説明

基板処理装置

【課題】保持部面への副生成物の付着を防止し、パーティクルの発生を抑制する基板処理装置を提供する。
【解決手段】炉口部(基板搬入出用の開口部)210を有する処理室201と、炉口部210を気密に封止する金属から成るシールキャップ(封止部材)219と、処理室201内でウェハや断熱板等285を支持するボート(基板支持部材)217と、シールキャップ219に回転軸268を介して機械的に接続される金属から成り、ボート217を保持するボート受部(保持部)216と、常温で液体の原料を気化させたガスを少なくとも含む処理ガスを処理室201へ供給するガス供給系と、処理室201内の雰囲気を排気するガス排気管(排気系)231とを備える。そして、ボート受部216aのボート217が保持される側の上面211及び側面212を石英カバー(石英部材)280にて覆うように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板処理装置に係り、特に処理室内に金属から成る部材が露出している基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の基板処理装置、例えば縦型のALD(Atomic Layer Deposition)処理炉を備えた基板処理装置では、常温で液体の原料を気化した処理ガスを用いると、炉口部の低温部、特に金属表面に副生成物が付着しやすく、又、金属表面に付着した副生成物が剥がれてパーティクルの発生原因になりやすいという傾向があった。
【0003】
このことを図7を用いて説明する。図7は、従来の縦型ALD処理炉の下部構造例を示したものである。この処理炉では例えばHfO2膜を形成する。
【0004】
石英製の反応管203は金属製の炉口フランジ205上に支持される。ALD処理炉の反応管203は、CVD処理炉と異なり、反応管は二重管ではなく一重管である。炉口フランジ205の炉口は金属製のシールキャップ219で密閉される。シールキャップ219を貫通する回転軸268に、金属製のボート受部216が設けられ、ボート受部216上面に多数のウェハ及び石英断熱板285を多段に載置する石英製ボート217が立設される。反応管203にガス供給系(図示せず)が接続され、反応管203の下部の炉口フランジ205に排気管231が接続され、常温で液体の原料を気化させたガスを少なくとも含む処理ガスを処理室201内に供給しつつ排気して、ウェハ200上にHfO2膜を形成できるようになっている。
【0005】
また、図示例では、炉口フランジ205の内周壁に径方向内方に突き出したリング状の突出部206が設けられているが、この突出部206は、CVD処理炉をALD処理炉に転用したための名残りであり、CVD処理炉を構成する2重反応管のうちの内管を支持するための支持部である。ALD処理炉はCVD処理炉と共通点が多いので、CVD処理炉をALD処理炉に転用することが多い。
【0006】
ボート受部216は、炉口フランジ205内の突出部206の近傍まで挿入されて、ボート217が存在するボート空間である処理室201からボート217下部に形成されるボート下部空間204へ抜ける通路を狭くして、ボート下部空間204へのガスの流入を防止した構造となっている。
【0007】
このように処理室201とボート下部空間204との間を狭くすることにより、処理室201からボート下部空間204内に処理ガスが流入して、ボート下部空間204を構成する内壁に副生成物が付着するのを防止している。
【0008】
しかしながら、HfO2膜を成膜するたびに生成される副生成物は、ボート下部空間204内に限定されず、ボート受部216やボート217を構成する石英底板215等にも付着している。特に、ボート217を構成する石英底板215の中央に円形穴が設けられているが、この円形穴から処理室201側に露出したボート受部216の上面を処理後に観察すると、付着した副生成物が剥がれたような状態で生成物302が付着している。また、炉口フランジ205に設けられた突出部206にも同様な生成物302が付着している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したような基板処理装置において、処理室内の突出部に起因する生成物302の付着の問題については、処理室内から突出部を無くすことで、解決することが可能である。しかし、保持部の基板支持部材が保持される側の面に副生成物が付着するのを防止することは困難であり、この保持部の上面に副生成物が付着するとパーティクル源になるという問題があった。
本発明の課題は、上述した従来技術の問題点を解消して、保持部面への副生成物の付着を防止し、更には副生成物の膜剥がれによるパーティクルの発生を抑制することが可能な基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
成膜時における基板搬入出用の開口部(炉口部)への副生成物の付着状況をみると、保持部の金属表面がむき出しになっているところに付着した膜が剥がれたような生成物が付着しており、基板支持部材には前述のような生成物が付着していないという現象を見い出した。本発明者は、このことから、金属表面の露出を防げれば保持部への前述の生成物の発生、付着を低減できるとの知見を得て本発明を創案するに至ったものである。
【0011】
第1の発明は、基板搬入出用の開口部を有する処理室と、前記開口部を気密に封止する金属から成る封止部材と、前記処理室内で基板を支持する基板支持部材と、前記封止部材に機械的に接続される金属から成り、前記基板支持部材を保持する保持部と、常温で液体の原料を気化させたガスを少なくとも含む処理ガスを、前記処理室へ供給するガス供給系と、前記処理室内の雰囲気を排気する排気系と、を備え、少なくとも前記保持部の前記基板支持部材が保持される側の面を石英部材にて覆ったことを特徴とする基板処理装置である。
少なくとも保持部の前記基板支持部材が保持される側の面を石英部材にて覆ったので、保持部の基板支持部材が保持される側の面への生成物の発生、付着を防止でき、パーティクルの発生を抑制できる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、前記保持部の前記基板支持部材が保持される側の面を上面のみならず側面まで石英部材にて覆ったことを特徴とする基板処理装置である。
保持部の基板支持部材が保持される側の面の上面のみならず側面まで石英部材にて覆ったので、保持部の側面への生成物の発生、付着も防止でき、パーティクルの発生を一層抑制できる。
【0013】
第3の発明は、第1ないし第2の発明において、前記石英部材が前記基板支持部材と一体に構成されていることを特徴とする基板処理装置である。
石英部材で保持部の基板支持部材が保持される側の面を覆う場合に、石英部材を基板支持部材と別体に構成してもよいが、本発明のように一体に構成すると、簡単な構成で、保持部の基板支持部材が保持される側の面への生成物の付着を防止でき、パーティクルの発生を抑制できる。
【0014】
第4の発明は、第1ないし第3の発明において、前記保持部に孔が設けられていることを特徴とする基板処理装置である。
保持部に孔が設けられているので、石英部材と保持部との密着性をよくし、石英部材と保持部との間に処理ガスが侵入するのを規制し、保持部の基板支持部材が保持される側の面への生成物の付着を一層防止でき、パーティクルの発生を一層抑制できる。又、石英部材と保持部との間の熱膨張差を吸収することもできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、保持部の基板支持部材を保持する側の面への生成物の付着を防止できるので、パーティクルの発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の基板処理装置の構成を図面を用いて説明する。
【0017】
図3は、本発明に適用される基板処理装置の外観斜視図である。なお、この図は透視図として描かれている。また、図4は図3に示す基板処理装置の側面図である。
【0018】
本発明の基板処理装置は、シリコン等からなるウェハ(基板)200を収納したポッド(基板収納容器)100を、外部から筐体101内へ挿入するため、およびその逆に筐体101内から外部へ払い出すためのI/Oステージ(保持具授受部材)105が筐体101の前面に付設され、筐体101内には挿入されたポッド100を保管するためのカセット棚(載置手段)109が敷設されている。また、ウェハ200の搬送エリアであり、後述する基板支持部材であるボート217のローディング、アンローディング空間となるN2パージ(気密室)102が設けられている。ウェハ200に処理を行うときのN2パージ室102の内部は、ウェハ200の自然酸化膜を防止するためにN2ガスなどの不活性ガスが充満されるように、N2パージ室102は密閉容器となっている。
【0019】
上述したポッド100としては、現在FOUPというタイプが主流で使用されており、ポッド100の一側面に設けられた開口部を蓋体(図示せず)で塞ぐことで大気からウェハ200を隔離して搬送でき、蓋体を取り去る事でポッド100内へウェハ200を入出させることができる。このポッド100の蓋体を取外し、ポッド内の雰囲気とN2パージ室102の雰囲気とを連通させるために、N2パージ室102の前面側には、ポッドオープナ(開閉手段)108が設けられている。ポッドオープナ108、カセット棚109、およびI/Oステージ105間のポッド100の搬送は、カセット移載機114によって行なわれる。このカセット移載機114によるポッド100の搬送空間には、筐体101に設けられたクリーンユニット(図示せず)によって清浄化した空気をフローさせるようにしている。
【0020】
2パージ室102の内部には、複数のウェハ200を多段に積載するボート217と、ウェハ200のノッチ(又はオリエンテーションフラット)の位置を任意の位置に合わせる基板位置合わせ装置106と、ポッドオープナ108上のポッド100と基板位置合わせ装置106とボート217との間でウェハ200の搬送を行うウェハ移載機(搬送手段)112とが設けられている。また、N2パージ室102の上部にはウェハ200を処理するための処理炉202が設けられており、ボート217はボートエレベータ(昇降手段)115によって処理炉202へローデインク、又は処理炉202からアンローディングすることができる。
【0021】
次に、本発明の基板処理装置の動作について説明する。
【0022】
先ず、AGV(自走型搬送車)やOHT(天井吊下式搬送装置)などにより筐体101の外部から搬送されてきたポッド100は、I/Oステージ105に載置される。I/Oステージ105に載置されたポッド100は、カセット移載機114によって、直接ポッドオープナ108上に搬送されるか、または、一旦カセット棚109にストックされた後にポッドオープナ108上に搬送される。ポッドオープナ108上に搬送されたポッド100は、ポッドオープナ108によってポッド100の蓋体を取り外され、ポッド100の内部雰囲気がN2パージ室102の雰囲気と連通される。
【0023】
次に、ウェハ搬送機112によって、N2パージ室102の雰囲気と連通した状態のポッド100内からウェハ200を取り出す。取り出されたウェハ200は、基板位置合わせ装置106によって任意の位置にノッチが定まる様に位置合わせが行なわれ、位置合わせ後、ボート217へ搬送される。
【0024】
ボート217へのウェハ200の搬送が完了したならば、処理室201の炉口シャッタ116を開けて、ボートエレベータ115によりウェハ200を搭載したボート217をローディングする。
【0025】
ローディング後は、処理炉202にてウェハ200に任意の処理が実施され、処理後は上述の逆の手順で、ウェハ200およびポッド100は筐体101の外部へ払い出される。
【0026】
次に、本発明の実施の形態にて行った、ウェハ等の基板へのプロセス処理例としてALD法を用いた成膜処理について、簡単に説明する。
【0027】
ALD法は、ある成膜条件(温度、時間等)の下で、成膜に用いる2種類(またはそれ以上)の原料となるガスを1種類ずつ交互に基板上に供給し、1原子層単位で吸着させ、表面反応を利用して成膜を行う手法である。
【0028】
即ち、利用する化学反応は、例えばHfO2膜形成の場合ALD法ではTEMAH(Hf[NCH3254、テトラキスメチルエチルアミノハフニウム)とO3(オゾン)を用いて180〜250℃の低温で高品質の成膜が可能である。また、処理ガスの供給は、複数種類の反応性ガスを1種類ずつ交互に供給する。そして、膜厚制御は、反応性ガス供給のサイクル数で制御する(例えば、成膜速度が1Å/サイクルとすると、20Åの膜を形成する場合、処理を20サイクル行う。)。
【0029】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
【0030】
図5に上述した処理炉202の概略縦断面図を示し、図6に同じく処理炉202の概略横断面を示す。処理炉202には、加熱手段であるヒータ207が設けられ、このヒータ207の内側に、基板であるウェハ200を処理する処理室201を構成する反応管203が設けられる。この反応管203の下端開口はシールキャップ219によりOリング220を介して閉塞される。
上述したヒータ207、反応管203、及びシールキャップ219等から処理炉202が構成される。
【0031】
シールキャップ219には基板保持手段であるボート217が、処理室201内の保温・断熱を行うための石英キャップ218を介して立設される。そして、ボート217は処理炉202に挿入される。ボート217にはバッチ処理される複数のウェハ200が水平姿勢で管軸方向に多段に積載される。シールキャップ219には、ボート回転機構267が設けてあり、ボート217を回転するようになっている。前記ヒータ207は処理炉202に挿入されたウェハ200を所定の温度に加熱する。なお、石英キャップ218に代えて、シールキャップ217側のボート217の下部に、処理室201内の断熱を行うために石英断熱板を積載する場合もある。
【0032】
そして、処理炉202へは複数種類、ここでは2種類のガスを供給する供給管としての2本のガス供給管232a、232bが設けられる。第1のガス供給管232aから供給される原料が液体の場合、第1のガス供給管232aからは流量制御手段である液体マスフローコントローラ240、気化器241及び開閉弁である第1のバルブ243aを介し、第1のキャリアガス供給管234aと合流し、更に第1のノズル233aを介して処理炉202に反応ガスが供給される。第1のガス供給管232aから供給される原料が気体の場合には、液体マスフローコントローラ240を気体用に交換し、気化器241は不要となる。なお、第1のキャリアガス供給管234aには、第2のマスフローコントローラ241b及び第3のバルブ243cが設けられている。
【0033】
また、第2のガス供給管232bからは流量制御手段である第1のマスフローコントローラ241a及び開閉弁である第2のバルブ243bを介し、第2のキャリアガス供給管234bと合流し、更に第2のノズル233bを介して処理炉202に反応ガスが供給される。なお、第2のキャリアガス供給管234bには、第3のマスフローコントローラ241c及び第4のバルブ243dが設けられている。
上述したガス供給管232a,232b、ノズル233a,233b等からガス供給系が構成される。
【0034】
処理炉202はガスを排気するガス排気管231により第5のバルブ243eを介して排気手段である真空ポンプ246に接続され、真空排気されるようになっている。尚、この第5のバルブ243eは弁を開閉して処理炉202の真空排気・真空排気停止ができ、更に弁開度を調節して圧力調整可能になっている開閉弁である。これらのガス排気管231、真空ポンプ246等から排気系が構成される。
【0035】
処理炉202を構成している反応管203の内壁と、反応管203内に挿入されたボート217との間に形成される空間には、ウェハ200の積載方向に沿って、第1のノズル233a及び第2のノズル233bが延在されており、第1のノズル233a及び第2のノズル233bの側面にはガスを供給する供給孔である第1のガス供給孔248a及び第2のガス供給孔248bがそれぞれ設けられている。この第1のガス供給孔248a及び第2のガス供給孔248bは反応管203の中心、すなわちウェハ200へ向けて開口している。この第1のガス供給孔248a及び第2のガス供給孔248bは、下部から上部にわたってそれぞれ同一の開口面積を有し、更に同じ開ロピッチで設けられている。
【0036】
制御手段であるコントローラ121は、液体マスフローコントローラ240、第1〜第3のマスフローコントローラ241a、241b、241c、第1〜第5のバルブ243a、243b、243c、243d、243e、ヒータ207、真空ポンプ246、ボート回転機構267、図中省略のボート昇降機構に接続されており、液体マスフローコントローラ240、第1〜第3のマスフローコントローラ241a、241b、241cの流量調整、第1〜第4のバルブ243a、243b、243c、243dの開閉動作、第5のバルブ243eの開閉及び圧力調整動作、ヒータ207の温度調節、真空ポンプ246の起動・停止、ボート回転機構267の回転速度調節、ボートエレベータ115の昇降動作制御が行われる。
【0037】
図1に、上述した処理炉202の下部構造の詳細な断面図を示す。
反応管203は、炉口フランジ205aの上に支持される。炉口フランジ205aの基板搬入出用の開口部である炉口部210は、金属から成る封止部材であるシールキャップ219により、気密部材であるOリング220を介して密閉される。なお、炉口部210というときは、炉口フランジ205aの炉口を意味する他に、炉口の近傍を構成するボート受部216、炉口フランジ205の下部、シールキャップ219等を意味する場合もある。
【0038】
シールキャップ219には、金属、例えばSUSから成る保持部としての円板状のボート受部216aを介して基板保持手段であるボート217が立設されている。ボート受部216aは、シールキャップ219を貫通して反応管203内に挿入される回転軸268に取り付けられる。また、ボート217は反応管203内に挿入される。ボート217にはバッチ処理される複数のウェハ200が水平姿勢で管軸方向に多段に積載される。
【0039】
このボート217はボートエレベータ115(図3参照)により反応管203内に出入りできるようになっている。また処理の均一性を向上するためにボート217の下部には、ボート217を回転するための回転手段であるボート回転機構267が設けてあり、ボート回転機構267を回転することにより、ボート受部216aに保持されたボート217を回転するようになっている。
【0040】
反応管203と連通している炉口フランジ205aは、ガスを排気するガス排気管231により真空ポンプ246(図5参照)に接続され、反応管203内を真空排気するようになっている。炉口フランジ205a及び排気管231の外周にヒータ222を密着して設け、炉口フランジ205a及び排気管231の内壁に副生成物が付着しないように、炉口フランジ205a及び排気管231を加熱するようになっている。加熱温度は例えば170℃±10℃である。
【0041】
実施の形態の炉口フランジ205aの内周壁面は、従来のような突出部を有さず滑らかである。炉口フランジ205aを、一重管から構成されるALD処理炉用の反応管203を支持する炉口フランジとして構成してあるからである。
【0042】
回転機構267は、例えばモータ271によりウォームギア/ウォームホイール(図示せず)を回転することにより回転軸268を回転させるように構成される。
回転軸268は、シールキャップ219の中央を軸受270を介して貫通して炉口フランジ205a内に挿入される。挿入された回転軸268に前述したSUSからなる円板状のボート受部216aが取り付けられる。
この回転機構267から、パージガスとしてN2ガスを反応管203内に流すようになっている。例えば、このN2ガスは回転軸268と軸受270との隙間から導入する。
【0043】
ボート下部空間204は、シールキャップ219とボート受部216aと炉口フランジ205aとで区画形成される。シールキャップ219の上面(炉口フランジ内側の面)に、反応副生成物の付着、及び前記副生成物が剥がれたことにより発生する生成物の付着を防止するために石英プレート221が設けられている。
【0044】
ボート受部216aは、その径が、炉口フランジ205aの内径との間に僅かな隙間ができるように設定されている。その隙間は、ボート217の反応管203内への挿入、及びボート217の回転を許容し、処理室201からボート下部空間204へのガスの侵入を規制するようになっている。ボート受部216aの上面(基板支持部材が保持される側の面)外周に、ボート受部側面(基板支持部材が保持される側の面)を覆う側面被覆用の段差が設けられている。
【0045】
ボート217は、全体が石英で構成されて全体形状が略円筒状をなし、上下に伸びる複数本の石英柱281と、これらの石英柱281を上下で固定する石英底板280と石英天板(図示せず)とを構成要素として備える。各石英柱281には多数枚のウェハ200及び石英断熱板285を水平に保持するための溝283が多数個設けられている。各石英柱281の下方の溝283に、処理炉202の外部と内部とを断熱するために石英断熱板285が複数枚保持される。
【0046】
上記円形の石英底板280は、ボート受部216aのボート217が保持される側の面を覆う石英部材282を兼ねる。このため、石英底板282は穴を有さず、その径は、ボート受部216aの少なくとも上面211を覆うことができるように、略ボート受部216aと同径に構成される。実施の形態では、石英底板280の径は、ボート受部216aの側面212を覆うために、ボート受部216aの径よりも僅かに大きく形成されている。石英底板280の下部外周に、ボート受部216aの段差と嵌合する係合突起が設けられている。石英底板280をボート受部216aに係合することにより、石英底板280で、ボート217が保持される側の面、すなわちボート受部216aの上面211、及びボート受部216aの側面212を覆うようになっている。なお、ボート受部216aの側面212については、図示例では、側面212の一部を覆っている場合を示しているが、可能であれば側面全面を覆うことが好ましい。
【0047】
また、ボート受部216aの下方のボート下部空間204は常時N2パージすることにより、処理室201からボート下部空間204へ処理ガス(反応ガス)が入り込まない構造になっている。また、ボート受部216aには、上面211から下面に抜ける複数の孔225が開けられている。この孔225は、石英底板280とボート受部216aとの間にガスが入り込まないようにするとともに、石英底板280とボート受部216a間の熱膨張差を吸収するために設ける。
【0048】
次に上述したように構成において、ALD法による成膜例について、TEMAH及びO3を用いてHfO2膜を成膜する例で説明する。
【0049】
まず成膜しようとする1バッチ分のウェハ200をボート217に装填し、処理炉202に搬入する。搬入後、次の4つのステップを順次実行する。
【0050】
[ステップ1]
ステップ1では、TEMAHとキャリアガス(N2)を流す。まず第1のガス供給管232aに設けた第1のバルブ243a、第1のキャリアガス供給管234aに設けた第3のバルブ243c、及びガス排気管231に設けた第5のバルブ243eを共に開けて、第1のガス供給管232aから液体マスフローコントローラ240により流量調整され、気化器242により気化されたTEMAHガスと、第1のキャリアガス供給管234aから第2のマスフローコントローラ241bにより流量調整されたキャリアガス(N2ガス)とを混合し、この混合ガスを第1のノズル233aの第1のガス供給孔248aから反応管203内に供給しつつガス排気管231から排気する。液体マスフローコントローラ240で制御するTEMAHガスの供給流量は0.1〜0.3g/minである。TEMAHガスにウェハ200を晒す時間は30〜180秒間である。このときのヒータ207の温度はウェハが180〜250℃になるよう設定してある。また、処理室201内の圧力は50〜100Paである。これによりウェハ200の下地膜上にTEMAH原料が吸着する。
【0051】
[ステップ2]
ステップ2では、第1のガス供給管232aの第1のバルブ243a及び第1のキャリア供給管234aの第3のバルブ243cを閉めて、TEMAHガスとキャリアガスの供給を止める。ガス排気管231の第5のバルブ243eは開いたままにし真空ポンプ246により、処理炉202を20Pa以下に排気し、残留TEMAHガスを反応管203内から排除する。また、この時には不活性ガス、例えばキャリアガスとして使ったN2ガスを処理炉202に供給すると、更に残留TEMAHを排除する効果が高まる。
【0052】
[ステップ3]
ステップ3では、O3ガスとキャリアガス(N2)を流す。まず第2のガス供給管232bに設けた第2のバルブ243b、第2のキャリアガス供給管234bに設けた第4のバルブ243dを共に開けて、第2のガス供給管232bから第1のマスフローコントローラ241aにより流量調整されたO3ガスと、第2のキャリアガス供給管234bから第3のマスフローコントローラ241cにより流量調整されたキャリアガス(N2ガス)とを混合し、第2のノズル233bの第2のガス供給孔248bから反応管203内に供給しつつガス排気管231から排気する。O3ガスにウェハ200を晒す時間は10〜120秒間である。このときのウェハ温度はTEMAHガスの供給時と同じく、180〜250℃である。また、処理室201内の圧力もTEMAHガスの供給時と同じく、50〜100Paである。O3ガスの供給により、ウェハ200の下地膜上のTEMAHガスとO3ガスとが表面反応して、ウェハ200上にHfO2膜が成膜される。
【0053】
[ステップ4]
成膜後、第2のバルブ243b及び第4のバルブ243dを閉じ、真空ポンプ246により処理炉202を真空排気し、成膜に寄与した後の残留するO3ガスを排除する。また、この時には不活性ガス、例えばキャリアガスとして使ったN2ガスを処理炉202に供給すると、更に残留するO3ガスを処理炉202から排除する効果が高まる。
【0054】
上記ステップ1〜4を1サイクルとし、このサイクルを複数回繰り返すことによりウェハ200上に所定膜厚のHfO2膜を成膜する。
ここで、このTEMAHガス導入、パージ、O3ガス導入、パージの4ステップからなるサイクルを1サイクルとして、これを繰り返し成膜する。この場合、各々の1ステップの時間は、10〜180秒間とすると、このとき、1サイクルあたりの成膜膜厚はウェハ温度により1〜2Å程度になる。例えば、HfO2やAl23(アルミナ)をゲート絶縁膜やキャパシタ絶縁膜として用いる場合、数〜数十サイクル繰り返して15〜50Å成膜する。
【0055】
成膜後、ボート217を処理炉202から搬出し、ウェハ200を冷却してから基板処理装置の外部に払い出す。
【0056】
ところで、HfO2膜の成膜時に、副生成物は、炉口部210の低温部、特に金属表面に副生成物が付着しやすく、又、特に金属表面に付着した前記副生成物は剥がれやすく、パーティクルの発生原因になっていることは、前述した通りである。なお、検出された副生成物は、TEMAHガスが低温部で液化して炉口部210に付着し、次に流されるO3ガスと反応して、又は処理後に炉口部210が大気と触れた際に反応して生成して生じるものと思われる。
【0057】
副生成物の膜剥がれの原因は、ボート受部216の金属(SUS)表面に生成された副生成物(HfO2膜)に熱収縮による応力が発生したために、膜剥がれが生じたと考えられる。
ここで、SUSと石英の線膨張係数については、
SUSの線膨張係数は、16.2×10-6/℃で、
石英の線膨張係数は、0.4×10-6/℃である。
石英はSUSと比較し線膨張係数が小さいため、膜(副生成物)が生成されても熱応力による影響が少ないので、膜剥がれが発生しにくいと考えられる。
【0058】
繰り返しになるが、副生成物の発生原因はガスの液化によるもので、低温部に生成物が多く付着することから、ガスの液化したものが炉口部210に付着し、これが次に流されるO3ガス又は大気と反応することにより副生成物が発生していると考えられる。図2にHf原料であるTEMAHの蒸気圧力の温度特性を示す。同図から、処理時圧力が例えば約50Pa(約0.37Torr)では、80℃以下で液化することがわかる。
【0059】
通常、処理済みウェハ200を積載したボート217を、処理室201から搬出した後、すぐに処理炉202の炉口シャッタ116を閉じて、大気が処理室201内に流入しないようにするが、ボート217の搬出時に、大気の処理室201内への流入が避けられない。このため、炉口部210に付着したTEMAHガスの液化したものが、大気と反応して副生成物が発生し、炉口部210の金属表面等に付着する。
尚、石英部材にも副生成物は付着する虞があるが、仮に石英部材に副生成物が付着しても前述した様に石英の線膨張係数が小さいので、石英部材の表面には副生成物の剥がれに起因する生成物の発生、付着は抑えられる。又、SUSなどの金属は冷え易いのに対して、石英部材は熱容量が大きく冷え難く保温効果が大きいので、ガスの液化を抑制し、副生成物の付着を抑制できる効果も期待できる。
【0060】
上記実施の形態によれば、処理室201内において、SUS製のボート受部216aの上面211の全面を石英部材282である石英底板280で覆うようにしたので、ボート受部216aに副生成物が剥がれることにより生じる生成物の発生、付着を防止することができる。また、ボート受部216aの側面212まで石英底板280て覆うようにしているので、ボート受部216aにも同様に生成物が付着することを一層防止することができる。
【0061】
また、実施の形態の炉口フランジ205aの内周壁は、従来のような突出部を有さず滑らかで、突出部に起因して炉口フランジ205aの内周壁に沿って対流が発生することがなくなり、更に、ヒータ222により壁を加熱しているので、TEMAHガスの液化を抑制することができ、炉口フランジ205内壁面に副生成物が付着するのを抑制できる。
【0062】
また、炉口フランジ205aの滑らかな内壁とボート受部216aないし石英底板280との間の隙間を狭くすることで、処理室201側からボート下部空間204への流入を確実に抑制することができる。
しかも、N2ガスなどの不活性ガスを回転軸268側からボート下部空間204に導入し処理室201側へ流しているので、処理室201側からボート下部空間204への流入をより確実に抑制することができる。この際、炉口フランジ205aの内壁とボート受部216aないし石英底板280との間の隙間が狭いので、少量のN2ガスで処理ガスがボート下部空間204へ流れ込むのを抑制することができ、N2パージ効率を上げることができる。
【0063】
また、石英部材282でボート受部216aのボート217が保持される側の面を覆う場合に、石英部材282をボート217と別体に構成してもよいが、本実施の形態のように、石英部材282をボート217とを一体に構成すると、簡単な構成で、ボート受部216aのボート217が保持される側の面への副生成物の付着を有効に防止でき、延いては、前記副生成物の剥がれによるパーティクルの発生を有効に抑制できる。更に、ボート受部216aを覆う石英部材282がボート217と一体化しているため、メンテナンスが容易である。
【0064】
また、石英同士を重ねるとボートの精度(垂直度)が出にくいが、実施の形態では、SUS製のボート受部216aの上に石英底板280を重ねているので、要求されるボート217の垂直精度が容易に出せる。
【0065】
また、ボート受部216aに孔225が設けられているので、石英底板280とボート受部216aとの密着性をよくし、石英底板280とボート受部216aとの間に処理ガスが侵入、及びガス溜りが生じるのを規制し、ボート受部216aのボート217が保持される側の面への副生成物の付着を一層防止でき、パーティクルの発生を一層抑制できる。
【0066】
また、ボート217へウェハ200を移載している時に、ボート受部216aが冷えるのを回避できない。これを回避する最も簡便な方法は、ウェハ移載前、基板処理装置の処理スタンバイ時に、ボート217を反応管203内に入れて予熱してやることである。従来のものでは、ボート217を反応管203内に入れて予熱しても、金属であるSUS(ボート受部216a)は放熱が大きく、すぐに冷えてしまうため、ガスの液化及び熱収縮を抑制することは難しかった。この点で、実施の形態では、基板処理装置の処理スタンバイ時に、ボート217を反応管203内に入れて予熱しておくことが可能になり、ボート217へウェハ200を移載している時のボート受部216aの冷えを抑制することが可能である。
【0067】
また、本実施の形態では、膜種は、常温で液体の原料を用いてALDで成膜するHfO2に適用した例を説明したが、他にアルミナ成膜などにも適用可能である。アルミナ成膜の場合、「原料」には、TMA(Al(CH33:トリメチルアルミニウム)を、「反応ガス」には、O3(オゾン)を用い、Al23(アルミナ)膜を成膜する。ここで、処理室の圧力は、100〜1Paを用いる。また、Siウェハの温度は、原料ガスの自己分解温度の違いにより150〜500℃の範囲内を用いる。たとえば、TMAおよびTEMAHでは、180〜300℃を用いる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】実施の形態における基板処理装置を構成する処理炉の下部構造を示す断面図である。
【図2】ALD法を用いてHfO2膜を形成する場合の成膜原料となるTEMAHの温度特性図である。
【図3】実施の形態にかかる縦型の基板処理装置の概略構成図であり、基板処理装置を外観斜視で示した図である。
【図4】図3の示す基板処理装置の側面図である。
【図5】本発明の実施の形態にかかる縦型の基板処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示した図である。
【図6】図5に示す基板処理炉の処理炉部分を横断面で示した図である。
【図7】従来例における基板処理装置を構成する処理炉の下部構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0069】
201 処理室
210 炉口部(基板搬入出用の開口部)
219 シールキャップ(封止部材)
200 ウェハ(基板)
217 ボート(基板支持部材)
232a、232b ガス供給管(ガス供給系)
233a、233b ノズル(ガス供給系)
231 ガス排気管(排気系)
246 真空ポンプ(排気系)
216 ボート受部(保持部)
268 回転軸(保持部を封止部材に機械的に接続する手段)
211 ボート受部上面(基板支持部材が保持される側の面)
212 ボート受部側面(基板支持部材が保持される側の面)
280 石英底板(石英部材)
282 石英部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板搬入出用の開口部を有する処理室と、
前記開口部を気密に封止する金属から成る封止部材と、
前記処理室内で基板を支持する基板支持部材と、
前記封止部材に機械的に接続される金属から成り、前記基板支持部材を保持する保持部と、
常温で液体の原料を気化させたガスを少なくとも含む処理ガスを前記処理室へ供給するガス供給系と、
前記処理室内の雰囲気を排気する排気系と、
を備え、
少なくとも前記保持部の前記基板支持部材が保持される側の面を石英部材にて覆ったことを特徴とする基板処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−269646(P2006−269646A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−84150(P2005−84150)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】