説明

地上ディジタル放送受信装置

【課題】固定受信機向け放送の映像提示と携帯受信機向け放送の映像提示とを切り替える際に映像表示が一瞬(1〜4秒間)途切れるという事態を防止する。
【解決手段】デマルチプレクサ2は、チューナ1から出力されたトランスポートストリームを、MPEG2のビデオストリーム及びオーディオストリームと、H.264のビデオストリーム及びオーディオストリームに分離する。そして、MPEG2のビデオストリームを映像デコーダ(MPEG2用)3に供給し、H.264のビデオストリームを映像デコーダ(H.264用)4に供給する。映像デコーダ3,4からそれぞれ出力される映像データは、選択部6に供給される。選択部6は、ユーザによる手動操作又は前記エラーレートに基づく自動選択によって一方の映像データを選択する。選択された映像データは、映像処理部7に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地上ディジタル放送を受信する地上ディジタル放送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地上ディジタル放送を受信する受信装置は、受信電波からトランスポートストリーム(TS)を復調するチューナを備え、前記トランスポートストリームからパケットを分離し、前記パケットをデコーダがデコードすることで映像音声を出力する。そして、地上ディジタル放送では、13セグメントのうちの一つを携帯受信機向け放送に用い、この1つのセグメントにて独自サービスを送出するとともに(ワンセグ放送)、12セグメントを固定受信機向け放送のサービス提供に用いるとする運用が可能である(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−277873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記ワンセグ放送では、映像はH.264によってエンコードされており、固定受信機向け放送では、映像はMPEG2でエンコードされている。放送受信装置のデコーダは、ディジタルシグナルプロセッサ(DSP)から成り、当該デコーダにロードするマイクロコードを変更することで、H.264デコーダ又はMPEG2デコーダとして機能する。
【0004】
しかしながら、前記H.264による映像生成処理においては映像フォーマット情報が約2秒間隔で送出されるなどの理由により、固定受信機向け放送の映像提示状態から携帯受信機向け放送の映像提示に切り替わる際、映像の提示が一瞬(1〜4秒間)途切れることが生じる。
【0005】
この発明は、上記の事情に鑑み、固定受信機向け放送の映像提示と携帯受信機向け放送の映像提示とを切り替えることができ且つこの切替に際して映像表示が一瞬途切れるという事態を防止することができる地上ディジタル放送受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の地上ディジタル放送受信装置は、上記の課題を解決するために、地上ディジタル放送を受信してトランスポートストリームを出力するチューナと、前記トランスポートストリームからパケットを分離するデマルチプレクサと、前記トランスポートストリームから分離された固定受信機向け放送の映像パケットをデコードする第1映像デコーダと、前記トランスポートストリームから分離された非固定受信機向け放送の映像パケットをデコードする第2映像デコーダと、前記両映像デコーダから出力される映像データのうちから一方の映像データを選択する選択部と、選択された映像データに基づいて映像表示を行う表示部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
上記の構成であれば、前記第1映像デコーダと第2映像デコーダの両方から出力される映像データのうちから一方の映像データを選択することとしており、映像切替時には他方の映像のデコードは済んでいるので、固定受信機向け放送の映像提示と携帯受信機向け放送の映像提示とを切り替えに際して映像表示が一瞬(1〜4秒間)途切れるという事態を防止することができる。
【0008】
上記構成の地上ディジタル放送受信装置において、前記選択部は、ユーザの手動操作に応じて一方の映像データを選択することとしてもよい。
【0009】
これら構成の地上ディジタル放送受信装置において、受信品質を判定する判定部と、受信品質が所定の閾値以上のときには前記選択部に前記第1映像デコーダが出力する映像データを選択させ、前記受信品質が所定の閾値未満のときには前記選択部に前記第2映像デコーダが出力する映像データを選択させる制御部と、を備えていてもよい。
【0010】
これら構成の地上ディジタル放送受信装置において、前記判定部は、固定受信機向け放送の受信品質及び非固定受信機向け放送の受信品質の両方を判定し、前記表示部は、選択映像又は他方の映像の受信品質に関する情報を表示することとしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、固定受信機向け放送の映像提示と携帯受信機向け放送の映像提示とを切り替える際に映像表示が一瞬(1〜4秒間)途切れるという事態を防止することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の実施形態の車載型の地上ディジタル放送受信装置を図1乃至図3に基づいて説明する。
【0013】
地上ディジタル放送受信装置30におけるアンテナは、地上放送局から送られてくるディジタル放送信号を受信する。地上ディジタルチューナ1は、映像音声データを含む高周波ディジタル変調信号のうちから特定周波数の信号を取り出す。また、チューナ1は、OFDM(直交周波数多重方式)復調回路、逆インタリーブ回路、誤り訂正回路などを備えることにより、選択したディジタル変調信号を復調してトランスポートストリーム(TS)を出力する。なお、電波受信状況(放送受信品質)が悪いとき、前記誤り訂正回路でのパケット訂正が不能(受信エラー或いはパケット欠落)となることが生じ、その監視結果であるエラーレート(パケット欠落率)はチューナ1からマイクロコンピュータ13に通知される。この実施形態では、いわゆるワンセグ放送用(携帯受信機向け放送)の1セグメントと他の12セグメント(固定受信機向け放送)との各々について(各々の階層について)パケットエラーを監視しており、それぞれについてのエラーレートをマイクロコンピュータ13に通知している。
【0014】
DEMUX(デマルチプレクサ)2は、前記チューナ1から出力されたトランスポートストリームを、MPEG2(Moving Picture Experts Group2)のビデオストリーム及びオーディオストリームと、H.264のビデオストリーム及びオーディオストリームに分離する。そして、MPEG2のビデオストリームを映像デコーダ(MPEG2用)3に供給し、H.264のビデオストリームを映像デコーダ(H.264用)4に供給する。音声デコーダ5には選択されたサービスのオーディオストリームが入力される。音声デコーダ5は、例えば、携帯受信機向け放送と固定受信機向け放送の両者に対する上位デコーダとなっている。また、デマルチプレクサ2はトランスポートストリームから分離したPSI/SI(Program Specific Information/Service Information)をマイクロコンピュータ13に供給する。PSI/SIは、携帯受信機向け放送の放送に存在するものと、固定受信機向け放送の放送に存在するものとがあり、マイクロコンピュータ13はそれぞれのPSI/SIから抽出したEPG情報などをメモリ14に格納する。
【0015】
映像デコーダ3,4からそれぞれ出力される映像データは、選択部6に供給される。選択部6は、マイクロコンピュータ13によって制御され、ユーザによる手動操作又は前記エラーレートに基づく自動選択によって一方の映像データを選択する。
【0016】
選択された映像データは、映像処理部7に供給される。また、音声デコーダ5から出力される音声データは、音声処理部8に出力される。映像処理部7は、選択された映像データを受け取ってD/A変換等を行い、映像信号を生成する。なお、映像処理部7はスケーラ機能を備え、携帯受信機向け放送の映像を拡大処理し、固定受信機向け放送の映像と同様に画面全体に映像を表示させることができる。また、映像処理部7はOSD(オンスクリーンディスプレイ機能)を有し、マイクロコンピュータ13から出力指示された文字情報や画像情報に基づく映像を前記映像データに重畳する。音声処理部8は、音声デコーダ5から出力された音声データを受け取って音声データを生成する。
【0017】
映像信号を受け取ったドライバ9はディスプレイ(例えば、液晶表示パネル等)10を駆動する。音声データはD/A変換アンプ11を経てアナログ信号に変換されてスピーカ12に入力される。
【0018】
メモリ(RAM、EEPROM、フラッシュメモリ、ROM等)14には、各種プログラムやデータなどが格納される。地上ディジタル放送受信装置30の電源ON時に、マイクロコンピュータ13は、ROMに格納されているプログラムやデータをRAMに展開し、RAM上のプログラムを実行する。操作部15のキーを操作すると、そのキーに対応した指令を意味する信号がマイクロコンピュータ13に供給される。
【0019】
マイクロコンピュータ13は、操作部15に設けられている映像切替キーの押下を検出すると、現在選択している映像ではない方の映像を選択するよう選択部6に指令を与える。すなわち、固定受信機向け放送の映像を提示している状態で前記映像切替キーが押下されると、携帯受信機向け放送の映像の提示に切り替わり、携帯受信機向け放送の映像を提示している状態で前記映像切替キーが押下されると、固定受信機向け放送の映像の提示に切り替わる。なお、ユーザは、例えばメニュー画面上で自動切替モードを選択することができる。マイクロコンピュータ13は、前記自動切替モードが選択されているときには、前記エラーレート(放送受信品質)に基づいて映像選択処理を行う。例えば、固定受信機向け放送のパケットのエラーレートが所定のレベル以下のときには前記選択部6に映像デコーダ3が出力する映像データを選択させ、前記エラーレートが所定のレベルを超えたときには前記選択部6に前記映像デコーダ4が出力する映像データを選択させる。受信状態(放送受信品質)の判断においては、前記エラーレートに替えて、電波の受信電界強度、ビットエラーレート、ブロックノイズの発生状況などの情報を用いることとしてもよい。携帯受信機向け放送は強階層で且つ固定受信機向け放送は弱階層であることが多く、固定受信機向け放送が見られなくても携帯受信機向け放送は見られることがある。
【0020】
図2及び図3はマイクロコンピュータ13の処理内容を示したフローチャートである。テレビON当初には例えばラストチャンネルが選択される。また、テレビON時において、ユーザはEPG画面上で所望のサービスを選択したり、チャンネルUP/DOWNキーで所望のサービスを選択することができる(ステップS1)。マイクロコンピュータ13は、選択されたサービスの取得のためにトランスポートストリームの変更(放送局の変更)が生じたかどうかを判断する(ステップS2)。トランスポートストリームの変更が生じた場合には、チューナ1に対して周波数設定処理を行い(ステップS3)、ベースバンド信号が取り出せる状態になったかどうかを判断する(ステップS4)。ステップS4においてYESとなれば、固定受信機向け放送のPSI/SI及び携帯受信機向け放送のPSI/SIを取得し(ステップS5)、処理をステップS6に進める。また、ステップS2でトランスポートストリームの変更無しとされたときにも、処理をステップS6に進める。
【0021】
ステップS6では、選択されたサービスが固定受信機向けサービスかどうかを判断する。選択されたサービスが固定受信機向けサービスであれば、前記PSI/SI中のPMT(program map table )等に基づいて、トランスポートストリーム内の固定受信機向け放送の選択された1サービスのパケットを取得するとともに、同トランスポートストリーム内の携帯受信機向け放送の所定の1サービスのパケットを取得する(ステップS7)。一方、選択されたサービスが携帯受信機向けサービスであれば、前記PSI/SI中のPMT等に基づいて、トランスポートストリーム内の携帯受信機向け放送の選択された1サービスのパケットを取得するとともに、同トランスポートストリーム内の固定受信機向け放送の所定の1サービスのパケットを取得する(ステップS8)。
【0022】
そして、それぞれの映像パケットを第1,第2映像デコーダ3,4でそれぞれデコードし(ステップS9)、選択されたサービスの映像を提示するとともに、選択されたサービスの音声パケットを音声デコーダ5でデコードし、音声出力を行う(ステップS10)。
【0023】
ここで、上述した所定の1サービスについて説明する。なお、説明の便宜上、一つのトランスポートストリーム内に、固定受信機向け放送として、「021」,「022」,「023」の3つのサービス(チャンネル)が存在し、携帯受信機向け放送として、「621」,「622」の2つのサービス(チャンネル)が存在すると仮定する。以下に、サービスの選択の変遷の一例を示す。
【0024】
(1)ユーザが「021」を選択したことでトランスポートストリームの変更が生じたときには、受信装置30は、「021」のサービスを構成しているパケットを取得してデコードを行い、その映像音声の提示を行う。携帯受信機向け放送については、例えばデフォルトでチャンネル番号が最も小さい「621」のサービスを構成している映像パケットを取得してデコードする。
【0025】
(2)自動切替モードが選択されている場合、上記の(1)の状態で電波受信状態が悪化すると、受信装置30は、「021」のサービスの映像パケット取得及びそのデコードを継続しつつも、提示する映像音声を「621」のサービスに基づく映像音声に切り替える。
【0026】
(3)上記の(2)の状態でチャンネルUPの操作がなされると、受信装置30は、「021」のサービスの映像パケット取得及びそのデコードを継続しつつも、携帯受信機向け放送については、「622」のサービスを構成しているパケットを取得し、提示する映像音声を「622」のサービスに基づく映像音声に切り替える。
【0027】
(4)自動切替モードが選択されている場合、上記の(3)の状態で電波受信状態が良好になると、受信装置30は、「622」のサービスの映像パケット取得及びそのデコードを継続しつつも、提示する映像音声を「021」のサービスに基づく映像音声に切り替える。
【0028】
(5)上記の(4)の状態でチャンネルUPの操作がなされると、受信装置30は、「622」のサービスの映像パケット取得及びそのデコードを継続しつつも、固定受信機向け放送については、「022」のサービスを構成しているパケットを取得し、提示する映像音声を「022」のサービスに基づく映像音声に切り替える。
【0029】
(6)自動切替モードが選択されている場合、上記の(5)の状態で電波受信状態が悪化すると、受信装置30は、「022」のサービスの映像パケット取得及びそのデコードを継続しつつも、提示する映像音声を「622」のサービスに基づく映像音声に切り替える。
【0030】
(7)上記の(6)の状態でチャンネルUPの操作がなされると、受信装置30は、別のトランスポートストリーム(別の放送局)の取得処理を行う。受信装置30は、例えば、デフォルトで固定受信機向け放送のチャンネル番号が最も小さいサービスの映像音声を提示する一方で、携帯受信機向け放送については、例えばデフォルトでチャンネル番号が最も小さいサービスを構成している映像パケットを取得してデコードしておく。
【0031】
勿論、先述したごとく、映像切替キーの押下によって、手動による映像切替(固定→携帯,携帯→固定)が可能である。また、映像切替に際して、例えば、携帯受信機向け放送の映像提示状態から固定受信機向け放送の映像提示に切り替わるときに、この固定受信機向け放送の受信状況が良くない場合(エラーレートが所定のレベルを超えている場合)に、「受信できない可能性があります。よろしいですか。YES NO」といったメッセージ表示を行い、ユーザがYESを選んだときに映像を切り替えることとしてもよい。
【0032】
また、上記の例では、音声デコーダを一つだけ使用した場合を示しているが、携帯受信機向け放送用と固定受信機向け放送用の二つの音声デコーダを設け、一方から出力される音声データを選択する選択部を設けてもよい。また、固定受信機向け放送の映像提示状態において、自身(固定)の電波受信状況(エラーレート等)或いは他方(携帯)の電波受信状態(エラーレート等)をピクトグラフなどで画面表示することとしてもよいし、携帯受信機向け放送の映像提示状態において、自身(携帯)の電波受信状況(エラーレート等)或いは他方(固定)の電波受信状態(エラーレート等)をピクトグラフなどで画面表示することとしてもよい。
【0033】
上述した例では、車載型の地上ディジタル放送受信装置を示したが、カーナビゲーション付きの装置とすることもできる。また、ポータブル型の地上ディジタル放送受信装置とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の実施形態の地上ディジタル放送受信装置を示したブロック図である。
【図2】この発明の実施形態の処理内容を示したフローチャートである。
【図3】この発明の実施形態の処理内容を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0035】
1 チューナ
2 デマルチプレク
3 映像デコーダ(MPEG2用)
4 映像デコーダ(H.264用)
5 音声デコーダ
13 マイクロコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上ディジタル放送を受信してトランスポートストリームを出力するチューナと、前記トランスポートストリームからパケットを分離するデマルチプレクサと、前記トランスポートストリームから分離された固定受信機向け放送の映像パケットをデコードする第1映像デコーダと、前記トランスポートストリームから分離された非固定受信機向け放送の映像パケットをデコードする第2映像デコーダと、前記両映像デコーダから出力される映像データのうちから一方の映像データを選択する選択部と、選択された映像データに基づいて映像表示を行う表示部と、を備えたことを特徴とする地上ディジタル放送受信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の地上ディジタル放送受信装置において、前記選択部は、ユーザの手動操作に応じて一方の映像データを選択することを特徴とする地上ディジタル放送受信装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の地上ディジタル放送受信装置において、受信品質を判定する判定部と、受信品質が所定の閾値以上のときには前記選択部に前記第1映像デコーダが出力する映像データを選択させ、前記受信品質が所定の閾値未満のときには前記選択部に前記第2映像デコーダが出力する映像データを選択させる制御部と、を備えたことを特徴とする地上ディジタル放送受信装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の地上ディジタル放送受信装置において、前記判定部は、固定受信機向け放送の受信品質及び非固定受信機向け放送の受信品質の両方を判定し、前記表示部は、選択映像又は他方の映像の受信品質に関する情報を表示することを特徴とする地上ディジタル放送受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−11254(P2008−11254A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−180284(P2006−180284)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】