説明

圧電ポンプおよび、その圧電ポンプを備えた冷却庫

【課題】 駆動時に振動および騒音が発生しにくく、作動効率のよい圧電ポンプ、およびそれを備えた成績係数(COP;Coefficient of Performance)の高いスターリング冷却庫を提供する。
【解決手段】 大気圧以下に減圧された熱媒体循環回路に使用される圧電ポンプ40であって、ケーシング41と、ケーシング41内に設けられ、熱媒体を受け入れる作動空間42と、作動空間42内に熱媒体を吸入する吸入部44と、作動空間42内から熱媒体を吐出する吐出部45と、ケーシング41内に設けられ、内圧を大気圧以下とされた圧力に設定して密封した背圧空間43と、ケーシング41内の空間を作動空間42と背圧空間43とに仕切る圧電素子46とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電ポンプおよびその圧電ポンプを備えた冷却庫に関し、特に流体を圧電素子で加圧して吐出する電圧ポンプおよびその圧電ポンプを備えた冷却庫に関する。
【背景技術】
【0002】
媒体を循環させるポンプとして、水晶やニオブ酸リチウムなどの圧電素子を用いた圧電ポンプが従来から用いられている。
【0003】
上記の圧電ポンプは、ケーシングと、該本体内に作動空間および背圧空間とを備える。ここで、作動空間と背圧空間とは圧電素子によって隔てられている。また、作動空間側のケーシングには、媒体を吸引する吸込孔と、該媒体を吐出する吐出孔とが設けられ、背圧空間側のケーシングには、背圧空間の圧力を調整するための背圧孔が設けられている。なお、吸込孔と吐出孔には、媒体を逆流させない逆止弁がそれぞれ設けられている。
【0004】
上記の圧電ポンプを動作させる際は、圧電素子に電気信号を与える。これにより、該圧電素子は振幅運動する。なお、この際、圧電素子の端部はケーシングに固定されており、該圧電素子は凸面形状に変形しながら振幅運動する。この結果、作動空間の体積が変動し、該作動空間内の圧力が圧電素子の変形状態に応じて変動して、媒体を吸込/吐出する。
【0005】
ここで、上記の圧電素子の変形により、背圧空間の体積も変化することになるが、この結果、背圧空間の圧力が変動すると、圧電素子の運動方向と逆向きの力を生じさせることになり、結果として圧電ポンプの作動効率が低下する。これに対し、圧電素子の変形状態に関わらず背圧空間の圧力が一定となるように、ケーシングの背圧空間側に背圧孔を設けている。
【0006】
また、このような圧電ポンプを適用するデバイスとしては、たとえばスターリング冷却庫における冷媒の循環回路などが挙げられる。
【特許文献1】特開2000−205682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような圧電ポンプにおいては、以下のような問題があった。上記のポンプを、たとえば媒体の圧力が大気圧に比べて低い回路に接続した場合、背圧空間の圧力が大気圧であるのに対し、作動空間側の圧力が低いため、圧電ポンプが動作しない状態で、圧電素子が作動空間側に凸な形状に反り曲がり、正常な動作を行なうことができない場合がある。その結果、該圧電ポンプの作動効率が低下する。
【0008】
ところで、特開2000−205682号公報(従来例1)において、スターリング冷凍機と冷却器の間の配管に設けられ、該配管内の熱媒体を循環させるポンプが開示されている。しかしながら、従来例1においては、ポンプ構造の詳細は開示されておらず、上述した作動空間と背圧空間との圧力差による圧電ポンプの作動効率の問題については未解決である。
【0009】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、駆動時に振動および騒音が発生しにくく、作動効率のよい圧電ポンプ、およびそれを備えた成績係数(COP;Coefficient of Performance)の高いスターリング冷却庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る圧電ポンプは、1つの局面では、大気圧以下に減圧された熱媒体循環回路に使用される圧電ポンプであって、ケーシングと、ケーシング内に設けられ、熱媒体を受け入れる作動空間と、作動空間内に熱媒体を吸入する吸入部と、作動空間内から熱媒体を吐出する吐出部と、ケーシング内に設けられ、内圧を大気圧以下とされた圧力に設定して密封した背圧空間と、ケーシング内の空間を作動空間と背圧空間とに仕切る圧電素子とを備える。上記圧電ポンプは、好ましくは、吸入部と接続して、熱媒体が流通する第1流路と、吐出部と接続して、熱媒体が流通する第2流路と、第1流路、第2流路および、作動空間内の熱媒体を排出する第1排出部と、をさらに備えた、請求項1または請求項2に記載の圧電ポンプであって、排出部と背圧空間とを連通する連通管を設け、排出部と背圧空間とを一緒に真空引きするようにして成る。上記圧電ポンプは、さらに好ましくは、排出部が、第2流路に接続され、連通管をドレンパイプに利用できるようにして成る。本発明にかかる圧電ポンプは、1つの局面では、スターリング冷凍機で庫内を冷却する冷却庫において、スターリング冷凍機の高熱部の熱を庫外壁面に与える二次冷媒循環回路に上記圧電ポンプを使用して成る。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、圧電ポンプの作動空間と背圧空間とを別個独立した上、背圧空間内を作動空間側の圧力に近接させているため、駆動時に振動および騒音が発生しにくく、作動効率の良い圧電ポンプを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1から図6を用いて、本実施の形態に係る圧電ポンプおよびスターリング冷却庫について説明する。図1は、本実施の形態に係るスターリング冷却庫10の概略構成を示す斜視図である。この図1に示されるように、スターリング冷却庫10は、冷蔵対象物を収容する冷蔵室21と、冷凍対象物を収容する冷凍室22と、冷蔵室21と冷凍室22とを区画し断熱材から構成されたキャビネット20を備えている。
【0013】
また、スターリング冷却庫10の略中央部には、機械室23が設けられており、スターリング冷却庫10の底面には、ドレン水が貯留される図示されないドレンパンが設けられている。機械室23内には、低温ヘッド27と高温ヘッドとを含むスターリング冷凍機24と、高温ヘッドに設けられた蒸発器25と、蒸発器25と連通する凝縮器26とが設けられている。凝縮器26内には、蒸発器25内にて生成された気体状の熱媒体が流通する図示されない管路が設けられている。また、凝縮器26には、凝縮器26内に設けられた管路から分岐するチャージパイプ37が設けられている。チャージパイプ37は、凝縮器26の側面から外部に向けて突出するように配置されており、このチャージパイプ37の先端部は、通常時、溶着されて密封されている。
【0014】
蒸発器25は、2分割されており、略円柱状の高温ヘッドに両側面側から嵌め込まれている。蒸発器25内には、水またはアルコール水等からなる熱媒体が充填されている。また、蒸発器25の上端部側には、凝縮器26に接続された連結管30が設けられており、連結管30内は蒸発器25で蒸発した気体状の熱媒体が流通する。さらに、蒸発器25の底面側には、凝縮器26と接続され、凝縮器26内で凝縮した液体状の熱媒体が流通する戻り管31が設けられている。
【0015】
また、蒸発器25には、熱媒体が循環する熱媒体循環回路(二次媒体循環回路)39が接続されている。蒸発器25内は、高温ヘッドの温度で熱媒体を蒸発させるために大気圧より低く設定されている。例えば、熱媒体として水を用いると共に、蒸発器25内の熱媒体の圧力を10.5(KPa)とした場合には、蒸発器25内の熱媒体は、45℃程度で沸騰する。熱媒体循環回路39は、蒸発器25からスターリング冷却庫10の底面側に向けて配置された下降パイプ32と、発露防止パイプ33と、冷蔵室用発露防止パイプ35と、冷凍室用発露防止パイプ36とを備えている。下降パイプ32の高低差は、例えば、1mとされている。この場合、45℃の水の密度は、約989.4kg/mであるため、下降パイプ32の最下端部での圧力は、約20.2(KPa)となる。また、下降パイプ32は、スターリング冷却庫10の背面側に配置されており、スターリング冷却庫10の底面側で、水平方向に屈曲している。下降パイプ32の水平方向に屈曲した部分の先端部には、圧電ポンプ40が配置されている。この圧電ポンプ40より下流側には、スターリング冷却庫10の底面に発露防止パイプ33が配置されている。この発露防止パイプ33は、スターリング冷却庫10の底面に配置されたドレンパンの周囲に配置されている。すなわち、発露防止パイプ33は、スターリング冷却庫10の背面側から前面側に延在し、前面側を通って、スターリング冷却庫10の前面側から背面側に向けて延在する。
【0016】
そして、発露防止パイプ33は、スターリング冷凍庫10の背面側に配置された分岐部34に接続される。さらに、発露防止パイプ33は、分岐部34で、冷蔵室用発露防止パイプ35と冷凍室用発露防止パイプ36とに分岐する。冷凍室用発露防止パイプ36は、スターリング冷却庫10の背面側と、冷凍室22のドアパッキン当接部の側辺部分と、冷凍室22のドアパッキン当接部の上辺部分と、冷蔵室21のドアパッキン当接部の底辺部分とを通り、蒸発器25に接続されている。
【0017】
冷蔵室用発露防止パイプ35は、冷凍室22のドアパッキン当接部の側辺部分と、冷蔵室21のドアパッキン当接部の両側辺部分と、冷蔵室21のドアパッキン当接部の上辺部部分を通り、蒸発器25に接続されている。
【0018】
図2は、本実施の形態に係る圧電ポンプ40の側断面図であり、この図2に示されるように、圧電ポンプ40は、ケーシング41と、ケーシング41内に設けられ、熱媒体を受け入れる作動空間42と、作動空間42内に熱媒体を吸入する吸い込み部44と、作動空間42内の熱媒体を吐出する吐出部45と、ケーシング41内に設けられ密封された背圧空間43と、ケーシング41内の空間を作動空間42と背圧空間43とに仕切る圧電素子46とを備えている。
【0019】
圧電素子46の端部は、ケーシング41内に固定されており、圧電素子46には、電気信号が加えられる。圧電素子46は電気信号が加えられると、端部がケーシング41に固定されているため、凸面形状に変形する。そして、圧電素子46の凸面形状に変形した部分が、背圧空間43側に突出したり、作動空間42側に突出したりするように、圧電素子46が振幅運動する。圧電ポンプ40の駆動最大圧力は、例えば、消費電力3VA級のもので50(KPa)であり、この圧電ポンプ40の圧電素子46は、表面と裏面側から受ける圧力の差が50(KPa)より低い場合には、振幅運動可能とされている。
【0020】
なお、駆動最大圧力とは、作動空間42と背圧空間43と内圧が同じ場合に、圧電ポンプ40が熱媒体を吸入する際に熱媒体を吸引する圧力または、熱媒体を吐出する際に熱媒体を吐出する圧力のうち最大の圧力を意味する。すなわち、圧電素子46の表裏面にかかる圧力が同じ時に、圧電素子46が熱媒体に加えることができる圧力のうち、最大の圧力を意味する。
【0021】
ケーシング41は、断面円形状に形成されており、大径部40Aと、大径部40Aの両側面に配置された小径部40B、40Cとを備えている。大径部40Aの作動空間42側の側面には、小径部40Bが配置されており、この小径部40Bには、吸い込み部44と吐出部45とが設けられている。大径部40Aの背圧空間43側の側面には、小径部40Cが配置されている。ケーシング41内には、小径部40Bと大径部40Aとを区画する区画壁60が設けられている。また、この区画壁60は、小径部40B内を吸い込み空間44bと、吐出空間45bとに区画する。
【0022】
吸い込み部44は、吸い込み空間44bと、吸い込み空間44bと作動空間42とを連通する吸い込み口44cと、作動空間42内の熱媒体が吸い込み空間44bに逆流することを抑制する逆止弁(第1逆止弁)48と、ケーシング41に形成された接続口44aと、接続口44aに接続された接続管(第1流路)51とを備えている。吸い込み空間44は、ケーシング41と区画壁60とにより形成されており、吸い込み口44cは、区画壁60に形成されている。逆止弁48は、吸い込み口44cに形成されており、接続管51は、熱媒体循環回路39の下降パイプ32に接続されている。このため、吸い込み空間44bは、下降パイプ32の最下端部と連通しており、吸い込み空間44b内の圧力は、下降パイプ32内の下端部の内圧となる。これにより、下降パイプ32内の下端部の圧力が、例えば、約20.2(KPa)の場合には、吸い込み空間44b内の圧力は、約20.2(KPa)となる。
【0023】
その一方で、密封された背圧空間43内の内圧は、作動空間42内の圧力に圧電ポンプ40の駆動最大圧力より小さい圧力を加えた圧力に設定されている。このため、例えば、吸い込み空間44b内の圧力が20.2(KPa)とされ、圧電ポンプ40の最大駆動圧力が50(KPa)とされている場合には、背圧空間42内の圧力は、70.3(KPa)より低い圧力に設定されている。このように背圧空間43内の圧力を設定することにより、圧電素子46の背圧空間43側から受ける圧力と、作動空間42側から受ける圧力との差が、圧電ポンプ40の最大駆動圧力より小さくなり、圧電素子46が振幅運動することができ、熱媒体を循環させることができる。
【0024】
また、吸い込み空間44b内の圧力が20.2(KPa)とされ、圧電ポンプ40の最大駆動圧力が50(KPa)とされているときには、背圧空間43内の圧力を、0(KPa)以上40.4(KPa)以下に設定することが好ましい。すなわち、背圧空間43内の圧力が0(KPa)とされている場合においても、圧電素子46の背圧空間43側の表面に受ける圧力と、作動空間側42側の表面から受ける圧力との差は、圧電ポンプ40の最大駆動圧力より小さいため、圧電素子46は振幅運動することができ、熱媒体を流通させることができる。
【0025】
また、背圧空間43内の圧力を40.4(KPa)より高く設定すると、圧電素子46の作動空間42側の表面が受ける圧力と、背圧空間43側の表面が受ける圧力と差が、大きくなり、圧電素子46の振幅運動が抑制され、熱媒体を強制循環させることが困難なものとなるためである。その一方で、背圧空間43内の圧力を40.4(KPa)以下に設定することにより、圧電素子46の背圧空間43側の表面が受ける圧力と、作動空間42側の表面が受ける圧力との圧力差は、20.3(KPa)以下となる。このため、圧電素子46は、相対的に背圧空間43側から20.3(KPa)の圧力で押圧されるが、圧電ポンプ40の最大駆動圧力が50(KPa)とされているため、圧電素子46は39.7(KPa)のマージンを得た状態で、良好に振幅運動することができる。このように、作動空間42内と背圧空間43内の圧力を近接させることにより、圧電ポンプ40の圧電素子46の表裏面にかかる圧力差が小さくなり、圧電素子46の振幅運動が良好に確保される。
【0026】
吐出部45は、ケーシング41と区画壁60とにより区画された吐出空間45bと、区画壁60に形成され吐出空間45bと作動空間42とを連通させる吐出口45cと、吐出口45cに設けられ吐出空間45b内の熱媒体が作動空間42内に逆流することを抑制する逆止弁(第2逆止弁)47と、ケーシング41に形成された接続口45aと、接続口45aに接続された接続管(第2流路)52とを備えている。接続管52は、熱媒体循環回路39の発露防止パイプ33に接続されている。また、接続管52には、接続管51内と接続管52内と作動空間42内と熱媒体循環回路39内の熱媒体を排出するための排出部(第1排出部)が設けられている。
【0027】
この排出部は、接続管52から分岐して、先端部が密封された密封管路(第1排出部)50bを備えている。この密封管路50bの先端部は溶着されている。背圧空間43側に配置された小径部40Cの略中央部には、接続口53が形成されており、この接続口53には、先端部が溶着されて密封された密封管路(第2排出部)50aが接続されている。
【0028】
図4から図6は、上記のように構成された圧電ポンプ40を熱媒体循環回路39に接続する工程を示す図である。図4に示されるように、圧電ポンプ40は、熱媒体循環回路39に接続される前の状態においては、密封管路50aと密封管路50bとが接続されて構成された連結管50が設けられており、連結管50により図示されない背圧空間43と作動空間42とが連通している。このように構成されている接続前の圧電ポンプ40の接続管51を下降パイプ32に接続して、接続管52を発露防止パイプ33に接続する。
【0029】
そして、図1において、チャージパイプ37の先端部を開口して、蒸発器25内、熱媒体循環回路39内および圧電ポンプ40内の真空引きを行なう。この際、作動空間42と背圧空間43とは、連通した状態であるため、作動空間42および背圧空間43のいずれについても真空引きがなされる。真空引きが終了すると、連通管50を切断・封止してから蒸発器25、熱媒体循環回路39および圧電ポンプ40内に熱媒体が充填される。
【0030】
真空引きが終了すると、図5に示されるように、連結管50の中央部を切断すると共に、切断面を溶着して密封する。この際、例えば、超音波溶着機を用いて切断することにより、連結管50の切断および溶着を良好に行なうことができる。これにより、密封管路50aと密封管路50bとが形成される。なお、図5においては、連結管50の略中央部分の一箇所を切断・溶着しているため、形成された密封管路50aの先端部と密封管路50bの先端部とは互いに対向するように形成される。なお、図6に示されるように、連結管50を2箇所で切断・溶着を行なってもよい。この場合には、形成された密封管路50aと密封管路50bとは、互いに平行となるように配置される。そして、熱媒体の充填が終了すると、図1に示されるチャージパイプ37の先端部が溶着され密封される。
【0031】
このように構成されたスターリング冷却庫10の作用について説明する。図1において、蒸発器25内の熱媒体は、蒸発器25内にて蒸発して高温ヘッドを冷却する。蒸発した気体状の熱媒体は、連結管30を通って凝縮器26内で凝縮され液化する。液化した熱媒体は、戻り管31を通って、蒸発器25内に戻される。蒸発器25内の液体状の熱媒体は、蒸発器25の下面側に接続された下降パイプ32を介して、熱媒体循環回路39内に入り込む。熱媒体循環回路39内に入り込んだ熱媒体は、圧電ポンプ40により熱媒体循環回路39内を強制循環させられる。
【0032】
図3は、圧電素子46の凸面形状部分が背圧空間43側に突出したときの圧電ポンプ40の断面図である。この図3に示されるように、圧電素子46が背圧空間43側に突出した際には、作動空間42内の圧力が低下し、逆止弁48が吸い込み口44cを開口して、熱媒体が作動空間42内に吸引される。そして、図2に示されるように、圧電素子46が作動空間42側に突出した場合には、作動空間42内の圧力が上昇し、逆止弁48が吸い込み口44cを閉鎖すると共に、逆止弁47が吐出口45cを開口して、熱媒体が接続管52内に吐出される。この際、背圧空間43内の圧力は、作動空間42内の熱媒体の圧力と近似しているため、圧電素子46の表裏面が受ける圧力差は、圧電ポンプ40の最大駆動圧力より小さくなる。このため、圧電素子46は良好に振幅運動し、圧電ポンプ40は、熱媒体を熱媒体循環回路39内を良好に強制循環させる。
【0033】
また、背圧空間43は密封されているため、背圧空間43内の熱媒体が、圧電ポンプ40内を出入りすることがなく、キャビテーション、振動および騒音の発生が抑制されている。また、蒸発器25から熱媒体循環回路39に熱媒体が循環すると、冷凍室22と冷蔵室21とのドアパッキン当接部を温めて、発露防止が図られる。
【0034】
上記のようなスターリング冷却庫10について、修理やメンテナンスを施すためには、熱媒体を抜き取る場合がある。熱媒体を抜き取るためには、まず、チャージパイプ37、密封管路50aおよび密封管路50bの先端部を切断して開口する。密封管路50bは、熱媒体循環回路39の下端部側に配置されているため、蒸発器25内と熱媒体循環回路39内と圧電ポンプ40の作動空間42内とに充填された熱媒体が排出される。この際、チャージパイプ37は、熱媒体循環回路39の上端部側に配置されているため、チャージパイプ37が開口すると、チャージパイプ37から外部の空気が熱媒体循環回路39内等に入り込み、熱媒体が良好に排出される。
【0035】
このように、スターリング冷却庫10内の熱媒体を抜き取った後に、例えば、圧電ポンプ40や圧電素子46の交換等のメンテナンスや修理が施される。
【0036】
上記のように構成された圧電ポンプ40およびこの圧電ポンプ40を備えたスターリング冷却庫10においては、圧電素子46の表裏面にかかる圧力の差が軽減されているため、圧電素子46が良好に振幅運動して熱媒体を良好に強制循環させることができ、圧電ポンプの作動効率を向上させることができる。これに伴い、圧電ポンプ40が従来のものと比較して作動効率がよいので、結果として成績係数の高いスターリング冷却庫を得ることができる。また、背圧空間43内に充填された熱媒体は、圧電ポンプ40内を出入りすることがないため、圧電ポンプ40の駆動時においても、キャビテーションの発生および、騒音、振動の発生を抑制することができる。
【0037】
さらに、上記圧電ポンプ40およびこの圧電ポンプ40を備えたスターリング冷却庫10は、圧電ポンプ40内の圧電素子46が良好に振幅運動するため、熱媒体が良好に熱媒体循環回路39内を循環することができ、発露防止を良好に図ることができる。その上、密封管路50a、50bが熱媒体循環回路39の下端部側に配置されているので、密封管路50a、50bの先端部を開口することにより、熱媒体循環回路39内や圧電ポンプ40内の熱媒体を略全て容易に排出することができ、メンテナンス等を容易に施すことができる。また、この密封管路50a、50bは、先端部が溶着されており、先端部を切断するという簡易な作業により、熱媒体を抜き取ることができ、また、熱媒体を充填する際には、密封管路50a、50bの先端部を溶着することにより、熱媒体循環回路39内を密封することができ、真空引きおよび熱媒体の再充填を容易に行なうことができる。
【0038】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、圧電ポンプおよびこの圧電ポンプを備えたスターリング冷却庫に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態に係るスターリング冷却庫の概略構成を示す斜視図である。
【図2】実施の形態に係る圧電ポンプの側断面図である。
【図3】圧電素子が背圧空間側に突出したときの圧電ポンプの断面図である。
【図4】圧電ポンプを熱媒体循環回路に接続する第1工程を示した図である。
【図5】圧電ポンプを熱媒体循環回路に接続する第2工程を示した図である。
【図6】圧電ポンプを熱媒体循環回路に接続する第2工程の変形例を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
10 スターリング冷却庫、40 圧電ポンプ、41 ケーシング、42 作動空間、43 背圧空間、44 吸い込み部、45 吐出部、46 圧電素子、47 逆止弁(第2逆止弁)、48 逆止弁(第1逆止弁)、50a 密封管路(第2排出部)、50b 密封管路(第1排出部)、51 接続管(第1流路)、52 接続管(第2流路)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧以下に減圧された熱媒体循環回路に使用される圧電ポンプであって、
ケーシングと、
前記ケーシング内に設けられ、前記熱媒体を受け入れる作動空間と、
前記作動空間内に前記熱媒体を吸入する吸入部と、
前記作動空間内から前記熱媒体を吐出する吐出部と、
前記ケーシング内に設けられ、内圧を前記大気圧以下とされた圧力に設定して密封した背圧空間と、
前記ケーシング内の空間を前記作動空間と前記背圧空間とに仕切る圧電素子とを備えた圧電ポンプ。
【請求項2】
前記吸入部と接続して、前記熱媒体が流通する第1流路と、
前記吐出部と接続して、前記熱媒体が流通する第2流路と、
前記第1流路、前記第2流路および、前記作動空間内の前記熱媒体を排出する第1排出部と、
をさらに備えた、請求項1に記載の圧電ポンプであって、
前記排出部と前記背圧空間とを連通する連通管を設け、前記排出部と前記背圧空間とを一緒に真空引きするようにして成ることを特徴とする請求項1に記載の圧電ポンプ。
【請求項3】
前記排出部が、前記第2流路に接続され、前記連通管をドレンパイプに利用できるようにして成ることを特徴とする請求項2に記載の圧電ポンプ。
【請求項4】
スターリング冷凍機で庫内を冷却する冷却庫において、
前記スターリング冷凍機の高熱部の熱を庫外壁面に与える二次冷媒循環回路に請求項1から請求項3のいずれかに記載の圧電ポンプを使用して成る冷却庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−161674(P2006−161674A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354222(P2004−354222)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】