説明

基板上での多孔質半導体膜の製造方法

本発明は、多孔質半導体膜の製造方法と半導体粒子の懸濁液に関する。さらに、その方法で製造された多孔質半導体膜に、また、前記半導体膜を有する電子デバイス、特に太陽電池に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質半導体膜の製造方法と半導体粒子の懸濁液に関する。さらに、その方法で製造された多孔質半導体膜に、また、前記半導体膜を有する電子デバイス、特に太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
単結晶太陽電池(solar cell、ソーラーセル)は〜25%ほどの高いエネルギー変換効率を示す。Si系結晶はもはや単結晶ではなく多結晶であり、最も高い効率は〜18%の範囲であり、アモルファスSiでは効率は〜12%である。しかし、Si系の太陽電池は、アモルファスSi版ですら、製造するにはむしろ高すぎる。従って、有機材料及び/または有機及び無機材料の混合物に基づいて代替物が開発されてきて、後者のタイプの太陽電池はしばしばハイブリッド太陽電池と称せられる。有機及びハイブリッド太陽電池は製造するのがより安いことが証明されてきたが、アモルファスSiセルと比べてさえもまだ効率が同等に低いようである。軽量、大面積の低コストの製造、環境に優しい材料、あるいは可撓性基板の製造などの、それらの可能な固有の利点に起因して、効率的な有機デバイスが、技術的及び商業的に有用な「プラスチック太陽電池」であることを証明するかもしれない。色素増感ナノ結晶酸化チタン(多孔質TiO)半導体及び液体酸化還元電解液に基づく太陽電池の近年の進展は、有機材料における高いエネルギー変換効率を証明する(非特許文献1)。
【0003】
分子色素による増感されたTiOのナノ結晶に基づく光電気化学電池(色素増感太陽電池、DSSC)は、効率のよい光起電デバイスとしての最初のそれの発表以来、注目を集めてきた(非特許文献1,上記参照;特許文献1)。継続中の研究の一部は、そのようなセルの可撓性基板上への可能な適用と、それを用いた可撓性太陽電池の製造の可能性である。そのような可撓性DSSCの成功した導入に先立って解決されるべき主たる挑戦の1つは、可撓性基板に塗布されたTiO層の安定性である。ここまで革新的な技術は全く報告されておらず、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、ドロップキャスト法、などの標準的な技術のみが、一般に適用されている。
【0004】
可撓性に加えて、プラスチック基板に印加できる温度の制限された範囲が、ここまでは可撓性DSSCの効率を限定する。これに関して、可撓性DSSCを製造する最も成功した方法は、これまで、スクリーン印刷法あるいはドクターブレード法でTiO層を形成し、続けて低温焼結のために高圧を印加することであった(非特許文献2、特許文献2参照)。この工程は、塗布後の基板のパターニングをさらに可能にする。
【0005】
Lindstroemら(上記参照)及び特許文献2に記載されたような標準的な技術で基板上にTiO膜を形成する技術の状態の不都合は、次のようにまとめられる:
(i)多孔質膜は一般に大変もろく、(可撓性)基板の曲げに耐えられない。従来技術で形成された膜は接着性が悪く、容易に基板から剥がれる。
(ii)標準的な技術は、ナノ多孔質TiOを、ざらつきのある(textured)ように直接塗布する可能性に欠けている。特許文献2では、塗布後のパターニングの方法が記載されているが、完全に被覆された基板から開始する。従ってこの方法は、消費される材料の量に応じて、直接パターニングする場合よりも費用がかかる。
(iii)先行技術から知られる標準的な技術のほとんどが非平面の基板に適用できない。
(iv)TiOのよりよい取り扱いのため、標準的技術のほとんどがTiOと有機結合剤の混合物を使用する。これらの追加の結合剤は、300℃を超えた温度で燃やされなければならないので、温度の印加に適していない。ほどんどの技術においてある粘度が必要であるので、結合剤を含まないTiO溶液は塗布するのが困難である。結合剤なしの技術は特許文献2に記載されており、それは通常品質の低い膜の結果となる。特許文献2に記載の方法は、加圧工程を含み、一般には適用できない。
【特許文献1】米国特許5084365号公報
【特許文献2】WO00/72373号パンフレット
【非特許文献1】B. O-Regan, and M. Graetzel, Nature 353(1991, 737)
【非特許文献2】Lindstroem, et al, Nano Lett, 1, 97(2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、可撓性基板上に行うことができ、長寿命の半導体膜へとつながる、色素増感太陽電池の製造方法を提供することが本発明の目的であった。さらに、大きな基板に適用できる安価な製造方法を提供することが本発明の目的であった。その上、不規則な基板及びほとんどどのような形状の基板にも適用可能な製造方法を提供することが本発明の目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すべてのこれらの目的は、
a)少なくとも1つの液体中の、その中で溶解性でない半導体粒子の懸濁液を調製(preparing)する工程と、
b)インクジェット印刷法により前記懸濁液を基板上に塗布し、それによって印刷された多孔質半導体膜を形成する工程と
を有する、基板上に多孔質半導体膜を製造する方法により解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
ある実施形態において、本発明に係る方法は、追加の
c)印刷された多孔質半導体膜を乾燥及び/または焼結し、それによって乾燥及び/または焼結した多孔質半導体膜を形成する工程を有する。
【0009】
好ましくは、前記半導体粒子の懸濁液は、いくつかの段階(stage)で塗布され、各段階はただ1層の塗布のみを有し、ここで、好ましくは、前記半導体粒子の1層は約1〜10、好ましくは2〜8、さらに好ましくは3〜5の半導体粒子の単層(monolayer)を有し、ここで、さらに好ましくは、前記半導体粒子の懸濁液を塗布する各段階の後で、本発明に係る上述の乾燥及び/または焼結工程が続く。
【0010】
ある実施形態において、前記工程b)及びc)が、1〜1000回、好ましくは1〜100回、より好ましくは1〜75回、最も好ましくは20〜75回行われる。他の実施形態において、それらは1〜50回行われる。
【0011】
ある実施形態において、前記多孔質半導体膜は約1〜約100μmの範囲の厚みを有する。
【0012】
ある実施形態において、結果として得られる、印刷された、及び/または、乾燥された、及び/または焼結された膜がざらつきのある(textured)膜であるように、記半導体粒子の懸濁液は定められた大きさのスポットに塗布され、ここで、好ましくは、前記定められた大きさのスポットは、1つにまとめると、前記基板の表面の20%を超えて、好ましくは50%を超えて、さらに好ましくは70%を超えて被覆する。
【0013】
ある実施形態において、前記インクジェット印刷法は1〜200℃、好ましくは20〜180℃、より好ましくは50〜150℃の範囲の温度で行われる。
【0014】
ある実施形態において、前記乾燥及び/または焼結工程c)は、約15〜250℃、好ましくは50〜150℃の範囲の温度で行われ、ここで、好ましくは、前記乾燥及び/または焼結工程は、前記温度で1分〜60分、好ましくは15〜45分の範囲の時間で行われる。
【0015】
ある実施形態において、いくつかの異なる種類の半導体粒子の懸濁液が調製され、ここで、前記多孔質半導体膜は、多層の配置として、多層の配置内における全て、いくつか、あるいは1つの層に対して異なる半導体粒子の懸濁液を用いて、製造される。
【0016】
ある実施形態において、前記半導体粒子は、前記基板上に印刷された後で、現像(development)工程、特に、加水分解(hydrolysis)工程あるいは濃縮(condensation)工程を受けない。
【0017】
好ましくは、工程a)及び/または工程b)は、両親媒性の材料がない状態で、特に、界面活性剤がない状態で行われ、及び/または、結合剤料、例えばポリマー結合剤料がない状態で行われる。
【0018】
ある実施形態において、前記半導体粒子の懸濁液は、工程a)において前記半導体粒子を前記液体に加えることにより、あるいはその逆により、調製される。
【0019】
好ましくは、前記半導体粒子は、直径が約5nm〜約500nmの範囲の大きさである。
【0020】
本発明の目的は、特に本発明に係る方法における使用のための、半導体粒子と、その中で前記半導体粒子が溶解性でない少なくとも1つの液体とを有し、前記半導体粒子が約5nm〜約500nmの範囲の大きさであることを特徴とする、半導体粒子の懸濁液によっても解決される。
【0021】
ある実施形態において、前記半導体粒子は凝集体である。
【0022】
ある実施形態において、懸濁液は、酸、塩基、及び/または、希釈液体、例えばアルコールの存在によって、使用のために調節された電気伝導性を有する。
【0023】
好ましくは、調節後の前記懸濁液の電気伝導性は、約600〜約2000μジーメンス/cmの範囲である。
【0024】
好ましくは、前記酸はHNOであり、前記アルコールはC〜Cアルコール、好ましくは、エタノール、プロパノール、あるいは、イソプロパノール、あるいは、それらの混合物である。
【0025】
ある実施形態において、その中で前記半導体粒子が溶解性でない前記少なくとも1つの液体は、水と、アルコール、好ましくは、イソプロパノールの混合物であり、ここで、好ましくは、水:アルコールの比は0.5〜2の範囲であり、好ましくは約1である。
【0026】
ある実施形態において、前記半導体粒子は酸化物粒子、好ましくはTiO粒子である。
【0027】
ある実施形態において、前記懸濁液は、10重量%以下、好ましくは2〜5重量%、さらに好ましくは約3重量%の半導体粒子を含む。本発明を実施するために様々な種類の半導体粒子を用いることができることが当業者に対して明らかである。これらの例は、これらに限定されないが、TiO、SnO、ZnO、Nb、ZrO、CeO、WO、SiO、Al、CuAlO、SrTiO、及び、SrCu、あるいはこれらの酸化物のいくつかを含有する複合酸化物である。
【0028】
本発明の目的は、本発明に係る方法により、好ましくは、上記のように定義された半導体粒子の懸濁液の使用により製造された多孔質半導体膜によっても解決される。
【0029】
ある実施形態において、平均の孔の大きさが約5nm〜50nmの範囲であり、及び/または、平均の空隙率が30%〜80%、好ましくは40%〜60%、さらに好ましくは50%程度である。この背景において、また、ここで用いられるように、X%の空隙率を有する膜とは、膜により占有される総体積のX%が空隙であることを示す。
【0030】
ある実施形態において、前記膜は基板上にあり、ここで、好ましくは、基板は可撓性であり、ここでさらに好ましくは、基板は平坦な表面あるいは不規則な表面を有する。
【0031】
広い種類の可撓性基板が存在することもまた当業者には明らかである。例えば、限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド(Kapton)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ステンレス鋼、OHP(オーバーヘッドトランスパレンシー(overhead transparencies))など、可撓性の、主にポリマーの(鉄鋼を除いて)基板が使用されてよい。
【0032】
ある実施形態において、膜は半導体粒子の複数のスポットを有し、前記スポットは離間しており、好ましくは100μm以下で離間している。
【0033】
本発明の目的は、本発明に係る方法を用いて製造された、及び/または、本発明に係る多孔質半導体膜を有する、電子デバイスによっても解決される。
【0034】
好ましくは、電子デバイスは太陽電池である。
【0035】
好ましくは、本発明に係る電子デバイス、特に太陽電池は、元の電力変換効率の15%を超えて失うことなく、1000回以上の曲げサイクルを耐えるその能力によって反映されるような安定性を有する。
【0036】
DSSC、特に可撓性DSSCの製造における上述の不利益は、インクジェット印刷技術による、半導体粒子、特にTiO粒子の塗布によって克服できる。インクジェット技術の1つの実現、即ち、連続的なインクジェット印刷において、電気伝導性のインクがどんな種類でも使用される。小さなノズルで形成されたインクの小滴が高い電場の領域で荷電しているので、電気伝導性が必要である。小滴を帯電させることは、小滴に第2の電極対へ偏向させ、従って、インクが基板に入るところの正確な位置取りを可能にする(図1を比較)。技術は多くの製造工程、例えばケーブルのラベル付けにおいて十分に確立している。非導電性のインクを用いた他の実現もまた知られている(オンデマンドの滴(drop on demand))。本発明者らは、導電性、半導体の含有量、粒子サイズ及び凝集性、及び溶媒に関して、インクジェット印刷の適用に適した、半導体インク、特にTiOインクを開発した。このインクは、基板上にいくつかのサイクルで印刷されることを可能にし、サイクルの数は印刷しようとする層の厚みに依存する。基板は平坦あるいは他のどのような種類の形状でもよい(図2を比較)。さらに、例えば、小さな分離されたTiOのスポットのある、どのような種類のパターンのTiO層も印刷できる(図3)。これらのパターンは自由に選択でき、ハードウェアによる制限はない。インクジェット印刷法で多孔質層を印刷することは、2つの方法で膜の安定性を高める:第1に、そのように印刷された膜は、層がサイクルごとに乾燥され、層の塗布及び乾燥の間に内部応力が全く組み入れられないので、よりもろくなく(less brittle)、より安定である。第2に、パターンの半導体スポットの大きさが良好に選択されたら、材料の折り曲げにより印加される応力は、大きな連続の多孔質層に対する場合よりずっと小さい。層の増加した安定性に加えて、可撓性基板に印加されたときの多孔質膜の必要な低温焼結は、インクジェット技術を用いた層ごとの塗布によって容易となる。全ての印刷層について、約1〜10層、好ましくは2〜8層、より好ましくは3〜5層のみの半導体粒子の単層が一度に塗布される(1つの単層はおよそ半導体粒子の厚みを有する)。これは、半導体粒子のお互いについてのずっと良好な配置を可能にし、従って、単一の粒子間の良好な接続を可能にする。基板上での半導体粒子の1層ごとの塗布によって、ドクターブレード法あるいはスクリーン印刷法などの他の方法で用いられる場合よりも低い粘度のインクを使用できるので、半導体とともに有機または他の結合剤は全く必要でない。ドクターブレード法に対する典型的な粘度値は、2000s−1の剪断速度(shear rate)で、例えば0.1〜0.2Pa・sである。本発明に係る懸濁液の粘度はこの値より低いことが好ましい。従って、結合剤材料の除去のために高温は全く必要ない。標準的な方法による低粘度インクの塗布は、より品質の悪い膜の結果となる。本発明に係るインクジェット法で印刷されたDSSCの効率をさらに改善するために、Lindstroemら(上記参照)または特許文献2に例示されるように、他の低温焼結工程及び/または圧縮工程との組み合わせが適用可能である。
【0037】
ここで、図面が参照される。
ここで、発明は、本発明を図解するために与えられ、本発明を限定されるものではない、以下の実施例を参照してさらに説明される。
【0038】
実施例
パターン化されたTiO層を有する可撓性DSSCの例が図4に示される。可撓性基板は、例えば透明導電性酸化物(TCO)、例えば導電性ITO(酸化インジウムスズ)層(約100nm)を有するPENから形成される。多孔質TiO層は、連続的なインクジェット印刷によって約5μm厚でPEN基板上に塗布される。本発明に係る懸濁液の典型的な例は:水中3重量%TiO(〜18nmの直径を持つ粒子):イソプロパノール(1:1)、HNO3で調節された電気伝導度1200μジーメンス/cm、である。懸濁液は50の印刷サイクルで用いられる。構造は表面の約30〜40%を被覆し、約1mmの点からなる。それは200℃で30分間焼結された。TiOの塗布と乾燥/焼結の後で、赤い色素分子が、エタノール中の溶液(0.3mM)からの自己組織化(self−assembling)により単層としてTiOに付着される。酸化還元対として働くヨウ素/ヨウ化物(0.015M)を含めたポリマー電解液(PC/EC中のPEO)で着色された多孔質層が満たされる。同じポリマー電解液の5μm厚のバルク層が、多孔質層とPEN基板上にまた適用された平坦で滑らかな白金膜(50nm)の間のギャップを架橋する。TiO層と白金対極の間の直接の接触を避けるため、ガラスからなる直径5μmのスペーサボールが2つの電極間に導入される。
【0039】
そのような太陽電池の電流−電圧特性が図5に示される。これらのセル(cell)は、1000回以上の曲げサイクルの後で損失が重大でなく、電力変換効率がまあまあの2.3%であり、大変良好な可撓性を示す(図6)。最適化した構造で、より高い5%の効率が到達可能であるはずである。
【0040】
本発明の方法を用いることで、半導体粒子を定められた方法でほとんど全てのありうる形状の基板に塗布することが可能である。さらに、構造化した、及び/またはパターン化した半導体の多孔質層を直接塗布することが可能であり、それは、第1の場所での半導体材料の実質的な節約に起因して、コストが非常にかからない方法にする。さらに、本発明に係る方法で製造された半導体膜は、極めて長い寿命を示す。光起電デバイスで用いられたときに、低温で焼結されただけだとしても、とそれらは良好な効率を示す。
【0041】
明細書、請求項及び/または添付の図面に開示された本発明の特徴は、単独、それらの組み合わせともに、それらの種々の形態で発明を実現するために影響を及ぼしうる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、本発明に係る方法におけるインクジェット印刷法の原理の作用図である。半導体粒子の懸濁液の滴を生成するために小さなノズルが用いられ、滴は電極によって帯電し、それから帯電電極の後方に配置された偏向電極によって基板上のそれらの想定された位置へと向けられる。
【図2】図2は、本発明のインクジェット方法論を用いた丸い形状の基板への印刷の可能性を示す。適切な角度でインクのジェットを基板へ向かわせるため、回転可能なプリンタヘッドを用いることができる。
【図3】図3は、構造化(structured)印刷(パネルA)及び非構造化印刷の例である。
【図4】図4は、構造化した半導体膜、例えばTiO膜を有する可撓性色素増感太陽電池の模式図である。可撓性基板は、例えばPETであってよい。他の可能な可撓性の、好ましくはポリマーの基板は、これらに限定されないが、次であってよい:ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド(Kapton)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ステンレス鋼、OHP(オーバーヘッドトランスパレンシー(overhead transparencies))。半導体層、好ましくはTiO層は、適切な色素(例えば、シス−ビス(イソチオシアネート)ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)ルテニウム(II)、赤色の色素)のアルコール溶液で処理され、その後で、酸化還元対として働く、例えばヨウ素/ヨウ化物(0.015M)を含めたポリマー電解液(例えばPC−EC(プロピレンカーボネート−エチレンカーボネート)中のPEO(ポリ酸化エチレン))で満たされる。さらに、絶縁材料のスペーサボールが、TiO層と例えば白金からなる対極の間の直接の接触を妨げる。
【図5】図5は、本発明の方法によって製造された完全に可撓性の太陽電池のI−V特性を示す。
【図6】図6は、図5の太陽電池の曲げサイクルの関数としての相対的効率を示す。曲げサイクルは、r=0.5cm程度に小さく、基板に湾曲を形成することで、手動で行われた。ここでrは、曲げられた基板が円周の一部を形成する理論的な円の半径を示す。典型的な基板は約1〜2cmの長さを有した。
【図7】図7は、本発明の方法によって製造された太陽電池の効率の、半導体層の印刷のために用いられるインクジェット印刷サイクルに対する依存性を示す。半導体層の約5μmの平均の厚みに対応して、約20〜75サイクル、好ましくは約50サイクルで、最適の効率が達成された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1つの液体中の、その中で溶解性でない半導体粒子の懸濁液を調製する工程と、
b)インクジェット印刷法により前記懸濁液を基板上に塗布し、それによって印刷された多孔質半導体膜を形成する工程と
を有する基板上での多孔質半導体膜の製造方法。
【請求項2】
c)印刷された多孔質半導体膜を乾燥及び/または焼結し、それによって乾燥及び/または焼結した多孔質半導体膜を形成する、追加の工程を有する
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記半導体粒子の懸濁液は、いくつかの段階で塗布され、各段階はただ1層の塗布のみを有する
上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記半導体粒子の1層は約1〜10、好ましくは2〜8、さらに好ましくは3〜5の半導体粒子の単層を有する
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記半導体粒子の懸濁液を塗布する各段階の後で、請求項2に記載の乾燥及び/または焼結工程が続く
請求項3〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記工程b)及びc)が、1〜1000回、好ましくは1〜100回、より好ましくは20〜75回行われる
請求項2〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記多孔質半導体膜は約1〜約100μmの範囲の厚みを有する
上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
結果として得られる、印刷された、及び/または、乾燥された、及び/または焼結された多孔質半導体膜がざらつきのある膜であるように、記半導体粒子の懸濁液が定められた大きさのスポットに塗布される
上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記定められた大きさのスポットは、1つにまとめると、前記基板の表面の20%を超えて、好ましくは50%を超えて、さらに好ましくは70%以上を被覆する
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記インクジェット印刷法は1〜200℃、好ましくは20〜180℃、より好ましくは50〜150℃の範囲の温度で行われる
上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記乾燥及び/または焼結工程c)は、約15〜250℃、好ましくは50〜150℃の範囲の温度で行われる
請求項2〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記乾燥及び/または焼結工程は、前記温度で1分〜60分、好ましくは15〜45分の範囲の時間で行われる
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
いくつかの異なる種類の半導体粒子の懸濁液が調製され、ここで、前記多孔質半導体膜は、多層の配置として、多層の配置内における全て、いくつか、あるいは1つの層に対して異なる半導体粒子の懸濁液を用いて、製造される
上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記半導体粒子は、前記基板上に印刷された後で、現像工程、特に、加水分解工程あるいは濃縮工程を受けない
上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
工程a)及び/または工程b)は、両親媒性の材料がない状態で、特に、界面活性剤がない状態で行われ、及び/または、結合剤料、例えばポリマー結合剤料がない状態で行われる
上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記半導体粒子の懸濁液は、工程a)において前記半導体粒子を前記液体に加えることにより、あるいはその逆により、調製される
上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記半導体粒子は、直径が約5nm〜約500nmの範囲の大きさである
上記の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
特に請求項1〜17のいずれかに記載の方法における使用のための、半導体粒子と、その中で前記半導体粒子が溶解性でない少なくとも1つの液体とを有し、前記半導体粒子が約5nm〜約500nmの範囲の大きさであることを特徴とする
半導体粒子の懸濁液。
【請求項19】
前記半導体粒子は凝集体である
請求項18に記載の懸濁液。
【請求項20】
酸、塩基、及び/または、希釈液体、例えばアルコールの存在によって、使用のために調節された電気伝導性を有することを特徴とする
請求項18〜19のいずれかに記載の懸濁液。
【請求項21】
調節後の前記懸濁液の電気伝導性は、約600〜約2000μジーメンス/cmの範囲である
請求項20に記載の懸濁液。
【請求項22】
前記酸はHNOであり、前記アルコールはC〜Cアルコール、好ましくは、エタノール、プロパノール、あるいは、イソプロパノール、あるいは、それらの混合物である
請求項21に記載の懸濁液。
【請求項23】
その中で前記半導体粒子が溶解性でない前記少なくとも1つの液体は、水と、アルコール、好ましくは、イソプロパノールの混合物である
請求項18〜22のいずれかに記載の懸濁液。
【請求項24】
水:アルコールの比は0.5〜2の範囲であり、好ましくは約1である
請求項23に記載の懸濁液。
【請求項25】
前記半導体粒子は酸化物粒子、好ましくはTiO粒子である
請求項18〜24のいずれかに記載の懸濁液。
【請求項26】
前記半導体粒子が、10重量%以下、好ましくは2〜5重量%、さらに好ましくは約3重量%の量で存在する
上記の請求項のいずれかに記載の懸濁液。
【請求項27】
請求項1〜17のいずれかに記載の方法により、好ましくは、請求項18〜26のいずれかで定義された半導体粒子の懸濁液の使用により製造された
多孔質半導体膜。
【請求項28】
平均の孔の大きさが約5nm〜50nmの範囲であり、及び/または、平均の空隙率が30%〜80%、好ましくは40%〜60%、さらに好ましくは50%程度である
請求項27に記載の多孔質半導体膜。
【請求項29】
基板上にある、
請求項27〜28のいずれかに記載の多孔質半導体膜。
【請求項30】
前記基板は可撓性である
請求項29に記載の多孔質半導体膜。
【請求項31】
前記基板は平坦な表面あるいは不規則な表面を有する
請求項29〜30のいずれかに記載の多孔質半導体膜。
【請求項32】
半導体粒子の複数のスポットを有し、前記スポットは離間しており、好ましくは100μm以下で離間している
請求項27〜31のいずれかに記載の多孔質半導体膜。
【請求項33】
請求項1〜17のいずれかに記載の方法を用いて製造された、及び/または、請求項27〜32のいずれかに記載の多孔質半導体膜を有する
電子デバイス。
【請求項34】
太陽電池である、
請求項33に記載の電子デバイス。
【請求項35】
特に請求項34に記載の太陽電池であり、
元の電力変換効率の15%を超えて失うことなく、1000回以上の曲げサイクルを耐えるその能力によって反映されるような安定性を有する
請求項33に記載の電子デバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2007−534120(P2007−534120A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508740(P2007−508740)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【国際出願番号】PCT/EP2005/001842
【国際公開番号】WO2005/104152
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(397051508)ソニー ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (140)
【Fターム(参考)】