説明

地図情報通信装置及び地図情報通信システム

【課題】地図情報と関連付けられた情報を、道路情報の変更に影響されることなく各アプリケーションと通信することができる地図情報通信装置及び地図情報通信システムを提供する。
【解決手段】MAP_IDにより地図情報と関連付けられた車速や勾配情報等の記録情報を参照可能に構成され、車両3の経路内の記録情報を用いる複数のECU_A(n)と通信する地図情報通信部6であって、複数のMAP_IDの並びにより表現される経路内の記録情報を、複数のECU_A(n)から共通して参照可能な識別子[n]を用いて経路内の区間の順序と関連付けるナビ拡張部1を備えることで、MAP_IDが変更された場合であっても、通信方法を変更することなく、地図情報と関連付けられた情報を各ECU_A(n)と通信することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図情報通信装置及び地図情報通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ナビゲーション装置において、地図情報に対応する情報を記録するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のナビゲーション装置は、道路の識別番号に、道路区間の始点や終点の座標、道路種別、道路長、道路幅などの各種情報を関連付けして記憶する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−45934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のナビゲーション装置により得られる各種情報は、車両状態制御や車両状態の予測等を行うアプリケーション(制御処理部)で有効に用いることができる情報である。また、アプリケーションで計測した情報は、従来のナビゲーション装置により得られる各種情報よりも高精度であったり、従来のナビゲーション装置では取得できない情報であったりする場合がある。このため、ナビゲーション装置とアプリケーションそれぞれとを協調させて情報を共有することで、より付加価値の高いサービスを提供できると考えられる。
【0005】
ここで、ナビゲーション装置とアプリケーションとを協調させる一例として、ナビゲーション装置側で管理する各種情報を、識別子で地図情報と関連付けてアプリケーションに送信し、アプリケーションでは識別子を用いて地図情報に関連付けされた各種情報を参照して、走行予定の経路に関する車両状態制御等を行うことが考えられる。
【0006】
しかしながら、ナビゲーション装置側で管理する地図情報は、道路の変更等に伴って変更されるおそれがある。現状の地図情報は、道路上の所定の位置をMAP_ID等の識別子で管理するのが一般的であるため、例えば、道路の変更に伴い、ナビゲーション装置が道路情報の識別子をリセットして道路情報の識別子を振り直したり、識別子の桁数を大きくしたりする場合がある。このように道路情報の識別子が変更された場合、アプリケーション側でもナビゲーション装置と同様に道路情報の識別子を変更しなければ、適切に通信することができなくなる。特に、ナビゲーション装置と協調するアプリケーションが複数ある場合には、各アプリケーションの道路情報の識別子を変更する必要がある。
【0007】
そこで、本発明はこのような技術課題を解決するためになされたものであって、地図情報と関連付けられた情報を、道路情報の変更に影響されることなく各アプリケーションと通信することができる地図情報通信装置及び地図情報通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る地図情報通信装置は、第1識別子により地図情報と関連付けられた記録情報を参照可能に構成され、車両の経路内の記録情報を用いる複数の制御処理部と通信する地図情報通信装置であって、複数の第1識別子の並びにより表現される経路内の記録情報を、複数の制御処理部から共通して参照可能な第2識別子を用いて経路内の区間の順序と関連付ける関連付手段を備えることを特徴として構成される。
【0009】
本発明に係る地図情報通信装置によれば、例えば目的地までの道路に関連付けされた情報を必要とするアプリケーションに対して、複数の第1識別子の並びにより表現される経路内における地図情報に関連付けされた記録情報を提供する場合には、複数の制御処理部から共通して参照可能な第2識別子により経路内の区間の順序と関連付けして通信することができる。すなわち、地図情報により割り振られる第1識別子を、経路情報により決定される第2識別子と対応させることができる。このため、地図情報の第1識別子が変更された場合であっても、各アプリケーション側では共通の第2識別子を用いて経路内の区間に対応する各種情報を参照することができる。よって、地図情報が変更された場合であっても、通信方法を変更することなく、地図情報と関連付けられた情報を各アプリケーションと通信することができる。
【0010】
ここで、関連付手段は、経路内の記録情報を送信する場合には、複数の第1識別子の並びにより表現される経路内の記録情報を参照するとともに、参照した記録情報を、第2識別子を用いて経路内の区間の順序と関連付けることが好適である。また、関連付手段は、第2識別子と関連付けられた記録情報を受信した場合には、第2識別子と第1識別子とを対応させて、受信した記録情報を地図情報に関連付けることが好適である。
【0011】
このように構成することで、地図情報通信装置が第1識別子と第2識別子とを対応させることにより、各アプリケーション側では地図情報の変更を意識せずに通信することが可能となる。
【0012】
また、地図情報通信装置は、第1識別子により地図情報と関連付けられた記録情報を格納するデータベースと、制御処理部から受信した記録情報に基づいてデータベースを更新する学習手段とを備えることが好適である。このように構成することで、ナビゲーション装置と複数のアプリケーションそれぞれとを協調させて情報を共有することができる。
【0013】
また、関連付手段は、連番の第2識別子を用いてもよい。また、制御処理部は、車両を制御するアプリケーションであればよい。また、関連付手段は、複数の第1識別子の並びにより表現される経路を、第2識別子の並びにより表現し、第1識別子と第2識別子とを対応させた変換テーブルを作成し、作成した変換テーブルに基づいて記録情報を地図情報に関連付けてもよい。
【0014】
また、本発明に係る地図情報通信システムは、第1識別子を用いて地図情報に関連付けた記録情報を参照可能に構成される地図情報通信装置、及び、地図情報通信装置と通信可能に構成され、車両の経路の記録情報を用いる複数の制御処理部を有する地図情報通信システムであって、地図情報通信装置及び制御処理部は、複数の第1識別子の並びにより表現される経路内の記録情報を、複数の制御処理部から共通して参照可能な第2識別子により経路内の区間の順序と関連付けて通信することを特徴として構成される。
【0015】
本発明に係る地図情報通信システムは、上述した地図情報通信装置を備えて構成されるので、通信方法を変更することなく、地図情報と関連付けられた情報を各アプリケーションと通信することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、地図情報と関連付けられた情報を、道路情報の変更に影響されることなく各アプリケーションと通信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係る地図情報通信装置及び地図情報通信システムの概要図である。
【図2】実施形態に係る地図情報通信装置の送信動作を示すフローチャートである。
【図3】実施形態に係る地図情報通信装置の送信動作を説明する概要図である。
【図4】実施形態に係る地図情報通信装置に接続されたECUの動作を説明する概要図である。
【図5】実施形態に係る地図情報通信装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】実施形態に係る地図情報通信装置の受信動作を示すフローチャートである。
【図7】実施形態に係る地図情報通信装置の受信動作を説明する概要図である。
【図8】従来の地図情報通信装置の送信動作を説明する概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
本実施形態に係る地図情報通信装置及び地図情報通信システムは、例えば、地図情報を有するナビゲーションシステムと、車両の経路内の道路に関連付けされた情報を必要とするアプリケーションとが備わる車両に好適に採用されるものである。
【0020】
最初に、本実施形態に係る地図情報通信装置(地図情報通信部)を備える地図情報通信システムの概要から説明する。図1は、本実施形態に係る地図情報通信システムの一例を示す概要図である。図1に示すように、地図情報通信システム5は、ナビECU(Electronic Control Unit)4及びナビECU4と通信可能に構成される各ECU_A(n)(n:自然数)を備えている。ここで、ECUは、電子制御する自動車デバイスのコンピュータであり、CPU(CentralProcessing Unit)、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリ、及び入出力インターフェイスなどを備えて構成されている。
【0021】
ナビECU4及び各ECU_A(n)は、CAN(ControlArea Network)で接続されることにより、相互にデータ交換が可能な構成とされている。ECU_A(n)は、車両3の経路情報に基づいて車両制御や車両状態予測等を行う制御処理部(アプリケーション)を有しており、例えば、エンジン、モータ、回生ブレーキ等の制御を行うハイブリットECU_A(1)や、エンジントルク等の制御を行うエンジンECU_A(2)が用いられる。なお、ACC(AdaptiveCruise Control)、ABS(Anti lock Brake System)、PCS(Pre-Crash Safety system)等の機能を有するECUを用いても良い。
【0022】
ナビECU4は、乗員に経路案内等を行うナビゲーション機能を備えており、ナビ基本部2、ナビ拡張部(関連付手段)1、地図DB41、学習DB42及びCANインターフェイス43を備えている。
【0023】
ナビ基本部2は、例えばGPS(Global Positioning System)受信機(不図示)によって受信されたGPS衛星信号に基づき車両3の位置情報を検出する機能を有している。そして、ナビ基本部2は、センサ部21、経路部22及びHMI(Human MachineInterface)部23を備えている。
【0024】
センサ部21は、車速や加減速を検知する機能、車両3の姿勢や進行方向を検知する機能を有している。経路部22は、例えば現在地から目的地までの経路を算出する機能を有している。また、HMI部23は、乗員が入力可能なインターフェイス部、乗員に情報を報知するディスプレイやスピーカ等から構成されている。
【0025】
ナビ基本部2は、上述した各構成の機能を連動させて、ナビECU4の基本機能であるナビゲーション機能を実現する。
【0026】
地図DB41は、地図情報及び地図情報に関連付けされた情報が格納されたデータベースである。地図DB41には、カーブ情報等の道路属性、リンク情報等の地図情報がMAP_ID(第1識別子)と対応付けされて格納されている。MAP_IDは、道路上の所定地点を示す識別子であり、道路に沿って間隔を空けて割り振られたものである。すなわち、地図DB41において、1つのMAP_IDを特定すると、1つの地図情報(位置等)が特定される。地図DB41は、道路情報が変更あるいは追加されると、MAP_IDの番号を最初から振りなおしたり桁上げ等のフォーマットを変更したりする機能を有している。また、地図DB41はナビ基本部2及びナビ拡張部1から参照可能に構成されている。
【0027】
学習DB42は、MAP_IDにより地図情報と関連付けされた情報(記録情報)が格納されたデータベースである。すなわち、MAP_IDを識別子とし、当該地点での道路属性(勾配、交差点、人工地物等)や車両状態(車速、走行エネルギーE、回生エネルギーE等)が記録されている。また、学習DB42は、地図DB41のMAP_IDが変更等された場合には、連動してMAP_IDを変更する機能を有している。そして、学習DB42はナビ基本部2及びナビ拡張部1から参照及び書き込み可能に構成されている。
【0028】
ナビ拡張部1は、ECU_A(n)との協調機能を実現するものであり、共通データ管理部11、学習部(学習手段)12及び勾配変換部13を備えている。
【0029】
共通データ管理部11は、ECU_A(n)と情報のやり取りを行うためのデータ管理機能を有している。共通データ管理部11は、ECU_A(n)と通信する場合に、経路内の区間に対応した識別子(第2識別子)を付与する機能を有している。この第2識別子は、複数のECU_A(n)から共通して参照可能な識別子である。第2識別子として、例えば現在地から目的地までの経路において、当該経路を分割した区間ごとに順に割り振られた経路順番号が用いられる。共通データ管理部11は、例えば、地図DB41又は学習DB42に格納されたデータをECU_A(n)に送信する場合には、経路部22から車両3の経路を入力し、入力した経路を所定の区間に分割して、分割した各区間におけるMAP_IDに関連付けされた情報を学習DB42から入力し、入力した情報と経路順番号とを関連付ける機能を有している。そして、共通データ管理部11は、情報送信する場合には、経路順番号に関連付けした情報をCANインターフェイス43へ出力する機能を有している。また、共通データ管理部11は、データをECU_A(n)から受信する場合には、経路順番号を参照して、各区間における情報を入力し、経路順番号とMAP_IDと対応させることにより、各区間における情報とMAP_IDとを対応させる機能を有している。そして、共通データ管理部11は、情報受信した場合には、MAP_IDに関連付けした情報を学習部12へ出力する機能を有している。
【0030】
勾配変換部13は、車両3が走行した場合には、センサ部21等から入力した加速度情報等に基づいて車両3が走行した道路の勾配情報を算出する機能を有している。また、勾配変換部13は、算出した勾配情報を学習部12へ出力する機能を有している。
【0031】
学習部12は、ECU_A(n)から受信した情報に基づいて学習DB42を更新する機能を有している。例えば、学習部12は、車両3が走行した場合には、ECU_A(n)から受信した車速等の情報を学習DB42に格納したり、格納されている情報を変更したりする機能を有している。また、勾配変換部13から勾配情報を入力し、学習DB42に格納したり格納されている情報を変更したりする機能を有している。
【0032】
CANインターフェイス43は、ECU_A(n)と通信するためのプロトコル変換を行う機能を有している。
【0033】
上述した勾配変換部13、学習部12、共通データ管理部11、地図DB41及び学習DB42を備えて地図情報通信部6が構成されている。
【0034】
次に、本実施形態に係る地図情報通信システム5の各構成の動作について説明する。最初に、地図情報通信部6の情報送信動作について説明する。図2は、地図情報通信部6の情報送信動作を示すフローチャートである。図2に示す制御処理は、例えばナビECU4の電源がオンされてから所定のタイミングで繰り返し実行される。なお、説明理解の容易性を考慮して、学習DB42に格納された記録情報である車速及び勾配情報をECU_A(m)(m:自然数、m≦n)へ送信する場合を説明する。また、地図情報通信部6の情報送信動作について、図3を参照して説明する。図3は、地図情報通信部6の動作を説明する概要図である。
【0035】
図2に示すように、地図情報通信部6は、経路情報入力処理から開始する(S10)。S10の処理は、ナビ拡張部1が実行し、経路部22が算出した車両3の経路情報を入力する処理である。例えば、図3(A)に示すように、ナビ拡張部1は、現在地Pと目的地Pとを結ぶ経路情報を入力する。経路情報は、複数のMAP_IDの組み合わせ(MAP_IDの並び)で表現され、例えば、MAP_IDが001、005、003、009である地点をこの順番で通過する場合には、経路情報として、現在地P−001−005−003−009−目的地Pが入力される。S10の処理が終了すると、各区間の情報入力処理へ移行する(S12)。
【0036】
S12の処理は、ナビ拡張部1が実行し、S10の処理で入力した車両3の経路情報に対応した車速及び勾配情報を入力する処理である。例えば、ナビ拡張部1は、S10の処理で入力した車両3の経路情報を図3(A)に示すように所定の区間単位に分割する。図3(A)では、説明理解の容易性を考慮して、各区間に一つのMAP_IDが対応するように4分割した例を示している。ここで、現在地Pから目的地Pへ向かう順に第1区間、第2区間、第3区間、第4区間とする。そして、各区間における車速及び勾配情報を、学習DB42からMAP_IDを識別子として参照して入力する。例えば、MAP_IDが001となる地点を含む第1区間では、学習DB42のMAP_IDが001であるレコードを参照し、第1区間における車速及び勾配情報を30、1として入力する。同様に、第2区間、第3区間、第4区間それぞれの車速及び勾配情報を入力する。S12の処理が終了すると、識別子変換処理へ移行する(S14)。
【0037】
S14の処理は、ナビ拡張部1が実行し、S12の処理で入力した第1区間〜第4区間それぞれの車速及び勾配情報を、車両3の経路の区間順に対応させる処理である。ナビ拡張部1は、現在地Pから目的地Pへ向かう経路の順番を示す識別子[n](n:自然数)を、S12の処理で入力した第1区間〜第4区間それぞれの車速及び勾配情報に対応させる。例えば、図3(A)に示すように、第1区間の車速、勾配である30、1を識別子[1]と関連付ける。同様に、第2区間、第3区間、第4区間それぞれの車速、勾配を識別子[2]、[3]、[4]と経路の順に関連付ける。S14の処理が終了すると、送信処理へ移行する(S16)。
【0038】
S16の処理は、ナビ拡張部1及びCANインターフェイス43が実行し、ECU_A(m)にS14の処理で生成した情報を送信する処理である。ナビ拡張部1及びCANインターフェイス43は、経路の順番を示す識別子[n]に関連付けられた車速及び勾配情報をECU_A(m)へ送信する。S16の処理が終了すると、図2に示す制御処理を終了する。
【0039】
図2に示す制御処理を実行することで、図3(A)に示すように、経路の順番を示す識別子[n]に関連付けられた車速及び勾配情報がECU_A(m)へ送信される。ECU_A(m)では、識別子[n]を参照として、車両3の経路内の区間の車速及び勾配情報を入力する。このように、ナビECU4からECU_A(m)へ情報送信する場合には、地図DB41が割り振るMAP_IDを用いずに、経路内の区間の順番に対応した識別子[n]により経路情報と車速及び勾配情報とを関連付けして送信することにより、MAP_IDの変更が送信処理に影響することを回避できる。例えば、従来の通信方法であれば、図8(A)に示すように、MAP_IDを識別子として車速及び勾配情報をECU_A(m)へ送信する。この場合において、図8(B)に示すように、地図DB41及び学習DB42で使用しているMAP_IDの桁数を3桁から4桁に変更するフォーマット変更を行った場合、ECU_A(m)側でも、MAP_IDが4桁であると設定しなおさなければ、正常に通信することができない。これに対して、経路の順番を示す識別子[n]を付与することにより、図3(B)に示すようにMAP_IDの桁数が3桁から4桁にフォーマット変換された場合であっても、ECU_A(m)側では受信方法を変更することなく車速及び勾配情報を受信することができる。
【0040】
次に、ナビECU4から情報を受信したハイブリットECU_A(1)が、現在地Pから距離L離れた目的地Pまでの経路において車両制御を行う例を説明する。図4(A)は、車両3の走行予定の経路である。また、図4(B)は、図4(A)の経路に対応した標高情報H、走行エネルギーE及び回生エネルギーEを示すグラフ、及び、車速V、勾配情報K、走行エネルギーE及び回生エネルギーEの表である。また、図4(B)のグラフの点線Gは、実際の地形を示している。
【0041】
図4(A)に示す経路情報、及び、図4(B)に示す表の車速V及び勾配情報Kは、ナビECU4が図2に示す制御処理を実行することにより、ハイブリットECU_A(1)へ送信される。ハイブリットECU_A(1)は、受信した各区間での車速Vに基づいて、現在地Pから距離L離れた目的地Pまでの経路の各区間それぞれの走行エネルギーEを算出する。また、受信した勾配情報Kに基づいて、各区間での標高情報Hを算出する。そして、標高情報Hに基づいて各区間の回生エネルギーEをそれぞれ算出する。ハイブリットECU_A(1)は、算出した走行エネルギーE及び回生エネルギーEに基づいて、目的地Pまでの車両制御を行う。このように、ハイブリットECU_A(1)は、MAP_IDを用いることなく、経路内の区間に対応した地図情報を用いて車両制御することが可能となる。
【0042】
次に、地図情報通信部6の情報受信動作について説明する。まず、本実施形態に係る地図情報通信部6の情報受信動作の前処理から説明する。図5は、本実施形態に係る地図情報通信部6の情報受信動作の前処理を示すフローチャートである。図5に示す制御処理は、例えばナビECU4の電源がオンされてから所定のタイミングで繰り返し実行される。なお、説明理解の容易性を考慮して、図7を参照して説明する。図7は、地図情報通信部6の動作を説明する概要図である。
【0043】
図5に示すように、地図情報通信部6は、実走行経路情報入力処理から開始する(S30)。S30の処理は、ナビ拡張部1が実行し、車両3が実際に走行した経路情報を入力する処理である。例えば、図7(A)に示す走行中の道路において、ナビ拡張部1は、MAP_IDが0001の地点付近を車両3が走行している場合には、0001を入力する。S30の処理が終了すると、識別子変換処理へ移行する(S32)。
【0044】
S32の処理は、ナビ拡張部1が実行し、S30で入力したMAP_IDと経路順に対応する識別子[n]とを対応させる処理である。ナビ拡張部1は、0001と識別子[1]とを対応させてテーブルに格納する。S32の処理が終了すると、識別子送信処理へ移行する(S34)。
【0045】
S34の処理は、ナビ拡張部1及びCANインターフェイス43が実行し、S32で対応させた識別子をECU_A(m)へ送信する処理である。S34の処理が終了すると、図5に示す制御処理を終了する。
【0046】
図5に示す制御処理を繰り返し実行することにより、図7(A)に示すように、車両3がMAP_IDで0001−0005−0003−0009の順に走行した場合には、MAP_ID0001を走行中に、MAP_ID0001と対応させた識別子[1]がECU_A(m)に送信され、MAP_ID0005を走行中に、MAP_ID0005と対応された識別子[2]がECU_A(m)に送信され、MAP_ID0003を走行中に、MAP_ID0003と対応させた識別子[3]がECU_A(m)に送信され、MAP_ID0009を走行中に、MAP_ID0009と対応された識別子[4]がECU_A(m)に送信される。ここで、ECU_A(m)は、例えば車両パワーを計測する機能を有しているとする。そして、ECU_A(m)は、識別子[n]を受信したときの計測値を記録する。これにより、図7(A)に示すように、ECU_A(m)は、識別子[n]それぞれにおける計測値、すなわち、経路順の計測値を記録することができる。そして、ECU_A(m)は、識別子[n]それぞれにおける計測値をナビECU4に送信することができる。
【0047】
次に、図6に示す地図情報通信部6の情報受信動作について説明する。図6は、本実施形態に係る地図情報通信部6の情報受信動作を示すフローチャートである。図6に示す制御処理は、例えば図5に示す制御処理が実行された後、所定のタイミングで繰り返し実行される。なお、説明理解の容易性を考慮して、図7を参照して説明する。図7は、地図情報通信部6の動作を説明する概要図である。
【0048】
図6に示すように、地図情報通信部6は、実走行経路情報入力処理から開始する(S40)。S40の処理は、ナビ拡張部1及びCANインターフェイス43が実行し、ECU_A(m)からCANを介して識別子[n]それぞれにおける計測値を受信する処理である。例えば図7(B)に示すように、識別子[1]に対応する車両パワー20、識別子[2]に対応する車両パワー50、識別子[3]に対応する車両パワー40、識別子[4]に対応する車両パワー10を受信する。S40の処理が終了すると、識別子変換処理へ移行する(S42)。
【0049】
S42の処理は、ナビ拡張部1が実行し、S40の処理で受信した識別子[n]それぞれにおける計測値を、図5のS32の処理で生成したテーブルを参照して、MAP_IDに対応させる処理である。ナビ拡張部1は、例えば図7(B)に示すように、識別子[n]とMAP_IDとを対応させたテーブルを用いて、識別子[1]をMAP_ID0001、識別子[2]をMAP_ID0005、識別子[3]をMAP_ID0003、識別子[1]をMAP_ID0009に対応させる。S42の処理が終了すると、記録処理へ移行する(S44)。
【0050】
S44の処理は、学習部12が実行し、情報を学習DB42に記録する処理である。学習部12は、S44の処理で対応させたMAP_IDに関連付けされた車両パワーを学習DB42に反映させる。S44の処理が終了すると、図6に示す制御処理を終了する。
【0051】
図6に示す制御処理を実行することにより、ECU_A(m)で計測された情報をMAP_IDに依存することなく学習DB42に反映させることができる。
【0052】
以上、本実施形態に係る地図情報通信部6及び地図情報通信システム5によれば、目的地までの道路に関連付けされた記録情報を必要とする複数のECU_A(n)に対して、複数のMAP_IDの並びにより表現される経路内における地図情報に関連付けされた記録情報を提供する場合には、複数の制御処理部から共通して参照可能な識別子[n]により経路内の区間の順序と関連付けして提供することができる。すなわち、地図情報により割り振られるMAP_IDを、経路情報により決定される識別子[n]と対応させることができる。このため、MAP_IDが変更された場合であっても、ECU_A(n)側では共通の識別子[n]を用いて経路内の区間に対応する各種記録情報を参照することができる。よって、地図情報が変更された場合であっても、通信方法を変更することなく、地図情報と関連付けられた記録情報を各ECU_A(n)と通信することができる。このため、ナビECU4及び複数のECU_A(n)はそれぞれが有する情報を相互に利用することで、情報精度の向上、事前予測精度の向上等を図ることが可能となる。また、地図情報に関連した情報の汎用性を高めることができる。
【0053】
なお、上述した実施形態は本発明に係る地図情報通信装置及び地図情報通信システムの一例を示すものである。本発明に係る地図情報通信装置及び地図情報通信システムは、実施形態に係る地図情報通信装置6及び地図情報通信システム5に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、実施形態に係る地図情報通信装置6及び地図情報通信システム5を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0054】
例えば、上述した実施形態では、図2のS14、図5のS32、図6のS42の処理において、MAP_IDに関連付けされた記録情報に識別子[n]を付与する例を説明したが、識別子[n]を付与するのではなく、MAP_IDを識別子[n]に置き換えてもよい。
【0055】
また、上述した実施形態では、地図情報通信装置6が勾配変換部13及び学習部12を備える例を説明したが、勾配変換部13及び学習部12は、要求される性能や接続されているECU_A(n)の機能に応じて備えなくても良い。
【0056】
さらに、上述した実施形態では、地図情報通信装置6が地図DB41及び学習DB42を備える例を説明したが、地図DB41及び学習DB42を一つのデータベースで管理してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…ナビ拡張部(関連付手段)、2…ナビ基本部、3…車両、4…ナビECU、5…地図情報通信システム、6…地図情報通信装置、11…共通データ管理部、41…地図DB、42…学習DB、A(n)…ECU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1識別子により地図情報と関連付けられた記録情報を参照可能に構成され、車両の経路内の前記記録情報を用いる複数の制御処理部と通信する地図情報通信装置であって、
複数の前記第1識別子の並びにより表現される前記経路内の前記記録情報を、複数の前記制御処理部から共通して参照可能な第2識別子を用いて前記経路内の区間の順序と関連付ける関連付手段を備えること、
を特徴とする地図情報通信装置。
【請求項2】
前記関連付手段は、前記経路内の前記記録情報を送信する場合には、複数の前記第1識別子の並びにより表現される前記経路内の前記記録情報を参照するとともに、参照した前記記録情報を、前記第2識別子を用いて前記経路内の区間の順序と関連付ける請求項1に記載の地図情報通信装置。
【請求項3】
前記関連付手段は、前記第2識別子と関連付けられた前記記録情報を受信した場合には、前記第2識別子と前記第1識別子とを対応させて、受信した前記記録情報を前記地図情報に関連付ける請求項1又は2に記載の地図情報通信装置。
【請求項4】
前記第1識別子により地図情報と関連付けられた前記記録情報を格納するデータベースと、
前記制御処理部から受信した前記記録情報に基づいて前記データベースを更新する学習手段と、
を備える請求項1〜3の何れか一項に記載の地図情報通信装置。
【請求項5】
前記関連付手段は、連番の前記第2識別子を用いる請求項1〜4の何れか一項に記載の地図情報通信装置。
【請求項6】
前記制御処理部は、前記車両を制御するアプリケーションである請求項1〜5の何れか一項に記載の地図情報通信装置。
【請求項7】
前記関連付手段は、複数の前記第1識別子の並びにより表現される前記経路を、前記第2識別子の並びにより表現し、前記第1識別子と前記第2識別子とを対応させた変換テーブルを作成し、作成した前記変換テーブルに基づいて前記記録情報を前記地図情報に関連付ける請求項3に記載の地図情報通信装置。
【請求項8】
第1識別子を用いて地図情報に関連付けた記録情報を参照可能に構成される地図情報通信装置、及び、前記地図情報通信装置と通信可能に構成され、車両の経路の前記記録情報を用いる複数の制御処理部を有する地図情報通信システムであって、
前記地図情報通信装置及び前記制御処理部は、複数の前記第1識別子の並びにより表現される前記経路内の前記記録情報を、複数の前記制御処理部から共通して参照可能な第2識別子により前記経路内の区間の順序と関連付けて通信すること、
を特徴とする地図情報通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−185687(P2010−185687A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28407(P2009−28407)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】