説明

圧電デバイスの製造方法

【課題】素子搭載部材の側面からはみ出るように露出されている電解めっき用配線パターンが搬送治具に接触することを低減し、圧電デバイスの生産性を向上させることができる圧電デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】圧電デバイスの製造方法は、素子搭載部材110の側面からはみ出るように露出されている電解めっき用配線パターン113をレーザにより除去する電解めっき用配線パターン除去工程と、導電性接着剤DSによって、素子搭載部材110に圧電振動素子120を搭載する圧電振動素子搭載工程と、導電性接着剤DSを加熱硬化させ、圧電振動素子搭載パッド111と前記圧電振動素子120とを導通固着する圧電振動素子固着工程と、蓋部材130と素子搭載部材110とを接合するための蓋部材接合工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられる圧電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下、圧電デバイスの一例として圧電振動子について説明する。従来の圧電振動子は、その例として素子搭載部材、圧電振動素子、蓋部材とから主に構成されている。
素子搭載部材は、基板部と枠部で主に構成されている。
この素子搭載部材は、基板部の一方の主面に枠部が設けられて凹部空間が形成される。
その凹部空間内に露出する基板部の一方の主面には、2個一対の圧電振動素子搭載パッドが設けられている。
また、基板部は、積層構造となっており、基板部の内層には、配線パターン(図示せず)等が設けられている。この配線パターンにより圧電振動素子搭載パッドは、素子搭載部材の基板部の他方の主面に設けられている外部接続用電極端子と接続している。
これら圧電振動素子搭載パッド上には、導電性接着剤を介して電気的に接続される一対の励振用電極を表裏主面に有した圧電振動素子が搭載されている。この圧電振動素子を囲繞する素子搭載部材の枠部の頂面には金属製の蓋部材が被せられ、接合されている。これにより、凹部空間が気密封止されている。
また、素子搭載部材の側面には、圧電振動素子搭載パッドと外部接続用電極端子にめっきを施すための電解めっき用配線パターンが露出している。
【0003】
また、このような圧電振動素子は、圧電素板の表裏主面にそれぞれ設けられた励振用電極から一辺に延設された引き出し電極を圧電振動素子搭載パッドに導電性接着剤で固着することで片持ち固定されている。このときの引き出し電極が設けられた一辺とは反対側の端辺を圧電振動素子の自由端である先端部とする(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
従来の圧電デバイスの製造方法は、前記素子搭載部材の凹部空間内底面に設けられた圧電振動素子搭載パッド上に導電性接着剤を塗布し、前記導電性接着剤上に圧電振動素子を搭載する工程と、前記導電性接着剤を加熱硬化させ前記圧電振動素子搭載パッドと圧電振動素子とを導通固着する工程と、蓋体と前記素子搭載部材とを接合するための工程とを含む製造方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。また、この各工程を搬送する際には、搬送治具が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−7092号公報
【特許文献2】特開2007−235340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の圧電デバイスの製造方法では、素子搭載部材の側面に露出されている電解めっき用配線パターンが搬送治具に接触し、水晶振動素子搭載パッドが短絡してしまうので、水晶振動素子を測定することができない。よって、圧電デバイスの生産性が低下してしまうといった課題があった。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、素子搭載部材の側面からはみ出るように露出されている電解めっき用配線パターンが搬送治具に接触することを低減し、圧電デバイスの生産性を向上させることができる圧電デバイスの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の圧電デバイスの製造方法は、圧電デバイスに用いられる素子搭載部材からはみ出る電解めっき用配線パターンの一部を除去して製造される圧電デバイスの製造方法であって、素子搭載部材の側面からはみ出るように露出されている電解めっき用配線パターンの一部をレーザにより除去する電解めっき用配線パターン除去工程と、導電性接着剤によって、前記素子搭載部材に圧電振動素子を搭載する圧電振動素子搭載工程と、導電性接着剤を加熱硬化させ、前記圧電振動素子搭載パッドと前記圧電振動素子とを導通固着する圧電振動素子固着工程と、蓋部材と前記素子搭載部材とを接合するための蓋部材接合工程とを含むことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の圧電デバイスの製造方法は、圧電デバイスに用いられる素子搭載部材からはみ出る電解めっき用配線パターンの一部を除去して製造される圧電デバイスの製造方法であって、導電性接着剤によって、素子搭載部材に圧電振動素子を搭載する圧電振動素子搭載工程と、導電性接着剤を加熱硬化させ、前記圧電振動素子搭載パッドと前記圧電振動素子とを導通固着する圧電振動素子固着工程と、蓋部材と素子搭載部材とを接合するための蓋部材接合工程と、素子搭載部材の側面からはみ出るように露出されている電解めっき用配線パターンの一部をレーザにより除去する電解めっき用配線パターン除去工程と、を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の圧電デバイスの製造方法によれば、素子搭載部材の側面からはみ出るように露出している電解めっき用配線パターンをレーザにより除去することによって、前記電解めっき用配線パターンが搬送治具に接触することがなくなり、圧電振動素子搭載パッドが短絡することを低減することができるので、圧電振動素子を測定することができる。よって、圧電デバイスの生産性を向上することができる。
【0011】
また、本発明の圧電デバイスの製造方法によれば、素子搭載部材の側面からはみ出るように露出している電解めっき用配線パターンをレーザにより除去することによって、前記電解めっき用配線パターンが搬送治具に接触することがなくなり、圧電振動素子搭載パッドが短絡することを低減することができるので、水晶振動素子を測定することができる。よって、圧電デバイスの生産性を向上することができる。また、蓋部材で接合した後に、素子搭載部材の側面からはみ出るように露出している電解めっき用配線パターンを除去することによって、除去した除去屑が圧電振動素子に付着することがなくなるので、圧電振動素子の発振周波数が変動することがなくなり、圧電デバイスの生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る圧電デバイスの製造方法で形成された圧電デバイスを示す分解斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る圧電デバイスの製造方法で用いられる搬送治具を示す平面図である。
【図4】(a)は、本発明の第1の実施形態に係る圧電デバイスの製造方法の電解めっき用配線パターン除去工程を示す断面図であり、(b)は、本発明の第1の実施形態に係る圧電デバイスの製造方法の圧電振動素子搭載工程を示す断面図である。
【図5】(a)は、本発明の第1の実施形態に係る圧電デバイスの製造方法の圧電振動素子固着工程を示す断面図であり、(b)は、本発明の第1の実施形態に係る圧電デバイスの製造方法の蓋部材接合工程を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る圧電デバイスの製造方法で用いられるレーザ照射装置を示す斜視図である。
【図7】(a)は、本発明の第2の実施形態に係る圧電デバイスの製造方法の圧電振動素子搭載工程を示す断面図であり、(b)は、本発明の第2の実施形態に係る圧電デバイスの製造方法の圧電振動素子固着工程を示す断面図である。
【図8】(a)は、本発明の第2の実施形態に係る圧電デバイスの製造方法の蓋部材接合工程を示す断面図であり、(b)は、本発明の第2の実施形態に係る圧電デバイスの製造方法の電解めっき用配線パターン除去工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。尚、圧電振動素子に水晶を用いた場合について説明する。また、図示した寸法を一部誇張して示している。
本実施形態において、圧電デバイスの一例として、圧電振動子について説明する。
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態に係る圧電振動子100は、素子搭載部材110と圧電振動素子120と蓋部材130で主に構成されている。この圧電振動子100は、前記素子搭載部材110に形成されている凹部空間K1内に圧電振動素子120が搭載され、その凹部空間K1が蓋部材130により気密封止された構造となっている。
【0014】
圧電振動素子120は、図1及び図2に示すように、水晶素板121に励振用電極122を被着形成したものであり、外部からの交番電圧が励振用電極122を介して水晶素板121に印加されると、所定の振動モード及び周波数で励振を起こすようになっている。
水晶素板121は、人工水晶体から所定のカットアングルで切断し外形加工を施された概略平板状で平面形状が例えば四角形となっている。
励振用電極122は、前記水晶素板121の表裏両主面に金属を所定のパターンで被着・形成したものである。
このような圧電振動素子120は、その両主面に被着されている励振用電極122から延出する引き出し電極124と後述する凹部空間K1内底面に形成されている後述する圧電振動素子搭載パッド111とを、導電性接着剤DSを介して電気的且つ機械的に接続することによって凹部空間K1に搭載される。このときの引き出し電極124が設けられた一辺とは反対側の端辺を圧電振動素子120の自由端である先端部123とする。
【0015】
図1及び図2示すように、素子搭載部材110は、基板部110aと、枠部110bと、圧電振動素子搭載パッド111とで主に構成されている。
この素子搭載部材110は、基板部110aの一方の主面に枠部110bが設けられて、凹部空間K1が形成されている。
尚、この素子搭載部材110を構成する基板部110aと枠部110bは、例えばアルミナセラミックス、ガラス−セラミックス等のセラミック材料を複数積層することよって形成されている。また、基板部110aと枠部110bは、セラミック材が積層した構造となっている。
凹部空間K1内で露出した基板部110aの一方の主面には、2個一対の圧電振動素子搭載パッド111が設けられている。
素子搭載部材110の基板部110aの他方の主面の4隅には、外部接続用電極端子Gが設けられている。
基板部110aの内層には、配線パターン(図示せず)等が設けられている。この配線パターンにより圧電振動素子搭載パッド111は、素子搭載部材110の基板部110aの他方の主面に設けられている外部接続用電極端子Gと接続している。
また、基板部110aの内層には、圧電振動素子搭載パッド111や外部接続用電極端子Gに電解めっきを施すための電解めっき用配線パターン113が設けられている。
【0016】
蓋部材130は、例えば、Fe−Ni合金(42アロイ)やFe−Ni−Co合金(コバール)などからなる。このような蓋部材130は、凹部空間K1を、窒素ガス雰囲気中や真空雰囲気中などで気密封止される。具体的には、蓋部材130は、窒素雰囲気中や真空雰囲気中で、素子搭載部材110の枠部110b上に載置され、枠部110bの表面の封止用導体パターン112と蓋部材130の封止部材131とが溶接されるように所定電流を印加してシーム溶接を行うことにより、枠部110bに接合される。
封止部材131は、例えば、銀ロウ、金錫(Au−Sn)などからなる。
【0017】
前記導電性接着剤DSは、シリコーン樹脂等のバインダーの中に導電フィラーとして導電性粉末が含有されているものであり、導電性粉末としては、例えばアルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、ニッケル鉄(NiFe)、のうちのいずれかまたはこれらの組み合わせを含むものが用いられている。
また、導電性接着剤DSには、塗布し易い粘度に調整するために添加した溶剤が含有されている。
【0018】
尚、前記素子搭載部材110は、アルミナセラミックスから成る場合、所定のセラミック材料粉末に適当な有機溶剤等を添加・混合して得たセラミックグリーンシートの表面に、封止用導体パターン112、圧電振動素子搭載パッド111、外部接続用電極端子G等となる導体ペーストを、また、セラミックグリーンシートに打ち抜き等を施して予め穿設しておいた貫通孔内にビア導体となる導体ペーストを従来周知のスクリーン印刷によって塗布するとともに、これを複数枚積層してプレス成形した後、高温で焼成することにより製作される。
【0019】
(搬送治具)
図3に示すように、搬送治具200は、金属板部210を備えている。
図3に示すように、金属板部210には、SUS304等のステンレス鋼によって構成された一枚板の金属により構成されており、素子搭載部材110を挿入可能な第1の貫通穴部211が複数配列された状態で設けられている。
第1の貫通穴部211は、前記金属板部210を打ち抜き加工等をすることにより設けられている。金属板部210の厚みは、例えば、80〜100μmとなっている。
第1の貫通穴部211の一方の辺に沿って保持部212が設けられ、保持部212には、ばね部(図示せず)が設けられている。
また、第1の貫通穴部211の内壁の一部には、2つの第1の貫通孔213が、向かい合う位置に1つずつ設けられている。
第1の貫通孔213にレーザ光を照射することにより、第1の貫通穴部211に挿入されている素子搭載部材110の側面からはみ出るように露出されている電解めっき用配線パターン113にレーザ光が照射され、電解めっき用配線パターン113のはみ出ている部分が除去されることになる。
【0020】
(レーザ照射装置)
レーザ照射装置300は、図6に示すように、レーザ吸引手段310と、認識手段320と、記憶手段330と、制御手段340とから主に構成されている。
前記レーザ吸引手段310は、図6に示すように、ガイドレールR1に備えられている。
前記レーザ吸引手段310は、照射ノズル311(図6参照)と、吸引ノズル312(図6参照)と、ノズル配置部313と、可動部314とで構成されている。
また、可動部314は、X方向可動部314aと、Y方向可動部314bと、Z方向可動部314cとで構成されている。
【0021】
可動部314を構成するX方向可動部314aと、Y方向可動部314bと、Z方向可動部314cとは、例えば、モータを備えて構成されている。
【0022】
図6に示すように、照射ノズル311と吸引ノズル312は、ノズル配置部313の先端部に配置されている。また、前記照射ノズル311と前記吸引ノズル312は、X方向可動部314aと、Y方向可動部314bと、Z方向可動部314cとによって、X方向、Y方向、Z方向に動作することができるようになっている。
【0023】
これらレーザ吸引手段310は、Z方向に往復して移動可能であり、素子搭載部材110の側面からはみ出るように露出されている電解めっき用配線パターン113にレーザ光を照射し、露出されている前記電解めっき用配線パターン113の一部を除去するときにZ方向に移動する。
【0024】
レーザ吸引手段310は、前記搬送治具200に収容されている複数の素子搭載部材110の側面からはみ出るように露出されている電解めっき用配線パターン113にレーザ光を照射し、めっき用配線パターン113を除去する役割を果たす。
レーザ吸引手段310には、照射ノズル311が設けられており、この照射ノズル311からレーザ光が照射されることになる。
なお、このとき、搬送治具200に収容されている素子搭載部材110の側面にレーザ光が当たるように設けられている第1の貫通孔213と、レーザ吸引手段310の照射ノズル311とは、同一直線状に位置している。
レーザの種類としては、例えば、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ、YVOレーザ、半導体レーザ、エキシマレーザ等を用いる。
【0025】
また、レーザ吸引手段310は、レーザ光による切断によって発生した切削屑を吸引する役割も果たす。レーザ吸引手段310は、吸引ノズル312が設けられており、吸引ノズル312から切削屑を吸引する。この吸引ノズル312は、高圧ホースと接続される。
【0026】
前記認識手段320は、例えばカメラによって構成され、図6に示すように、第1のガイドレールR1に備えられている。
認識手段320は、図6に示すように、素子搭載部材110の側面に露出されている電解めっき用配線パターン113の状態を示す画像データを撮影する役割を果たす。
また、認識手段320は、画像データを撮影後、レーザ吸引手段310と衝突しないように移動することができる。
認識手段320によって撮影された画像データは、記憶手段340に記憶される。
また、図6に示すように、レーザ照射装置300には、第2のガイドレールR2が設けられており、支柱PLを介して第1のガイドレールR1が備えられている。
【0027】
前記記憶手段330は、前記認識手段320のカメラから得た素子搭載部材110の側面に露出されている電解めっき用配線パターン113の位置を示す画像データを記憶する役割を果たす。
【0028】
また、前記制御手段340は、コンピュータにより構成されており、レーザ吸引手段310と、認識手段320と、記憶手段330とに接続されている。制御手段340は、レーザ照射装置300全体の制御を行なうものである。
【0029】
(第1の実施形態)
次に本発明の第1の実施形態に係る圧電デバイスの製造方法について図4〜図6を用いて説明する。
【0030】
(電解めっき用配線パターン除去工程)
図4(a)に示すように、電解めっき用配線パターン除去工程は、素子搭載部材110の側面からはみ出るように露出されている電解めっき用配線パターン113をレーザ光により除去する工程である。
素子搭載部材110の側面には、電解めっき用配線パターン113がはみ出るように露出されており、照射ノズル311から照射されたレーザ光を電解めっき用配線パターン113に照射することで、電解めっき用配線パターン113のはみ出ている部分を削り取る。この際に、削り出されためっき屑を吸引ノズル312にて吸引することで、素子搭載部材110に再付着することを低減することができる。
【0031】
素子搭載部材110の基板部110aの内層には、圧電振動素子搭載パッド111や外部接続用電極端子Gに電解めっきを施すための電解めっき用配線パターン113が設けられている。その電解めっき用配線パターン113の一部が素子搭載部材110の側面からはみ出るように露出している。
【0032】
図3に示すように、素子搭載部材110を搬送治具200に搭載する。搬送治具200の第1の貫通穴部211の内壁の一部には、2つの第1の貫通孔213が、向かい合う位置に1つずつ設けられている。
この第1の貫通孔213に向かって、レーザ光を照射することにより、第1の貫通穴部211に挿入されている素子搭載部材110の側面からはみ出るように露出されている電解めっき用配線パターン113にレーザ光が照射され、電解めっき用配線パターン113のはみ出ている部分が除去されることになる。
【0033】
(圧電振動素子搭載工程)
図4(b)に示すように、圧電振動素子搭載工程は、導電性接着剤DSによって、前記素子搭載部材110に前記圧電振動素子120を搭載する工程である。
素子搭載部材110の凹部空間K1内の基板部110aには2個一対の圧電振動素子搭載パッド111が設けられており、前記圧電振動素子搭載パッド111上に導電性接着剤DSを塗布し、この圧電振動素子搭載パッド111に塗布された導電性接着剤DSに圧電振動素子120の表面に形成した励振用電極122から引き出された引き出し電極124を付着させる形態で圧電振動素子120を搭載する。
【0034】
(圧電振動素子固着工程)
図5(a)に示すように、圧電振動素子固着工程は、大気雰囲気中または窒素雰囲気中の硬化アニール炉の内部空間に前記素子搭載部材110を収容した状態で、前記導電性接着剤DSを加熱硬化させ、前記圧電振動素子搭載パッド111と前記圧電振動素子120とを導通固着する工程である。
加熱硬化とは、導電性接着剤DSを加熱することにより、硬化させることをいう。
【0035】
炉本体は、内部空間を有し、前記素子搭載部材110を格納する役割を果たす。
加熱部は、前記内部空間を所定の温度に加熱する役割を果たす。加熱部は、例えば、ハロゲンランプ、キセノンランプ等が用いられている。
供給部は、前記内部空間にガスを供給する役割を果たす。ガスは、例えば窒素等が用いられている。
制御部は、炉本体の内部空間の温度や酸素濃度、加熱部の昇温速度、供給部のガス供給量の制御を行うものである。
【0036】
(蓋部材接合工程)
図5(b)に示すように、蓋部材接合工程は、前記圧電振動素子120を気密封止するように素子搭載部材110に蓋部材130を接合する工程である。
蓋部材130は、例えば、Fe−Ni合金(42アロイ)やFe−Ni−Co合金(コバール)が用いられ、圧電振動素子120を窒素ガス雰囲気中や真空雰囲気中などで気密封止する際に用いられる。
具体的には、蓋部材130は、窒素ガス雰囲気中や真空雰囲気中で、前記素子搭載部材110の枠部110b上に載置され、枠部110bの表面の金属と蓋部材130の金属の一部とが溶接されるように、シーム溶接機(図示せず)のローラ電極(図示せず)を蓋部材130に接触させ、前記ローラ電極に電源を供給しながら、蓋部材130の外側縁部に沿って動かすことで、枠部110bに接合される。
【0037】
本発明の圧電デバイスの製造方法によれば、素子搭載部材110の側面からはみ出るように露出している電解めっき用配線パターン113を削除することによって、前記電解めっき用配線パターン113が搬送治具200に接触することがなくなるため、圧電振動素子搭載パッド111が短絡することを低減することができるので、圧電振動素子120を測定することができる。よって、圧電デバイス100の生産性を向上することができる。
【0038】
(第2の実施形態)
次に本発明の第1の実施形態に係る圧電デバイスの製造方法について図7及び図8を用いて説明する。
本発明の第2の実施形態に係る圧電デバイスの製造方法は、電解めっき用配線パターン除去工程が、蓋部材接合工程の後に設けられている点で第1の実施形態と異なる。
【0039】
(圧電振動素子搭載工程)
図7(a)に示すように、圧電振動素子搭載工程は、導電性接着剤DSによって、前記素子搭載部材110に前記圧電振動素子120を搭載する工程である。
素子搭載部材110の凹部空間K1内の基板部110aには2個一対の圧電振動素子搭載パッド111が設けられており、前記圧電振動素子搭載パッド111上に導電性接着剤DSを塗布し、この圧電振動素子搭載パッド111に塗布された導電性接着剤DSに圧電振動素子120の表面に形成した励振用電極122から引き出された引き出し電極124を付着させる形態で圧電振動素子120を搭載する。
【0040】
(圧電振動素子固着工程)
図7(b)に示すように、圧電振動素子固着工程は、大気雰囲気中または窒素雰囲気中の硬化アニール炉の内部空間に前記素子搭載部材110を収容した状態で、前記導電性接着剤DSを加熱硬化させ、前記圧電振動素子搭載パッド111と前記圧電振動素子120とを導通固着する工程である。
加熱硬化とは、導電性接着剤DSを加熱することにより、硬化させることをいう。
【0041】
(蓋部材接合工程)
図8(a)に示すように、蓋部材接合工程は、前記圧電振動素子120を気密封止するように素子搭載部材110に蓋部材130を接合する工程である。
蓋部材130は、例えば、Fe−Ni合金(42アロイ)やFe−Ni−Co合金(コバール)が用いられ、圧電振動素子120を窒素ガス雰囲気中や真空雰囲気中などで気密封止する際に用いられる。
具体的には、蓋部材130は、窒素ガス雰囲気中や真空雰囲気中で、前記素子搭載部材110の枠部110b上に載置され、枠部110bの表面の金属と蓋部材130の金属の一部とが溶接されるように、シーム溶接機(図示せず)のローラ電極を蓋部材130に接触させ、前記ローラ電極に電源を供給しながら、蓋部材130の外側縁部に沿って動かすことで、枠部110bに接合される。
【0042】
(電解めっき用配線パターン除去工程)
図8(b)に示すように、電解めっき用配線パターン除去工程は、素子搭載部材110の側面に露出されている電解めっき用配線パターン113をレーザ光にて除去する工程である。
素子搭載部材110の側面には、電解めっき用配線パターン113が露出されており、照射ノズル311から照射されたレーザ光を電解めっき用配線パターン113に照射することで、電解めっき用配線パターン113を削り取る。この際に、削り出されためっき屑を吸引ノズル312にて吸引することで、素子搭載部材110に再付着することを低減することができる。
【0043】
素子搭載部材110の基板部110aの内層には、圧電振動素子搭載パッド111や外部接続用電極端子Gに電解めっきを施すための電解めっき用配線パターン113が設けられている。その電解めっき用配線パターン113の一部が素子搭載部材110の側面からはみ出るように露出している。
【0044】
図3に示すように、素子搭載部材110を搬送治具200に搭載する。搬送治具200の第1の貫通穴部211の内壁の一部には、2つの第1の貫通孔213が、向かい合う位置に1つずつ設けられている。
この第1の貫通孔213に向かって、レーザ光を照射することにより、第1の貫通穴部211に挿入されている素子搭載部材110の側面からはみ出るように露出されている電解めっき用配線パターン113にレーザ光が照射され、電解めっき用配線パターン113が除去されることになる。
【0045】
本発明の圧電デバイスの製造方法によれば、素子搭載部材110の側面からはみ出るように露出している電解めっき用配線パターン113をレーザにより除去することによって、前記電解めっき用配線パターン113が搬送治具200に接触することがなくなり、圧電振動素子搭載パッド111が短絡することを低減することができるので、水晶振動素子120を測定することができる。よって、圧電デバイス100の生産性を向上することができる。また、蓋部材130で接合した後に、素子搭載部材110の側面からはみ出るように露出している電解めっき用配線パターンをレーザにより除去することによって、除去した除去屑が圧電振動素子120に付着することがなくなるので、圧電振動素子120の発振周波数が変動することがなくなり、圧電デバイス100の生産性を向上することができる。
【0046】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
例えば、前記した本実施形態では、圧電振動素子を構成する圧電素材として水晶を用いた場合を説明したが、他の圧電素材として、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムまたは、圧電セラミックスを圧電素材として用いた圧電振動素子でも構わない。
【0047】
また、前記した本実施形態では、前記搬送治具の主面からレーザ光を照射する方法について説明したが、本実施形態で使用された搬送治具を横向きに立てた状態で配置し、搬送治具の側面からレーザ光を照射するようにしても構わない。
【符号の説明】
【0048】
110・・・素子搭載部材
110a・・・基板部
110b・・・枠部
111・・・圧電振動素子搭載パッド
112・・・封止用導体パターン
113・・・電解めっき用配線パターン
120・・・圧電振動素子
121・・・圧電素板
122・・・励振用電極
123・・・先端部
124・・・引き出し電極
130・・・蓋部材
131・・・封止部材
100・・・圧電デバイス
200・・・搬送治具
300・・・レーザ照射装置
K1・・・凹部空間
G・・・外部接続用電極端子
DS・・・導電性接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電デバイスに用いられる素子搭載部材からはみ出る電解めっき用配線パターンの一部を除去して製造される圧電デバイスの製造方法であって、
素子搭載部材の側面からはみ出るように露出されている電解めっき用配線パターンの一部をレーザにより除去する電解めっき用配線パターン除去工程と、
導電性接着剤によって、前記素子搭載部材に圧電振動素子を搭載する圧電振動素子搭載工程と、
前記導電性接着剤を加熱硬化させ、前記圧電振動素子搭載パッドと前記圧電振動素子とを導通固着する圧電振動素子固着工程と、
蓋部材と前記素子搭載部材とを接合するための蓋部材接合工程とを含むことを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
【請求項2】
圧電デバイスに用いられる素子搭載部材からはみ出る電解めっき用配線パターンの一部をレーザにより除去して製造される圧電デバイスの製造方法であって、
導電性接着剤によって、素子搭載部材に圧電振動素子を搭載する圧電振動素子搭載工程と、
前記導電性接着剤を加熱硬化させ、前記圧電振動素子搭載パッドと前記圧電振動素子とを導通固着する圧電振動素子固着工程と、
蓋部材と前記素子搭載部材とを接合するための蓋部材接合工程と、
前記素子搭載部材の側面からはみ出るように露出されている電解めっき用配線パターンの一部をレーザにより除去する電解めっき用配線パターン除去工程と、を含むことを特徴とする圧電デバイスの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−74978(P2012−74978A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219082(P2010−219082)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】