説明

地下タンクの通気管設備

【課題】本発明は通気管を用いた作業性を高めることを課題とする。
【解決手段】通気管継手40は、継手本体80と、継手本体80に設けられた弁座部材90と、大気弁として作動する弁機構100と、弁座部材90と対面する継手本体80の側面に設けられた開口部110と、開口部110を閉塞する蓋部材120とを有する。継手本体80は、内部空間をタンク連通側室86と大気連通側室88とに仕切る仕切り壁130と、仕切り壁130に設けられた貫通口140とを有する。弁機構100は、弁座部材90の弁座92を開閉する第1弁体150と、第1弁体150を閉弁方向に付勢する第1コイルバネ160と、第1弁体150の流路152を開閉する第2弁体170と、第2弁体170を閉弁方向に付勢する第2コイルバネ180と、第2弁体170の流路172を開閉する第3弁体190とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地下タンクの通気管設備に係り、特に地下タンクに接続された通気管途中に、地下タンクと大気圧との圧力差により適宜開閉する弁機構を組み込み、通常時における通気管からのベーパの排出を防止し、かつ、地下タンク内の圧力をほぼ大気圧に維持し得る地下タンクの通気管設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、給油所等の地下に埋設された地下タンクには、油液の注油作業及び油液の送液により液面が上昇または下降するのに伴って上部空間の空気を排気または給気するための通気管が連通されている。この通気管は、一端が地下タンクの上部空間に連通されており、他端が高所(例えば、地上4メートル)で開放されるように上方に延在形成されている。
【0003】
ところで、近年、通気管の上端開口に、大気圧と管内圧力(地下タンク圧力)との圧力差によって開弁または閉弁するように構成された排気弁と吸気弁とを組み合わせた弁機構(大気弁)を設ける通気管設備がある(非特許文献1を参照)。
【0004】
この大気弁は、荷卸しに伴う地下タンクの液面上昇や、気温上昇に伴うベーパ発生によって地下タンク内が加圧状態になると、排気弁が開弁してタンク内圧力を大気圧に減圧させ、あるいは計量機のポンプによる油液の吸い上げによって地下タンク内に負圧状態になった場合は、吸気弁が開弁して地下タンク内圧力を大気圧まで上昇させるように構成されている。従って、地下タンク内の液面が変動しない状態、あるいは、タンク内圧力が変動していない状態においては、大気弁が閉弁して通気管を閉止している。
【非特許文献1】昭和機器工業製、商品名、ECO通気CO、業界紙、石油業協同組合機関紙 ぜんせき 2006年8月25日付け(4)新収益創造力VOl.496
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、大気弁を通気管の上端(高所)に設ける構成では、以下の課題を有する。
(1)これを取り付ける作業やメンテナンス作業が高所作業となるため、作業員がはしご等を用いて通気管の上端の高さ位置まで昇ることになるため、作業員の負担が大きく、作業に多くの労力を要するという問題があった。
(2)地下タンクの漏洩検査を実施する時には、大気弁や通気口の頭部を閉塞した状態で検査を行うために、前述同様に高所で作業しなければならず、作業員の負担が大きく、検査作業に多くの労力を要するという問題があった。
(3)また、ベーパ蒸気回収弁機構を設ける給油所においては、ベーパ回収弁機構と大気弁とを個々別々に独立させて設けざるを得ず、構造が複雑化する問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、上記課題を解決した地下タンクの通気管設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような手段を有する。
【0008】
本発明は、一端が地下タンクに接続され他端が高所において大気に開放された通気管の途中に設けられた通気管継手を有する地下タンクの通気管設備であって、前記通気管継手を、前記通気管が接続される継手本体と、該継手本体の内部空間を大気連通側室とタンク連通側室とに仕切る仕切り壁と、該仕切り壁に設けられ、前記通気管の軸線方向に所定角度で交差する方向に貫通する貫通口と、該貫通口の軸線方向に移動可能に設けられ、地下タンク内の圧力と大気圧との圧力差に応じて開閉する弁機構と、前記貫通口に対面するよう前記継手本体の側面外壁に設けられた開口部と、該開口部を閉塞する蓋部材と、で構成することにより上記課題を解決するものである。
また、本発明は、前記タンク連通側室より分岐する分岐流路と、ベーパ回収ホースの端部が接続される接続部と、前記分岐流路内に設けられ、ベーパ回収ホースの端部が前記接続部に接続された際、開弁位置に変位するベーパ回収弁と、からなるベーパリカバリ機構を、前記弁機構に対面するように前記開口部に設けることにより上記課題を解決するものである。
また、本発明は、前記弁機構は、地下タンク内の圧力と大気圧との圧力差に応じて開弁動作する弁体と、前記弁体の作動方向と同方向に移動する可動弁座部材と、前記弁体を可動弁座部材に当接する閉弁方向に付勢する付勢部材と、を有し、前記ベーパリカバリ機構を弁機構の軸線と同方向に直列に設け、前記付勢部材は、前記可動弁座部材を介して前記ベーパ回収弁を閉弁方向に付勢することにより上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、継手本体の内部空間を大気連通側室とタンク連通側室とに仕切る仕切り壁に通気管の軸線方向に所定角度で交差する方向に貫通する貫通口を設け、地下タンク内の圧力と大気圧との圧力差に応じて開閉する弁機構を貫通口の軸線方向に移動可能に設け、開口部を貫通口に対面するよう継手本体の側面外壁に設けたため、開口部を閉塞する蓋部材を外すことで弁機構を開口部から容易に着脱することができ、例えば、地下タンクへの荷卸し時には、ベーパ回収ホースを開口部に接続することでベーパリカバリを容易に行なうことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は本発明による地下タンクの通気管設備の一実施例を示す構成図である。図1に示されるように、通気管設備10は、地下タンク12の上部空間に連通された通気管30の途中の取付作業に適した高さに取り付けられている。この通気管継手40は、地下タンク12の通気(給気、排気)を行なう通気管30の経路の途中に設けられているので、例えば、圧力監視ユニット11を用いて給油所に設置された地下タンク12に窒素ガスを供給して所定圧力に加圧した後、圧力変化の有無あるいは圧力変化率によって漏洩の有無を判定することが可能な構成になっている。
【0012】
圧力監視ユニット11は、減圧ポンプ(図示せず)と、減圧した状態での圧力を検出する圧力センサと、圧力センサにより検出された圧力を記憶する記憶部と、圧力変化の変化率から漏洩の有無を判定する漏洩判定部(共に図示せず)とを有する。
【0013】
給油所の地上には、給油を行う計量機14、地下タンク12の上方に開口するマンホール(本実施例では、3箇所に配置)16、地下タンク12の注油口18、地下タンク12の上部空間に連通された通気管30が設けられている。そして、給油所の地下に埋設された地下タンク12には、計量機14の給油系統に連通された給油管22と、注油口18に連通された注油管24とが挿入されている。
【0014】
マンホール16の内部空間には、上記給油管22、注油管24、配管継手50が収容されている。
ここで、通気管30は、下部通気管30aと、上部通気管30bとからなり、両者の間に通気管継手40を設けている。下部通気管30aの他端は、配管継手50に連通されている。
【0015】
下部通気管30aの一端は、通気管継手40を介して地下タンク12に接続され、その他端は地表面に突出して地表面より1メートルから1.2メートルの高さ位置まで伸びている。この高さは、作業員が行なう通気管継手40自体の取り付け、また、通気管継手40に対する部品の組み付けや各種配管作業など取り付け作業をはしごや脚等を使用せずに作業するのに適した高さ位置となっている。
【0016】
また、通気管継手40の上端には、上部通気管30bの下端が設けられ、その上端開口30cが高所(地表面からの高さが4メートル程度)に位置するように上方に延在している。
【0017】
また、通気管継手40は、後述するように漏洩検査時に圧力監視ユニット11からの各ホースが接続されるように構成されている。
【0018】
尚、上記給油管22、注油管24、下部通気管30aの横方向に延在される横引き部分は、管内の油液が地下タンク12に落下するように地下タンク12との接続部分が低くなるように水平よりも所定角度傾斜して設けられている。また、地下タンク12には、上記配管以外にも点検口や液面計(共に図示せず)などが設けられているが、その説明は省略する。弁座部材90は、X1方向側の端部(図2中左側端部)に設けられた第1弁座92と、X2方向側の端部(図2中右側端部)の内周に設けられた面取り形状の第2弁座94とを有する。
ここで、本発明の通気管継手40の構成について説明する。図2は通気管継手40の取付構造を示す縦断面図である。
【0019】
図2に示されるように、通気管継手40は、継手本体80と、継手本体80に設けられた弁座部材90と、大気弁として作動する弁機構100と、弁座部材90と対面する継手本体80の側面に設けられた開口部110と、開口部110を閉塞する蓋部材120とを有する。
継手本体80は、下端に下部通気管30aの上端が螺入される下端雌ネジ部82が設けられ、上端には上部通気管30bの下端が螺入される上端雌ネジ部84が設けられている。また、継手本体80は、内部空間をタンク連通側室86と大気連通側室88とに仕切る仕切り壁130と、仕切り壁130に設けられた貫通口140とを有する。仕切り壁130は、継手本体80の内部でL字状に形成されており、水平方向に延在形成された水平壁130aと、継手本体80の内部で垂直方向に延在形成された垂直壁130bとを有する。貫通口140は、開口部110が対面する垂直壁130bに設けられている。
【0020】
貫通口140は、通気管30の軸線方向(Y方向)に対して所定角度(本実施例では、90度)で交差する方向に貫通しており、開口部110と同軸上となる位置に設けられている。尚、貫通口140及び開口部110の軸線方向は、通気管30の軸線方向(Y方向)と直交する水平方向であるが、通気管30の軸線方向に対して所定角度傾斜する方向としても良い。ここで、上記所定角度とは、水平方向の軸線に対して1度〜45度の範囲で傾斜した角度範囲を含むものとする。
【0021】
また、貫通口140の雌ネジ部142には、円筒形状の弁座部材90がタンク連通側室86側から螺入されている。尚、弁座部材90及び弁機構100は、継手本体80の側面に開口する開口部110を介して同じ軸線方向から組み付けまたは取り外しを行える。そのため、弁座部材90及び弁機構100の着脱作業及びメンテナンスがやりやすくなり、作業性が向上している。
【0022】
弁機構100は、弁座部材90の第1弁座92を開閉する第1弁体150と、第1弁体150を閉弁方向に付勢する第1コイルバネ160と、第1弁体150の流路152を開閉する第2弁体170と、第2弁体170を閉弁方向に付勢する第2コイルバネ180と、第2弁体170の流路172を開閉する第3弁体190とを有する。
【0023】
第1弁体150は、一面(図2中右側)に第1弁座92に当接するパッキン152が設けられ、他面(図2中左側)は第1コイルバネ160が当接するバネ受け面になっている。また、第1弁体150は、水平方向に貫通する複数の小孔154が設けられている。また、第1弁体150は、複数の小孔154の内側に他面よりX1方向に突出する筒状弁軸156を有する。
【0024】
第1コイルバネ160は、一端が貫通口140に対面する継手本体80の内壁に設けられたバネ受け部200に当接し、他端が第1弁体150の左面に当接している。第1弁体150は、第1コイルバネ160によって弁座部材90の第1弁座92に押圧されており、例えば5kpa相当のばね力で第1弁座92を閉止している。そのため、地下タンク12の圧力上昇によってタンク連通側室86の圧力が5kpa以上に上昇した場合、第1弁体150は第1コイルバネ160のバネ力に抗して開弁してタンク連通側室86のベーパを大気連通側室88に流出させ上部通気管30bを介して大気中に放出させる。これにより、地下タンク12のベーパによる圧力上昇が防止できる。
【0025】
第2弁体170は、第1弁体150のパッキン152に当接する環状のシート部174と、前述した流路172とシート部174とを有する円盤状部176と、円盤状部176の中央よりX1方向に延在する弁軸178とを有する。弁軸178の左端には、第2コイルバネ180の一端が当接する円盤状のバネ受け板210が挿通されており、その左方にはバネ受け板210の脱落を防止するナット220が螺入されている。また、第2コイルバネ180は、他端が第1弁体150の弁軸156の端部に当接している。そのため、第2コイルバネ180は、バネ受け板210を介して第2弁体170をX1方向に押圧している。
【0026】
第3弁体190は、薄い円盤状に形成されており、第2弁体170の円盤状部176の中央よりX2方向に突出する支持軸177に挿通される中央孔192を有する。また、支持軸177の端部の溝には、第3弁体190が脱落することを防止する止め輪179が係止されている。
ここで、上記弁機構100の開閉動作について説明する。地下タンク12において、タンクローリ車から油液が荷卸しされる際、地下タンク12の上部空間にベーパ(油蒸気)が徐々に溜る。そして、地下タンク12内の液面上昇に伴って上部空間のベーパ濃度が高まるにつれて圧力も上昇する。弁機構100では、上記第1弁体150、第2弁体170、第3弁体190を有する構成であるので、各弁体がタンク連通側室86の圧力(大気圧)と大気連通側室88の圧力(地下タンク12のベーパ圧力)との圧力差の大きさに応じて段階的に開弁動作する。尚、第1弁体150は、ベーパ排出時に開弁し、第2弁体170、第3弁体190は大気導入時に開弁する。
【0027】
図3に示されるように、地下タンク12の液面が減少して地下タンク12の圧力が低下した場合、まず、第3弁体190がX2方向に開弁する。第3弁体190は、バネ力で閉弁する構成ではないので、地下タンク12の圧力が僅かでも大気圧以下に低下した時点で開弁動作する。尚、X2方向に開弁動作した第3弁体190は、止め輪179に当接して脱落しないように係止される。
【0028】
従って、タンク連通側室86の圧力(大気圧)より大気連通側室88の圧力(地下タンク12のベーパ圧力)が僅かでも大きくなると、第3弁体190がX2方向に開弁動作して第2弁体170の流路172を開放する。これにより、大気連通側室88とタンク連通側室86との間が流路172を介して連通されるため、通気管30の上端開口から導入された空気が地下タンク12に導入される。
【0029】
図4に示されるように、さらに、地下タンク12の液面降下が急速に行なわれ、地下タンク12の上部空間の圧力が第2弁体170を閉弁させる第2コイルバネ180のバネ力よりも大きく低下した場合には、第2弁体170が第2コイルバネ180のバネ力に抗してX2方向に開弁する。これにより、大気連通側室88とタンク連通側室86との間が第1弁体150の複数の小孔154を介して連通されるため、通気管30の上端開口から導入された空気が地下タンク12に導入される。複数の小孔154の流路面積の総和は、上記流路172の流路面積よりも大きいため、大量の外気が地下タンク12に導入される。
【0030】
図5に示されるように、また、タンクローリ車からの油液が地下タンク12へ荷卸しされる際、地下タンク12の油液貯蔵量が増大してベーパ圧力が増大すると、第1弁体150が第1コイルバネ160のバネ力に抗してX1方向に開弁動作する。これにより、第1弁体150のパッキン152が第1弁座92から離間して第1弁座92を開放する。第1弁座92の内径は、他の弁体のものよりも大径であるので、地下タンク12内に発生したベーパを大量に通気管30を介して大気中に放出することが可能になる。そのため、タンクローリ車からの荷卸し量の増大に応じて発生したベーパを効率良く排出して地下タンク12の上部空間における圧力上昇を防止することが可能になる。
【0031】
さらに、本実施例の変形例として、図6に示されるように、大気連通側室88の底面88aにドレン孔240を貫通させ、このドレン孔240の下側に連通するネジ穴242にドレンバルブ244を螺入する。このドレンバルブ244の内部には、上端の外周側に開口するY字状の上端通路244aと、下端に開口する貫通する下端通路244bとが連通されている。そして、通常は、ドレンバルブ244は、ナット246によって締結されており、上端通路244aが閉止状態に保持されている。
また、大気連通側室88の内部に水分が溜ったときは、ナット246をゆるめ、そしてドレンバルブ244を左回りに回して下方に移動させると、上端通路244aが開放される。これにより、大気連通側室88の内部に溜った水分を簡単に排出させることができる。尚、通気管30が外気温の低下により結露しやすい環境下(冬場など)では、大気連通側室88の底部に水が溜りやすくなるので、定期的に大気連通側室88の内部に溜った水を排出することになる。
【0032】
図7は通気管継手300をベーパリカバリ用として使用する場合の構成例を示す縦断面図である。図7に示されるように、通気管継手300は、継手本体80の開口部110にベーパリカバリ機構310が取り付けられている。また、仕切り壁130の貫通口140には、大気弁として作動する弁機構360が取り付けられている。
ベーパリカバリ機構310は、開口部110の内周に設けられた雌ネジ部112に螺入されたプラグ320と、プラグ320の内周側に設けられた雌ネジ部322に螺入された円筒形状のホース接続部材330と、ホース接続部材330の流路内端部に形成された弁座332を開閉するベーパ回収弁340と、ベーパ回収弁340を閉弁方向に付勢するコイルバネ350とを有する。
ホース接続部材330は、内部に横方向(水平方向)に貫通し、タンク連通側室86から分岐する分岐流路を有しており、図7において、左端が継手本体80のタンク連通側室86に連通され、右端がベーパ回収ホース接続側となるように取り付けられる。
ベーパ回収弁340は、ホース接続部材330の内部側端部に形成された弁座332を閉止するパッキン342を保持する円盤状部344と、円盤状部344の中央よりX2方向に延在する弁軸346と、コイルバネ350の他端が当接するバネ受け板348と、弁軸346の端部に係止され止め輪349とを有する。
ホース接続部材330は、内部流路の中間部分にベーパ回収弁340の弁軸346を軸承する軸受け部334が設けられ、軸受け部334を支持する支持部336にはベーパを通過させるための排出孔337が設けられている。さらに、ホース接続部材330の排出側には、ベーパ回収ホース420の端部に設けられた接続プラグが挿入される接続口338が設けられている。接続口338の外周には、接続プラグの係止部が嵌合する段部339が設けられている。
【0033】
また、ベーパ回収弁340の円盤状部344の端面には、弁機構360にベーパ回収ホース420の接続を伝達するための伝達部材345が締結部材347によって締結されている。この伝達部材345は、複数の小孔を有する円筒形状に形成されており、X1方向に突出している。
【0034】
弁機構360は、上記弁機構100(同じ箇所の説明は省略する)の他に、垂直壁130bに螺入された弁座部材370と、弁座部材370の円筒部372に摺動可能に挿入された可動弁座部材380と、可動弁座部材380のX2方向側の端面に保持されたパッキン382と、可動弁座部材380の中央に設けられた軸受け部384を貫通する弁軸385と、弁軸384をX2方向に付勢するコイルバネ386とを有する。コイルバネ386は、一端が可動弁座部材380の端面に当接し、他端が弁軸385の端部に係止されたバネ受け板387に当接している。
【0035】
すなわち、弁機構360は、地下タンク12内の圧力と大気圧との圧力差に応じて開弁動作する弁体150と、弁体150の作動方向(X1,X2方向)と同方向に移動する可動弁座部材380と、弁体150を可動弁座部材380に当接する閉弁方向に付勢するコイルバネ160(付勢部材)とを有する。そして、ベーパリカバリ機構310は、弁機構360の軸線と同方向に直列に設けられることにより、コイルバネ160は、可動弁座部材380を介してベーパ回収弁340を閉弁方向(X2方向)に付勢する。
【0036】
また、可動弁座部材380のパッキン382を有するX2方向の端面には、水平方向に貫通する複数の通孔390が設けられている。
【0037】
通常、タンクローリ車による荷卸しが行なわれない場合の、弁機構360の開閉動作は前述した弁機構100と同じなので、その説明は省略する。
【0038】
次に、荷卸し時のベーパリカバリ作業について説明する。
【0039】
図8に示されるように、荷卸し作業を行なう場合には、まず、タンクローリ車400の底弁(図示せず)の吐出口と地下タンク12の注油口18とを荷卸しホース410により連通する。さらに、タンクローリ車400のハッチ上部に設けられた積み込み口402と通気管継手40との間をベーパ回収ホース420により連通する。ベーパ回収ホース420の先端には通気管継手300のホース接続部材330に結合される結合部材430が設けられている。
【0040】
図9に示されるように、ベーパ回収ホース420の結合部材430が通気管継手300のホース接続部材330に接続されると、一点鎖線で示す結合部材430の軸線上に突出する押圧ロッド432がベーパ回収弁340の弁軸346をX1方向に押圧する。これにより、ベーパ回収弁340は、ホース接続部材330の弁座332より離間して開弁状態となり、タンク連通側室86とホース接続部材330の流路とを連通させる。
【0041】
さらに、ベーパ回収弁340は、伝達部材345を介して可動弁座部材380及び第2弁体170及び第1弁体150及び第3弁体190をX1方向に押圧して移動させる。尚、可動弁座部材380も第2弁体170及び第1弁体150及び第3弁体190と共に移動するため、開弁せず、第1コイルバネ160が通常よりも圧縮される。
【0042】
これにより、第1コイルバネ160のバネ力が例えば、10kpaに増大する。そのため、第1弁体150の開弁動作開始の設定圧が増大し、荷卸し時にベーパリカバリする際の大気弁の開弁動作を行なう地下タンク12の圧力が設定される。従って、本実施例では、1個の第1コイルバネ160のバネ力をベーパ回収ホース420の結合部材430によって切り替えることができ、ベーパリカバリの有無に応じたバネ力を有するコイルバネを複数個容易する必要がなく、構成の簡略化を図ることが可能になる。
【0043】
これにより、図8に示すタンクローリ車400のハッチに積み込まれた油液が荷卸しホース410及び注油管24を介して地下タンク12に荷卸しされると共に、地下タンク12の液面が上昇してタンク内圧力も上昇する。そして、地下タンク12の気相領域に発生したべーパ(油蒸気)は、下部通気管30a、通気管継手300、ベーパ回収ホース420を通過してタンクローリ車400の荷卸し中の当該ハッチに回収される。尚、荷卸し中のハッチでは、荷卸しに伴って液面が下降するため、ハッチ内に負圧が生じることで、地下タンク12の圧力との差によってベーパを吸引する。
【0044】
また、荷卸し時のベーパリカバリ量が荷卸し量に追いつかず地下タンク12の圧力が上昇し過ぎた場合には、大気弁として弁機構360の第1弁体150が第1コイルバネ160のバネ力(この場合、上記理由により通常よりも強く設定されている)に抗して開弁して地下タンク12の圧力を通気管30から大気中に逃がして地下タンク12を減圧する。
【0045】
また、通気管継手300は、継手本体80の側面に開口部110が1箇所しかないため、ベーパ回収ホース420の接続作業が容易に行える。
【0046】
ここで、通気管30に設けられた通気管継手40を利用して通気管漏洩検査を行なう場合について説明する。
【0047】
図10は通気管漏洩検査を行なう漏洩検査用治具を通気管継手40に装着した状態を示す縦断面図である。図10に示されるように、継手本体80の内部に弁機構100を取り付けたまま、開口部110に横方向から漏洩検査用治具500を取り付ける。そして、配管継手50を閉止して下部通気管30aの地中側端部を遮断する。
【0048】
漏洩検査用治具500の挿入方向(X1方向)は、弁機構100の第1弁体150の開弁方向と同一方向であり、且つ漏洩検査用治具500の筒状部材520の先端が弁座部材90の第1弁座92を開弁させると共に、弁座部材90の第2弁座94を閉止することができる。そのため、通気管漏洩検査を行なう際に弁機構100を取り出すといった面倒な分解作業を行なわずに済むばかりか、漏洩検査用治具500の取付け作業を行なうことで、継手本体80の側面に開口する開口部110を閉止すると共に、弁機構100を漏洩検査可能な状態に切り替えることができる。
【0049】
漏洩検査用治具500は、開口部110の雌ネジ部112に螺入される蓋体510と、蓋体510の中央孔512に挿通された筒状部材520と、筒状部材520を保持する保持部材530とを有する。筒状部材520のX1方向の端部には、貫通口140に螺入された弁座部材90に挿入されるロッド540と、ロッド540の付け根部分で筒状部材520の中空通路529に連通された開口542とが設けられている。さらに、筒状部材520の外周には、弁座部材90のX2方向側の端部に設けられた第2弁座94に当接するパッキン524と、パッキン524を支持する鍔部526とを有する。
また、上記パッキン524が第2弁座94に当接して弁座部材90を閉止したとき、筒状部材520のX1方向の先端に突出するロッド540は、第2弁体170の支持軸177をX1方向に押圧して第1弁体150を第1弁座92より離間させる。これで、第1弁座92が開放されるため、大気連通側室88と筒状部材520の中空通路529とが第1弁座92、開口542を介して連通状態になる。
【0050】
また、筒状部材520の頭部521は、筒状部材520のオネジ部522を保持部材530の雌ネジ部532に螺入させる際に工具に係合する係合部となる。
【0051】
蓋体510は、雌ネジ部112に螺入されるオネジ部514の外周に嵌合する環状のシール部材516を圧縮して開口部110を気密にしている。また、蓋体510の内部には、開口部110に連通する空間部550が設けられ、この空間部550の上部に形成された吸引孔560には、吸引プラグ570が螺入されている。この吸引プラグ570に接続された吸引ホース580は、圧力監視ユニット11に連通されている。
【0052】
継手本体80のタンク連通側室86に流入した漏洩検知用の気体は、蓋体510の空間部550、吸引孔560、吸引プラグ570、吸引ホース580を介して圧力監視ユニット11に供給される。
【0053】
また、圧力監視ユニット11の排気口に接続された排出ホース590は排出プラグ600に連通されている。排出プラグ600は、筒状部材520の一端に設けられた雌ネジ部528に螺入されており、還流された気体(ベーパを含む)は筒状部材520の中空通路529、開口542、第1弁座92を通過して大気連通側室88に排出される。
【0054】
尚、筒状部材520の外周と蓋体510の中央孔512との間は、シール部材610により気密にシールされている。
ここで、圧力監視ユニット11により下部通気管30aを所定圧力に減圧して漏洩検査を行う検査方法について説明する。圧力監視ユニット11の減圧ポンプに接続された吸引ホース580を吸引プラグ570に取り付けて下部通気管30a内のベーパを吸引する。減圧ポンプで吸引したペーパーは、圧力監視ユニット11により圧力を測定された後、排出ホース590を介して大気連通側室88に排出される。下部通気管30aに洩れがある場合には、圧力低下が生じにくいため、圧力変化を監視することで圧力監視ユニット11によって検知することができる。
【0055】
このように、漏洩検査用治具500は、開口部110を閉塞する蓋部材120を継手本体80から取り外した後、継手本体80の内部に設けられた弁機構100を取付けた状態のまま開口部110から挿入して取付けることができるので、簡単且つ短時間で漏洩検査の準備作業を完了することができる。そのため、下部通気管30aの漏洩検査を簡単に行なうことができる。
【0056】
図7に示すようにベーパリカバリ機構310を有する場合には、ベーパリカバリ機構310を構成する伝達部材345より右側の部材のすべてを取り去り、また、上述の漏洩検査用治具500の筒状部材520のロッド540を取り去り、前述同様に検査を行う。
【0057】
また、上記説明では下部通気管30aを減圧する漏洩検査方法について述べたが、通気管30を加圧して検査する方法も同様に行える。尚、下部通気管30aを加圧する場合には、例えば、窒素ガスなどを圧力監視ユニット11から供給して加圧する方法が採られる。また、加圧漏洩検査方法の場合、下部通気管30aに洩れがある場合には、圧力低下が生じるため、圧力が一定であれば圧力監視ユニット11において、漏洩無しと判定される。
【産業上の利用可能性】
【0058】
尚、上記実施例では、給油所に設置された場合を例に挙げて説明したが、これに限らず、給油所以外の施設に設けられた地下タンクにおける漏洩検査を行なう場合にも本発明を適用できるのは、勿論である。
【0059】
また、上記実施例では、タンクローリ車から地下タンクへ油液を荷卸しする場合について例示したが、油液以外の液体(例えば、化学薬品や食品等の液体)を荷卸しする場合にも本発明を適用できるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明による地下タンクの通気管設備の一実施例を示す構成図である。
【図2】通気管継手40の取付構造を示す縦断面図である。
【図3】弁機構100の第3弁体の開弁動作を示す縦断面図である。
【図4】弁機構100の第2弁体の開弁動作を示す縦断面図である。
【図5】弁機構100の第1弁体の開弁動作を示す縦断面図である。
【図6】ドレンバルブを取り付けた場合を示す縦断面図である。
【図7】通気管継手300をベーパリカバリ用として使用する場合の構成例を示す縦断面図である。
【図8】荷卸し時のベーパリカバリ作業を説明するための図である。
【図9】ベーパ回収ホース420の結合部材430を通気管継手300のホース接続部材330に接続した状態を示す縦断面図である。
【図10】通気管漏洩検査を行なう漏洩検査用治具を通気管継手40に装着した状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0061】
10 通気管設備
11 圧力監視ユニット
12 地下タンク
30 通気管
40 通気管継手
80 継手本体
86 タンク連通側室
88 大気連通側室
90 弁座部材
92 第1弁座
94 第2弁座
100 弁機構
110 開口部
120 蓋部材
130 仕切り壁
150 第1弁体
160 第1コイルバネ
170 第2弁体
180 第2コイルバネ
190 第3弁体
244 ドレンバルブ
300 通気管継手
310 ベーパリカバリ機構
330 ホース接続部材
340 ベーパ回収弁
350 コイルバネ
360 弁機構
370 弁座部材
380 可動弁座部材
386 コイルバネ
400 タンクローリ車
410 荷卸しホース
420 ベーパ回収ホース
430 結合部材
500 漏洩検査用治具
510 蓋体
520 筒状部材
530 保持部材
580 吸引ホース
590 排出ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が地下タンクに接続され他端が高所において大気に開放された通気管の途中に設けられた通気管継手を有する地下タンクの通気管設備であって、
前記通気管継手を、
前記通気管が接続される継手本体と、
該継手本体の内部空間を大気連通側室とタンク連通側室とに仕切る仕切り壁と、
該仕切り壁に設けられ、前記通気管の軸線方向に所定角度で交差する方向に貫通する貫通口と、
該貫通口の軸線方向に移動可能に設けられ、地下タンク内の圧力と大気圧との圧力差に応じて開閉する弁機構と、
前記貫通口に対面するよう前記継手本体の側面外壁に設けられた開口部と、
該開口部を閉塞する蓋部材と、
で構成したことを特徴とする地下タンクの通気管設備。
【請求項2】
前記タンク連通側室より分岐する分岐流路と、ベーパ回収ホースの端部が接続される接続部と、前記分岐流路内に設けられ、ベーパ回収ホースの端部が前記接続部に接続された際、開弁位置に変位するベーパ回収弁と、からなるベーパリカバリ機構を、前記弁機構に対面するように前記開口部に設けてなる請求項1に記載の地下タンクの通気管設備。
【請求項3】
前記弁機構は、地下タンク内の圧力と大気圧との圧力差に応じて開弁動作する弁体と、前記弁体の作動方向と同方向に移動する可動弁座部材と、前記弁体を可動弁座部材に当接する閉弁方向に付勢する付勢部材と、を有し、
前記ベーパリカバリ機構を弁機構の軸線と同方向に直列に設け、
前記付勢部材は、前記可動弁座部材を介して前記ベーパ回収弁を閉弁方向に付勢することを特徴とする請求項2に記載の地下タンクの通気管設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−296979(P2008−296979A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145553(P2007−145553)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000110099)トキコテクノ株式会社 (264)
【Fターム(参考)】