埋め込み型送信機
観察システムは、心臓の心室、好ましくは左心室(LV)内の圧力および容積の両者を継続的に測定することによって、生物における心臓の観察を可能にすることを提供する。圧力および容積の測定値は、1つの感知チップを用いて取得され、受信装置へ無線で送信するために送信装置へと送信される。そこで、圧力および容積の測定値は、心臓を観察するために用いられる。また、システムには、観察するための更なるデータを提供するために、圧力および容積の測定値と共に送信することができる温度測定値を組み入れてもよい。また、システムは、圧力測定値から心電図(ECG)シグナルを抽出してもよい。これは、心拍出量の拍動状態による収縮および、病状または治療によってもたらされる変化を測定するために用いることができる4つのシグナルまでの観察を可能にする。また、システムは、コンパクト設計に加え、取得サイクル毎に供給される電力を減少し、且つ、送信装置の稼動寿命を延ばす、エネルギー節約タイミング構想を組み入れてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ取得システムに関し、より詳しくは生物の心臓からデータを取得することに関する。
【0002】
〔背景技術〕
心臓研究の分野において、心臓効率を測定するための標準試験として圧力容積グラフがある。この試験は、心収縮時および拡張時における左心室(LV)の室内圧力および室内容積に関するものである。圧力値および容積値は、ポンプシステムにおける効率を定量化するために重要であり、当該システムの容積効率を測定するために用いることも可能である。病気の進行の定量化、および治療の効果を測定することによって、心臓効率は心臓病を研究するための有用な測定となる。
【0003】
近年、心臓病の研究およびヒトの心臓病をモデル化するための手段として、一般的に、遺伝子組換えマウスが広く利用されている。主に、LVデータはLVに挿入されるカテーテルを用いて測定する。カテーテルとは、主に、血圧および血液量を測定するための分離装置を有している。麻酔を投与されたマウスから採取したデータを用いているためにいくつかの問題点があり、最も注目すべきは、麻酔を投与された検体から採取した心臓血管のデータは、自由に動き回っている検体から採取した心臓血管のデータとは明らかに異なるということである。
【0004】
自由に動き回っている検体から得られた心臓血管のデータを測定するためには、検体が活発であるときに操作可能であり、処理するために検体の体外へデータを送信することが可能である埋め込み装置が必要である。この要求にはいくつかの設計上の問題があり、とりわけ、サイズおよびバッテリーの寿命が問題となる。特に、縮小されたサイズでは、より少ない侵襲性装置を提供し、より長いバッテリー寿命では、装置を交換または再充電するために要求される外科手術の回数を減少させる。外科手術のための度重なる外傷および手術費用を減らす必要性は、生体移植物におけるバッテリー寿命を延長させる必要性を駆り立てている。ヒトに利用を拡大する際に、これらの関心は高まる。
【0005】
生物試験において、生理的圧力を測定するために開発されている数多くの装置があり、例えば、このような装置として、米国特許第4,796,641号、第4,846,191号、および第6,033,366号に開示されている。これらの装置は、例えば、動脈のような生理的圧力を有する試験領域へ挿入される、圧力センサを有するカテーテルを含む。センサは、圧力送信流動体によって満たされた圧力送信カテーテルを含む。圧力変換器は、試験領域の外側へ送信可能な生理的圧力における変動を示す、電圧シグナルを供給するために液体と通じている。これらの装置は圧力測定に関するのみであり、カテーテルに満たされた液体の使用は好ましくない周波数特性を引き起こし、頭部圧力作用を示す可能性もある。
【0006】
その他の装置として、例えば、米国特許第6,409,674号では、生物検体におけるLV内壁へ固定されている埋め込み式センサを提供している。このセンサは、心臓内部からデータを取得し、外部データ受信機へ送信するものである。この装置は、単一パラメータを測定することのみに関連しており、具体的には、圧力測定を説明するものである。
【0007】
より広範囲な心臓血管のデータを取得するために、埋め込み可能なデータ取得装置の必要性があり、そのような装置は最低限の侵襲性であり、延長されたバッテリー寿命を有する必要がある。
【0008】
したがって、少なくとも上記課題の一つを防ぐか、または軽減することを本発明の目的とする。
【0009】
〔本発明の概要〕
一実施形態において、本発明は、心臓の心室内を通って伸び、圧力感知装置および容積感知装置を備えている感知チップを配置する工程と、圧力感知装置および容積感知装置を用いて、心室内の圧力測定値および容積測定値をそれぞれ求める工程と、送信装置へ測定値を伝える工程と、心臓を観察するために用いている測定値の電気的表現を受信装置へ無線で送信する工程とを含んでいる、生物の心臓を観察するための方法を提供する。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、心臓の心室内に配置され、それを通って伸びている感知チップを含んでいる生物の心臓を観察するためのシステムを提供するものであり、感知チップは、心室内の圧力測定値を得るために導入された圧力感知装置、および心室内の容積測定値を得るために導入された容積感知装置を含み、これら測定値を送信するために備えられており、感知チップから測定値を受信し、測定値の電気的表現を無線で送信するために送信装置と、心臓を観察するために利用されている電気的表現を受信するための受信装置とを備えている。
【0011】
さらに別の実施形態において、本発明は、生物の心室から得られる心室内の容積を表わす伝導性シグナルを測定する工程と、伝導性シグナルの伝導性部分から、心電図シグナルを含む伝導性シグナルのノイズ部分を分離するために、伝導性シグナルを処理する工程と、ノイズ部分から心電図シグナルを抽出する工程とを含む、心臓内の心電図シグナルを求める方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【0012】
本発明に係る一実施形態ついて、図に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1によれば、無線心臓血管データ取得システムの一実施形態は、通常、番号10に示される。システム10は、身体14内に位置する心臓12の生理的パラメータを測定する働きをする。心臓12および身体14は、例えば、遺伝子組換えマウスまたはヒトのような生物の一部を形成する。心臓12は心室を有しており、この図の例においては、心臓弁18を経由して身体14と通じる部分である左心室(LV)16を示す。感知チップ22は、心臓弁18を介して挿入されることによってLV16内に配置されており、本実施形態においては心臓12の外側である身体14の部位15に埋め込まれる送信装置20と繋がる通信路24を有している。図1に示す例では、部位15は身体の鎖骨近傍にある。送信装置20が配置される位置は、特に限定されず、例えば、心臓12または心室(例えば、LV16)内に設計されるように配置してもよい。
【0014】
本実施形態において、送信装置20は、身体14の外側のベルト27に取り付けられている受信装置26へ、無線でデータを送信する。受信装置26は、図1に示すようにスクリーン28にデータを表示してもよいし、いろいろなデータをスクロールするためにキーパッド30を具備してもよい。図2にはシステム10の概略図を示す。
【0015】
図2に示すように、通信路24は、感知チップ22によって取得されたデータを、送信装置20内の送信処理モジュール32へ伝えている。送信装置20は、送信機36を備えており、バッテリー34からエネルギーを得ることによって電力が供給されている。バッテリー34の使用は、目的を説明するために過ぎず、送信装置20に電力を供給する手段としては、特に限定されるものではなく、例えば、パワースカベンジング(power scavenging)(環境エネルギーを電力に変換する)、またはRF送電(高周波シグナルを介して、外部の電源から送信装置20へ送信されるエネルギー)等を用いてもよい。
【0016】
送信処理モジュール32は、身体14に埋め込まれることが好ましい。そのため、送信機36を介するシグナル送信は、外気に到達する前に身体組織を通り抜けなくてはならない。様々な身体構成要素によるRFシグナルの減弱化は、主として高周波数に依存している。したがって、送信機36は、自身が送信するシグナルの減弱化を最小限にするように選択する必要がある。一般的に、低周波数は、周波数を下げて、浸透深度を大きくしてからシグナルを送信することが好ましい。しかしながら、周波数を下げると、受信側においてより高い波長およびより長いアンテナを要する。したがって、送信機36は個々の用途に応じて、これら条件のバランスを保つように選択されればよい。このようなバランスを保つことができる周波数としては、40MHzであることが好ましい。また、送信機36によって消費される電力は、受信側においてエネルギーを貯蔵すると同時に、消費電力を正確に検出することができるように考慮されてもよい。
【0017】
送信装置20は、受信機40を介して受信装置26に無線で送信する。受信装置26は、送信装置20から受信したデータを処理するための、受信処理モジュール38を有している。受信装置26は、バッテリー42または、適用可能なACおよびDC電源(図示しない)によって電力を供給される。受信装置26は、感知チップ22によって取得した測定値の電気的表現を供給する一連のシグナル(44〜50)を有しており、圧力シグナル44、容積シグナル46、温度シグナル48、および心電図(ECG)シグナル50を含んでいる。
【0018】
図2によれば、これらシグナルは受信処理モジュール38の外側にあるように示しており、このシグナルに接続されるアナログ・デジタル(A/D)コンバータ54を有している外部のコンピュータデバイス52と送信可能なように接続されている。しかしながら、A/Dコンバータ54は、受信処理モジュール38または送信処理モジュール32のどちらかに内蔵されていてもよい。また、コンピュータデバイス52は、例えば、受信処理モジュール38によってもたらされる処理能力に相当するものと置き換えてもよい。受信装置26およびコンピュータデバイス52および/またはA/Dコンバータ54間の通信可能な繋がりは、例えば、ブルートゥーステクノロジーを用いるように、配線で接続しても、無線でチャンネルを接続してもよい。
【0019】
受信装置26の内側または外側にあるコンピュータデバイス52としては、データを取得し、受信処理モジュール38と接続することができる装置である限り、特に限定されない。図2に示すように、本実施形態におけるコンピュータデバイス52は標準的なパーソナルコンピュータ(PC)であり、モニター、中央演算処理装置(CPU)、キーボード、およびマウスを備えている。
【0020】
図3では、感知チップ22をより詳細に示している。感知チップ22は、心臓弁18を通り抜けて配置し易くするために、末端70が丸みを帯びている。本実施形態において、感知チップ22の周囲を取り巻いている身体の基部に近い電極62および末端部の電極60は、内部電極対64,66、圧力感知装置68、および体温感知装置69の側面に位置している。電極60,62,64,および66は、LV16における血液量を測定するために用いられており、本明細書においては、容積感知装置67としてまとめて説明する。身体の基部に近い電極62はシグナルを送信し、末端部の電極はLV16の電界を作り出すために同じシグナルを受信する。内部電極64,66は、LV16の血液量を表示する伝導測定を行なうために電界を感知する。理論上は、内部電極64,66は“レジスター”のどちらかの側面上に測定プローブとしてモデル化することができる。この“レジスター”では、LV16における血液の抵抗性を表わしている。また、内部電極64,66は、レジスター”全域で電位を測定するように配列される。容積測定値および/または容積シグナルは、伝導性測定値および/または伝導性シグナルそれぞれとしてみなされてもよく、この名称は置き換えてもよい。
【0021】
圧力感知装置68は、LV16における血圧を感知するために用いられる。また、身体14の体温は、実質的には全身一定に保たれているので、体温感知装置69はこの身体14の体温を感知するために用いられる。体温感知装置69は、サーミスタ(thermistor)または同等の構成から成ることが好ましい。容積感知装置67、圧力感知装置68および体温感知装置69は、通信路24を介して送信装置20へデータを送信している。そのため、一般的には、感知チップ22から送信装置20へデータを送信することができるように、通信路24は多数の配線を有している。通信路24の長さは、心臓12に対する送信装置20の位置によって決まる。
【0022】
図3では、体温感知装置69が感知チップ22の一部として示している。しかしながら、体温感知装置69は、身体14の内部温度を測定することが可能であるならば、配置される場所は特に限定されず、心臓12の内側であっても外側であってもよい。
【0023】
図4aおよび図4bでは、感知装置22の一実施形態を示す。感知装置22の相対方向は、説明の便宜のために強調して示しているに過ぎない。圧力感知装置68としては、圧力を感知することが可能である限り限定されるものではない。本実施形態においては、圧力感知装置はピエゾ抵抗偏向センサを含んでおり、具体的には、感知装置22の枠に取り付けられている基底部位82を有する片持ち梁式センサ梁80である。感知装置22における基底枠85では、片持ち梁式センサ梁80の基部が外圧を受ける可能性があり、チップ枠86では、片持ち梁式センサ梁80のチップが外圧を受けることがある。密封層88は、片持ち梁式センサ梁80を周囲の環境との直接的な接触から妨げている。しかしながら、密封層88は循環血液の圧力における変動によって、片持ち梁式センサ梁80に撓みをもたらすための外圧を受け入れる。図4bでは、感知装置67,68,69から通信路24へと通る電気配線を示す。
【0024】
片持ち梁式センサ梁80の実装は図5に概略的に示す。この図に示すように、撓みゲージセンサ上に2つのレジスターRx1およびRx2が実装されている。片持ち梁式センサ梁80が圧力を受けることによって屈曲するとき、これらレジスターの抵抗は反対方向に変化する。すなわち、1つのレジスターの抵抗は、もう1つのレジスターの抵抗が減少すると同時に増加する。結果として、付随する電子回路は、シングルエンド構造と比較して、より高いノイズ比へのシグナル(SNR)を供給する全く異なる構造に設計してもよい。
【0025】
圧力感知装置68として好ましい形態を以下に示すが、これに限定されるものではない。すなわち、各レジスターRx1およびRx2の公称抵抗値は10,000オーム、70〜80のゲージファクター、レジスター製作時の合計許容誤差は+/−10〜15%、レジスター間の最大抵抗値誤差は2.4%、抵抗の温度係数は+5%/100°F、および放電破壊電圧は20Vである。
【0026】
これら模範的な規格は、主に、これらが圧力感知装置68にとって非理想的であってもよいことを説明する。圧力感知装置68はこれらの回路を設計するときに扱われるのが好ましい。例えば、プロセス変動のため、Rx1およびRx2レジスターは、すべての算定において等しくはない。これは、出力時に補正を引き起こす可能性がある。さらに、Rx1およびRx2レジスターの抵抗は温度依存性パラメータであるため、抵抗温度係数(TCR)は誤差による補正を引き起こし得る。したがって、たとえ当該補正が或る温度において取り消されるとしても、それが他の温度においてゼロにならないこともある。最終的に、ゲージファクターの温度係数(TCGF)は、圧力感知装置68の温度依存性を増加させる。
【0027】
上述のパラメータは、主に測定誤差に起因する。結果として、圧力感知装置68の出力には、いくつかの補正エラーがあり、温度に依存することになり得る。上述のパラメータの補正をするために、主にシグナル調節構想が利用される。図5において示される例、2つの電源I1およびI2によって抵抗変動を測定するために用いるホイートストン・ブリッジ構造を示す。
【0028】
上述したように、Rx1およびRx2は心臓の収縮機能または、同等に血圧の機能のように反対方向に変化する。すなわち:Rx1=R01(1+GF.x)および、Rx2=R02(1+GF.x)である。なお、式中R01およびR02は、ゼロ収縮時のセンサ抵抗であり、GFは圧力感知装置68のゲージファクターであり、xは収縮である。2つの電源I1およびI2はブリッジを満たすものであり、図5に示すような送信処理モジュール32に組み込まれることが好ましい。抵抗の誤差、TCR、およびTCGFを相殺するために、下記の数式を適用してもよい。すなわち:R01I02−R01I01=0;および、TCI=−(TCR+TCGF)である。なお、式中TCIは電源の温度係数を示すものであり、R01およびR02は基準温度における抵抗値を示す。また、I01およびI02は基準温度における2つの電源の電流を示す。送信処理モジュール32を実装するために用いられる技術としては、電源を実装することが可能であれば、温度係数は特に限定されない。また、電源は、最低限の供給電圧感度を有するように設計されることが好ましい。
【0029】
図6は、送信処理モジュール32のブロック図を示す。送信処理モジュール32は、タイミング制御装置94に制御される感知ブロック90および送信ブロック92を含む。送信処理モジュール32と接続されるバッテリー34は、スイッチ96によって制御されてもよい。バッテリー34としては、適用可能なサイズの小型バッテリーであり、可能な限り長いバッテリー寿命があることが好ましい。適用可能なバッテリーとしては、180mAhの寿命を有し、重量が2.3g、1.5Vdc、および容積が0.57ccである。スイッチ96としては、例えば、バッテリー34から送信処理モジュール32への主要電力供給を制御することが可能な装置を磁気または無線で制御されてもよい。タイミング制御装置94とスイッチ96との間には電圧調整器があり、感知ブロック90および送信ブロック92を制御するためのタイミング制御装置94へ調節された電圧を供給する。上述のバッテリーの条件を有しているのであれば、適応可能な調節電圧は1V出力である。
【0030】
感知ブロック90では理想的でないセンサの補正をするために、圧力感知装置68(上述の電源I1およびI2を有する)のための電源ブロック100を備えており、圧力感知装置68のための温度補正の基準である。また、感知ブロック90は、電極60および62を用いて電界を発生させる伝導電源102、および温度感知装置69のためのサーミスタ電流供給104を含む。なお、サーミスタ電流供給104は、電流の流出を最小限にするために高抵抗サーミスタを含むことが好ましい。これら電源(100〜104)からの出力は、通信路24を通って感知チップ22に送られる。
【0031】
感知装置67、68、および69によって取得された測定値は、通信路24を通って感知ブロック90へ送り返される。温度シグナルは、増幅器106を通って、抽出および保持部112によって、送信のために抽出および保持される。同様に、圧力シグナルは、増幅器110を通って抽出および保持部116によって抽出および保持され、容積シグナルは、増幅器108を通って抽出および保持部114によって抽出および保持される。増幅器106、108、および110はシグナルの忠実度を促進するために用いられることが好ましい。抽出および保持部112、114、および116では、タイミング制御装置94が感知ブロック90から送信ブロック92へと電力を切り替える間、シグナルサンプルを保持する。
【0032】
送信ブロック92はマルチプレクサ118および電圧制御発振器(VCO)120を有する。マルチプレクサ118は、抽出および保持部112〜116からサンプルを読み取り、VCO120によって送信のためのシグナルを配列する。例えば、マルチプレクサ118は、送信する順序にシグナルを配列してもよい。VCO120はアンテナ121と接続され、また図2に示す送信機36と共に構成される。VCO120としては、平均で32μAの電流を消費するコルピットタイプが適している。アンテナ121は、VCO120の周波数を決定する誘導原と平行して接続されることが好ましく、また、42MHzの送信周波数を伴うFM送信機のような役目を果たすことが好ましい。
【0033】
図7は、受信処理モジュール38のブロック図を示す。受信処理モジュール38は、受信装置26の受信機40と接続されるデマルチプレクサ122を備えている。デマルチプレクサ122は、送信機36によって送信され、受信機40によって受信されるシグナルを分離する。例えば、シグナルがアナログシグナルとして送信される場合には、デマルチプレクサ122は、受信したシグナルを個々のアナログシグナルに分離する。なお、本実施形態においては、3つの異なるシグナル、すなわち、温度シグナル124、電圧シグナル126、および容積シグナル128を備えている。温度シグナル124は、温度出力48として速やかに利用することが可能であり、電圧シグナル126は、コンピュータデバイス52へのさらなる処理および/または送信のために圧力出力44として速やかに利用することが可能である。また、受信処理モジュール38は、例えば、表示のために、シグナル124、126、および128を処理および分析するための内部構成材をさらに備えてもよい。さらに、受信処理モジュール38は、心臓の健康状態の異常を携帯する受信装置26に知らせるために、警報装置またはその他の装置を含んでもよい。また、ディスプレイ28は、心臓のパラメータまたは心臓の健康状態を表わす算出された指数を出力するための付加的な処理と共に用いられてもよい。
【0034】
容積シグナル128は、緩衝装置129を通って送られ、容積出力46として利用することが可能である。また、容積シグナル128は、ECGシグナルを抽出する更なる処理をするECG処理ブロック130で保存されてもよい。ECG処理ブロック130の予備シグナルは、元のシグナルのインテグリティを保存している間、シグナルを操作することができるアナログ・デジタル(A/D)コンバータ132を用いて変換されることが好ましい。例えば、受信されたシグナルが既にデジタルシグナルに変換されている場合には、A/Dコンバータ132は必ずしも必要ではない。A/Dコンバータ132は、2つの同一の出力を有しており、その1つはデジタルシグナルプロセッサ(DSP)134にインプットされる。DSP134は、容積シグナルからECGシグナルを取り除くために用いられており、複雑なシグナル処理を可能にする。ECGシグナルの抽出については、後で詳細に説明する。
【0035】
DSP134から発生するシグナルは、変換器136によって変換される。また、変換器136はDSP134の一部であってもよい。A/Dコンバータ132から得られるその他の出力は、緩衝装置138によって一時的に蓄えられ、変換されたシグナルおよび緩衝されたシグナルは、ECG出力45として利用することが可能なECGシグナル142を生成するために、積算ブロック140において積算される。緩衝装置138は加工していない容積シグナルの共時性、およびデジタル処理で操作されるバージョン(例えば、DSP134によって)を維持するために用いられる。DSP134によって課された遅れは、積算ブロック140における合計値の結果を異なる作用をもたらすこともある。積算ブロック140では、2つの容積シグナルを積算しており、そのうちの1つのシグナルが変換されてから、容積シグナルの伝導性部分が取り除かれ、もう1つのシグナルはECGシグナル142に相当する。
【0036】
感知ブロック90および送信ブロック92は電力を保存するために、タイミング制御装置94を用いて選択的に電力が供給される。図8に示すタイミング図は、タイミング制御装置94における制御を説明している。区間Tは、測定および送信を含むシステム10の全体を観察するサイクルを示す。具体的に、T1では必然的な測定、抽出、および保持シグナルを得るための電力が供給される感知ブロック90における区間を示し、T2では送信装置20から受信装置26へデータの送信を行なうための電力が供給される送信ブロック92における区間を示す。
【0037】
例えば、2kHzの抽出率では、データを抽出および送信するために区間Tは500μsとなる。例えば、取得区間T2が20μsであり、転送区間T3が50μsである場合には、感知ブロック90または送信ブロック92が待機している各サイクルの間は430μsである。タイミング制御装置94では、感知ブロック90または送信ブロック92どちらかを選択的に電源をオフにするためにタイミング構想を用いている。すなわち、バッテリー寿命を延長させるために、待機電力を使用しないということである。
【0038】
このような電力節約タイミング構想を用いることによって生じるもう1つの利益とは、すなわち、ノイズの低減である。送信ブロック92が電力を供給されない間、感知ブロック90には電力が供給されるため、送信機36はシグナル調節によって発生したノイズに影響を受ける可能性が低い。反対に、感知回路(感知ブロック90)では、送信機36から発生するノイズの対象ではない。T3として示す10μs区間では、1つの区間の終わりと次の区間の始まりとの間に存在する区間であり、如何なる回路も必要な安定化を可能にする。
【0039】
したがって、主に送信ブロック92ではデータが集積できていないことからデータを送信することができないため、感知ブロック90が機能する間、電力を消費することになる。例えば、送信ブロック92において電力が必要でない間、電源が切られているのであれば、電力は消費されず、保存されることになる。同様に、主に感知ブロック90では送信機36が以前抽出したものを送信している間、如何なるデータも追加することがなく、その間電力を消費する必要がない。
【0040】
図9は、サイクルTの全区間において、システム10によって行なわれる工程と、それに続く受信装置26による処理工程の一実施形態を示すフローチャートである。感知ブロック90では、電源が測定装置67、68、および69に電力を供給し、また、測定値を求めることができるようにする電力を供給する。次に、これらの側定値を増幅し、抽出および保持する。その後、これらの工程間の時間差が上述したT3として示す区間にあるとき、感知ブロック90では電力を“オフ”にして、送信ブロック92では電力を“オン”にする。一度、送信ブロック92が電力を供給されれば、抽出および保持部112〜116に貯蔵されるシグナルを取得することが可能となり、これら送信シグナルを組み合わせることもできる。本実施形態において、マルチプレクサ118は、特定の順次配列にシグナルを配列することによって操作することが好ましく、その配列とは、デマルチプレクサ122が受信側でシグナルを分離することを可能にするためのデマルチプレクサ122であることが知られている。
【0041】
マルチプレクサ118は、“組み合わされた”シグナルを受信装置26へ送信するためのアンテナ121を用いて、この“組み合わされた”シグナルをVCO120へと送信する。この時点で、測定サイクルは一通り行なわれており、シグナルを、さらに処理および/または出力するために受信装置26へ続けて送信する。その後、送信装置20は、必要または要望に応じてこのサイクルを繰り返してよい。
【0042】
受信装置26では、受信機40から“組み合わされた”シグナルを受信する。シグナルは、その構成要素の中に分離される場であるデマルチプレクサ122へ送信される。温度シグナル124および電圧シグナル126は、それぞれ出力することも可能であり、受信処理モジュール38によるさらなる処理をしてもよい。容積シグナル128は緩衝され、容積出力46において出力されてもよく、また、ECGシグナル142を抽出し、ECG出力を供給するために取得されてもよい。加工されていない容積シグナル128からのECGシグナル142の抽出は、これと関連する図7において示すブロック図に基づいて、後で詳細に説明する。
【0043】
上述したように、容積感知装置67を用いて得られた、伝導性または容積シグナル128は、ECGシグナル142を抽出するために用いられる。
【0044】
容積感知装置67の電極を用いて得られた伝導性シグナルは、LV16における血液の伝導値、システムまたは条件において発生されるノイズ、および周囲の構成要素として取得されるECGシグナル142とから構成される。上述したように、本実施形態において加工されていないシグナルは、例えば、如何なるシグナル調節も受けていない、組み合わされたアナログ波形として受信装置26へ集められ、送信される。組み合わされたシグナルが受信装置26によって受信されるとき、個々の圧力、容積、および温度シグナル(124、126、および128)は分離され、例えば、ECG処理ブロック130における工程において、容積シグナル128を様々な要素に分離し始める。
【0045】
伝導性の容積シグナル128は、電極60、62を用いて、心臓の尖端から頚動脈まで生成された電界の結果である。伝導性リングが心筋に接触するため、結果として生じた伝導性シグナルはECGシグナルも運ぶ。シグナル調節、および周囲のノイズとECGノイズとを除去するためのフィルタリングを用いるためには、通常の方法をもちいればよく、伝導性の容積シグナルを抽出するため構成される。本実施形態において、シグナル調節は、伝導性シグナルを抽出するためにECGシグナルのノイズを除去するだけでなく、当該シグナルの導電性部分を取り除くためにECGシグナル142だけを個別に調節するために用いてもよい。その結果、ECGシグナル142は、LV16に追加装置を導入せずに集積することができる。したがって、感知チップ22は1つの装置によって、より詳細な心臓病の評価を提供するために用いることができる。
【0046】
一旦、シグナルがECG処理ブロック130で取得されれば、受信処理モジュール38におけるA/Dコンバータ132は、加工されていないシグナルをデジタルシグナルへ変換し、ECGデジタルシグナルプロセッサ(DSP)および緩衝装置138のそれぞれへシグナルを送信する。一旦、それぞれのシグナルが処理されれば、それらは積算され、最終的にECGシグナル142が生成される。
【0047】
別の実施形態において、容積感知装置67は複数の内部電極リングを含んでおり、例えば、図10において示すように4つであってもよい。伝導性測定はLV16の全長に沿って送信することによって行なわれ、また各生物は異なるサイズの心臓12を有するため、最適な伝導性測定としては、多様な内部電極対を内蔵することが好ましい。図10は、図3において示したLV16を示す図である。この図では、破線によって示す、より小さな生物から得られたLV1016も同様に示す。電極164、166の対は、上述した内部電極対64,66と類似している。しかしながら、ここでは、感知チップ22は、電極対168,170、172,174、および176,178を含んでおり、これらは互いに徐々に近くなるように配置され、最も外側の電極対60,62の間に配置される。
【0048】
上述の実施形態において、電極リングとしては、送信リングとして選択的に操作する可能であればよいが、一般的に電極60は受信電極として維持されることがある。図10に示す実施形態において、電極170はLV1016のための送信電極として最適であるものが選択されていればよく、内部感知電極対は電極164および174を含んでいればよい。したがって、受信および感知電極の多様な構造は、例えば、LV16またはLV1016のような、LVのサイズに依存する最適な伝導性シグナル得るために選択的に選ぶことができる。
【0049】
したがって、システム10は心臓の心室、より好ましくはLV16における圧力および容積の両方を測定することによって、生物の心臓を観察することができる。圧力および容積の測定値は、1つの感知チップ22によって取得され、心臓を観察するために用いられる受信装置26へ無線で送信されるように送信装置20に伝えられる。また、システム10には、温度測定値を組み入れてもよく、容積および圧力測定値と共に送信することができる温度測定値は、心臓を観察するための更なるデータを提供する。また、システム10は、容積測定値からECGシグナルを抽出してもよい。これは、心臓の健康状態を判断するために用いることができる4つのシグナルまで観察することを可能にする。
【0050】
また、システム10は、コンパクト設計に加えて取得サイクル毎に必要とされる電力を削減し、送信装置20の使用可能な寿命を増加させるエネルギー節約タイミング構想を取り入れてもよい。
【0051】
本発明は、特定の実施形態に基づいて説明しているが、様々な変更は、本発明の特許請求の範囲における趣旨として、本発明の精神と範囲から逸脱することのない技術的分野に見られる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、無線心臓血管データ取得システムを示す図である。
【図2】図2は、図1のシステムを説明する概略図である。
【図3】図3は、図1において示す心臓部の拡大図である。
【図4a】図4aは、図2の圧力感知装置の一部を示す平面図である。
【図4b】図4bは、図4aに示す感知装置の線分B−Bにおける断面図である。
【図5】図5は、圧力感知装置の電気回路図である。
【図6】図6は、図2の送信処理モジュールの概略図である。
【図7】図7は、図2の受信処理モジュールの概略図である。
【図8】図8は、図6のタイミング制御装置のタイミング図である。
【図9】図9は、取得および送信サイクルを示すフローチャートである。
【図10】図10は、図3に示す感知チップにおける別の実施形態を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ取得システムに関し、より詳しくは生物の心臓からデータを取得することに関する。
【0002】
〔背景技術〕
心臓研究の分野において、心臓効率を測定するための標準試験として圧力容積グラフがある。この試験は、心収縮時および拡張時における左心室(LV)の室内圧力および室内容積に関するものである。圧力値および容積値は、ポンプシステムにおける効率を定量化するために重要であり、当該システムの容積効率を測定するために用いることも可能である。病気の進行の定量化、および治療の効果を測定することによって、心臓効率は心臓病を研究するための有用な測定となる。
【0003】
近年、心臓病の研究およびヒトの心臓病をモデル化するための手段として、一般的に、遺伝子組換えマウスが広く利用されている。主に、LVデータはLVに挿入されるカテーテルを用いて測定する。カテーテルとは、主に、血圧および血液量を測定するための分離装置を有している。麻酔を投与されたマウスから採取したデータを用いているためにいくつかの問題点があり、最も注目すべきは、麻酔を投与された検体から採取した心臓血管のデータは、自由に動き回っている検体から採取した心臓血管のデータとは明らかに異なるということである。
【0004】
自由に動き回っている検体から得られた心臓血管のデータを測定するためには、検体が活発であるときに操作可能であり、処理するために検体の体外へデータを送信することが可能である埋め込み装置が必要である。この要求にはいくつかの設計上の問題があり、とりわけ、サイズおよびバッテリーの寿命が問題となる。特に、縮小されたサイズでは、より少ない侵襲性装置を提供し、より長いバッテリー寿命では、装置を交換または再充電するために要求される外科手術の回数を減少させる。外科手術のための度重なる外傷および手術費用を減らす必要性は、生体移植物におけるバッテリー寿命を延長させる必要性を駆り立てている。ヒトに利用を拡大する際に、これらの関心は高まる。
【0005】
生物試験において、生理的圧力を測定するために開発されている数多くの装置があり、例えば、このような装置として、米国特許第4,796,641号、第4,846,191号、および第6,033,366号に開示されている。これらの装置は、例えば、動脈のような生理的圧力を有する試験領域へ挿入される、圧力センサを有するカテーテルを含む。センサは、圧力送信流動体によって満たされた圧力送信カテーテルを含む。圧力変換器は、試験領域の外側へ送信可能な生理的圧力における変動を示す、電圧シグナルを供給するために液体と通じている。これらの装置は圧力測定に関するのみであり、カテーテルに満たされた液体の使用は好ましくない周波数特性を引き起こし、頭部圧力作用を示す可能性もある。
【0006】
その他の装置として、例えば、米国特許第6,409,674号では、生物検体におけるLV内壁へ固定されている埋め込み式センサを提供している。このセンサは、心臓内部からデータを取得し、外部データ受信機へ送信するものである。この装置は、単一パラメータを測定することのみに関連しており、具体的には、圧力測定を説明するものである。
【0007】
より広範囲な心臓血管のデータを取得するために、埋め込み可能なデータ取得装置の必要性があり、そのような装置は最低限の侵襲性であり、延長されたバッテリー寿命を有する必要がある。
【0008】
したがって、少なくとも上記課題の一つを防ぐか、または軽減することを本発明の目的とする。
【0009】
〔本発明の概要〕
一実施形態において、本発明は、心臓の心室内を通って伸び、圧力感知装置および容積感知装置を備えている感知チップを配置する工程と、圧力感知装置および容積感知装置を用いて、心室内の圧力測定値および容積測定値をそれぞれ求める工程と、送信装置へ測定値を伝える工程と、心臓を観察するために用いている測定値の電気的表現を受信装置へ無線で送信する工程とを含んでいる、生物の心臓を観察するための方法を提供する。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、心臓の心室内に配置され、それを通って伸びている感知チップを含んでいる生物の心臓を観察するためのシステムを提供するものであり、感知チップは、心室内の圧力測定値を得るために導入された圧力感知装置、および心室内の容積測定値を得るために導入された容積感知装置を含み、これら測定値を送信するために備えられており、感知チップから測定値を受信し、測定値の電気的表現を無線で送信するために送信装置と、心臓を観察するために利用されている電気的表現を受信するための受信装置とを備えている。
【0011】
さらに別の実施形態において、本発明は、生物の心室から得られる心室内の容積を表わす伝導性シグナルを測定する工程と、伝導性シグナルの伝導性部分から、心電図シグナルを含む伝導性シグナルのノイズ部分を分離するために、伝導性シグナルを処理する工程と、ノイズ部分から心電図シグナルを抽出する工程とを含む、心臓内の心電図シグナルを求める方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【0012】
本発明に係る一実施形態ついて、図に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1によれば、無線心臓血管データ取得システムの一実施形態は、通常、番号10に示される。システム10は、身体14内に位置する心臓12の生理的パラメータを測定する働きをする。心臓12および身体14は、例えば、遺伝子組換えマウスまたはヒトのような生物の一部を形成する。心臓12は心室を有しており、この図の例においては、心臓弁18を経由して身体14と通じる部分である左心室(LV)16を示す。感知チップ22は、心臓弁18を介して挿入されることによってLV16内に配置されており、本実施形態においては心臓12の外側である身体14の部位15に埋め込まれる送信装置20と繋がる通信路24を有している。図1に示す例では、部位15は身体の鎖骨近傍にある。送信装置20が配置される位置は、特に限定されず、例えば、心臓12または心室(例えば、LV16)内に設計されるように配置してもよい。
【0014】
本実施形態において、送信装置20は、身体14の外側のベルト27に取り付けられている受信装置26へ、無線でデータを送信する。受信装置26は、図1に示すようにスクリーン28にデータを表示してもよいし、いろいろなデータをスクロールするためにキーパッド30を具備してもよい。図2にはシステム10の概略図を示す。
【0015】
図2に示すように、通信路24は、感知チップ22によって取得されたデータを、送信装置20内の送信処理モジュール32へ伝えている。送信装置20は、送信機36を備えており、バッテリー34からエネルギーを得ることによって電力が供給されている。バッテリー34の使用は、目的を説明するために過ぎず、送信装置20に電力を供給する手段としては、特に限定されるものではなく、例えば、パワースカベンジング(power scavenging)(環境エネルギーを電力に変換する)、またはRF送電(高周波シグナルを介して、外部の電源から送信装置20へ送信されるエネルギー)等を用いてもよい。
【0016】
送信処理モジュール32は、身体14に埋め込まれることが好ましい。そのため、送信機36を介するシグナル送信は、外気に到達する前に身体組織を通り抜けなくてはならない。様々な身体構成要素によるRFシグナルの減弱化は、主として高周波数に依存している。したがって、送信機36は、自身が送信するシグナルの減弱化を最小限にするように選択する必要がある。一般的に、低周波数は、周波数を下げて、浸透深度を大きくしてからシグナルを送信することが好ましい。しかしながら、周波数を下げると、受信側においてより高い波長およびより長いアンテナを要する。したがって、送信機36は個々の用途に応じて、これら条件のバランスを保つように選択されればよい。このようなバランスを保つことができる周波数としては、40MHzであることが好ましい。また、送信機36によって消費される電力は、受信側においてエネルギーを貯蔵すると同時に、消費電力を正確に検出することができるように考慮されてもよい。
【0017】
送信装置20は、受信機40を介して受信装置26に無線で送信する。受信装置26は、送信装置20から受信したデータを処理するための、受信処理モジュール38を有している。受信装置26は、バッテリー42または、適用可能なACおよびDC電源(図示しない)によって電力を供給される。受信装置26は、感知チップ22によって取得した測定値の電気的表現を供給する一連のシグナル(44〜50)を有しており、圧力シグナル44、容積シグナル46、温度シグナル48、および心電図(ECG)シグナル50を含んでいる。
【0018】
図2によれば、これらシグナルは受信処理モジュール38の外側にあるように示しており、このシグナルに接続されるアナログ・デジタル(A/D)コンバータ54を有している外部のコンピュータデバイス52と送信可能なように接続されている。しかしながら、A/Dコンバータ54は、受信処理モジュール38または送信処理モジュール32のどちらかに内蔵されていてもよい。また、コンピュータデバイス52は、例えば、受信処理モジュール38によってもたらされる処理能力に相当するものと置き換えてもよい。受信装置26およびコンピュータデバイス52および/またはA/Dコンバータ54間の通信可能な繋がりは、例えば、ブルートゥーステクノロジーを用いるように、配線で接続しても、無線でチャンネルを接続してもよい。
【0019】
受信装置26の内側または外側にあるコンピュータデバイス52としては、データを取得し、受信処理モジュール38と接続することができる装置である限り、特に限定されない。図2に示すように、本実施形態におけるコンピュータデバイス52は標準的なパーソナルコンピュータ(PC)であり、モニター、中央演算処理装置(CPU)、キーボード、およびマウスを備えている。
【0020】
図3では、感知チップ22をより詳細に示している。感知チップ22は、心臓弁18を通り抜けて配置し易くするために、末端70が丸みを帯びている。本実施形態において、感知チップ22の周囲を取り巻いている身体の基部に近い電極62および末端部の電極60は、内部電極対64,66、圧力感知装置68、および体温感知装置69の側面に位置している。電極60,62,64,および66は、LV16における血液量を測定するために用いられており、本明細書においては、容積感知装置67としてまとめて説明する。身体の基部に近い電極62はシグナルを送信し、末端部の電極はLV16の電界を作り出すために同じシグナルを受信する。内部電極64,66は、LV16の血液量を表示する伝導測定を行なうために電界を感知する。理論上は、内部電極64,66は“レジスター”のどちらかの側面上に測定プローブとしてモデル化することができる。この“レジスター”では、LV16における血液の抵抗性を表わしている。また、内部電極64,66は、レジスター”全域で電位を測定するように配列される。容積測定値および/または容積シグナルは、伝導性測定値および/または伝導性シグナルそれぞれとしてみなされてもよく、この名称は置き換えてもよい。
【0021】
圧力感知装置68は、LV16における血圧を感知するために用いられる。また、身体14の体温は、実質的には全身一定に保たれているので、体温感知装置69はこの身体14の体温を感知するために用いられる。体温感知装置69は、サーミスタ(thermistor)または同等の構成から成ることが好ましい。容積感知装置67、圧力感知装置68および体温感知装置69は、通信路24を介して送信装置20へデータを送信している。そのため、一般的には、感知チップ22から送信装置20へデータを送信することができるように、通信路24は多数の配線を有している。通信路24の長さは、心臓12に対する送信装置20の位置によって決まる。
【0022】
図3では、体温感知装置69が感知チップ22の一部として示している。しかしながら、体温感知装置69は、身体14の内部温度を測定することが可能であるならば、配置される場所は特に限定されず、心臓12の内側であっても外側であってもよい。
【0023】
図4aおよび図4bでは、感知装置22の一実施形態を示す。感知装置22の相対方向は、説明の便宜のために強調して示しているに過ぎない。圧力感知装置68としては、圧力を感知することが可能である限り限定されるものではない。本実施形態においては、圧力感知装置はピエゾ抵抗偏向センサを含んでおり、具体的には、感知装置22の枠に取り付けられている基底部位82を有する片持ち梁式センサ梁80である。感知装置22における基底枠85では、片持ち梁式センサ梁80の基部が外圧を受ける可能性があり、チップ枠86では、片持ち梁式センサ梁80のチップが外圧を受けることがある。密封層88は、片持ち梁式センサ梁80を周囲の環境との直接的な接触から妨げている。しかしながら、密封層88は循環血液の圧力における変動によって、片持ち梁式センサ梁80に撓みをもたらすための外圧を受け入れる。図4bでは、感知装置67,68,69から通信路24へと通る電気配線を示す。
【0024】
片持ち梁式センサ梁80の実装は図5に概略的に示す。この図に示すように、撓みゲージセンサ上に2つのレジスターRx1およびRx2が実装されている。片持ち梁式センサ梁80が圧力を受けることによって屈曲するとき、これらレジスターの抵抗は反対方向に変化する。すなわち、1つのレジスターの抵抗は、もう1つのレジスターの抵抗が減少すると同時に増加する。結果として、付随する電子回路は、シングルエンド構造と比較して、より高いノイズ比へのシグナル(SNR)を供給する全く異なる構造に設計してもよい。
【0025】
圧力感知装置68として好ましい形態を以下に示すが、これに限定されるものではない。すなわち、各レジスターRx1およびRx2の公称抵抗値は10,000オーム、70〜80のゲージファクター、レジスター製作時の合計許容誤差は+/−10〜15%、レジスター間の最大抵抗値誤差は2.4%、抵抗の温度係数は+5%/100°F、および放電破壊電圧は20Vである。
【0026】
これら模範的な規格は、主に、これらが圧力感知装置68にとって非理想的であってもよいことを説明する。圧力感知装置68はこれらの回路を設計するときに扱われるのが好ましい。例えば、プロセス変動のため、Rx1およびRx2レジスターは、すべての算定において等しくはない。これは、出力時に補正を引き起こす可能性がある。さらに、Rx1およびRx2レジスターの抵抗は温度依存性パラメータであるため、抵抗温度係数(TCR)は誤差による補正を引き起こし得る。したがって、たとえ当該補正が或る温度において取り消されるとしても、それが他の温度においてゼロにならないこともある。最終的に、ゲージファクターの温度係数(TCGF)は、圧力感知装置68の温度依存性を増加させる。
【0027】
上述のパラメータは、主に測定誤差に起因する。結果として、圧力感知装置68の出力には、いくつかの補正エラーがあり、温度に依存することになり得る。上述のパラメータの補正をするために、主にシグナル調節構想が利用される。図5において示される例、2つの電源I1およびI2によって抵抗変動を測定するために用いるホイートストン・ブリッジ構造を示す。
【0028】
上述したように、Rx1およびRx2は心臓の収縮機能または、同等に血圧の機能のように反対方向に変化する。すなわち:Rx1=R01(1+GF.x)および、Rx2=R02(1+GF.x)である。なお、式中R01およびR02は、ゼロ収縮時のセンサ抵抗であり、GFは圧力感知装置68のゲージファクターであり、xは収縮である。2つの電源I1およびI2はブリッジを満たすものであり、図5に示すような送信処理モジュール32に組み込まれることが好ましい。抵抗の誤差、TCR、およびTCGFを相殺するために、下記の数式を適用してもよい。すなわち:R01I02−R01I01=0;および、TCI=−(TCR+TCGF)である。なお、式中TCIは電源の温度係数を示すものであり、R01およびR02は基準温度における抵抗値を示す。また、I01およびI02は基準温度における2つの電源の電流を示す。送信処理モジュール32を実装するために用いられる技術としては、電源を実装することが可能であれば、温度係数は特に限定されない。また、電源は、最低限の供給電圧感度を有するように設計されることが好ましい。
【0029】
図6は、送信処理モジュール32のブロック図を示す。送信処理モジュール32は、タイミング制御装置94に制御される感知ブロック90および送信ブロック92を含む。送信処理モジュール32と接続されるバッテリー34は、スイッチ96によって制御されてもよい。バッテリー34としては、適用可能なサイズの小型バッテリーであり、可能な限り長いバッテリー寿命があることが好ましい。適用可能なバッテリーとしては、180mAhの寿命を有し、重量が2.3g、1.5Vdc、および容積が0.57ccである。スイッチ96としては、例えば、バッテリー34から送信処理モジュール32への主要電力供給を制御することが可能な装置を磁気または無線で制御されてもよい。タイミング制御装置94とスイッチ96との間には電圧調整器があり、感知ブロック90および送信ブロック92を制御するためのタイミング制御装置94へ調節された電圧を供給する。上述のバッテリーの条件を有しているのであれば、適応可能な調節電圧は1V出力である。
【0030】
感知ブロック90では理想的でないセンサの補正をするために、圧力感知装置68(上述の電源I1およびI2を有する)のための電源ブロック100を備えており、圧力感知装置68のための温度補正の基準である。また、感知ブロック90は、電極60および62を用いて電界を発生させる伝導電源102、および温度感知装置69のためのサーミスタ電流供給104を含む。なお、サーミスタ電流供給104は、電流の流出を最小限にするために高抵抗サーミスタを含むことが好ましい。これら電源(100〜104)からの出力は、通信路24を通って感知チップ22に送られる。
【0031】
感知装置67、68、および69によって取得された測定値は、通信路24を通って感知ブロック90へ送り返される。温度シグナルは、増幅器106を通って、抽出および保持部112によって、送信のために抽出および保持される。同様に、圧力シグナルは、増幅器110を通って抽出および保持部116によって抽出および保持され、容積シグナルは、増幅器108を通って抽出および保持部114によって抽出および保持される。増幅器106、108、および110はシグナルの忠実度を促進するために用いられることが好ましい。抽出および保持部112、114、および116では、タイミング制御装置94が感知ブロック90から送信ブロック92へと電力を切り替える間、シグナルサンプルを保持する。
【0032】
送信ブロック92はマルチプレクサ118および電圧制御発振器(VCO)120を有する。マルチプレクサ118は、抽出および保持部112〜116からサンプルを読み取り、VCO120によって送信のためのシグナルを配列する。例えば、マルチプレクサ118は、送信する順序にシグナルを配列してもよい。VCO120はアンテナ121と接続され、また図2に示す送信機36と共に構成される。VCO120としては、平均で32μAの電流を消費するコルピットタイプが適している。アンテナ121は、VCO120の周波数を決定する誘導原と平行して接続されることが好ましく、また、42MHzの送信周波数を伴うFM送信機のような役目を果たすことが好ましい。
【0033】
図7は、受信処理モジュール38のブロック図を示す。受信処理モジュール38は、受信装置26の受信機40と接続されるデマルチプレクサ122を備えている。デマルチプレクサ122は、送信機36によって送信され、受信機40によって受信されるシグナルを分離する。例えば、シグナルがアナログシグナルとして送信される場合には、デマルチプレクサ122は、受信したシグナルを個々のアナログシグナルに分離する。なお、本実施形態においては、3つの異なるシグナル、すなわち、温度シグナル124、電圧シグナル126、および容積シグナル128を備えている。温度シグナル124は、温度出力48として速やかに利用することが可能であり、電圧シグナル126は、コンピュータデバイス52へのさらなる処理および/または送信のために圧力出力44として速やかに利用することが可能である。また、受信処理モジュール38は、例えば、表示のために、シグナル124、126、および128を処理および分析するための内部構成材をさらに備えてもよい。さらに、受信処理モジュール38は、心臓の健康状態の異常を携帯する受信装置26に知らせるために、警報装置またはその他の装置を含んでもよい。また、ディスプレイ28は、心臓のパラメータまたは心臓の健康状態を表わす算出された指数を出力するための付加的な処理と共に用いられてもよい。
【0034】
容積シグナル128は、緩衝装置129を通って送られ、容積出力46として利用することが可能である。また、容積シグナル128は、ECGシグナルを抽出する更なる処理をするECG処理ブロック130で保存されてもよい。ECG処理ブロック130の予備シグナルは、元のシグナルのインテグリティを保存している間、シグナルを操作することができるアナログ・デジタル(A/D)コンバータ132を用いて変換されることが好ましい。例えば、受信されたシグナルが既にデジタルシグナルに変換されている場合には、A/Dコンバータ132は必ずしも必要ではない。A/Dコンバータ132は、2つの同一の出力を有しており、その1つはデジタルシグナルプロセッサ(DSP)134にインプットされる。DSP134は、容積シグナルからECGシグナルを取り除くために用いられており、複雑なシグナル処理を可能にする。ECGシグナルの抽出については、後で詳細に説明する。
【0035】
DSP134から発生するシグナルは、変換器136によって変換される。また、変換器136はDSP134の一部であってもよい。A/Dコンバータ132から得られるその他の出力は、緩衝装置138によって一時的に蓄えられ、変換されたシグナルおよび緩衝されたシグナルは、ECG出力45として利用することが可能なECGシグナル142を生成するために、積算ブロック140において積算される。緩衝装置138は加工していない容積シグナルの共時性、およびデジタル処理で操作されるバージョン(例えば、DSP134によって)を維持するために用いられる。DSP134によって課された遅れは、積算ブロック140における合計値の結果を異なる作用をもたらすこともある。積算ブロック140では、2つの容積シグナルを積算しており、そのうちの1つのシグナルが変換されてから、容積シグナルの伝導性部分が取り除かれ、もう1つのシグナルはECGシグナル142に相当する。
【0036】
感知ブロック90および送信ブロック92は電力を保存するために、タイミング制御装置94を用いて選択的に電力が供給される。図8に示すタイミング図は、タイミング制御装置94における制御を説明している。区間Tは、測定および送信を含むシステム10の全体を観察するサイクルを示す。具体的に、T1では必然的な測定、抽出、および保持シグナルを得るための電力が供給される感知ブロック90における区間を示し、T2では送信装置20から受信装置26へデータの送信を行なうための電力が供給される送信ブロック92における区間を示す。
【0037】
例えば、2kHzの抽出率では、データを抽出および送信するために区間Tは500μsとなる。例えば、取得区間T2が20μsであり、転送区間T3が50μsである場合には、感知ブロック90または送信ブロック92が待機している各サイクルの間は430μsである。タイミング制御装置94では、感知ブロック90または送信ブロック92どちらかを選択的に電源をオフにするためにタイミング構想を用いている。すなわち、バッテリー寿命を延長させるために、待機電力を使用しないということである。
【0038】
このような電力節約タイミング構想を用いることによって生じるもう1つの利益とは、すなわち、ノイズの低減である。送信ブロック92が電力を供給されない間、感知ブロック90には電力が供給されるため、送信機36はシグナル調節によって発生したノイズに影響を受ける可能性が低い。反対に、感知回路(感知ブロック90)では、送信機36から発生するノイズの対象ではない。T3として示す10μs区間では、1つの区間の終わりと次の区間の始まりとの間に存在する区間であり、如何なる回路も必要な安定化を可能にする。
【0039】
したがって、主に送信ブロック92ではデータが集積できていないことからデータを送信することができないため、感知ブロック90が機能する間、電力を消費することになる。例えば、送信ブロック92において電力が必要でない間、電源が切られているのであれば、電力は消費されず、保存されることになる。同様に、主に感知ブロック90では送信機36が以前抽出したものを送信している間、如何なるデータも追加することがなく、その間電力を消費する必要がない。
【0040】
図9は、サイクルTの全区間において、システム10によって行なわれる工程と、それに続く受信装置26による処理工程の一実施形態を示すフローチャートである。感知ブロック90では、電源が測定装置67、68、および69に電力を供給し、また、測定値を求めることができるようにする電力を供給する。次に、これらの側定値を増幅し、抽出および保持する。その後、これらの工程間の時間差が上述したT3として示す区間にあるとき、感知ブロック90では電力を“オフ”にして、送信ブロック92では電力を“オン”にする。一度、送信ブロック92が電力を供給されれば、抽出および保持部112〜116に貯蔵されるシグナルを取得することが可能となり、これら送信シグナルを組み合わせることもできる。本実施形態において、マルチプレクサ118は、特定の順次配列にシグナルを配列することによって操作することが好ましく、その配列とは、デマルチプレクサ122が受信側でシグナルを分離することを可能にするためのデマルチプレクサ122であることが知られている。
【0041】
マルチプレクサ118は、“組み合わされた”シグナルを受信装置26へ送信するためのアンテナ121を用いて、この“組み合わされた”シグナルをVCO120へと送信する。この時点で、測定サイクルは一通り行なわれており、シグナルを、さらに処理および/または出力するために受信装置26へ続けて送信する。その後、送信装置20は、必要または要望に応じてこのサイクルを繰り返してよい。
【0042】
受信装置26では、受信機40から“組み合わされた”シグナルを受信する。シグナルは、その構成要素の中に分離される場であるデマルチプレクサ122へ送信される。温度シグナル124および電圧シグナル126は、それぞれ出力することも可能であり、受信処理モジュール38によるさらなる処理をしてもよい。容積シグナル128は緩衝され、容積出力46において出力されてもよく、また、ECGシグナル142を抽出し、ECG出力を供給するために取得されてもよい。加工されていない容積シグナル128からのECGシグナル142の抽出は、これと関連する図7において示すブロック図に基づいて、後で詳細に説明する。
【0043】
上述したように、容積感知装置67を用いて得られた、伝導性または容積シグナル128は、ECGシグナル142を抽出するために用いられる。
【0044】
容積感知装置67の電極を用いて得られた伝導性シグナルは、LV16における血液の伝導値、システムまたは条件において発生されるノイズ、および周囲の構成要素として取得されるECGシグナル142とから構成される。上述したように、本実施形態において加工されていないシグナルは、例えば、如何なるシグナル調節も受けていない、組み合わされたアナログ波形として受信装置26へ集められ、送信される。組み合わされたシグナルが受信装置26によって受信されるとき、個々の圧力、容積、および温度シグナル(124、126、および128)は分離され、例えば、ECG処理ブロック130における工程において、容積シグナル128を様々な要素に分離し始める。
【0045】
伝導性の容積シグナル128は、電極60、62を用いて、心臓の尖端から頚動脈まで生成された電界の結果である。伝導性リングが心筋に接触するため、結果として生じた伝導性シグナルはECGシグナルも運ぶ。シグナル調節、および周囲のノイズとECGノイズとを除去するためのフィルタリングを用いるためには、通常の方法をもちいればよく、伝導性の容積シグナルを抽出するため構成される。本実施形態において、シグナル調節は、伝導性シグナルを抽出するためにECGシグナルのノイズを除去するだけでなく、当該シグナルの導電性部分を取り除くためにECGシグナル142だけを個別に調節するために用いてもよい。その結果、ECGシグナル142は、LV16に追加装置を導入せずに集積することができる。したがって、感知チップ22は1つの装置によって、より詳細な心臓病の評価を提供するために用いることができる。
【0046】
一旦、シグナルがECG処理ブロック130で取得されれば、受信処理モジュール38におけるA/Dコンバータ132は、加工されていないシグナルをデジタルシグナルへ変換し、ECGデジタルシグナルプロセッサ(DSP)および緩衝装置138のそれぞれへシグナルを送信する。一旦、それぞれのシグナルが処理されれば、それらは積算され、最終的にECGシグナル142が生成される。
【0047】
別の実施形態において、容積感知装置67は複数の内部電極リングを含んでおり、例えば、図10において示すように4つであってもよい。伝導性測定はLV16の全長に沿って送信することによって行なわれ、また各生物は異なるサイズの心臓12を有するため、最適な伝導性測定としては、多様な内部電極対を内蔵することが好ましい。図10は、図3において示したLV16を示す図である。この図では、破線によって示す、より小さな生物から得られたLV1016も同様に示す。電極164、166の対は、上述した内部電極対64,66と類似している。しかしながら、ここでは、感知チップ22は、電極対168,170、172,174、および176,178を含んでおり、これらは互いに徐々に近くなるように配置され、最も外側の電極対60,62の間に配置される。
【0048】
上述の実施形態において、電極リングとしては、送信リングとして選択的に操作する可能であればよいが、一般的に電極60は受信電極として維持されることがある。図10に示す実施形態において、電極170はLV1016のための送信電極として最適であるものが選択されていればよく、内部感知電極対は電極164および174を含んでいればよい。したがって、受信および感知電極の多様な構造は、例えば、LV16またはLV1016のような、LVのサイズに依存する最適な伝導性シグナル得るために選択的に選ぶことができる。
【0049】
したがって、システム10は心臓の心室、より好ましくはLV16における圧力および容積の両方を測定することによって、生物の心臓を観察することができる。圧力および容積の測定値は、1つの感知チップ22によって取得され、心臓を観察するために用いられる受信装置26へ無線で送信されるように送信装置20に伝えられる。また、システム10には、温度測定値を組み入れてもよく、容積および圧力測定値と共に送信することができる温度測定値は、心臓を観察するための更なるデータを提供する。また、システム10は、容積測定値からECGシグナルを抽出してもよい。これは、心臓の健康状態を判断するために用いることができる4つのシグナルまで観察することを可能にする。
【0050】
また、システム10は、コンパクト設計に加えて取得サイクル毎に必要とされる電力を削減し、送信装置20の使用可能な寿命を増加させるエネルギー節約タイミング構想を取り入れてもよい。
【0051】
本発明は、特定の実施形態に基づいて説明しているが、様々な変更は、本発明の特許請求の範囲における趣旨として、本発明の精神と範囲から逸脱することのない技術的分野に見られる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、無線心臓血管データ取得システムを示す図である。
【図2】図2は、図1のシステムを説明する概略図である。
【図3】図3は、図1において示す心臓部の拡大図である。
【図4a】図4aは、図2の圧力感知装置の一部を示す平面図である。
【図4b】図4bは、図4aに示す感知装置の線分B−Bにおける断面図である。
【図5】図5は、圧力感知装置の電気回路図である。
【図6】図6は、図2の送信処理モジュールの概略図である。
【図7】図7は、図2の受信処理モジュールの概略図である。
【図8】図8は、図6のタイミング制御装置のタイミング図である。
【図9】図9は、取得および送信サイクルを示すフローチャートである。
【図10】図10は、図3に示す感知チップにおける別の実施形態を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物の心臓を観察する方法であって、
上記心臓の心室内に、圧力感知装置および容積感知装置を含んでいる感知チップを配置する工程と、
上記圧力感知装置および上記容積感知装置を用いて、上記心室内の圧力測定値および容積測定値をそれぞれ求める工程と、
上記測定値を送信装置へ伝える工程と、
上記心臓を観察するために用いられている、上記測定値の電気的表現を無線で受信装置へ送信する工程と、を含む方法。
【請求項2】
上記送信装置は、上記心臓の外側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記心臓の健康状態を示すデータを生成するために、上記電気的表現を分析する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記データは上記電気的表現に基づいて算出された指数であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
上記データは上記受信器に表示されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
上記感知チップは、上記心室の長手方向軸の全長に沿って、実質的に伸びることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
上記圧力感知装置は、上記感知チップ上に配置されたピエゾ抵抗偏向センサを含んでおり、上記圧力測定値は上記センサの撓みによって感知されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
上記容積感知装置は、上記心室を介して電気的なシグナルを送信および受信する第1の電極対を備えており、上記第1の電極対は上記感知チップにおける反対側の端であり、上記圧力感知装置の側面に位置している装置であって、
内部電極対のうち少なくとも1つの電極は、上記容積測定値を得るための第1の電極対によって送信および受信上記電気的なシグナルを感知する電極であり、内部電極対のうち少なくとも1つの上記電極は、上記圧力感知装置の側面に位置し、上記第1の電極対の1つと、上記圧力感知装置との間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
上記送信装置は、上記生物の一部に埋め込まれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
上記電気的表現をコンピュータデバイスに送信する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
上記送信装置は、継続的な観察を可能にする供給エネルギーを得ることによって操作することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
温度感知装置を用いて内部温度測定値を得る工程と、上記温度測定値を上記送信装置へ伝える工程と、上記温度測定値の電気的表現を上記受信装置へ送信する工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
上記容積測定値の伝導性部分から、上記心電図測定値を含んでいる上記容積測定値のノイズ部分を分離するために上記容積測定値を調節することによって、上記容積測定値から心電図測定値を得る工程と、上記ノイズ部分から上記心電図測定値を抽出する工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
生物の心臓を観察するためのシステムであって、
圧力感知装置および容積感知装置を備え、上記心臓の心室内に配置されて心室中を伸びており、上記圧力感知装置は上記心室の圧力側定値を取得し、上記容積感知装置は上記心室の容積測定値を取得し、上記測定値を送信するように適応された感知チップと、
上記感知チップから上記測定値を受信し、当該測定値の電気的表現を無線で送信する送信装置と、
上記心臓を観察するために用いられる上記電気的表現を受信する受信装置と、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項15】
上記送信装置は、上記心臓の外側にあることを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
上記心臓の健康状態を示すデータを生成するために、上記電気的表現を分析する上記受信装置と接続する処理装置をさらに含むことを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
上記データは、上記電気的表現に基づいて上記処理装置によって算出された指数であることを特徴とする請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
上記受信装置は、上記データを表示するディスプレイを備えていることを特徴とする請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
上記感知チップは、上記心室の長手方向軸の全長に沿って伸びていることを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項20】
上記圧力感知装置は、上記感知チップ上に配置されるピエゾ抵抗偏向センサを含んでおり、上記圧力測定値は上記センサの撓みによって感知されていることを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項21】
上記容積感知装置は、上記心室を介して電気的なシグナルを送信および受信する第1の電極対を備えており、上記第1の電極対が上記感知チップにおける反対側の端であり、上記圧力感知装置の側面に位置している装置であって、少なくとも内部電極対の1つは、上記容積測定値を得る上記第1の電極対によって送信および受信される上記電気的なシグナルを感知しており、上記第1の電極対の1つは上記圧力感知装置の側面に位置し、上記第1の電極対の1つと上記圧力感知装置との間に配置されていることを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項22】
上記送信装置は、上記生物の一部に埋め込まれることを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項23】
上記生物はヒトであり、上記送信装置は鎖骨近傍に埋め込まれることを特徴とする請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
上記電気的表現をアナログ・デジタルからアナログに変換するために用いられるアナログ・デジタル変換器を備えていることを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項25】
上記受信装置から上記電気的表現を受信するコンピュータデバイスをさらに備えていることを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項26】
上記送信装置は、継続的な観察を可能にする供給エネルギーを得ることを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項27】
内部温度測定値を得る温度感知装置を備えており、上記温度測定値を上記送信装置へ伝え、上記温度測定値の電気的表現を上記受信装置へ送信していることを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項28】
上記処理装置は、上記伝導性シグナルの伝導性部分から心電図測定値を含んでいる上記伝導性シグナルのノイズ部分を分離するために上記容積測定値を調節し、上記ノイズ部分から上記心電図測定値を抽出することによって、上記容積測定値から上記心電図測定値を取得することを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項29】
心臓内の心電図シグナルを取得する方法であって、
生物における心室から、上記心室の容積を示す伝導性シグナルを測定する工程と、
上記伝導性シグナルの伝導性部分から上記心電図シグナルを含む上記伝導性シグナルのノイズ部分を分離するための上記伝導性シグナルを調節する工程と、
上記ノイズ部分から上記心電図シグナルを抽出する工程と、を含むことを特徴とする方法。
【請求項1】
生物の心臓を観察する方法であって、
上記心臓の心室内に、圧力感知装置および容積感知装置を含んでいる感知チップを配置する工程と、
上記圧力感知装置および上記容積感知装置を用いて、上記心室内の圧力測定値および容積測定値をそれぞれ求める工程と、
上記測定値を送信装置へ伝える工程と、
上記心臓を観察するために用いられている、上記測定値の電気的表現を無線で受信装置へ送信する工程と、を含む方法。
【請求項2】
上記送信装置は、上記心臓の外側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記心臓の健康状態を示すデータを生成するために、上記電気的表現を分析する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記データは上記電気的表現に基づいて算出された指数であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
上記データは上記受信器に表示されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
上記感知チップは、上記心室の長手方向軸の全長に沿って、実質的に伸びることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
上記圧力感知装置は、上記感知チップ上に配置されたピエゾ抵抗偏向センサを含んでおり、上記圧力測定値は上記センサの撓みによって感知されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
上記容積感知装置は、上記心室を介して電気的なシグナルを送信および受信する第1の電極対を備えており、上記第1の電極対は上記感知チップにおける反対側の端であり、上記圧力感知装置の側面に位置している装置であって、
内部電極対のうち少なくとも1つの電極は、上記容積測定値を得るための第1の電極対によって送信および受信上記電気的なシグナルを感知する電極であり、内部電極対のうち少なくとも1つの上記電極は、上記圧力感知装置の側面に位置し、上記第1の電極対の1つと、上記圧力感知装置との間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
上記送信装置は、上記生物の一部に埋め込まれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
上記電気的表現をコンピュータデバイスに送信する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
上記送信装置は、継続的な観察を可能にする供給エネルギーを得ることによって操作することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
温度感知装置を用いて内部温度測定値を得る工程と、上記温度測定値を上記送信装置へ伝える工程と、上記温度測定値の電気的表現を上記受信装置へ送信する工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
上記容積測定値の伝導性部分から、上記心電図測定値を含んでいる上記容積測定値のノイズ部分を分離するために上記容積測定値を調節することによって、上記容積測定値から心電図測定値を得る工程と、上記ノイズ部分から上記心電図測定値を抽出する工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
生物の心臓を観察するためのシステムであって、
圧力感知装置および容積感知装置を備え、上記心臓の心室内に配置されて心室中を伸びており、上記圧力感知装置は上記心室の圧力側定値を取得し、上記容積感知装置は上記心室の容積測定値を取得し、上記測定値を送信するように適応された感知チップと、
上記感知チップから上記測定値を受信し、当該測定値の電気的表現を無線で送信する送信装置と、
上記心臓を観察するために用いられる上記電気的表現を受信する受信装置と、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項15】
上記送信装置は、上記心臓の外側にあることを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
上記心臓の健康状態を示すデータを生成するために、上記電気的表現を分析する上記受信装置と接続する処理装置をさらに含むことを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
上記データは、上記電気的表現に基づいて上記処理装置によって算出された指数であることを特徴とする請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
上記受信装置は、上記データを表示するディスプレイを備えていることを特徴とする請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
上記感知チップは、上記心室の長手方向軸の全長に沿って伸びていることを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項20】
上記圧力感知装置は、上記感知チップ上に配置されるピエゾ抵抗偏向センサを含んでおり、上記圧力測定値は上記センサの撓みによって感知されていることを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項21】
上記容積感知装置は、上記心室を介して電気的なシグナルを送信および受信する第1の電極対を備えており、上記第1の電極対が上記感知チップにおける反対側の端であり、上記圧力感知装置の側面に位置している装置であって、少なくとも内部電極対の1つは、上記容積測定値を得る上記第1の電極対によって送信および受信される上記電気的なシグナルを感知しており、上記第1の電極対の1つは上記圧力感知装置の側面に位置し、上記第1の電極対の1つと上記圧力感知装置との間に配置されていることを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項22】
上記送信装置は、上記生物の一部に埋め込まれることを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項23】
上記生物はヒトであり、上記送信装置は鎖骨近傍に埋め込まれることを特徴とする請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
上記電気的表現をアナログ・デジタルからアナログに変換するために用いられるアナログ・デジタル変換器を備えていることを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項25】
上記受信装置から上記電気的表現を受信するコンピュータデバイスをさらに備えていることを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項26】
上記送信装置は、継続的な観察を可能にする供給エネルギーを得ることを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項27】
内部温度測定値を得る温度感知装置を備えており、上記温度測定値を上記送信装置へ伝え、上記温度測定値の電気的表現を上記受信装置へ送信していることを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項28】
上記処理装置は、上記伝導性シグナルの伝導性部分から心電図測定値を含んでいる上記伝導性シグナルのノイズ部分を分離するために上記容積測定値を調節し、上記ノイズ部分から上記心電図測定値を抽出することによって、上記容積測定値から上記心電図測定値を取得することを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項29】
心臓内の心電図シグナルを取得する方法であって、
生物における心室から、上記心室の容積を示す伝導性シグナルを測定する工程と、
上記伝導性シグナルの伝導性部分から上記心電図シグナルを含む上記伝導性シグナルのノイズ部分を分離するための上記伝導性シグナルを調節する工程と、
上記ノイズ部分から上記心電図シグナルを抽出する工程と、を含むことを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2009−504357(P2009−504357A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527278(P2008−527278)
【出願日】平成18年8月18日(2006.8.18)
【国際出願番号】PCT/CA2006/001358
【国際公開番号】WO2007/022620
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(508054806)サイセンス インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】SCISENSE INC.
【住所又は居所原語表記】Unit 3,3397 White Oak Road,London,Ontario N6E 3A1,Canada
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月18日(2006.8.18)
【国際出願番号】PCT/CA2006/001358
【国際公開番号】WO2007/022620
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(508054806)サイセンス インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】SCISENSE INC.
【住所又は居所原語表記】Unit 3,3397 White Oak Road,London,Ontario N6E 3A1,Canada
【Fターム(参考)】
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