説明

型枠用ポリウレタン樹脂およびその製造方法、ならびにコンクリート成形品用型枠

【課題】低硬度(60A未満)域においても十分な初期物性値を有し、耐アルカリ性に優れる型枠用ポリウレタン樹脂およびその製造方法を提供する。また、上記型枠用ポリウレタン樹脂の形成に用いるイソシアネート組成物およびポリオール組成物、ならびに上記型枠用ポリウレタン樹脂を用いたコンクリート成形品用型枠を提供する。
【解決手段】ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させて形成する型枠用ポリウレタン樹脂であって、前記ポリオール成分および/または前記ポリイソシアネート成分が、数平均分子量3000〜8000である3官能ポリエーテルポリオール化合物(a)および数平均分子量8000〜12000である2官能ポリエーテルポリオール化合物(b)を含むことを特徴とする型枠用ポリウレタン樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は型枠用ポリウレタン樹脂およびその製造方法に関する。より詳細には、脱型性および耐アルカリ性に優れた型枠用ポリウレタン樹脂およびその製造方法に関する。また、本発明は、上記型枠用ポリウレタン樹脂の形成に用いるイソシアネート組成物およびポリオール組成物、ならびに上記型枠用ポリウレタン樹脂を用いたコンクリート成形品用型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、主として、戸建て住宅などの外壁面には、施工の容易性および美観上の観点から表面に凹凸模様が施された、いわゆる意匠付けされたコンクリートパネル材が使用されるようになってきた。また、軽量性あるいは断熱性を確保するために、各種混和剤を添加した軽量コンクリートパネル材などが出現している。
【0003】
これらのコンクリートパネル材などの製造方法としては、たとえば、凹凸模様が施されて意匠付けされた成型用型枠にモルタル材料を流し込み、硬化後に脱型し、製品を得るようにしている。
【0004】
このような成形用型枠の素材としては、金属製、粘土製、ウレタンやゴムを使用したものが知られているが、なかでも、パネル材を硬化後に脱型する際、型枠が多少変形することで脱型が容易となる点、また錆びない点、さらには、軽量かつ安価である等の利点を有するウレタンや加硫ゴム等のゴム状弾性体を使用した型枠が注目を浴びている。
【0005】
これまで、コンクリートパネル材などの成形にはコンクリート用型枠としていくつか提案されている。たとえば、熱可塑性樹脂とパラフィンワックスを練り合わせたポリプロピレン系合成樹脂組成物が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。しかし、このような離型剤を練り込んだ合成樹脂型枠では、繰り返して使用すると、型枠とコンクリートとの離型性が低下してしまう問題がある。
【0006】
また、離型剤を使用しなくても繰り返し型枠として使用できるものとして、ポリウレタンエラストマーを用いた提案がなされている(たとえば、特許文献2参照)。しかし、このようなポリウレタンエラストマーを用いた型枠は耐アルカリ性が低く、特に高温になるほどこの傾向は強くなる。コンクリートの構成成分であるセメントが強塩基性であり、コンクリート自身が塩基性であるため、コンクリート型枠用として適していない。
【0007】
さらには、特定のポリウレタン系エラストマーを用いることによりかかる耐アルカリ性の向上を試みている提案もされている(たとえば、特許文献3参照)。しかし、かかるポリウレタン系エラストマーを用いた型枠では硬度が70〜80Aと高いものであり、特に脱型性の観点からコンクリート型枠用として未だ十分なものではない。
【0008】
一方、一般にウレタンポリマーの低硬度化は、初期物性値や耐アルカリ性を低下させる方向に進む。たとえば、上記特許文献2においても、硬度が60A未満の場合には、強度が不足して、コンクリートの重量によって型枠が変形し満足なコンクリート成型体が得られない場合があると記載されている。このように、硬度60A未満といった低硬度の優れた脱型性、初期物性値、および耐アルカリ性をバランスよく有する型枠用樹脂材料はいまだ得られていない。
【0009】
【特許文献1】特開平7−47527号公報
【特許文献2】特開平11−310621号公報
【特許文献3】特開2004−43530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の目的は、従来の上記問題点を解消すべく、低硬度(60A未満)域においても十分な初期物性値を有し、耐アルカリ性に優れる型枠用ポリウレタン樹脂およびその製造方法を提供することにある。
【0011】
また、本発明の目的は、上記型枠用ポリウレタン樹脂の形成に用いるイソシアネート組成物およびポリオール組成物、ならびに上記型枠用ポリウレタン樹脂を用いたコンクリート成形品用型枠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、型枠用ポリウレタン樹脂を構成する材料について鋭意研究した結果、型枠用ポリウレタン樹脂およびその製造方法として以下に示すものを用いることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の型枠用ポリウレタン樹脂は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させて形成する型枠用ポリウレタン樹脂であって、
上記ポリオール成分および/または上記ポリイソシアネート成分が、数平均分子量3000〜8000である3官能ポリエーテルポリオール化合物(a)および数平均分子量8000〜12000である2官能ポリエーテルポリオール化合物(b)を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明によると、実施例の結果に示すように、型枠用樹脂原液として上述の構成を有するポリオール成分および/またはポリイソシアネート成分を用いることにより、得られたポリウレタン樹脂が、低硬度(60A未満)域においても十分な初期物性値を有し、耐アルカリ性に優れたものとなる。上記ポリウレタン樹脂がかかる効果を奏する理由の詳細は明らかではないが、ポリオール組成物および/またはイソシアネート組成物中における各種ポリオール化合物の種類および特定の配合などにより、得られるポリウレタン樹脂が初期物性値に加え優れた脱型性と耐アルカリ性とをバランスよく優れたものとなると推測される。
【0015】
上記ポリウレタン樹脂において、上記ポリオール成分および/または上記ポリイソシアネート成分として、数平均分子量3000〜8000である3官能ポリエーテルポリオール化合物(a)を含むものを用いることを特徴とする。
【0016】
また、上記ポリウレタン樹脂において、上記ポリオール成分が、数平均分子量3000〜8000である3官能ポリエーテルポリオール化合物(a)を含み、かつ、上記ポリイソシアネート成分が、数平均分子量8000〜12000である2官能ポリエーテルポリオール化合物(b)および数平均分子量3000〜8000である3官能ポリエーテルポリオール化合物(c)と、イソシアネート化合物とを反応させて得られたイソシアネートプレポリマーを含むことが好ましい。
【0017】
さらに、上記ポリウレタン樹脂において、上記2官能ポリエーテルポリオール化合物と上記3官能ポリエーテルポリオール化合物が、1:1〜1:5の重量比で含まれることが好ましい。
【0018】
また、上記イソシアネートプレポリマーのイソシアネート基含有量が3〜10重量%であることが好ましい。
【0019】
また、上記ポリウレタン樹脂において、硬度が40〜60A、伸び率が500%以上、および引裂強度が20kN/m以上であることが好ましい。かかるポリウレタン樹脂を用いることにより、より確実に初期物性値および脱型性に優れたものとなり、型枠用途に特に適したものとなる。
【0020】
さらには、上記ポリウレタン樹脂においては、80℃におけるpH14のアルカリ水溶液に7日間浸漬後の引裂強度の保持率が80%以上であることが型枠用途に特に好ましい。
【0021】
なお、本発明における引裂強度の保持率とは、[アルカリ処理後の引裂強度(kN/m)]/[アルカリ処理前の引裂強度(kN/m)]×100(%)で得られた値をいう。
【0022】
一方、本発明の型枠用ポリウレタン樹脂の製造方法は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させて形成する型枠用ポリウレタン樹脂の製造方法であって、
数平均分子量8000〜12000である2官能ポリエーテルポリオール化合物(b)および数平均分子量3000〜8000である3官能ポリエーテルポリオール化合物(c)と、イソシアネート化合物とを反応させてイソシアネートプレポリマーを製造する工程、ならびに、
数平均分子量3000〜8000である3官能ポリエーテルポリオール化合物(a)を含むポリオール成分と、上記イソシアネートプレポリマーを含むポリイソシアネート成分とを反応させる工程、
を含むことを特徴とする。
【0023】
上記製造方法を用いることにより、低硬度(60A未満)域においても十分な初期物性値を有し、耐アルカリ性に優れる型枠用ポリウレタン樹脂を簡便に得ることができる。
【0024】
他方、本発明のコンクリート成形品用型枠は、上記いずれかに記載の型枠用ポリウレタン樹脂を用いたものであることを特徴とする。上述の作用効果を奏する型枠用ポリウレタン樹脂を用いることにより、脱型性および耐アルカリ性に優れたコンクリート成形品型枠を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0026】
本発明の型枠用ポリウレタン樹脂は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させて形成する型枠用ポリウレタン樹脂であって、
上記ポリオール成分および/または上記ポリイソシアネート成分が、数平均分子量3000〜8000である3官能ポリエーテルポリオール化合物(a)および数平均分子量8000〜12000である2官能ポリエーテルポリオール化合物(b)を含むことを特徴とする。
【0027】
本発明において、上記ポリオール成分および/または上記ポリイソシアネート成分として、数平均分子量3000〜8000である3官能ポリエーテルポリオール化合物(a)を含むポリオール組成物を用いることを特徴とする。
【0028】
上記ポリエーテルポリオール化合物(a)としては、たとえば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの共重合体、ポリテトラメチレングリコールなどを用いることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0029】
また、上記ポリエーテルポリオール化合物(a)としては、数平均分子量3000〜8000であるものを用いるが、4500〜7500であることが好ましく、5000〜6000であることがより好ましい。
【0030】
さらに、上記ポリエーテルポリオール化合物(a)として、水酸基価が56.0〜21.0mgKOH/gのポリエーテルポリオールが好ましく、37.5〜22.5mgKOH/gであることがより好ましく、33.5〜28.0mgKOH/gであることがさらに好ましい。
【0031】
上記ポリオール化合物について、上記の各ポリエーテルポリオールの構成を満たすものであれば、その種類等は特に制限されない。
【0032】
上記ポリオール化合物としては、通常、多官能性アルコール系化合物を開始剤に、これにアルキレンオキシドを付加させたポリエーテルポリオールが用いられる。
【0033】
開始剤である多官能性アルコール系化合物としては、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンやこれらに少量のアルキレンオキシドを付加した化合物を例示できる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0034】
多官能性アルコール系化合物に付加重合するアルキレンオキサイドとしては炭素数2以上のものがあげられ、たとえば、エチレンオキサイド(EO)、1,2−プロピレンオキサイド(PO)、1,2−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイドなどを例示できる。
【0035】
プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの共重合体ポリオール化合物などの共重合体を用いる場合は、ランダム重合体、ブロック重合体のいずれでもよい。
【0036】
また、上記ポリオール組成物には、公知の架橋剤、反応触媒、可塑剤、充填剤、鎖延長剤、応溶媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、充填剤、難燃剤、可塑剤、着色剤、消泡剤、防黴・防菌剤等の各種添加剤を、必要に応じて添加することもできる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0037】
上記架橋剤としては、たとえば、4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)(MBOCA)、3官能以上のトリエタノールアミン、トリメチロールプロパンなどの多価アルコールをあげることができる。これらの架橋剤は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0038】
上記鎖延長剤としては、たとえば、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(DAM)、ジエチルトルエンジアミン等の芳香族ジアミンやエチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどのグリコール類をあげることができる。これらの鎖延長剤は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0039】
上記反応触媒としては、たとえば、トリエチレンジアミン(TEDA)、ビス(N,N−ジメチルアミノ−2−エチル)エーテル、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル(TOYOCAT−ET、東ソー社製)等のアミン系触媒や、酢酸カリウム、オクチル酸カリウム等のカルボン酸金属塩、ジブチル錫ジラウレート等の有機金属化合物、鉛触媒等があげられる。これらの反応触媒は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0040】
上記可塑剤としては、たとえば、フタル酸エステル、脂肪酸エステル、トリメリット酸エステル、安息香酸エステルなどをあげることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0041】
上記充填剤としては、たとえば、炭酸カルシウム、シリカ、硫酸カルシウム(石こう)、ろう石クレー(含水けい酸アルミニウム)、鉄粉などの金属粉、グラファイトなどをあげることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0042】
また、本発明において、上記ポリオール成分および/またはポリイソシアネート成分として、数平均分子量8000〜12000である2官能ポリエーテルポリオール化合物(b)を含むことを特徴とする。
【0043】
また、上記ポリウレタン樹脂において、上記ポリオール成分が、数平均分子量3000〜8000である3官能ポリエーテルポリオール化合物(a)を含み、かつ、上記ポリイソシアネート成分が、数平均分子量8000〜12000である2官能ポリエーテルポリオール化合物(b)および数平均分子量3000〜8000である3官能ポリエーテルポリオール化合物(c)と、イソシアネート化合物とを反応させて得られたイソシアネートプレポリマーを含むことが好ましい。
【0044】
上記ポリエーテルポリオール化合物(b)としては、たとえば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの共重合体、ポリテトラメチレングリコールなどを用いることができる。
【0045】
また、上記ポリエーテルポリオール化合物(b)としては、数平均分子量8000〜12000であるものを用いるが、9000〜12000であることが好ましく、10000〜12000であることがより好ましい。
【0046】
さらに、上記ポリエーテルポリオール化合物(b)として、水酸基価が8.5〜14mgKOH/gのポリエーテルポリオールが好ましく、8.5〜11mgKOH/gであることがより好ましい。
【0047】
また、上記ポリエーテルポリオール化合物(c)としては、数平均分子量3000〜8000であるものを用いるが、4500〜7500であることが好ましく、5000〜6000であることがより好ましい。
【0048】
さらに、上記ポリエーテルポリオール化合物(c)として、水酸基価が56.0〜21.0mgKOH/gのポリエーテルポリオールが好ましく、37.5〜22.5mgKOH/gであることがより好ましく、33.5〜28.0mgKOH/gであることがさらに好ましい。
【0049】
上記ポリオール化合物について、上記の各ポリエーテルポリオールの構成を満たすものであれば、その種類等は特に制限されない。
【0050】
上記ポリオール化合物としては、通常、多官能性アルコール系化合物を開始剤に、これにアルキレンオキシドを付加させたポリエーテルポリオールが用いられる。
【0051】
開始剤である多官能性アルコール系化合物としては、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンやこれらに少量のアルキレンオキシドを付加した化合物を例示できる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0052】
多官能性アルコール系化合物に付加重合するアルキレンオキサイドとしては炭素数2以上のものがあげられ、たとえば、エチレンオキサイド(EO)、1,2−プロピレンオキサイド(PO)、1,2−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイドなどを例示できる。
【0053】
プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの共重合体ポリオール化合物などの共重合体を用いる場合は、ランダム重合体、ブロック重合体のいずれでもよい。
【0054】
本発明において用いられるイソシアネートプレポリマーは、上記ポリエーテルポリオール化合物(b)および上記ポリエーテルポリオール化合物(c)と、イソシアネート化合物とを反応させて得られたイソシアネートプレポリマーである。
【0055】
上記イソシアネートプレポリマーに用いられるイソシアネート化合物としては、ポリウレタン樹脂の製造に通常使用される、イソシアネート基を2個以上有する芳香族系、脂環族系、脂肪族系の各種のイソシアネート化合物、さらにはこれらイソシアネート化合物を変性して得られる変性イソシアネート化合物を使用できる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0056】
上記のイソシアネート化合物としては、具体的には、たとえば、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(精製ジフェニルメタンジイソシアネート(p−MDI)、クルードMDI(c−MDI)がある)等の芳香族ポリイソシアネート類、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ないし脂環族ポリイソシアネート類があげられ、その変性物としては、イソシアネート化合物のプレポリマー型変性体、イソシアヌレート型変性体、ウレア型変性体、カルボジイミド型変性体などがあげられる。これらのなかでも、ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードMDIが、反応性が高いこと、低コストであること、揮発性が低く安全性がTDIなどに比べて高いこと等の理由で好ましい。トルエンジイソシアネートは、2,4−置換体と2,6−置換体とがあるが、これらの混合物の使用が好ましく、2,4−置換体/2,6−置換体混合比が90/10(TDI−90)〜60/40(TDI−60)の混合物の使用が好適である。さらにトルエンジイソシアネート:クルードMDIを0:100〜40:60、特に好ましくは0:100〜20:80の重量比でブレンドしたものの使用がより好ましい。
【0057】
上記イソシアネートプレポリマーは、一般にポリオール化合物とイソシアネート化合物の重付加反応により得られるが、他の方法により合成したものでもよい。また、イソシアネートプレポリマーは、一般に、イソシアネート化合物を、ポリオール化合物に対するモル当量より過剰に反応させることで得られるが、他の方法により合成したものでもよい。
【0058】
上記イソシアネートプレポリマーのイソシアネート基含有量は3〜10重量%であることが好ましく、3〜6重量%であることがより好ましい。
【0059】
また、イソシアネートプレポリマーの構成成分としては、上述したポリオールに加えて、たとえば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等の低分子量多価アルコールを併用しても構わない。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0060】
また、上記イソシアネートプレポリマーの製造においては、公知の架橋剤、反応触媒、可塑剤、充填剤、反鎖延長剤、応溶媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、充填剤、難燃剤、可塑剤、着色剤、消泡剤、防黴・防菌剤等の各種添加剤を、必要に応じて添加することもできる。なお、これらの化合物は上記ポリオール組成物に例示したものをあげることができる。また、これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0061】
本発明において、上記ポリオール成分および上記ポリイソシアネート成分は上記のような構成を有するものである。
【0062】
また、本発明の型枠用ポリウレタン樹脂は、上記ポリオール成分と上記ポリイソシアネート成分とを反応させて形成したものである。
【0063】
上記ポリウレタン樹脂において、上記2官能ポリエーテルポリオール化合物と上記3官能ポリエーテルポリオール化合物が、1:1〜1:5の重量比で含まれることが好ましい。
【0064】
なお、上記ポリエーテルポリオール化合物(c)を用いる場合には、上記ポリエーテルポリオール化合物(b)と、上記ポリエーテルポリオール化合物(a)および上記ポリエーテルポリオール化合物(c)が、1:1〜1:5の重量比で含まれることが好ましく、1:1.1〜1:4の重量比で含まれることがより好ましく、1:1.2〜1:3の重量比で含まれることがさらに好ましい。
【0065】
また、上記ポリエーテルポリオール化合物(a)と上記ポリエーテルポリオール化合物(c)は同一のポリエーテルポリオール化合物を用いてもよいし、異なっていてもよい。
【0066】
さらに、上記ポリオール成分であるポリオール組成物と上記ポリイソシアネート成分であるイソシアネート組成物との反応におけるNCO/OH当量比は、0.7〜1.40であることが好ましく、0.75〜1.35であることがより好ましく、0.80〜1.30であることがさらに好ましい。
【0067】
一方、本発明の型枠用ポリウレタン樹脂の製造方法は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させて形成する型枠用ポリウレタン樹脂の製造方法であって、
数平均分子量8000〜12000である2官能ポリエーテルポリオール化合物(b)および数平均分子量3000〜8000である3官能ポリエーテルポリオール化合物(c)と、イソシアネート化合物とを反応させてイソシアネートプレポリマーを製造する工程、ならびに、
数平均分子量3000〜8000である3官能ポリエーテルポリオール化合物(a)を含むポリオール成分と、上記イソシアネートプレポリマーを含むポリイソシアネート成分とを反応させる工程、
を含むことを特徴とする。
【0068】
より詳細には、上述の構成を有するイソシアネートプレポリマーを製造する工程、ならびに上記ポリオール成分と上記イソシアネートプレポリマーを含むポリイソシアネート組成物を反応させる工程を含むことを特徴とするものである。かかる製造方法を用いることにより、低硬度(60A未満)域においても十分な初期物性値を有し、耐アルカリ性に優れる型枠用ポリウレタン樹脂を簡便に得ることができる。
【0069】
より具体的な一般製造例を以下に述べる。たとえば、上記イソシアネート組成物と上記ポリオール組成物を撹拌混合し、必要に応じて減圧脱泡した後、型枠を形成するための金型に注型する。次いで混合液を反応させポリウレタン樹脂を形成し、常温下(液温、型温)の場合には3〜7日程度養生することにより本発明の型枠用ポリウレタン樹脂が得られる。
【0070】
本発明により得られた型枠用ポリウレタン樹脂をコンクリート成形品用型枠などとして用いる場合において、型枠用ポリウレタン樹脂の硬度が40〜60A、伸び率は500%以上、および引裂強度が20kN/m以上であることが好ましい。
【0071】
上記硬度は、脱型性の観点からは、42〜58Aであることがより好ましく、45〜55Aであることがさらに好ましい。
【0072】
上記引張強度は、コンクリート成型時の圧力で変形にくいなどの実用上の観点からは、4MPa以上であることがより好ましい。
【0073】
上記引裂強度は、脱型時等において型枠が裂けにくいなどの実用上の観点からは、20kN/m以上であることがより好ましい。
【0074】
また、上記ポリウレタン樹脂の伸び率は520%以上であることが好ましく、550%以上であることがより好ましく、600%以上であることがさらに好ましい。
【0075】
さらには、上記ポリウレタン樹脂においては、80℃におけるpH14のアルカリ水溶液に7日間浸漬後の引裂強度の保持率が80%以上であることが型枠用途に特に好ましい。
【0076】
本発明における型枠用ポリウレタン樹脂は上記のような構成を有するものである。
【0077】
他方、本発明のコンクリート成形品用型枠は、上記いずれかに記載の型枠用ポリウレタン樹脂を用いたものであることを特徴とする。上述の作用効果を奏する型枠用ポリウレタン樹脂を用いることにより、脱型性および耐アルカリ性に優れたコンクリート成形品型枠を得ることができる。
【実施例】
【0078】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例等における製造例、物性等の評価方法は次の通りである。
【0079】
<ポリウレタン樹脂の原料・配合>
(原料)
・ポリオール(a):ポリプロピレン系ポリエーテルポリオール、2官能、数平均分子量2000、水酸基価=56.1mgKOH/g
・ポリオール(b):ポリプロピレン系ポリエーテルポリオール、2官能、数平均分子量10000、水酸基価=11.5mgKOH/g
・ポリオール(c):ポリプロピレン系ポリエーテルポリオール、3官能、数平均分子量5000、水酸基価=33.5mgKOH/g
・ポリオール(d):ポリプロピレン系ポリエーテルポリオール、3官能、数平均分子量12000、水酸基価=14mgKOH/g
・イソシアネート化合物:TDI−80(2,4−TDI/2,6−TDI=80/20)
・架橋剤:4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)(MBOCA)
・可塑剤:フタル酸エステル
・反応触媒:ナフテン酸鉛(24%)(東京化工社製)
・PEP11C:酸化防止剤(旭電化社製)
・触媒:SF2904(東レダウコーニングシリコン社製)
・フィラー:ろう石クレー、カルタポ(丸尾カルシウム社製)
【0080】
(配合)
表1の上欄に記載した配合に基づき、常法によりポリウレタン樹脂を製造した。配合比は重量部にて表示した。
【0081】
<ポリウレタン樹脂の物性値の測定>
各特性値を測定は、23℃×50%RH環境にて7日間養生した後に下記のように行った。
【0082】
(硬度)
JIS K 6253(スプリング式硬さ試験、デュロメーターAにて測定)に準拠して硬度を測定した。
【0083】
(引張強度)
JIS K 6251(3号ダンベル)に準拠して引張強度を測定した。
【0084】
(伸び率)
JIS K 6251(3号ダンベル)に準拠して伸び率を測定した。
【0085】
(引裂強度)
JIS K 6252(ダンベル形状、B型)に準拠して引裂強度を測定した。
【0086】
<アルカリ処理後の物性値の測定>
実施例にて得られたポリウレタン樹脂の小片(JIS K 6251および6252規定のダンベル形状(3号、B型)に調整したもの)を、80℃におけるpH14のアルカリ水溶液(水酸化ナトリウム水溶液)に7日間浸漬後、上記物性値を測定した。また、引裂強度に関しては、[アルカリ処理後の引裂強度(kN/m)]/[アルカリ処理前の引裂強度(kN/m)]×100(%)で得られた値を引裂強度の保持率とした。
【0087】
得られたポリウレタン樹脂の評価結果を表1の下欄に示した。
【0088】
【表1】

【0089】
これらの結果から、本発明の構成を有する実施例1〜4のいずれにおいても、低硬度(60A未満)域においても十分な初期物性値を有し、耐アルカリ性に優れるポリウレタン樹脂が得られることが分かった。
【0090】
一方、本発明の構成を有さない比較例1〜5においては、得られたポリウレタン樹脂のいずれにおいても、低硬度(60A未満)域において、十分な初期物性値および耐アルカリ性を並立することができなかった。
【0091】
以上より、本発明の型枠用ポリウレタン樹脂を用いることにより、低硬度(60A未満)域においても十分な初期物性値を有し、耐アルカリ性に優れたものとなることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させて形成する型枠用ポリウレタン樹脂であって、
前記ポリオール成分および/または前記ポリイソシアネート成分が、数平均分子量3000〜8000である3官能ポリエーテルポリオール化合物(a)および数平均分子量8000〜12000である2官能ポリエーテルポリオール化合物(b)を含むことを特徴とする型枠用ポリウレタン樹脂。
【請求項2】
前記ポリオール成分が、数平均分子量3000〜8000である3官能ポリエーテルポリオール化合物(a)を含み、かつ、前記ポリイソシアネート成分が、数平均分子量8000〜12000である2官能ポリエーテルポリオール化合物(b)および数平均分子量3000〜8000である3官能ポリエーテルポリオール化合物(c)と、イソシアネート化合物とを反応させて得られたイソシアネートプレポリマーを含むことを特徴とする請求項1に記載の型枠用ポリウレタン樹脂。
【請求項3】
前記2官能ポリエーテルポリオール化合物と前記3官能ポリエーテルポリオール化合物が、1:1〜1:5の重量比で含まれることを特徴とする請求項1または2に記載の型枠用ポリウレタン樹脂。
【請求項4】
前記イソシアネートプレポリマーのイソシアネート基含有量が3〜10重量%であることを特徴とする請求項2または3に記載の型枠用ポリウレタン樹脂。
【請求項5】
硬度が40〜60A、伸び率が500%以上、および引裂強度が20kN/m以上である請求項1〜4のいずれかに記載の型枠用ポリウレタン樹脂。
【請求項6】
80℃におけるpH14のアルカリ水溶液に7日間浸漬後の引裂強度の保持率が80%以上である請求項1〜5のいずれかに記載の型枠用ポリウレタン樹脂。
【請求項7】
ポリオール成分と混合し、反応させて請求項2〜5のいずれかに記載の型枠用ポリウレタン樹脂を形成するイソシアネート組成物であって、前記イソシアネートプレポリマーを含むことを特徴とするイソシアネート組成物。
【請求項8】
ポリオール化合物、架橋剤、および反応触媒を含み、ポリイソシアネート成分と混合し、反応させて請求項2〜5のいずれかに記載の型枠用ポリウレタン樹脂を形成するポリオール組成物であって、前記ポリエーテルポリオール化合物(a)を含むことを特徴とするポリオール組成物。
【請求項9】
ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させて形成する型枠用ポリウレタン樹脂の製造方法であって、
数平均分子量8000〜12000である2官能ポリエーテルポリオール化合物(b)および数平均分子量3000〜8000である3官能ポリエーテルポリオール化合物(c)と、イソシアネート化合物とを反応させてイソシアネートプレポリマーを製造する工程、ならびに、
数平均分子量3000〜8000である3官能ポリエーテルポリオール化合物(a)を含むポリオール成分と、前記イソシアネートプレポリマーを含むポリイソシアネート成分とを反応させる工程、
を含むことを特徴とする型枠用ポリウレタン樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記ポリエーテルポリオール化合物(b)と、前記ポリエーテルポリオール化合物(a)および前記ポリエーテルポリオール化合物(c)が、1:1〜1:5の重量比で含まれることを特徴とする請求項9に記載の型枠用ポリウレタン樹脂の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれかに記載の型枠用ポリウレタン樹脂を用いたコンクリート成形品用型枠。

【公開番号】特開2007−211163(P2007−211163A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−33743(P2006−33743)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】