説明

均一な誘電率を持つプリプレグ、及びこのプリプレグを使用した金属箔積層板とプリント配線板

プリプレグ、及び前記プリプレグを使用した金属箔積層板とプリント配線板が提供される。プリプレグは、基材及びこの基材に含浸された液晶高分子樹脂を備え、その一面または両面に0.1ないし5.0μmの表面粗度を持つ。また、このプリプレグを使用した金属箔積層板及びプリント配線板が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリプレグ、及び前記プリプレグを使用した金属箔積層板とプリント配線板に関し、さらに詳細には、均一な表面粗度を備えるプリプレグ、及び前記プリプレグを使用した金属箔積層板とプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電子機器の小型化、多機能化によって、プリント配線板の高密度化、小型化が進んでいる。金属箔積層板は、スタンピング加工性、ドリル加工性に優れることから電子機器のプリント配線板用基板として広く利用されており、また低コストである。
【0003】
これらのプリント配線板用金属箔積層板に利用されるプリプレグは、半導体の性能及び半導体パッケージング製造工程の条件に適するように、下記の主要特性を満たせねばならない。
(1)金属(集積回路(IC)チップ)熱膨張率に対応可能な低熱膨脹率
(2)1GHz以上の高周波領域での低誘電率及び誘電安定性
(3)270℃ほどのリフロー工程に対する耐熱性
(4)プリプレグの水平方向(幅及び長手方向)での均一な誘電率
(5)金属薄膜との高い接着性
【0004】
前記プリプレグは、一般的にエポキシまたはビスマレイミドトリアジンから由来する樹脂をガラス織布に含浸させた後、半硬化して製造する。次いで、前記プリプレグに金属薄膜を積層し、樹脂を完全硬化させて金属箔積層板を製造する。かかる金属箔積層板は薄膜化されて、270℃のリフロー工程などの高温工程を経るが、これらの高温工程を経ることによって、薄膜形態の金属箔積層板がプリプレグと金属薄膜との熱膨張率差によって変形するなどの問題点がある。
【0005】
また、エポキシまたはビスマレイミドトリアジン樹脂は、それ自体の高い吸湿性により改善が求められており、特に、1GHz以上の高周波領域での誘電特性が劣って(すなわち、高周波領域で誘電率が高い)、高周波、高速処理を要求する半導体パッケージング用のプリント配線板に適用し難いという問題点がある。樹脂の吸湿性が高い場合には、i)水分吸湿による寸法変化に起因した剥離現象、ii)反り(warpage)現象、iii)リフロー工程などの加工工程で水分気化によるブリスター発生などの問題点がある。
【0006】
かかる誘電特性の劣化問題を解決し、硬化にかかる時間を短くすることによって製造工程及び製造時間を短縮するために、高周波領域で低誘電特性を持ち、熱可塑性の液晶高分子樹脂を利用してプリプレグを形成する場合もある。かかるプリプレグは、有機または無機織布に液晶高分子樹脂を含浸させ、その結果物を圧延及び乾燥させて製造する。前記圧延過程などで、基材に含浸された液晶高分子樹脂が基材の表面上に一部滲出して樹脂層を形成することもあるが、この場合には、この樹脂層を介して基材と金属薄膜とが互いに接着される。
【0007】
また、プリプレグは水平方向の誘電率偏差が小さくなければならないが、もし、前記偏差が大きい場合には、均一でない抵抗値によって基板使用時に回路短絡、機器誤作動などの問題が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一具現例は、均一な表面粗度を備えるプリプレグを提供する。
【0009】
本発明の他の具現例は、最適化された樹脂含浸率を持つプリプレグを提供する。
【0010】
本発明のさらに他の具現例は、前記プリプレグを使用した金属箔積層板及びプリント配線板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面は、基材と、前記基材に含浸された液晶高分子樹脂と、を備え、その一面または両面に0.1ないし5.0μmの表面粗度を持つプリプレグを提供する。
【0012】
具体的に、前記液晶高分子樹脂の含浸率は、前記基材及び液晶高分子樹脂の重量和を基準に44ないし52重量%である。
【0013】
前記プリプレグは、前記含浸された液晶高分子樹脂の一部が前記基材の表面上に滲出して形成された液晶高分子樹脂層をさらに備える。この場合、前記液晶高分子樹脂層の厚さ比率は、前記基材及び液晶高分子樹脂層の厚さ和を基準に9ないし23%である。
【0014】
前記基材は、ガラス繊維織物、ガラス繊維不織布及び炭素繊維織物からなる群から選択された少なくとも1種を含む。
【0015】
前記液晶高分子樹脂は、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステルアミド、ポリエステルイミド、ポリホスファゼン及びポリアゾメチンからなる群から選択された少なくとも1種を含む。
【0016】
前記プリプレグは、1GHz以上の高周波領域で、比誘電率が4.0以下、その標準偏差が0.1以下である。
【0017】
本発明の他の側面は、前記プリプレグまたは前記プリプレグが少なくとも2枚積層されたプリプレグ積層体を備え、前記プリプレグまたは前記プリプレグ積層体の一面または両面上に配された金属薄膜を備える金属箔積層板を提供する。
【0018】
具体的に、前記金属箔積層板は、前記プリプレグと金属薄膜との間に配された液晶高分子補正層をさらに備える。
【0019】
前記液晶高分子補正層は、前記プリプレグと金属薄膜との間にフィルム状に挿入されてもよく、前記プリプレグの一面または前記金属薄膜の一面に、液晶高分子樹脂ワニスをコーティングすることによって形成されてもよい。
【0020】
前記液晶高分子補正層の厚さ比率は、前記プリプレグの平均厚さを基準に5ないし30%である。
【0021】
前記プリプレグとこれに接着された金属薄膜との接着強度が0.5ないし2.5N/mmである。
【0022】
本発明のさらに他の側面は、前記金属箔積層板を回路加工して得られるプリント配線板を提供する。
【0023】
本発明のさらに他の側面は、前記プリント配線板、及び前記プリント配線板の少なくとも一面上に配されたプリプレグまたはプリプレグ積層体を備え、前記プリプレグまたは前記プリプレグ積層体上に配された金属薄膜を備える金属箔積層板を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一具現例によるプリプレグを示した部分斜視図である。
【図2】図1のプリプレグを備える金属箔積層板の一具現例を示した断面図である。
【図3】本発明の他の具現例によるプリプレグを備える金属箔積層板の一具現例を示 した断面図である。
【図4】本発明のさらに他の具現例によるプリプレグを備える金属箔積層板の一具現 例を示した断面図である。
【図5】図1のプリプレグを備えるプリント配線板の一具現例を示した断面図である。
【図6】図5のプリント配線板を備える金属箔積層板の一具現例を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して本発明の一具現例によるプリプレグについて詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の一具現例によるプリプレグを示した部分斜視図である。
【0027】
図1を参照すれば、本具現例によるプリプレグ10は、ここでは区分して図示していな いが、基材及び前記基材に含浸された液晶高分子樹脂を備える。
【0028】
前記基材としては、ガラス繊維織物、ガラス繊維不織布及び/または炭素繊維織物などが使われうる。機械的、電気的特性及び経済性側面でガラス繊維織物を使用することが望ましい。
【0029】
液晶高分子樹脂としては、溶剤に溶解可能なものならば制限なしに使われうるが、望ましくは、400℃以下で光学的異方性を表す溶融体を形成できるサーモトロピック芳香族液晶ポリエステルが使われうる。具体的に、前記芳香族液晶ポリエステルは、溶融温度が280ないし400℃であることが望ましい。前記温度が280℃未満ならば、これは、後のプリント配線板の基板加工工程におけるハンダ付け温度より低いので、基板の変形が発生するので望ましくなく、400℃を超過すれば、後工程である積層加工時に高温が要求されて生産に望ましくなく、また重合体の溶剤溶解度が落ちて望ましくない。また、前記芳香族液晶ポリエステルは、数平均分子量が1,000ないし20,000であることが望ましい。前記数平均分子量が1,000未満ならば、機械的強度が不十分で望ましくなく、20,000を超過すれば、溶解度が低くなって望ましくない。
【0030】
液晶高分子樹脂溶液は1ないし40重量%の濃度、例えば、10ないし30重量%の濃度、例えば、15ないし25重量%の濃度で使われうる。前記液晶高分子樹脂溶液の濃度が1重量%未満である場合には、1回の加工時に含浸可能な液晶高分子樹脂の量が少なくて、生産性が低下する傾向があって望ましくなく、40重量%を超過する場合には、溶液粘性が上昇してプリプレグ加工時によく含浸されないという問題があって望ましくない。
【0031】
前記液晶高分子樹脂を溶解する溶剤としては、非ハロゲン溶剤が使われることが望ましい。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、この他に極性非プロトン系化合物、ハロゲン化フェノール、o−ジクロロベンゼン、クロロホルム、塩化メチレン、テトラクロロエタンなどが単独または2種以上が共に使われうる。特に、非ハロゲン溶剤にもよく溶解される液晶高分子樹脂を使用する場合には、ハロゲン元素を含有する溶剤を使用しなくてもよいので、含浸工程中及びそれ以後、金属箔積層板またはプリント配線板の金属薄膜が、ハロゲン元素を含有する溶剤を使用する場合のように、ハロゲン元素によって腐食されることが事前に防止される。
【0032】
前記プリプレグの製造時、液晶高分子樹脂を溶剤に溶解させた組成物溶液を前記基材に含浸する時間は、通常0.02分ないし10分が望ましい。前記含浸時間が0.02分未満ならば、前記液晶高分子樹脂が均一に含浸されず、10分を超過すれば、生産性が低下する。
【0033】
また、前記液晶高分子樹脂を溶剤に溶解させた組成物溶液を前記基材に含浸させる温度は、20ないし190℃範囲で可能であり、室温で行うことが望ましい。
【0034】
前記液晶高分子樹脂を溶剤に溶解させた組成物溶液には、発明の目的を損なわない範囲で誘電率及び熱膨張率を調節するために、シリカ、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムの無機フィラー、硬化エポキシ、架橋アクリルなどの有機フィラーが添加される。これらの無機フィラーまたは有機フィラーの添加量は、例えば、液晶高分子樹脂100重量部に対して0.5ないし200重量部である。前記無機フィラーまたは有機フィラーの添加量が0.5重量部未満ならば、プリプレグ10の誘電率または熱膨張率を十分に低くし難い傾向があり、200重量部を超過すれば、液晶高分子樹脂のバインダーとしての効果が低減する傾向がある。
【0035】
前記プリプレグ10は、前記液晶高分子樹脂を溶剤に溶解させた組成物溶液を前記基材に含浸または塗布した後、その結果物を乾燥及び圧延させることによって製造される。前記乾燥及び圧延過程は順次に行われてもよく、また同時に行われてもよい。前記乾燥過程を通じてプリプレグ10に含まれていた溶剤が除去され、前記圧延過程を通じてプリプレグ10は、所望の厚さ及び表面粗度10aを持つようになる。前記圧延過程は、例えば、圧延ロールの圧力が10kgf/cm、圧延ロールの温度が120℃、プリプレグ温度が300℃である条件で行われ、この場合、前記表面粗度10aは圧延ロールの表面粗度により調節される。また、前記溶剤除去方法は、特別に限定されないが、例えば、溶剤蒸発によることが可能である。例えば、加熱、減圧、通風などによる蒸発が可能である。その中でも、既存のプリプレグ製造工程への適用性、生産効率、取扱側面を考慮する時、溶剤加熱蒸発が望ましく、通風加熱により蒸発することがさらに望ましい。
【0036】
前記溶剤の除去時、前記液晶高分子樹脂の組成物溶液は20ないし190℃の範囲で1分ないし10分間予備乾燥され、190ないし350℃の範囲で1分ないし10時間熱処理される。
【0037】
このように得られた本具現例によるプリプレグ10は、その一面または両面に0.1ないし5.0μmの表面粗度10aを持つ。これらの表面粗度10aは、基材の表面に形成されてもよく、図3に示したように、基材11に含浸された液晶高分子樹脂が、基材11の表面上に一部滲出して形成された液晶高分子樹脂層12の表面に形成されてもよい。表面粗度10aが基材の表面に形成された場合には、金属箔積層板の形成時、プリプレグと金属薄膜との間に接着剤がさらに介在されうる。このように表面粗度10aを備えることによって、プリプレグの表面と金属薄膜との接着強度が増大し、かかる接着強度の増大によって、後のプリント配線板の基板加工中に高温処理によって金属薄膜が熱膨張する場合にも、プリプレグの表面から金属薄膜が剥離される熱変形現象が発生することを防止できる。前記表面粗度が0.1μm未満ならば、接着強度が不十分で望ましくなく、5.0μmを超過すれば、金属薄膜との間に局部的に隙間(voids)が形成されて、水平方向の局部的位置による誘電率偏差が大きくなり、またブリスターなどの不良が発生するので望ましくない。
【0038】
また、前記プリプレグは約5ないし200μm、望ましくは約30ないし150μmの厚さを持つことが望ましい。また、前記プリプレグは、1GHz以上の高周波領域で比誘電率が4.0以下であり、その標準偏差が0.1以下であることが望ましい。前記比誘電率が4.0を超過すれば、高周波領域での絶縁基材に適しておらず、望ましくない。
【0039】
本具現例によるプリプレグは、低吸湿性及び低誘電特性を持つ液晶高分子樹脂と、機械的強度に優れた有機または無機織布及び/または不織布とを使用して寸法安定性に優れ、熱変形が少なくかつ硬くてビアホールドリル加工及び積層加工に有利である。
【0040】
また、前記プリプレグを所定枚数積層し、これを加熱及び加圧することによって、プリプレグ積層体を製造してもよい。
【0041】
図2は、図1のプリプレグを備える金属箔積層板の一具現例を示した断面図である。以下、図面において同じ参照符号は、同じ部材または同じ部材の部分を示す。
【0042】
本具現例による金属箔積層板100は、プリプレグ10及びその両面に配された金属薄膜20を備える。また、プリプレグ10は、基材(図示せず)及びこれに含浸された液晶高分子樹脂(図示せず)を備える。
【0043】
プリプレグ10の両表面には表面粗度10aが形成されているが、これらの表面粗度10aの大きさ及びその作用効果は、前述した通りであるので、ここではそれについての詳細な説明を省略する。
【0044】
前述したように、プリプレグ10の一表面または両表面に表面粗度10aを形成することによって、プリプレグ10とこれに接着された金属薄膜20との接着強度は、例えば、0.5ないし2.5N/mmの大きさを持つことができる。前記接着強度が0.5N/mm未満ならば、プリント配線板の加工時に、熱及び機械的外力によって変形が起きて、金属薄膜20の剥離現象が発生するので望ましくなく、2.5N/mmを超過する場合には、エッチング及びストリッピング工程の所要時間があまりにも長くなるので望ましくない。
【0045】
かかる金属箔積層板100は、プリプレグ10またはこれを所定枚数積層したプリプレグ積層体(図示せず)の一面または両面に、銅箔、銀箔、アルミ箔などの金属薄膜20を配置し、これら全体を加熱及び加圧することによって製造できる。かかる金属箔積層板100において、プリプレグ10またはプリプレグ積層体及び金属薄膜20それぞれの厚さは特別に限定されないが、例えば、それぞれ30ないし200μm及び1ないし50μmでありうる。前記プリプレグ10またはプリプレグ積層体の厚さが30μm未満ならば、巻き取り方式の加工時に強度不足で破裂する恐れがあって望ましくなく、200μmを超過すれば、積層できる層数が限定されるので望ましくない。前記金属薄膜20の厚さが1μm未満ならば、金属薄膜積層時に金属薄膜の破損が発生しやすくて望ましくなく、50μmを超過すれば、積層できる層数が限定されるので望ましくない。
【0046】
かかる金属箔積層板100の製造時に適用される加熱及び加圧工程は、例えば、250ないし400℃の温度、5ないし100Kgf/cmの圧力で行うが、プリプレグ10の特性や液晶高分子樹脂組成物の反応性、プレス機の能力、目的とする金属箔積層板100の厚さなどを考慮して適当に決定できるので、特別に限定されない。
【0047】
図3は、本発明の他の具現例によるプリプレグを備える金属箔積層板の一具現例を示した断面図である。
【0048】
本具現例による金属箔積層板200は、プリプレグ10及びその両面に配された金属薄膜20を備える。また、プリプレグ10は、基材11、これに含浸された液晶高分子樹脂(図示せず)、及び前記液晶高分子樹脂の一部が基材11の表面上に滲出して形成された液晶高分子樹脂層12を備える。
【0049】
プリプレグ10の一表面または両表面、具体的に基材11の一面または両面に形成された各液晶高分子樹脂層12の表面には表面粗度12aが形成されているが、かかる表面粗度12aの形成方法、その大きさ及びその作用効果は、前述した表面粗度10aに関するものと同じであるので、ここではこれについての詳細な説明を省略する。
【0050】
本具現例では、液晶高分子樹脂の含浸率を調節することによって、適正厚さ範囲の液晶高分子樹脂層12を得て、このように得られた液晶高分子樹脂層12の表面に表面粗度12aを形成するが、かかる液晶高分子樹脂層12が接着媒介体として作用することによって、プリプレグ10と金属薄膜20との接着強度がさらに増大する。
【0051】
前記液晶高分子樹脂が基材11に含浸される比率(すなわち、含浸率)は、例えば、基材11及び液晶高分子樹脂の重量和を基準に44ないし52重量%である。前記含浸率が44重量%未満である場合には、基材11に含浸された液晶高分子樹脂の量が足りなくて、液晶高分子樹脂層12が全く形成されないか、または十分な厚さに形成されず、金属薄膜20の積層時、基材11と金属薄膜20とが接着媒介体層なしに直接接触するか、または薄すぎる液晶高分子樹脂層12を媒介として接触するので、これらの間の接着強度が弱くなって望ましくない。また、これによって基材11の表面上で金属薄膜20が容易に移動(migration)する現象が発生する。一方、前記含浸率が52重量%を超過する場合には、液晶高分子樹脂層12の厚さが過度に厚くなって、前記層12にクラックが発生し、これによって基材11と金属薄膜20との接着強度が弱くなって望ましくない。前記のように形成された液晶高分子樹脂層12の適正厚さ範囲は、厚さ割合として考慮する時、例えば、基材11及び液晶高分子樹脂層12の厚さ和を基準に9ないし23%である。
【0052】
また本具現例による金属箔積層板200は、プリプレグ10と金属薄膜20との接合強度を高めるために、これら間に介在される接着剤層をさらに必要としない。これにより、製造工程を単純化してコストダウンできる。
【0053】
図4は、本発明のさらに他の具現例によるプリプレグを備える金属箔積層板の一具現例を示した断面図である。
【0054】
図4を参照すれば、本具現例による金属箔積層板300は、プリプレグ10、金属薄膜20及び液晶高分子補正層30を備える。
【0055】
プリプレグ10は、基材11及び液晶高分子樹脂層12を備える。また、ここでは区分して図示していないが、基材11の内部にはこれに含浸された液晶高分子が含まれている。前記含浸された液晶高分子の一部は基材11の表面上に滲出して、複数の島状の液晶高分子樹脂層12を形成する。本具現例で、液晶高分子樹脂層12は基材11の表面を部分的に覆い、液晶高分子樹脂層12で覆われていない基材11の表面には、複数の基材凸部11aが形成されている。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、液晶高分子樹脂層12は基材11の全体表面を覆ってもよい。本具現例のプリプレグ10は、一般的に3回以下の含浸過程を経て製造されるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0056】
液晶高分子補正層30は、液晶高分子樹脂層12と基材の凸部11aとを覆うように基材11上に配され、液晶高分子補正層30の表面には表面粗度30aが形成されている。かかる表面粗度30aの形成方法、その大きさ及びその作用効果は、前述した表面粗度10aに関するものと同一であるので、これについての詳細な説明は省略する。
【0057】
かかる液晶高分子補正層30は、主に2つの役割を担うが、その一つは、プリプレグ10と金属薄膜20との接着強度を増大させる接着媒介層としての役割であり、他の一つは、複数の島状の液晶高分子樹脂層12と基材の凸部11aとが混在するデコボコ状のプリプレグ10の表面を完全に覆って、金属薄膜20に滑らかな被覆面を提供する役割である。具体的に、液晶高分子補正層30は、プリプレグ10に含まれた液晶高分子樹脂層12が基材11の表面を完全に覆っていない場合、液晶高分子樹脂層12の不足分を、これと同一または類似した材質の液晶高分子樹脂で補充することによって接着強度を増大させ、さらに、プリプレグ10の粗い表面を補正して、金属薄膜20の変形なしに、本来の均一な表面状態を維持しつつ、プリプレグ10上に積層されるように一助する役割を行う。
【0058】
一方、液晶高分子樹脂層12が相当量滲出して基材11の全体表面を覆う場合にも、液晶高分子樹脂層12の厚さが十分に厚くなくて、所望の接着強度などの発現が困難である場合には、かかる液晶高分子樹脂層12を覆うように、液晶高分子補正層30が配されうる。
【0059】
かかる液晶高分子補正層30は、プリプレグ10と金属薄膜20との間にフィルム状に挿入されてもよく、プリプレグ10の一面、すなわち、金属薄膜20側の面に液晶高分子樹脂ワニスをコーティングすることによって形成されてもよく、金属薄膜20の一面、すなわち、プリプレグ10側の面に、液晶高分子樹脂ワニスをコーティングすることによって形成されてもよい。
【0060】
前記のように形成された液晶高分子補正層30の適正厚さ範囲は、厚さ割合として考慮する時、例えば、プリプレグ10の平均厚さを基準に5ないし30%である。前記厚さ比率が5%未満ならば、金属薄膜20と液晶高分子樹脂層12とが直接接触する場合も発生しうるので、高い接着強度の発現が困難であり、30%を超過すれば、金属薄膜20の積層時に金属箔積層板の全体厚さが厚くなるので、軽薄短小化が困難になる。
【0061】
図5は、図1のプリプレグを備えるプリント配線板の一具現例を示した断面図である。
【0062】
本具現例によるプリント配線板40は、表面粗度10aを備えたプリプレグ10及び金属薄膜20を備える。かかるプリント配線板40は、プリプレグ10の両面に金属薄膜20を位置させて、その結果物を加熱及び加圧し、この金属薄膜20に回路40aを形成することによって得ることができる。回路の形成は、サブトラクティブ法などの従来の公知の方法によって行われうる。また、かかるプリント配線板40には、プリプレグ10と金属薄膜20とを貫通する貫通ホール50が形成されており、貫通ホール50の内壁には、金属メッキ層60が形成されている。また、プリント配線板40には、通常的に所定の回路部品(図示せず)が実装される。
【0063】
図6は、図5のプリント配線板を備える金属箔積層板の一具現例を示した断面図である。
【0064】
本具現例による金属箔積層板400は、回路40aが形成されているプリント配線板40、表面粗度10aを備えたプリプレグ10及び金属薄膜20を備える。例えば、かかる金属箔積層板300は、プリント配線板40の両面にそれぞれ積層された2枚のプリプレグ10、及びプリプレグ10の外側にさらにそれぞれ積層された2枚の金属薄膜20を備える。一方、回路40aは、プリント配線板40の片面のみに形成されてもよい。また、かかる金属箔積層板300は、プリプレグ10とプリント配線板40との間に別途のプリント配線板及びプリプレグが交互に1セット以上積層されたものを備えてもよい。また、金属薄膜20は、プリプレグ10に対向する面に樹脂層を備える樹脂層接着金属薄膜であってもよく、この場合、表面粗度はプリプレグの表面ではない樹脂層の一表面、すなわち、金属薄膜に対向する表面に形成される。
【0065】
前記のような構成を持つプリプレグを使用した金属箔積層板は、プリプレグと金属薄膜との接着強度が増大し、これにより、製造過程中に高温に露出されても金属薄膜の剥離を招く熱変形が起きない。また、前記プリプレグを採用したプリント配線板は、これに備えられたプリプレグの水平方向への比誘電率偏差が小さくて、不均一な抵抗値による基板の使用時の回路短絡、機器誤作動などの問題点を防止でき、高周波領域で低誘電特性を持つことができる。
【0066】
以下では、本発明を、実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明がこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0067】
実施例1−1:プリプレグの製造
<基材の選択>
プリプレグを製造するための基材としては、厚さ100μm、単位面積重量107g/mのガラス繊維織物(IPC
2116)を使用した。
【0068】
<液晶高分子樹脂ワニスの製造>
液晶高分子樹脂として、芳香族ポリエステルアミド(数平均分子量10,000)100重量部、溶剤としてn−メチルピロリドン400重量部を配合した後、常温で攪拌して液晶高分子樹脂ワニスを製造した。
【0069】
<プリプレグの製造>
含浸容器に前記液晶高分子樹脂ワニスを充填した後、前記基材を通過させて含浸させ、100℃の熱風循環乾燥器で3分間乾燥して、液晶高分子樹脂の含浸量が100g/mであるプリプレグを製造した。乾燥されたプリプレグの表面粗度を調節するために、赤外線ヒーターで前記プリプレグを300℃の温度に加熱した後、表面粗度(Ra)が3μmであるロールを利用して圧延を実施した。圧延時にロールの温度80℃、圧力10Kgf/cmの条件に設定してプリプレグを製造した。
【0070】
実施例1−2:プリプレグの製造
圧延時の表面粗度(Ra)が0.5μmであるロールを使用したことを除いては、前記実施例1−1と同じ方法でプリプレグを製造した。
【0071】
実施例1−3:プリプレグの製造
前記実施例1−1で製造されたプリプレグの両面に、前記実施例1−1で製造された液晶高分子樹脂ワニスを、ナイフコーティング方法を利用して10μmの厚さにそれぞれ塗布した後、100℃の熱風循環乾燥器で3分間乾燥して、液晶高分子補正層が導入されたプリプレグを製造した。次いで、乾燥されたプリプレグの表面粗度を調節するために、赤外線ヒーターで前記プリプレグを300℃の温度に加熱した後、表面粗度(Ra)が3μmであるロールを利用して圧延を実施した。圧延時にロールの温度80℃、圧力10Kgf/cmの条件に設定した。
【0072】
実施例2−1:金属箔積層板の製造
下記のように、図3の構成を持つ金属箔積層板を製造した。
【0073】
実施例1−1で製造したプリプレグの両面に厚さ12μmの電解銅箔をそれぞれ位置させ、熱板プレスを利用して、温度300℃、圧力40Kgf/cmの条件下で1時間加圧積層して、金属箔積層板を製造した。
【0074】
実施例2−2:金属箔積層板の製造
実施例1−2で製造したプリプレグを使用したことを除いては、実施例2−1と同じ方法で金属箔積層板を製造した。
【0075】
実施例2−3:金属箔積層板の製造
実施例1−3で製造した液晶高分子補正層が導入されたプリプレグを使用したことを除いては、実施例2−1と同じ方法で金属箔積層板を製造した。
【0076】
比較例1−1:プリプレグの製造
圧延時の表面粗度(Ra)が10μmであるロールを使用したことを除いては、前記実施例1−1と同じ方法でプリプレグを製造した。
【0077】
比較例2−1:金属箔積層板の製造
比較例1−1で製造したプリプレグを使用したことを除いては、実施例2−1と同じ方法で金属箔積層板を製造した。
【0078】
評価試験
前記実施例1−1〜1−3、実施例2−1〜2−3、比較例1−1及び比較例2−1のプリプレグに対して比誘電率を測定し、その結果を下記の表1に表した。比誘電率測定方法は、IPC−TM−650項の2.2.17A節による。具体的に、前記比誘電率の測定は、Agilent
Impedance/Material Analyzerを利用して、1GHzでプリプレグ試片の9箇所(左上、左中、左下、中央上、中央中、中央下、右上、右中、右下)に対する比誘電率を測定し、その平均値と標準偏差とを算定することを含む。
【0079】
【表1】

【0080】
また、前記実施例2−1〜2−3及び比較例2−1の金属箔積層板について、銅箔とプリプレグとの接着強度を測定し、その結果を下記の表2に表した。接着強度の測定方法は、IPC−TM−650項の2.4.8節による。
【0081】
【表2】

【0082】
一方、前記実施例2−1〜2−3及び比較例2−1の金属箔積層板について、表面状態を肉眼観察で測定し、その結果を下記の表3に表した。
○:ブリスターがなく、表面が滑らかな場合
△:ブリスターが発生していないが、表面が滑らかでない場合
×:ブリスターが発生した場合
【0083】
【表3】

【0084】
前記表1ないし表3を参照すれば、比誘電率偏差は、実施例1−1〜1−3のプリプレグが比較例1−1のプリプレグに比べて非常に小さく、接着強度は、実施例2−1〜2−3の金属箔積層板が比較例2−1の金属箔積層板に比べて非常に大きく、金属箔積層板の表面状態は、液晶高分子補正層が形成された実施例2−3の場合が、補正層が形成されていない実施例2−1〜2−2及び比較例2−1の場合に比べて良好であると分かる。
【0085】
本発明は実施例を参考にして説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これより多様な変形及び均等な他の実施例が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は特許請求の範囲の技術的思想によって定められねばならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材に含浸された液晶高分子樹脂と、を備え、
その一面または両面に0.1ないし5.0μmの表面粗度を持つプリプレグ。
【請求項2】
前記液晶高分子樹脂の含浸率は、前記基材及び液晶高分子樹脂の重量和を基準に、44ないし52重量%である請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項3】
前記含浸された液晶高分子樹脂の一部が前記基材の表面上に滲出して形成された液晶高分子樹脂層をさらに備える請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項4】
前記液晶高分子樹脂層の厚さ比率は、前記基材及び液晶高分子樹脂層の厚さ和を基準に9ないし23%である請求項3に記載のプリプレグ。
【請求項5】
前記基材は、ガラス繊維織物、ガラス繊維不織布及び炭素繊維織物からなる群から選択された少なくとも1種を含む請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項6】
前記液晶高分子樹脂は、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステルアミド、ポリエステルイミド、ポリホスファゼン及びポリアゾメチンからなる群から選択された少なくとも1種を含む請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項7】
1GHz以上の高周波領域で、比誘電率が4.0以下、その標準偏差が0.1以下である請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のうちいずれか1項に記載のプリプレグまたは前記プリプレグが少なくとも2枚積層されたプリプレグ積層体を備え、前記プリプレグまたは前記プリプレグ積層体の一面または両面上に配された金属薄膜を備える金属箔積層板。
【請求項9】
前記プリプレグと金属薄膜との間に配された液晶高分子補正層をさらに備える請求項8に記載の金属箔積層板。
【請求項10】
前記液晶高分子補正層は、前記プリプレグと金属薄膜との間にフィルム状に挿入された請求項9に記載の金属箔積層板。
【請求項11】
前記液晶高分子補正層は、前記プリプレグの一面または前記金属薄膜の一面に液晶高分子樹脂ワニスをコーティングすることによって形成された請求項9に記載の金属箔積層板。
【請求項12】
前記液晶高分子補正層の厚さ比率は、前記プリプレグの平均厚さを基準に5ないし30%である請求項9に記載の金属箔積層板。
【請求項13】
前記プリプレグとこれに接着された金属薄膜との接着強度が0.5ないし2.5N/mmである請求項8に記載の金属箔積層板。
【請求項14】
請求項8に記載の金属箔積層板を回路加工して得られるプリント配線板。
【請求項15】
請求項14に記載のプリント配線板、及び前記プリント配線板の少なくとも一面上に配されたプリプレグまたはプリプレグ積層体を備え、前記プリプレグまたは前記プリプレグ積層体上に配された金属薄膜を備える金属箔積層板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−504523(P2011−504523A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533015(P2010−533015)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際出願番号】PCT/KR2008/006692
【国際公開番号】WO2009/064121
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(508130188)サムスン ファイン ケミカルズ カンパニー リミテッド (28)
【Fターム(参考)】