説明

基板処理方法及び基板処理液

【課題】シリコンインゴットから切り出された基板からパーティクルを除去し、また基板への金属不純物の付着を抑えることのできる基板処理方法を提供すること。
【解決手段】シリコンインゴットから切り出された基板を、グルカミン基を有する化合物を含む高濃度例えば48重量%のアルカリ溶液に浸漬させることによりエッチング処理を行う。これにより、基板の表面からパーティクルを取り除くことができるだけでなく、基板の表面部のエッチングによりアルカリ溶液中に分散した金属不純物及びアルカリ溶液中にもともと含まれる金属不純物が、アルカリ溶液中のグルカミン基を有する化合物に捕獲される。このため、アルカリ溶液中の金属不純物が基板に付着するのを抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンインゴットから切り出された基板の表面を処理する基板処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイスの製造に用いられる例えばシリコンインゴットからスライスして切り出されたシリコンウエハは、例えば周縁の面取りがされる面取り工程、厚みが整えられるラッピング工程、エッチング液を用いてウエットエッチングするエッチング工程、表面を研磨して鏡面化するポリッシング工程およびウエハに付着した不純物を取り除く洗浄工程などの所定の処理が施されて製造される。
【0003】
このときの不純物としては、例えば有機物又は有機物を含む化合物からなるパーティクルや、例えばニッケル、銅、クロム、鉄などの金属不純物などがある。これらの不純物を除去する洗浄液として、パーティクルについては例えばアンモニア溶液、水酸化カリウム溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH;Tetramethyl Ammonium Hydroxide)などのアルカリ溶液を、そして金属不純物については例えば塩酸、硝酸、硫酸などの酸性溶液を夫々用いてきた。
【0004】
しかし、アルカリ溶液及び酸性溶液の2種類の薬液を用いることは、工程が増え処理作業が繁雑になるため基板製造のスループットの向上を妨げる要因となり、また薬液管理の負担も大きくなる。このため、キレート剤を添加した高濃度のアルカリ溶液により、パーティクルと金属不純物を同時に除去する方法が検討されている。これは、高濃度のアルカリ溶液により基板表面をエッチング(リフトオフ)することで、基板表面のパーティクルだけでなく、基板表面の分子構造内に潜り込んだ金属不純物を除去すると共に、遊離した金属不純物及びアルカリ溶液中にもともと含まれる金属不純物の基板への吸着を、キレート作用により防止するというものである。
【0005】
しかし、この方法にも、キレート剤の種類によっては、アルカリ溶液の高濃度化のため、キレート剤が溶解しにくくなったりキレート作用が弱まるなどの問題が起こり得る。また、キレート剤としては、低価格で金属不純物の除去性能の良いものが求められている。
【0006】
そこで、アルカリ溶液の添加剤として、特許文献1では、CyDTA(トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン4酢酸)を用いることが提案されている。しかし、このCyDTAは、濃度がかなり高いアルカリ溶液中では完全には溶解せず、一部が固体のまま分散した状態となる。この分散状態においても金属不純物の除去性能は確保されるが、ユーザからは完全に溶解するものが望まれている。また、特許文献2では、アルカリ溶液の添加剤としてジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)などが開示されているが、この添加剤はかなり高価なものである。
一方、特許文献3には、高濃度の水酸化アルカリ溶液をN−メチルグルカミン基を官能基として有するキレート樹脂に接触させることで、この高濃度水酸化アルカリ中の重金属を吸着除去する精製方法が記載されている。また、特許文献4には、N−メチル−D−グルカミン基を導入した繊維に研磨スラリーを接触させることで、このスラリー中の金属イオンを除去する方法が記載されている。しかし、これらの方法は、高濃度のアルカリ溶液により基板をエッチングすることで遊離した金属不純物が、基板に再付着することを防止する技術とは異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4271073号公報
【特許文献2】特開2010−93126号公報
【特許文献3】特開2008−31009号公報
【特許文献4】特開2004−75859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情の下になされたものであり、その目的はシリコンインゴットから切り出された基板からパーティクルを除去し、また基板への金属不純物の付着を抑えることのできる基板処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の基板処理方法は、
少なくとも表面部がシリコン又はシリコン酸化物からなるシリコンインゴットから切り出された後の基板の表面を基板処理液により処理する基板処理方法において、
グルカミン基を有する化合物を含むアルカリ溶液からなるエッチング液である基板処理液を基板に供給してこの基板の表面部に存在する金属不純物を除去する工程と、
前記基板から除去されて前記基板処理液中に分散した金属不純物と前記グルカミン基を有する化合物とを反応させる工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の基板処理液は、
少なくとも表面部がシリコン又はシリコン酸化物からなるシリコンインゴットから切り出された後の基板の表面を処理するエッチング液である基板処理液において、
前記基板処理液に処理されて前記基板の表面部から当該基板処理液中に分散した金属不純物と反応するグルカミン基を有する化合物を含むアルカリ溶液からなることを特徴とする。
【0011】
なお、前記グルカミン基を有する化合物としては、例えばN−メチル−D−グルカミンが挙げられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、例えばシリコンインゴットから切り出された基板に対して、グルカミン基を有する化合物を含む高濃度のアルカリ溶液を用いて処理することにより、基板の表面からパーティクルを取り除くことができると共に、基板の表面部がエッチングされてアルカリ溶液中に分散した金属不純物及びアルカリ溶液中にもともと含まれる金属不純物がグルカミン基を有する化合物に捕獲される。このため、アルカリ溶液中に分散した金属不純物が基板に付着するのを抑えることができ、後述の実験例からも明らかなように、処理後の基板の表面の金属不純物を極めて少なくすることができる。そして、基板の表面の仕上がりは、アルカリ濃度が高いほど良好であり、グルカミン基を有する化合物は高濃度のアルカリ溶液に溶解することから、この点においても有利である。更にまた、グルカミン基を有する化合物は、特許文献2に記載されたDHEGよりも格段に価格が低い点(数十分の一程度)において有利である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態について、グルカミン基を有する化合物の中でも容易に入手可能なN−メチル−D−グルカミン(C7H17NO5)を添加キレート剤とした場合を例に説明する。先ず基板例えばシリコンインゴットから切り出されたシリコンウエハ(以下、ウエハと呼ぶ)の表面部にある不純物を除去するための洗浄液をなす基板処理液(以下、単に処理液と呼ぶ)について説明する。当該処理液はその液中に水酸化物イオン(OH)を生じさせるアルカリ成分を含むアルカリ溶液であり、このアルカリ成分としては例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の中から少なくともいずれか一つが選択される。これらアルカリ溶液の中でも、排水処理の容易性から水酸化ナトリウムと水酸化カリウムが好ましく、更にこの両者の中では、同重量用いた場合にモル濃度をより高くでき、その結果、被処理基板の面精度をより上げることができることから、水酸化ナトリウムの方が好ましい。更に処理液は、当該処理液中に分散する金属不純物と反応していわば当該金属不純物を捕獲するためのキレート剤であるN−メチル−D−グルカミンを含んでいる。なお、処理液に添加するキレート剤は、N−メチル−D−グルカミン単独でもよいし、N−メチル−D−グルカミンとその他のキレート剤とを組み合わせてもよい。
【0014】
N−メチル−D−グルカミンの捕獲対象となる金属不純物は、例えばシリコンインゴットからの切り出しの際に切り出し面となるウエハの表面部に付着した金属不純物であって当該ウエハをエッチングすることにより処理液中に分散するものである。この表面部に付着した金属不純物の中には、切り出しの際あるいは表面研磨の際に例えばカッター、研磨材などから機械的エネルギーを受けて活性化し、ウエハの表面(表層部も含む)にあるシリコンの分子構造内に潜り込んでいるものが含まれる。更に処理液の精製技術の限界から処理液中に既に含まれているものもN−メチル−D−グルカミンの捕獲対象に含まれる。金属不純物の具体例としては、例えばニッケル(Ni)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、カドミウム(Cd)およびこれらの化合物、特にアルカリ溶液中にて形成されるこれらの金属水酸化物又は金属水酸化物イオンなどが挙げられる。これら金属不純物の中でも、NiとCuはウエハの表層部内に拡散し易く、特にNiはアルカリ剤の使用温度である80℃程度で拡散を起こすため注意深く監視する必要がある。
【0015】
前記処理液のアルカリ濃度(複数のアルカリ成分を選択した場合は各アルカリ成分濃度の和)は、高濃度例えば10重量%〜55重量%、好ましくは35重量%〜55重量%に、更に好ましくは45重量%〜53重量%に設定される。これは、キレート剤を溶解させるには溶けやすさを考慮してアルカリ濃度を低くする方が良いが、アルカリ濃度が低過ぎるとウエハのエッチング面が荒れる傾向にあるためである。一方、N−メチル−D−グルカミンの濃度は、1重量ppm〜10000重量ppm、好ましくは10重量ppm〜5000重量ppmに、更に好ましくは300重量ppm〜3000重量ppmに設定される。N−メチル−D−グルカミンの濃度が高過ぎるとコストアップにつながると共に、添加キレート剤からの持ち込みにより不純物の量が増加する虞がある。また、後述の実験結果から、N−メチル−D−グルカミンの濃度について、より一層の適切な濃度が存在しているものと推測している。
【0016】
続いて、上述の処理液を用いてウエハを洗浄処理する手法について説明するが、説明を分かり易くするため金属不純物としてニッケルを一例に挙げて説明する。先ず、例えばN−メチル−D−グルカミンを溶解せしめた溶液と、所定のアルカリ溶液とが混合されて既述の濃度の処理液が調製される。このとき処理液中に既に分散していたニッケルは、N−メチル−D−グルカミンと反応してキレート化合物が生成される。ここでいう反応は、ニッケルにN−メチル−D−グルカミンが配位結合するいわゆるキレート反応である。
【0017】
前述したようにして調製された処理液を例えば処理槽に満たし、この処理液を例えば60〜80℃に温調すると共に例えば多数枚のウエハを隙間をあけて処理液中に浸漬させる。すると、処理液中のアルカリ成分から生じる水酸化物イオン(OH)がエッチャントとして作用し、ウエハの表層部がエッチングされる。なお、処理液の温度は、例えば常温〜100℃の範囲内で設定してよいが、高温に設定することで、水酸化物イオンによるエッチング速度を上げることができる。しかしながら、温度が高すぎると処理液の水分が蒸発し処理液の組成が変化してしまう虞があることから、前述した60〜80℃の範囲内で設定するのが好ましい。これにより、ウエハの表面に付着していたパーティクル及び表面部にあるシリコン分子構造内にもぐり込んでいたニッケルは、ウエハの表面がエッチングされることで当該ウエハから離脱して処理液中に分散する。そして、処理液中に分散したニッケルは、N−メチル−D−グルカミンと反応してキレート化合物を生成する。この反応により生成したキレート化合物のニッケルの捕獲力(結合力)は、シリコンとニッケルとの結合力に比較して大きい。
【0018】
しかる後、例えば所定の時間が経過するまでウエハを処理槽内にて処理液に浸漬させた後、このウエハは処理槽から引き上げられ、例えば純水、超純水などのリンス液により洗浄される。これによりアルカリ成分、N−メチル−D−グルカミン及びキレート化合物などがウエハから洗い流され、その後例えば乾燥処理などが行われて洗浄処理を終える。
【0019】
なお、処理液中の金属不純物濃度と、ウエハ表面の不純物濃度は化学的に平衡関係が成立するので、処理液中の金属不純物の濃度が高くなると、その分ウエハに付着しようとする金属不純物が多くなる。従って、例えば繰り返しウエハが処理されて処理液中の金属不純物の濃度がある濃度以上になった時点で、処理槽内の処理液つまりウエハに供給する処理液を新しい処理液と取り替えるようにするのが好ましく、このような措置を行うことでより確実に金属汚染を抑えることができる。
【0020】
更に上述の実施の形態によれば、N−メチル−D−グルカミンを含む例えば48重量%の高濃度アルカリ溶液をなす処理液を用いて例えばシリコンインゴットから切り出されたウエハの洗浄処理を行うことにより、ウエハの表面がエッチングされてパーティクル及び金属不純物が除去される。そして更に、処理液中に分散した金属不純物であるニッケルは、N−メチル−D−グルカミンと反応してキレート化合物を生成する。この化合物におけるニッケルの捕獲力(結合力)は、シリコンとニッケルとの結合力よりも大きいので、一旦キレート化合物を形成したニッケルが当該キレート化合物から解離してウエハに再付着することは極めて少ない。たとえキレート化合物の状態でウエハの表面に付着したとしても、キレート化合物は分子サイズが大きいので、シリコンの分子構造内にもぐり込むことはできずにいわば物理的に付着するので、例えばウエハを純水で洗浄するだけで簡単に取り除くことができる。そのため、洗浄後のウエハには金属不純物がないか、あるいは極めて少ない。その結果として清浄なウエハを得ることができる。なお、上述の例では金属不純物としてニッケルを挙げているが、既述した他の金属不純物においても同様の作用と効果を得ることができる。これら金属不純物のうちウエハに対する付着力が強く、取り除くのが難しいのはニッケルであるため、例えば工程分析においてニッケル汚染がなければ他の金属の汚染もないものと推測し、例えば作業員の監視負担の軽減を図るようにしてもよい。更に、ウエハの表面が例えば自然酸化することによりシリコン酸化物となっている場合であっても同様の作用と効果を得ることができる。
【0021】
ここで、ウエハに対して処理液がある程度エッチング作用を有していなければ、予定とするエッチングに時間がかかるだけでなく、表面部にあるシリコンの分子構造内に潜り込んだ金属不純物を引き離すことができない。更に引き離したとしても、この金属不純物がウエハの近傍例えば電気二重層と呼ばれるウエハの表面から例えば100nm程度外側に至る領域内にあると、ウエハとの間に働くファンデルワールス力により金属不純物がウエハ側に引き寄せられて再付着してしまう。アルカリ濃度を高濃度にして瞬間的なエッチング代(エッチング速度)を例えば前記電気二重層の厚みよりも大きくすることにより、金属不純物をウエハの表面から電気二重層よりも外側にくる程度に遠ざけることで、金属不純物のウエハへの再付着を抑制する。具体的には、ウエハを盛んにエッチングすることのできる例えば48重量%のアルカリ溶液と、このような高濃度アルカリ溶液中であっても簡単に溶解して金属不純物に配位するキレート作用を発揮することのできるN−メチル−D−グルカミンとを組み合わせることにより、ウエハの表面部からパーティクル及び金属不純物を除去することができる。
【0022】
更に本発明においては、シリコンインゴットから切り出された後のウエハとは、シリコンインゴットからスライスしたウエハ及び表面研磨をした後のウエハに限られず、例えば面取り工程において周縁の面取りがされた後のウエハ、ラッピング工程において厚みが整えられた後のウエハ、エッチング工程においてエッチング液によりウエットエッチングがなされた後のウエハも含んでいる。即ち、これらの工程の後あるいは各工程間にて行われる洗浄工程において本発明を適用することにより、いずれの工程によりウエハの表面に付着した金属不純物を除去することができる。
更に本発明においては、基板はウエハに限られず、ガラス基板であってもよい。この場合であってもウエハの場合と同様の効果を得ることができる。
更に処理液は、必要ならばシリコンを酸化してシリコン酸化膜とするための酸化剤例えば過酸化水素を含むようにしてもよい。この場合、基板表面のシリコンを直接エッチングする場合に比して高いエッチング速度を確保できると共に、エッチング面をマイルドに仕上げることができる点で有利である。
【0023】
なお、上述の実施形態では、キレート剤としてN−メチル−D−グルカミンを例に挙げ説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、キレート剤としてグルカミン基を有する化合物であれば、例えば1−デオキシ−1−(エチルアミノ)−D−グルシトール(N−エチルグルカミン;C8H19NO5)やD−グルカミン(C6H15NO5)であってもよい。
【実施例】
【0024】
続いて、本発明の効果を確認するために行った実施例について説明する。
(実施例1)
本例における処理液としては、48重量%の鶴見曹達製高純度苛性ソーダにキレート剤としてN−メチル−D−グルカミンを500重量ppm添加したものを作製し、この液に模擬的な金属不純物として、特にユーザーから高い除去率が要求されているニッケル(Ni)及び銅(Cu)を夫々10重量ppbずつ混入したものを用いた。60℃に恒温したこの処理液に、本例における被処理基板である(100)ミラーウエハを30分間浸漬しアルカリエッチングした。その後、このウエハを純水で洗浄して乾燥した後、ウエハ表面のニッケル(Ni)及び銅(Cu)の量を全反射蛍光X線(TXRF)分析計で測定し、単位面積あたりのNi及びCuの濃度を計算により求めた。その結果を後述の表1に示す。
【0025】
(実施例2)
特許文献2に記載された実施例においては、DHEG添加量が1000重量ppmの場合よりも2000重量ppmの場合の方が、金属不純物の除去性能が高いことが示されている。そこで、N−メチル−D−グルカミンについても、添加量を2000重量ppmに増やした場合について実施例1と同様の試験を行い、添加量と除去性能との関係について調べた。なお、この場合、添加量と除去性能との関係の確認を目的としているため、既述のように金属不純物の中でも除去しにくいと言われているNiについてのみ測定を行った。
本例は、キレート剤として添加したN−メチル−D−グルカミンの濃度が2000重量ppmであること、そしてNiのみ測定したことを除いて、実施例1と同じである。この結果を表1に示す。
【0026】
(比較例1)
キレート剤としてN−メチル−D−グルカミンの代わりに特許文献2に記載されているDHEG(ジヒドロキシエチルグリシン)を500重量ppm添加したことを除いて、実施例1と同様の試験を行った。この結果を表1に示す。
【0027】
(比較例2)
キレート剤としてN−メチル−D−グルカミンの代わりにDHEGを2000重量ppm添加したことを除いて、実施例2と同様の試験を行った。この結果を表1に示す。
【0028】
(参考例1)
本例は、上述の実施例及び比較例における金属不純物の除去を確認するための比較対象として、実施例1と同様の試験をキレート剤を添加せずに同様の試験(ブランク試験)を行った。この結果を表1に示す。
【0029】
(実施例1と比較例1との比較)
キレート剤添加量が500重量ppmの場合である両者を比較すると、N−メチル−D−グルカミン添加の処理液における金属(Ni及びCu)の除去性能の方が高かった。
【0030】
(実施例2と比較例2との比較)
キレート剤添加量が2000重量ppmの場合では、キレート剤添加量が500重量ppmの場合とは逆に、DHEG添加の処理液における金属の除去性能の方が高かった。N−メチル−D−グルカミン添加の処理液では添加量を増やすことにより除去性能が下がる結果となったが、DHEG添加の処理液では若干除去性能が良くなる結果であった。このことから、N−メチル−D−グルカミンの適切な添加量の値が500重量ppm〜2000重量ppmの間に存在すると推測される。
【0031】
(N−メチル−D−グルカミンとDHEGとの性能差の考察)
以上のことから、N−メチル−D−グルカミンは、高濃度アルカリ溶液に添加するキレート剤として、少なくともDHEGと同等の金属の除去性能を有していると考えられる。そして、既述のように、N−メチル−D−グルカミンがDHEGに比べて数十分の一の価格であることを考慮すると、本発明は工業的規模で基板処理を行うにあたって非常に有効である。
【0032】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表面部がシリコン又はシリコン酸化物からなるシリコンインゴットから切り出された後の基板の表面を基板処理液により処理する基板処理方法において、
グルカミン基を有する化合物を含むアルカリ溶液からなるエッチング液である基板処理液を基板に供給してこの基板の表面部に存在する金属不純物を除去する工程と、
前記基板から除去されて前記基板処理液中に分散した金属不純物と前記グルカミン基を有する化合物とを反応させる工程と、を含むことを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
前記グルカミン基を有する化合物は、N−メチル−D−グルカミンであることを特徴とする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
少なくとも表面部がシリコン又はシリコン酸化物からなるシリコンインゴットから切り出された後の基板の表面を処理するエッチング液である基板処理液において、
前記基板処理液に処理されて前記基板の表面部から当該基板処理液中に分散した金属不純物と反応するグルカミン基を有する化合物を含むアルカリ溶液からなることを特徴とする基板処理液。
【請求項4】
前記グルカミン基を有する化合物は、N−メチル−D−グルカミンであることを特徴とする請求項3に記載の基板処理液。

【公開番号】特開2012−129415(P2012−129415A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280897(P2010−280897)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000215615)鶴見曹達株式会社 (49)
【Fターム(参考)】