説明

地球情報分析システム

【課題】陸海大気域の平面および立体データといった地球情報を高精度に分析することができる地球情報分析システムを提供することである。
【解決手段】マイクロ波センサおよび光学センサを搭載したプラットフォームと、前記マイクロ波センサおよび前記光学センサによる検出データを前記プラットフォームから受信する受信部と、前記受信部によって受信した前記マイクロ波センサによる検出データの可視化処理を行う第1の可視化処理部と、前記受信部によって受信した前記光学センサによる検出データの可視化処理を行う第2の可視化処理部と、前記第1の可視化処理部および前記第2の可視化処理部からのデータの補正を行う補正処理部と、前記補正処理部からのデータの分析を行う分析処理部とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陸域、海域の地理情報はもちろんのこと、地上の設備、道路、移動体の状態あるいは地表の状態、大気や海の状態など地球上のあらゆる静止、移動、変化に関する情報、陸海大気域の平面および立体データ(以下、「地球情報」という)を高精度分析する地球情報分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、上空から地球を観測する遠隔観測システムが知られている。
【0003】
たとえば特許文献1に記載の画像による遠隔観測システムでは、人工衛星によって地表面の画像を撮影し、その画像データを地上に伝送するようにしている。
【0004】
ところが、広範囲な地域を高分解能で撮影したデータは膨大なデータ量になってしまうため、特許文献1に記載の発明では、必要な地表の特定の領域または特定のスペクトルバンドを高い空間分解能で詳細に観測できるようにし、その他の領域またはスペクトルバンドは粗くすることができるようにしている。
【0005】
【特許文献1】特開平6−36015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで上述の特許文献1に記載された発明では、光学的に観測した画像データを用いて地表面の状態を観測する発明が開示されているに過ぎず、平面データを得られるに過ぎないものであった。
【0007】
これに対して最近では、地球情報すなわち、陸海大気域の平面および立体データを入手する要望が高まっており、特許文献1に記載の発明では、これに対応できないという問題があった。
【0008】
本発明は上記の点にかんがみてなされたもので、陸海大気域の平面および立体データといった地球情報を高精度に分析することができる地球情報分析システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記の目的を達成するために、マイクロ波センサおよび光学センサを搭載したプラットフォームと、前記マイクロ波センサおよび前記光学センサによる検出データを前記プラットフォームから受信する受信部と、前記受信部によって受信した前記マイクロ波センサによる検出データの可視化処理を行う第1の可視化処理部と、前記受信部によって受信した前記光学センサによる検出データの可視化処理を行う第2の可視化処理部と、前記第1の可視化処理部および前記第2の可視化処理部からのデータの補正を行う補正処理部と、前記補正処理部からのデータの分析を行う分析処理部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、陸海大気域の平面および立体データといった地球情報を高精度に分析することができる地球情報分析システムを提供することができる。
【0011】
すなわち、本発明によれば、プラットフォームからのマイクロ波センサによる検出結果および光学センサによる検出結果の両者を複合使用して地球情報を高精度に分析することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本発明による地球情報分析システムの一実施の形態の全体構成を示すブロック図である。
【0014】
本実施の形態の地球情報分析システムは、上空を飛行して地球情報データを収集するプラットフォーム1と、プラットフォーム1によって収集した地球情報データを受信する受信部2と、受信部2で受信した地球情報データの可視化処理を行う可視化処理部3と、可視化処理部3の出力データに対する補正処理を行う補正処理部4と、補正処理部4の出力データを用いて分析処理を行う分析処理部5とを備えて構成される。
【0015】
続いて、図1に示した各構成の詳細について図面を参照して説明する。
【0016】
図2は、図1に示したプラットフォーム1の構成を示すブロック図である。
【0017】
プラットフォーム1としては、ロケット、人工衛星や、人が搭乗する飛行機やヘリコプター、飛行船などのほか、たとえばラジコン操縦可能な模型サイズの飛行体や、凧のようなものなど、いかなる飛行体を用いてもかまわない。
【0018】
プラットフォーム1は、マイクロ波センサ11と、光学センサ12と、測位部13と、マイクロ波センサ11による検出結果、光学センサ12による検出結果および測位部13による検出結果を送信する送信部14とを備えて構成される。
【0019】
マイクロ波センサ11は、地表から放射、反射されるマイクロ波(波長1mm〜1m)を検出したり、プラットフォーム1からマイクロ波を地表に向けて発射し、それが反射したマイクロ波を検出する。
【0020】
マイクロ波センサ11の種類としては、以下の(a)〜(d)のものなどが挙げられる。
(a)合成開口レーダ(SAR:Synthetic Aperture Rader)
プラットフォームの進行方向に直角にマイクロ波を照射し、地表からの後方散乱成分を分析する。
(b)マイクロ波散乱計(Microwave Scattermeter)
海面の風ベクトル(風速および風向)を観測する。
(c)マイクロ波高度計(Microwave Altimeter)
プラットフォームから直下に向けてマイクロ波のパルスを発射し、パルスが戻ってくる時間を測定することによってプラットフォームから地表面までの距離を測定する。
(d)マイクロ波放射計
大気の温度分布、海面温度、土壌水分の測定をする。
【0021】
一方、光学センサ12は、地表から放射、反射される電磁波、光線(紫外線の一部(波長0.3〜0.4μm)、可視光線(波長0.4〜0.7μm)赤外線の一部(波長0.7〜14μm))を検出したり、プラットフォーム1からこれらの電磁波、光線を地表に向けて発射し、それが反射した電磁波、光線を検出する。
【0022】
光学センサ12の種類としては、以下の(a)〜(d)のものなどが挙げられる。
(a)オプティカルメカニカルスキャナ(OMS)
走査光学系と結像光学系から構成され、走査光学系には回転鏡あるいは振動鏡が用いられる。プラットフォームの進行方向に対し、直角方向の観測幅を観測幅あるいは走査幅という。回転鏡は走査幅が広い場合(たとえば500km以上)に用いられ、振動鏡は走査幅が狭い場合(たとえば200km以下)に用いられる。
(b)プッシュブルームスキャナ(PBS)
1走査幅分の光検知素子を並べ、進行方向にのみ走査を行う。
(c)高スペクトル分解能センサ
大気微量成分観測用センサ
(d)レーザレーダあるいはライダ
レーザ光を発射してその反射光を測定し、測定多少に関する情報を得る。測定対象は、エアロゾル、空気分子、気体濃度、氷面の高度などである。
【0023】
測位部13は、測位系人工衛星(GPS)からの受信信号等に基づいて、プラットフォーム1の現在位置の測定を行う。すなわち、測位部13は、微弱な受信信号を増幅する増幅器(図示せず)や、増幅された信号をデジタル信号に変換するA/D変換器(図示せず)や、4個以上の人工衛星から発信されるC/Aコードの時間差を求める相関器(図示せず)や、相関器から得られる時間差データおよびC/Aコードの位相誤差ならびに搬送波の位相差誤差に基づいて、衛星の位置、衛星との距離、プラットフォーム1の位置、プラットフォーム1の時刻補正などを演算し、その結果から緯度、経度、高さ、時刻、速度、衛星の受信状態などの測位結果を出力する測位演算部(図示せず)などを備える。
【0024】
図1に示した受信部2は、図2に示した送信部14によって送信された、マイクロ波センサ11による検出結果、光学センサ12による検出結果および測位部13による測位結果を、受信する。
【0025】
送信部14と受信部2との間はいかなる通信手段を用いてもよく、有線通信でも無線通信でもよい。また、受信部2以降の構成は、プラットフォーム1に搭載してもよいが、地上に設けるのが望ましい。
【0026】
図1に示した受信部2で受信したデータは、図1に示した可視化処理部3に引き渡される。
【0027】
図3は、図1に示した可視化処理部3の構成を示すブロック図である。
【0028】
可視化処理部3は、マイクロ波センサ11によって得たデータの可視化処理を行う可視化処理部31と、光学センサ12によって得たデータの可視化処理を行う可視化処理部32とを備えて構成される。
【0029】
可視化処理部31では、マイクロ波センサ11によって得たデータの可視化として、たとえば画像再生処理を行う。この画像再生処理について以下に説明する。
【0030】
マイクロ波センサ11によって得たデータのうち、合成開口レーダで観測されるデータ(生データ)は、プラットフォーム1より送出された幅の広い送信パルスの地表からの後方散乱を、単に時系列的に記録したものである。したがって、地表のある1点Pからの反射記号は、パルス幅に相当するだけレンジ方向(プラットフォームの進行方向に直角な方向)に広がって記録される。
【0031】
また、プラットフォーム1の移動につれてマイクロ波ビームが点Pを横切る間、点Pは次々にやってくるマイクロ波パルスに照射され続けるため、その反射記号はやはりアジマス方向(プラットフォームの進行方向)にも広がって受信される。
【0032】
合成開口レーダ生データから、地表の各点の後方散乱強度に比例した濃度レベルを各画素が持つような画像を作成することを合成開口レーダ画像再生という。
【0033】
レンジ方向とアジマス方向に広がって記録された地表のある1点からの受信信号を1点に圧縮する処理のうち、レンジ方向の圧縮、アジマス方向の圧縮を、それぞれレンジ圧縮、アジマス圧縮という。
【0034】
圧縮を行うには、受信信号と参照関数との相互相関を求めればよい。レンジ圧縮時の参照関数は、送信波と複素共役な信号であり、アジマス圧縮時の参照関数は、ドップラー効果によって見かけ上、線形FM変調された送信信号と複素共役な信号である。実際にはこの相互相関の計算は、高速化を図るために周波数空間で行われる。すなわち、受信信号をフーリエ変換し、相互相関を求め、その後逆フーリエ変換を行う。
【0035】
レンジ圧縮後にアジマス圧縮を行う際には、アジマス方向のフーリエ変換の後にレンジマイグレーション補正が行われる。以下にレンジマイグレーション補正について説明する。
【0036】
地表の1点のスラントレンジは、プラットフォーム1の移動とともに時間に関して2次関数的に変化する。この変化量をレンジマイグレーションという。1次の項は、レンジウォークと呼ばれ、地球の自転に起因する。2次の項は、レンジカーバチャと呼ばれる。レンジマイグレーションのためアジマス方向に関して2次曲線上に広がって記録された地表のある1点の信号を1ライン上に並べなおす処理がレンジマイグレーション補正である。レンジウォークとレンジカーバチャをそれぞれ補正するレンジウォーク補正とレンジカーバチャ補正にわけて行うこともある。
【0037】
アジマス方向では、レンジマイグレーション補正の後に、相互相関を求めるが、この際にはマルチルック処理が行われる。以下にマルチルック処理について説明する。
【0038】
レーダのデータを画像化(再生処理)する際、スペックルと呼ばれるちらつきによる画像の見にくさの除去が大きな問題となる。このため、マルチルック処理を行う。このマルチルック処理はコヒーレント観測系に特有な乗法的ランダム雑音であるスペックルを平均操作によって低減するものであり、実際には再生画像上での局所的な平均操作ではなく、合成開口長をN個の区間に分けて、それぞれの区間でアジマス圧縮を行った後、加え合わせることにより行われる。このときのNをルック数といい、3ないし4のルック数が用いられる。
【0039】
以上説明したようにして、可視化処理部31によって、マイクロ波センサ11によって得たデータの可視化が行われる。
【0040】
一方、図3に示した可視化処理部32では、光学センサ12によって得たデータである電磁波の可視化処理が行われる。
【0041】
可視化処理部32による処理としては、放射源位置の変動、大気、対象物、センサやデータ伝達空間の温度や光量などによるデータへの影響を補正するラジオメトリック補正や、センサ検知器の感度のバラツキによって生ずる帯状のストライピングノイズを補正するストライピングノイズや、リモートセンシング系人工衛星の振動式あるいは回転式スキャナで発生する座標系データの歪みを補正するタンジェント補正などが挙げられる。
【0042】
可視化処理部3による処理が施されたならば、そのデータは補正処理部4に引き渡される。
【0043】
図4は、図1に示した補正処理部4の構成を示すブロック図である。
【0044】
補正処理部4は、センサ11、12で得られたデータの配列変換を行う補正処理部41と、入力データと出力データとの対応付を行う補正処理部42と、スペクトル強調処理を行う補正処理部43と、空間的強調処理を行う補正処理部44と、変換強調処理を行う補正処理部45とを有して構成される。
【0045】
補正処理部41は、得られたデータに含まれる幾何学的な歪みを補正するとともに分析区域の形状や広さあるいは用いられる図法(たとえばメルカトール図法)などの使用目的または標高計算の目的で画像データを補正する幾何補正を行うものである。
【0046】
プラットフォーム1からの画像データは複雑な幾何的歪みを含んでいるために計量的評価に用いるには何らかの幾何学的変換が不可欠である。一方、この画像データは、地図用、分類図用、主題図用、評価図用、標高計算などの異なる目的と主題で使用されるので、目的、用途、主題などに応じての補正が必要になる。
【0047】
これらのために行う補正が幾何補正であり、たとえば多重スペクトル走査計(MSS)データの幾何補正は分析地区が細長く、広い地域に適用され、軌道上の衛星から取得した画像データは地表上で用いられる地図図法(たとえばメルカトール図法、ランベルト図法)と関連づけて補正され、また立体画像データについては同一地点を異なる位置から計測し、標高差を補正する。
【0048】
このような目的で行われる幾何補正には、ヘルマート変換、アフィン変換、疑似アフィン変換、2次等角変換、2次射影変換、高次多項式などが用いられ、人工衛星から受信する電磁波の波長と希望する画像の処理によって適当な変換方式が選択される。
【0049】
入手した画像データ(u,v)を地図の標定点(x,y)に変換する場合、上記変換式は次のようなものである。
ヘルマート変換
u=a0+a1x+a2yv=b0−a2x+a1y
アフィン変換
u=a0+a1x+a2yv=b0+b1x+b2y
疑似アフィン変換
u=a0+a1x+a2y+a3xyv=b0+b1x+b2y+b3xy
2次等角変換
u=a0+a1x+a2y+a3xy+a4(x2−y2)
v=b0+b1x+b2y+b3xy+b4(x2−y2)
2次射影変換
u=(a0+a1x+a2y)/(1+c1x+c2y)
v=(b0+b1x+b2y)/(1+c1x+c2y)
高次多項式
u=a0+a1x+a2y+a3xy+a4x2+・・・amxnynv=b0
+b1x+b2y+b3xy+b4x2+・・・amxnyn
なお、これらの変換式において、a0、a1、a2、a3、a4、・・・am、b0、b1、b2、b3、b4、c1、c2は一定の係数である。
【0050】
たとえば平行移動と回転のみにはヘルマート変換が用いられ、x、yを独立に線形変換するにはアフィン変換が用いられる。局部的土地利用の分類図などにはアフィン変換で十分対応できる。入手画像データにねじれ項が入っている場合は線形変換では対応できないので、疑似アフィン変換が用いられる。2次等角変換は地図投影に用いら、放物線歪みの補正に適する。このような幾何補正処理に測位演算部14から得られる高精度な測位データが用いられ、精度の高い画像データが得られる。
【0051】
補正処理部42は、ディスプレイなどに表示する場合の入力画像データと出力画像データとの対応をとるためにずれを補正する補完処理を行うものである。
【0052】
この補完処理にはニアレスト・ネイバー法、バイリニア法またはキュービック・コンボリューション法が用いられる。
【0053】
ニアレスト・ネイバー法は、重み関数を用いて出力画像を最も近い入力画像の画素で代用する方法で、画像ボケを生じず、処理時間が最も短いという特徴がある。バイリニア法は、注目点の4角の画素データを距離に反比例して軽重率をつけて加重平均する方法である。
【0054】
補正処理部43は、多次元分光画像の最適なコントラストを得るスペクトル強調処理を行うものである。
【0055】
また、補正処理部44は、対象物の形状、方向、大きさなどを強調するための空間的強調処理を行うものである。
【0056】
さらに、補正処理部45は、生データのスペクトルを目的に応じて変換する変換強調処理を行うものである。
【0057】
ここで、補正処理部43、補正処理部44および補正処理部45で行われるスペクトル強調処理、空間的強調処理、変換強調処理について説明する。
【0058】
スペクトル強調処理は多次元分光画像の最適なコントラストを得る方法であり、次のような目的で行われる。
(a)疑似自然色データ
自然の色に近く、陸域と海域の差が明瞭になる。
(b)赤外カラーデータ
植生地域の分布を明確に表現し、地質構造も良く表現され、断層の有無を明瞭に捉えることができる。
(c)自然色カラー表示
人間の目に写る映像感覚と同様の画像であり、森林で覆われた山間部は緑色で、海域は青色で、平野部は白色に近い色調で表される。
(d)中間赤外カラーデータ
森林部を緑色で、市街地を濃青色で表現し、平地および森林地域の判別、植生種の区別などが可能である。
(e)グレイ・レベル
黒色から白色までを表現し、これに含まれるデータを解析することができる。
(f)レベル・スライス/シュード疑似カラー
画像データに色を割り当て、鮮明なカラー・パターンを得る。たとえば鉱物資源地帯に関する特定のデータを強調し表示することができる。
(g)リニア・ストレッチ
輝度やコントラストを調整する。
(h)ノンリニア・ストレッチ
入力データを加工し、必要な出力画像を得る。
(i)ヒストグラム・イコライゼイション
入力データを自動的に強調処理する。
【0059】
また、このスペクトル強調処理には、コンピュータ内で処理を行ってその結果を地図として出力する方法と、強調処理を行ってカラーグラフィックイメージディスプレイに出力する方法とがある。後者の方法は強調処理用のアルゴリズムにより最適状態が達成されるまでユーザとコンピュータとの間で対話処理を行うことができるという利点がある。
【0060】
空間的強調処理は画像内における対象物の形状、方向、大きさを強調するのが目的で行われ、エッジなどの特性を強調するためにハイパス・フィルタが用いられたり、画像をぼかしてシャープなコントラストを均等化するのにローパス・フィルタが用いられたり、また斜め方向のデータに方向性を持たせるために可変係数フィルタが用いられる。
【0061】
変換強調処理は、画像データの各画素を自由に取り扱うことができるように、生データのスペクトルを使い易いように変換するのが目的で行われる。たとえば、地表面の情報をより細かく分析・表示したり、画像データ内に埋没している情報を見つけ出すことができる。その一手法として、波長の異なる電磁波を組み合わせ、画像の特徴をより明瞭にする比演算および線形結合がある。この手法を用いれば、森林地帯の植生の活性度分析を行ったり、RGBビデオ・チャンネルに3つの異なる画像データを表示しながら、新しいデータを作成することができる。
【0062】
補正処理部4による処理が施されたならば、そのデータは分析処理部5に引き渡される。
【0063】
図5は、図1に示した分析処理部5の構成を示すブロック図である。
【0064】
分析処理部5は、画像データをパターン認識その他の手法により分類する分析処理部51と、土地被覆分析を行う分析処理部52と、土地利用分析を行う分析処理部53と、地質分析を行う分析処理部54と、岩相の識別を行う分析処理部55と、地表面の粗さを分析する分析処理部56と、地質構造分析を行う分析処理部57と、地形計測を行う分析処理部58と、植生分析を行う分析処理部59と、水文分析を行う分析処理部60と、地図投影を行う分析処理部61と、色彩分析を行う分析処理部62とを有して構成される。
【0065】
分析処理部51では分類処理を行う。この分類処理について以下に説明する。
【0066】
画像データを用いて統計的解析を行う場合には、解析方法の種類によって画像データから得られる地上の対象物を「既存の物体」と「何か分らないもの」とに区分して表現する必要がある。たとえば分類図における植物、裸地、芝生、都市などの分類出力がその例である。
【0067】
このような目的で行われるのが分類処理であり、パターン認識による分類とパターン認識なしの分類とがあり、前者は航空写真あるいは既存の地図により森林地域の位置を確認しておき、この地域を画像ディスプレイ上に求め、ユーザはコンピュータと対話しながらその地域のファイル名を与えて分類する。これに対して後者は、ユーザがいくつかの統計データを画像データに指定しておき、これらの統計データを用いてコンピュータに「何か分らないもの」と「既存の物体とか土地」とを比較し、「何か分らないもの」を抽出し分類する。
【0068】
分析処理部52では土地被覆分析を行う。
【0069】
この土地被覆分析では、地表面の被覆状態を観測する。主として植生の状態から分類した情報、たとえば、森林、草地、砂漠などの分類である。さらなる分類項目の例としては以下の(a)〜(q)が挙げられる。
【0070】
すなわち、
(a)常緑針葉樹林
(b)常緑広葉樹林
(c)落葉針葉樹林
(d)落葉広葉樹林
(e)混交林
(f)密な低木
(g)疎な低木
(h)樹木の多いサバンナ
(i)サバンナ
(j)草地
(k)湿地
(l)農地
(m)都市域
(n)農地と自然植生
(o)万年雪・氷
(p)荒地
(q)水域
などが挙げられる。
【0071】
分析処理部53では土地利用分析を行う。
【0072】
この土地利用分析では、土地を人間がどのように利用しているかで分類する。たとえば、工業用地、灌漑農地、採掘物、農林などの分類である。
【0073】
分析処理部54では地質分析を行う。
【0074】
この地質分析では、地表面での岩石の分析や地質構造観測をする。
【0075】
分析処理部55では岩相分析を行う。
【0076】
この岩相分析では岩相で分類する。分類項目の例としては以下の(a)〜(f)が挙げられる。
【0077】
すなわち、
(a)泥質岩
(b)砂岩
(c)炭酸塩岩
(d)火山岩・火砕岩
(e)深成岩
(f)変成岩
などが挙げられる。
【0078】
分析処理部56では地表面の粗さ分析を行う。
【0079】
地表面の粗さの違いが地表物質の識別に役立つため、その分析を行う。
【0080】
分析処理部57では地質構造分析を行う。
【0081】
この地質構造分析では地質構造で分類する。分類項目の例としては以下の(a)〜(g)が挙げられる。
【0082】
すなわち、
(a)地質の走向・傾斜と褶曲構造
(b)断層
(c)地下の断列
(d)地すべり
(e)火山
(f)衝突クレータ
(g)地下構造
などが挙げられる。
【0083】
分析処理部58では地形計測を行う。
【0084】
この地形計測では、以下の(a)〜(c)の方法が挙げられる。
(a)光学センサによる地形計測
たとえば図6に示すような前方、直下および後方のスリーラインを同時にスキャン可能なスリーラインスキャナを用いて前方視、直下視および後方視を得て、この前方視、直下視および後方視をそれぞれ組み合わせると、3種類のステレオペアができる。この方法によれば、これらのマッチングが同じ点に合わないといけないという条件が、ミスマッチングの検出、マッチングの高精度化に有効である。
(b)マイクロ波センサによる地形計測
図7は、マイクロ波センサによる地形計測であるレーダステレオを説明する図であって、(a)はレーダステレオにおけるレーダと地表点の幾何学的関係を示す図であり、(b)は(a)の関係をyz面で示す図である。
【0085】
図7(b)のyz面で2つのマイクロ波センサ(図中のSAR#1、#2)の位置を中心にそれぞれの視線距離を半径とする円を書けば、観測地表点Tはその交点として求まる。
【0086】
図7(a)、(b)に示した構成に干渉計(インタフェロメトリ)を付加すると、さらに精度が向上する。この構成を図8(a)、(b)に示す。
【0087】
図8は、マイクロ波センサによる地形計測であるインタフェロメトリを説明する図であって、(a)はインタフェロメトリにおけるレーダと地表点の幾何学的関係を示す図であり、(b)は(a)の関係をyz面で示す図である。
【0088】
干渉計では、2つの画像(干渉ペア)間の視線距離の差は次式で近似できる。
【0089】
−R=B・sin(θ−α)
2つのセンサを結ぶ線は基線と呼ばれ、Bは基線の長さ、αは基線の傾き角である。また、マイクロ波複素数の位相は次式で表される。
【0090】
Φ=−4πR/λ+φ
ここで、λはマイクロ波波長、φは地表点におけるノイズを含む後方散乱の変化位相である。
【0091】
基線が短い、つまり入射角(観測角)がほとんど同じ場合には、干渉ペアの画像どうしでφはほぼ同じ値をとる。
【0092】
マイクロ波センサによる干渉ペアを構成する場合、位相差である干渉位相と基線の関係は、次式で表される。
【0093】
φ=Φ−Φ=4πB・sin(θ−α)/λ
また、地形標高hは、次式で表される。
【0094】
h=H−R・cosθ
ここで、Hはレーダ高度である。
(c)上記(a)および(b)の複合により、精度は使用するマイクロ波の半分以下が得られる。たとえばマイクロ波波長10cmであれば、誤差5cmで標高を求めることができ、地殻変動や地盤沈下の観測も容易となる。
【0095】
分析処理部59では植生分析を行う。
【0096】
この植生分析の例としては以下の(a)〜(c)が挙げられる。
【0097】
すなわち、
(a)農地、草地、湿地の解析
(b)森林の解析
(c)伐採地の解析
などが挙げられる。
【0098】
分析処理部60では水文分析を行う。
【0099】
この水文分析の例としては以下の(a)〜(d)が挙げられる。
【0100】
すなわち、
(a)降水
(b)土壌水分
(c)水の流量
(d)蒸発量・蒸散量
などが挙げられる。
【0101】
分析処理部61では地図投影を行う。
【0102】
この地図投影の例としては以下の(a)〜(e)が挙げられる。
(a)投射図法
・外射図法
視点を地球外有限の位置に置いた図法
・正射図法
視点を地球外無限遠に置いた図法
・平射図法
視点を投射面と反対の地球表面に置いた図法、ポーラーステレオ図法を採用
・心射図法
視点を地球中心に置いた図法
(b)円錐図法
地球表面と接するまたは交わる円錐面に投影する図法である。ランベルト正角円錐図法を採用する。
(c)円筒図法
地球表面と接するまたは交わる円筒面に投影する図法である。メルカトール図法とガウスクリューガ図法を採用する。
(d)等緯度経度図法
等間隔に分割された緯度、経度を画像座標のライン番号、ピクセル番号に見立てた図法である。
(e)世界全図
全世界を1つの画像として表現するものであり、主に、緯線を平行な直線、経線を放物線で表現するモルワイデ図法、経線が正弦曲線で表現されるサンソン図法、両者を組み合わせたグード図法などがある。
【0103】
分析処理部62では色彩分析を行う。この色彩分析では、以下のように処理する。
【0104】
色彩分析では、色を色相、彩度、明度の3属性で定義する。
【0105】
色相は、色の違いを区別するための属性で、赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の7色を基本色相とし、1つの色相を256等分する。色相は1792に分割される。
【0106】
明度は、各色相の明るさを0(黒)から10(白)までの11段階に等分割して表現する。
【0107】
彩度は、色の鮮やかさの程度をあらわす属性で、各色相、明度ごとに無彩色(灰色)から最も鮮やかな色(単色)までを区別する。
【0108】
故に、色の区分は、色相(1792)×明度(11)×彩度(10)=197120通りとなる。これにより、色相が発生する観測対象物は、対象物個々に分析可能となる。
【0109】
本実施の形態によれば、以上説明した構成によって、光学センサおよびマイクロ波センサの複合使用による陸海大気域の平面および立体データの高精度分析が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明による地球情報分析システムの一実施の形態の全体構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示したプラットフォーム1の構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示した可視化処理部3の構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示した補正処理部4の構成を示すブロック図である。
【図5】図1に示した分析処理部5の構成を示すブロック図である。
【図6】スリーラインスキャナについて説明する図である。
【図7】マイクロ波センサによる地形計測であるレーダステレオを説明する図であって、(a)はレーダステレオにおけるレーダと地表点の幾何学的関係を示す図であり、(b)は(a)の関係をyz面で示す図である。
【図8】マイクロ波センサによる地形計測であるインタフェロメトリを説明する図であって、(a)はインタフェロメトリにおけるレーダと地表点の幾何学的関係を示す図であり、(b)は(a)の関係をyz面で示す図である。
【符号の説明】
【0111】
1 プラットフォーム
2 受信部
3、31、32 可視化処理部
4、41、42、43、44、45、 補正処理部
5、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62 分析処理部
11 マイクロ波センサ
12 光学センサ
13 測位部
14 送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波センサおよび光学センサを搭載したプラットフォームと、
前記マイクロ波センサおよび前記光学センサによる検出データを前記プラットフォームから受信する受信部と、
前記受信部によって受信した前記マイクロ波センサによる検出データの可視化処理を行う第1の可視化処理部と、
前記受信部によって受信した前記光学センサによる検出データの可視化処理を行う第2の可視化処理部と、
前記第1の可視化処理部および前記第2の可視化処理部からのデータの補正を行う補正処理部と、
前記補正処理部からのデータの分析を行う分析処理部と
を備えたことを特徴とする地球情報分析システム。
【請求項2】
前記第1の可視化処理部が、前記マイクロ波センサによる検出データに対して画像再生処理を行うものであることを特徴とする請求項1に記載の地球情報分析システム。
【請求項3】
前記第2の可視化処理部が、前記光学センサによる検出データに対して、ラジオメトリック補正、ストライピングノイズ補正またはタンジェント補正を行うものであることを特徴とする請求項1に記載の地球情報分析システム。
【請求項4】
前記補正処理部が、幾何補正、補完処理および強調処理を行うものであることを特徴とする請求項1に記載の地球情報分析システム。
【請求項5】
前記補正処理部が行う強調処理が、スペクトル強調処理、空間的強調処理および変換強調処理であることを特徴とする請求項4に記載の地球情報分析システム。
【請求項6】
前記補正処理部が行う幾何補正が、ヘルマート変換、アフィン変換、疑似アフィン変換、2次等角変換、2次射影変換または高次多項式であることを特徴とする請求項4に記載の地球情報分析システム。
【請求項7】
前記補正処理部が行う補完処理が、ニアレスト・ネイバー法、バイリニア法またはキュービック・コンボリューション法であることを特徴とする請求項4に記載の地球情報分析システム。
【請求項8】
前記補正処理部が行うスペクトル強調処理が、疑似自然色データ、赤外カラーデータ、自然色カラー表示、中間赤外カラーデータ、グレイ・レベル、レベル・スライス/シュード疑似カラー、リニア・ストレッチ、ノンリニア・ストレッチまたはヒストグラム・イコライゼイションについてのものであることを特徴とする請求項5に記載の地球情報分析システム。
【請求項9】
前記補正処理部が行う空間的強調処理が、ハイパス・フィルタ、ローパス・フィルタまたは可変係数フィルタを用いたものであることを特徴とする請求項5に記載の地球情報分析システム。
【請求項10】
前記補正処理部が行う変換強調処理が、波長の異なる電磁波を組み合わせ、画像の特徴をより明瞭にする比演算および線形結合であることを特徴とする請求項5に記載の地球情報分析システム。
【請求項11】
前記分析処理部が、観測対象物分類、土地被覆分析、土地利用分析、地質分析、岩相の識別、地表面の粗さ分析、地質構造分析、地形計測、植生分析、水文分析、地図投影または色彩分析を行うものであることを特徴とする請求項1に記載の地球情報分析システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−303855(P2007−303855A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−129902(P2006−129902)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(506157363)System Box Japan株式会社 (1)
【Fターム(参考)】