説明

圧電デバイス

【課題】 導電性接着剤の量を増やさずに、落下に対する耐衝撃性を向上させ、優れた振動特性を有する圧電デバイスを提供すること。
【解決手段】 矩形状の圧電素子26から形成された例えばATカット振動片などの圧電振動片20と、この圧電振動片20を内側に収容するようにしたパッケージ30とを備える圧電デバイスであって、圧電振動片20は、一端側20bが導電性接着剤40で接合されており、他端側20aの端面25がパッケージ30の内壁32aに突き当てられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動片を利用した圧電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、従来の圧電デバイスとしての圧電振動子の構成例を示す概略断面図である。
この図において、圧電デバイス1は、パッケージ2内にATカット振動片3を収容するようになっている。
パッケージ2は、内部空間に露出した内側底面2aに、実装端子(図示せず)と導通した電極部4を有している。
また、ATカット振動片3は矩形状の圧電素子から形成されており、長手方向の一端側3aが、パッケージ内の電極部4と、例えばシリコーン系の導電性接着剤7を用いて電気的機械的に接合されている。
【0003】
ここで、圧電デバイス1を搭載した電子機器が、図8において+z方向または−z方向に落下すると、圧電デバイス1は、その落下時の衝撃により、ATカット振動片3の他端側3bがパッケージ2の内側底面2aに衝突して欠け等が生じ、ATカット振動片3の振動特性に悪影響を及ぼす場合がある。
そして、このような落下による振動特性への悪影響を防止するためには、導電性接着剤7の量を増やして接合強度を上げればよいが、導電性接着剤7の量を増やすと、導電性接着剤7から発生するガスがATカット振動片3に付着し、ATカット振動片3の振動性能に悪影響を及ぼしてしまう。
また、導電性接着剤7の材質を、例えばエポキシ系等の硬質なものにすることにより機械的結合強度を上げることも考えられるが、硬質の導電性接着剤7は、例えば乾燥時の収縮によりATカット振動片3に反りを生じさせるなどして、振動性能に悪影響を及ぼしてしまう。
【0004】
このため、従来の圧電デバイス1では、図8に示すように、パッケージ2の内側底面2aに枕部5を設け、圧電デバイス1が落下した際にATカット振動片3の他端側3bがパッケージの内側底面2aに衝突することを防止し、圧電デバイス1の落下時の耐衝撃性を高めるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2001−102890公報(図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、近年において、圧電デバイス1は、例えば携帯電話やPDA(Personal Digital Assistant)などの小型の情報機器に搭載されるようになっており、特にこのような小型の情報機器では、図8の+z方向または−z方向だけに落下するものではなく、図8の+x方向または−x方向にも落下する。そして、+x方向または−x方向に落下すると、ATカット振動片3は、衝撃により+x側または−x側にズレて、ATカット振動片3と導電性接着剤7との間の電気的機械的な接続強度が弱まり、振動特性に悪影響を及ぼす恐れが生じる。
【0007】
本発明は、導電性接着剤の量を増やさずに、落下に対する耐衝撃性を向上させ、優れた振動特性を有する圧電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的は、第1の発明によれば、矩形状の圧電素子から形成された圧電振動片と、この圧電振動片を内側に収容するようにしたパッケージとを備える圧電デバイスであって、前記圧電振動片は、一端側が導電性接着剤で前記パッケージに接合されており、他端側の端面が前記パッケージの内壁に突き当てられている圧電デバイスにより達成される。
【0009】
第1の発明の構成によれば、圧電振動片は、一端側が導電性接着剤でパッケージに接合されており、他端側の端面がパッケージの内壁に突き当てられている。このため、圧電振動片が落下の衝撃により他端側に動こうとした場合であっても、パッケージの内壁がその動きを規制して、圧電振動片の他端側へのズレを防止する。
したがって、本発明によれば、導電性接着剤の量を増やさずに、落下に対する耐衝撃性を向上させ、優れた振動特性を有する圧電デバイスを提供することができる。
なお、本発明における上述および後述の端面とは、特にことわりがない限り主面とは異なる側面の端面を表すものである。
【0010】
第2の発明は、第1の発明の構成において、前記圧電振動片は、前記導電性接着剤で前記パッケージに接合されている前記一端側の端面が、前記パッケージの内壁に突き当てられていることを特徴とする。
第2の発明の構成によれば、圧電振動片は、導電性接着剤でパッケージに接合されている一端側の端面がパッケージの内壁に突き当てられている。このため、圧電振動片が落下の衝撃により一端側に動こうとしても、パッケージの内壁がその動きを規制して、圧電振動片の一端側へのズレを防止する。また、第1の発明に比べて、一端側へのズレも防止するため、その分、導電性接着剤の量を減らすことができる。
【0011】
第3の発明は、第1または第2の発明のいずれかの構成において、前記圧電振動片は、前記一端側の端面と直交する方向に沿った端面が、前記パッケージの内壁に突き当てられていることを特徴とする。
第3の発明の構成によれば、圧電振動片は、一端側の端面と直交する方向に沿った端面が、パッケージの内壁に突き当てられている。このため、圧電振動片が、落下の衝撃により、一端側の端面に沿った方向に動こうとしても、一端側の端面と直交する方向に沿った端面がパッケージの内壁に押さえつけられ、圧電振動片の一端側の端面に沿った方向のズレを防止する。また、第1および第2の発明に比べて、一端側の端面に沿った方向のズレも防止するため、その分、導電性接着剤の量を減らすことができる。
【0012】
第4の発明は、第1ないし第3の発明のいずれかの構成において、前記パッケージの内壁には凹部が形成されており、この凹部内に前記圧電振動片の前記他端側が嵌入されていることを特徴とする。
第4の発明の構成によれば、パッケージはその内壁に凹部を有し、この凹部内に圧電振動片の他端側が嵌入されている。そうすると、圧電振動片が落下の衝撃により厚み方向及び幅方向に動こうとしても、凹部の内面と圧電振動片の他端側の表面とが当接して、圧電振動片の厚み方向及び幅方向へのズレを防止する。また、第1および第2の発明に比べて、或いは第3の発明よりさらに、厚み方向及び幅方向へのズレを防止するため、その分、導電性接着剤の量を減らすことができる。
【0013】
第5の発明は、第1ないし第4の発明のいずれかの構成において、前記パッケージの内壁には、その内壁よりも柔軟性のある緩衝材が設けられており、この緩衝材に前記圧電振動片の前記他端側の端面が突き当てられていることを特徴とする。
第5の発明の構成によれば、パッケージの内壁には、その内壁よりも柔軟性のある緩衝材が設けられており、この緩衝材に圧電振動片の他端側の端面が突き当てられている。このため、圧電振動片とパッケージとの間における振動あるいは衝撃の伝達を緩衝材が吸収し、いわゆる振動漏れや圧電振動片の割れや欠けを防止できる。
【0014】
第6の発明は、第5の発明の構成において、前記緩衝材は、熱可塑性の樹脂であることを特徴とする。
第6の発明の構成によれば、緩衝材は熱可塑性の樹脂であるので、例えば圧電振動片をマウントする際にパッケージ内を加熱した場合であっても、緩衝材から発生するガスが少なく、緩衝材が用いられたことによる振動特性への悪影響を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1および図2は、本発明の第1の実施形態に係る圧電デバイス10を示しており、図1はその概略斜視図、図2は図1のA−A線概略切断断面図である。なお、図2では、図面が複雑になることを避けるため、後述する励振電極や引出し電極を図示していない。
これらの図において、圧電デバイス10は、圧電振動子を構成した例を示しており、圧電デバイス10は、パッケージ30の内側に、圧電振動片として例えばATカット振動片20を収容している。
【0016】
パッケージ30は、例えば、絶縁材料として、酸化アルミニウム質のセラミックグリーンシートを成型して形成される複数の基板を積層した後に、焼結して形成されている。すなわち、この実施形態では、パッケージ30は、下から第1の基板31、第2の基板32を重ねて形成されている。
【0017】
第2の基板32は、図2に示すように、その内側に所定の孔を形成することで、第1の基板31に積層した場合に、パッケージ30の内側に所定の内部空間Sを形成するようにされている。また、第2の基板32の上端面、すなわちパッケージ30の上方に開放された開放端面には、例えば、低融点ガラス等のロウ材44を介して、蓋体46が接合されることにより、封止されている。
【0018】
第1の基板31の内部空間Sに露出した面には、スルーホール(図示せず)等を通じて実装端子部43,43と電気的に接続されたマウント電極42,42が設けられている。
このマウント電極42,42は、図2における左端部付近であって、図1に示すように圧電デバイス10の幅方向の両端に、例えば、金または金合金により形成され、マウント電極42,42の上には、導電性接着剤40,40が塗布されている。
【0019】
そして、導電性接着剤40,40の上に、ATカット振動片20の一端側20bの両端にある引出し電極54,54が載置されて、導電性接着剤40,40が硬化されることによりATカット振動片20とパッケージ30とが接合されている。
具体的には、導電性接着剤40,40は、ATカット振動片20が一端側20bへズレないように、すなわち図1における−X側へ動いてしまわないように、ATカット振動片20の一端側20bの端面(長手方向の端面のうち、一端側20bの端面)22まで盛り上がって付着するようになっている。
また、導電性接着剤40,40は、幅方向にズレないように、すなわち図1における+Y及び−Y側に動いてしまわないように、一端側20bの端面22と直交する2つの端面(短手方向の2つの端面)23,24にも盛り上がって付着するようになっている。
【0020】
また、導電性接着剤40,40には、エポキシ系またはポリイミド系、またはシリコーン系等の接着剤を用いることができるが、本実施形態では、エポキシ系の導電性接着剤等よりも柔軟性を有し、乾燥によって収縮してATカット振動片20に反りを生じさせることの少ないシリコーン系の導電性接着剤を使用している。
【0021】
ATカット振動片20は、水晶、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電素子26を利用することができる。本実施形態において、ATカット振動片20は、厚みすべり振動するように切り出された厚みの薄い水晶ウエハを、矩形状にカットして形成された圧電素子26が用いられている。
【0022】
そして、この矩形状の圧電素子26の表面に、励振電極52と、この励振電極52に駆動電圧を伝えるための引出し電極54とが形成されている。
励振電極52は、圧電素子26を効率よく振動させるために、主面に設けられた電極であり、例えば、クロムスパッタ膜上に金スパッタ膜を施した金属膜で、上下面に設けられている。なお、作図上の便宜のため、下面の励振電極52を図示していない。
【0023】
引出し電極54は、励振電極52と同様の金属膜で、励振電極52と一体に形成され、励振電極52に駆動電圧を供給するための電極である。すなわち、本実施形態では、引出し電極54は、圧電素子26の上下面および端面22,23,24に付着するようにして、一端側20bの両端に形成されて、互いに異極となっており、一方の引出し電極54aが上面の励振電極52と電気的に接続され、他方の引出し電極54bが図示しない下面の励振電極と電気的に接続されている。
そして、この両端に形成された引出し電極54a,54bが、上述したように、パッケージ側のマウント電極42,42と導電性接着剤40,40が適用されて電気的機械的に接合されている。
【0024】
ここで、ATカット振動片20は、導電性接着剤40,40でパッケージ30に接合されている一端側20bとは反対側の他端側20aにおける端面25が、パッケージ30の内壁32aに突き当てられている。
すなわち、ATカット振動片20は、引出し電極54が設けられていない自由端側の端面25が、第2の基板32の内部空間Sに露出した壁面に、当接するようにしてマウントされている。
【0025】
なお、ATカット振動片20の他端側20aの端面25は、その端面25全体が内壁32aに突き当てられている必要はなく、端面25の一部分が内壁32aに突き当てられるようになっていてもよい。
また、勿論、従来の圧電振動子を図示した図8に示すように、パッケージ30の内側底面に枕部を設けるようにしてもよい。
【0026】
本実施形態の圧電デバイス10は以上のように構成され、ATカット振動片20は、一端側20bとは反対側の他端側20aの端面25が、パッケージ30の内壁32aに突き当てられている。このため、ATカット振動片20が落下の衝撃により他端側(図1の+X側)に動こうとした場合であっても、パッケージの内壁32aが他端側20aの端面25を押さえつけ、ATカット振動片20の他端側20aへのズレを防止する。
さらに、本実施形態では、導電性接着剤40,40は、ATカット振動片20の一端側20b(図1の−X側)へズレないように一端側20bの端面22に付着し、さらに、幅方向(図1の+Y側および−Y側)にズレないように一端側20bの端面22と直交する2つの端面23,24にも付着するようになっている。したがって、ATカット振動片20は、+X側、−X側、+Y側、−Y側である水平方向について、落下による衝撃で動かないように規制されている。
【0027】
図3は、第1の実施形態の第1の変形例に係る圧電デバイス12の概略縦断面図であって、図2に対応している。
この図において、上述した圧電デバイス10の説明で用いた符号と同一の符号を付した箇所は共通する構成であるから、重複した説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
この圧電デバイス12が第1の実施形態の圧電デバイス10と異なるのは、ATカット振動片20は、導電性接着剤40でパッケージ30に接合されている一端側20bの端面22が、パッケージ30の内壁32aに突き当てられている点である。
【0028】
すなわち、本変形例に係る圧電デバイス12では、ATカット振動片20の他端側20aの端面25のみならず、この端面25と反対側の一端側20bの端面22もパッケージ30の内壁32aに突き当てられるようにしてマウントされている。
そして、導電性接着剤40は、図1と同様に、ATカット振動片20の下面や、端面22と直交する方向に沿った端面23,24(図1参照)に付着されているが、ATカット振動片20の一端側20bの端面22には付着するようになってはいない。
【0029】
本第1の実施形態の第1の変形例は以上のように構成されており、第1の実施形態と同様の作用効果を発揮し、さらに、ATカット振動片20は、導電性接着剤40で接合されている一端側20bの端面22が、内壁32aに突き当てられている。
このため、ATカット振動片20が落下の衝撃により一端側20b(図3の−X側)に動こうとしても、内壁32aがその動きを規制し、第1の実施形態に比べてより耐衝撃性に強い圧電デバイスを提供することができる。
また、第1の発明のように導電性接着剤40を一端側20bの端面22に付着しなくても、図3の−X側へのズレを防止できるため、第1の発明に比べて、導電性接着剤40の量を減らすことができる。
なお、ATカット振動片20の各端面22,25は、その全体が内壁32aに突き当てられている必要はなく、各端面22,25の一部分が内壁32aに突き当てられるようになっていてもよい。
【0030】
図4は、第1の実施形態及びその第1の変形例についての、さらなる変形例に係る圧電デバイス14の概略平面図である。
この図において、上述した圧電デバイス10,12の説明で用いた符号と同一の符号を付した箇所は共通する構成であるから、重複した説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
この圧電デバイス14が、上述した圧電デバイス10,12と異なるのは、ATカット振動片20は、一端側20bの端面22と直交する方向に沿った端面23,24が、パッケージ30の内壁32aに突き当てられている点である。
【0031】
すなわち、本変形例に係る圧電デバイス14のATカット振動片20は、一端側20bの端面22や他端側20aの端面25(長手方向の端面)のみならず、これらの端面と直交する2つの端面23,24(短手方向の端面)もパッケージ30の内壁32aに突き当てられて、パッケージ30の内面に嵌入されるようになっている。
そして、導電性接着剤40は、図1と同様にATカット振動片20の下面に付着しているが、図1とは異なり、ATカット振動片20の端面22,23,24には付着するようになってはいない。
【0032】
本発明の第1の実施形態及びその第1の変形例についての、さらなる変形例は以上のように構成されており、このため、第1の実施形態及びその第1の変形例と同様に、ATカット振動片20のX方向のズレを防止する等の作用効果を発揮する。
さらに、ATカット振動片20は、一端側20bの端面22と直交する方向に沿った端面23,24が、内壁32aに突き当てられている。
したがって、ATカット振動片20が、落下の衝撃により、一端側の端面22に沿った方向(図4のY方向)に動こうとしても、内壁32aがその動きを規制し、第1の実施形態に比べてより耐衝撃性に強い圧電デバイスを提供することができる。
また、第1の変形例のように、導電性接着剤40をATカット振動片20の端面23,24に付着させなくても、図4のY方向のズレを防止できるため、第1の変形例に比べて、導電性接着剤40の量を減らすことができる。
なお、ATカット振動片20の各端面22,23,24,25は、その全体が内壁32aに突き当てられている必要はなく、各端面22,23,24,25の一部分が内壁32aに突き当てられるようになっていてもよい。
【0033】
図5および図6は、本発明の第2の実施形態に係る圧電デバイス16であって、図5は圧電デバイス16の図2に対応した概略縦断面図、図6は図5のB−B線の位置で切断した場合の概略横断面図である。
これらの図において、上述した圧電デバイス10の説明で用いた符号と同一の符号を付した箇所は共通する構成であるから、重複した説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
この圧電デバイス16が、第1の実施形態に係る圧電デバイス10と異なるのは、パッケージ30の内壁32aには凹部35が形成されており、この凹部35内にATカット振動片20の他端側20aが嵌入されている点である。
【0034】
具体的には、圧電デバイス16のパッケージ30は、図5に示すように、複数の基板32−1,32−2,32−3を積層するようにして第2の基板32が形成されており、ATカット振動片20の高さと同じ高さに配置された基板32−2の厚みは、ATカット振動片20の厚みと略同様とされている。そして、基板32−2は、内部空間Sに露出した壁面であって、ATカット振動片20の他端側20aの端面25と対向する領域に、凹部35を有している。
なお、本実施形態のパッケージ30は、複数の基板を積層することで凹部35を形成しているが、このような態様に限らず、例えば樹脂を成形型内に射出して凹部35を有するパッケージ30を形成するようにしてもよい。
【0035】
そして、ATカット振動片20の他端側20aの先端部(厚みすべり振動に関与しない部分)が、この凹部35に嵌入されて、凹部35の内面と他端側20aの先端部の表面とが接触するようになっている。すなわち、ATカット振動片20の他端側20aの先端部は、図5に示すように、その主面である上下面が凹部35の内面に接触し、また、図6に示すように、他端側20aの幅方向の端面23,24が凹部35の内面に接触している。
【0036】
本第2の実施形態に係る圧電デバイス16は以上のように構成されており、第1の実施形態に係る圧電デバイス10と同様に、ATカット振動片20のX方向の動きを規制できるなどの作用効果を発揮する。
さらに、パッケージ30の内壁の凹部35内にATカット振動片20の他端側20aが嵌入されているため、ATカット振動片20が落下の衝撃により厚み方向(図5のZ方向)及び幅方向(図6のY方向)に動こうとしても、凹部35の内面とATカット振動片の他端側20aの上下面および端面23,24とが当接して、ATカット振動片20の厚み方向及び幅方向へのズレを防止する。
また、本第2の実施形態では、導電性接着剤40の量や配置を工夫せずに、ATカット振動片20の厚み方向及び幅方向へのズレを防止できるため、第1の実施形態に比べて、導電性接着剤40の量を減らすことができる。
【0037】
図7は、本発明の第3の実施形態に係る圧電デバイス18の図2に対応した概略縦断面図である。
この図において、上述した圧電デバイス10の説明で用いた符号と同一の符号を付した箇所は共通する構成であるから、重複した説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
この圧電デバイス18が、第1の実施形態に係る圧電デバイス10と異なるのは、ATカット振動片20の端面が、直接には前記パッケージの内壁に接していない点である。
【0038】
すなわち、第3の実施形態に係る圧電デバイス18については、パッケージ30の内壁32aには、その内壁32aよりも柔軟性のある緩衝材60が設けられている。
この緩衝材60は、ATカット振動片20とパッケージ30との間における、相互の振動あるいは衝撃の伝達を抑制するための部材であり、緩衝材60にATカット振動片20の他端側20aの端面25が突き当てられている。
【0039】
具体的には、パッケージ30の第2の基板32は、複数の基板32−1,32−2,32−3を積層して形成されており、ATカット振動片20の端面25と対向する基板32−2の内壁に孔62が形成されている。そして、この孔62内に、ATカット振動片20の厚みより大きな高さを有する緩衝材60が配置され、この緩衝材60の表面にATカット振動片20の他端側20aの端面25が突き当てられるようになっている。
【0040】
また、緩衝材60は、少なくともパッケージ30の内壁32aよりも柔軟性があればよく、本実施形態の場合は、パッケージ30を形成するセラミックよりも柔軟性の高いエポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂等の樹脂、或いは合成ゴム等が利用できる。
また、本実施形態における緩衝材60は、例えば、ATカット振動片20のマウント時に導電性接着剤40を加熱するなど、圧電デバイス18を製造する際に高温下にさらされるため、高温下においてもガスの発生が少ないシリコーン系樹脂などの熱可塑性樹脂を使用している。
【0041】
本発明の第3の実施形態に係る圧電デバイス18は以上のように構成されており、第1の実施形態と同様の作用効果を発揮し、さらに、パッケージの内壁32aには、その内壁32aよりも柔軟性のある緩衝材60が設けられており、この緩衝材60にATカット振動片20の端面25が突き当てられている。
このため、ATカット振動片20の振動がパッケージ30側に伝達しようとしても、その振動を緩衝材60が吸収して、パッケージ30側への振動漏れを有効に防止する。したがて、ATカット振動片20のCI値(クリスタルインピーダンス値)が高まることを有効に防止するなどして、優れた振動特性を得ることができる。また、圧電デバイス18の落下時の衝撃が強い場合であっても、パッケージ30を通じてATカット振動片20に与える衝撃を緩衝材60が吸収し、ATカット振動片20に生じる割れや欠けを防止できる。
さらに、本第3の実施形態の緩衝材60は熱可塑性の樹脂であるので、緩衝材60が高温下にさらされた場合であっても、熱硬化性樹脂等に比べてガスの発生が少なく、緩衝材60が用いられたことによる振動特性への悪影響を防止できる。
【0042】
本発明は上述の実施形態に限定されない。実施形態や各変形例の各構成はこれらを適宜組み合わせたり、省略し、図示しない他の構成と組み合わせることができる。
例えば、上述した圧電デバイス10,12,14,16,18は圧電振動子に限らず、圧電振動子にIC(発振回路素子)を電気的に接続した圧電発振器などであってもよい。
また、第2の実施形態と第3の実施形態とを組み合わせ、図5の凹部35の中に、凹部35から飛び出さないようにして緩衝材60を配置し、この緩衝材60に端面25が突き当てられるようにして、他端側20aを凹部35に嵌入するようにしてもよい。
また、第1の実施形態およびその変形例を実施する場合、第3の実施形態のように、端面22,23,24と内壁32aとの間に、緩衝材60を介在させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る圧電デバイスの概略斜視図。
【図2】図1のA−A線概略切断断面図。
【図3】第1の実施形態の第1の変形例に係る圧電デバイスの概略縦断面図。
【図4】第1の実施形態及びその第1の変形例についての、さらなる変形例に係る圧電デバイスの概略平面図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る圧電デバイスの概略縦断面図。
【図6】図5のB−B線の位置で切断した場合の概略横断面図。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る圧電デバイスの概略縦断面図。
【図8】従来の圧電デバイスとしての圧電振動子の構成例を示す概略断面図。
【符号の説明】
【0044】
10,12,14,16,18・・・圧電デバイス、20・・・圧電振動片(ATカット振動片)、20b・・・一端側、20a・・・他端側、22,23,24,25・・・端面、26・・・圧電素子、30・・・パッケージ、32a・・・内壁、35・・・凹部、40・・・導電性接着剤、60・・・緩衝材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の圧電素子から形成された圧電振動片と、この圧電振動片を内側に収容するようにしたパッケージとを備える圧電デバイスであって、
前記圧電振動片は、一端側が導電性接着剤で前記パッケージに接合されており、他端側の端面が前記パッケージの内壁に突き当てられている
ことを特徴とする圧電デバイス。
【請求項2】
前記圧電振動片は、前記導電性接着剤で前記パッケージに接合されている前記一端側の端面が、前記パッケージの内壁に突き当てられていることを特徴とする、請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項3】
前記圧電振動片は、前記一端側の端面と直交する方向に沿った端面が、前記パッケージの内壁に突き当てられていることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の圧電デバイス。
【請求項4】
前記パッケージの内壁には凹部が形成されており、この凹部内に前記圧電振動片の前記他端側が嵌入されていることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の圧電デバイス。
【請求項5】
前記パッケージの内壁には、その内壁よりも柔軟性のある緩衝材が設けられており、この緩衝材に前記圧電振動片の前記他端側の端面が突き当てられていることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の圧電デバイス。
【請求項6】
前記緩衝材は、熱可塑性の樹脂であることを特徴とする、請求項5に記載の圧電デバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−100899(P2006−100899A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−281126(P2004−281126)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】