説明

基板の処理方法及び基板の処理装置

【課題】 層間絶縁膜にLow−k材を使用した基板であっても、層間絶縁膜の経時劣化や変質の可能性を低くできる基板の処理方法を提供すること。
【解決手段】 シリコン酸化膜よりも低い誘電率の誘電体層を含む基板を処理する基板の処理方法であって、不活性ガスの雰囲気中で、前記誘電体層を脱水縮合処理するために加熱する脱水工程と、少なくとも水素原子を含むガスの雰囲気中で、前記基板をアニールする工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板の処理方法及び基板の処理装置に係わり、特に、層間絶縁膜に低誘電率材料を使用した基板の処理方法及び基板の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、半導体装置の微細化及び高集積化が益々進んでいる。微細化及び高集積化が進むと、内部配線どうしの間隔が狭くなり、内部配線間に寄生する寄生容量が大きくなる。このため、従前の半導体装置ではほとんど現れることが無かった、寄生容量に起因する電気信号の遅延が顕著に現れるようになってきた。
【0003】
電気信号の遅延を解消する一つの策は、層間絶縁膜に、一般的なシリコン酸化膜(SiO)の代わりに、シリコン酸化膜の比誘電率(約4)よりも小さい比誘電率を持つ材料、いわゆる低誘電率材(Low−k材)を使用することである(例えば、特許文献1)。
【0004】
ところで、半導体装置の製造プロセスにおいては、トランジスタの特性を安定させ、信頼性を高めるための処理とし、水素雰囲気中で半導体装置を熱処理するプロセス、いわゆる水素シンター処理が行われる(例えば、特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−258586号公報
【特許文献2】特開2006−319186号公報
【特許文献3】特開2003−324185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
Low−k材はSiOよりも比誘電率が小さく、寄生容量の低減に寄与する。しかしながら、Low−k材は、SiOに比較して化学的な安定性に乏しい。
【0007】
例えば、Low−k材で構成された層間絶縁膜においても、SiOを使用した層間絶縁膜と同様に、内部配線を形成するための孔、又は溝がエッチング加工により形成される。しかし、Low−k材においては、このエッチング加工の際に、原子の結合が切れやすく、未結合手(ダングリングボンド)が発生しやすい。特に、比誘電率の低下に貢献する原子が切れやすい。ダングリングボンドには、ヒドロキシ基(OH基)が結合される。Low−k膜の吸湿、あるいはLow−k膜のダメージと呼ばれる現象である。
【0008】
ダメージを受けたLow−k膜を備えた半導体装置を、特許文献2、3に記載された水素シンターすると、OH基が水素(H)変わり、Low−k材の末端が水素終端する。水素終端によって、Low−k材に発生したダメージは解消する。しかしながら、ダメージの解消は、一時的なものである。Hは時間が経つにつれて離れていき、Low−k材にダングリングボンドが再発生する。再発生したダングリングボンドには、再びOH基が結合したり、別の物質が結合したりしていく。このようにして、層間絶縁膜の特性が時間の経過とともに劣化したり、層間絶縁膜が変質したりする。
【0009】
この発明は、層間絶縁膜にLow−k材を使用した基板であっても、層間絶縁膜の経時劣化や変質の可能性を低くできる基板の処理方法及び基板の処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明の第1の態様に係る基板の処理方法は、シリコン酸化膜よりも低い誘電率の誘電体層を含む基板を処理する基板の処理方法であって、不活性ガスの雰囲気中で、前記誘電体層を脱水縮合処理するために加熱する脱水工程と、少なくとも水素原子を含むガスの雰囲気中で、前記基板をアニールする工程と、を備える。
【0011】
また、この発明の第2の態様に係る基板の処理装置は、シリコン酸化膜よりも低い誘電率の誘電体層を含む基板を処理する基板の処理装置であって、チャンバと、前記チャンバ内に配置され、前記基板を保持するための載置台と、前記基板を加熱する加熱手段と、前記誘電体層を脱水縮合処理するために、前記加熱手段によって前記誘電体層を加熱するとともに不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段と、前記基板をアニールするために、前記加熱手段によって前記誘電体層を加熱するとともに水素原子を含むガスを供給する水素原子を含むガス供給手段と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、層間絶縁膜にLow−k材を使用した基板であっても、層間絶縁膜の経時劣化や変質の可能性を低くできる基板の処理方法及び基板の処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の一実施形態に係る半導体装置の一例を示す断面図
【図2】この発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す流れ図
【図3】この発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法によるLow−k材の構造式を示す図
【図4】この発明の一実施形態に係る半導体装置のLow−k材のリーク特性を示す図
【図5】処理装置の一例を示す縦断面図
【図6】ガスの供給のタイミングを示すタイミングチャート
【図7】参考例に係る半導体装置の製造方法を示す断面図
【図8】参考例に係る半導体装置の製造方法によるLow−k材の構造式を示す図
【図9】参考例に係る半導体装置のLow−k材のリーク特性を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態の説明に先立ち、Low−k材のダメージについて説明する。
【0015】
図7A乃至図7Cは、参考例に係る半導体装置を、主要な製造段階毎に示した断面図である。
【0016】
図7Aは、半導体基板、例えば、シリコン基板1の素子分離領域2によって区画された素子領域3にトランジスタ4が形成され、トランジスタ4上に第1層層間絶縁膜5が形成された段階を示している。層間絶縁膜5はSiOよりも比誘電率kが小さい(k<4)Low−k材、例えば、SiCOHである。層間絶縁膜5が形成された段階では、SiCOHはダメージを受けていない。ダメージを受けていないSiCOHの構造式を図8Aに示す。
【0017】
図8Aに示すように、シリコン(Si)の結合種にはメチル基(CH基)が結合され、層間絶縁膜5は、末端がCH基で終端されたものとなっている。
【0018】
図7Bは、層間絶縁膜5にコンタクト孔や配線を埋め込むための溝6が形成された段階を示す。溝6を層間絶縁膜5に形成するとき、層間絶縁膜5に対して、マスクとなるレジストパターンの形成と、レジストパターンをマスクに用いたプラズマエッチングが行われる。層間絶縁膜5はプラズマエッチング、及びレジストパターン除去(プラズマを用いたレジストアッシング)によってダメージを受ける。この結果、層間絶縁膜5の上面。及び層間絶縁膜5の溝6に露出する露出面には、ダメージ層7が生じる。ダメージ層7におけるSiCOHの構造式を図8B及び図8Cに示す。
【0019】
図8Bに示すように、プラズマによって末端のCH基がSiから脱離し、ダングリングボンドが発生する。このダングリングボンドに、図8Cに示すようにヒドロキシ基(OH基)が結合する。このように、OH基のような遊離基や別の原子が末端に結合している部分がダメージ層7である。特に、図8Cに示すように、OH基が結合した状態は、Low−k材の吸湿、と呼ぶ。
【0020】
図7Cは、溝6内に下層内部配線8が形成され、内部配線8が形成された層間絶縁膜5上に上層層間絶縁膜9、及び層間絶縁膜9に溝10と溝10内に上層内部配線11が形成され、さらに、層間絶縁膜9上にパッシベーション膜12が形成された段階を示している。図7Cに示す段階は、ウエハプロセスの最終段階である。層間絶縁膜9もLow−k材、例えば、SiCOHであり、層間絶縁膜5と同様なダメージ層13が生じている。パッシベーション膜12を形成した後、トランジスタ4の特性を安定させるために、水素(H)を含む雰囲気下での加熱処理(水素シンター処理)を行う。水素シンター処理の条件例は、例えば、窒素ガス及び水素ガス雰囲気下、温度400℃、加熱時間30分である。図8Dに水素シンター直後のダメージ層7、13の構造式を示す。
【0021】
水素シンターは、トランジスタの特性を安定させるための処理であるが、層間絶縁膜に、Low−k材を用いた場合には、図8Dに示すように、OH基がHに変わる(水素終端)。これにより、ダメージ層7、13が回復する。しかしながら、回復効果は一時的なものである。時間の経過とともに水素が離れていき、図8Eに示すように、ダングリングボンドが再発生する。再発生したダングリングボンドには、図8Fに示すように、OH基のような遊離基や別の原子が末端に結合する。この結果、図8B及び図8Cに示したダメージ層7、13の発生と同じメカニズムで、層間絶縁膜5、9にダメージ層が再発生する。
【0022】
図9に、参考例に係る半導体装置の、水素シンター前、水素シンター直後、水素シンター後2週間の、Low−k材のリーク電流値の検査結果を示す。
【0023】
図9に示すように、水素シンター前、約10−10A乃至10−8Aあったリーク電流は、水素シンターをすることによって、約10−13A乃至10−11Aに1桁以上改善される。しかしながら、水素シンター後2週間が経過すると、リーク電流は約10−13A乃至10−9Aまで劣化してしまう。
【0024】
以下、添付図面を参照しながらこの発明の一実施形態について説明する。
【0025】
図1はこの発明の一実施形態に係る半導体装置の一例を示す断面図、図2はその製造方法の一例を示す流れ図である。なお、図1においては、図7A乃至図7Cを参照して説明した参考例と同様の部分に同様の参照符号を付す。以下、製造方法の一例に従って。一実施形態に係る半導体装置を説明する。
【0026】
図1及び図2に示すように、まず、半導体基板、例えば、シリコン基板1に素子分離領域2を形成し、基板1の素子形成面に素子領域3を区画する。次いで、素子領域3に、例えば、トランジスタ4等の集積回路素子を形成する(ステップ1)。
【0027】
次に、集積回路素子が形成された基板1上に、層間絶縁膜5を形成する。層間絶縁膜5は、Low−k材である。本例では、SiCOHである。図3Aに、層間絶縁膜5が形成された段階での構造式を示す。次いで、層間絶縁膜5にフォトリソグラフィ法及びプラズマエッチング法を用いて溝6を形成し、形成された溝6に内部配線8を形成する。本例においても、上述した参考例と同様に層間絶縁膜5の上面、及び溝6への露出面に、ダメージ層が生じる。ダメージ層におけるSiCOHの構造式を図8B及び図8Cに示す。次いで、層間絶縁膜5上に、上層層間絶縁膜9を形成する。層間絶縁膜9もまた、層間絶縁膜5と同様にLow−k材であり、例えば、SiCOHである。次いで、層間絶縁膜9にフォトリソグラフィ法及びプラズマエッチング法を用いて溝10を形成し、形成された溝10に内部配線11を形成する。層間絶縁膜9にも、層間絶縁膜5と同様に、層間絶縁膜9の上面、及び溝10への露出面にダメージ層が生じる。なお、本例では、層間絶縁膜及び内部配線は二層であるが。二層に限られるものではない。層間絶縁膜、及び内部配線は、必要とされる層数分繰り返して形成されれば良い(ステップ2)。
【0028】
次に、最上層の層間絶縁膜、本例では層間絶縁膜9上に、パッシベーション膜12を形成する(ステップ3)。
【0029】
この後、水素シンター処理に入るわけであるが、本例では以下のように行う。
【0030】
まず、層間絶縁膜5、9、並びにパッシベーション膜12が形成された基板1を、水素原子を含まない雰囲気下で脱水処理する。脱水処理の一例は加熱処理である。加熱処理の条件の例は、水素原子を含まない雰囲気下、例えば、窒素ガス雰囲気下、温度100℃乃至500℃、加熱時間1分乃至120分である。本例では、窒素ガス雰囲気下、温度400℃、加熱時間30分とする(ステップ4)。脱水処理により、層間絶縁膜5、9の、特に、ダメージ層部分には脱水縮合反応がおき、図3Dに示すように、末端のOH基が脱水縮合される。特に、本例では、図1に示すように、層間絶縁膜5、9のうち、ダメージ層が生じていた層間絶縁膜5、9の上面付近、及び溝6、10への露出面付近が脱水縮合され、層間絶縁膜5、9の上面付近、及び溝6、10への露出面付近に脱水縮合領域14、15を持つ層間絶縁膜5、9が得られる。
【0031】
次に、層間絶縁膜5、9を脱水処理した後、水素原子を含む雰囲気下で加熱処理をする(水素シンター)。加熱処理の条件例は、例えば、窒素ガス及び水素ガス雰囲気下、温度100℃乃至500℃、加熱時間1分乃至120分である。本例では、窒素ガス(N)及び水素ガス雰囲気下、温度400℃、加熱時間30分とする(ステップ5)。
【0032】
図4に、一実施形態に係る半導体装置の、水素シンター前、水素シンター直後、水素シンター後2週間の、Low−k材のリーク電流値の検査結果を示す。
【0033】
図9に示したように水素シンター前、約10−12A乃至10−8Aあったリーク電流は、ステップ4に示した脱水処理と、引き続きステップ5に示した加熱処理をすることによって、図4に示すように、約10−13A乃至10−11Aに1桁以上改善される。
【0034】
しかも、一実施形態に係る半導体装置においては、水素シンター後2週間が経過しても、リーク電流値が増加してしまうような劣化傾向は見られない。
【0035】
もちろんであるが、一実施形態に係る半導体装置においても、ステップ5において水素シンターが行われるので、トランジスタ4の特性は参考例と同様に安定する。
【0036】
このような一実施形態に係る半導体装置、及びその製造方法によれば、Low−k材を含む層間絶縁膜を脱水処理することにより、Low−k材を含む層間絶縁膜に生じていたダメージ層に脱水縮合反応を起こすことができる。脱水縮合したLow−k材は、原子の結合が切れにくい。このため、末端を水素終端させた層間絶縁膜を備える参考例に示した半導体装置に比較して、ダングリングボンドが再発生する可能性を低くすることができる。
【0037】
よって、一実施形態によれば、層間絶縁膜にLow−k材を使用した半導体装置であって、層間絶縁膜の経時劣化や変質の可能性を小さくできる半導体装置及びその製造方法を提供できる。
【0038】
次に、上記脱水処理、及び加熱処理を実施できる処理装置の一例を説明する。
【0039】
図5は、処理装置の一例を示す縦断面図、図6はガスの供給のタイミングを示すタイミングチャートである。
【0040】
処理装置100は、下端が開口された有天井の円筒体状の処理容器101を有している。処理容器101の全体は、例えば、石英により形成されている。処理容器101内の天井には石英製の天井板102が設けられ、封止されている。処理容器101の下端開口部には、例えば、ステンレススチールにより円筒体状に成形されたマニホールド103がOリング等のシール部材104を介して連結されている。
【0041】
マニホールド103は処理容器101の下端を支持している。マニホールド103の下端開口部からは、ウエハボート105が処理容器101内に挿入可能となっている。ウエハボート105は、例えば、石英製であり、被処理体として多数枚、例えば、50〜100枚の基板1(半導体ウエハ)を載置可能に構成されている。本例のウエハボート105は複数本の支柱、例えば、3本の支柱106を有している。なお、図5においては、2本の支柱のみを示す。支柱106には図示せぬ複数の溝が形成されており、これら複数の溝に基板1を載せることで、複数の基板1が多段に支持される。
【0042】
ウエハボート105は、石英製の保温筒107を介してテーブル108上に載置される。テーブル108は、マニホールド103の下端開口部を開閉する、例えば、ステンレススチール製の蓋部109を貫通する回転軸110上に支持される。回転軸110の貫通部には、例えば、磁性流体シール111が設けられ、回転軸110を気密にシールしつつ回転可能に支持する。蓋部109の周辺部とマニホールド103の下端部との間には、例えばOリングよりなるシール部材112が介設されており、これにより処理容器101内のシール性が保持される。回転軸110は、アーム113の先端に取り付けられている。アーム113は、例えば、ボートエレベータ等の昇降機構(図示せず)に支持され、ウエハボート105、保温筒107、テーブル108、蓋部109、回転軸110、及び磁性流体シール111を一体的に昇降させる。これにより、ウエハボート105、保温筒107、テーブル108、蓋部109、回転軸110、及び磁性流体シール111は、処理容器101内に対して挿脱可能になっている。なお、テーブル108は、蓋部109に固定し、ウエハボート105を回転させないように構成することもできる。
【0043】
処理装置100は、水素原子を含むガスを処理容器101内に供給する水素原子含有ガス供給機構114と、不活性ガスを処理容器101内に供給する不活性ガス供給機構115と、を有している。水素原子含有ガスの一例は、水素ガス(Hガス)である。不活性ガスの一例は窒素ガス(Nガス)である。
【0044】
水素原子含有ガス供給機構114は、水素原子含有ガス供給源114aと、水素原子含有ガス供給源114aから処理容器101内へ、水素原子を含むガスを導く水素含有ガス配管114bとを有している。水素含有ガス配管114bには、開閉弁114c、及びマスフローコントローラのような流量制御器114dが設けられている。水素原子を含むガスは、流量制御器114dによって流量が制御されつつ、処理容器101内へ供給されるように構成されている。
【0045】
不活性ガス供給機構115は、不活性ガス供給源115aと、不活性ガス供給源115aから処理容器101内へ、不活性ガスを導く不活性ガス配管115bとを有している。不活性ガス配管115bには、開閉弁115c、及び流量制御器115dが設けられている。不活性ガスは、流量制御器115dによって流量が制御されつつ、処理容器101内へ供給されるように構成されている。
【0046】
水素含有ガス配管114b、及び不活性ガス配管115bは、本例では一本のガス分散ノズル116に接続されている。ガス分散ノズル116は、例えば、石英製であり、マニホールド103の外部からマニホールド103の内部に貫通する。ガス分散ノズル116は、マニホールド103の内部において上方向へ屈曲されて垂直に延びる垂直部分を有する。ガス分散ノズル116の垂直部分は、ウエハボート105に支持された複数の基板1の側面に対向される。ガス分散ノズル116の垂直部分には、複数のガス吐出孔116aが所定の間隔を隔てて形成されている。各ガス吐出孔116aからは、不活性ガス、又は不活性ガスと水素含有ガスとの混合ガスが、ウエハボート105に支持された複数の基板1に向けて水平方向に、略均一に吐出させることができる。本例では、ガス分散ノズル116が一本の例を示しているが、複数本設けても良いし、水素含有ガス用のガス分散ノズルと、不活性ガス用のガス分散ノズルとに分けられても良い。
【0047】
ガス吐出孔116aに対して相対した処理容器101の側壁には、排気口117が設けられている。排気口117は、例えば、処理容器101の側壁を上下方向へ削りとることによって細長く形成される。処理容器101の外側には、排気口117を覆うように形成された排気口カバー118が取り付けられている。排気口カバー118は、処理容器101の側壁に沿って上方に延び、処理容器101の上方にガス出口119を規定している。ガス出口119には、図示せぬ真空排気機構が接続される。図示せぬ真空排気機構は、真空ポンプ等を有しており、排気口カバー118の内部、排気口117を介して、処理容器101内を排気する。これにより、処理容器101の内部は、所定の真空度まで減圧することが可能となっている。
【0048】
処理容器101の外側には、筒体状の加熱装置120が設けられている。筒体状の加熱装置120は処理容器101の側壁を覆っており、処理容器101、及び処理容器101内に収容された複数の基板1を加熱する。加熱装置としては、ランプ加熱方式もしくは抵抗加熱方式の装置を好適に用いることができる。
【0049】
処理装置100は、制御部121により制御される。制御部121は、例えば、マイクロプロセッサ(コンピュータ)からなるコントローラ122を有している。
【0050】
コントローラ122には、ユーザーインターフェース123が接続されている。ユーザーインターフェース123は、工程管理者が処理装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、処理装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等を含んで構成されている。
【0051】
また、コントローラ122には、記憶部124が接続されている。記憶部124は記憶媒体を備えている。記憶媒体には、処理装置100で実行される処理をコントローラ122の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じて処理装置100に処理を実行させるためのプログラム、即ち、レシピ等が格納される。記憶媒体としては、ハードディスクや半導体メモリであってもよいし、CD−ROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。必要に応じて、ユーザーインターフェース123からの指示等にて任意のレシピを記憶部124から呼び出し、コントローラ122に実行させることで、コントローラ122の制御下で、処理装置による基板1に対する処理が行われる。
【0052】
次に、以上のように構成された処理装置100を用いた基板の処理方法の一例を説明する。図6は、ガスの供給のタイミングを示すタイミングチャートである。
【0053】
まず、基板1が支持されたウエハボート105を、処理容器101の内部に収容する。基板1の例としては、半導体ウエハ、例えば、シリコンウエハであり、図1に示したような層間絶縁膜5、9、並びにパッシベーション膜12が形成されたものである。
【0054】
(脱水工程)
基板1を収容したあと、開閉弁114cを閉じた状態で開閉弁115cを開ける。これにより、処理容器101の内部に、ガス吐出孔116aを介して不活性ガス、例えば、窒素ガスが供給される(図6中時刻t1)。また、加熱装置120を用いて基板1を加熱する。
【0055】
処理条件の一例は、温度100℃乃至500℃、加熱時間1分乃至120分である。本例では、窒素ガス雰囲気下、温度400℃、加熱時間30分とした。
【0056】
この処理により、層間絶縁膜5、9の、特に、ダメージ層部分には脱水縮合反応がおき、図3Dを参照して示したように、末端のOH基が脱水縮合される。
【0057】
(アニール工程(水素シンター))
次に、開閉弁115cを開ける。これにより、処理容器101の内部に、ガス吐出孔116aを介して水素原子を含むガス、例えば、水素ガスが、さらに供給される(図6中時刻t2)。また、加熱装置120を用いて基板1を加熱する。本例では、脱水工程における温度を維持した。
【0058】
処理条件の一例は、例えば、窒素ガス及び水素ガス雰囲気下、温度100℃乃至500℃、加熱時間1分乃至120分である。本例では、窒素ガス(N)及び水素ガス雰囲気下、温度400℃、加熱時間30分とした。
【0059】
この処理により、基板1においては、図4に示したように、リーク電流が約10−13A乃至10−11Aに1桁以上改善されるとともに、水素シンター後2週間が経過しても、リーク電流値が増加せず、劣化傾向を示さない高品質の基板1、即ち、半導体装置を得ることができる。
【0060】
このように、この発明の一実施形態に係る基板の処理方法は、図5に示したような処理装置100を用いることで実施することができる。
【0061】
しかも、処理装置100によれば、水素含有ガス供給機構114と不活性ガス供給機構115とを備えているので、上記脱水工程と上記アニール工程を、一つの処理装置100において、連続して行うことができる。このため、スループットの向上に有利である。
【0062】
以上、この発明を一実施形態に従って説明したが、この発明は上記一実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。また、この発明の実施形態は、上記一実施形態が唯一の実施形態でもない。
【0063】
例えば、上記一実施形態によれば、脱水処理として加熱処理を用いたが、例えば、紫外線等の照射等、光処理を用いることもできる。
【0064】
さらに、脱水処理時の雰囲気としては、窒素ガス雰囲気としたが、窒素ガス雰囲気以外にも不活性ガス雰囲気、例えば、アルゴンガス雰囲気やヘリウムガス雰囲気とすることも可能である。
【0065】
さらに、アニール時の雰囲気としては、窒素ガスと水素ガスとの組み合わせの雰囲気中で処理したが、アルゴンガスと水素ガスとの組み合わせの雰囲気中で処理することも可能である。
【0066】
また、層間絶縁膜に用いるLow−k材として、SiCOHを用いたが、SiCOH以外のLow−k材を用いた層間絶縁膜を備える半導体装置に対しても、この発明は有効である。例えば、シリコン酸化膜系Low−k材としては、上記SiCOH(メチル含有ポリシロキサン:MSQ)の他、
フッ素含有シリコン酸化膜(SiOF)
水素含有ポリシロキサン(HSQ)
カーボン含有シリコン酸化膜(SiOC)
等を挙げることができる。
【0067】
また、シリコン酸化膜系Low−k材以外にも、有機系ポリマーLow−k材を使うこともできる。有機系ポリマーLow−k材としては、
ポリイミド系ポリマー
パリレン系ポリマー
テトラフルオロエチレン系ポリマー
ポリアリルエーテル系ポリマー
等を挙げることができる。
【0068】
さらに、Low−k材の構造としては、稠密な構造でなくても、多孔質であっても良い。
【0069】
さらに、上記Low−k材の成膜方法は、CVD手法(Chemical Vapor Deposition)、及び塗布手法(SOD手法:Spin On Dielectric coating)のいずれであっても良い。
【符号の説明】
【0070】
1…半導体基板(シリコン基板)、2…素子分離領域、3…素子領域、4…トランジスタ、5…層間絶縁膜、6…溝、7…ダメージ層、8…内部配線、9…層間絶縁膜、10…溝、11…内部配線、12…パッシベーション膜、13…ダメージ層、14、15…脱水縮合領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン酸化膜よりも低い誘電率の誘電体層を含む基板を処理する基板の処理方法であって、
不活性ガスの雰囲気中で、前記誘電体層を脱水縮合処理するために加熱する脱水工程と、
少なくとも水素原子を含むガスの雰囲気中で、前記基板をアニールする工程と、
を備えたことを特徴とする基板の処理方法。
【請求項2】
前記誘電体層はSiCOHもしくはSiOCであることを特徴とする請求項1に記載の基板の処理方法。
【請求項3】
前記誘電体層はSOD手法(Spin On Dielectric coating)にて形成することを特徴とする請求項1に記載の基板の処理方法。
【請求項4】
前記誘電体層はCVD手法(Chemical Vapor Deposition)にて形成することを特徴とする請求項1に記載の基板の処理方法。
【請求項5】
前記脱水工程は、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスからなるグループから選択されるもしくは組み合わされる雰囲気中で処理することを特徴とする請求項1に記載の基板の処理方法。
【請求項6】
前記アニールする工程は少なくとも水素ガスを含む雰囲気中で処理することを特徴とする請求項1に記載の基板の処理方法。
【請求項7】
前記基板をアニールする工程は窒素ガスと水素ガスとの組み合わせ、もしくはアルゴンガスと水素ガスとの組み合わせの雰囲気中で処理することを特徴とする請求項1に記載の基板の処理方法。
【請求項8】
前記脱水工程と前記アニールする工程は、同一のチャンバで処理されることを特徴とする請求項1に記載の基板の処理方法。
【請求項9】
シリコン酸化膜よりも低い誘電率の誘電体層を含む基板を処理する基板の処理装置であって、
チャンバと、
前記チャンバ内に配置され、前記基板を保持するための載置台と、
前記基板を加熱する加熱手段と、
前記誘電体層を脱水縮合処理するために、前記加熱手段によって前記誘電体層を加熱するとともに不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段と、
前記基板をアニールするために、前記加熱手段によって前記誘電体層を加熱するとともに水素原子を含むガスを供給するガス供給手段と、
を備えたことを特徴とする基板の処理装置。
【請求項10】
前記不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスからなるグループから選択されるもしくは組み合わされるガスであることを特徴とする請求項9に記載の基板の処理装置。
【請求項11】
前記水素原子を含むガスは、少なくとも水素ガスを含むガスであることを特徴とする請求項9に記載の基板の処理装置。
【請求項12】
前記水素原子を含むガスは、窒素ガスと水素ガスとの組み合わせ、もしくはアルゴンガスと水素ガスとの組み合わせであることを特徴とする請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記加熱手段は、ランプ加熱方式もしくは抵抗加熱方式の装置であることを特徴とする請求項9に記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−40563(P2011−40563A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186531(P2009−186531)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】