説明

圧電デバイスの製造方法及び素子基板

【課題】基板の材料が限定されず、生産性を向上させることができる圧電デバイスの製造方法及び素子基板を提供する。
【解決手段】基板10上に素子領域Aを区画する隔壁2を設ける工程と、素子領域Aに圧電デバイス(SAW素子100)を設ける工程と、隔壁2にダイシングブレードを導入する溝2bを形成する工程と、隔壁2上に、素子領域Aに連通する第1開口3aと溝2bに連通する第2開口3bとを有する上部隔壁3を設ける工程と、第1開口3aを介して圧電デバイスの周波数調整を行う工程と、溝2bにダイシングブレードを導入して圧電デバイスを個片化する工程と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電デバイスの製造方法及び素子基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、表面弾性波素子等、圧電材料層を備えた圧電デバイスを製造する方法として、圧電材料層の膜厚調整を行って周波数調整を行う方法が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。また、素子基板にダイシングブレードを導入する溝を形成する方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
特許文献1では、水晶基板に水晶振動子片を形成した後、基板全体をガラス等の蓋体で封止する。そして、レーザートリミングにより水晶振動子片の配線パターン部分を除去する。これにより、水晶振動子片の電気的な各種成分値を変化させ、水晶振動子片の周波数調整を行っている。
【0004】
特許文献2では、パッケージに対して接着剤を用いて圧電素子を固定した後、周波数調整を行う領域に対応する部分に開口部を有するマスクを用意する。そして、そのマスクを介して圧電素子にプラズマを照射する。これにより、圧電素子の膜厚を減少させ、圧電素子の周波数調整を行っている。
【0005】
特許文献3では、圧電デバイスを形成した後、ダイシングを行う部分のみにエッチングを行い、ダイシングブレード導入用の溝を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】2006−157510号公報
【特許文献2】2005−354507号公報
【特許文献3】1993−36648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1は、レーザーを用いた周波数調整であるため、透光性材料のパッケージや基板を用いる必要があるという課題がある。また、特許文献2は、個片化した素子毎に周波数調整を行うことから、生産性を向上させることが困難であるという課題がある。また、特許文献3は、素子の形成と溝の形成とを別の工程で行うことから、生産性が低いという課題がある。
【0008】
そこで、本発明は、基板の材料が限定されず、生産性を向上させることができる圧電デバイスの製造方法及び素子基板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の圧電デバイスの製造方法は、圧電材料層を備えた圧電デバイスの製造方法であって、基板上に素子領域を区画する隔壁を設ける工程と、前記素子領域に前記圧電デバイスを設ける工程と、前記隔壁にダイシングブレードを導入する溝を形成する工程と、前記隔壁上に、前記素子領域に連通する第1開口と前記溝に連通する第2開口とを有する上部隔壁を設ける工程と、前記第1開口を介して前記圧電デバイスの周波数調整を行う工程と、前記溝に前記ダイシングブレードを導入して前記圧電デバイスを個片化する工程と、を有することを特徴とする。
このように製造することで、基板の材料に関係なく圧電デバイスの周波数調整を行うことができる。また、基板に形成された複数の圧電デバイスの周波数調整を一括して行ってから圧電デバイスを個片化することで、生産性を向上させることができる。
【0010】
また、本発明の圧電デバイスの製造方法は、前記上部隔壁を介して、前記溝の形成と前記周波数調整とを一括して行うことを特徴とする。
このように製造することで、工程数を減少させ、生産性をさらに向上させることができる。
【0011】
また、本発明の圧電デバイスの製造方法は、前記隔壁の形成と前記溝の形成とを一括して行った後、前記上部隔壁を形成することを特徴とする。
このように製造することで、工程数を減少させ、生産性をさらに向上させることができる。
【0012】
また、本発明の圧電デバイスの製造方法は、前記基板と前記隔壁とが一体的に設けられていることを特徴とする。
このように製造することで、基板上に精度よく隔壁を形成することができる。また、部品点数を削減して生産性を向上させるとともに製造コストを低減することができる。
【0013】
また、本発明の圧電デバイスの製造方法は、特定の前記第1開口を選択的に露出させ、その他の前記第1開口を覆うマスクを介して前記周波数調整を行うことを特徴とする。
このように製造することで、各々の圧電デバイスに応じた周波数調整を行うことができる。
【0014】
また、本発明の圧電デバイスの製造方法は、前記上部隔壁上に、前記第1開口を閉塞し、前記第2開口に連通する開口を有する封止部材を設け、前記圧電デバイスを封止する工程を有することを特徴とする。
このように製造することで、複数の圧電デバイスを一括して封止するとともに、ダイシングブレードを導入する溝と上部隔壁の第2開口と封止部材の開口とを全て連通させることができる。
【0015】
また、本発明の素子基板は、基板と、前記基板上に設けられダイシングブレードを導入する溝が形成された隔壁と、前記隔壁によって区画される素子領域に設けられた圧電材料層を有する複数の圧電デバイスと、前記隔壁上に設けられ、前記素子領域に連通する第1開口と前記溝に連通する第2開口とを有する上部隔壁と、前記上部隔壁上に設けられ、前記第1開口を閉塞して前記圧電デバイスを封止するとともに前記第2開口に連通する開口を有する封止部材と、を備えることを特徴とする。
このように構成することで、基板の材料に関係なく圧電デバイスの周波数調整を行うことができる。また、基板に形成された複数の圧電デバイスの周波数調整を一括して行ってから圧電デバイスを個片化することで、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一実施形態におけるSAW素子を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)のB−B’線に沿う矢視断面図である。
【図2】第一実施形態における素子基板の断面図である。
【図3】第一実施形態におけるSAW素子の製造工程を説明する説明図である。
【図4】第一実施形態におけるSAW素子の製造工程を説明する説明図である。
【図5】第一実施形態におけるSAW素子の製造工程を説明する説明図である。
【図6】第二実施形態におけるSAW素子の製造工程を説明する説明図である。
【図7】第二実施形態におけるSAW素子の製造工程を説明する説明図である。
【図8】第三実施形態におけるSAW素子の製造工程を説明する説明図である。
【図9】第三実施形態におけるSAW素子の製造工程を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第一実施形態>
以下、本発明の第一実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各図面では、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や部材毎に縮尺を適宜変更している。
【0018】
図1(a)は、本実施形態において周波数調整を行う弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)素子100の構成を示す斜視模式図であり、図1(b)は図1(a)のB−B’線に沿う矢視断面図である。本実施形態のSAW素子(圧電デバイス)100は、トランスバーサル型のSAWフィルタである。
【0019】
図1(a)及び図1(b)に示すように、SAW素子100は、基板10上に設けられたダイヤモンド層20と、ダイヤモンド層20上に設けられた窒化アルミニウム層(圧電材料層)30と、を備えている。
【0020】
窒化アルミニウム層30の表面には、一対のグレーティング電極71,72が設けられている。一対のグレーティング電極71,72により、反射器70が構成される。
一対のグレーティング電極71,72の間には、一対のインターディジタルトランスデューサ(IDT:Interdigital Transducer)50,60が設けられている。ここでは、IDT50が電気信号の入力部として機能し、IDT60が電気信号の出力部として機能する。
【0021】
以下、図1(a)及び図1(b)に示すxyz直交座標系を設定し、これに基づいて各部材の位置関係を説明する。このxyz直交座標系において、SAW素子100の面方向において、一対のIDT50,60が並ぶ方向をx方向、x方向と直交する方向をy方向、SAW素子100の面方向と直交する厚み方向をz方向とする。
【0022】
SAW素子100では、IDT50からIDT60に向かって(x方向に沿って)伝播したSAWが電気信号として取り出されるようになっている。一対のグレーティング電極71,72は、x方向において、IDT50,60を挟んで配置されている。
【0023】
基板10は、シリコンを材料として形成されている。基板10の材料としては、シリコン以外にも、半導体材料、ガラス材料、セラミックス材料、ポリイミド又はポリカーボネイト等の樹脂材料等を用いることができる。
ダイヤモンド層20は、SAWが伝播する伝播媒体として機能する。ダイヤモンド層20としては、単結晶のもの、多結晶のもの、非晶質のもの、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなるもの、のいずれを用いても良い。
【0024】
窒化アルミニウム層30は、圧電材料である窒化アルミニウムにより形成されている。IDT50により電圧波形が印加されると、窒化アルミニウム層30に歪みを生じて、電圧波形に応じたSAWが発生する。
【0025】
IDT50は、一対の櫛歯電極51,52を有している。櫛歯電極51は、複数の枝部51bと、複数の枝部51bに共通して設けられた幹部51aを有している。なお、図1(a)及び図1(b)には、3本の枝部51bを図示しているが、実際には多数(例えば150本、櫛歯電極51,52の合計で300本)が設けられている。
【0026】
複数の枝部51bの各々は、IDT50,60が並ぶ方向(x方向)と直交する方向(y方向)に延設されている。複数の枝部51bは、互いに平行に設けられ、x方向に等間隔に配置されている。幹部51aは、複数の枝部51bの各々における一方の端部と接続されている。幹部51aは、電気信号の供給源と電気的に接続されており、SAW素子100における入力側の電極パッドとして機能する。幹部51a及び複数の枝部51bは、いずれも導電材料により形成されている。
【0027】
櫛歯電極52は、櫛歯電極51と同様に形成され、幹部52aと複数の枝部52bとを有している。y方向において枝部51b及び52bを挟む一方の側(y正方向側)に幹部51aが配置されており、他方の側(y負方向側)に幹部52aが配置されている。x方向において枝部51b,52bは、交互に等間隔で並んでいる。枝部51b,52bが交互に並ぶ櫛歯電極51,52では、SAWの波長λが枝部51b,52bの間隔dを用いて、λ=4dで表される。
【0028】
IDT60は、IDT50と同様の形状になっており、櫛歯電極61,62を有している。櫛歯電極61は、幹部61aと複数の枝部61bとを有しており、櫛歯電極62は、幹部62aと複数の枝部62bとからなっている。
【0029】
グレーティング電極71,72は、枝部51b,52bと同じ方向に延在する複数の帯状部を有している。複数の帯状部は、互いに平行して等間隔で並んでいる。なお、図1(a)及び図1(b)には、それぞれ5本の帯状部を図示しているが、実際には多数(例えば200本)設けられる。グレーティング電極71,72により反射器70が構成されている。
【0030】
IDT50に電気信号が入力されると、枝部51b,52bの間に電気信号に応じた電圧波形が印加され、SAWが発生する。発生したSAWが伝播してIDT60に入射すると、SAWの振動に伴う窒化アルミニウム層30の歪みに応じて、枝部61b,62bの間に電位差が生じる。この電位差により、IDT60から電気信号が出力される。これにより、SAWの振動数に応じた所定の周波数の電気信号を取り出すことができる。
【0031】
グレーティング電極71は、IDT50からグレーティング電極71に向かって伝播するSAWを反射させて、IDT60側に伝播させる。グレーティング電極72は、IDT60からグレーティング電極72に向かって伝播するSAWを反射させて、IDT50側に伝播させる。これにより、SAWは、反射器70の内側で往復する。そのため、SAWの減衰が少なくなり、入出力の効率が向上する。
【0032】
図2は、図1に示すSAW素子100を複数備えた素子基板1の模式的な断面図である。図2では、ダイヤモンド層20、IDT50,60、グレーティング電極71,72等の図示を省略している。
【0033】
図2に示すように、素子基板1は、複数のSAW素子100が形成された基板10と、各々のSAW素子100を区画する隔壁2と、隔壁2上に設けられた上部隔壁3と、上部隔壁3上に設けられた封止部材4と、を備えている。
【0034】
基板10には、基板10を貫通する複数の貫通電極11,12が設けられている。
隔壁2は、例えば接着剤を介して基板10に接合され、SAW素子100が形成される基板10上の素子領域Aを区画するように設けられている。隔壁2には各々のSAW素子100を個片化する際に用いられるダイシングブレードを導入するための溝2bが形成されている。
【0035】
SAW素子100は、隔壁2によって区画された素子領域Aの各々に設けられ、グレーティング電極71,72(図1参照)が基板10に形成された貫通電極11,12に接続されている。
上部隔壁3は、例えば接着剤を介して隔壁2に接合され、孔状の第1開口3aと線状の第2開口3bとを有している。第1開口3aは素子領域Aの中央部に設けられ、隔壁2及び上部隔壁3によって囲まれる素子領域Aと外部とを連通するように設けられている。第2開口3bは溝2bのパターンに対応して設けられ、溝2bと連通するように設けられている。
【0036】
封止部材4は、例えば接着剤を介して上部隔壁3に接合され、溝2b及び第2開口3bに対応して設けられた線状の開口4aを有している。封止部材4の開口4aは上部隔壁3の第2開口3b及び隔壁2の溝2bと連通し、後述するダイシングブレードを隔壁2の溝2bに導入するように設けられている。
【0037】
次に、図3〜図5を用いて本実施形態のSAW素子100の製造方法について説明する。
図3〜図5は、本実施形態のSAW素子100の製造工程を説明する工程説明図である。
まず、図3に示すように、基板10の複数の素子領域Aの各々に窒化アルミニウム層30を備えたSAW素子100および貫通電極11,12(図2参照)を形成する。
【0038】
次に、素子領域Aに対応する複数の開口2aが形成された隔壁2を、基板10に接着剤を介して接合する。これにより、SAW素子100が形成された素子領域Aが隔壁2によって区画される。
次いで、予め素子領域Aに対応する孔状の第1開口3aと隔壁2に設ける溝2bに対応する線状の第2開口3bとが形成された上部隔壁3を、隔壁2に接着剤を介して接合する。
【0039】
以上により、図4(a)に示すように、基板10上に素子領域Aを区画する隔壁2が設けられ、各々の素子領域AにはSAW素子100及び貫通電極11,12が設けられる。また、隔壁2上には、隔壁2及び上部隔壁3によって囲まれる素子領域Aと外部とを連通する第1開口3aと、隔壁2に設けられる溝2bに対応する第2開口3bとを有する上部隔壁3が設けられる。
【0040】
次に、図4(b)に示すように、特定の第1開口3a及び第2開口3bを選択的に露出させる開口5aを有するマスク5を用意する。そして、周波数調整を行うSAW素子100に対応する第1開口3a及び第2開口3bをマスク5の開口5aによって露出させ、その他の第1開口3a及び第2開口3bをマスク5によって覆う。そして、マスク5の開口5aにより露出された領域の上部隔壁3の第1開口3a及び第2開口3bを介してSAW素子100の窒化アルミニウム層30及び隔壁2をドライエッチングする。
【0041】
これにより、窒化アルミニウム層30の膜厚調整を行ってSAW素子100の周波数調整を行う。同時に、後述するダイシングブレードを導入するための溝2bを隔壁2に形成する。すなわち、上部隔壁3を介して溝2bの形成とSAW素子100の周波数調整とを一括して行う。このとき、貫通電極11,12に測定用プローブPを接続し、周波数を測定しながら窒化アルミニウム層30の膜圧調整を行う。
【0042】
次に、図4(c)に示すように、隔壁2の溝2b及び上部隔壁3の第2開口3bに対応する線状の開口4aが形成された封止部材4を用意する。そして、上部隔壁3に接着剤を介して封止部材4を接合する。このとき、封止部材4と上部隔壁3の位置合わせを行って、封止部材4の開口4aと上部隔壁3の第2開口3bとを連通させる。これにより、上部隔壁3の第1開口3aを閉塞してSAW素子100を封止するとともに、隔壁2の溝2bと上部隔壁3の第2開口3bと封止部材4の開口4aとを連通させることができる。これにより、図2に示す素子基板1が形成される。
【0043】
次に、図5(a)に示すように、素子基板1の封止部材4の開口4a及び上部隔壁3の第2開口3bを介して隔壁2の溝2bにダイシングブレードDBを導入し、素子基板1を切断する。このとき、ダイシングブレードDBが、封止部材4の開口4a、上部隔壁3の第2開口3b、及び溝2bに案内される。
【0044】
そして、ダイシングブレードDBの周縁部が隔壁2の切断箇所に確実かつ安定して当接する。また、溝2bによりダイシングブレードDB及び隔壁2に作用する応力が低減される。そして、図5(b)に示すように、素子基板1が切断され、隔壁2、上部隔壁3、及び封止部材4により封止されたSAW素子100が個片化される。
【0045】
本実施形態のSAW素子100の製造方法によれば、レーザーを用いることがないので、基板10や隔壁2に透光性材料を用いる必要がない。したがって、基板10の材料に関係なくSAW素子100の周波数調整を行うことができる。
【0046】
また、基板10に形成された複数のSAW素子100の周波数調整を一括して行ってからSAW素子100を個片化することで、生産性を向上させることができる。
また、第1開口3aと第2開口3bを有する上部隔壁3を介して溝2bの形成とSAW素子100の周波数調整を一括して行うことで、従来よりも工程数を減少させ、生産性をさらに向上させることができる。
【0047】
また、周波数調整を行うSAW素子100に対応する第1開口3a及び第2開口3bを露出させる開口5aを有し、その他の第1開口3a及び第2開口3bを覆うマスク5を介して周波数調整を行うことで、各々のSAW素子100に応じた周波数調整を行うことができる。
【0048】
また、上部隔壁3上に、第1開口3aを閉塞し、第2開口3bに連通する開口4aを有する封止部材4を設け、SAW素子100を封止することで、複数のSAW素子100を一括して封止することができる。また、ダイシングブレードDBを導入する溝2bと上部隔壁3の第2開口3bと封止部材4の開口4aとを全て連通させることができる。これにより、封止部材4の開口4aと上部隔壁3の第2開口3bとを介して隔壁2の溝2bにダイシングブレードDBを導入することができる。
【0049】
また、隔壁2及び上部隔壁3が第2のマスクとして機能することで、周波数を調整するSAW素子100の素子領域A以外の素子領域AのSAW素子100がエッチングされることを防止し、個々のSAW素子100に応じた周波数調整を行うことができる。また、SAW素子100のダメージを抑制することができる。
【0050】
また、貫通電極11,12を形成し、SAW素子100の周波数を測定しながら周波数調整を行うことで周波数調整を高精度に行うことができる。
また、隔壁2に溝2bを形成しておくことで、ダイシングブレードDBから基板10に作用する応力が低減される。これにより、素子基板1を切断する際にクラックが発生することを防止して、SAW素子100の歩留まりを向上させることができる。また、ダイシングによるSAW素子100の周波数変化を抑制することができる。
【0051】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態について、図4〜図5を援用し、図6〜図7を用いて説明する。本実施形態の素子基板1A及びSAW素子100Aは、基板10Aと隔壁2Aが一体的に形成されている点で上述の第一実施形態で説明した素子基板1及びSAW素子100の製造方法と異なっている。その他の点は第一実施形態と同様であるので、同一の部分には同一の符号を付して説明は省略する。
【0052】
図6〜図7は、本実施形態のSAW素子100Aの製造工程を説明する工程説明図である。
まず、図6(a)に示すように、基板10A上にレジスト材料を塗布し、フォトリソグラフィ法、エッチング法によりパターニングする。そして、基板10A上の素子領域Aに対応する開口Raと隔壁2Aに形成する溝2bに対応する開口Rbとを備えたレジストRを形成する。
【0053】
次に、図6(b)に示すように、例えばドライエッチングによりレジストを介して基板10Aをエッチングして、隔壁2Aと溝2Abを一括して形成する。これにより、基板10A上の素子領域Aを区画する隔壁2Aが基板10Aと一体的に形成される。
【0054】
次に、図6(c)に示すように、レジストRを除去し、基板10Aに貫通電極11,12を形成する。貫通電極11,12の形成は、例えばフォトリソグラフィ法及びエッチング法等により基板10Aに貫通孔を形成した後、貫通孔に導電性材料を充填することにより行うことができる。
【0055】
次に、図7(a)に示すように、基板10A上の素子領域Aに例えば窒化アルミニウム等の圧電材料を堆積させ、フォトリソグラフィ法、エッチング法等によりパターニングすることで、窒化アルミニウム層30を形成する。さらにその上にグレーティング電極71,72(図1参照)を形成し、SAW素子100Aを形成する。
【0056】
次に、図7(b)に示すように、隔壁2Aに接着剤を介して第1開口3a及び第2開口3bを有する上部隔壁3を接合する。このとき、第一実施形態と同様に隔壁2Aの溝2Abと上部隔壁3の第2開口3bの位置合わせを行ってこれらを連通させる。
【0057】
次に、図7(c)に示すように、第2開口3bに対応する開口4aを備えた封止部材4を上部隔壁3に接着剤を介して接合する。このとき、第一実施形態と同様に上部隔壁3の第2開口3bと封止部材4の開口4aとの位置合わせを行ってこれらを連通させる。
【0058】
以上により、図2に示す第一実施形態の素子基板1と同様の素子基板1Aを製造することができる。したがって、本実施形態の素子基板1Aを、図5(a)及び図5(b)に示すように、第一実施形態と同様に個片化する際に、第一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0059】
また、本実施形態では、隔壁2Aの形成と溝2Abの形成とを一括して行った後、上部隔壁3を設けることで、従来よりも工程数を減少させ、生産性を向上させることができる。
また、フォトリソグラフィ法、エッチング法等により基板10Aと隔壁2Aとを一体的に形成することで、基板10A上に精度よく隔壁2Aを形成することができる。また、部品点数を削減して生産性を向上させるとともに製造コストを低減することができる。
【0060】
<第三実施形態>
次に、本発明の第三実施形態について、図4〜図5を援用し、図8〜図9を用いて説明する。本実施形態の素子基板1Bは、予め溝2b’が形成された隔壁2を基板10に接合する点で上述の第一実施形態で説明した素子基板1の製造方法と異なっている。その他の点は第一実施形態と同様であるので、同一の部分には同一の符号を付して説明は省略する。
【0061】
図8〜図9は本実施形態のSAW素子100Bの製造工程を説明する工程説明図である。
まず、図8に示すように、第一実施形態と同様に、素子領域Aに窒化アルミニウム層30及び貫通電極11,12が形成された基板10を用意する。次いで、基板10に接着剤を介して素子領域Aに対応する複数の開口2aが形成された隔壁2を接合する。ここで、隔壁2には、例えばフォトリソグラフィー法、エッチング法等により予めダイシングブレードDBを導入するための溝2b’を形成しておく。次いで、隔壁2に、第一実施形態と同様に第1開口3aと第2開口3bを有する上部隔壁3を、接着剤を介して接合する。このとき、隔壁2の溝2b’と上部隔壁3の第2開口3bとを位置合わせしてこれらを連通させる。
【0062】
以上により、図9(a)に示すように、基板10上に素子領域Aを区画する隔壁2が設けられ、各々の素子領域AにはSAW素子100及び貫通電極11,12が設けられる。また、隔壁2上には、各々の素子領域Aに連通する第1開口3aと、隔壁2に設けられた溝2b’に対応する第2開口3bとを有する上部隔壁3が設けられる。
【0063】
次に、図4(b)に示すように、第一実施形態と同様にエッチングを行って、SAW素子100の周波数調整と、基板10への溝10b(図9(b)参照)の形成を一括しておこなう。
次に、図4(c)に示すように、第一実施形態と同様に上部隔壁3に接着剤を介して封止部材4を接合し、SAW素子100を封止する。
【0064】
以上により、図9(b)に示すように、第一実施形態と同様の素子基板1Bを製造することができる。したがって、本実施形態の素子基板1Bを、図5(a)及び図5(b)に示すように、第一実施形態と同様に個片化する際に、第一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0065】
また、本実施形態では、予め隔壁2に溝2b’を形成することで、隔壁2への溝2b’の形成と素子領域Aに対応する開口2aの形成とを一括して行うことができる。したがって、工程数を削減し、生産性を向上させることができる。
また、隔壁2に形成した溝2b’を介して基板10をエッチングし、基板10に溝10bを形成することで、ダイシングブレードDBによりSAW素子100を個片化する際に基板10の溝10bによりダイシングブレードDBを案内することができる。これにより、ダイシングブレードDBから基板10へ作用する応力を減少させることができる。
【0066】
尚、この発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、圧電材料は窒化アルミニウムに限定されず、PZT等を用いてもよい。
【0067】
SAW素子の周波数調整は、ドライエッチングによる圧電材料層の薄膜化だけでなく、例えばスパッタ、蒸着等による圧電材料層の厚膜化を行ってもよい。この場合には、隔壁及び上部隔壁は周波数を調整するSAW素子以外のSAW素子にスパッタ粒子が付着することを防止できる。これにより、個々のSAW素子に応じて周波数の増減を行うことができる。また、周波数調整は、プラズマ照射により行ってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1,1A,1B 素子基板、2,2A 隔壁、2b,2b’,2Ab 溝、3 上部隔壁、3a 第1開口、3b 第2開口、4 封止部材、4a 開口、5 マスク、10 基板、30 窒化アルミニウム層(圧電体層)、100,100A SAW素子(圧電デバイス)、A 素子領域、DB ダイシングブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電材料層を備えた圧電デバイスの製造方法であって、
基板上に素子領域を区画する隔壁を設ける工程と、
前記素子領域に前記圧電デバイスを設ける工程と、
前記隔壁にダイシングブレードを導入する溝を形成する工程と、
前記隔壁上に、前記素子領域に連通する第1開口と前記溝に連通する第2開口とを有する上部隔壁を設ける工程と、
前記第1開口を介して前記圧電デバイスの周波数調整を行う工程と、
前記溝に前記ダイシングブレードを導入して前記圧電デバイスを個片化する工程と、
を有することを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記上部隔壁を介して、前記溝の形成と前記周波数調整とを一括して行うことを特徴とする請求項1に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記隔壁の形成と前記溝の形成とを一括して行った後、前記上部隔壁を形成することを特徴とする請求項1に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記基板と前記隔壁とが一体的に設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項5】
特定の前記第1開口を選択的に露出させ、その他の前記第1開口を覆うマスクを介して前記周波数調整を行うことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記上部隔壁上に、前記第1開口を閉塞し、前記第2開口に連通する開口を有する封止部材を設け、前記圧電デバイスを封止する工程を有することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項7】
基板と、
前記基板上に設けられダイシングブレードを導入する溝が形成された隔壁と、
前記隔壁により区画される素子領域に設けられた圧電材料層を有する複数の圧電デバイスと、
前記隔壁上に設けられ、前記素子領域に連通する第1開口と前記溝に連通する第2開口とを有する上部隔壁と、
前記上部隔壁上に設けられ、前記第1開口を閉塞して前記圧電デバイスを封止するとともに前記第2開口に連通する開口を有する封止部材と、
を備えることを特徴とする素子基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−226616(P2010−226616A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73828(P2009−73828)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】