説明

基板を接合する方法及び装置

第1の基板を第2の基板と接合する方法に関する。前記第1の基板の表面が接着層で被覆される。接着層はBステージまで硬化される。第1の基板の表面が、第2の基板と接触して位置決めされる。第1の基板の縁を第2の基板の縁に押圧してファンデルワールス接合を開始させる。第1の基板と第2の基板とを、ファンデルワールス接合によって一体にさせる。接合された第1の基板と第2の基板とは、接着層を完全に硬化させるのに十分な時間にわたり十分な熱に供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の接合に関する。
【背景技術】
【0002】
流体吐出システム、例えばインクジェットプリンタは、通常、インク供給部からノズルを備えたインクノズルアセンブリまでのインク流路を有し、ノズルからはインク液滴が吐出される。インクは、ジェットプリンタから吐出され得る流体の一例に過ぎない。インク液滴の吐出は、アクチュエータ、例えば、圧電変位素子、サーマルバブルジェット発生素子、又は静電変位素子によってインク流路内のインクを加圧することにより制御されることができる。通常のプリントヘッドモジュールは、インク流路及び関連するアクチュエータの対応するアレイを備えたノズルの列又はアレイを有し、各ノズルからの液滴吐出は独立して制御されることができる。いわゆる「ドロップ・オン・デマンド」式のプリントヘッドモジュールでは、各アクチュエータは、媒体上の所定の位置に液滴を選択的に吐出するように駆動される。プリントヘッドモジュールと媒体とは、プリント動作中に互いに対して移動することができる。
【0003】
一例では、プリントヘッドモジュールは、半導体プリントヘッド本体と圧電アクチュエータとを有することができる。プリントヘッド本体はシリコン製であってもよく、ポンプ室を画成するようにエッチングされている。ノズルは、プリントヘッド本体に取り付けられている別個の基板(即ち、ノズル層)によって画成されることができる。圧電アクチュエータは、圧電材料の層を有することができ、それは、印加電圧に応じて形状が変化、即ち撓曲する。圧電層の撓曲により膜が撓曲し、ここで膜は、ポンプ室の壁を形成している。したがって膜の撓曲により、インク流路に沿って位置するポンプ室内のインクが加圧される。圧電アクチュエータは膜に接合される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、基板の接合に関する。概して、一態様において、本発明は、第1の基板を第2の基板と接合する方法を特徴とする。第1の基板の表面が接着層で被覆される。接着層はBステージまで硬化される。第1の基板の表面が、第2の基板と接触して位置決めされる。第1の基板の縁を第2の基板の縁に押圧してファンデルワールス接合を開始させる。第1の基板と第2の基板とを、ファンデルワールス接合によって一体にさせる。接合された第1の基板と第2の基板とは、接着層を完全に硬化させるのに十分な時間にわたり十分な熱に供される。
【0005】
本発明の実施態様は、以下の特徴のうちの一つ又は複数を有することができる。第1の基板は、圧電層を含むアクチュエータ層であってもよく、第2の基板はシリコン膜であってもよい。方法は、第1の基板の表面を接着層で被覆する前に、表面を酸素プラズマ処理するステップを更に含むことができる。第1の基板と第2の基板とを接触させて位置決めする前に、第2の基板をRCA−1洗浄に供することができる。
【0006】
接着層は、第1の基板の表面にスピンオンされたベンゾシクロブテンであってもよい。第1の基板の縁を第2の基板の縁に押圧するステップは、約5〜20psiの範囲の力を加えるステップを含むことができる。第1の基板の表面を接着層で被覆する前に、表面を化学機械研磨に供することができる。接着層はベンゾシクロブテンであってもよく、接合された第1の基板と第2の基板とは、ベンゾシクロブテンを完全に硬化させるため、約200℃に約40時間加熱されることができる。接着層は、総厚さ変動が約1.5%以下であってもよい。
【0007】
本発明の実施態様は、以下の利点のうちの一つ又は複数を実現することができる。最初に二つの基板をファンデルワールス結合によって一体に接合し、次に接合された基板を加熱してそれらの間の接着層の硬化を完了させると、例えばチャックを使用して、基板に大きい圧力を加えることが回避される。圧力を加えることが必要な従来の接合技法は、完全に平坦な表面からのわずかなずれにも敏感であり得る。例えば、チャックにおいてわずかに隆起した範囲が、チャックの隆起した範囲と接触する基板の近傍の接着層の厚さに影響を及ぼすことがある。接着層の厚さの変動は、著しい悪影響を有し得る。例えば、圧電アクチュエータを、ポンプ室と接触するように位置決めして膜と接合するには、均一な接合層が必要となる。接合層における厚さの変動は、ポンプ室のジェット噴射特性に悪影響を及ぼすことがあり、例えば、あるジェットが他のジェットより速く噴射される。本明細書に記載されている接合技法は、圧力を加えて接合を行うことを回避し、したがって接合表面又は接合中に基板が接触する表面の非平坦性に対してそれほど敏感ではない。最初はBステージにあって、後に完全に硬化される接着層を基板間に含めると、最初のファンデルワールス結合と比較して、基板間に比較的強い結合が生じる。
【0008】
本発明の一つ又は複数の実施形態の詳細を、添付図面及び以下の説明において示す。本発明の他の特徴、目的及び利点は、説明、図面及び特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】膜に接合されたアクチュエータを含む、例示的なプリントヘッドモジュールの一部の断面図である。
【図2A】例示的なプリントヘッドモジュールの一部の平面図であり、ポンプ室の行上に位置決めされたアクチュエータの行を示す。
【図2B】図1のプリントヘッドモジュールの一部の拡大断面図である。
【図3】アクチュエータ層を膜と接合する例示的な方法を示すフローチャートである。
【図4A】アクチュエータ層が膜に接合されているところを断面図で示す。
【図4B】アクチュエータ層が膜に接合されているところを断面図で示す。
【図4C】アクチュエータ層が膜に接合されているところを断面図で示す。
【0010】
それぞれの図面における同様の参照符号は同様の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
二つの平坦な基板を一体に接合するとき、均一な接合層を有することは重要であり得る。第1の基板を第2の基板と、それらの間の接着層で接合する方法、装置、及びシステムについて説明する。最初の結合は、部分的に硬化させた状態の接着剤によるファンデルワールス接合を用いて形成され、続いて接着剤の硬化が完了される。
【0012】
一つの例示的な例では、第1の基板はアクチュエータ(又は、以下に更に考察するように、その少なくとも一部)であり、第2の基板は、ポンプ室を含むプリントヘッドモジュールに使用される膜である。アクチュエータの作動により膜が撓曲し、それによりポンプ室が加圧されてプリント流体の液滴が吐出される。圧電アクチュエータをシリコン膜と接合する従来の技法は、一方又は双方の基板に接着剤を塗布し、力(例えば5000N)を加えて二つの基板を互いにある期間(例えば3〜4時間)にわたり押圧し、次に、二つの基板を接着層の硬化温度に加熱して結合を完了させることを含むことができる。しかしながら、接合される表面の平坦性、力を加える表面の平坦性、及び加えられる力の均一性等、多くの要因が接着層の均一性に悪影響を及ぼすことがある。圧電アクチュエータをポンプ室上に位置決めして膜と接合するとき、接着層における厚さの変動は、ポンプ室のジェット噴射特性に悪影響を及ぼすことがある。例えば、あるジェットが隣接するジェットより速く噴射されることがある。
【0013】
より均一な接着層は、最初にファンデルワールス力を用いて二つの表面を一体に接合することにより実現することができ、ここで少なくとも一方の表面は、接着剤で被覆されている。次に接着剤を硬化させて、二つの表面間の結合を更に強化することができる。説明のため、接合技法はアクチュエータ(又はその一部)の膜との接合に関連して記載され、様々な構成のプリントヘッドモジュールに用いられることができる。しかしながら、記載する接合技法は、同じ、又は異なる用途についての他のタイプの基板の接合に用いることができる、ということは理解されなければならない。プリントヘッドモジュールにより滴下される例示的な流体は、インクである。しかしながら、他の流体、例えば、発光ディスプレイの製造に用いられるエレクトロルミネセンス材料、回路基板製造に用いられる液体金属、又は生物学的流体を使用することができる、ということは理解されなければならない。
【0014】
図1は説明のために過ぎず、かつ図示される特定のプリントヘッドモジュール100に限定されないが、図1において、アクチュエータ102の膜104との接合に関連して技法を説明するものとする。プリントヘッドモジュール100の一部の断面図を示している。プリントヘッドモジュール100は、内部に複数の流体流路(一つの流路しか示していない)が形成されている基板108を有している。プリントヘッドモジュール100はまた、流体を流路から選択的に吐出させる複数のアクチュエータも有している。したがって、各流路が、その関連するアクチュエータと共に、個々に制御可能なMEMS流体吐出装置を提供する。
【0015】
このプリントヘッドモジュールの実施態様では、入口106が流体供給部(図示せず)を基板108に流体接続している。入口106は、チャンネル(図示せず)を介して入口通路110に流体接続されている。入口通路110は、例えば上昇部114を介して、ポンプ室112に流体接続されている。ポンプ室112は、ノズル118を終端とする下降部116に流体接続されている。ノズル118は、基板108に取り付けられているノズル層120によって画成されることができる。ノズル118は、ノズル層120の外表面によって画成される出口122を有している。実施態様によっては、下降部116を再循環チャンネル126に流体接続する再循環通路124が提供されてもよい。
【0016】
膜104は、ポンプ室112にごく近接して基板108の上面に形成され、例えば膜104の下面が、ポンプ室112の上側の境界を画成することができる。アクチュエータ102が膜104の上面に配置され、アクチュエータ102と膜104との間には接着剤103がある。
【0017】
図2Aにおいて、プリントヘッドモジュール100の一部の平面図を示す。実施態様によっては、各ポンプ室112が、独立して作動させることのできる対応する電気的に絶縁されたアクチュエータ102を有する。この実施態様では、2行のアクチュエータ102を示す。2行のアクチュエータ102が2行のポンプ室112に対応し、2行のポンプ室112は、ポンプ室112の下にある2行のノズル118に対応することができる。
【0018】
図2Bにおいて、この実施態様では、アクチュエータ102は、回路(図示せず)によるアクチュエータ102の作動を可能とするように、電極130と132との間に圧電層131を有している。例えば、電極130は駆動電極であってもよく、電極132は接地電極であってもよく、駆動電極130に印加される電圧により圧電層131に電圧差が生じ、それにより圧電材料が変形する。この変形により膜104がポンプ室112へと変位し、それにより流体がポンプ室112から押し出される。
【0019】
圧電層131は通常、例えば20μm未満の、極めて薄い層として形成され、層に損傷を与えることなく扱うことが困難であり得るため、アクチュエータ102は、少なくとも以下の二つの方法で形成されることができ、ただし他の形成技法も可能である。一つの技法では、下部電極、即ち電極132が、比較的厚い圧電層の底面に形成される。この実施態様では、電極132が形成された厚い圧電層を、「アクチュエータ層」と称する。これは、実際にはアクチュエータではないが、アクチュエータ形成プロセスの一段階におけるそのいくつかの構成要素を含むためである。次に、本明細書に記載されている接合方法を用いて、アクチュエータ層を膜104と接合することができ、ここで膜104は基板108と既に接合されている。次に、厚い圧電層を平坦化して、所望の厚さに厚みを低減し、即ち圧電層131を形成することができる。次に、上部電極、即ち電極130を圧電層131の上面に形成することができる。
【0020】
別の技法では、比較的厚い圧電層が支持ウエハ上に形成される。次に圧電層を平坦化することにより所望の厚さに厚みが低減され、即ち圧電層131が形成される。支持ウエハは、かかる薄い層の圧電材料を形成するのに必要な剛性を提供する。次に、圧電層131の露出面を金属化することにより、下部電極、即ち電極132が形成される。この実施態様では、支持ウエハに取り付けられ、かつ電極132が形成されている圧電層131が、「アクチュエータ層」である。アクチュエータ層は、本明細書に記載されている接合方法を用いて膜104と接合される。次に、圧電層131から支持ウエハを取り除くことができる。次に、圧電層131の新しく露出した面を金属化して、上部電極、即ち電極130を形成することができる。
【0021】
膜104は、シリコン(例えば単結晶シリコン)、他の何らかの半導体材料、酸化物、ガラス、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、他のセラミック若しくは金属、シリコン・オン・インシュレータ、又は任意のデプスプロファイルを特定可能な(depth−profilable)基板から形成されることができる。例えば、膜104は不活性材料から構成され、アクチュエータ102の作動によりポンプ室112内の流体を加圧するのに十分な膜104の撓曲が生じるような伸縮性を有することができる。実施態様によっては、膜104は、約1μm〜約150μmの厚さを有することができる。より詳細には、実施態様によっては、厚さは約8〜20μmの範囲である。内容全体が参照により本明細書に援用される、Biblらにより2004年10月8日に出願され、2005年5月12日に公開された、「Print Head with Thin Membrane」と題される米国特許出願公開第2005/0099467号明細書が、プリントヘッドモジュール及び製造技法の例について記載している。
【0022】
図3は、アクチュエータ層を膜と接合する例示的な方法300のフローチャートである。説明のため、アクチュエータ層は、図2Bを参照して上記で考察したとおりの、図1〜2Bに示すアクチュエータ102の形成方法の一段階における構成要素であってもよい。膜は膜104であってもよい。しかしながら、方法300は、同じ、又は異なる構成のプリントヘッドモジュールに使用される他の構成のアクチュエータ102及び膜104で用いられてもよい、ということは理解されなければならない。
【0023】
少なくとも膜104と接合される表面を洗浄することにより、アクチュエータ層が調製される(ステップ302)。実施態様によっては、Oプラズマ洗浄処理が用いられる。表面をOプラズマで処理すると、表面が化学的に活性化され、それにより接着剤の表面との結合性を向上させることができる。
【0024】
接着剤の層が、膜104と接合されるアクチュエータ層の表面に塗布される(ステップ304)。接着剤26は、エポキシ(例えばポリイミド又はベンゾシクロブテン(BCB))等の有機材料か、又は他の好適な材料であってもよい。接着剤は、スピンオン法により例えば約0.3〜3μmの厚さに塗布されることができる。特定の例では、接着剤の厚さは約1.2μmである。接着剤は、熱硬化性接着剤、例えば熱硬化性樹脂を含む接着剤であり、「Bステージ」まで部分的に硬化される(ステップ306)。Bステージは、ある種の熱硬化性樹脂の反応における二次的な段階を指し、完全な溶融又は溶解を伴わない加熱時の樹脂の軟化及び特定の液体の存在下における膨潤を特徴とする。Bステージはまた、粘度の漸進的な上昇も特徴とすることができる。
【0025】
接着剤がBCBである実施態様では、BCBを摂氏約100度(℃)に約20分間加熱すると、Bステージを実現することができる。
【0026】
アクチュエータ層と接合される膜104の表面が調製される(ステップ308)。接合及び/又はジェット噴射性能を妨げ得る粒子が、表面から取り除かれる。一実施態様では、膜104は、水酸化アンモニウム及び過酸化水素溶液のRCAバスにおいて約70℃で10分間、即ち標準的なRCA−1洗浄で洗浄される。
【0027】
アクチュエータ層及び膜104の双方が調製されると、アクチュエータ層は膜104と接触するように置かれる(ステップ310)。例えば、図4Aに示すように、アクチュエータ層は膜104の上面に置かれる。通常、アクチュエータ層及び膜104は、各々、約30〜50μmの反りを有することができ、これは図4Aでは、説明のため誇張した形で示しており、アクチュエータ層は要素105により表している。
【0028】
図4Bにおいて、アクチュエータ層105と膜104とが、縁に沿って直接接触するように押し付けられ、ファンデルワールス結合が開始される(ステップ310)。比較的小さい力、例えば、約5psiの力を用いて接合を開始することができる。接着剤が塗布されたアクチュエータ層105と膜104とは徐々に一体となり、ファンデルワールス結合によって一体に保持される(図4C参照)。アクチュエータ層105と膜104とが一体になると、二つの構成要素間の空気が押し出され、平坦で均一な接合層が残る。実施態様によっては、この技法を用いると、アクチュエータ層105と膜104とを約10分間で一体に接合することができる。実施態様によっては、真空熱圧着ボンダー、例えばオーストリア国St.Florian/InnのEV Groupから入手可能なEVGボンダーを使用すると、比較的小さい力を加えてファンデルワールス結合を開始させることができる。
【0029】
次に、接合されたアクチュエータ層105と膜104とをオーブンに移し、接着剤の硬化を完了させるのに十分な時間にわたり十分な熱に曝露することができる(ステップ312)。例えば、BCB接着剤を使用する場合、接合された層を200℃のオーブンにおいて40時間で硬化させることができる。時間を短縮するためより高い温度を用いてBCB接着剤を硬化させることもできるが、温度を意図的に低く、例えば200℃に保つことで、アクチュエータ層105に含まれる圧電層に悪影響が及び、例えば圧電層が脱分極するのを回避することができる。
【0030】
方法300を用いた接着剤の厚さは、ほぼσ=10%以下(例えば5%以下、又は1.5%以下)の総厚さ変動(TTV)を有することができる。対照的に、従来の接合技法を用いると、この変動は30%程の高さであり得る。即ち、接着剤の厚さを数箇所の点で計測し、それらの点の標準偏差を計算して、アクチュエータ/膜アセンブリにおける接着剤の厚さの変動を決定することができる。一例では、厚さは、filmetric光学測定デバイスを用いて計測することができる。
【0031】
他の実施態様では、接着剤を、膜104及びアクチュエータ層105の双方に塗布することができる。
【0032】
再び図1に示す例示的なプリントヘッドモジュールにおいて、動作中、流体は入口106から基板108に流れ込み、入口通路110に通じる。流体は、上昇部114を上ってポンプ室112に流れ込む。ポンプ室112の上方のアクチュエータ102が作動されると、アクチュエータ102により膜104がポンプ室112内に変位する。結果として起こるポンプ室112の容積変化により流体がポンプ室112から押し出され、下降部116に入る。次に、アクチュエータ102が加えた圧力が、ノズル118を通じて流体の液滴を押し出すのに十分であったならば、流体はノズル118を通過して出口122から出る。次に、流体の液滴は基板上に滴下されることができる。一実施態様では、アクチュエータ102は、膜が基板108の他の部分に接合された後に、膜104と接合される。
【0033】
再び図2Bにおいて、図示される実施態様では、圧電アクチュエータ102は接地電極132と圧電層131と駆動電極130とを有している。圧電層131は圧電材料の薄膜であり、厚さが約50μm以下、例えば約25μm〜1μmであることができる。特定の例では、圧電層は厚さが約8〜18μmの範囲である。
【0034】
実施態様によっては、圧電層は、高密度、低空隙率、及び高圧電定数等、望ましい特性を有する圧電材料から構成されることができる。これらの特性は、圧電材料において、それを基板と接合する前に材料の焼成が関わる技法を用いることにより、達成されることができる。例えば、それ自体が成形及び焼成される圧電材料は(支持体上にあるものとは対照的に)、高圧を用いて材料をモールド(加熱された、又は加熱されていない)に装入することができるという利点を有する。更に、通常必要な流動化剤及び結合剤等の添加剤が少ない。より高い温度、例えば1200〜1300℃を焼成過程に用いることができるため、より優れた熟成及び結晶粒成長が可能となる。焼成雰囲気(例えば鉛濃縮雰囲気)を使用して、セラミックからのPbOの損失(高温に起因する)を低減することができる。PbO損失又は他の劣化を有し得る成形部品の外側面は、切り取って廃棄することができる。材料はまた、熱間等静圧圧縮成形(HIP)により処理することもでき、その間、セラミックは、通常1000〜2000atmの高圧に供される。HIP処理は、通常は圧電材料のブロックが焼成された後に行われ、密度を高め、空隙率を低下させ、圧電定数を高めるために用いられる。
【0035】
比較的薄いウエハの厚さを低減することにより、予備焼成された圧電材料の薄層を形成することができる。水平研削及び化学機械研磨(CMP)等の精密研削技法により、平滑で低空隙率の表面形態を有する高度に均一な薄層を作製することができる。水平研削では、ワークが回転チャックに取り付けられ、ワークの露出面が水平な砥石と接触する。
【0036】
研削及び研磨は、ウエハに対して、例えば、1μm以下、例えば約0.5μm以下の平坦度及び平行度、5nm Ra以下(例えば1nm)までの表面仕上げをもたらすことができる。研削はまた、対称な表面仕上げ及び均一な残留応力をもたらすこともできる。必要な場合には、わずかに凹面状又は凸面状の表面を形成してもよい。実施態様によっては、薄層を支持して破断及び反りの可能性を低減するため、圧電ウエハをモジュール基板等の基板と研削前に接合することができる。
【0037】
実施態様によっては、圧電材料の密度は約7.5g/cm以上、例えば、約8g/cm〜10g/cmである。d31係数は約200以上であってもよい。HIP処理された圧電材料は、日本国のSumitomo PiezoElectric MaterialsからH5C及びH5Dとして入手可能である。H5C材料は、約8.05g/cmの見掛け密度及び約210のd31を呈する。H5D材料は、約8.15g/cmの見掛け密度及び約300のd31を呈する。ウエハは、通常約1cm厚であり、約0.2mmにダイシングされることができる。ダイシングされたウエハをモジュール基板と接合し、次に接地と接合して、所望の厚さにすることができる。圧電材料は、加圧成形、ドクターブレーディング、グリーンシート、ゾルゲル又は堆積技法を含む技法によって形成されることができる。高密度、高圧電定数の材料が好ましいが、研削技法を低性能材料に用いて、薄層及び平滑で均一な表面形態を提供することができる。TRS Ceramics、(Philadelphia、PA)から入手可能なマグネシウムニオブ酸鉛(PMN)等の単結晶圧電材料もまた、用いることができる。
【0038】
電極130、132は、金属、例えば、銅、金、タングステン、ニッケルクロム(NiCr)、インジウムスズ酸化物(ITO)、チタン若しくは白金、又は金属の組み合わせであってもよい。金属は、圧電層131に真空蒸着されてもよい。電極層の厚さは、例えば、約2μm以下、例えば約0.5μmであってもよい。詳細な実施形態では、ITOを使用して短絡を低減することができる。ITO材料は、圧電材料中の小さい空隙及び通路を充填し、短絡を低減するのに十分な抵抗を有することができる。この材料は、比較的高い電圧で駆動される薄い圧電層に有利である。更に、電極層の取付前に、圧電材料の表面を誘電体で処理して表面空隙を充填してもよい。空隙の充填は、誘電体層を圧電層表面に堆積し、次に誘電体層を研削又は研磨して、表面のいかなる空隙も誘電体で充填されたまま残るように圧電材料を露出させることにより、行われてもよい。誘電体は破損の可能性を低減し、かつ動作上の均一性を向上させる。誘電材料は、例えば、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム又は高分子であってもよい。誘電材料は、スパッタリング又はPECVD等の真空蒸着技法により堆積されてもよい。
【0039】
膜104は、通常、不活性材料であり、圧電層の作動によりポンプ室内のインクを加圧するのに十分な膜104の撓曲が生じるような伸縮性を有する。膜104の厚さが均一であることにより、モジュールにわたって正確で均一な作動がもたらされる。膜材料は厚板(例えば約1mm以上の厚さ)として提供し、それを水平研削を用いて所望の厚さに研削してもよい。例えば、膜104は、約25μm以下、例えば約12μmの厚さに研削されてもよい。実施形態では、膜104は約60ギガパスカル以上の弾性率を有する。例示的な材料としては、ガラス又はシリコンが挙げられる。特定の例は、独国Schott GlassからBoroflot EV 520として入手可能なホウケイ酸ガラスである。
【0040】
上記で考察される実施態様では、アクチュエータ層は、電極が形成された圧電層を含み、電極側の表面が膜と接合される。他の実施態様では、代わりに電極が膜に形成されてもよく、接着剤を圧電層にスピンオンして圧電層を膜と接合してもよい。この実施態様では、接着層は下部電極(例えば電極132)と圧電層(例えば層131)との間に形成される。
【0041】
本明細書及び特許請求の範囲全体を通じた「前」、「後」、「上」、及び「下」等の用語の使用は、プリントヘッドモジュール及び本明細書に記載されている他の要素の様々な構成要素間を区別して説明するために過ぎない。「前」及び「後」及び「上」及び「下」の使用は、プリントヘッドモジュールの特定の向きを含意するものではない。同様に、本明細書全体を通じた要素について記載するための水平方向及び垂直方向の使用は、記載する実施態様に関するものである。他の実施態様では、同じ、又は類似した要素が、場合によって水平方向又は垂直方向以外の向きであり得る。
【0042】
本発明の複数の実施形態について説明した。しかしながら、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な変更を行うことができる、ということが理解されよう。例えば、方法300のステップは、示されるものとは異なる順序で行われてもよく、それでもなお望ましい結果を実現することができる。したがって、他の実施形態は以下の特許請求の範囲の内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板を第2の基板と接合する方法であって、
前記第1の基板の表面を接着層で被覆するステップと、
前記接着層をBステージまで部分的に硬化させるステップと、
前記第1の基板の前記表面を前記第2の基板と接触させて位置決めするステップと、
前記第1の基板の縁を前記第2の基板の縁に押圧するステップであって、それによりファンデルワールス接合を開始させるステップと、
前記第1の基板と前記第2の基板とをファンデルワールス接合により一体にさせるステップと、
前記接合された第1の基板と第2の基板とを、前記接着層を完全に硬化させるのに十分な時間にわたり十分な熱に供するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の基板が、圧電層を含むアクチュエータ層を備え、前記第2の基板がシリコン膜を備え、前記方法が、
前記第1の基板の表面を接着層で被覆する前に、前記表面を酸素プラズマ処理するステップと、
前記第1の基板と前記第2の基板とを接触させて位置決めする前に、前記第2の基板をRCA−1洗浄するステップと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記接着層が、ベンゾシクロブテンを含み、前記第1の基板の前記表面にスピンオンされる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の基板の縁を前記第2の基板の縁に押圧するステップが、約5〜20psiの範囲の力を加えるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の基板の表面を接着層で被覆する前に、前記表面を化学機械研磨するステップ、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記接着層がベンゾシクロブテンを含み;及び
前記接合された第1の基板と第2の基板とを、前記接着層を完全に硬化させるのに十分な時間にわたり十分な熱に供するステップが、前記接合された第1の基板と第2の基板とを約40時間にわたり摂氏約200度に加熱するステップを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記接着層が約1.5%以下の総厚さ変動を有する、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【公表番号】特表2011−523383(P2011−523383A)
【公表日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510564(P2011−510564)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/043336
【国際公開番号】WO2009/142929
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】