基地局選択方法、および、移動局測位システム
【課題】妨害波源による影響の小さい無線局を選択する無線局選択方法、無線局選択方法により選択される測位基地局を用いて移動局の位置を算出する移動局測位システムを提供する
【解決手段】複数の基地局12から基地局対が選択され、選択された基地局対について、通信品質指標測定部40により、一方から所定の出力により送信される電波を他方で受信した際の該他方において受信した電波の品質に関連する通信品質指標が測定されるとともに、該他方から所定の出力により送信される電波を該一方で受信した際の、該一方における通信品質指標受信強度が測定される。評価部44により、一方における受信強度および他方における受信強度に基づいて、基地局対を構成する基地局が妨害波による影響の小ささにより評価され、前記測位基地局選択部46により、前記評価部44により妨害波による影響が小さいと評価された順に前記基地局12が選択される。
【解決手段】複数の基地局12から基地局対が選択され、選択された基地局対について、通信品質指標測定部40により、一方から所定の出力により送信される電波を他方で受信した際の該他方において受信した電波の品質に関連する通信品質指標が測定されるとともに、該他方から所定の出力により送信される電波を該一方で受信した際の、該一方における通信品質指標受信強度が測定される。評価部44により、一方における受信強度および他方における受信強度に基づいて、基地局対を構成する基地局が妨害波による影響の小ささにより評価され、前記測位基地局選択部46により、前記評価部44により妨害波による影響が小さいと評価された順に前記基地局12が選択される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相互に無線通信可能な複数の無線局から、妨害波による影響の小さい無線局を選択するための無線局選択方法、および、移動局と複数の基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、受信結果に基づいて該移動局の位置を算出する移動局測位システムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動局と複数の基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、受信結果に基づいて該移動局の位置を算出する移動局測位システムが知られている。
【0003】
このような測位システムにおいては、移動局と複数の基地局との間における無線通信の結果が用いられるが、移動局の位置の算出(測位)に必要となる数を上回る基地局が存在する場合においては、移動局と何れの基地局との無線通信の結果を用いるかを選択することができる。かかる場合には、選択した通信結果、すなわち移動局といずれの基地局との通信結果を用いるかによって、測位の精度が左右される。特に、基地局の周囲に妨害波を発生する妨害波源が存在する場合には、基地局において送受信する電波が前記妨害波と干渉されることにより、移動局と複数の基地局との間における無線通信の結果が誤差を含むものとなる可能性があり、その受信結果を用いた測位の結果は精度が悪化するおそれがあった。
【0004】
このように、妨害波源が存在する場合には、妨害波の影響が小さい基地局を選択して移動局の測位を行なうことが、精度のよい測位のために望ましい。特許文献1には、妨害電波の発生源を効率的に特定することのできる位置特定方法が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−142750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、妨害波源による影響の小さい無線局を選択する無線局選択方法、およびその基地局選択方法により選択される測位基地局を用いて移動局の位置を算出する移動局測位システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するための請求項1にかかる発明は、(a)相互に無線通信可能な複数の無線局から、妨害波による影響の小さい無線局を選択するための無線局選択方法であって、(b)前記複数の無線局から一または複数の無線局対を選択し、該無線局対のそれぞれについて、一方から所定の出力により送信される電波を他方で受信し、該他方における受信した電波の品質に関連する指標である通信品質指標を測定するとともに、該他方から所定の出力により送信される電波を該一方で受信し、該一方における通信品質指標を測定する通信品質指標測定工程と、(c)該通信品質指標測定工程によって前記無線局対ごとに測定される前記一方における通信品質指標および前記他方における通信品質指標に基づいて、前記一または複数の無線局対を構成する無線局を妨害波による影響の小ささにより評価する評価工程と、(d)該評価工程により妨害波による影響が小さいと評価された順に前記無線局を選択する選択工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、請求項4にかかる発明は、(a)移動局と複数の基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、受信結果に基づいて該移動局の位置を算出する移動局測位システムであって、(b)該複数の基地局はそれぞれ、所定の出力により電波を送信可能な送信部と、電波を受信する受信部と、該受信部により受信された電波の品質に関連する指標である通信品質指標を測定する通信品質指標測定部とを有し、(c)請求項1乃至3のいずれか1に記載の無線局選択方法により、前記複数の基地局から妨害波による影響が小さいと評価された順に所定数の前記測位基地局を選択する測位基地局選択部と、(d)該測位基地局選択部により選択される測位基地局と、前記移動局とのいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、受信結果に基づいて前記移動局の位置を算出する移動局位置算出部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1にかかる無線局選択方法によれば、前記通信品質指標相互測定工程により、前記複数の無線局から選択された無線局対のそれぞれについて、一方から所定の出力により送信される電波を他方で受信した際の、該他方における受信した電波の品質に関連する指標である通信品質指標が測定されるとともに、該他方から所定の出力により送信される電波を該一方で受信した際の、該一方における通信品質指標が測定され、前記評価工程により、前記通信品質指標相互測定工程によって前記無線局対ごとに測定される前記一方における通信品質指標および前記他方における通信品質指標に基づいて、前記一または複数の無線局対を構成する無線局が妨害波による影響の小ささにより評価され、前記選択工程により、前記評価工程により妨害波による影響が小さいと評価された順に前記無線局が選択されるので、前記複数の無線局から、前記無線局対ごとに測定される前記一方における通信品質指標および前記他方における通信品質指標に基づいて、妨害波による影響の小さい無線局を選択することができる。
【0010】
好適には、(a)前記通信品質指標相互測定工程は、前記通信品質指標として受信した電波の受信強度を測定するものであり、(b)前記評価工程は、前記無線局対を構成する2つの無線局のうち、より小さな受信強度が得られた無線局が、より大きな受信強度が得られた無線局よりも妨害波による影響が小さいと評価すること、を特徴とする。このようにすれば、前記受信強度の大きさは妨害波の影響を受けることによって大きくなるので、通信品質指標相互測定工程によって測定される、前記無線局対を構成する2つの無線局のそれぞれにおける受信強度の値に基づいて、妨害波による影響の大きさを評価することができる。
【0011】
好適には、前記選択工程は、前記評価工程により妨害波による影響が等しいと評価された複数の無線局のうち、過去に選択された回数の多い無線局を選択することを特徴とする。このようにすれば、前記評価工程により妨害波による影響が等しいと評価された複数の無線局が存在する場合であっても、前記無線局対ごとに測定される前記一方における受信強度および前記他方における受信強度に基づいて、妨害波による影響の小さい無線局を選択することができる。
【0012】
また、請求項4にかかる移動局測位システムによれば、前記複数の基地局の有する前記送信部により所定の出力により電波が送信され、前記受信部により電波が受信され、前記通信品質指標測定部により、前記受信部によって受信された電波の品質に関連する指標である通信品質指標が測定される。また、前記測位基地局選択部により、前記複数の基地局から妨害波による影響が小さいと評価された順に所定数の前記測位基地局が選択され、前記移動局位置算出部により、該測位基地局選択部により選択される測位基地局と前記移動局とのいずれか一方から送信される電波を他方が受信した際の受信結果に基づいて、前記移動局の位置が算出されるので、妨害波による影響の小さい基地局として測位基地局を選択することができ、移動局の位置の算出を精度よく行なうことができる。
【0013】
好適には、前記測位基地局選択部は、妨害波による影響が等しいとされた複数の基地局のうち、前記移動局と該複数の基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信した際の、該他方における前記移動局と前記複数の基地局のそれぞれとの無線通信における通信品質指標に基づいて、前記移動局との通信がより良好に行なわれた基地局を選択すること、を特徴とする。このようにすれば、妨害波による影響が等しいとされた複数の基地局が存在する場合であっても、前記他方における受信結果に基づいて、妨害波による影響が少なく、また、移動局との通信が良好に行なわれる無線局を選択することができ、移動局の位置の算出を精度よく行なうことができる。
【0014】
さらに好適には、前記移動局測位システムは、前記移動局と前記複数の基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、前記移動局と前記複数の基地局のそれぞれとの無線通信における通信品質指標に基づいて前記移動局との通信が良好に行なわれると判断される前記基地局を選択する基地局予備選択部を有し、前記測位基地局選択部は、該基地局予備選択部によって選択された基地局から前記測位基地局を選択することを特徴とする。このようにすれば、妨害波による影響が少なく、また、移動局との通信が良好に行なわれる無線局を選択することができ、移動局の位置の算出を精度よく行なうことができる。また、移動局との通信が良好に行なわれる基地局を対象として測位基地局選択部による測位基地局の選択が行なわれるので、測位基地局の選択などに要する演算量を低減することができ、演算に要する時間や演算装置における消費電力の低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の移動局測位システム8の概要を表わす図である。図1において移動局測位システム8は、例えば図と平行な平面内を移動可能とされた移動局10と、その位置が既知とされた複数の基地局である、第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12C、第4基地局12D、第5基地局12E、第6基地局12F、第7基地局12G(以下、基地局のそれぞれを区別しない場合、「基地局12」という。)、およびこれら基地局12と例えば通信ケーブル18で接続されるなどにより情報通信可能とされたサーバ14を含んで構成されている。移動局測位システム8においては、移動局10の測位を行なうのに必要な最小の数を上回る数の基地局12が含まれている。なお、移動局測位システム8においては例えば図1に示すような座標が定義されることにより、移動局10、基地局12の位置などを表わすことができるようにされている。以下の説明においては、移動局10の座標を(x,y)、第1基地局12Aの座標を(xa,ya)、第2基地局12Bの座標を(xb,yb)、第3基地局12Cの座標を(xc,yc)、第4基地局12Dの座標を(xd,yd)、のように表わす。
【0017】
移動局10と基地局12とは相互に無線通信が可能とされている。また複数の基地局12のそれぞれも同様に相互に無線通信が可能とされている。例えば、移動局10および基地局12のそれぞれが送信する電波に含まれる識別符号(ID)や固有の拡散符号などにより、その電波を受信した場合に移動局10またはいずれの基地局12によって送信された電波であるかが識別可能とされている。また、共通する符号化および復号化の手順を有することにより、移動局10と基地局12との間、および複数の基地局12の相互間において情報の受け渡しが可能とされている。
【0018】
図2は、移動局10の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。図2に示すように、移動局10は電波を送受信するためのアンテナ22を有し、また、電波の送受信のための機能を有する無線部24と前記無線部24を制御するための制御部26とを機能的に有する。
【0019】
ここで、移動局10から送信される電波を受信する基地局12においては、移動局10から等しい距離にある基地局12は移動局10からの方向に関わらず等しい受信強度によりその電波を受信することが好ましく、従ってアンテナ22は指向性のないアンテナが好適に用いられる。
【0020】
無線部24は、移動局10における電波の送受信を行なうものであり、後述する制御部26により送信状態と受信状態とが切り換えられる。電波の送信時には、無線部24は制御部26によって指示される制御内容、すなわち信号波の内容、搬送波の周波数、送信出力などにより、前記アンテナ22により電波を送信する。このように、無線部24は、搬送波生成回路、変調機、送信アンプ等を含んで構成されている。また無線部24は、電波の受信時にはアンテナ22によって受信された電波を増幅し、所定の復調処理などを行なうことにより信号波を取り出す。すなわち、無線部24は、受信アンプ、復調機などをも含んで構成される。無線部24は、各基地局12に対し測位のための電波を送信する際には、予め定められた所定の送信出力により電波を送信するものとされている。
【0021】
制御部26は、移動局10の作動を制御するものであって、具体的には無線部24により受信された情報を処理したり、前記無線部24の作動、より具体的には送信出力や送信周波数などの制御や、無線により送信される信号波の生成などを行なう。制御部26は例えば既知のマイコンなどによって実装される。前記無線部24および制御部26などが送信機としての機能を有する。
【0022】
図3は基地局12の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。図3に示すように、基地局12は電波を送受信するためのアンテナ32を有している。また基地局12は、前記アンテナ32を介して電波の送受信を行なう無線部34、制御部36、測位情報測定部39、通信品質指標測定部40などを含んで構成されている。基地局12は例えば、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、これらの機能を行なうようにされている。さらに基地局12は通信インタフェース41などを備えて構成されている。
【0023】
アンテナ32は、前述の移動局10のアンテナ22と同様に、電波の送受信に用いられるものであって、好適には指向性のないアンテナが用いられる。無線部34は、前述の移動局10の無線部24と同様に、基地局12における電波の送受信を行なうものであり、後述する制御部36により送信状態と受信状態とが切り換えられる。電波の送信時には、無線部34は制御部36によって指示される制御内容、すなわち信号波の内容、搬送波の周波数、送信出力などにより、無線部34のそれぞれに対応するアンテナ32により電波を送信する。具体的には、無線部34は、移動局10に対しその作動を制御するための指令を送信したり、あるいは後述する基地局対を構成する基地局に対し電波を所定の出力により送信したりする。このように、無線部34は、搬送波生成回路、変調機、送信アンプ等を含んで構成されている。また無線部34は、電波の受信時にはアンテナ32によって受信された電波を増幅し、所定の復調処理などを行なうことにより信号波を取り出す。具体的には、基地局対を構成する他の基地局10から送信される電波や、測位対象である移動局10から送信される測位のための電波などが受信される。すなわち、無線部34は、受信アンプ、復調機などをも含んで構成される。無線部34は送信部および受信部に対応する。
【0024】
制御部36は、基地局12の作動を制御するものであって、具体的には無線部34により取り出されたり、後述するサーバ14から得られる情報を処理したり、指令に従って基地局12の作動を変更したりする。前記無線部34の作動、より具体的には送信出力や送信周波数などの制御や、無線により送信される信号波の生成などを行なう。制御部36は例えば既知のマイコンなどによって実装される。
【0025】
測位情報測定部39は、移動局10から送信される測位のための電波を無線部34が受信した際の受信結果であって、後述するサーバ14の移動局位置算出部48が移動局10の位置の算出に用いるための情報である測位情報を測定する。本実施例においては、この測位情報は例えば受信した電波の受信強度であり、例えば受信した電波の強度を数値化した指標であるRSSI(receive signal strength indicator)が用いられる。測位情報測定部39による受信強度の値の検出は、例えば予め定められた一定時間である受信時間区間において行なわれ、その平均が用いられる。
【0026】
通信品質指標測定部40は、基地局12の無線部34において受信した際における、受信した電波の品質に関連する指標である通信品質指標を検出する。本実施例においては、この通信品質指標は受信した電波の受信強度であり、例えば前述の測位情報測定部39において検出されるものと同じRSSIが用いられる。このようにすれば、例えば、移動局10から所定の出力により測位のための電波が送信される場合には、電波の通信状態を表わす指標であるRSSIが大きいほど、移動局10から送信される電波を強い強度で受信できる、すなわち移動局10との間で電波の伝搬距離が短く良好な通信状態であると評価することができる。また、一対の基地局12を構成する2つの基地局12が相互に同一の出力により電波を送受信する場合には、測定されるRSSIが大きい基地局12のほうがRSSIが小さい基地局12よりも妨害波の影響を大きく受けていると評価することができる。なお、上述のように測位情報測定部39および通信品質指標測定部40とが検出する対象が同一である場合には、これらが同一のハードウェアによって実現されてもよい。
【0027】
なお、本実施例の移動局測位システム8を構成する移動局10および各基地局12からそれぞれ送信される電波は、その送信元を特定するための情報が含まれるようにされ、それらの電波を受信した移動局10および各基地局12は、電波の送信元を識別することができるようにされる。具体的には例えば、移動局10および各基地局12に予め付された固有のIDについての情報が電波に含められたり、あるいは移動局10および各基地局12ごとに予め設定された拡散符号により変調が行なわれるなどすればよい。
【0028】
通信インタフェース41は、基地局12から、サーバ14や他の基地局12に対して通信ケーブル18を介して情報の送受信を行なう。例えば各基地局12からサーバ14へは、測位情報測定部39によって測定される測位情報や、通信品質指標測定部40によって検出される通信品質指標についての情報などが通信インタフェース41を介して送信される。またサーバ14から基地局12へは基地局12や移動局10の作動に関する指令などが送信され、通信インタフェース41を介して受信される。
【0029】
図4はサーバ14の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。図4に示すように、サーバ14は基地局予備選択部43、評価部44、測位基地局選択部46、移動局位置算出部48、通信インタフェース42などを機能的に有して構成される。このサーバ14は例えば、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、必要な演算などを実行するようになっている。
【0030】
通信インタフェース42は、前述の基地局12の通信インタフェース41と同様に通信ケーブル18を介して情報の送受信を行なうものであって、具体的にはサーバ14から基地局12に対して情報の送受信を行なう。例えば基地局12に対しその作動を制御するための指令を送信したり、測位情報測定部39によって測定される測定情報や、通信品質指標測定部40によって検出される通信品質指標などを基地局12から受信したりする。
【0031】
基地局予備選択部43は、各基地局12の通信品質指標測定部40によって検出される通信品質指標に基づいて、移動局測位システム8を構成する基地局12のうちから、後述する評価部44において評価の対象とする基地局として選択する。本実施例においては、基地局予備選択部43が用いる通信品質指標は、移動局10から送信される測位のための電波を受信した際に通信品質指標測定部40によって検出される受信した電波の受信強度を表わすRSSIである。具体的には基地局予備選択部43は、移動局測位システム8に含まれる基地局12のうち、このRSSIが予め定められたしきい値を上回る基地局12のみを選択する。前記しきい値は、例えば、後述する移動局位置算出部48における移動局10の位置の算出の際の誤差が許容範囲内となるように、予め実験的に、あるいはシミュレーションにより得られる値に設定される。
【0032】
評価部44は、まず、基地局予備選択部43によって選択される基地局12から、一対の基地局からなる基地局対を生成する。この基地局対の生成は、基地局予備選択部43によって選択される基地局12から生成しうる全ての組み合わせについて行なわれる。
【0033】
そして、評価部44は、生成した基地局対のそれぞれについて、各基地局対を構成する2つの基地局12について、一方の基地局12の無線部34に対し、所定の出力により送信させる一方、前記一方の基地局12から送信される電波を他方の基地局12の無線部34により受信させる。前記他方の基地局12の無線部34において電波が受信されると、通信品質指標測定部40により受信した電波についての通信品質指標、すなわち本実施例においては受信強度(RSSI)が測定され、通信ケーブル18を介した通信により、その受信強度についての情報が前記他方の基地局12からサーバ14の評価部44に送信される。続いて評価部44は、前記他方の基地局12の無線部34に対し、前記所定の出力により送信させる一方、前記他方の基地局12から送信される電波を前記一方の基地局12の無線部34により受信させる。前記一方の基地局12の無線部34において電波が受信されると、通信品質指標測定部40によりその通信品質指標としての受信強度が測定され、通信ケーブル18を介した通信により、その受信強度についての情報が前記一方の基地局12からサーバ14の評価部44に送信される。このように、上述の評価部44により実行させられる基地局12の制御作動が、通信品質指標相互測定工程に対応する。
【0034】
評価部44は続いて、前記基地局対を構成する一方の基地局から送信された電波の他方の基地局における受信強度と、前記他方の基地局から送信された電波の前記一方の基地局における受信強度とに基づいて、前記基地局対を構成する2つの基地局における妨害波による影響の小ささを評価する。具体的には前記基地局対を構成する一方の基地局から送信された電波の他方の基地局における受信強度および、前記他方の基地局から送信された電波の前記一方の基地局における受信強度の大きさを比較し、その大きさが大きい場合において電波を送信した基地局のほうが、電波を受信した基地局よりも妨害波による影響が小さいと評価する。言い換えれば、前記基地局対を構成する2つの基地局のうち、より小さな受信強度が得られた基地局12の方が、より大きな受信強度が得られた基地局12よりも妨害波による影響が小さいと評価する。
【0035】
図5を用いて、より具体的に説明する。図5は、評価部44によって作成された基地局対の一例であって、第1基地局12Aおよび第2基地局12Bから構成される基地局対を示している。前述のように、評価部44は、第1基地局12Aから所定の出力の電波を送信させるとともに、第2基地局12Bに対しその電波を受信させ、受信した電波の受信強度S12を測定させる。また、第2基地局12Bから所定の出力の電波を送信させるとともに、第1基地局12Aに対しその電波を受信させ、受信した電波の受信強度S21を測定させる。
【0036】
ここで、電波は伝搬距離に応じて減衰をすることから、第1基地局12Aの送信出力と第2基地局12Bの送信出力とが等しいものであり、反射波や妨害波の存在しない状況であれば、第1基地局12Aから送信され第2基地局12Bにおいて受信された電波の受信強度S12と、第2基地局12Bから送信され第1基地局12Aにおいて受信された電波の受信強度S21とは等しいものとなる。
【0037】
一方、図5に示すように、第1基地局12Aおよび第2基地局12Bの間に妨害波源が存在しており、妨害波が送信されている。この妨害波は、第1基地局12Aから送信され第2基地局12Bが受信する電波においても、第2基地局12Bから送信され第1基地局12Aが受信する電波においても影響を及ぼす。この妨害波も、伝搬距離に応じて減衰をすることから、妨害波の送信源(妨害波源)に近い基地局12ほど、電波の受信時に妨害波の影響が大きくなる。
【0038】
そこで、評価部44は、第1基地局12Aから送信され第2基地局12Bにおいて受信された電波の受信強度S12と、第2基地局12Bから送信され第1基地局12Aにおいて受信された電波の受信強度S21とを比較することにより、各基地局における電波の受信時における妨害波の影響の大きさを評価する。すなわち、妨害波の存在しない状況においては、受信強度S12とS21とは同一の値となるところ、妨害波の影響により、受信強度S12およびS21は妨害波に対応するだけ大きな値となる。そして、妨害波源に近いほど妨害波の影響が大きいので、受信強度が大きくなる。従って、評価部44は受信強度S12およびS21を比較し、より大きい受信強度を検出した際に電波を送信した基地局12における妨害波の影響は、電波を受信した基地局12における妨害波による影響よりも小さいと評価する。具体的には例えば、受信強度S12の大きさがS21の大きさよりも大きい、すなわちS12>S21である場合には、より大きい受信強度であるS12を検出した際に電波を送信した第1基地局12Aにおける妨害波の影響は、電波を受信した第2基地局12Bにおける妨害波による影響よりも小さいと評価する。評価部44は、このように作成した基地局対を構成する2つの基地局における、妨害波の影響の相対的な評価を行なう。
【0039】
また、評価部44は、前記基地局対を構成する一方の基地局から送信された電波の他方の基地局における受信強度と、前記他方の基地局から送信された電波の前記一方の基地局における受信強度の大きさとを比較した結果、その大きさが等しい場合には、次のように評価を行なう。なお、ここで、受信強度の大きさが等しいとは、両者の値が完全に等しい場合に限られず、例えば、測定誤差にすぎない違いである場合などのように、両者の値が等しいとみなすことができるとして予め定められた所定の範囲に含まれる場合としてもよい。
【0040】
評価部44は、前記基地局対を構成する2つの基地局が、後述される測位基地局選択部46により測位基地局として選択された選択回数を比較する。そして、その選択回数がより多い基地局を、妨害波の影響の小さい基地局12であると評価する。例えば、妨害波源が静止もしくは基地局12の配置間隔に対して十分低速で移動する場合などにおいては、基地局12の周辺の電波の伝搬環境は急激に変動することが少ないため、それまでの移動局10の測位の反復において妨害波の影響が小さいとして測位基地局として選択された選択回数の多い基地局のほうが、妨害波の影響が小さいと判断されるためである。
【0041】
具体的には例えば、第1基地局12Aから送信され第2基地局12Bにおいて受信された電波の受信強度S12と、第2基地局12Bから送信され第1基地局12Aにおいて受信された電波の受信強度S21とが等しい場合には、評価部44は、基地局対を構成する第1基地局12Aおよび第2基地局12Bの選択回数を比較する。そして、第1基地局12Aの選択回数のほうが第2基地局12Bの選択回数よりも多い場合には、第1基地局12Aにおける妨害波の影響は、電波を受信した第2基地局12Bにおける妨害波による影響よりも小さいと評価する。
【0042】
評価部44は更に、評価部は前記基地局予備選択部43によって選択された基地局12から生成しうる全ての基地局対の組み合わせについて基地局対を生成し、基地局対を構成する2つの基地局12における、妨害波の影響の相対的な評価を前述のように行なう。そして、評価部44は前記基地局予備選択部43によって選択された基地局12から生成しうる全ての基地局対のそれぞれを構成する基地局12における、妨害波の影響の相対的な評価に基づいて、全ての基地局12における相対的な妨害波の影響の評価を行なう。
【0043】
図6は、評価部44による、前記基地局予備選択部43によって選択された全ての基地局12における相対的な妨害波の影響の評価を説明する図である。図6においては、基地局予備選択部43によって第1基地局12A乃至第4基地局12Dの4つの基地局が選択されている。評価部44は、この4つの基地局から構成される基地局対、すなわち、第1基地局12Aと第2基地局12Bとから構成される基地局対、第1基地局12Aと第3基地局12Cとから構成される基地局対、第1基地局12Aと第4基地局12Dとから構成される基地局対、第2基地局12Bと第3基地局12Cとから構成される基地局対、第2基地局12Bと第4基地局12Dとから構成される基地局対、第3基地局12Cと第4基地局12Dとから構成される基地局対をそれぞれ生成するとともに、各基地局対を構成する一方の基地局12の無線部34に対し、所定の出力により送信させる一方、前記一方の基地局12から送信される電波を他方の基地局12の無線部34により受信させ、通信品質指標測定部40によりその通信品質指標としての受信強度を測定させる。さらに、前記他方の基地局12の無線部34に対し、前記所定の出力により送信させる一方、前記他方の基地局12から送信される電波を前記一方の基地局12の無線部34により受信させ、通信品質指標測定部40によりその受信強度を測定させる。このようにして、評価部44は各基地局12間の電波の送受信によって得られる受信強度であるS12、S21、S13、S31、S14、S41、S23、S32、S24、S42、S34、S43をそれぞれ得る。ここで、Smn(mおよびnは1乃至4のいずれかの数で、mとnとは異なる数)は、第m基地局から送信された電波を第n基地局が受信した際の受信強度を表わす。
【0044】
続いて評価部44は、基地局対のそれぞれに対応して得られた受信強度SmnおよびSnmに基づいて、その基地局対を構成する2つの基地局における妨害波の影響の相対的な評価を行なう。前述のように、Smn>Snmである場合には、より大きい受信強度であるSmnを検出した際に電波を送信した第m基地局における妨害波の影響は、電波を受信した第n基地局における妨害波による影響よりも小さいと評価する。これを全ての基地局対について行なう。例えば、図6の例において、S12>S21であるとして、第1基地局12Aにおける妨害波の影響は、第2基地局12Bにおける妨害波による影響よりも小さいと評価し、S13>S31であるとして、第1基地局12Aにおける妨害波の影響は、第3基地局12Cにおける妨害波による影響よりも小さいと評価し、S14>S41であるとして、第1基地局12Aにおける妨害波の影響は、第4基地局12Dにおける妨害波による影響よりも小さいと評価し、S32>S23であるとして、第3基地局12Cにおける妨害波の影響は、第2基地局12Bにおける妨害波による影響よりも小さいと評価し、S24>S42であるとして、第2基地局12Bにおける妨害波の影響は、第4基地局12Dにおける妨害波による影響よりも小さいと評価し、S34>S43であるとして、第3基地局12Cにおける妨害波の影響は、第4基地局12Dにおける妨害波による影響よりも小さいと評価する。
【0045】
さらに評価部44は、このようにして得られた各基地局対を構成する基地局12における妨害波の影響の相対的な評価に基づいて、基地局予備選択部43によって選択された全ての基地局12における妨害波の影響の相対的な評価を行なう。具体的に図6の例を用いて説明すると、第1基地局12Aにおける妨害波の影響は第2基地局12Bにおける妨害波による影響よりも小さく、第1基地局12Aにおける妨害波の影響は第3基地局12Cにおける妨害波による影響よりも小さく、第1基地局12Aにおける妨害波の影響は第4基地局12Dにおける妨害波による影響よりも小さく、第3基地局12Cにおける妨害波の影響は第2基地局12Bにおける妨害波による影響よりも小さく、第2基地局12Bにおける妨害波の影響は第4基地局12Dにおける妨害波による影響よりも小さく、第3基地局12Cにおける妨害波の影響は第4基地局12Dにおける妨害波による影響よりも小さいと評価されているので、これら第1基地局12A乃至第4基地局12Dにおける妨害波の影響は、第1基地局12Aが最も小さく、以下、第3基地局12C、第2基地局12B、第4基地局12Dの順で大きくなると評価される。なお、この評価部44による各基地局12の評価の際の制御作動が評価工程に対応する。
【0046】
図4に戻って、測位基地局選択部46は、基地局予備選択部43により選択された基地局12のうちから、評価部44によって行なわれたそれら各基地局12における妨害波の影響の小ささの評価に基づいて、後述する移動局位置算出部48において移動局10の位置の算出に用いられる基地局である所定数の測位基地局を選択する。本実施例においては、評価部44によって妨害波の影響が相対的に最も小さいと評価された基地局から順に、移動局位置算出部48において移動局10の位置を算出するのに必要な最小の数の基地局12が前記所定数の測位基地局として選択される。この測位基地局選択部46による作動が選択工程に対応する。
【0047】
前述の図6の例により説明する。図6のように移動局10が平面上を移動する場合には、後述するように移動局位置算出部48は、移動局10から送信された電波を少なくとも3局の基地局12における受信結果を用いて、移動局10の位置の算出を行なうことが可能である。従って、移動局位置算出部48において移動局10の位置を算出するのに必要な最小の基地局12の数は3である。一方、前述のように評価部44は、妨害波の影響は、第1基地局12Aが最も小さく、以下、第3基地局12C、第2基地局12B、第4基地局12Dの順で大きくなると評価する。測位基地局選択部46は、妨害波の影響が小さい順に3局の基地局を測位基地局として選択するので、図6の例においては、第1基地局12A、第3基地局12C、第2基地局12Bの3つの基地局12が測位基地局として選択される。また、測位基地局選択部46による測位基地局の選択結果は、各基地局12が測位基地局として選択された回数として各基地局12毎に例えば図示しない記憶装置などに記録されており、測位基地局選択部46による測位基地局の選択が行なわれる毎に更新される。
【0048】
測位基地局選択部46を含む移動局測位システム8における測位基地局の選択方法が、本願発明の無線局選択方法に対応する。したがって、移動局測位システム8は無線局選択システム9を包含する。
【0049】
移動局位置算出部48は、測位基地局選択部46によって選択された測位基地局を用いて移動局10の位置の算出を行なう。具体的には移動局位置算出部48は、測位基地局選択部46によって測位基地局として選択された基地局12のそれぞれの測位情報測定部39において測定される測位情報に基づいて、移動局10の位置を算出する。
【0050】
本実施例においては、測位情報測定部39によって測定される測位情報は、移動局10から送信される測位のための電波の受信強度(例えばRSSI)である。図7は、移動局10から所定の出力により送信された電波を受信した際の受信強度と、電波の伝搬距離D、すなわち移動局10と基地局12との距離との関係を表わす図である。この図7に示すように、移動局10から送信された測位のための電波の受信強度と、移動局10と基地局12との距離とは1対1の関係にある。したがって、この図7に示す関係をサーバ14の図示しないメモリなどの記憶装置などに予め記憶しておき、この関係に基づいて各基地局12における測位情報であるRSSIをそれぞれの基地局12と移動局10との距離に変換することができる。このようにして、移動局位置算出部48は測位基地局のそれぞれと移動局10との距離を算出する。
【0051】
移動局位置算出部48は続いて、算出された基地局組を構成する各基地局12のそれぞれと移動局10との距離と、予め既知とされ、前記記憶装置に記憶されている各測位基地局の位置についての情報とに基づいて、移動局10の位置を算出する。例として、測位基地局選択部46が、第1基地局12A、第3基地局12C、第2基地局12Bの3つの基地局12を測位基地局として選択した場合について、移動局位置算出部48が移動局10の位置を算出する過程について図8を用いて説明する。
【0052】
図8は、移動局位置算出部48による移動局10の位置の算出の原理を説明する図である。移動局10の位置を表わす座標が(x、y)、第1基地局12Aの位置を表わす座標が(xa,ya)、第2基地局12Bの位置を表わす座標が(xb,yb)、第3基地局12Cの位置を表わす座標が(xc,yc)であるとすると、これらの関係は次式(1)により得られる。なお、図8における基地局12の配置は説明を簡単にするため図1のものと異なっている。
(xa - x)2 + (ya - y)2= r12
(xb - x)2 + (yb - y)2= r22 ・・・(1)
(xc - x)2 + (yc - y)2= r32
ここで、r1、r2およびr3(m)はそれぞれ、第1基地局12A、第2基地局12B、および、第3基地局12Cのそれぞれから移動局10までの距離であって、前述のように測位情報であるRSSIと図8に示す関係とから得られる値である。そして、移動局位置算出部48は前記(1)式を解くことにより、移動局10の位置(x,y)を算出する。このように、基地局12の位置およびその基地局12と移動局10との距離に基づいて移動局10の位置を算出する場合、前記(1)式として3本以上の式があれば、移動局10の位置を解として算出することができる。すなわち、移動局10から送信される測位のための電波を少なくとも3局以上の基地局12によって受信できればよい。従って、本実施例においては、測位基地局選択部46は少なくとも3局の基地局を測位基地局として選択する。
【0053】
図9は本実施例の移動局測位システム8における制御作動の一例を説明するフローチャートであって、移動局10、2つの基地局である第1基地局12Aおよび第2基地局12B、およびサーバ14のそれぞれの制御作動を説明する図である。なお、図9においては、基地局の作動を説明する例として、第1基地局12Aおよび第2基地局12Bのフローチャートが示されているが、移動局測位システム8に含まれる基地局の代表的な基地局12の作動を表わすものであって、第1基地局12Aおよび第2基地局12Bの作動に限定されるものではない。
【0054】
まず、ステップ(以下「ステップ」を省略する。)SA1においてはサーバ14から各基地局12のそれぞれに対し、移動局10の測位を実行するための指令が行なわれる。この指令は、(1)複数の基地局12のいずれか1つ(以下「代表基地局」という。)に対し、移動局10に測位のための電波を送信させるための指令を基地局12の無線部34から移動局10に送信させる指令と、(2)複数の基地局12のそれぞれに対し、移動局10から送信される測位のための電波を受信し、測位情報測定部39において前記測位情報を測定させ、また、通信品質指標測定部40により移動局10と各基地局12との間の通信品質指標を検出させる指令とを含む。このうち、前記(1)の指令は、サーバ14は無線通信のための電波の送受信などについての機能を有していないために、サーバ14から移動局10への指令はいずれかの基地局12の有する無線部34を介して行なわれることによるものであって、前記いずれか1つの基地局12である代表基地局は、例えば、任意に選択される基地局12とされる。
【0055】
SA2およびSA3においては、それぞれの基地局12において、サーバ14からのSA1の指令が受信されたか否かが待機される。サーバ14からのSA1の指令が受信される場合には、本ステップの判断が肯定され、続くSA4もしくはSA5が実行される。なお、少なくとも1つの基地局に対してはサーバ14から前記(1)の指令が行なわれることから、いずれか1つの基地局においては本ステップの判断が肯定される。サーバ14からのSA1の指令が受信されない場合には、本ステップの判断が否定され、繰り返しSA1が実行されて、サーバ14からのSA1の指令が受信されるまで待機が行なわれる。
【0056】
SA4およびSA5は、それぞれSA2およびSA3の判断が肯定された場合、すなわち、代表基地局に該当する場合に実行されるステップであって、SA2もしくはSA3で受信されたサーバ14から前記(1)の指令を受信したか否かが判断される。前記(1)の指令を受信した基地局12、すなわち代表基地局においては本ステップの判断が肯定され、SA6もしくはSA7が実行される。また、前記(1)の指令を受信せず、(2)の指令のみを受信した基地局12においては、本ステップの判断が否定され、SA6およびSA7が実行されることなく、移動局10から送信される測位のための電波の受信が行なわれる。
【0057】
SA6およびSA7においては、移動局10に測位のための電波を送信させるための指令が無線により移動局10に対して送信される。この移動局10への指令の送信が行なわれた後、移動局10から送信される測位のための電波の受信が行なわれる。
【0058】
SA8においては、移動局10において、測位のための電波の送信を行なうための指令(SA6もしくはSA7の指令)が受信されたか否かが待機される。移動局10において測位のための電波の送信を行なうための指令が受信された場合には本ステップの判断が肯定され、続くSA9が実行される。一方、測位のための電波の送信を行なうための指令が受信されない場合には本ステップの判断が否定され、繰り返しSA8が実行されて、測位のための電波の送信を行なうための指令が受信されるまで待機が行なわれる。
【0059】
移動局10の無線部24などに対応するSA9においては、移動局10から測位のための電波の送信が行なわれる。この測位のための電波の送信は予め定められた出力により行なわれる。
【0060】
各基地局12の無線部34、測位情報測定部39、通信品質指標測定部40などに対応するSA10、SA11においては、移動局10から送信される測位のための電波が受信され、その受信結果に関し、測位に用いられる値である測位情報の値が測定される。また、測位のための電波を送信した移動局10と受信した基地局12との間の電波の通信状態を表わす通信品質指標が測定される。本実施例においては、測位情報は、受信した電波の強度を表わすRSSIであり、また、通信品質指標もまた、受信した電波の強度を表わすRSSIとされているので、このRSSIが測定される。さらに、測定された測位情報および通信品質指標についての情報が、通信ケーブル18等を介してサーバ14に送信される。
【0061】
サーバ14の通信インタフェース42などに対応するSA12においては、SA10、SA11などにおいて移動局測位システム8に含まれる基地局12であって、移動局10からの測位のための電波を受信した基地局12において測定された通信品質指標および測位情報についての情報が取得される。
【0062】
基地局予備選択部43に対応するSA13においては、SA12で取得された各基地局における通信品質指標に基づいて、妨害波の影響の小ささの評価を行なう対象とする基地局の選択が行なわれる。具体的には例えば、この選択は、SA12で取得された各基地局における通信品質指標であるRSSIが予め定められたしきい値を上回ったことに基づいて行なわれる。
【0063】
評価部44に対応するSA14においては、SA13で選択された基地局から生成しうる全ての組み合わせについて基地局対が生成される。そして、生成された基地局対から、いずれか1の基地局対(図9のフローチャートに示した例においては第1基地局12Aと第2基地局12Bとから構成される基地局対)が選択され、選択された基地局対を構成する一方の基地局(図9のフローチャートにおいては第1基地局12A)に対し、所定の出力により電波を送信するように指示が行なわれる。
【0064】
前記一方の基地局に対応する基地局12の無線部34などに対応するSA15においては、予め設定された所定の出力により、電波の送信が行なわれる。
【0065】
SA14において選択された基地局対の他方の基地局12(図9のフローチャートにおいては第2基地局12B)の通信品質指標測定部40に対応するSA16においては、SA15において前記一方の基地局から送信される電波の受信が行なわれ、受信した電波についての通信品質指標としての受信強度(図9においてはS12)が例えばRSSIとして測定される。そして、測定された受信強度(図9においてはS12)についての情報はサーバ14に送信される。
【0066】
サーバ14の通信インタフェース42などに対応するSA17においては、SA15において前記一方の基地局から送信された電波が、SA16において前記他方の基地局により受信された際に測定された受信強度(図9においてはS12)についての情報が取得される。取得された情報は、例えば図示しない記憶手段などに読み出し可能に記憶される。
【0067】
続いて、評価部44に対応するSA18においては前記選択された基地局対を構成する他方の基地局(図9のフローチャートにおいては第2基地局12B)に対し、所定の出力により電波を送信するように指示が行なわれる。
【0068】
前記他方の基地局に対応する基地局12の無線部34などに対応するSA19においては、予め設定された所定の出力により、電波の送信が行なわれる。
【0069】
前記一方の基地局12(図9のフローチャートにおいては第1基地局12A)の通信品質指標測定部40に対応するSA20においては、SA19において前記他方の基地局12から送信される電波の受信が行なわれ、受信した電波についての通信品質指標として受信強度(図9においてはS21)が例えばRSSIとして測定される。そして、測定された受信強度(図9においてはS21)についての情報はサーバ14に送信される。
【0070】
サーバ14の通信インタフェース42などに対応するSA21においては、SA19において前記他方の基地局12から送信された電波が、SA20において前記一方の基地局12により受信された際に測定された受信強度(図9においてはS21)についての情報が取得される。取得された情報は、例えば図示しない記憶手段などに読み出し可能に記憶される。
【0071】
評価部44に対応するSA22においては、SA14で選択された基地局対を構成する各基地局における妨害波の影響の小ささを評価するための基地局対影響評価ルーチンが実行される。
【0072】
図10はこの基地局対影響評価ルーチンにおける制御作動の一例を説明するフローチャートである。まず、SB1においては、SA17で取得される受信強度、すなわちSA14で選択された基地局対を構成する一方の基地局である第m基地局(図9においては第1基地局)から送信された電波が他方の基地局である第n基地局(図9においては第2基地局)により受信された際の受信強度Smn(図9においてはS12)と、前記他方の基地局である第n基地局(図9においては第2基地局)から送信された電波が前記一方の基地局第m基地局(図9においては第1基地局)により受信された際の受信強度Snm(図9においてはS21)とが、例えばそれら受信強度についての情報が記憶された記憶手段などから読み出される。なお、図10乃至12においては、第m基地局、第n基地局はそれぞれ基地局m、基地局nと記載されている。
【0073】
続くSB2においては、SB1で読み出された2つの受信強度の値の大きさが比較される。具体的には、SA17で選択された基地局対が第m基地局と第n基地局とから構成される基地局対である場合には、前記一方の基地局である第m基地局から送信された電波が他方の基地局である第n基地局により受信された際の受信強度Smnと、第n基地局から送信された電波が第m基地局により受信された際の受信強度Snmとが比較される。そして、第m基地局から送信された電波が第n基地局により受信された際の受信強度Smnが、第n基地局から送信された電波が第m基地局により受信された際の受信強度Snmよりも大きい場合には、本ステップの判断が肯定され、SB3が実行される。一方、第n基地局から送信された電波が第m基地局により受信された際の受信強度Snmが、第m基地局から送信された電波が第n基地局により受信された際の受信強度Smnよりも大きい、もしくは両者が等しい場合には、本ステップの判断が否定され、SB4が実行される。
【0074】
SB3においては、SB2の判断に基づいて、受信強度の大きさが大きい場合において電波を送信した基地局のほうが、電波を受信した基地局よりも妨害波による影響が小さいと評価される。すなわち、第m基地局から送信された電波が第n基地局により受信された際の受信強度Smnが、第n基地局から送信された電波が第m基地局により受信された際の受信強度Snmよりも大きい場合に実行されるSB3においては、受信強度Smnの送受信時において電波を送信した基地局である第m基地局のほうが電波を受信した基地局である第n基地局よりも妨害波による影響が小さいと評価される。言い換えれば、本ステップSB3においては、第m基地局から送信された電波が第n基地局により受信された際の受信強度Smnよりも、第n基地局から送信された電波が第m基地局により受信された際の受信強度Snmのほうが小さいので、より小さな受信強度が得られた第m基地局が、より大きな受信強度が得られた第n基地局よりも妨害波による影響が小さいと評価される。
【0075】
SB2の判断が否定された場合に実行されるSB4においては、第n基地局から送信された電波が第m基地局により受信された際の受信強度Snmが、第m基地局から送信された電波が第n基地局により受信された際の受信強度Smnと等しいか否かが判断される。両者が等しい場合には、本ステップの判断は肯定され、SB6が実行される。一方、両者が等しくない場合、すなわち、第n基地局から送信された電波が第m基地局により受信された際の受信強度Snmが、第m基地局から送信された電波が第n基地局により受信された際の受信強度Smnよりも大きい場合には、本ステップの判断が否定され、SB5が実行される。
【0076】
SB5においては、SB4の判断に基づいて、受信強度の大きさが大きい場合において電波を送信した基地局のほうが、電波を受信した基地局よりも妨害波による影響が小さいと評価される。すなわち、第n基地局から送信された電波が第m基地局により受信された際の受信強度Snmが、第m基地局から送信された電波が第n基地局により受信された際の受信強度Smnよりも大きい場合に実行されるSB5においては、受信強度Snmの送受信時において電波を送信した基地局である第n基地局のほうが電波を受信した基地局である第m基地局よりも妨害波による影響が小さいと評価される。
【0077】
第n基地局から送信された電波が第m基地局により受信された際の受信強度Snmが、第m基地局から送信された電波が第n基地局により受信された際の受信強度Smnと等しい場合に実行されるSB6においては、第m基地局と第n基地局との何れにおける妨害波による影響が小さいかを判定する判定ルーチンが実行される。
【0078】
図11は判定ルーチンにおける制御作動の一例を説明するフローチャートである。まずステップ(以下「ステップ」を省略する。)SC1においては、第m基地局と第n基地局のそれぞれについて、これまでにおける測位基地局としての選択回数が図示しない記憶手段から読み出される。後述するように、測位基地局選択部46に対応するSA24においては、測位基地局が選択されるごとに、その結果が、各基地局12が測位基地局として選択された回数として各基地局12毎に例えば図示しない記憶装置などに記録されるので、移動局測位システム8による移動局10の位置の算出(測位)、すなわち図9のフローチャートが繰り返し実行される場合には、各基地局12が測位基地局として選択された例えば測位の開始時からの累積回数である選択回数が記憶されている。この選択回数が読み出される。
【0079】
SC2においては、第m基地局の選択回数と第n基地局の選択回数とが比較される。第m基地局の選択回数が第n基地局の選択回数を上回る場合には、本ステップの判断が肯定されSC3が実行される。一方、第m基地局の選択回数が第n基地局の選択回数を下回るもしくは等しい場合には、本ステップの判断が否定されSC4が実行される。
【0080】
第m基地局の選択回数が第n基地局の選択回数を上回る場合に実行されるSC3においては、第m基地局における妨害波の影響のほうが、第n基地局における妨害波の影響よりも小さいと判断される。例えば、妨害波源が静止もしくは基地局12の配置間隔に対して十分低速で移動する場合などにおいては、基地局12の周辺の電波の伝搬環境は急激に変動することが少ないため、それまでの移動局10の測位の反復において妨害波の影響が小さいとして測位基地局として選択された回数の多い基地局のほうが、妨害波の影響が小さいと判断されるためである。
【0081】
第m基地局の選択回数が第n基地局の選択回数を下回る、もしくは両者が等しい場合に実行されるSC4においては、SC3と同様の理由により、第n基地局における妨害波の影響のほうが、第m基地局における妨害波の影響よりも小さいと判断される。
【0082】
図9に戻って、SA14乃至SA22の工程は、本図においては、第1基地局12Aおよび第2基地局12Bについて示したが、実際にはSA13において選択された基地局によって構成される全ての組み合わせの基地局対に対して実行される。
【0083】
評価部44に対応するSA23は、SA14乃至SA22の工程が、SA13において選択された基地局によって構成される全ての組み合わせの基地局対に対して実行されることによって得られる、各基地局対を構成する基地局における妨害波の影響の小ささについての評価に基づいて、SA13において選択された基地局の全てに対する妨害波の影響の小ささの評価、すなわち順位づけが行なわれる。具体的に図6の例を用いて説明する。SA13において第1基地局12A乃至第4基地局12Dの4つの基地局が選択された場合において、SA14乃至SA22を繰り返し実行することにより、第1基地局12Aにおける妨害波の影響は第2基地局12Bにおける妨害波による影響よりも小さく、第1基地局12Aにおける妨害波の影響は第3基地局12Cにおける妨害波による影響よりも小さく、第1基地局12Aにおける妨害波の影響は第4基地局12Dにおける妨害波による影響よりも小さく、第3基地局12Cにおける妨害波の影響は第2基地局12Bにおける妨害波による影響よりも小さく、第2基地局12Bにおける妨害波の影響は第4基地局12Dにおける妨害波による影響よりも小さく、第3基地局12Cにおける妨害波の影響は第4基地局12Dにおける妨害波による影響よりも小さいと評価されているとすると、SA23においては、これら第1基地局12A乃至第4基地局12Dにおける妨害波の影響は、第1基地局12Aが最も小さく、以下、第3基地局12C、第2基地局12B、第4基地局12Dの順で大きくなると評価される。
【0084】
測位基地局選択部46に対応するSA24においては、SA23においてなされた、SA13において選択された基地局の全てに対する妨害波の影響の小ささの評価、すなわち順位づけの結果に基づいて、SA25において行なわれる移動局10の位置の算出に用いられる基地局12である測位基地局が選択される。具体的には例えば、SA23において行なわれた順位づけに従って、すなわち妨害波の影響が小さいとされる順に、SA25において移動局10の位置の算出に必要な最小の数だけ、基地局12が測位基地局として選択される。前述の例のように、SA23において妨害波の影響が、第1基地局12Aが最も小さく、以下、第3基地局12C、第2基地局12B、第4基地局12Dの順で大きくなると評価される場合に、SA25において移動局10の位置の算出に必要な最小の基地局の数が3局である場合には、第1基地局12A、第3基地局12C、第2基地局12Bが測位基地局として選択される。また、本ステップにおける測位基地局の選択結果は、各基地局12が測位基地局として選択された回数として各基地局12毎に記録されており、本ステップが実行され測位基地局の選択が行なわれる毎に更新される。
【0085】
移動局位置算出部48に対応するSA25においては、SA12においてサーバに取得された各基地局12における測位情報のうち、SA24において測位基地局として選択された基地局12において特定された測位情報が抽出される。そして、これら測位基地局によって測定された測位情報と、予め既知とされ例えばサーバ14の図示しない記憶装置などに記憶されている各測位基地局の位置についての情報とに基づいて、移動局10の位置の算出が行なわれる。具体的には例えば、各測位基地局における測位情報と、各測位基地局の位置についての情報とに基づいて各測位基地局と移動局10との位置関係を表わす前記(1)式を導き、これらを連立させて解くことにより、その解(x,y)として移動局10の位置が算出される。
【0086】
前述の実施例によれば、通信品質指標測定部40により、複数の基地局12から一または複数の基地局対が選択され、選択された基地局対について、一方から所定の出力により送信される電波を他方で受信した際の、該他方における通信品質指標としての受信強度が測定されるとともに、該他方から所定の出力により送信される電波を該一方で受信した際の、該一方における通信品質指標としての受信強度が測定され、評価部44により、前記通信品質指標測定部40によって基地局対ごとに測定される前記一方における受信強度および前記他方における受信強度に基づいて、前記一または複数の基地局対を構成する基地局が妨害波による影響の小ささにより評価され、前記測位基地局選択部46により、前記評価部44により妨害波による影響が小さいと評価された順に前記基地局12が選択されるので、前記複数の基地局12から、基地局対ごとに測定される前記一方における受信強度および前記他方における受信強度に基づいて、妨害波による影響の小さい基地局を選択することができる。
【0087】
また、前述の実施例によれば、通信品質指標測定部40は、通信品質指標として受信した電波の受信強度を測定するものであり、評価部44は、基地局対を構成する2つの基地局12のうち、より小さな受信強度が得られた基地局が、より大きな受信強度が得られた基地局よりも妨害波による影響が小さいと評価するので、受信強度の大きさは妨害波の影響を受けることによって大きくなることを利用して、通信品質指標測定部40によって測定される、前記基地局対を構成する2つの基地局12のそれぞれにおける受信強度の値に基づいて、妨害波による影響の大きさを評価することができる。
【0088】
また、前述の実施例によれば、測位基地局選択部46は、評価部44により妨害波による影響が等しいと評価された複数の基地局12のうち、過去に選択された回数の多い基地局を選択するので、評価部44により妨害波による影響が等しいと評価された複数の基地局12が存在する場合であっても、前記基地局対ごとに測定される前記一方における受信強度および前記他方における受信強度に基づいて、妨害波による影響の小さい無線局を選択することができる。
【0089】
また、前述の実施例によれば、移動局測位システム8においては、複数の基地局12の有する無線部34により所定の出力により電波が送信されるとともに、電波が受信され、通信品質指標測定部40により、無線部34によって受信された電波の通信品質指標としての受信強度が例えばRSSIにより検出される。また、測位基地局選択部46により、複数の基地局12から妨害波による影響が小さいと評価された順に所定数の測位基地局が選択され、移動局位置算出部48により、測位基地局選択部46により選択される測位基地局と移動局10とのいずれか一方から送信される電波を他方が受信した際の受信結果に基づいて移動局10の位置が算出されるので、妨害波による影響の小さい基地局として測位基地局を選択することができ、移動局10の位置の算出を精度よく行なうことができる。
【0090】
また、前述の実施例によれば、移動局測位システム8は、移動局10と複数の基地局12のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、移動局10と複数の基地局12のそれぞれとの無線通信における通信品質指標を算出する通信品質指標測定部40を有し、測定される通信品質指標に基づいて移動局10との通信が良好に行なわれると判断される基地局12を選択する基地局予備選択部43を有し、測位基地局選択部46は、基地局予備選択部43によって選択された基地局12から測位基地局を選択するので、妨害波による影響が少なく、また、移動局10との通信が良好に行なわれる無線局12を測位基地局として選択することができ、移動局10の位置の算出を精度よく行なうことができる。また、移動局10との通信が良好に行なわれる基地局を対象として測位基地局選択部46による測位基地局の選択が行なわれるので、測位基地局の選択などに要する演算量を低減することができ、演算に要する時間や演算装置における消費電力の低減を図ることができる。
【0091】
続いて、本発明の別の実施例について説明する。以下の説明において、実施例相互に共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0092】
本実施例は、測位基地局選択部46の前述の実施例とは異なる作動に関するものであって、具体的には、基地局対を構成する一方の基地局から送信された電波の他方の基地局における受信強度と、前記他方の基地局から送信された電波の前記一方の基地局における受信強度の大きさとが等しい基地局対が存在する場合における、測位基地局の選択作動に関するものである。
【0093】
本実施例においては、評価部44(図4参照)は、前記基地局対を構成する一方の基地局から送信された電波の他方の基地局における受信強度と、前記他方の基地局から送信された電波の前記一方の基地局における受信強度の大きさとを比較した結果、その大きさが等しい場合には、両基地局における妨害波の影響の大きさは等しいと評価する。なお、ここで、受信強度の大きさが等しいとは、前述の実施例と同様に、両者の値が完全に等しい場合に限られず、例えば、両者の値が等しいとみなすことができるとして予め定められた所定の範囲に含まれる場合としてもよい。
【0094】
このようにして、評価部44は全ての基地局対のそれぞれに対応して得られた受信強度に基づいて、その基地局対を構成する2つの基地局における妨害波の影響の相対的な評価を行なう。前述のように、Smn>Snmである場合には、より大きい受信強度であるSmnを検出した際に電波を送信した第m基地局における妨害波の影響は、電波を受信した第n基地局における妨害波による影響よりも小さいと評価する。これを全ての基地局対について行なう。例えば、図6の例において、S12>S21であるとして、第1基地局12Aにおける妨害波の影響は、第2基地局12Bにおける妨害波による影響よりも小さいと評価し、S13>S31であるとして、第1基地局12Aにおける妨害波の影響は、第3基地局12Cにおける妨害波による影響よりも小さいと評価し、S14>S41であるとして、第1基地局12Aにおける妨害波の影響は、第4基地局12Dにおける妨害波による影響よりも小さいと評価し、S32>S23であるとして、第3基地局12Cにおける妨害波の影響は、第2基地局12Bにおける妨害波による影響よりも小さいと評価し、S24=S42であるとして、第2基地局12Bにおける妨害波の影響と、第4基地局12Dにおける妨害波による影響とは等しいと評価し、S34>S43であるとして、第3基地局12Cにおける妨害波の影響は、第4基地局12Dにおける妨害波による影響よりも小さいと評価する。
【0095】
さらに評価部44は、このようにして得られた各基地局対を構成する基地局12における妨害波の影響の相対的な評価に基づいて、基地局予備選択部43によって選択された全ての基地局12における妨害波の影響の相対的な評価を行なう。具体的に図6の例を用いて説明すると、第1基地局12Aにおける妨害波の影響は第2基地局12Bにおける妨害波による影響よりも小さく、第1基地局12Aにおける妨害波の影響は第3基地局12Cにおける妨害波による影響よりも小さく、第1基地局12Aにおける妨害波の影響は第4基地局12Dにおける妨害波による影響よりも小さく、第3基地局12Cにおける妨害波の影響は第2基地局12Bにおける妨害波による影響よりも小さく、第2基地局12Bにおける妨害波の影響と第4基地局12Dにおける妨害波による影響とは等しく、第3基地局12Cにおける妨害波の影響は第4基地局12Dにおける妨害波による影響よりも小さいと評価されているので、これら第1基地局12A乃至第4基地局12Dにおける妨害波の影響は、第1基地局12Aが最も小さく、以下、第3基地局12C、第2基地局12Bの順で大きくなると評価され、第2基地局12Bと第4基地局12Dとは等しいと評価される。
【0096】
一方、測位基地局選択部46は、前述の実施例と同様に、基地局予備選択部43により選択された基地局12のうちから、評価部44によって行なわれたそれら各基地局12における妨害波の影響の小ささの評価に基づいて、後述する移動局位置算出部48において移動局10の位置の算出に用いられる基地局である所定数の測位基地局を選択する。本実施例においては、評価部44によって妨害波の影響が相対的に最も小さいと評価された基地局から順に、移動局位置算出部48において移動局10の位置を算出するのに必要な最小の数の基地局12が前記所定数の測位基地局として選択される。この測位基地局選択部46による作動が選択工程に対応する。
【0097】
しかしながら、本実施例においては、評価部44によって、複数の基地局12における妨害波の影響が等しいと評価される場合がある。かかる場合においては、測位基地局選択部46による測位基地局の選択を行なうことができない場合がある。具体的には例えば、前述のように第1基地局12A乃至第4基地局12Dにおける妨害波の影響が、第1基地局12Aが最も小さく、以下、第3基地局12C、第2基地局12Bの順で大きくなると評価され、第2基地局12Bと第4基地局12Dとは等しいと評価される場合において、3つの基地局12を測位基地局として選択する場合がこれに該当する。すなわち、妨害波の影響の小さい順に3局の基地局12を測位基地局として選択しようとすると、3局目の測位基地局として、妨害波の影響が等しいと評価された第2基地局12Bと第4基地局12Dの何れを選択するかが問題となるためである。
【0098】
かかる場合において、測位基地局選択部46は次のように測位基地局の選択を行なう。まず測位基地局選択部46は、評価部44により妨害波の影響が等しいと評価された複数の基地局12について、それらの基地局12のそれぞれと移動局10との間の電波の送受信における電波の通信状態を表わす指標を取得し、比較する。この電波の通信状態を表わす指標としては、例えば、移動局10から送信される測位のための電波を各基地局12の無線部34において受信した際に通信品質指標測定部40において測定される、通信品質指標が用いられる。そして、比較の結果、前記電波の通信状態を表わす指標に基づいて、移動局10との電波の通信がより良好に行なわれたと判断される基地局12から順に、測位基地局として選択する。
【0099】
前述の例、すなわち、第1基地局12A乃至第4基地局12Dにおける妨害波の影響が、第1基地局12Aが最も小さく、以下、第3基地局12C、第2基地局12Bの順で大きくなると評価され、第2基地局12Bと第4基地局12Dとは等しいと評価される場合において、3つの基地局12を測位基地局として選択する場合について説明する。測位基地局選択部46は、妨害波の影響の小さい順にまず、第1基地局12Aおよび第3基地局12Cを選択する。続いて次に妨害波の影響の小さい基地局は、妨害波の影響が等しいと評価された第2基地局12Bと第4基地局12Dの2つが存在するので、これら第2基地局12Bおよび第4基地局12Dのそれぞれの通信品質指標測定部40において測定された通信品質指標の値を比較し、移動局10との通信がより良好に行なわれたと判断される基地局を3番目の測位基地局として選択する。本実施例においては、通信品質指標測定部40によって測定される通信品質指標は、電波の強度を表わすRSSIであるので、第2基地局12Bおよび第4基地局12DのそれぞれにおけるRSSIがより大きい基地局12、すなわち移動局10から送信される電波をより強い強度で受信した基地局12が、移動局10との通信がより良好に行なわれた基地局であるとされ、測位基地局選択部46により3番目の測位基地局として選択される。
【0100】
なお、本実施例においては、前述の実施例と異なり、測位基地局選択部46による測位基地局の選択結果は、各基地局12が測位基地局として選択された回数として各基地局12毎に例えば図示しない記憶装置などに記録される必要はない。
【0101】
続いて、本実施例における移動局測位システム8の制御作動の一例を説明する。本実施例においても、前述の実施例1と同様、移動局測位システム8の制御作動は図9および図10に示すフローチャートに従って行なわれる。以下においては、実施例1において説明した制御作動と異なる部分について説明する。
【0102】
図10のフローチャートは、図9のSA22において実行される基地局対影響評価ルーチンにおける制御作動を説明するものである。この図10のフローチャートにおいて、SB4の判断が肯定される場合、すなわち、第n基地局から送信された電波が第m基地局により受信された際の受信強度Snmが、第m基地局から送信された電波が第n基地局により受信された際の受信強度Smnと等しい場合に実行されるSB6においては、前述の実施例においては、図11に示す判定ルーチンが実行され、第m基地局と第n基地局との何れにおける妨害波による影響が小さいかが判定された。本実施例においては、このSB6においては、前記判定ルーチンの実行に代え、第m基地局における妨害波の影響と第n基地局における妨害波の影響とは等しいとの評価が行なわれる。
【0103】
図9に戻って、評価部44に対応するSA23においては、前述の実施例と同様に、SA14乃至SA22の工程が、SA13において選択された基地局によって構成される全ての組み合わせの基地局対に対して実行されることによって得られる各基地局対を構成する基地局における妨害波の影響の小ささについての評価に基づいて、SA13において選択された基地局の全てに対する妨害波の影響の小ささの評価、すなわち順位づけが行なわれる。ここで、前述のSB6が実行され、基地局対を構成する2つの基地局における妨害波の影響が等しいと判断されうることから、本ステップで行なわれる順位付けにおいても、一部の基地局については、妨害波の影響が等しいとされる場合がある。
【0104】
測位基地局選択部46に対応するSA24においては、SA23においてなされた、SA13において選択された基地局の全てに対する妨害波の影響の小ささの評価、すなわち順位づけの結果に基づいて、SA25において行なわれる移動局10の位置の算出に用いられる基地局12である測位基地局を選択するための測位基地局選択ルーチンが実行される。
【0105】
図12はこの測位基地局選択ルーチンにおける制御作動の一例を説明するフローチャートである。まず、ステップ(以下「ステップ」を省略する。)SD1においては、SA23において行なわれた順位付けにおいて、妨害波の影響が等しいとされた複数の基地局12が存在しているか否かが判断される。妨害波の影響が等しいとされた複数の基地局12が存在する場合には、本ステップの判断が肯定され、SD2が実行される。一方、妨害波の影響が等しいとされた複数の基地局12が存在しない場合には、本ステップの判断が否定され、SD4が実行される。
【0106】
妨害波の影響が等しいとされた複数の基地局12が存在する場合に実行されるSD2においては、妨害波の影響が等しいとされた複数の基地局12のそれぞれについて、通信品質指標測定部40によって測定された通信品質指標の値が取得される。この値は、例えばSA13において用いられた値が図示しない記憶手段などに記憶され、読み出されるなどして取得される。
【0107】
SD3においては、測位基地局の選択が行なわれる。具体的には例えば、SA23において行なわれた順位づけに従って、すなわち妨害波の影響が小さいとされる順に、移動局10の位置の算出に必要な最小の数だけ、基地局12が測位基地局として選択される。選択の過程において、妨害波の影響が等しいと評価された複数の基地局12がある場合には、それら複数の基地局12についてSD2で取得される通信品質指標の値の比較が行なわれる。そして、比較の結果、通信品質指標に基づいて、移動局10との電波の通信がより良好に行なわれたと判断される基地局12から順に、測位基地局として選択される。
【0108】
一方、妨害波の影響が等しいとされた複数の基地局12が存在しない場合に実行されるSD4においては、前述の実施例1と同様に、SA23においてなされた、SA13において選択された基地局の全てに対する順位づけの結果に基づいて測位基地局が選択される。具体的には例えば、SA23において行なわれた順位づけに従って、すなわち妨害波の影響が小さいとされる順に、移動局10の位置の算出に必要な最小の数だけ、基地局12が測位基地局として選択される。
【0109】
前述の実施例によれば、測位基地局選択部46は、妨害波による影響が等しいとされた複数の基地局12のうち、移動局10と複数の基地局12のいずれか一方から送信される電波を他方が受信した際の、該他方における受信結果である通信品質指標に基づいて前記移動局10との通信がより良好に行なわれた基地局12を選択するので、妨害波による影響が等しいとされた複数の基地局12が存在する場合であっても、前記他方における受信強度に基づいて、妨害波による影響が少なく、また、移動局10との通信が良好に行なわれる無線局を選択することができ、移動局10の位置の算出を精度よく行なうことができる。
【0110】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0111】
例えば、前述の実施例においては移動局10は平面上を移動するものとされたが、かかる態様に限られず、空間(3次元)を移動するものであってもよい。この場合、移動局10の位置を表わす座標(x,y,z)を未知数として前記(1)式に対応する式が導出されればよい。この場合は、前述の式(1)として、4本の式が必要となり、測位基地局選択部46では、4つの基地局が選択される。
【0112】
また、前述の実施例においては、測位情報測定部39が測位情報として検出するのは、移動局10が送信する測位のための電波を受信した際の受信強度(RSSI)であったが、これに限られない。具体的には、例えば測位のための電波の移動局10における送信時刻および各基地局12における受信時刻であってもよい。この場合、これら送信時刻および受信時刻から得られる測位のための伝搬時間に電波の速度を乗ずるなどして算出される移動局10と各基地局12との距離に基づいて移動局10の位置の算出が可能である。また、複数の基地局12における電波の受信時刻差に基づいて移動局10の位置の算出を行なうこともできる。これらの場合、好適には移動局10が送信する測位のための電波にはPN(Pseudo Noise;疑似雑音)符号が含められる。PN符号は、相関に鋭いピークを生ずるので、受信側においてマッチドフィルタ等を用いて同期検出を行なうことにより、精度のよい受信時刻の検出が可能となるためである。
【0113】
また、前述の実施例においては、通信品質指標測定部40が電波の通信状態を表わす指標として検出するのは、移動局10が送信する測位のための電波、あるいは、基地局対を構成する一対の基地局12がそれぞれ相互に送信する電波の受信強度(RSSI)であったが、これに限られない。例えば、測位のための電波や、基地局対を構成する一対の基地局12がそれぞれ相互に送信する電波に送信されるデータとそのデータについての誤り検出符号が含められる場合には、通信品質指標測定部40が測定する品質指標は該誤り検出符号に基づいて算出される受信した電波における誤り率(BER;bit error rate)とされてもよい。この場合、評価部44においては、基地局対を構成する一方の基地局12から送信された電波の他方の基地局における受信の誤り率および、前記他方の基地局から送信された電波の前記一方の基地局における受信の誤り率の大きさを比較し、その大きさが大きい場合において電波を送信した基地局12のほうが、電波を受信した基地局12よりも妨害波による影響が小さいと評価する。言い換えれば、前記基地局対を構成する2つの基地局12のうち、より小さな受信強度が得られた基地局12の方が、より大きな受信強度が得られた基地局12よりも妨害波による影響が小さいと評価する。また、基地局予備選択部43は、移動局10から送信される測位のための電波を受信した各基地局12のうち、通信品質指標測定部40によって測定される通信品質指標としての誤り率が、例えば所定のしきい値よりも低い基地局12を選択する。
【0114】
あるいは、測位のための電波や、基地局対を構成する一対の基地局12がそれぞれ相互に送信する電波に拡散符号が含まれ、各基地局は拡散符号の同期検出のための機能を有する場合には、通信品質指標測定部40が測定する品質指標は前記同期検出のための機能により算出される、受信した電波に含まれる拡散符号とその拡散符号と同一のレプリカ符号との相関値のピーク値であってもよい。この場合評価部44は、前記相関値のピーク値、すなわち拡散符号とレプリカ符号との同期時の相関値と、非同期時の相関値との差が大きい基地局12、すなわち相関値のピークが鋭い基地局12のほうが、同期時の相関値と非同期時の相関値との差が小さい基地局12のよりも妨害波による影響が小さいと評価する。また、基地局予備選択部43は、移動局10から送信される測位のための電波を受信した各基地局12のうち、通信品質指標測定部40によって測定される通信品質指標としての相関値において、同期時の相関値と非同期時の相関値との差が、例えば所定のしきい値よりも大きい基地局12を選択する。このように、電波の送受信に際し、その妨害波による影響によって一定の変化をする指標であればよく、これらに限られない。
【0115】
また、前述の実施例においては、測位情報測定部39および通信品質指標測定部40はいずれも移動局10が送信する測位のための電波を検出の対象としたが、これにかぎられず、移動局10は測位情報測定部39による測位情報の検出のための電波と、通信品質指標測定部40による電波の通信状態を表わす指標の検出のための電波をそれぞれ送信し、各基地局12においては、受信した電波に応じて測位情報測定部39による測位情報の検出と、通信品質指標測定部40による電波の通信状態を表わす指標の検出とをそれぞれ行なってもよい。
【0116】
前述の実施例においては、基地局予備選択部43、評価部44、測位基地局選択部46、移動局位置算出部48などはサーバ14の有する機能であるとされたが、これに限られない。例えばこれらをいずれかの基地局12の有する機能とすることも可能である。このようにすれば、サーバ14別に設ける必要がない。
【0117】
また、前述の実施例において、測位情報測定部39、および通信品質指標測定部40が検出する受信強度の値は、無線部34において受信する電波の受信強度の瞬時値であってもよいし、予め定められた複数回だけ検出された瞬時値の平均値であってもよい。
【0118】
前述の実施例においては、測位のための電波は移動局10から送信され、各基地局12により受信されるものであったが、このような態様に限られない。すなわち、移動局10が測位情報測定部39、通信品質指標測定部40を有し、各基地局12の無線部34からそれぞれ送信される測位のための電波を移動局10の無線部24によりそれぞれ受信し、受信した電波に対し測位情報の検出と、電波の通信状態を表わす指標の検出を行なうことも可能である。
【0119】
また、前述の実施例においては、基地局予備選択部43は、各基地局12の通信品質指標測定部40によって検出される通信状態を表わす指標が予め定められたしきい値を上回る基地局12のみを選択するものとされたが、このような態様に限られない。例えば、予め設定された基地局の数が選択されるように、各基地局12の通信状態検出部42によって検出される通信状態を表わす指標が大きいものから所定数の基地局を選択するようにしてもよい。
【0120】
また、前述の実施例においては、移動局測位システム8もしくは無線局選択システム9は基地局予備選択部43を含んで構成され、評価部44は基地局予備選択部43によって選択された基地局について妨害波の影響を評価したが、このような態様に限られない。すなわち、移動局測位システム8もしくは測位基地局選択システム9は基地局予備選択部43を含まない構成とすることも可能であり、この場合、評価部44は移動局10からの電波を受信した全ての基地局12の受信結果などに基づいて妨害波の影響を評価することにより、一定の効果が得られる。
【0121】
また、前述の実施例においては、基地局予備選択部43によって選択された基地局12に対し、評価部44によって妨害波による影響の評価が行なわれ、測位基地局選択部46によりその評価に基づいて測位基地局の選択が行なわれるようにされたが、このような態様に限られない。例えば、移動局測位システム8を構成する全ての基地局12に対し、まず評価部44によって妨害波による影響の評価が行なわれ、続いて基地局予備選択部43による基地局の選択が行なわれ、基地局予備選択部43によって選択された基地局12を対象として、測位基地局選択部46による測位基地局の選択が行なわれてもよい。すなわち、前述の実施例において説明したフローチャートは一例に過ぎず、各過程は矛盾しない限りにおいて順序を交換して実行することができる。
【0122】
また、前述の実施例においては、評価部44によって、基地局対が選択されるごとにその基地局対を構成する2つの基地局によって電波の送受信が行なわれるものとされた、すなわち、図9のフローチャートにおいてSA14乃至SA22が繰り返し実行されるものとされたが、このような態様に限られない。例えば、基地局予備選択部43(SA13)によって選択された各基地局12が順次所定の出力により電波を送信し、その電波を送信した基地局12以外の基地局12によってその電波を受信し、通信品質指標測定部40によりその受信強度を測定するようにしてもよい。このようにすれば、1つの基地局12から送信された電波が同時に複数の他の基地局12によって受信され受信強度の測定が行なわれることから、実行に要する時間を短縮することができる。
【0123】
また、前述の実施例2においては、評価部44において複数の基地局12について妨害波の影響が等しいと評価された場合に、測位基地局選択部46は前記通信品質指標であるRSSIの大きさに基づいて、前記複数の基地局12のそれぞれと移動局10との通信が良好に行なわれる基地局を選択するものとしたが、このとき、基準とする指標はRSSI以外の前記通信品質指標であってもよいし、あるいは通信品質指標測定部40によって測定される指標以外のものであっても移動局10との通信が良好に行なわれることを判断できる指標であって、基地局12において検出可能なものであればよい。
【0124】
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明の一実施例である移動局測位システムの概要を説明する図である。
【図2】図1の移動局測位システムを構成する移動局の有する機能の概要を説明する図である。
【図3】図1の移動局測位システムを構成する基地局の有する機能の概要を説明する図である。
【図4】図1の移動局測位システムを構成するサーバの有する機能の概要を説明する図である。
【図5】基地局対を構成する2つの基地局による電波の送受信によって得られる受信強度と、妨害波源を説明する図である。
【図6】図1の移動局測位システムに対応する、4つの基地局の存在下における、各基地局対を構成する2つの基地局による電波の送受信によって得られる受信強度と、妨害波源を説明する図である。
【図7】移動局から送信される測位のための電波を基地局が受信した際の受信強度の大きさと、移動局と基地局との距離との関係を説明する図である。
【図8】図4の移動局位置算出部による基地局組を用いた移動局の位置の算出を説明する図である。
【図9】本発明の移動局測位システムによる移動局の位置の算出における制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【図10】図9の基地局対影響評価ルーチンにおける制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【図11】図10の判定ルーチンにおける制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【図12】本発明の別の実施例における移動局測位システムによる移動局の位置の算出における制御作動の一例を説明するフローチャートであって、図9のフローチャートの一部に代えて実行されるものである。
【符号の説明】
【0126】
8:移動局測位システム
9:無線局選択システム
10:移動局
12:基地局(無線局)
34:無線部(送信部、受信部)
43:基地局予備選択部
44:評価部
46:測位基地局選択部
48:移動局位置算出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、相互に無線通信可能な複数の無線局から、妨害波による影響の小さい無線局を選択するための無線局選択方法、および、移動局と複数の基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、受信結果に基づいて該移動局の位置を算出する移動局測位システムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動局と複数の基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、受信結果に基づいて該移動局の位置を算出する移動局測位システムが知られている。
【0003】
このような測位システムにおいては、移動局と複数の基地局との間における無線通信の結果が用いられるが、移動局の位置の算出(測位)に必要となる数を上回る基地局が存在する場合においては、移動局と何れの基地局との無線通信の結果を用いるかを選択することができる。かかる場合には、選択した通信結果、すなわち移動局といずれの基地局との通信結果を用いるかによって、測位の精度が左右される。特に、基地局の周囲に妨害波を発生する妨害波源が存在する場合には、基地局において送受信する電波が前記妨害波と干渉されることにより、移動局と複数の基地局との間における無線通信の結果が誤差を含むものとなる可能性があり、その受信結果を用いた測位の結果は精度が悪化するおそれがあった。
【0004】
このように、妨害波源が存在する場合には、妨害波の影響が小さい基地局を選択して移動局の測位を行なうことが、精度のよい測位のために望ましい。特許文献1には、妨害電波の発生源を効率的に特定することのできる位置特定方法が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−142750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、妨害波源による影響の小さい無線局を選択する無線局選択方法、およびその基地局選択方法により選択される測位基地局を用いて移動局の位置を算出する移動局測位システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するための請求項1にかかる発明は、(a)相互に無線通信可能な複数の無線局から、妨害波による影響の小さい無線局を選択するための無線局選択方法であって、(b)前記複数の無線局から一または複数の無線局対を選択し、該無線局対のそれぞれについて、一方から所定の出力により送信される電波を他方で受信し、該他方における受信した電波の品質に関連する指標である通信品質指標を測定するとともに、該他方から所定の出力により送信される電波を該一方で受信し、該一方における通信品質指標を測定する通信品質指標測定工程と、(c)該通信品質指標測定工程によって前記無線局対ごとに測定される前記一方における通信品質指標および前記他方における通信品質指標に基づいて、前記一または複数の無線局対を構成する無線局を妨害波による影響の小ささにより評価する評価工程と、(d)該評価工程により妨害波による影響が小さいと評価された順に前記無線局を選択する選択工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、請求項4にかかる発明は、(a)移動局と複数の基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、受信結果に基づいて該移動局の位置を算出する移動局測位システムであって、(b)該複数の基地局はそれぞれ、所定の出力により電波を送信可能な送信部と、電波を受信する受信部と、該受信部により受信された電波の品質に関連する指標である通信品質指標を測定する通信品質指標測定部とを有し、(c)請求項1乃至3のいずれか1に記載の無線局選択方法により、前記複数の基地局から妨害波による影響が小さいと評価された順に所定数の前記測位基地局を選択する測位基地局選択部と、(d)該測位基地局選択部により選択される測位基地局と、前記移動局とのいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、受信結果に基づいて前記移動局の位置を算出する移動局位置算出部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1にかかる無線局選択方法によれば、前記通信品質指標相互測定工程により、前記複数の無線局から選択された無線局対のそれぞれについて、一方から所定の出力により送信される電波を他方で受信した際の、該他方における受信した電波の品質に関連する指標である通信品質指標が測定されるとともに、該他方から所定の出力により送信される電波を該一方で受信した際の、該一方における通信品質指標が測定され、前記評価工程により、前記通信品質指標相互測定工程によって前記無線局対ごとに測定される前記一方における通信品質指標および前記他方における通信品質指標に基づいて、前記一または複数の無線局対を構成する無線局が妨害波による影響の小ささにより評価され、前記選択工程により、前記評価工程により妨害波による影響が小さいと評価された順に前記無線局が選択されるので、前記複数の無線局から、前記無線局対ごとに測定される前記一方における通信品質指標および前記他方における通信品質指標に基づいて、妨害波による影響の小さい無線局を選択することができる。
【0010】
好適には、(a)前記通信品質指標相互測定工程は、前記通信品質指標として受信した電波の受信強度を測定するものであり、(b)前記評価工程は、前記無線局対を構成する2つの無線局のうち、より小さな受信強度が得られた無線局が、より大きな受信強度が得られた無線局よりも妨害波による影響が小さいと評価すること、を特徴とする。このようにすれば、前記受信強度の大きさは妨害波の影響を受けることによって大きくなるので、通信品質指標相互測定工程によって測定される、前記無線局対を構成する2つの無線局のそれぞれにおける受信強度の値に基づいて、妨害波による影響の大きさを評価することができる。
【0011】
好適には、前記選択工程は、前記評価工程により妨害波による影響が等しいと評価された複数の無線局のうち、過去に選択された回数の多い無線局を選択することを特徴とする。このようにすれば、前記評価工程により妨害波による影響が等しいと評価された複数の無線局が存在する場合であっても、前記無線局対ごとに測定される前記一方における受信強度および前記他方における受信強度に基づいて、妨害波による影響の小さい無線局を選択することができる。
【0012】
また、請求項4にかかる移動局測位システムによれば、前記複数の基地局の有する前記送信部により所定の出力により電波が送信され、前記受信部により電波が受信され、前記通信品質指標測定部により、前記受信部によって受信された電波の品質に関連する指標である通信品質指標が測定される。また、前記測位基地局選択部により、前記複数の基地局から妨害波による影響が小さいと評価された順に所定数の前記測位基地局が選択され、前記移動局位置算出部により、該測位基地局選択部により選択される測位基地局と前記移動局とのいずれか一方から送信される電波を他方が受信した際の受信結果に基づいて、前記移動局の位置が算出されるので、妨害波による影響の小さい基地局として測位基地局を選択することができ、移動局の位置の算出を精度よく行なうことができる。
【0013】
好適には、前記測位基地局選択部は、妨害波による影響が等しいとされた複数の基地局のうち、前記移動局と該複数の基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信した際の、該他方における前記移動局と前記複数の基地局のそれぞれとの無線通信における通信品質指標に基づいて、前記移動局との通信がより良好に行なわれた基地局を選択すること、を特徴とする。このようにすれば、妨害波による影響が等しいとされた複数の基地局が存在する場合であっても、前記他方における受信結果に基づいて、妨害波による影響が少なく、また、移動局との通信が良好に行なわれる無線局を選択することができ、移動局の位置の算出を精度よく行なうことができる。
【0014】
さらに好適には、前記移動局測位システムは、前記移動局と前記複数の基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、前記移動局と前記複数の基地局のそれぞれとの無線通信における通信品質指標に基づいて前記移動局との通信が良好に行なわれると判断される前記基地局を選択する基地局予備選択部を有し、前記測位基地局選択部は、該基地局予備選択部によって選択された基地局から前記測位基地局を選択することを特徴とする。このようにすれば、妨害波による影響が少なく、また、移動局との通信が良好に行なわれる無線局を選択することができ、移動局の位置の算出を精度よく行なうことができる。また、移動局との通信が良好に行なわれる基地局を対象として測位基地局選択部による測位基地局の選択が行なわれるので、測位基地局の選択などに要する演算量を低減することができ、演算に要する時間や演算装置における消費電力の低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の移動局測位システム8の概要を表わす図である。図1において移動局測位システム8は、例えば図と平行な平面内を移動可能とされた移動局10と、その位置が既知とされた複数の基地局である、第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12C、第4基地局12D、第5基地局12E、第6基地局12F、第7基地局12G(以下、基地局のそれぞれを区別しない場合、「基地局12」という。)、およびこれら基地局12と例えば通信ケーブル18で接続されるなどにより情報通信可能とされたサーバ14を含んで構成されている。移動局測位システム8においては、移動局10の測位を行なうのに必要な最小の数を上回る数の基地局12が含まれている。なお、移動局測位システム8においては例えば図1に示すような座標が定義されることにより、移動局10、基地局12の位置などを表わすことができるようにされている。以下の説明においては、移動局10の座標を(x,y)、第1基地局12Aの座標を(xa,ya)、第2基地局12Bの座標を(xb,yb)、第3基地局12Cの座標を(xc,yc)、第4基地局12Dの座標を(xd,yd)、のように表わす。
【0017】
移動局10と基地局12とは相互に無線通信が可能とされている。また複数の基地局12のそれぞれも同様に相互に無線通信が可能とされている。例えば、移動局10および基地局12のそれぞれが送信する電波に含まれる識別符号(ID)や固有の拡散符号などにより、その電波を受信した場合に移動局10またはいずれの基地局12によって送信された電波であるかが識別可能とされている。また、共通する符号化および復号化の手順を有することにより、移動局10と基地局12との間、および複数の基地局12の相互間において情報の受け渡しが可能とされている。
【0018】
図2は、移動局10の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。図2に示すように、移動局10は電波を送受信するためのアンテナ22を有し、また、電波の送受信のための機能を有する無線部24と前記無線部24を制御するための制御部26とを機能的に有する。
【0019】
ここで、移動局10から送信される電波を受信する基地局12においては、移動局10から等しい距離にある基地局12は移動局10からの方向に関わらず等しい受信強度によりその電波を受信することが好ましく、従ってアンテナ22は指向性のないアンテナが好適に用いられる。
【0020】
無線部24は、移動局10における電波の送受信を行なうものであり、後述する制御部26により送信状態と受信状態とが切り換えられる。電波の送信時には、無線部24は制御部26によって指示される制御内容、すなわち信号波の内容、搬送波の周波数、送信出力などにより、前記アンテナ22により電波を送信する。このように、無線部24は、搬送波生成回路、変調機、送信アンプ等を含んで構成されている。また無線部24は、電波の受信時にはアンテナ22によって受信された電波を増幅し、所定の復調処理などを行なうことにより信号波を取り出す。すなわち、無線部24は、受信アンプ、復調機などをも含んで構成される。無線部24は、各基地局12に対し測位のための電波を送信する際には、予め定められた所定の送信出力により電波を送信するものとされている。
【0021】
制御部26は、移動局10の作動を制御するものであって、具体的には無線部24により受信された情報を処理したり、前記無線部24の作動、より具体的には送信出力や送信周波数などの制御や、無線により送信される信号波の生成などを行なう。制御部26は例えば既知のマイコンなどによって実装される。前記無線部24および制御部26などが送信機としての機能を有する。
【0022】
図3は基地局12の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。図3に示すように、基地局12は電波を送受信するためのアンテナ32を有している。また基地局12は、前記アンテナ32を介して電波の送受信を行なう無線部34、制御部36、測位情報測定部39、通信品質指標測定部40などを含んで構成されている。基地局12は例えば、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、これらの機能を行なうようにされている。さらに基地局12は通信インタフェース41などを備えて構成されている。
【0023】
アンテナ32は、前述の移動局10のアンテナ22と同様に、電波の送受信に用いられるものであって、好適には指向性のないアンテナが用いられる。無線部34は、前述の移動局10の無線部24と同様に、基地局12における電波の送受信を行なうものであり、後述する制御部36により送信状態と受信状態とが切り換えられる。電波の送信時には、無線部34は制御部36によって指示される制御内容、すなわち信号波の内容、搬送波の周波数、送信出力などにより、無線部34のそれぞれに対応するアンテナ32により電波を送信する。具体的には、無線部34は、移動局10に対しその作動を制御するための指令を送信したり、あるいは後述する基地局対を構成する基地局に対し電波を所定の出力により送信したりする。このように、無線部34は、搬送波生成回路、変調機、送信アンプ等を含んで構成されている。また無線部34は、電波の受信時にはアンテナ32によって受信された電波を増幅し、所定の復調処理などを行なうことにより信号波を取り出す。具体的には、基地局対を構成する他の基地局10から送信される電波や、測位対象である移動局10から送信される測位のための電波などが受信される。すなわち、無線部34は、受信アンプ、復調機などをも含んで構成される。無線部34は送信部および受信部に対応する。
【0024】
制御部36は、基地局12の作動を制御するものであって、具体的には無線部34により取り出されたり、後述するサーバ14から得られる情報を処理したり、指令に従って基地局12の作動を変更したりする。前記無線部34の作動、より具体的には送信出力や送信周波数などの制御や、無線により送信される信号波の生成などを行なう。制御部36は例えば既知のマイコンなどによって実装される。
【0025】
測位情報測定部39は、移動局10から送信される測位のための電波を無線部34が受信した際の受信結果であって、後述するサーバ14の移動局位置算出部48が移動局10の位置の算出に用いるための情報である測位情報を測定する。本実施例においては、この測位情報は例えば受信した電波の受信強度であり、例えば受信した電波の強度を数値化した指標であるRSSI(receive signal strength indicator)が用いられる。測位情報測定部39による受信強度の値の検出は、例えば予め定められた一定時間である受信時間区間において行なわれ、その平均が用いられる。
【0026】
通信品質指標測定部40は、基地局12の無線部34において受信した際における、受信した電波の品質に関連する指標である通信品質指標を検出する。本実施例においては、この通信品質指標は受信した電波の受信強度であり、例えば前述の測位情報測定部39において検出されるものと同じRSSIが用いられる。このようにすれば、例えば、移動局10から所定の出力により測位のための電波が送信される場合には、電波の通信状態を表わす指標であるRSSIが大きいほど、移動局10から送信される電波を強い強度で受信できる、すなわち移動局10との間で電波の伝搬距離が短く良好な通信状態であると評価することができる。また、一対の基地局12を構成する2つの基地局12が相互に同一の出力により電波を送受信する場合には、測定されるRSSIが大きい基地局12のほうがRSSIが小さい基地局12よりも妨害波の影響を大きく受けていると評価することができる。なお、上述のように測位情報測定部39および通信品質指標測定部40とが検出する対象が同一である場合には、これらが同一のハードウェアによって実現されてもよい。
【0027】
なお、本実施例の移動局測位システム8を構成する移動局10および各基地局12からそれぞれ送信される電波は、その送信元を特定するための情報が含まれるようにされ、それらの電波を受信した移動局10および各基地局12は、電波の送信元を識別することができるようにされる。具体的には例えば、移動局10および各基地局12に予め付された固有のIDについての情報が電波に含められたり、あるいは移動局10および各基地局12ごとに予め設定された拡散符号により変調が行なわれるなどすればよい。
【0028】
通信インタフェース41は、基地局12から、サーバ14や他の基地局12に対して通信ケーブル18を介して情報の送受信を行なう。例えば各基地局12からサーバ14へは、測位情報測定部39によって測定される測位情報や、通信品質指標測定部40によって検出される通信品質指標についての情報などが通信インタフェース41を介して送信される。またサーバ14から基地局12へは基地局12や移動局10の作動に関する指令などが送信され、通信インタフェース41を介して受信される。
【0029】
図4はサーバ14の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。図4に示すように、サーバ14は基地局予備選択部43、評価部44、測位基地局選択部46、移動局位置算出部48、通信インタフェース42などを機能的に有して構成される。このサーバ14は例えば、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、必要な演算などを実行するようになっている。
【0030】
通信インタフェース42は、前述の基地局12の通信インタフェース41と同様に通信ケーブル18を介して情報の送受信を行なうものであって、具体的にはサーバ14から基地局12に対して情報の送受信を行なう。例えば基地局12に対しその作動を制御するための指令を送信したり、測位情報測定部39によって測定される測定情報や、通信品質指標測定部40によって検出される通信品質指標などを基地局12から受信したりする。
【0031】
基地局予備選択部43は、各基地局12の通信品質指標測定部40によって検出される通信品質指標に基づいて、移動局測位システム8を構成する基地局12のうちから、後述する評価部44において評価の対象とする基地局として選択する。本実施例においては、基地局予備選択部43が用いる通信品質指標は、移動局10から送信される測位のための電波を受信した際に通信品質指標測定部40によって検出される受信した電波の受信強度を表わすRSSIである。具体的には基地局予備選択部43は、移動局測位システム8に含まれる基地局12のうち、このRSSIが予め定められたしきい値を上回る基地局12のみを選択する。前記しきい値は、例えば、後述する移動局位置算出部48における移動局10の位置の算出の際の誤差が許容範囲内となるように、予め実験的に、あるいはシミュレーションにより得られる値に設定される。
【0032】
評価部44は、まず、基地局予備選択部43によって選択される基地局12から、一対の基地局からなる基地局対を生成する。この基地局対の生成は、基地局予備選択部43によって選択される基地局12から生成しうる全ての組み合わせについて行なわれる。
【0033】
そして、評価部44は、生成した基地局対のそれぞれについて、各基地局対を構成する2つの基地局12について、一方の基地局12の無線部34に対し、所定の出力により送信させる一方、前記一方の基地局12から送信される電波を他方の基地局12の無線部34により受信させる。前記他方の基地局12の無線部34において電波が受信されると、通信品質指標測定部40により受信した電波についての通信品質指標、すなわち本実施例においては受信強度(RSSI)が測定され、通信ケーブル18を介した通信により、その受信強度についての情報が前記他方の基地局12からサーバ14の評価部44に送信される。続いて評価部44は、前記他方の基地局12の無線部34に対し、前記所定の出力により送信させる一方、前記他方の基地局12から送信される電波を前記一方の基地局12の無線部34により受信させる。前記一方の基地局12の無線部34において電波が受信されると、通信品質指標測定部40によりその通信品質指標としての受信強度が測定され、通信ケーブル18を介した通信により、その受信強度についての情報が前記一方の基地局12からサーバ14の評価部44に送信される。このように、上述の評価部44により実行させられる基地局12の制御作動が、通信品質指標相互測定工程に対応する。
【0034】
評価部44は続いて、前記基地局対を構成する一方の基地局から送信された電波の他方の基地局における受信強度と、前記他方の基地局から送信された電波の前記一方の基地局における受信強度とに基づいて、前記基地局対を構成する2つの基地局における妨害波による影響の小ささを評価する。具体的には前記基地局対を構成する一方の基地局から送信された電波の他方の基地局における受信強度および、前記他方の基地局から送信された電波の前記一方の基地局における受信強度の大きさを比較し、その大きさが大きい場合において電波を送信した基地局のほうが、電波を受信した基地局よりも妨害波による影響が小さいと評価する。言い換えれば、前記基地局対を構成する2つの基地局のうち、より小さな受信強度が得られた基地局12の方が、より大きな受信強度が得られた基地局12よりも妨害波による影響が小さいと評価する。
【0035】
図5を用いて、より具体的に説明する。図5は、評価部44によって作成された基地局対の一例であって、第1基地局12Aおよび第2基地局12Bから構成される基地局対を示している。前述のように、評価部44は、第1基地局12Aから所定の出力の電波を送信させるとともに、第2基地局12Bに対しその電波を受信させ、受信した電波の受信強度S12を測定させる。また、第2基地局12Bから所定の出力の電波を送信させるとともに、第1基地局12Aに対しその電波を受信させ、受信した電波の受信強度S21を測定させる。
【0036】
ここで、電波は伝搬距離に応じて減衰をすることから、第1基地局12Aの送信出力と第2基地局12Bの送信出力とが等しいものであり、反射波や妨害波の存在しない状況であれば、第1基地局12Aから送信され第2基地局12Bにおいて受信された電波の受信強度S12と、第2基地局12Bから送信され第1基地局12Aにおいて受信された電波の受信強度S21とは等しいものとなる。
【0037】
一方、図5に示すように、第1基地局12Aおよび第2基地局12Bの間に妨害波源が存在しており、妨害波が送信されている。この妨害波は、第1基地局12Aから送信され第2基地局12Bが受信する電波においても、第2基地局12Bから送信され第1基地局12Aが受信する電波においても影響を及ぼす。この妨害波も、伝搬距離に応じて減衰をすることから、妨害波の送信源(妨害波源)に近い基地局12ほど、電波の受信時に妨害波の影響が大きくなる。
【0038】
そこで、評価部44は、第1基地局12Aから送信され第2基地局12Bにおいて受信された電波の受信強度S12と、第2基地局12Bから送信され第1基地局12Aにおいて受信された電波の受信強度S21とを比較することにより、各基地局における電波の受信時における妨害波の影響の大きさを評価する。すなわち、妨害波の存在しない状況においては、受信強度S12とS21とは同一の値となるところ、妨害波の影響により、受信強度S12およびS21は妨害波に対応するだけ大きな値となる。そして、妨害波源に近いほど妨害波の影響が大きいので、受信強度が大きくなる。従って、評価部44は受信強度S12およびS21を比較し、より大きい受信強度を検出した際に電波を送信した基地局12における妨害波の影響は、電波を受信した基地局12における妨害波による影響よりも小さいと評価する。具体的には例えば、受信強度S12の大きさがS21の大きさよりも大きい、すなわちS12>S21である場合には、より大きい受信強度であるS12を検出した際に電波を送信した第1基地局12Aにおける妨害波の影響は、電波を受信した第2基地局12Bにおける妨害波による影響よりも小さいと評価する。評価部44は、このように作成した基地局対を構成する2つの基地局における、妨害波の影響の相対的な評価を行なう。
【0039】
また、評価部44は、前記基地局対を構成する一方の基地局から送信された電波の他方の基地局における受信強度と、前記他方の基地局から送信された電波の前記一方の基地局における受信強度の大きさとを比較した結果、その大きさが等しい場合には、次のように評価を行なう。なお、ここで、受信強度の大きさが等しいとは、両者の値が完全に等しい場合に限られず、例えば、測定誤差にすぎない違いである場合などのように、両者の値が等しいとみなすことができるとして予め定められた所定の範囲に含まれる場合としてもよい。
【0040】
評価部44は、前記基地局対を構成する2つの基地局が、後述される測位基地局選択部46により測位基地局として選択された選択回数を比較する。そして、その選択回数がより多い基地局を、妨害波の影響の小さい基地局12であると評価する。例えば、妨害波源が静止もしくは基地局12の配置間隔に対して十分低速で移動する場合などにおいては、基地局12の周辺の電波の伝搬環境は急激に変動することが少ないため、それまでの移動局10の測位の反復において妨害波の影響が小さいとして測位基地局として選択された選択回数の多い基地局のほうが、妨害波の影響が小さいと判断されるためである。
【0041】
具体的には例えば、第1基地局12Aから送信され第2基地局12Bにおいて受信された電波の受信強度S12と、第2基地局12Bから送信され第1基地局12Aにおいて受信された電波の受信強度S21とが等しい場合には、評価部44は、基地局対を構成する第1基地局12Aおよび第2基地局12Bの選択回数を比較する。そして、第1基地局12Aの選択回数のほうが第2基地局12Bの選択回数よりも多い場合には、第1基地局12Aにおける妨害波の影響は、電波を受信した第2基地局12Bにおける妨害波による影響よりも小さいと評価する。
【0042】
評価部44は更に、評価部は前記基地局予備選択部43によって選択された基地局12から生成しうる全ての基地局対の組み合わせについて基地局対を生成し、基地局対を構成する2つの基地局12における、妨害波の影響の相対的な評価を前述のように行なう。そして、評価部44は前記基地局予備選択部43によって選択された基地局12から生成しうる全ての基地局対のそれぞれを構成する基地局12における、妨害波の影響の相対的な評価に基づいて、全ての基地局12における相対的な妨害波の影響の評価を行なう。
【0043】
図6は、評価部44による、前記基地局予備選択部43によって選択された全ての基地局12における相対的な妨害波の影響の評価を説明する図である。図6においては、基地局予備選択部43によって第1基地局12A乃至第4基地局12Dの4つの基地局が選択されている。評価部44は、この4つの基地局から構成される基地局対、すなわち、第1基地局12Aと第2基地局12Bとから構成される基地局対、第1基地局12Aと第3基地局12Cとから構成される基地局対、第1基地局12Aと第4基地局12Dとから構成される基地局対、第2基地局12Bと第3基地局12Cとから構成される基地局対、第2基地局12Bと第4基地局12Dとから構成される基地局対、第3基地局12Cと第4基地局12Dとから構成される基地局対をそれぞれ生成するとともに、各基地局対を構成する一方の基地局12の無線部34に対し、所定の出力により送信させる一方、前記一方の基地局12から送信される電波を他方の基地局12の無線部34により受信させ、通信品質指標測定部40によりその通信品質指標としての受信強度を測定させる。さらに、前記他方の基地局12の無線部34に対し、前記所定の出力により送信させる一方、前記他方の基地局12から送信される電波を前記一方の基地局12の無線部34により受信させ、通信品質指標測定部40によりその受信強度を測定させる。このようにして、評価部44は各基地局12間の電波の送受信によって得られる受信強度であるS12、S21、S13、S31、S14、S41、S23、S32、S24、S42、S34、S43をそれぞれ得る。ここで、Smn(mおよびnは1乃至4のいずれかの数で、mとnとは異なる数)は、第m基地局から送信された電波を第n基地局が受信した際の受信強度を表わす。
【0044】
続いて評価部44は、基地局対のそれぞれに対応して得られた受信強度SmnおよびSnmに基づいて、その基地局対を構成する2つの基地局における妨害波の影響の相対的な評価を行なう。前述のように、Smn>Snmである場合には、より大きい受信強度であるSmnを検出した際に電波を送信した第m基地局における妨害波の影響は、電波を受信した第n基地局における妨害波による影響よりも小さいと評価する。これを全ての基地局対について行なう。例えば、図6の例において、S12>S21であるとして、第1基地局12Aにおける妨害波の影響は、第2基地局12Bにおける妨害波による影響よりも小さいと評価し、S13>S31であるとして、第1基地局12Aにおける妨害波の影響は、第3基地局12Cにおける妨害波による影響よりも小さいと評価し、S14>S41であるとして、第1基地局12Aにおける妨害波の影響は、第4基地局12Dにおける妨害波による影響よりも小さいと評価し、S32>S23であるとして、第3基地局12Cにおける妨害波の影響は、第2基地局12Bにおける妨害波による影響よりも小さいと評価し、S24>S42であるとして、第2基地局12Bにおける妨害波の影響は、第4基地局12Dにおける妨害波による影響よりも小さいと評価し、S34>S43であるとして、第3基地局12Cにおける妨害波の影響は、第4基地局12Dにおける妨害波による影響よりも小さいと評価する。
【0045】
さらに評価部44は、このようにして得られた各基地局対を構成する基地局12における妨害波の影響の相対的な評価に基づいて、基地局予備選択部43によって選択された全ての基地局12における妨害波の影響の相対的な評価を行なう。具体的に図6の例を用いて説明すると、第1基地局12Aにおける妨害波の影響は第2基地局12Bにおける妨害波による影響よりも小さく、第1基地局12Aにおける妨害波の影響は第3基地局12Cにおける妨害波による影響よりも小さく、第1基地局12Aにおける妨害波の影響は第4基地局12Dにおける妨害波による影響よりも小さく、第3基地局12Cにおける妨害波の影響は第2基地局12Bにおける妨害波による影響よりも小さく、第2基地局12Bにおける妨害波の影響は第4基地局12Dにおける妨害波による影響よりも小さく、第3基地局12Cにおける妨害波の影響は第4基地局12Dにおける妨害波による影響よりも小さいと評価されているので、これら第1基地局12A乃至第4基地局12Dにおける妨害波の影響は、第1基地局12Aが最も小さく、以下、第3基地局12C、第2基地局12B、第4基地局12Dの順で大きくなると評価される。なお、この評価部44による各基地局12の評価の際の制御作動が評価工程に対応する。
【0046】
図4に戻って、測位基地局選択部46は、基地局予備選択部43により選択された基地局12のうちから、評価部44によって行なわれたそれら各基地局12における妨害波の影響の小ささの評価に基づいて、後述する移動局位置算出部48において移動局10の位置の算出に用いられる基地局である所定数の測位基地局を選択する。本実施例においては、評価部44によって妨害波の影響が相対的に最も小さいと評価された基地局から順に、移動局位置算出部48において移動局10の位置を算出するのに必要な最小の数の基地局12が前記所定数の測位基地局として選択される。この測位基地局選択部46による作動が選択工程に対応する。
【0047】
前述の図6の例により説明する。図6のように移動局10が平面上を移動する場合には、後述するように移動局位置算出部48は、移動局10から送信された電波を少なくとも3局の基地局12における受信結果を用いて、移動局10の位置の算出を行なうことが可能である。従って、移動局位置算出部48において移動局10の位置を算出するのに必要な最小の基地局12の数は3である。一方、前述のように評価部44は、妨害波の影響は、第1基地局12Aが最も小さく、以下、第3基地局12C、第2基地局12B、第4基地局12Dの順で大きくなると評価する。測位基地局選択部46は、妨害波の影響が小さい順に3局の基地局を測位基地局として選択するので、図6の例においては、第1基地局12A、第3基地局12C、第2基地局12Bの3つの基地局12が測位基地局として選択される。また、測位基地局選択部46による測位基地局の選択結果は、各基地局12が測位基地局として選択された回数として各基地局12毎に例えば図示しない記憶装置などに記録されており、測位基地局選択部46による測位基地局の選択が行なわれる毎に更新される。
【0048】
測位基地局選択部46を含む移動局測位システム8における測位基地局の選択方法が、本願発明の無線局選択方法に対応する。したがって、移動局測位システム8は無線局選択システム9を包含する。
【0049】
移動局位置算出部48は、測位基地局選択部46によって選択された測位基地局を用いて移動局10の位置の算出を行なう。具体的には移動局位置算出部48は、測位基地局選択部46によって測位基地局として選択された基地局12のそれぞれの測位情報測定部39において測定される測位情報に基づいて、移動局10の位置を算出する。
【0050】
本実施例においては、測位情報測定部39によって測定される測位情報は、移動局10から送信される測位のための電波の受信強度(例えばRSSI)である。図7は、移動局10から所定の出力により送信された電波を受信した際の受信強度と、電波の伝搬距離D、すなわち移動局10と基地局12との距離との関係を表わす図である。この図7に示すように、移動局10から送信された測位のための電波の受信強度と、移動局10と基地局12との距離とは1対1の関係にある。したがって、この図7に示す関係をサーバ14の図示しないメモリなどの記憶装置などに予め記憶しておき、この関係に基づいて各基地局12における測位情報であるRSSIをそれぞれの基地局12と移動局10との距離に変換することができる。このようにして、移動局位置算出部48は測位基地局のそれぞれと移動局10との距離を算出する。
【0051】
移動局位置算出部48は続いて、算出された基地局組を構成する各基地局12のそれぞれと移動局10との距離と、予め既知とされ、前記記憶装置に記憶されている各測位基地局の位置についての情報とに基づいて、移動局10の位置を算出する。例として、測位基地局選択部46が、第1基地局12A、第3基地局12C、第2基地局12Bの3つの基地局12を測位基地局として選択した場合について、移動局位置算出部48が移動局10の位置を算出する過程について図8を用いて説明する。
【0052】
図8は、移動局位置算出部48による移動局10の位置の算出の原理を説明する図である。移動局10の位置を表わす座標が(x、y)、第1基地局12Aの位置を表わす座標が(xa,ya)、第2基地局12Bの位置を表わす座標が(xb,yb)、第3基地局12Cの位置を表わす座標が(xc,yc)であるとすると、これらの関係は次式(1)により得られる。なお、図8における基地局12の配置は説明を簡単にするため図1のものと異なっている。
(xa - x)2 + (ya - y)2= r12
(xb - x)2 + (yb - y)2= r22 ・・・(1)
(xc - x)2 + (yc - y)2= r32
ここで、r1、r2およびr3(m)はそれぞれ、第1基地局12A、第2基地局12B、および、第3基地局12Cのそれぞれから移動局10までの距離であって、前述のように測位情報であるRSSIと図8に示す関係とから得られる値である。そして、移動局位置算出部48は前記(1)式を解くことにより、移動局10の位置(x,y)を算出する。このように、基地局12の位置およびその基地局12と移動局10との距離に基づいて移動局10の位置を算出する場合、前記(1)式として3本以上の式があれば、移動局10の位置を解として算出することができる。すなわち、移動局10から送信される測位のための電波を少なくとも3局以上の基地局12によって受信できればよい。従って、本実施例においては、測位基地局選択部46は少なくとも3局の基地局を測位基地局として選択する。
【0053】
図9は本実施例の移動局測位システム8における制御作動の一例を説明するフローチャートであって、移動局10、2つの基地局である第1基地局12Aおよび第2基地局12B、およびサーバ14のそれぞれの制御作動を説明する図である。なお、図9においては、基地局の作動を説明する例として、第1基地局12Aおよび第2基地局12Bのフローチャートが示されているが、移動局測位システム8に含まれる基地局の代表的な基地局12の作動を表わすものであって、第1基地局12Aおよび第2基地局12Bの作動に限定されるものではない。
【0054】
まず、ステップ(以下「ステップ」を省略する。)SA1においてはサーバ14から各基地局12のそれぞれに対し、移動局10の測位を実行するための指令が行なわれる。この指令は、(1)複数の基地局12のいずれか1つ(以下「代表基地局」という。)に対し、移動局10に測位のための電波を送信させるための指令を基地局12の無線部34から移動局10に送信させる指令と、(2)複数の基地局12のそれぞれに対し、移動局10から送信される測位のための電波を受信し、測位情報測定部39において前記測位情報を測定させ、また、通信品質指標測定部40により移動局10と各基地局12との間の通信品質指標を検出させる指令とを含む。このうち、前記(1)の指令は、サーバ14は無線通信のための電波の送受信などについての機能を有していないために、サーバ14から移動局10への指令はいずれかの基地局12の有する無線部34を介して行なわれることによるものであって、前記いずれか1つの基地局12である代表基地局は、例えば、任意に選択される基地局12とされる。
【0055】
SA2およびSA3においては、それぞれの基地局12において、サーバ14からのSA1の指令が受信されたか否かが待機される。サーバ14からのSA1の指令が受信される場合には、本ステップの判断が肯定され、続くSA4もしくはSA5が実行される。なお、少なくとも1つの基地局に対してはサーバ14から前記(1)の指令が行なわれることから、いずれか1つの基地局においては本ステップの判断が肯定される。サーバ14からのSA1の指令が受信されない場合には、本ステップの判断が否定され、繰り返しSA1が実行されて、サーバ14からのSA1の指令が受信されるまで待機が行なわれる。
【0056】
SA4およびSA5は、それぞれSA2およびSA3の判断が肯定された場合、すなわち、代表基地局に該当する場合に実行されるステップであって、SA2もしくはSA3で受信されたサーバ14から前記(1)の指令を受信したか否かが判断される。前記(1)の指令を受信した基地局12、すなわち代表基地局においては本ステップの判断が肯定され、SA6もしくはSA7が実行される。また、前記(1)の指令を受信せず、(2)の指令のみを受信した基地局12においては、本ステップの判断が否定され、SA6およびSA7が実行されることなく、移動局10から送信される測位のための電波の受信が行なわれる。
【0057】
SA6およびSA7においては、移動局10に測位のための電波を送信させるための指令が無線により移動局10に対して送信される。この移動局10への指令の送信が行なわれた後、移動局10から送信される測位のための電波の受信が行なわれる。
【0058】
SA8においては、移動局10において、測位のための電波の送信を行なうための指令(SA6もしくはSA7の指令)が受信されたか否かが待機される。移動局10において測位のための電波の送信を行なうための指令が受信された場合には本ステップの判断が肯定され、続くSA9が実行される。一方、測位のための電波の送信を行なうための指令が受信されない場合には本ステップの判断が否定され、繰り返しSA8が実行されて、測位のための電波の送信を行なうための指令が受信されるまで待機が行なわれる。
【0059】
移動局10の無線部24などに対応するSA9においては、移動局10から測位のための電波の送信が行なわれる。この測位のための電波の送信は予め定められた出力により行なわれる。
【0060】
各基地局12の無線部34、測位情報測定部39、通信品質指標測定部40などに対応するSA10、SA11においては、移動局10から送信される測位のための電波が受信され、その受信結果に関し、測位に用いられる値である測位情報の値が測定される。また、測位のための電波を送信した移動局10と受信した基地局12との間の電波の通信状態を表わす通信品質指標が測定される。本実施例においては、測位情報は、受信した電波の強度を表わすRSSIであり、また、通信品質指標もまた、受信した電波の強度を表わすRSSIとされているので、このRSSIが測定される。さらに、測定された測位情報および通信品質指標についての情報が、通信ケーブル18等を介してサーバ14に送信される。
【0061】
サーバ14の通信インタフェース42などに対応するSA12においては、SA10、SA11などにおいて移動局測位システム8に含まれる基地局12であって、移動局10からの測位のための電波を受信した基地局12において測定された通信品質指標および測位情報についての情報が取得される。
【0062】
基地局予備選択部43に対応するSA13においては、SA12で取得された各基地局における通信品質指標に基づいて、妨害波の影響の小ささの評価を行なう対象とする基地局の選択が行なわれる。具体的には例えば、この選択は、SA12で取得された各基地局における通信品質指標であるRSSIが予め定められたしきい値を上回ったことに基づいて行なわれる。
【0063】
評価部44に対応するSA14においては、SA13で選択された基地局から生成しうる全ての組み合わせについて基地局対が生成される。そして、生成された基地局対から、いずれか1の基地局対(図9のフローチャートに示した例においては第1基地局12Aと第2基地局12Bとから構成される基地局対)が選択され、選択された基地局対を構成する一方の基地局(図9のフローチャートにおいては第1基地局12A)に対し、所定の出力により電波を送信するように指示が行なわれる。
【0064】
前記一方の基地局に対応する基地局12の無線部34などに対応するSA15においては、予め設定された所定の出力により、電波の送信が行なわれる。
【0065】
SA14において選択された基地局対の他方の基地局12(図9のフローチャートにおいては第2基地局12B)の通信品質指標測定部40に対応するSA16においては、SA15において前記一方の基地局から送信される電波の受信が行なわれ、受信した電波についての通信品質指標としての受信強度(図9においてはS12)が例えばRSSIとして測定される。そして、測定された受信強度(図9においてはS12)についての情報はサーバ14に送信される。
【0066】
サーバ14の通信インタフェース42などに対応するSA17においては、SA15において前記一方の基地局から送信された電波が、SA16において前記他方の基地局により受信された際に測定された受信強度(図9においてはS12)についての情報が取得される。取得された情報は、例えば図示しない記憶手段などに読み出し可能に記憶される。
【0067】
続いて、評価部44に対応するSA18においては前記選択された基地局対を構成する他方の基地局(図9のフローチャートにおいては第2基地局12B)に対し、所定の出力により電波を送信するように指示が行なわれる。
【0068】
前記他方の基地局に対応する基地局12の無線部34などに対応するSA19においては、予め設定された所定の出力により、電波の送信が行なわれる。
【0069】
前記一方の基地局12(図9のフローチャートにおいては第1基地局12A)の通信品質指標測定部40に対応するSA20においては、SA19において前記他方の基地局12から送信される電波の受信が行なわれ、受信した電波についての通信品質指標として受信強度(図9においてはS21)が例えばRSSIとして測定される。そして、測定された受信強度(図9においてはS21)についての情報はサーバ14に送信される。
【0070】
サーバ14の通信インタフェース42などに対応するSA21においては、SA19において前記他方の基地局12から送信された電波が、SA20において前記一方の基地局12により受信された際に測定された受信強度(図9においてはS21)についての情報が取得される。取得された情報は、例えば図示しない記憶手段などに読み出し可能に記憶される。
【0071】
評価部44に対応するSA22においては、SA14で選択された基地局対を構成する各基地局における妨害波の影響の小ささを評価するための基地局対影響評価ルーチンが実行される。
【0072】
図10はこの基地局対影響評価ルーチンにおける制御作動の一例を説明するフローチャートである。まず、SB1においては、SA17で取得される受信強度、すなわちSA14で選択された基地局対を構成する一方の基地局である第m基地局(図9においては第1基地局)から送信された電波が他方の基地局である第n基地局(図9においては第2基地局)により受信された際の受信強度Smn(図9においてはS12)と、前記他方の基地局である第n基地局(図9においては第2基地局)から送信された電波が前記一方の基地局第m基地局(図9においては第1基地局)により受信された際の受信強度Snm(図9においてはS21)とが、例えばそれら受信強度についての情報が記憶された記憶手段などから読み出される。なお、図10乃至12においては、第m基地局、第n基地局はそれぞれ基地局m、基地局nと記載されている。
【0073】
続くSB2においては、SB1で読み出された2つの受信強度の値の大きさが比較される。具体的には、SA17で選択された基地局対が第m基地局と第n基地局とから構成される基地局対である場合には、前記一方の基地局である第m基地局から送信された電波が他方の基地局である第n基地局により受信された際の受信強度Smnと、第n基地局から送信された電波が第m基地局により受信された際の受信強度Snmとが比較される。そして、第m基地局から送信された電波が第n基地局により受信された際の受信強度Smnが、第n基地局から送信された電波が第m基地局により受信された際の受信強度Snmよりも大きい場合には、本ステップの判断が肯定され、SB3が実行される。一方、第n基地局から送信された電波が第m基地局により受信された際の受信強度Snmが、第m基地局から送信された電波が第n基地局により受信された際の受信強度Smnよりも大きい、もしくは両者が等しい場合には、本ステップの判断が否定され、SB4が実行される。
【0074】
SB3においては、SB2の判断に基づいて、受信強度の大きさが大きい場合において電波を送信した基地局のほうが、電波を受信した基地局よりも妨害波による影響が小さいと評価される。すなわち、第m基地局から送信された電波が第n基地局により受信された際の受信強度Smnが、第n基地局から送信された電波が第m基地局により受信された際の受信強度Snmよりも大きい場合に実行されるSB3においては、受信強度Smnの送受信時において電波を送信した基地局である第m基地局のほうが電波を受信した基地局である第n基地局よりも妨害波による影響が小さいと評価される。言い換えれば、本ステップSB3においては、第m基地局から送信された電波が第n基地局により受信された際の受信強度Smnよりも、第n基地局から送信された電波が第m基地局により受信された際の受信強度Snmのほうが小さいので、より小さな受信強度が得られた第m基地局が、より大きな受信強度が得られた第n基地局よりも妨害波による影響が小さいと評価される。
【0075】
SB2の判断が否定された場合に実行されるSB4においては、第n基地局から送信された電波が第m基地局により受信された際の受信強度Snmが、第m基地局から送信された電波が第n基地局により受信された際の受信強度Smnと等しいか否かが判断される。両者が等しい場合には、本ステップの判断は肯定され、SB6が実行される。一方、両者が等しくない場合、すなわち、第n基地局から送信された電波が第m基地局により受信された際の受信強度Snmが、第m基地局から送信された電波が第n基地局により受信された際の受信強度Smnよりも大きい場合には、本ステップの判断が否定され、SB5が実行される。
【0076】
SB5においては、SB4の判断に基づいて、受信強度の大きさが大きい場合において電波を送信した基地局のほうが、電波を受信した基地局よりも妨害波による影響が小さいと評価される。すなわち、第n基地局から送信された電波が第m基地局により受信された際の受信強度Snmが、第m基地局から送信された電波が第n基地局により受信された際の受信強度Smnよりも大きい場合に実行されるSB5においては、受信強度Snmの送受信時において電波を送信した基地局である第n基地局のほうが電波を受信した基地局である第m基地局よりも妨害波による影響が小さいと評価される。
【0077】
第n基地局から送信された電波が第m基地局により受信された際の受信強度Snmが、第m基地局から送信された電波が第n基地局により受信された際の受信強度Smnと等しい場合に実行されるSB6においては、第m基地局と第n基地局との何れにおける妨害波による影響が小さいかを判定する判定ルーチンが実行される。
【0078】
図11は判定ルーチンにおける制御作動の一例を説明するフローチャートである。まずステップ(以下「ステップ」を省略する。)SC1においては、第m基地局と第n基地局のそれぞれについて、これまでにおける測位基地局としての選択回数が図示しない記憶手段から読み出される。後述するように、測位基地局選択部46に対応するSA24においては、測位基地局が選択されるごとに、その結果が、各基地局12が測位基地局として選択された回数として各基地局12毎に例えば図示しない記憶装置などに記録されるので、移動局測位システム8による移動局10の位置の算出(測位)、すなわち図9のフローチャートが繰り返し実行される場合には、各基地局12が測位基地局として選択された例えば測位の開始時からの累積回数である選択回数が記憶されている。この選択回数が読み出される。
【0079】
SC2においては、第m基地局の選択回数と第n基地局の選択回数とが比較される。第m基地局の選択回数が第n基地局の選択回数を上回る場合には、本ステップの判断が肯定されSC3が実行される。一方、第m基地局の選択回数が第n基地局の選択回数を下回るもしくは等しい場合には、本ステップの判断が否定されSC4が実行される。
【0080】
第m基地局の選択回数が第n基地局の選択回数を上回る場合に実行されるSC3においては、第m基地局における妨害波の影響のほうが、第n基地局における妨害波の影響よりも小さいと判断される。例えば、妨害波源が静止もしくは基地局12の配置間隔に対して十分低速で移動する場合などにおいては、基地局12の周辺の電波の伝搬環境は急激に変動することが少ないため、それまでの移動局10の測位の反復において妨害波の影響が小さいとして測位基地局として選択された回数の多い基地局のほうが、妨害波の影響が小さいと判断されるためである。
【0081】
第m基地局の選択回数が第n基地局の選択回数を下回る、もしくは両者が等しい場合に実行されるSC4においては、SC3と同様の理由により、第n基地局における妨害波の影響のほうが、第m基地局における妨害波の影響よりも小さいと判断される。
【0082】
図9に戻って、SA14乃至SA22の工程は、本図においては、第1基地局12Aおよび第2基地局12Bについて示したが、実際にはSA13において選択された基地局によって構成される全ての組み合わせの基地局対に対して実行される。
【0083】
評価部44に対応するSA23は、SA14乃至SA22の工程が、SA13において選択された基地局によって構成される全ての組み合わせの基地局対に対して実行されることによって得られる、各基地局対を構成する基地局における妨害波の影響の小ささについての評価に基づいて、SA13において選択された基地局の全てに対する妨害波の影響の小ささの評価、すなわち順位づけが行なわれる。具体的に図6の例を用いて説明する。SA13において第1基地局12A乃至第4基地局12Dの4つの基地局が選択された場合において、SA14乃至SA22を繰り返し実行することにより、第1基地局12Aにおける妨害波の影響は第2基地局12Bにおける妨害波による影響よりも小さく、第1基地局12Aにおける妨害波の影響は第3基地局12Cにおける妨害波による影響よりも小さく、第1基地局12Aにおける妨害波の影響は第4基地局12Dにおける妨害波による影響よりも小さく、第3基地局12Cにおける妨害波の影響は第2基地局12Bにおける妨害波による影響よりも小さく、第2基地局12Bにおける妨害波の影響は第4基地局12Dにおける妨害波による影響よりも小さく、第3基地局12Cにおける妨害波の影響は第4基地局12Dにおける妨害波による影響よりも小さいと評価されているとすると、SA23においては、これら第1基地局12A乃至第4基地局12Dにおける妨害波の影響は、第1基地局12Aが最も小さく、以下、第3基地局12C、第2基地局12B、第4基地局12Dの順で大きくなると評価される。
【0084】
測位基地局選択部46に対応するSA24においては、SA23においてなされた、SA13において選択された基地局の全てに対する妨害波の影響の小ささの評価、すなわち順位づけの結果に基づいて、SA25において行なわれる移動局10の位置の算出に用いられる基地局12である測位基地局が選択される。具体的には例えば、SA23において行なわれた順位づけに従って、すなわち妨害波の影響が小さいとされる順に、SA25において移動局10の位置の算出に必要な最小の数だけ、基地局12が測位基地局として選択される。前述の例のように、SA23において妨害波の影響が、第1基地局12Aが最も小さく、以下、第3基地局12C、第2基地局12B、第4基地局12Dの順で大きくなると評価される場合に、SA25において移動局10の位置の算出に必要な最小の基地局の数が3局である場合には、第1基地局12A、第3基地局12C、第2基地局12Bが測位基地局として選択される。また、本ステップにおける測位基地局の選択結果は、各基地局12が測位基地局として選択された回数として各基地局12毎に記録されており、本ステップが実行され測位基地局の選択が行なわれる毎に更新される。
【0085】
移動局位置算出部48に対応するSA25においては、SA12においてサーバに取得された各基地局12における測位情報のうち、SA24において測位基地局として選択された基地局12において特定された測位情報が抽出される。そして、これら測位基地局によって測定された測位情報と、予め既知とされ例えばサーバ14の図示しない記憶装置などに記憶されている各測位基地局の位置についての情報とに基づいて、移動局10の位置の算出が行なわれる。具体的には例えば、各測位基地局における測位情報と、各測位基地局の位置についての情報とに基づいて各測位基地局と移動局10との位置関係を表わす前記(1)式を導き、これらを連立させて解くことにより、その解(x,y)として移動局10の位置が算出される。
【0086】
前述の実施例によれば、通信品質指標測定部40により、複数の基地局12から一または複数の基地局対が選択され、選択された基地局対について、一方から所定の出力により送信される電波を他方で受信した際の、該他方における通信品質指標としての受信強度が測定されるとともに、該他方から所定の出力により送信される電波を該一方で受信した際の、該一方における通信品質指標としての受信強度が測定され、評価部44により、前記通信品質指標測定部40によって基地局対ごとに測定される前記一方における受信強度および前記他方における受信強度に基づいて、前記一または複数の基地局対を構成する基地局が妨害波による影響の小ささにより評価され、前記測位基地局選択部46により、前記評価部44により妨害波による影響が小さいと評価された順に前記基地局12が選択されるので、前記複数の基地局12から、基地局対ごとに測定される前記一方における受信強度および前記他方における受信強度に基づいて、妨害波による影響の小さい基地局を選択することができる。
【0087】
また、前述の実施例によれば、通信品質指標測定部40は、通信品質指標として受信した電波の受信強度を測定するものであり、評価部44は、基地局対を構成する2つの基地局12のうち、より小さな受信強度が得られた基地局が、より大きな受信強度が得られた基地局よりも妨害波による影響が小さいと評価するので、受信強度の大きさは妨害波の影響を受けることによって大きくなることを利用して、通信品質指標測定部40によって測定される、前記基地局対を構成する2つの基地局12のそれぞれにおける受信強度の値に基づいて、妨害波による影響の大きさを評価することができる。
【0088】
また、前述の実施例によれば、測位基地局選択部46は、評価部44により妨害波による影響が等しいと評価された複数の基地局12のうち、過去に選択された回数の多い基地局を選択するので、評価部44により妨害波による影響が等しいと評価された複数の基地局12が存在する場合であっても、前記基地局対ごとに測定される前記一方における受信強度および前記他方における受信強度に基づいて、妨害波による影響の小さい無線局を選択することができる。
【0089】
また、前述の実施例によれば、移動局測位システム8においては、複数の基地局12の有する無線部34により所定の出力により電波が送信されるとともに、電波が受信され、通信品質指標測定部40により、無線部34によって受信された電波の通信品質指標としての受信強度が例えばRSSIにより検出される。また、測位基地局選択部46により、複数の基地局12から妨害波による影響が小さいと評価された順に所定数の測位基地局が選択され、移動局位置算出部48により、測位基地局選択部46により選択される測位基地局と移動局10とのいずれか一方から送信される電波を他方が受信した際の受信結果に基づいて移動局10の位置が算出されるので、妨害波による影響の小さい基地局として測位基地局を選択することができ、移動局10の位置の算出を精度よく行なうことができる。
【0090】
また、前述の実施例によれば、移動局測位システム8は、移動局10と複数の基地局12のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、移動局10と複数の基地局12のそれぞれとの無線通信における通信品質指標を算出する通信品質指標測定部40を有し、測定される通信品質指標に基づいて移動局10との通信が良好に行なわれると判断される基地局12を選択する基地局予備選択部43を有し、測位基地局選択部46は、基地局予備選択部43によって選択された基地局12から測位基地局を選択するので、妨害波による影響が少なく、また、移動局10との通信が良好に行なわれる無線局12を測位基地局として選択することができ、移動局10の位置の算出を精度よく行なうことができる。また、移動局10との通信が良好に行なわれる基地局を対象として測位基地局選択部46による測位基地局の選択が行なわれるので、測位基地局の選択などに要する演算量を低減することができ、演算に要する時間や演算装置における消費電力の低減を図ることができる。
【0091】
続いて、本発明の別の実施例について説明する。以下の説明において、実施例相互に共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0092】
本実施例は、測位基地局選択部46の前述の実施例とは異なる作動に関するものであって、具体的には、基地局対を構成する一方の基地局から送信された電波の他方の基地局における受信強度と、前記他方の基地局から送信された電波の前記一方の基地局における受信強度の大きさとが等しい基地局対が存在する場合における、測位基地局の選択作動に関するものである。
【0093】
本実施例においては、評価部44(図4参照)は、前記基地局対を構成する一方の基地局から送信された電波の他方の基地局における受信強度と、前記他方の基地局から送信された電波の前記一方の基地局における受信強度の大きさとを比較した結果、その大きさが等しい場合には、両基地局における妨害波の影響の大きさは等しいと評価する。なお、ここで、受信強度の大きさが等しいとは、前述の実施例と同様に、両者の値が完全に等しい場合に限られず、例えば、両者の値が等しいとみなすことができるとして予め定められた所定の範囲に含まれる場合としてもよい。
【0094】
このようにして、評価部44は全ての基地局対のそれぞれに対応して得られた受信強度に基づいて、その基地局対を構成する2つの基地局における妨害波の影響の相対的な評価を行なう。前述のように、Smn>Snmである場合には、より大きい受信強度であるSmnを検出した際に電波を送信した第m基地局における妨害波の影響は、電波を受信した第n基地局における妨害波による影響よりも小さいと評価する。これを全ての基地局対について行なう。例えば、図6の例において、S12>S21であるとして、第1基地局12Aにおける妨害波の影響は、第2基地局12Bにおける妨害波による影響よりも小さいと評価し、S13>S31であるとして、第1基地局12Aにおける妨害波の影響は、第3基地局12Cにおける妨害波による影響よりも小さいと評価し、S14>S41であるとして、第1基地局12Aにおける妨害波の影響は、第4基地局12Dにおける妨害波による影響よりも小さいと評価し、S32>S23であるとして、第3基地局12Cにおける妨害波の影響は、第2基地局12Bにおける妨害波による影響よりも小さいと評価し、S24=S42であるとして、第2基地局12Bにおける妨害波の影響と、第4基地局12Dにおける妨害波による影響とは等しいと評価し、S34>S43であるとして、第3基地局12Cにおける妨害波の影響は、第4基地局12Dにおける妨害波による影響よりも小さいと評価する。
【0095】
さらに評価部44は、このようにして得られた各基地局対を構成する基地局12における妨害波の影響の相対的な評価に基づいて、基地局予備選択部43によって選択された全ての基地局12における妨害波の影響の相対的な評価を行なう。具体的に図6の例を用いて説明すると、第1基地局12Aにおける妨害波の影響は第2基地局12Bにおける妨害波による影響よりも小さく、第1基地局12Aにおける妨害波の影響は第3基地局12Cにおける妨害波による影響よりも小さく、第1基地局12Aにおける妨害波の影響は第4基地局12Dにおける妨害波による影響よりも小さく、第3基地局12Cにおける妨害波の影響は第2基地局12Bにおける妨害波による影響よりも小さく、第2基地局12Bにおける妨害波の影響と第4基地局12Dにおける妨害波による影響とは等しく、第3基地局12Cにおける妨害波の影響は第4基地局12Dにおける妨害波による影響よりも小さいと評価されているので、これら第1基地局12A乃至第4基地局12Dにおける妨害波の影響は、第1基地局12Aが最も小さく、以下、第3基地局12C、第2基地局12Bの順で大きくなると評価され、第2基地局12Bと第4基地局12Dとは等しいと評価される。
【0096】
一方、測位基地局選択部46は、前述の実施例と同様に、基地局予備選択部43により選択された基地局12のうちから、評価部44によって行なわれたそれら各基地局12における妨害波の影響の小ささの評価に基づいて、後述する移動局位置算出部48において移動局10の位置の算出に用いられる基地局である所定数の測位基地局を選択する。本実施例においては、評価部44によって妨害波の影響が相対的に最も小さいと評価された基地局から順に、移動局位置算出部48において移動局10の位置を算出するのに必要な最小の数の基地局12が前記所定数の測位基地局として選択される。この測位基地局選択部46による作動が選択工程に対応する。
【0097】
しかしながら、本実施例においては、評価部44によって、複数の基地局12における妨害波の影響が等しいと評価される場合がある。かかる場合においては、測位基地局選択部46による測位基地局の選択を行なうことができない場合がある。具体的には例えば、前述のように第1基地局12A乃至第4基地局12Dにおける妨害波の影響が、第1基地局12Aが最も小さく、以下、第3基地局12C、第2基地局12Bの順で大きくなると評価され、第2基地局12Bと第4基地局12Dとは等しいと評価される場合において、3つの基地局12を測位基地局として選択する場合がこれに該当する。すなわち、妨害波の影響の小さい順に3局の基地局12を測位基地局として選択しようとすると、3局目の測位基地局として、妨害波の影響が等しいと評価された第2基地局12Bと第4基地局12Dの何れを選択するかが問題となるためである。
【0098】
かかる場合において、測位基地局選択部46は次のように測位基地局の選択を行なう。まず測位基地局選択部46は、評価部44により妨害波の影響が等しいと評価された複数の基地局12について、それらの基地局12のそれぞれと移動局10との間の電波の送受信における電波の通信状態を表わす指標を取得し、比較する。この電波の通信状態を表わす指標としては、例えば、移動局10から送信される測位のための電波を各基地局12の無線部34において受信した際に通信品質指標測定部40において測定される、通信品質指標が用いられる。そして、比較の結果、前記電波の通信状態を表わす指標に基づいて、移動局10との電波の通信がより良好に行なわれたと判断される基地局12から順に、測位基地局として選択する。
【0099】
前述の例、すなわち、第1基地局12A乃至第4基地局12Dにおける妨害波の影響が、第1基地局12Aが最も小さく、以下、第3基地局12C、第2基地局12Bの順で大きくなると評価され、第2基地局12Bと第4基地局12Dとは等しいと評価される場合において、3つの基地局12を測位基地局として選択する場合について説明する。測位基地局選択部46は、妨害波の影響の小さい順にまず、第1基地局12Aおよび第3基地局12Cを選択する。続いて次に妨害波の影響の小さい基地局は、妨害波の影響が等しいと評価された第2基地局12Bと第4基地局12Dの2つが存在するので、これら第2基地局12Bおよび第4基地局12Dのそれぞれの通信品質指標測定部40において測定された通信品質指標の値を比較し、移動局10との通信がより良好に行なわれたと判断される基地局を3番目の測位基地局として選択する。本実施例においては、通信品質指標測定部40によって測定される通信品質指標は、電波の強度を表わすRSSIであるので、第2基地局12Bおよび第4基地局12DのそれぞれにおけるRSSIがより大きい基地局12、すなわち移動局10から送信される電波をより強い強度で受信した基地局12が、移動局10との通信がより良好に行なわれた基地局であるとされ、測位基地局選択部46により3番目の測位基地局として選択される。
【0100】
なお、本実施例においては、前述の実施例と異なり、測位基地局選択部46による測位基地局の選択結果は、各基地局12が測位基地局として選択された回数として各基地局12毎に例えば図示しない記憶装置などに記録される必要はない。
【0101】
続いて、本実施例における移動局測位システム8の制御作動の一例を説明する。本実施例においても、前述の実施例1と同様、移動局測位システム8の制御作動は図9および図10に示すフローチャートに従って行なわれる。以下においては、実施例1において説明した制御作動と異なる部分について説明する。
【0102】
図10のフローチャートは、図9のSA22において実行される基地局対影響評価ルーチンにおける制御作動を説明するものである。この図10のフローチャートにおいて、SB4の判断が肯定される場合、すなわち、第n基地局から送信された電波が第m基地局により受信された際の受信強度Snmが、第m基地局から送信された電波が第n基地局により受信された際の受信強度Smnと等しい場合に実行されるSB6においては、前述の実施例においては、図11に示す判定ルーチンが実行され、第m基地局と第n基地局との何れにおける妨害波による影響が小さいかが判定された。本実施例においては、このSB6においては、前記判定ルーチンの実行に代え、第m基地局における妨害波の影響と第n基地局における妨害波の影響とは等しいとの評価が行なわれる。
【0103】
図9に戻って、評価部44に対応するSA23においては、前述の実施例と同様に、SA14乃至SA22の工程が、SA13において選択された基地局によって構成される全ての組み合わせの基地局対に対して実行されることによって得られる各基地局対を構成する基地局における妨害波の影響の小ささについての評価に基づいて、SA13において選択された基地局の全てに対する妨害波の影響の小ささの評価、すなわち順位づけが行なわれる。ここで、前述のSB6が実行され、基地局対を構成する2つの基地局における妨害波の影響が等しいと判断されうることから、本ステップで行なわれる順位付けにおいても、一部の基地局については、妨害波の影響が等しいとされる場合がある。
【0104】
測位基地局選択部46に対応するSA24においては、SA23においてなされた、SA13において選択された基地局の全てに対する妨害波の影響の小ささの評価、すなわち順位づけの結果に基づいて、SA25において行なわれる移動局10の位置の算出に用いられる基地局12である測位基地局を選択するための測位基地局選択ルーチンが実行される。
【0105】
図12はこの測位基地局選択ルーチンにおける制御作動の一例を説明するフローチャートである。まず、ステップ(以下「ステップ」を省略する。)SD1においては、SA23において行なわれた順位付けにおいて、妨害波の影響が等しいとされた複数の基地局12が存在しているか否かが判断される。妨害波の影響が等しいとされた複数の基地局12が存在する場合には、本ステップの判断が肯定され、SD2が実行される。一方、妨害波の影響が等しいとされた複数の基地局12が存在しない場合には、本ステップの判断が否定され、SD4が実行される。
【0106】
妨害波の影響が等しいとされた複数の基地局12が存在する場合に実行されるSD2においては、妨害波の影響が等しいとされた複数の基地局12のそれぞれについて、通信品質指標測定部40によって測定された通信品質指標の値が取得される。この値は、例えばSA13において用いられた値が図示しない記憶手段などに記憶され、読み出されるなどして取得される。
【0107】
SD3においては、測位基地局の選択が行なわれる。具体的には例えば、SA23において行なわれた順位づけに従って、すなわち妨害波の影響が小さいとされる順に、移動局10の位置の算出に必要な最小の数だけ、基地局12が測位基地局として選択される。選択の過程において、妨害波の影響が等しいと評価された複数の基地局12がある場合には、それら複数の基地局12についてSD2で取得される通信品質指標の値の比較が行なわれる。そして、比較の結果、通信品質指標に基づいて、移動局10との電波の通信がより良好に行なわれたと判断される基地局12から順に、測位基地局として選択される。
【0108】
一方、妨害波の影響が等しいとされた複数の基地局12が存在しない場合に実行されるSD4においては、前述の実施例1と同様に、SA23においてなされた、SA13において選択された基地局の全てに対する順位づけの結果に基づいて測位基地局が選択される。具体的には例えば、SA23において行なわれた順位づけに従って、すなわち妨害波の影響が小さいとされる順に、移動局10の位置の算出に必要な最小の数だけ、基地局12が測位基地局として選択される。
【0109】
前述の実施例によれば、測位基地局選択部46は、妨害波による影響が等しいとされた複数の基地局12のうち、移動局10と複数の基地局12のいずれか一方から送信される電波を他方が受信した際の、該他方における受信結果である通信品質指標に基づいて前記移動局10との通信がより良好に行なわれた基地局12を選択するので、妨害波による影響が等しいとされた複数の基地局12が存在する場合であっても、前記他方における受信強度に基づいて、妨害波による影響が少なく、また、移動局10との通信が良好に行なわれる無線局を選択することができ、移動局10の位置の算出を精度よく行なうことができる。
【0110】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0111】
例えば、前述の実施例においては移動局10は平面上を移動するものとされたが、かかる態様に限られず、空間(3次元)を移動するものであってもよい。この場合、移動局10の位置を表わす座標(x,y,z)を未知数として前記(1)式に対応する式が導出されればよい。この場合は、前述の式(1)として、4本の式が必要となり、測位基地局選択部46では、4つの基地局が選択される。
【0112】
また、前述の実施例においては、測位情報測定部39が測位情報として検出するのは、移動局10が送信する測位のための電波を受信した際の受信強度(RSSI)であったが、これに限られない。具体的には、例えば測位のための電波の移動局10における送信時刻および各基地局12における受信時刻であってもよい。この場合、これら送信時刻および受信時刻から得られる測位のための伝搬時間に電波の速度を乗ずるなどして算出される移動局10と各基地局12との距離に基づいて移動局10の位置の算出が可能である。また、複数の基地局12における電波の受信時刻差に基づいて移動局10の位置の算出を行なうこともできる。これらの場合、好適には移動局10が送信する測位のための電波にはPN(Pseudo Noise;疑似雑音)符号が含められる。PN符号は、相関に鋭いピークを生ずるので、受信側においてマッチドフィルタ等を用いて同期検出を行なうことにより、精度のよい受信時刻の検出が可能となるためである。
【0113】
また、前述の実施例においては、通信品質指標測定部40が電波の通信状態を表わす指標として検出するのは、移動局10が送信する測位のための電波、あるいは、基地局対を構成する一対の基地局12がそれぞれ相互に送信する電波の受信強度(RSSI)であったが、これに限られない。例えば、測位のための電波や、基地局対を構成する一対の基地局12がそれぞれ相互に送信する電波に送信されるデータとそのデータについての誤り検出符号が含められる場合には、通信品質指標測定部40が測定する品質指標は該誤り検出符号に基づいて算出される受信した電波における誤り率(BER;bit error rate)とされてもよい。この場合、評価部44においては、基地局対を構成する一方の基地局12から送信された電波の他方の基地局における受信の誤り率および、前記他方の基地局から送信された電波の前記一方の基地局における受信の誤り率の大きさを比較し、その大きさが大きい場合において電波を送信した基地局12のほうが、電波を受信した基地局12よりも妨害波による影響が小さいと評価する。言い換えれば、前記基地局対を構成する2つの基地局12のうち、より小さな受信強度が得られた基地局12の方が、より大きな受信強度が得られた基地局12よりも妨害波による影響が小さいと評価する。また、基地局予備選択部43は、移動局10から送信される測位のための電波を受信した各基地局12のうち、通信品質指標測定部40によって測定される通信品質指標としての誤り率が、例えば所定のしきい値よりも低い基地局12を選択する。
【0114】
あるいは、測位のための電波や、基地局対を構成する一対の基地局12がそれぞれ相互に送信する電波に拡散符号が含まれ、各基地局は拡散符号の同期検出のための機能を有する場合には、通信品質指標測定部40が測定する品質指標は前記同期検出のための機能により算出される、受信した電波に含まれる拡散符号とその拡散符号と同一のレプリカ符号との相関値のピーク値であってもよい。この場合評価部44は、前記相関値のピーク値、すなわち拡散符号とレプリカ符号との同期時の相関値と、非同期時の相関値との差が大きい基地局12、すなわち相関値のピークが鋭い基地局12のほうが、同期時の相関値と非同期時の相関値との差が小さい基地局12のよりも妨害波による影響が小さいと評価する。また、基地局予備選択部43は、移動局10から送信される測位のための電波を受信した各基地局12のうち、通信品質指標測定部40によって測定される通信品質指標としての相関値において、同期時の相関値と非同期時の相関値との差が、例えば所定のしきい値よりも大きい基地局12を選択する。このように、電波の送受信に際し、その妨害波による影響によって一定の変化をする指標であればよく、これらに限られない。
【0115】
また、前述の実施例においては、測位情報測定部39および通信品質指標測定部40はいずれも移動局10が送信する測位のための電波を検出の対象としたが、これにかぎられず、移動局10は測位情報測定部39による測位情報の検出のための電波と、通信品質指標測定部40による電波の通信状態を表わす指標の検出のための電波をそれぞれ送信し、各基地局12においては、受信した電波に応じて測位情報測定部39による測位情報の検出と、通信品質指標測定部40による電波の通信状態を表わす指標の検出とをそれぞれ行なってもよい。
【0116】
前述の実施例においては、基地局予備選択部43、評価部44、測位基地局選択部46、移動局位置算出部48などはサーバ14の有する機能であるとされたが、これに限られない。例えばこれらをいずれかの基地局12の有する機能とすることも可能である。このようにすれば、サーバ14別に設ける必要がない。
【0117】
また、前述の実施例において、測位情報測定部39、および通信品質指標測定部40が検出する受信強度の値は、無線部34において受信する電波の受信強度の瞬時値であってもよいし、予め定められた複数回だけ検出された瞬時値の平均値であってもよい。
【0118】
前述の実施例においては、測位のための電波は移動局10から送信され、各基地局12により受信されるものであったが、このような態様に限られない。すなわち、移動局10が測位情報測定部39、通信品質指標測定部40を有し、各基地局12の無線部34からそれぞれ送信される測位のための電波を移動局10の無線部24によりそれぞれ受信し、受信した電波に対し測位情報の検出と、電波の通信状態を表わす指標の検出を行なうことも可能である。
【0119】
また、前述の実施例においては、基地局予備選択部43は、各基地局12の通信品質指標測定部40によって検出される通信状態を表わす指標が予め定められたしきい値を上回る基地局12のみを選択するものとされたが、このような態様に限られない。例えば、予め設定された基地局の数が選択されるように、各基地局12の通信状態検出部42によって検出される通信状態を表わす指標が大きいものから所定数の基地局を選択するようにしてもよい。
【0120】
また、前述の実施例においては、移動局測位システム8もしくは無線局選択システム9は基地局予備選択部43を含んで構成され、評価部44は基地局予備選択部43によって選択された基地局について妨害波の影響を評価したが、このような態様に限られない。すなわち、移動局測位システム8もしくは測位基地局選択システム9は基地局予備選択部43を含まない構成とすることも可能であり、この場合、評価部44は移動局10からの電波を受信した全ての基地局12の受信結果などに基づいて妨害波の影響を評価することにより、一定の効果が得られる。
【0121】
また、前述の実施例においては、基地局予備選択部43によって選択された基地局12に対し、評価部44によって妨害波による影響の評価が行なわれ、測位基地局選択部46によりその評価に基づいて測位基地局の選択が行なわれるようにされたが、このような態様に限られない。例えば、移動局測位システム8を構成する全ての基地局12に対し、まず評価部44によって妨害波による影響の評価が行なわれ、続いて基地局予備選択部43による基地局の選択が行なわれ、基地局予備選択部43によって選択された基地局12を対象として、測位基地局選択部46による測位基地局の選択が行なわれてもよい。すなわち、前述の実施例において説明したフローチャートは一例に過ぎず、各過程は矛盾しない限りにおいて順序を交換して実行することができる。
【0122】
また、前述の実施例においては、評価部44によって、基地局対が選択されるごとにその基地局対を構成する2つの基地局によって電波の送受信が行なわれるものとされた、すなわち、図9のフローチャートにおいてSA14乃至SA22が繰り返し実行されるものとされたが、このような態様に限られない。例えば、基地局予備選択部43(SA13)によって選択された各基地局12が順次所定の出力により電波を送信し、その電波を送信した基地局12以外の基地局12によってその電波を受信し、通信品質指標測定部40によりその受信強度を測定するようにしてもよい。このようにすれば、1つの基地局12から送信された電波が同時に複数の他の基地局12によって受信され受信強度の測定が行なわれることから、実行に要する時間を短縮することができる。
【0123】
また、前述の実施例2においては、評価部44において複数の基地局12について妨害波の影響が等しいと評価された場合に、測位基地局選択部46は前記通信品質指標であるRSSIの大きさに基づいて、前記複数の基地局12のそれぞれと移動局10との通信が良好に行なわれる基地局を選択するものとしたが、このとき、基準とする指標はRSSI以外の前記通信品質指標であってもよいし、あるいは通信品質指標測定部40によって測定される指標以外のものであっても移動局10との通信が良好に行なわれることを判断できる指標であって、基地局12において検出可能なものであればよい。
【0124】
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明の一実施例である移動局測位システムの概要を説明する図である。
【図2】図1の移動局測位システムを構成する移動局の有する機能の概要を説明する図である。
【図3】図1の移動局測位システムを構成する基地局の有する機能の概要を説明する図である。
【図4】図1の移動局測位システムを構成するサーバの有する機能の概要を説明する図である。
【図5】基地局対を構成する2つの基地局による電波の送受信によって得られる受信強度と、妨害波源を説明する図である。
【図6】図1の移動局測位システムに対応する、4つの基地局の存在下における、各基地局対を構成する2つの基地局による電波の送受信によって得られる受信強度と、妨害波源を説明する図である。
【図7】移動局から送信される測位のための電波を基地局が受信した際の受信強度の大きさと、移動局と基地局との距離との関係を説明する図である。
【図8】図4の移動局位置算出部による基地局組を用いた移動局の位置の算出を説明する図である。
【図9】本発明の移動局測位システムによる移動局の位置の算出における制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【図10】図9の基地局対影響評価ルーチンにおける制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【図11】図10の判定ルーチンにおける制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【図12】本発明の別の実施例における移動局測位システムによる移動局の位置の算出における制御作動の一例を説明するフローチャートであって、図9のフローチャートの一部に代えて実行されるものである。
【符号の説明】
【0126】
8:移動局測位システム
9:無線局選択システム
10:移動局
12:基地局(無線局)
34:無線部(送信部、受信部)
43:基地局予備選択部
44:評価部
46:測位基地局選択部
48:移動局位置算出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に無線通信可能な複数の無線局から、妨害波による影響の小さい無線局を選択するための無線局選択方法であって、
前記複数の無線局から一または複数の無線局対を選択し、該無線局対のそれぞれについて、一方から所定の出力により送信される電波を他方で受信し、該他方における受信した電波の品質に関連する指標である通信品質指標を測定するとともに、該他方から所定の出力により送信される電波を該一方で受信し、該一方における通信品質指標を測定する通信品質指標相互測定工程と、
該通信品質指標相互測定工程によって前記無線局対ごとに測定される前記一方における通信品質指標および前記他方における通信品質指標に基づいて、前記一または複数の無線局対を構成する無線局を妨害波による影響の小ささにより評価する評価工程と、
該評価工程により妨害波による影響が小さいと評価された順に前記無線局を選択する選択工程と、
を有することを特徴とする無線局選択方法。
【請求項2】
前記通信品質指標相互測定工程は、前記通信品質指標として受信した電波の受信強度を測定するものであり、
前記評価工程は、前記無線局対を構成する2つの無線局のうち、より小さな受信強度が得られた無線局が、より大きな受信強度が得られた無線局よりも妨害波による影響が小さいと評価すること、
を特徴とする請求項1に記載の無線局選択方法。
【請求項3】
前記選択工程は、前記評価工程により妨害波による影響が等しいと評価された複数の無線局のうち、過去に選択された回数の多い無線局を選択すること
を特徴とする、請求項1または2に記載の無線局選択方法。
【請求項4】
移動局と複数の基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、受信結果に基づいて該移動局の位置を算出する移動局測位システムであって、
該複数の基地局はそれぞれ、所定の出力により電波を送信可能な送信部と、電波を受信する受信部と、該受信部により受信された電波の品質に関連する指標である通信品質指標を測定する通信品質指標測定部とを有し、
請求項1乃至3のいずれか1に記載の無線局選択方法により、前記複数の基地局から妨害波による影響が小さいと評価された順に所定数の前記測位基地局を選択する測位基地局選択部と、
該測位基地局選択部により選択される測位基地局と、前記移動局とのいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、受信結果に基づいて前記移動局の位置を算出する移動局位置算出部と、
を有することを特徴とする移動局測位システム。
【請求項5】
前記測位基地局選択部は、妨害波による影響が等しいとされた複数の基地局のうち、前記移動局と該複数の基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信した際の、該他方における前記移動局と前記複数の基地局のそれぞれとの無線通信における通信品質指標に基づいて前記移動局との通信がより良好に行なわれた基地局を選択すること、
を特徴とする請求項4に記載の移動局測位システム。
【請求項6】
前記移動局と前記複数の基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、前記移動局と前記複数の基地局のそれぞれとの無線通信における通信品質指標に基づいて前記移動局との通信が良好に行なわれると判断される前記基地局を選択する基地局予備選択部を有し、
前記測位基地局選択部は、該基地局予備選択部によって選択された基地局から前記測位基地局を選択すること
を特徴とする請求項4または5に記載の移動局測位システム。
【請求項1】
相互に無線通信可能な複数の無線局から、妨害波による影響の小さい無線局を選択するための無線局選択方法であって、
前記複数の無線局から一または複数の無線局対を選択し、該無線局対のそれぞれについて、一方から所定の出力により送信される電波を他方で受信し、該他方における受信した電波の品質に関連する指標である通信品質指標を測定するとともに、該他方から所定の出力により送信される電波を該一方で受信し、該一方における通信品質指標を測定する通信品質指標相互測定工程と、
該通信品質指標相互測定工程によって前記無線局対ごとに測定される前記一方における通信品質指標および前記他方における通信品質指標に基づいて、前記一または複数の無線局対を構成する無線局を妨害波による影響の小ささにより評価する評価工程と、
該評価工程により妨害波による影響が小さいと評価された順に前記無線局を選択する選択工程と、
を有することを特徴とする無線局選択方法。
【請求項2】
前記通信品質指標相互測定工程は、前記通信品質指標として受信した電波の受信強度を測定するものであり、
前記評価工程は、前記無線局対を構成する2つの無線局のうち、より小さな受信強度が得られた無線局が、より大きな受信強度が得られた無線局よりも妨害波による影響が小さいと評価すること、
を特徴とする請求項1に記載の無線局選択方法。
【請求項3】
前記選択工程は、前記評価工程により妨害波による影響が等しいと評価された複数の無線局のうち、過去に選択された回数の多い無線局を選択すること
を特徴とする、請求項1または2に記載の無線局選択方法。
【請求項4】
移動局と複数の基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、受信結果に基づいて該移動局の位置を算出する移動局測位システムであって、
該複数の基地局はそれぞれ、所定の出力により電波を送信可能な送信部と、電波を受信する受信部と、該受信部により受信された電波の品質に関連する指標である通信品質指標を測定する通信品質指標測定部とを有し、
請求項1乃至3のいずれか1に記載の無線局選択方法により、前記複数の基地局から妨害波による影響が小さいと評価された順に所定数の前記測位基地局を選択する測位基地局選択部と、
該測位基地局選択部により選択される測位基地局と、前記移動局とのいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、受信結果に基づいて前記移動局の位置を算出する移動局位置算出部と、
を有することを特徴とする移動局測位システム。
【請求項5】
前記測位基地局選択部は、妨害波による影響が等しいとされた複数の基地局のうち、前記移動局と該複数の基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信した際の、該他方における前記移動局と前記複数の基地局のそれぞれとの無線通信における通信品質指標に基づいて前記移動局との通信がより良好に行なわれた基地局を選択すること、
を特徴とする請求項4に記載の移動局測位システム。
【請求項6】
前記移動局と前記複数の基地局のいずれか一方から送信される電波を他方が受信し、前記移動局と前記複数の基地局のそれぞれとの無線通信における通信品質指標に基づいて前記移動局との通信が良好に行なわれると判断される前記基地局を選択する基地局予備選択部を有し、
前記測位基地局選択部は、該基地局予備選択部によって選択された基地局から前記測位基地局を選択すること
を特徴とする請求項4または5に記載の移動局測位システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−124340(P2010−124340A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297402(P2008−297402)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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