説明

埋設用発熱体およびアスファルト舗装構造

【課題】 充分な耐荷重を有するとともに、軽量で熱効率のよい埋設用発熱体及びアスファルト舗装構造を提供すること。
【解決手段】 導電性繊維から成る織布の経糸或いは緯糸に電極を設置して発熱体として用いる線面発熱体と、前記線面発熱体の周囲を覆う軟質シート層と、前記軟質シート層の周囲を覆いアスファルト成分の侵入を防止するアスファルト遮蔽シート層と、前記アスファルト遮蔽シート層の周囲を覆うアスファルトを含むシート層と、前記アスファルトを含むシート層の下に、平均粒子径が10〜100μmの略球形の中空ビーズ及び平均粒子径が5〜30μmの略球形の中実ビーズが分散した液体を布帛に塗布、乾燥してなる断熱部材層を備えたので、施工時に充分な耐荷重を有するとともに、軽量で作業性、熱伝導性に優れ熱効率よく融雪する事のできる埋設用発熱体を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装された歩道、車道等の路面あるいは駐車場、玄関先ポーチ等の舗装面への積雪を融雪するための埋設用発熱体および、この埋設用発熱体を埋設してなるアスファルト舗装構造に関するものである。
【技術背景】
【0002】
一般に、積雪寒冷地では、冬季の凍結抑制や道路の融雪、消雪が大きな課題となっている。また、道路等の融雪手段として、発熱体を路面内に埋設することが広く知られている。埋設される発熱体としては、温水を流すパイプ体、電熱線、フィルム状発熱体などが知られている(例えば、特公昭54−16653号公報、特開昭50−8340号公報、特開平5−331804号公報など)。
【特許文献1】特公昭54−16653号公報
【特許文献2】特開昭50−8340号公報
【特許文献3】特開平5−331804号公報
【特許文献4】特開平2−115404号公報
【特許文献5】特開平7−189209号公報
【特許文献6】特開平11−166202号公報
【特許文献7】特開平6−180004号公報
【特許文献8】特開平6−57718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
また、アスファルト舗装等を行う場合、発熱体を下地層上に配列した後、その上に車輌(フィニッシャー)を使用してアスファルトを敷きならし、転圧する方法が一般的に行なわれており、高温のアスファルト混合物を荷重や圧力をかけて敷きならしている。従って、前記の発熱体をアスファルト舗装体内に埋設する場合において、例えば、温水を流すパイプ体を埋設する発熱体として使用した場合、施工時の作業車輌の荷重や圧力のため、パイプに亀裂が入ったり、電熱線或いはフィルム状発熱体を発熱体として使用した場合には、電熱線の断線やフィルム状発熱体の亀裂により能力が失われたり、能力が低下するという問題点があった。
【0004】
このような問題点の解決策として、発熱体の補強効果のある金属板や金網を発熱体と一体化した後埋設する方法(特開平2−115404号公報、特開平7−189209号公報)や、発熱体をあらかじめ樹脂で固定あるいは樹脂板中に埋め込み、発熱体成形品としたものを埋設する方法(特開平11−166202号公報、特開平6−180004号公報等)が提案されている。
しかし、金属板や金網を使用する方法は、発熱体の全体重量が重くなるため工事が不便であり、樹脂に固定あるいは埋め込み板状にする方法では、十分な耐荷重性をもたせるためには樹脂板が厚くなりすぎるとともに、熱伝導効率が悪くなり、大きな熱量を要する融雪用としては不十分であった。
【0005】
一方、フィルム状、あるいはシート状の発熱体や発熱パイプ、電熱線をアスファルトシートに挟んで、強度を持たせる方法も提案されている(例えば、特開平6−57718号公報)。
これらの方法では、アスファルト混合物を路面上に施工する際の熱によってシート状の発熱体が劣化する可能性があり、発熱パイプや電熱線の場合は亀裂の発生や断線の虞れがあるため信頼性が劣っていた。
【0006】
また、道路融雪用発熱体を路面に埋設する場合、発熱体を下地層に配列した後、その上に車輌(フィニッシャー)によりアスファルト混合物を敷き均らし、転圧する方法が一般的に行なわれている。ところが、この場合、発熱体の上に直接、道路舗装用の機材及び作業員が乗り、施工を行なうことが必要であり、この施工の際に、ヒーターの位置や配列がずれたり、或いは舗装用車輌のタイヤ、キャタピラーにヒーターが巻き込まれたり、破損したりするという問題が存在した。
また、道路等に発熱体を埋設して使用するために熱効率の向上が要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、導電性繊維から成る織布の経糸或いは緯糸に電極を設置して発熱体として用いる線面発熱体と、前記線面発熱体の周囲を覆う軟質シート層と、前記軟質シート層の周囲を覆いアスファルト成分の侵入を防止するアスファルト遮蔽シート層と、前記アスファルト遮蔽シート層の周囲を覆うアスファルトを含むシート層と、前記アスファルトを含むシート層の下に、平均粒子径が10〜100μmの略球形の中空ビーズ及び平均粒子径が5〜30μmの略球形の中実ビーズが分散した液体を布帛に塗布、乾燥してなる断熱部材層と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明のアスファルト舗装構造は、路盤上に設置された下地アスファルト層と、平均粒子径が10〜100μmの略球形の中空ビーズ及び平均粒子径が5〜30μmの略球形の中実ビーズが分散した液体を布帛に塗布、乾燥してなる断熱部材層と、前記断熱部材層の上に設置されたアスファルトを含むシート層と、前記アスファルトを含むシート層の上に設置されたアスファルト成分の侵入を防止するアスファルト遮蔽シート層と、前記アスファルト遮蔽シート層の上に設置された軟質シート層と、前記軟質シート層の上に設置された導電性繊維から成る織布の経糸或いは緯糸に電極を設けて発熱体として用いる線面発熱体と、前記線面発熱体の上に設置された軟質シート層と、前記軟質シート層の上に設置されたアスファルト遮蔽シート層と、前記アスファルト遮蔽シート層の上に設置されたアスファルトを含むシート層と、前記アスファルトを含むシート層の上に設置された表面アスファルト層とから構成し、前記線面発熱体に通電することにより路面の融雪、凍結防止を行うことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明は、前記表面アスファルト層の表面近傍に硬質人工骨材を配設したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記表面アスファルト層中の硬質人工骨材は、1kg/m2〜10kg/m2であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明は前記した構成からなるので、以下に説明するような効果を奏することができる。
【0012】
本発明は、導電性繊維から成る織布の経糸或いは緯糸に電極を設置して発熱体として用いる線面発熱体と、前記線面発熱体の周囲を覆う軟質シート層と、前記軟質シート層の周囲を覆いアスファルト成分の侵入を防止するアスファルト遮蔽シート層と、前記アスファルト遮蔽シート層の周囲を覆うアスファルトを含むシート層と、前記アスファルトを含むシート層の下に、平均粒子径が10〜100μmの略球形の中空ビーズ及び平均粒子径が5〜30μmの略球形の中実ビーズが分散した液体を布帛に塗布、乾燥してなる断熱部材層と、を備えたので、施工時の工事車輌による荷重で線面発熱体が破損したり、配置ずれが生じる虞れがない。また、アスファルト混合物敷設時の熱に対する耐熱性が高く、線面発熱体の劣化を防止するとともに線面発熱体から上方向への熱効率を向上して、効率よく融雪処理を行う事ができる。
【0013】
また本発明のアスファルト舗装構造は、路盤上に設置された下地アスファルト層と、平均粒子径が10〜100μmの略球形の中空ビーズ及び平均粒子径が5〜30μmの略球形の中実ビーズが分散した液体を布帛に塗布、乾燥してなる断熱部材層と、前記断熱部材層の上に設置されたアスファルトを含むシート層と、前記アスファルトを含むシート層の上に設置されたアスファルト成分の侵入を防止するアスファルト遮蔽シート層と、前記アスファルト遮蔽シート層の上に設置された軟質シート層と、前記軟質シート層の上に設置された導電性繊維から成る織布の経糸或いは緯糸に電極を設けて発熱体として用いる線面発熱体と、前記線面発熱体の上に設置された軟質シート層と、前記軟質シート層の上に設置されたアスファルト遮蔽シート層と、前記アスファルト遮蔽シート層の上に設置されたアスファルトを含むシート層と、前記アスファルトを含むシート層の上に設置された表面アスファルト層とから構成し、前記線面発熱体に通電するので、施工時の工事車輌による荷重で線面発熱体が劣化したり、破損したり、配置ずれが生じる虞れがない。また、舗装用車輌のタイヤやキャタピラーに線面発熱体が巻き込まれたりすることもない。更に、アスファルト混合物敷設時の高熱に対する耐熱性が増すとともに、線面発熱体から上方向への熱効率を向上して、長期間安定した融雪能力を発揮することができる。
【0014】
また本発明のアスファルト舗装構造は、前記表面アスファルト層の表面近傍に硬質人工骨材を配設したので、線面発熱体から上方向への熱伝導率を高めるとともに遠赤外線放射率を増大できるので融雪効率を高めることができる。
【0015】
また本発明のアスファルト舗装構造は、前記表面アスファルト層中の硬質人工骨材は、1kg/m2〜10kg/m2であるので、硬質人工骨材からの遠赤外線放射量を増すとともに、アスファルト舗装面からの硬質人工骨材の脱離を防止することができ、効果的に融雪できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、線面発熱体をこの線面発熱体の周囲を覆う軟質シート層と軟質シート層の周囲を覆いアスファルト成分の侵入を防止するアスファルト遮蔽シート層とアスファルト遮蔽シート層の周囲を覆うアスファルトを含むシート層とにより被覆し、充分な耐荷重を有するとともに、軽量で作業性、熱伝導性に優れた埋設用発熱体を得ることができる。
【実施例1】
【0017】
以下、一実施の形態を示す図面に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は、本発明の埋設用発熱体の一実施例を示す断面図、図2は同埋設用発熱体に使用する線面発熱体を示す平面図である。ここで、埋設用発熱体10は、発熱体として線面発熱体11を使用している。線面発熱体11は、導電性塗料を繊維材料に塗布してなる導電性繊維材料を使用したもので、2つの電極13、14間に差し渡された導電性緯糸12と、電極13、14と略平行に延びる非導電性経糸15とした平織り状の織布を発熱体としたものである。電極13、14は、織布の左右両端に略平行に配設されており、給電端子13a、14aが接続されている。
【0018】
このように構成された線面発熱体11は、給電端子13a、14aに電流を供給することにより、各導電性緯糸12がそれぞれ電路を構成し発熱するので、線状型の発熱体としての性質と面状型の発熱体としての性質を併せ持っている。なお、以上の実施例では、緯糸12に導電性を有するものとし、経糸15を非導電性としたが、緯糸12を非導電性とし経糸15を導電性としてもよい。このように構成する場合は、電極を線面発熱体11の上下に緯糸12と平行に配設する。
【0019】
また、埋設用発熱体10は、線面発熱体11の周囲を絶縁のための外皮として、軟質シート層16で覆われている。軟質シート層16は、塩化ビニール、軟質ポリオレフィン、ポリウレタン等からなるもので、好ましくは硬度が20〜90(ショアA)のシート層である。なお、シート層の硬度が低すぎると、強度が不足し機械的な変形により抵抗値が変化し易くなる。また、硬度が高すぎると成形品の製造時や施工時の荷重で亀裂が入り易くなると云う欠点が有る。
【0020】
また、埋設用発熱体10の軟質シート層16の周囲は、アスファルト成分の侵入を防止するアスファルト遮蔽シート層17が覆うとともに、アスファルト遮蔽シート層17の周囲は、アスファルトをポリエステル不織布に含浸させたアスファルトを含むシート層18が覆っている。本実施例で用いるアスファルト遮蔽シート層17は、ポリエステル等の極性基を持つポリマーからなるシート層である。また、線面発熱体11と前記アスファルトを含むシート層18が直接接触した場合および、軟質シート層16を介した場合でもアスファルト中の低分子量物質により、線面発熱体11の抵抗値が変化し易くなるため、アスファルト遮蔽シート層17は必要である。また、アスファルト遮蔽シート層17の厚さは、5〜150μmが最適である。厚さが、5μm未満では線面発熱体11と組み合わせる際に皺が発生し易く、150μmを超えると巻き取り作業が困難になる等の取り扱い性が低下するからである。
【0021】
本発明で用いるアスファルトを含浸したシート層18は、ポリエステル等で作られた不織布に、アスファルトを含浸したものである。アスファルト成分としては、アスファルトの他に、合成ゴム、液状ゴム、熱可塑性樹脂、砂、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスバルーン等の充填剤を添加したものであってもよい。また、アスファルトを含浸したシート層(アスファルト含浸シート状成形品)18の厚さは、通常、1〜10mm、好ましくは2〜5mmである。
【0022】
前記アスファルトを含むシート層18の下に、平均粒子径が10〜100μmの略球形の中空ビーズ及び平均粒子径が5〜30μmの略球形の中実ビーズが分散した液体を布帛に塗布、乾燥してなる断熱部材層19が配設されている。この断熱部材層19は、平均粒子径が10〜100μmの略球形のセラミック等から成る中空ビーズ及び平均粒子径が5〜30μmの略球形のやはりセラミック等から成る中実ビーズが均一に分散された液体、例えば、株式会社日進産業製のシスタコート(商品名)を布帛である天然繊維、或いは人造繊維からなる織布、または不織布に塗布した後、乾燥させて製造する。布帛は、2〜10mm程度の厚さで柔軟性を有している。
【0023】
本発明で用いる線面発熱体11の製造方法としては、発熱体に、軟質シート層16、アスファルト遮蔽シート層17、アスファルトを含むシート層18を順に張り合わせて製造しても良いしまた、軟質シート層16とアスファルト遮蔽シート層17を張り合わせたものと線面発熱体11を張り合わせた後、アスファルトを含むシート層18を貼り合わせて製造しても良い。
【0024】
また、本発明においては、埋設用発熱体10がそれ自体に折れ曲がり難いという特徴を有しているため、埋設用発熱体10を下地等の施工面へ設置する際には、そのまま設置個所に置きそのうえに舗装することができる。このように、施工時に現場で発熱体への絶縁被覆を貼りつけたり、接着剤を塗布して固定する等の作業が不用なため、施工が容易であるという長所がある。
【実施例2】
【0025】
図3は、本発明の埋設用発熱体を使用したアスファルト舗装構造を示す縦断面図である。ここで、本発明のアスファルト舗装構造20は、先ず路盤上に下地アスファルト層21を施工し、この下地アスファルト層21の上に断熱部材層28を設置する。断熱部材層28は、平均粒子径が10〜100μmの略球形の中空ビーズ及び平均粒子径が5〜30μmの略球形の中実ビーズが分散した液体を布帛に塗布、乾燥して形成する。断熱部材層28の上にアスファルトを含むシート層22を設置する。アスファルトを含むシート層22とは、アスファルトをポリエステル製不織布に含浸させたものである。次に、アスファルトを含むシート層22の上にアスファルト成分の侵入を防止するためのアスファルト遮蔽シート層23を設置する。ここで使用するアスファルト遮蔽シート層23は、前述のようにポリエステル等の極性基を持つポリマーからなるシート層である。更に、アスファルト遮蔽シート層23の上に塩化ビニール、軟質ポリオレフィン、ポリウレタン等からなる軟質シート層24を設置する。
【0026】
次に、軟質シート層24の上に導電性繊維から成る織布を発熱体として用いる線面発熱体25を設置する。線面発熱体25の上には、軟質シート層24を設置し、その上のアスファルト遮蔽シート層23、アスファルトを含むシート層22の順に設置する。そして、最後に表面アスファルト層26を設置する。
【0027】
本発明のアスファルト舗装構造は、下地アスファルト層21の厚さは3cm以上が好ましい。また、表面アスファルト層26の厚さは3〜10cmである。3cm未満では施工時の荷重に耐えられず表面に凹凸が発生し易くなり、10cm以上では融雪効率が低下するからである。また、断熱部材層28の厚さは、2〜10mm程度である。
【0028】
なお、本発明のアスファルト舗装構造20において、下地アスファルト層21の上に実施例1で説明した埋設用発熱体10を設置し、その上に表面アスファルト層26を施工して構成してもよい。
【0029】
以上のように構成されたアスファルト舗装構造は、線面発熱体25に通電することにより路面の融雪、凍結防止を行うことができる。
【実施例3】
【0030】
図4は、本発明の埋設用発熱体を使用したアスファルト舗装構造の別の実施例を示す縦断面図である。この実施例においては、路盤上に設置された下地アスファルト層21と、この下地アスファルト層21の上に設置されたアスファルトを含むシート層22と、前記アスファルトを含むシート層22の上に設置された平均粒子径が10〜100μmの略球形の中空ビーズ及び平均粒子径が5〜30μmの略球形の中実ビーズが分散した液体を布帛に塗布、乾燥してなる断熱部材層28と、前記断熱部材層28の上に設置されたアスファルト成分の侵入を防止するアスファルト遮蔽シート層23と、前記アスファルト遮蔽シート層23の上に設置された軟質シート層24と、前記軟質シート層24の上に設置された導電性繊維から成る織布の経糸或いは緯糸に電極を設けて発熱体として用いる線面発熱体25と、前記線面発熱体25の上に設置された軟質シート層24と、前記軟質シート層24の上に設置されたアスファルト遮蔽シート層23と、前記アスファルト遮蔽シート層23の上に設置されたアスファルトを含むシート層22と、前記アスファルトを含むシート層22の上に設置された表面アスファルト層26とから構成されている。
【0031】
以上のように構成されたアスファルト舗装構造においても、線面発熱体25に通電することにより路面の融雪、凍結防止を効果的に行うことができる。
【実施例4】
【0032】
図5は、本発明のアスファルト舗装構造の別の実施例を示す縦断面図である。本実施例のアスファルト舗装構造では、下地としてアスファルト層21を設け、その上に埋設用発熱体10を設置し、さらに表層のアスファルト層26が設けられるとともに、表面アスファルト層26に硬質人工骨材27を含有させている。ここで使用する硬質人工骨材27としては、フライアッシュを焼結したもの、石炭灰とケツガン等の硬質堆積粘土岩の粉末を焼結したもの、スラグを焼結したもの、ムライト、炭化珪素等のセラミックス等であり、所定の大きさに粉砕してなるものである。また、硬質人工骨材として、硬質スピネル骨材(商品名:セラクロン)を使用することもできる。更に、硬質人工骨材27の含有量は、1平方メートル当り1kg〜10kgである。1kg未満では効果が得にくく、また10kgを超えると硬質人工骨材27がアスファルト舗装面から脱離しやすくなる。硬質人工骨材は27は、不定形であり、1個の大きさは、最も長い部分が2.5mm〜25mmの砕石状が最適である。
【0033】
従来の融雪用の発熱体を埋設したアスファルト舗装の場合、内部の発熱体に局部的な圧力が加わるのを避けるために人工骨材は使用しない工法が一般的である。しかし、融雪効果を高めるためにはアスファルト表面の温度を短い時間で高くすることが有効である。本発明では、発熱体として線面発熱体25を用い、さらにアスファルトを含むシート層22で被覆されているため、局部的な圧力にも特性が変化し難い。そのため、表面アスファルト層26に硬質人工骨材27を含有させることで、熱伝導率を高めるとともに遠赤外線放射率を大きくすることで、融雪効率を高めることができる。本発明で用いる硬質人工骨材27は、遠赤外線放射率が大きく、光や熱を受けると放射熱が発生し、路面の凍結融解に大きく寄与する。したがって、交通走行に対して安全性を保持することになり、走行安全性の向上が期待できる。
【0034】
本発明のアスファルト舗装構造は、前述の様に下地アスファルト層21の厚さは3cm以上が好ましい。表面アスファルト層26の厚さは3〜10cmである。3cm未満では施工時の荷重に耐えられず表面に凹凸が発生し易くなり、10cm以上では融雪効率が低下するからである。
【0035】
本発明のアスファルト舗装構造は、通常の道路舗装工事方法であるアスファルト乳剤を散布し、所定の位置に埋設用発熱体10を設置し、表層用アスファルト混合物を敷き均し、硬質人工骨材27を散布し、ロードローラー、振動ローラー、タイヤローラー等により締固めを行なう方法を用いて平滑に仕上げ、所定の密度を得る。
【実施例5】
【0036】
線面発熱体11として、ポリエステル繊維に導電性塗料を塗布した導電性糸を緯糸12とし、電極13、14と略平行に延びる非導電性糸を経糸15とした織布で、電極線の間隔を84cm、発熱体の長さ250cm、200W/平方メートルの線面発熱体を作製した。この時の抵抗値は、95.0Ωであった。上記、線面発熱体11を用いて、厚さ0.3mm、硬度45(ショアA)の塩化ビニールシートと厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートシート、および厚さ2.5mmのアスファルトシートを用いてこの順で両面を被覆した発熱体成形品を作製した。上記発熱体成形品の電極線に電気ケーブルを接合した。この時の抵抗値は、95.2Ωであった。
【0037】
この発熱体成形品を下地アスファルト層21の上に設置した後、180℃のアスファルト混合物を厚さ5cmになるように施工して、表面アスファルト層26とした。このとき、線面発熱体25の温度は最高で130℃になった。外気温まで放冷した後、抵抗値を測定したところ、95.5Ωであった。また、アスファルト施工時に略表面を平滑に仕上げた後、1平米あたり5kgの硬質人工骨材27を撒き、その後表面を平滑に均した。200Vの電圧を印加して、発熱挙動を観察した。外気温5℃において、表面温度は2時間後に20℃であった。降雪量2cm/時、風速2m/秒、外気温−5℃の状態で、積雪開始後に200Vを通電し、融雪効果を確認したところ、30分後には完全に融雪しており、積雪は観測されなかった。
この、実施例5において、ポリエチレンテレフタレートシートを使用しないで同様の発熱体成形品を作製し、同様の施工を行った。施工後の抵抗値は98Ωであった。また、90日後の抵抗値は110Ωであった。
[比較例1]
【0038】
本発明において、断熱部材層19を設置した場合と断熱部材層を設置しない場合について比較した。実験方法は、300×300×60mmのコンクリートの上に埋設用発熱体10を置き、埋設用発熱体10の上部に熱電対を設置した。更に熱電対の上に300×300×30mmの発泡ウレタンシートを置いた。発熱体に100Vの電圧を印加し、埋設用発熱体10上部の発熱温度を測定した。次に、断熱部材層19を除いて、同様な試験を行い、両者を比較した。実験結果は、図6に示すように30分後に、埋設用発熱体10上部の温度で約4℃の差が現れた。このように、断熱部材層19を発熱体の下に敷設することにより、コンクリート側への熱の漏洩を防止し、発熱体上部へ効率よく熱を導き、効果的な融雪が可能となる。
【0039】
以上の説明では道路に施工する場合について説明したが、道路の融雪や駐車場の融雪等のほか、屋根の融雪やプラットホームなどにも本発明を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、本発明の埋設用発熱体の一実施例を示す縦断面図である。
【図2】図2は、同埋設用発熱体に使用する線面発熱体を示す平面図である。
【図3】図3は、同埋設用発熱体を使用したアスファルト舗装構造を示す縦断面図である。
【図4】図4は、同埋設用発熱体を使用したアスファルト舗装構造の別の実施例を示す縦断面図である。
【図5】図5は、同アスファルト舗装構造の別の実施例を示す縦断面図である。
【図6】図6は、断熱部材層を設置した場合と設置しない場合の発熱温度と時間との関係を示すものである。
【符号の説明】
【0041】
10 埋設用発熱体
11 線面発熱体
12 導電性緯糸
13、14 電極
13a、14a 給電端子
15 非導電性経糸
16 軟質シート層
17 アスファルト遮蔽シート層
18 アスファルトを含むシート層
19 断熱部材層
20 アスファルト舗装構造
21 下地アスファルト層
22 アスファルトを含むシート層
23 アスファルト遮蔽シート層
24 軟質シート層
25 線面発熱体
26 表面アスファルト層
27 硬質人工骨材
28 断熱部材層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性繊維から成る織布の経糸或いは緯糸に電極を設置して発熱体として用いる線面発熱体と、前記線面発熱体の周囲を覆う軟質シート層と、前記軟質シート層の周囲を覆いアスファルト成分の侵入を防止するアスファルト遮蔽シート層と、前記アスファルト遮蔽シート層の周囲を覆うアスファルトを含むシート層と、 前記アスファルトを含むシート層の下に、平均粒子径が10〜100μmの略球形の中空ビーズ及び平均粒子径が5〜30μmの略球形の中実ビーズが分散した液体を布帛に塗布、乾燥してなる断熱部材層と、を備えたことを特徴とする埋設用発熱体。
【請求項2】
路盤上に設置された下地アスファルト層と、平均粒子径が10〜100μmの略球形の中空ビーズ及び平均粒子径が5〜30μmの略球形の中実ビーズが分散した液体を布帛に塗布、乾燥してなる断熱部材層と、前記断熱部材層の上に設置されたアスファルトを含むシート層と、前記アスファルトを含むシート層の上に設置されたアスファルト成分の侵入を防止するアスファルト遮蔽シート層と、前記アスファルト遮蔽シート層の上に設置された軟質シート層と、前記軟質シート層の上に設置された導電性繊維から成る織布の経糸或いは緯糸に電極を設けて発熱体として用いる線面発熱体と、前記線面発熱体の上に設置された軟質シート層と、前記軟質シート層の上に設置されたアスファルト遮蔽シート層と、前記アスファルト遮蔽シート層の上に設置されたアスファルトを含むシート層と、前記アスファルトを含むシート層の上に設置された表面アスファルト層とから構成し、前記線面発熱体に通電することにより路面の融雪、凍結防止を行うことを特徴とするアスファルト舗装構造。
【請求項3】
路盤上に設置された下地アスファルト層と、
前記下地アスファルト層の上に設置されたアスファルトを含むシート層と、
前記アスファルトを含むシート層の上に設置された平均粒子径が10〜100μmの略球形の中空ビーズ及び平均粒子径が5〜30μmの略球形の中実ビーズが分散した液体を布帛に塗布、乾燥してなる断熱部材層と、
前記断熱部材層の上に設置されたアスファルト成分の侵入を防止するアスファルト遮蔽シート層と、
前記アスファルト遮蔽シート層の上に設置された軟質シート層と、
前記軟質シート層の上に設置された導電性繊維から成る織布の経糸或いは緯糸に電極を設けて発熱体として用いる線面発熱体と、前記線面発熱体の上に設置された軟質シート層と、前記軟質シート層の上に設置されたアスファルト遮蔽シート層と、前記アスファルト遮蔽シート層の上に設置されたアスファルトを含むシート層と、前記アスファルトを含むシート層の上に設置された表面アスファルト層とから構成し、前記線面発熱体に通電することにより路面の融雪、凍結防止を行うことを特徴とするアスファルト舗装構造。
【請求項4】
前記表面アスファルト層の表面近傍に硬質人工骨材を配設したことを特徴とする請求項2または3に記載のアスファルト舗装構造。
【請求項5】
前記表面アスファルト層中の硬質人工骨材は、1kg/m2〜10kg/m2であることを特徴とする請求項4に記載のアスファルト舗装構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−328747(P2006−328747A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−152344(P2005−152344)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000201515)前田道路株式会社 (61)
【出願人】(000108214)ゼオン化成株式会社 (10)
【Fターム(参考)】