説明

基板を直接接合するシステムおよび方法

基板(230、240)を接合する方法と接合された基板(230、240)を有する装置とを開示する。基板を接合する方法は、基板接合材料層(250)を第1の基板(240)の接合面(242)に付着することを含む。基板接合材料層(250)又は第2の基板(230)の接合面(232)の少なくとも一方の接合部位密度が高められ、基板接合材料層(250)を有する第1の基板(240)の接合面(242)が、第2の基板(230)の接合面(232)に接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に基板の接合の分野に関する。詳細には、本発明は、MEMSや他の装置内の基板を、光の反射損失を減少させるように接合する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MEMSや他の装置は、互いに近接または接合した2つ以上の基板を含むことがある。例えば、デジタルプロジェクタなどの光学システムにおいては、装置が、干渉型デジタル光表示装置(DLD)パッケージを含むことがあり、このパッケージは、DLDへ光を導き、DLDから光を導くために2枚以上の基板を含む。CRTと同様に、リアプロジェクションテレビでは、光源からの画像を処理または生成するために、デジタルプロジェクタにDLDが使用されることがある。
【0003】
図1に1つのそのようなDLDパッケージを示す。パッケージ100は、駆動電極122を備えたベース基板120、垂直方向に動くことができる画素プレート110、および薄い保護基板すなわち膜130を有する。画素プレート110上に反射コーティングが提供されることがあり、また膜130の裏面に部分反射コーティングが提供されることがある。保護膜130は、DLD画素プレート110を取り囲む空洞を包囲し、それを通してある程度の光を通過させる。図1に示したパッケージ100の場合のようないくつかの場合では、例えば光を処理するために保護膜130の近くに、厚いガラスで作成されることがある第2の基板140が提供される。保護膜130と第2の基板140とは、保護膜130と第2の基板140との周囲に配置された接合リング150によって離間される。したがって、光源(図示せず)からの光160は、第2の基板140と保護膜130とを通過して画素プレート110に達することができる。画素プレートを垂直方向に動かすことによって、光干渉の結果、異なる色の光が生成される。例えば、画素プレート110と保護膜130の間の隙間が変化するとき、処理される光170(画像)は、第2の基板140を通り抜けてレンズなどのさらに他の光処理要素に進む。
【0004】
光160、170が、保護膜130と第2の基板140とを通るとき、光は異なる屈折率(RI)の領域を通る。例えば、保護膜130と第2の基板140とがそれぞれ異なるRIを有し、保護膜130と第2の基板140との間の空間が、第3の異なるRIを有する。この光の経路に沿ったRIの変化によって、光160、170の一部分が反射光180として失われ、それにより、DLDパッケージ100により生成される画像の質が低下する。反射を考慮するために、保護膜130と第2の基板140との様々な面に反射防止コーティングが設けられることがある。そのようなコーティングは高価で、特にいくつかの内側面では実施するのが困難なことがある。さらに、湿気や気体分子が接合リング150を通り抜けることがあるため、パッケージが密閉されないことがある。
【発明の開示】
【0005】
本発明の1つの実施形態は、基板を接合する方法に関する。この方法は、第1の基板の接合面に基板接合材料層を付着させることを含む。第1の基板上の基板接合材料層と第2の基板の接合面の少なくとも一方の接合部位密度が高められ、基板接合材料層を有する第1の基板の接合面が、第2の基板の接合面に接合される。
【0006】
本発明の別の実施形態は、MEMSパッケージに関する。このパッケージは、接合面を有する第1の基板と、第1の基板の接合面と対向する、研磨された接合面を有する第2の基板と、第1の基板の接合面に付着されかつ第2の基板の研磨された接合面に融着された研磨された基板接合材料層とを含む。
【0007】
以上の一般的な説明と以下の詳細な説明は共に単なる例示であり、特許請求の範囲の発明を限定するものではないことを理解されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図2を参照すると、本発明の実施形態によるパッケージの断面図が示される。1つの実施形態において、パッケージ200は、デジタルプロジェクタで使用される画像処理装置を含む。パッケージ200は、駆動電極222を備えた支持基板220上に取り付けられた画素プレート210を有する例示的なデジタル光表示装置(DLD)装置を含む。当然ながら、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)や反射型液晶パネル(LCOS)など他の光学素子が使用されてもよい。そのような光学素子は、当業者に周知であり、本出願のためにさらに詳しい考察は必要とされない。示した実施形態のパッケージ200は光学素子であるが、当業者は、本発明が光学素子に限定されず、2枚以上の基板を有する他の装置を含むことができることを理解されよう。
【0009】
支持基板220は、半導体や非導電基板などの様々な材料で作成されてもよく、DLD画素プレート210を支持するのに十分な強さを提供するように選択された厚さを有してもよい。本発明は支持基板220の材料と厚さとによって限定されるものではない。
【0010】
画素プレート210は、支持基板220に取り付けられた保護膜230によって包囲されている。基板230は、様々な材料で作成することができる。1つの実施形態において、保護膜230は、テトラエトキシシラン(TEOS)で作成される。保護膜230は、裏面に部分反射コーティングを備えてもよく、入って来る光の一部分をその部分反射コーティングを通すことができる。光は、画素プレート210と保護膜230との隙間に基づく望ましい干渉色効果を生成するように、画素プレート210から反射される。保護膜230は、既知の屈折率(RI)を有することができる。TEOSの場合、保護膜230は約1.5のRIを有する。1つの実施形態において、保護膜230は、少なくとも画素プレート210の上の領域で、0.5〜2.0ミクロンの間の厚さを有する。
【0011】
保護膜230の上に蓋240が配置される。光学素子の場合、蓋240は、それを光が通るように構成される。特定の実施形態において、蓋240は、ガラスなどの基板材料で作成され、0.5〜3mmの間の厚さを有する。蓋240の厚さは、例えばガス透過率などの様々なシステム要件に従って選択されることがある。蓋240は、基板230のRIと類似する、又は異なるRIを有してもよい。1つの実施形態において、蓋240は、ガラスで形成され、保護膜230のRIと近い約1.5のRIを有する。
【0012】
蓋240と保護膜230とは、それらの間の基板接合材料の薄い層250によって接合される。基板接合材料層250は、保護膜230と蓋240との間に配置され、約数ミクロンの厚さを有する。特定の実施形態において、層250は、保護膜230と蓋240との少なくとも一方のRIと近いRIを有する材料で形成される。基板接合材料としては、任意または様々な材料が挙げられる。例えば、基板接合材料は、半導体、誘電体または絶縁体材料でよい。基板接合材料は、例えば、ポリシリコーン、TEOS、窒化ケイ素、ガラスフリット材料で形成される。1つの実施形態において、基板接合材料は、図3と図4とを参照して後で説明するように、蓋240の接合面に付着されたTEOSから形成される。
【0013】
この構成では、蓋240と保護膜230の接合面の反射防止(AR)コーティングが不要になる。保護膜230、蓋240および層250のそれぞれのRIを互いに近くなるように選択することができるので、接合面からの光の望ましくない反射がなくなるかまたは大幅に減少する。したがって、1つの実施形態において、保護膜230と層250とは、TEOSから形成されもよく、蓋240はガラスから形成されてもよく、それぞれ約1.5のRIを有する。
【0014】
次に、図3と図4を参照して、図2のパッケージを形成するプロセスの実施形態を説明する。方法400は、ガラスで形成されることがある蓋240の接合面242に、TEOS、アモルファスシリコン、リンケイ酸ガラス(PSG)、ガラスフリット、窒化ケイ素などの基板接合材料層250を付着することを含む(ブロック410)。基板接合材料250は、例えば、スパッタリング、化学蒸着(CVD)、又はスクリーン印刷などの様々な方法を通じて付着することができる。基板接合材料層250は、数十分の1オングストロームから数十分の1ミクロンの間の厚さを有する比較的薄い層である。1つの実施形態において、蓋240の反対側の面にARコーティングが付着される。
【0015】
この接合面は、滑らかになるように研磨されてもよい。これに関して、保護膜230の接合面232と、蓋240の接合面242上の基板接合材料層250とは、例えば化学的な機械研磨(CMP)によってオングストロームレベルの平坦さまで研磨されてもよい。
【0016】
ブロック420で、これら基板の接合をさらに確実にするために、少なくとも1つの接合面の接合部位(シラノール基)密度を高める。接合部位密度は、例えば、プラズマ処理と、脱イオン水またはSC1(スタンダードクリーン1)化学薬品のいずれかによるオプションのウエット処理とを通じて高めることができる。これに関して、保護膜230の接合面232、あるいは蓋240の接合面242上の基板接合材料層250の接合密度は、プラズマ処理、イオン注入および物理スパッタリングを含む様々な方法のうちの任意の方法を通じて高めることができる。特定の実施形態において、両方の面の接合部位密度が高められる。接合部位密度を高めることにより、効果的にサンプルの接合強度が高められる。
【0017】
1つの実施形態において、接合部位密度は、接合面をプラズマ処理することによって高められる。これは、例えば、イオンビームスパッタリング法、反応性イオンエッチング、接合面へのプラズマ衝突、イオン注入、イオン衝撃を通じて行われる。プラズマ処理は、例えばO2、N2、Arプラズマを使用することができる。
【0018】
プラズマ処理の後で、接合面は、ある時間帯、脱イオン水またはSC1化学薬品に浸されてもよい。これに関して、表面のシラノール基(Si−OH)密度を高めるには1分足らずでほぼ十分である。例えば、浸漬は5分で十分である。次に、表面を、例えばスピン洗浄乾燥機を使用して乾燥させることができる。接合部位密度を高める他の方法は、当業者に周知であり、本発明の範囲内で意図される。
【0019】
ブロック430で、これら接合面が室温で融着される。この融着は、圧縮力を加えながらこれら接合面を合わせることによって達成することができる。接合部位密度を高めることによって、900℃もの高いアニーリング温度を必要とする場合がある典型的な融着方法ではなく、実質的に室温でこの融着を行うことができる。「室温」は、本明細書で使用されるとき、約15〜約40℃の間の範囲の温度を含む。
【0020】
1つの実施形態において、パッケージ200が焼きなましされる。1つの実施形態において、TEOSの薄い層250を備えたガラスで形成された蓋240を、TE0Sで形成された保護膜230に接合し、パッケージ200を、約2時間約200℃で焼きなます。
【0021】
したがって、保護膜230と蓋240とは、接合面232、242上のARコーティングを必要とせずに互いに接合される。プラズマ処理と接合後の焼きなましとによってシラノール基密度を高めると、保護膜230と蓋240とを互いに固定するのに十分な強度の接合が実現される。さらに、パッケージ200は、蓋240がこれを通して湿気または気体分子が通り抜けるのを防ぐのに十分な厚さにすることを保障することによって密閉してシールされて作成することができる。これに関して、ガラスで形成された0.5〜3mmの間の厚さを有する蓋240が十分である。
【0022】
本発明の実施形態の以上の説明は、例示と説明のために示された。以上の説明は、網羅的なものではなく、本発明を開示した厳密な形に限定するものでもなく、修正と変形が、以上の教示を鑑みて可能でありあるいは本発明の実施から得られる。実施形態は、当業者が、意図された特定の使用に適した様々な実施形態において様々な修正で本発明を利用できるようにするために、本発明の原理とその実際の応用例を説明するために選択され説明された。本発明の範囲は、添付された特許請求の範囲とその均等物によって規定される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】先行技術のMEMS装置の断面図である。
【図2】本発明の実施形態によるMEMS装置の断面図である。
【図3】基板を接合する前の図2のMEMS装置の断面図である。
【図4】本発明の実施形態により基板を接合する方法を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板(240)の接合面(242)上に基板接合材料層(250)を付着することと、
前記第1の基板(240)上の前記基板接合材料層(250)と第2の基板(230)の接合面(232)との少なくとも一方の接合部位密度を高めることと、
前記基板接合材料層(250)を有する前記第1の基板(240)の前記接合面(242)を、前記第2の基板(230)の前記接合面(232)に接合することとを含むことを特徴とする基板を接合する方法。
【請求項2】
前記接合部位密度を高める手順の前に、前記基板接合材料層(250)と前記第2の基板(230)の前記接合面(232)とを研磨することをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記研磨する手順が、化学的な機械研磨を使用することを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記研磨する手順が、前記層(250)と前記第2の基板(230)とを、オングストロームレベルの平坦さまで研磨することを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記接合する手順が、
前記第1の基板(240)と前記第2の基板(230)とをほぼ室温で融着させてパッケージを形成することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記接合する手順が、
前記パッケージを約200℃で約2時間焼なましすることをさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記付着する手順が、テトラエトキシシラン、アモルファスシリコン、窒化ケイ素、またはガラスフリットを付着することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第1の基板(240)がガラスで形成されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の基板(230)がテトラエトキシシランで形成されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記接合部位密度を高める手順が、
前記基板接合材料層(250)と前記第2の基板(230)の前記接合面(232)との少なくとも一方をプラズマ処理することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記接合部位密度を高める手順が、
前記基板接合材料層(250)と前記第2の基板(230)の前記接合面(232)との前記少なくとも一方を、脱イオン水とSC1化学薬品との少なくとも一方に浸すことをさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記基板接合材料(250)、前記第1の基板(240)、および前記第2の基板(230)がそれぞれほぼ同一の屈折率を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
接合面(242)を有する第1の基板(240)と、
前記第1の基板(240)の前記接合面(242)に対向する研磨された接合面(232)を有する第2の基板(230)と、そして、
前記第1の基板(240)の前記接合面(242)上に付着され、前記第2の基板(230)の前記研磨された接合面(232)に融着される研磨された基板接合材料層(250)とを備えることを特徴とするMEMSパッケージ。
【請求項14】
前記第2の基板(230)の前記研磨された接合面(232)と前記研磨された基板接合材料層(250)とが、オングストロームレベルの平坦さを有することを特徴とする請求項13に記載のMEMSパッケージ。
【請求項15】
前記第1の基板(240)、前記第2の基板(230)、および前記基板接合材料(250)がそれぞれほぼ同一の屈折率を有することを特徴とする請求項13に記載のMEMSパッケージ。
【請求項16】
前記第1の基板(240)、前記第2の基板(230)、および前記基板接合材料(250)が、MEMS装置の周囲の密閉シールを形成することを特徴とする請求項13に記載のMEMSパッケージ。
【請求項17】
MEMSパッケージであって、
接合面(242)を有する第1の基板(240)と、
前記第1の基板(240)の前記接合面に対向する研磨された接合面(232)を有する第2の基板(230)と、
前記第1の基板(240)の前記接合面(242)上に付着され、前記第2の基板(230)の前記研磨された接合面(232)に融着される研磨された基板接合材料層(250)とを有するMEMSパッケージを備えることを特徴とするデジタルプロジェクタ。
【請求項18】
前記第1の基板(240)、前記第2の基板(230)、および前記基板接合材料(250)が、ほぼ同一の屈折率を有することを特徴とする請求項17に記載のデジタルプロジェクタ。
【請求項19】
前記第1の基板(240)、前記第2の基板(230)、および前記基板接合材料(250)が、MEMS装置の周囲の密閉シールを形成することを特徴とする請求項17に記載のデジタルプロジェクタ。
【請求項20】
接合面(242)を有する第1の基板(240)と、
前記第1の基板(240)の前記接合面(242)に対向する研磨された接合面(232)を有する第2の基板(230)と、
前記第1の基板(240)の前記接合面(242)上に付着され、前記第2の基板(230)の前記研磨された接合面(232)に融着される接合手段(250)とを備えることを特徴とするMEMSパッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−530304(P2007−530304A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506273(P2007−506273)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【国際出願番号】PCT/US2005/009878
【国際公開番号】WO2005/097668
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】