料噴射弁18に供給される燃料の圧力ないしは燃料噴射圧力を検出する燃圧センサ37、及び、上記車両の燃料タンク内に設けられた燃料成分検出センサ38と電気的に接続されている。これら各種センサ31〜38によって検出された各制御情報が、それぞれ電気信号としてエンジン制御ユニット30に入力される。
【0030】
上記燃料成分検出センサ38は、上燃料タンク内の炭化水素燃料に含まれる炭化水素成分の種類及び該種類毎の炭化水素燃料中の割合を検出するものである。本実施形態では、パラフィン系炭化水素、アロマティクス系炭化水素、オレフィン系炭化水素及びナフテン系炭化水素の4種類の炭化水素成分を検出する。
【0031】
パラフィン系炭化水素は、炭素原子の数が20以上のアルカン(鎖式飽和炭化水素)の総称であり、ノルマルパラフィンとイソパラフィンとを含む。
【0032】
アロマティクス系炭化水素(芳香族炭化水素)は、一重結合と二重結合とが交互に並び、電子が非局在化した6つの炭素原子からなる単環又は複数の平面環をユニットとして構成されている。最も構造が単純なアロマティクス系炭化水素はベンゼンであり、ベンゼン環として知られている6つの炭素からなる環状化合物である。
【0033】
オレフィン系炭化水素(アルケン)は、化学式C2n(nは2以上の自然数)で表される有機化合物であって、不飽和炭化水素の一種である。エチレン系炭化水素とも呼ばれる。C−C間の結合の中に二重結合を1つ持つ。
【0034】
ナフテン系炭化水素は、分子中に環状構造を持つ飽和炭化水素である。シクロパラフィン系炭化水素とも呼ばれ、オレフィン系炭化水素と同一の分子式C2nで表される。炭素数5のシクロペンタンや炭素数6のシクロヘキサン等がある。
【0035】
上記エンジン制御ユニット30は、上記各種センサ31〜38の検出値に基づいて、エンジン1の運転状態に応じて、VVL14、VVT15、点火回路17、燃料噴射弁18、高圧燃料ポンプ19、スロットル弁22等の動作を制御して、エンジン1の種々の制御を行う。例えば、エンジン制御ユニット30は、エンジン1の運転状態に応じて、VVL14及びVVT15を制御して吸気弁11及び排気弁12のリフト特性を変更することにより、エンジン1の吸排気に関する動作を制御したり、燃料噴射弁18の燃料噴射量、燃料圧力(燃料噴射圧力)、噴射パルス幅及び燃料噴射時期、高圧燃料ポンプ19の駆動状態及び吐出圧等を制御したりする。
【0036】
エンジン制御ユニット30は、点火プラグ16を用いることなく吸気行程中に生成された混合気(炭化水素燃料)を圧縮上死点付近で圧縮自己着火させる均一充填圧縮自己着火モード(以下、HCCI(Homogeneous Charge Compression Ignition)モードという)と、点火プラグ16を用いて火花点火により混合気を強制的に着火させる火花点火モード(以下、SI(Spark Ignition)モードという)との間で、燃焼モードを切り替える。
【0037】
ここで、エンジン制御ユニット30による制御動作を図3のフローチャートに基づいて説明する。
【0038】
最初のステップS1で、各種信号を読み込み、次のステップS2で、アクセル開度センサ3からのアクセル開度と、クランク角センサ31からのクランク角度から求まるエンジン回転速度とに基づき、エンジン負荷(目標トルク)を算出する。そして、次のステップS3で、そのエンジン回転速度及びエンジン負荷に基づいて、エンジン1の運転状態が、図2に示す制御マップにおいて、HCCI領域及びSI領域のうちいずれの運転領域に該当するかを判定する。
【0039】
上記制御マップには、図2に示すように、SI領域及びHCCI領域の2つの運転領域が設定されている。そして、エンジン1の運転状態がSI領域及びHCCI領域のいずれにあるかに応じて、エンジンの燃焼モードが選択される。具体的には、高回転領域又は高負荷領域に設定されたSI領域ではSIモードが選択され、低回転・低負荷領域に設定されたHCCI領域ではHCCIモードが選択される。
【0040】
次のステップS4で、エンジン1の運転状態がHCCI領域にあるか否かを判定する。このステップS4の判定がNOであるとき、つまりエンジン1の運転状態がSI領域にあるときには、ステップS5に進んで、燃焼モードをSIモードに設定するとともに、エンジン回転速度、エンジン負荷等に基づいて、SIモードに対応した、エンジン1の各種制御パラメータを算出する。ステップS5の後はリターンする。
【0041】
SIモードでの運転時には、各気筒サイクルにおいて、排気弁12の開弁期間と吸気弁11の開弁期間とが、排気上死点(排気行程と吸気行程の間の上死点)付近で両弁11,12の開弁期間が若干オーバーラップするように設定される。そして、排気上死点後において、吸気弁11が開弁された後に燃料噴射弁18によって1回だけ通常の燃料噴射が行われる。この後、圧縮上死点(圧縮行程と膨張行程との間の上死点)付近で点火プラグ16により混合気が点火され、混合気ないしは燃料が火炎伝播により燃焼する。
【0042】
一方、ステップS4の判定がYESであるとき、つまりエンジン1の運転状態がHCCI領域にあるときには、ステップS6に進んで、燃焼モードをHCCIモードに設定するとともに、エンジン回転速度、エンジン負荷等に基づいて、HCCIモードに対応した、エンジン1の各種制御パラメータを算出する。
【0043】
HCCIモードでの運転時には、排気弁12の開弁期間と吸気弁11の開弁期間とが、排気上死点付近で両弁11,12が共に閉弁されるネガティブバルブオーバーラップ期間(NVO期間)が存在するように設定される。そして、排気上死点後においてNVO期間が終了して吸気弁11が開弁された後に、燃料噴射弁18による燃料の噴射が行われる。この噴射された燃料は、燃焼室6内において混合気を形成し、その混合気が圧縮上死点付近においてそれ自体で(すなわち、他の点火手段又は着火手段を介することなく)自己着火する。その結果、混合気(燃料)は、火炎伝播を生じさせることなく急速に燃焼する。この場合、燃焼温度が火花点火の場合に比べて低いので、NOx発生量が大幅に低減される。
【0044】
本実施形態では、HCCIモードでの運転時において、炭化水素燃料の炭化水素成分の種類及び該種類毎の炭化水素燃料中の割合並びに燃焼室6内の温度(本実施形態では、圧縮上死点温度TTDCであり、この圧縮上死点温度TTDCは、筒内圧センサ35により検出された圧力から求めるか、又は、吸気温度センサ36により検出された吸気温度と有効圧縮比とから求める(ステップS7参照))に基づいて、炭化水素燃料の燃焼時期(Δt)を予測する(ステップS8参照)。
【0045】
上記燃焼時期の予測は、以下の如く行う。すなわち、エンジン制御ユニット30は、最初に、燃料成分検出センサ38による検出結果に基づいて、炭化水素燃料に含まれる炭化水素成分の種類及び該種類毎の炭化水素燃料中の割合を特定する。尚、燃料成分検出センサ38による検出によらないで、予め定めた種類及び割合に特定してもよい。このことは特に、使用する燃料が決まっている場合に有効である。
【0046】
次いで、エンジン制御ユニット30は、上記特定した炭化水素成分の各種類毎に、燃焼室6内の圧縮上死点温度TTDCに基づき、該圧縮上死点温度の関数として各種類毎にそれぞれ設定した第1関数F1の値を算出する。ここで、iは、1〜4の自然数であり、i=1は、パラフィン系炭化水素を示し、i=2は、アロマティクス系炭化水素を示し、i=3は、オレフィン系炭化水素を示し、i=4は、ナフテン系炭化水素を示す。例えばF1は、パラフィン系炭化水素について設定された第1関数である。
【0047】
上記各種類毎の第1関数F1は、本実施形態では、式(1)で表される。
【0048】
F1=ATTDCexp(f(MON)/TTDC) …(1)
ここで、A=4.60×10−3であり、n=5.71である。また、f(MON)は、式(2)で表される、MONの関数である。MONは、上記各種類毎のモータ法オクタン価である。
【0049】
f(MON)=−71.4×MON+1.09×10 …(2)
したがって、本実施形態では、各種類毎の第1関数F1は、圧縮上死点温度TTDCと当該種類のモータ法オクタン価MONとの関数であるといえる。
【0050】
続いて、エンジン制御ユニット30は、上記特定した各種類毎に、当該種類の上記第1関数の値及び上記割合に基づき、該第1関数の値及び割合のいずれが増大しても値が増大する関数として各種類毎にそれぞれ設定した第2関数F2の値を算出する。この各種類毎の第1関数F2は、本実施形態では、式(3)で表される。
【0051】
F2=C×F1×M …(3)
ここで、M=[Fuelg(MONi)であり、[Fuel]は、圧縮上死点における燃焼室6内の上記各種類のモル密度である。この各種類のモル密度は、上記割合及び空燃比並びに圧縮上死点における燃焼室6の体積から求まる。Cについては後述する。g(MON)は、下記の式(4)で表される、MONの関数である。
【0052】
g(MON)=−0.400×10−2×MON+0.393 …(4)
次いで、エンジン制御ユニット30は、上記各種類毎の第2関数F2の値を積算する。この積算値に基づき、エンジン1における炭化水素燃料の燃焼時期を、該積算値の増大に応じて遅くなるように予測する。本実施形態では、炭化水素燃料の燃焼時期を、圧縮上死点前90°クランク角度から燃料の質量燃焼割合(MBF)50%時期までの時間Δt(以下、着火遅れ時間という)で予測する。この着火遅れ時間Δtの逆数が上記積算値となる。すなわち、下記の式(5)から着火遅れ時間Δtが求まる。ここで、式(5)において、炭化水素燃料に含まれる炭化水素成分の種類及び該種類毎の炭化水素燃料中の割合を特定した結果、特定されなかった種類(つまり燃料に含まれていない種類)の第2関数F2の値は0である。
【0053】
1/Δt=F2+F2+F2+F2
=C×F1×M+C×F1×M
+C×F1×M+C×F1×M …(5)
は、燃料に通常含まれているパラフィン系炭化水素の反応に対する各種類の反応促進効果又は反応抑制効果(相互作用)を示す係数であり、係数Cは1とする。係数C、C及びCは、それぞれアロマティクス系炭化水素、オレフィン系炭化水素及びナフテン系炭化水素のパラフィン系炭化水素に対する相互作用を示すものであり、係数C、C及びCが正であれば、パラフィン系炭化水素の反応に対して促進効果を示し、上記積算値が増大する(着火遅れ時間Δtが小さくなって燃焼時期が早くなる)。一方、係数C、C及びCが負であれば、パラフィン系炭化水素の反応に対して抑制効果を示し、上記積算値が減少する(着火遅れ時間Δtが大きくなって燃焼時期が遅くなる)。係数C、C及びCの値は、上記着火遅れ時間Δtの測定結果と計算結果(予測結果)との差が小さくなるように求めることができて、それぞれ図5(a)〜(c)に示す如く、圧縮上死点における燃焼室6内の当該種類のモル密度が一定の条件で、吸気温度に応じて変化する(吸気温度が高いほど係数が大きくなる)。アロマティクス系炭化水素は、吸気温度によらず常に反応抑制効果を示す。オレフィン系炭化水素及びナフテン系炭化水素は、吸気温度が所定温度よりも高いときには、反応促進効果を示し、所定温度以下のときには、反応抑制効果を示す。
【0054】
エンジン制御ユニット30は、上記の如く式(5)より着火遅れ時間Δtを算出した後、ステップS9において、その算出した着火遅れ時間Δtに基づき、燃焼時期が所定の時期になる(例えば着火時期が圧縮上死点付近になる)ように、エンジン1の各種制御パラメータを制御する(本実施形態では、先にステップS6で算出した制御パラメータを補正する)。例えば、図4に示すように、着火遅れ時間Δtが大きい(燃焼時期が遅い)ほど、燃料噴射時期を進角させて、燃料と空気とがより均一に混ざるようにする。或いは、着火遅れ時間Δtが大きいほど、筒内温度が高くなるようにする。筒内温度を高くするには、有効圧縮比を大きくしたり、残留既燃ガス(内部EGR)の量を多くしたりすればよい。ステップS9の後はリターンする。
【0055】
ここで、上記式(5)を導いた経緯及び実験結果を説明することで、式(5)から炭化水素燃料の燃焼時期を正確に予測できることを説明する。
【0056】
実験に用いたエンジンは、直噴式のDOHC4バルブエンジンであって、ボア径が87.5mm、ストロークが83.1mmであり、幾何学的圧縮比が14であり、燃焼室はペントルーフタイプである。そして、エンジン冷却水温88℃、オイル温度90℃、エンジン回転速度1500rpmという運転条件で自然吸気で運転した。また、現象を理解しやすいように外部吸気加熱装置を用いて吸入空気温度を上昇させた(100℃〜225℃)。空燃比は40〜85である。
【0057】
使用した燃料を表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
パラフィン系炭化水素のみで構成された70RON(リサーチ法オクタン価)のPara70、80RONのPara80及び90RONのPara90に加え、70RONでは、パラフィン系炭化水素にアロマティクス系炭化水素、オレフィン系炭化水素及びナフテン系炭化水素をそれぞれ体積割合で約30%混合したArom70、Ole70及びNaph70を作製した。また、90RONでは、パラフィン系炭化水素にアロマティクス系炭化水素を体積割合で約30%混合したArom90と、パラフィン系炭化水素にアロマティクス系炭化水素を体積割合で約30%混合した燃料に、オレフィン系炭化水素及びナフテン系炭化水素をそれぞれ体積割合で約20%混合したArom−Ole90及びArom−Naph90とを作製した。さらに、燃料による混合気形成の差異が生じないように、各種燃料の蒸発や微粒化に関係する蒸留特性、動粘度及び表面張力は同等となるように調製した。
【0060】
吸気温度(Tin)を225℃から100℃まで変化させ、全負荷(WOT)にて運転可能な空燃比(A/F)で、圧縮上死点後のクランク角度と熱発生率との関係を調べた。その結果を図6(a)〜(e)に示す。同一RONの燃料であるにも拘わらず、燃料成分が異なると着火性も異なることが分かる。すなわち、70RON燃料においては、吸気温度225℃でOle70及びNaph70の燃焼時期はPara70に対して進角し、Arom70の燃焼時期はPara70と同等であった。しかし、吸気温度の低下に伴い、Naph70の燃焼時期は著しく遅角し、吸気温度150℃以下では運転できなかった。また、吸気温度100℃では、Ole70及びArom70の燃焼時期はPara70に対して進角した。また、90RON燃料においては、吸気温度225℃のみで安定した運転が可能であり、このときの燃料成分間の着火性の傾向は70RON燃料の吸気温度225℃のときと同等であった。
【0061】
着火特性に対する燃料成分の影響を明らかにするために、まず、パラフィン系炭化水素のみを含む燃料(以下、パラフィン系燃料という)に対して、MONを用いてアレニウス型の式で燃焼時期を定式化し、次に、このモデル式を用いて、複数の種類を混合した混合燃料の燃焼時期を予測して、この予測を実験結果と比較することで、燃料成分の影響を明らかにした。
【0062】
図7は、パラフィン系燃料について、着火遅れ時間Δt(圧縮上死点前90°クランク角度からMBF50%時期までの時間)と、圧縮上死点における燃焼室6内の燃料モル密度[Fuel]との関係を調べた結果を示す。この関係をアレニウス型の式(6)で定式化した。
【0063】
1/Δt=ATexp(−E/RT)[Oα[Fuel]β …(6)
ここで、Eは活性化エネルギ、Rは気体定数、Tは筒内温度、[O]は燃焼室内の酸素モル密度、[Fuel]は燃焼室内の燃料モル密度である。筒内温度T、[O]及び[Fuel]は圧縮上死点での値とし、MONによる着火遅れ時間の変化に対応するために、活性化温度(−E/R)と燃料モル密度のべき乗βとをMONの関数とした。また、吸気温度によって酸素モル密度が決まるため、べき乗αは0とした。そして、図7の関係に合うようにすると、式(7)(以下、パラフィンモデル式という)のようになる。
【0064】
1/Δt
=ATTDCexp(f(MON)/TTDC)[Fuel]g(MON) …(7)
ここで、A=4.60×10−3であり、n=5.71である。また、f(MON)及びg(MON)は、それぞれ式(8)及び式(9)で表される、MONの関数である。
【0065】
f(MON)=−71.4×MON+1.09×10 …(8)
g(MON)=−0.400×10−2×MON+0.393 …(9)
図8は、パラフィン系燃料について、上記パラフィンモデル式を用いた予測結果(MBF50%となる圧縮上死点後の予測クランク角度)と実験結果(MBF50%となる圧縮上死点後の実測クランク角度)との比較を示す。図8には、予測結果と実験結果とが一致するラインを引いている。この比較より、パラフィン系燃料については、圧縮上死点温度及びMONを指標とすることで、燃焼時期を正確に予測できることが分かる。
【0066】
図9(a)〜(f)は、70RON混合燃料について、上記パラフィンモデル式を用いた予測結果と実験結果との比較を、吸気温度毎に示すものである。これより、混合燃料の燃焼時期が、同一MONのパラフィン系燃料に比べて促進されているのか、又は、抑制されているのかを知ることができる。吸気温度が225℃では、どの燃料もパラフィン系燃料と同等の着火特性となっているが、吸気温度の低下に伴って抑制効果が働き、その効果はNaph70で最も大きいことが分かる。
【0067】
そこで、上記パラフィンモデル式を拡張して、パラフィン系燃料の反応速度に加えて、他の燃料成分の反応速度をも考慮する(パラフィンモデル式と同じモデル式とする)とともに、パラフィン系燃料の反応に対する促進効果又は抑制効果を示す係数をCiとして、上記式(5)を導いた。以下、式(5)を混合燃料モデル式という。
【0068】
ここで、Δtを計算する際、MON、MON、MON及びMONは、表2に示した値を用いた。すなわち、実験に用いたアロマティクス系炭化水素、オレフィン系炭化水素及びナフテン系炭化水素を、トルエン、1−ペンテン及びシクロヘキサンでそれぞれ代表させ、パラフィン系燃料のMONは、各種混合燃料のMONと各燃料成分の体積割合とから算出した。
【0069】
【表2】

【0070】
そして、図9(a)〜(f)に示した混合燃料の実験結果に対して、予測誤差が小さくなるように、係数Cを最適化した。この最適化した係数C、C及びCの値が、上記の図5(a)〜(c)に示す値である。そして、70RON混合燃料について、上記最適化した係数Cを含む混合燃料モデル式を用いた予測結果と実験結果との比較を、図10に示す。この比較より、70RON混合燃料の燃焼時期を、クランク角度で±2°以内で予測できることが分かる。
【0071】
さらに、90RON燃料及び市場で取引されているレギュラーガソリンについて、上記最適化した係数Cを含む混合燃料モデル式を用いた予測結果と実験結果とを比較した。今回用いたレギュラーガソリンは、パラフィン系燃料をベースに、アロマティクス系炭化水素、オレフィン系炭化水素及びナフテン系炭化水素を全て含むものである。このレギュラーガソリンのRONは90.9であり、MONは82.4であり、成分分析により得られた各燃料成分の体積割合を計算に用いた。この結果を図11に示す。この結果より、90RON燃料及びレギュラーガソリンの燃焼時期を、クランク角度で±3°以内で予測することができる。
【0072】
したがって、上記混合燃料モデル式より、炭化水素燃料の燃焼時期を正確に予測することができる。また、この予測方法により予測された燃焼時期に応じて、燃焼時期が所定の時期になるように内燃機関の制御パラメータを制御することで、内燃機関の出力トルクを安定させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、燃焼室内の炭化水素燃料を圧縮自己着火させる圧縮自己着火内燃機関の燃焼時期予測方法に有用であり、この圧縮自己着火内燃機関の制御方法及び圧縮自己着火内燃機関システムにも有用である。
【符号の説明】
【0074】
1 エンジン(圧縮自己着火内燃機関)
6 燃焼室
30 エンジン制御ユニット(制御器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室内の炭化水素燃料を圧縮自己着火させる圧縮自己着火内燃機関における該炭化水素燃料の燃焼時期を予測する、圧縮自己着火内燃機関の燃焼時期予測方法であって、
上記炭化水素燃料に含まれる炭化水素成分の種類及び該種類毎の炭化水素燃料中の割合を特定する工程と、
上記特定した各種類毎に、上記内燃機関の燃焼室内の温度に基づき、該温度の関数として各種類毎にそれぞれ設定した第1関数の値を算出する工程と、
上記特定した各種類毎に、当該種類の上記第1関数の値及び上記割合に基づき、該第1関数の値及び割合のいずれが増大しても値が増大する関数として各種類毎にそれぞれ設定した第2関数の値を算出する工程と、
上記各種類毎の第2関数の値を積算する工程と、
上記第2関数の値の積算値に基づき、上記内燃機関における上記炭化水素燃料の燃焼時期を、該積算値の増大に応じて遅くなるように予測する工程と、を備えていることを特徴とする圧縮自己着火内燃機関の燃焼時期予測方法。
【請求項2】
請求項1記載の圧縮自己着火内燃機関の燃焼時期予測方法において、
上記各種類毎の第1関数は、上記燃焼室内の温度と当該種類のモータ法オクタン価との関数であり、
上記第1関数の値を算出する工程は、上記特定した各種類毎に、上記温度と当該種類のモータ法オクタン価とに基づき第1関数の値を算出する工程であることを特徴とする圧縮自己着火内燃機関の燃焼時期予測方法。
【請求項3】
燃焼室内の炭化水素燃料を圧縮自己着火させる圧縮自己着火内燃機関の制御方法であって、
請求項1又は2記載の圧縮自己着火内燃機関の燃焼時期予測方法により予測された燃焼時期に基づき、上記内燃機関の制御パラメータを制御する工程を備えていることを特徴とする圧縮自己着火内燃機関の制御方法。
【請求項4】
燃焼室内の炭化水素燃料を圧縮自己着火させる圧縮自己着火内燃機関と、
上記内燃機関を制御する制御器と、を備えた圧縮自己着火内燃機関システムであって、
上記制御器は、
上記炭化水素燃料に含まれる炭化水素成分の種類及び該種類毎の炭化水素燃料中の割合を特定し、かつ、
上記特定した各種類毎に、上記内燃機関の燃焼室内の温度に基づき、該温度の関数として各種類毎にそれぞれ設定した第1関数の値を算出し、かつ、
上記特定した各種類毎に、当該種類の上記第1関数の値及び上記割合に基づき、該第1関数の値及び割合のいずれが増大しても値が増大する関数として各種類毎にそれぞれ設定した第2関数の値を算出し、かつ、
上記各種類毎の第2関数の値を積算し、かつ、
上記第2関数の値の積算値に基づき、上記内燃機関における上記炭化水素燃料の燃焼時期を、該積算値の増大に応じて遅くなるように予測し、かつ、
上記予測された燃焼時期に基づき、上記内燃機関の制御パラメータを制御するものである、ことを特徴とする圧縮自己着火内燃機関システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−80395(P2011−80395A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232184(P2009−232184)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000105567)コスモ石油株式会社 (443)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】