説明

基板加熱冷却装置

【課題】簡単な操作により基板sと基板ホルダ1の急速冷却を可能とし、基板処理のスループットの向上を図る。
【解決手段】基板加熱冷却装置は、基板ホルダ1とこれに装着された基板sを加熱するヒータ5と、このヒータ5から発射される熱を基板ホルダ1と基板s側に反射する反射鏡6とを有し、前記反射鏡6に基板sが配置される真空チャンバ24の外側で冷却される冷媒を流通させる冷媒通路8を設け、前記基板sを装着した基板ホルダ1を移動させ、同基板ホルダ1を弾性部材11を介して押し上げ、前記反射鏡6に当接し、離間する移動機構を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は真空蒸着法、スパッタリング法等により、半導体ウエハ等の基板の表面にコーティングしたり、或いは表面をエッチングする等の表面処理を行うに当たり、基板を加熱し、冷却する装置に関する。さらに具体的には基板を加熱した後の冷却を容易且つ高速化することが出来る基板加熱冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタリング法や真空蒸着法により、半導体ウエハ等の基板の上に薄膜を形成する場合、真空チャンバ内において、分子線源から成膜材料の分子を放出し、これを基板上に被着させて成膜する。このような成膜工程において、基板は基板ホルダに装着され、その成膜面を分子線源に向けた状態で真空チャンバ内の成膜位置に設置される。成膜時に、基板は成膜に必要な温度に加熱され、成膜が終わった後、基板ホルダごと前記成膜位置から取り外され、次の基板が成膜位置に新たに設置される。以下、この動作を繰り返しながら順次基板に成膜が行われる。
【0003】
成膜時における基板の加熱温度は、成膜する材料や成膜条件等により様々であるが、数百℃に及ぶことが多い。成膜時に加熱した基板と基板ホルダは、その交換時に常温近くまで冷却する必要がある。
従来の成膜装置は、基板を保持したホルダの背後にヒータと冷却器とを設け、熱輻射を介して基板と基板ホルダの加熱と冷却を行う構造となっている。
【0004】
図6に本件特許出願人がこれまで製造していた基板加熱冷却装置の例を示している。
真空チェンバ24の上側に向けて開口したポート部にリング板形状のポートフランジ25が設けられ、このポートフランジ25にその上から円板状のフランジ23がガスケット(図示せず)等を介して気密に接合され、このフランジ23がネジ(図示せず)等の手段でポートフランジ25に固定されている。
【0005】
このポートフランジ25に接合したフランジ23の下に円板リング状のホルダーサポート27が配置されている。このホルダーサポート27の中に基板ホルダ1が着脱自在に取り付けられる。基板ホルダ1のホルダーサポート27への取り付けと取り外しは、真空チャンバ24の側壁に設けたロードロック室(図示せず)を通してトランスファーロッド等(図示せず)により行われる。この基板ホルダ1の下面には、In等の金属によりSi等の半導体ウエハ等の基板sが装着されている。
【0006】
基板ホルダ1の背面、すなわち基板sが装着されたのと反対側の面の上には、同基板ホルダ1と所望の間隔をおいてヒータ5が取り付けられている。このヒータ5は、真空チャンバ24の内部の配線10を介して前記フランジ20に設けた電流導入端子21に接続され、さらにこの電流導入端子21を介して、真空チャンバ24の外側に配置した電源(図示せず)に接続されている。この電源により、ヒータ5が加熱される。ヒータ5としては、例えばランプヒータが使用される。
【0007】
このヒータ5の背後及びその周囲は、ヒータ5で発生する熱を基板ホルダ1側に反射するための反射板7が配置されている。さらにこの反射板7及び前記ヒータ5の中心を貫通するようにして冷媒通路29が配置されている。この冷媒通路29は外筒30と内筒31とを有し、外筒30の下端に設けた放冷部32が前記基板ホルダ1の背面、すなわち上面に近接して配置されている。この冷媒通路29は、フランジ23に設けた流体ジョイント22を介して真空チャンバ24の外側に配置した冷却器(図示せず)に連結されている。この冷却器で冷却した冷却水等の冷媒が冷媒通路29を流通することで、基板ホルダ1とそれに装着した基板sとが冷却される。
【0008】
基板ホルダ1の下面に取り付けられた基板sの下を覆うように、シャッタ2が設けられる。このシャッタ2は、フランジ23から真空チャンバ24の中に垂下したシャフト4に連結され、このシャフト4は、フランジ23の上、すなわち真空チャンバ24の外側に設けた回転導入機20により往復回転される。この往復回転されるシャフト4を中心としてシャッタ2が回転することにより、基板ホルダ1の下面に取り付けられた基板sの下面、すなわち処理面が開閉される。
【0009】
図7では図示してないが、前記シャッタ4の下方にクヌードセンセル、衝撃型電子線セル等の分子線源やイオン原が配置され、1つ以上配置されたそれらの分子線源やイオン原から発射された分子やイオン等が、シャッタ2が開いたときのみ、基板ホルダ1の基板sの表面に入射する。これによって、基板sの表面に薄膜を形成したり、イオンを注入したりする。
【0010】
しかしながら、このような従来の薄膜成膜装置では、ヒータ5と基板ホルダ1との間に冷媒通路29の下端に設けた放冷部32が配置されているため、基板sの加熱温度はせいぜい500〜600℃であった。また、基板と基板ホルダの加熱と冷却は、真空チャンバ内での熱輻射により行われているため、時間がかかるという課題があった。特に基板の加熱より冷却に時間がかかり、これが基板の交換時間が長くなる要因となっている。
【0011】
図7は、本発明の一実施例による基板加熱冷却装置において、基板sを600℃に加熱した状態から基板ホルダ1の周辺部を反射鏡6の両側下縁に当接した直後経過した時間と基板温度の関係を示すグラフである。この例では、図7のグラフから明らかな通り、冷却開始から基板sの温度が50℃前後に下降するまでに420〜480分要しており、温度の下降が鈍い。この結果、基板の1枚当たりの処理時間が長くなり、スループットが低いという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2010−21403号公報
【特許文献2】特開2006−190805号公報
【特許文献3】特開2005−220369号公報
【特許文献4】特開平10−83960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、従来の薄膜成膜に使用されている前記従来の基板加熱冷却装置における前述した課題に鑑み、簡単な操作により基板と基板ホルダの急速冷却を可能とし、これにより成膜等の基板処理工程において基板と基板ホルダの冷却が占める時間を短縮し、基板処理のスループットの向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、前記の目的を達成するため、基板ホルダの背後にヒータ5と反射鏡6とを配置し、この反射鏡6に冷却手段、具体的には冷媒が流通する冷媒通路8を設け、基板ホルダ1と基板sとの冷却時に、この冷媒通路6を有する反射鏡6に基板ホルダ1を当接し、基板ホルダ1とこれに装着された基板sの熱を反射鏡6に吸収させて、急速冷却出来るようにした。
【0015】
すなわち、本発明による基板加熱冷却装置は、基板ホルダ1とこれに装着された基板sを加熱するヒータ5と、このヒータ5から発射される熱を基板ホルダ1と基板s側に反射する反射鏡6とを有し、前記反射鏡6に冷却手段を設け、前記基板sを装着した基板ホルダ1を移動させることにより、同基板ホルダ1を前記反射鏡6に当接し、離間する移動機構を備えるものである。
【0016】
より具体的には、基板ホルダ1は、その背面の周辺部分が反射鏡6に当接される。この基板ホルダ1が反射鏡6に当接するとき、基板ホルダ1は弾性部材11を介して押し上げられる。反射鏡6の冷却手段としては、基板sが配置される真空チャンバ24の外側で冷却される冷媒を流通させる冷媒通路8を反射鏡6の内部に設けることが挙げられる。
【0017】
このような本発明による基板加熱冷却装置では、基板ホルダ1を反射鏡6から離間した状態でヒータ5により加熱することで、基板ホルダ1を介してそれに保持された基板sを所要の温度に加熱することが出来る。続いて基板sの冷却時は、移動機構により基板ホルダ1を移動し、同基板ホルダ1を前記反射鏡6に当接することで、同反射鏡6の冷媒通路8内に流通する冷媒に熱を吸収させ、基板ホルダ1とそれに保持された基板sとを急速冷却する。このような基板ホルダ1と基板sの冷却手段により、基板ホルダ1と基板sとを短時間に加熱、冷却することが出来る。
【0018】
基板ホルダ1は、その背後の周囲の部分を反射鏡6に当接させる。これにより、基板ホルダ1をその周囲から冷却出来るので、基板sにヒートショックを与えることなく急速冷却することが出来る。
さらに本発明による基板加熱冷却装置では、移動機構と基板ホルダ1とを、弾性を付勢した弾性部材11を介して連結することにより、基板ホルダ1を反射鏡6に弾性的に当接させることが出来る。これにより、基板sに衝撃を与えることなく、基板ホルダ1を反射鏡6に確実に密着させることが出来る。
【発明の効果】
【0019】
以上説明した通り、本発明に基板加熱冷却装置では、基板ホルダ1を前記反射鏡6に当接し、基板ホルダ1とそれに保持された基板sとを急速冷却することが出来るので、基板ホルダ1とそれに保持された基板sの加熱の後の冷却時間を短縮することが出来る。これにより、基板sの交換、加熱、成膜、冷却のサイクル時間を短縮化することが出来、基板sの処理工程のスループットの向上を図ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による基板加熱冷却装置の一実施例を示す縦断正面図である。
【図2】本発明による基板加熱冷却装置の一実施例を含む成膜装置を示す縦断正面図である。
【図3】本発明による基板加熱冷却装置の一実施例において基板ホルダが反射鏡から離れた状態の部分部拡大図である。
【図4】本発明による基板加熱冷却装置の一実施例において基板ホルダが反射鏡に当接した状態の部分部拡大図である。
【図5】本発明による基板加熱冷却装置の一実施例において基板ホルダが反射鏡に当接した直後の基板の温度変化を示すグラフである。
【図6】基板加熱冷却装置の従来例を示す縦断正面図である。
【図7】基板加熱冷却装置の従来例において基板ホルダの冷却を開始した直後の基板の温度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明では、前記の目的を達成するため、基板ホルダ1を移動させることで、加熱時に反射鏡6から離れていた基板ホルダ1を冷媒通路8を有する反射鏡6に当接させ、これにより、同反射鏡6の中の冷媒通路8内に流通する冷媒に基板ホルダ1が保有する熱を吸収させ、基板ホルダ1とそれに保持された基板sとを急速冷却するようにした。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、実施例をあげて詳細に説明する。
【0022】
図1に本発明による基板加熱冷却装置の一実施例を示し、図2にこの基板加熱冷却装置の一実施例を使用した薄膜形成装置を示している。図2には一部の符合が省略されて表示されており、以下主に図1の符合を参照しながら説明する。なお、図6に示した従来例と同じ部分は同じ符合で示している。
【0023】
真空チェンバ24の上側に向けて開口したポート部にリング板形状のポートフランジ25が設けられ、このポートフランジ25にその上から円板状のフランジ23がガスケット(図示せず)等を介して気密に接合され、このフランジ23がネジ(図示せず)等の手段でポートフランジ25に固定されている。
【0024】
このポートフランジ25に接合したフランジ23から真空チャンバ24内にサポートロッド17、17が垂下されている。この真空チャンバ24の内部であって、前記フランジ23の直下に第一のフレーム12が配置され、この第一のフレーム12に縦に貫通するようにスライドブッシュ18、18が設けられ、これらのスライドブッシュ18、18に前記サポートロッド17、17がスライド自在に嵌め込まれている。従って、前記フランジ23の直下に配置された前記第一のフレーム12は、サポートロッド17、17にガイドされながらその長手方向、すなわち上下方向にスライド自在である。
【0025】
前記第一のフレーム12の中心のボス部分16には、縦にねじ孔が貫通しており、このボス部分16のねじ孔に前記フランジ23から垂下したスクリューシャフト14がねじ対偶をなすように貫通している。このスクリューシャフト14は、フランジ23の上、すなわち真空チャンバ24の外側に設けた回転導入機19により回転される。この回転導入機19によりスクリューシャフト14が何れかの方向に回転されることにより、第一のフレーム12は上昇又は下降する。前記サポートロッド17、17は、この第一のフレーム12の上下動をガイドする。
【0026】
この第一のフレーム12には、前記スライドブッシュ18、18とは別にもう一組のスライドブッシュ15、15が同第一のフレーム12を縦に貫通するよう設けられている。このスライドブッシュ15、15には、上下にスライド自在にサポートロッド13、13が嵌め込まれている。このサポートロッド13、13の頂部とスライドブッシュ15、15の上端との間に圧縮バネからなる弾性部材11、11が挿入され、この弾性部材11、11は、第一のフレーム12に設けられたスライドブッシュ15、15が上昇すると圧縮され、この圧縮歪みに伴う弾力が付勢される。
【0027】
このサポートロッド13、13の下端には、円板リング状の第二のフレーム28が取り付けられている。さらにこの第二のフレーム28から支柱26、26が垂下され、この支柱26、26の下端に円板リング状のホルダーサポート27が取り付けられている。このホルダーサポート27の中に基板ホルダ1が着脱自在に取り付けられる。基板ホルダ1のホルダーサポート27への取り付けと取り外しは、真空チャンバ24の側壁に設けたロードロック室(図示せず)を通してトランスファーロッド等(図示せず)により行われる。この基板ホルダ1の下面には、In等の金属によりSi等の半導体ウエハ等の基板sが装着されている。
【0028】
基板ホルダ1の背面、すなわち基板sが装着されたのと反対側の面の上には、同基板ホルダ1と所望の間隔をおいてヒータ5が取り付けられている。このヒータ5は、真空チャンバ24の内部の配線10を介して前記フランジ20に設けた電流導入端子21に接続され、さらにこの電流導入端子21を介して、真空チャンバ24の外側に配置した電源(図示せず)に接続されている。この電源により、ヒータ5が加熱される。ヒータ5としては、例えばランプヒータが使用される。
【0029】
このヒータ5の背後及びその周囲は、反射鏡6で囲まれている。この反射鏡6の周囲はさらに反射板7で囲まれている。これら反射鏡6と反射板7とは、ヒータ5で発生する熱を基板ホルダ1側に反射するためのものである。これらヒータ5、反射鏡6及び反射板7は、互いに固定されると共に、その位置が変動しないよう真空チャンバ24内で固定されている。
また、この基板ホルダ1の上面中心部には、それに設けた基板sの温度を測定するための熱電対3の測温接点が接触させられる。
【0030】
前記反射鏡6の内部には、冷却水等の冷媒を流通させる冷媒通路8が形成され、この冷媒通路8は、真空チャンバ24内の内部配管9とフランジ23に設けた流体ジョイント22を介して真空チャンバ24の外側に配置した冷却器(図示せず)に連結されている。この冷却器で冷却した冷却水等の冷媒が反射鏡6の内部の冷媒通路8を流通することで、反射鏡6が冷却される。ヒータ5の周囲を囲む反射鏡6は、下方が開口したカップ状となっている。この反射鏡6の周辺部分は円筒形となっていて、その下縁面はヒータ5より下方に位置している。
【0031】
基板ホルダ1の下面に取り付けられた基板sの下を覆うように、シャッタ2が設けられる。このシャッタ2は、フランジ23から真空チャンバ24の中に垂下したシャフト4に連結され、このシャフト4は、フランジ23の上、すなわち真空チャンバ24の外側に設けた回転導入機20により往復回転される。この往復回転されるシャフト4を中心としてシャッタ2が回転することにより、基板ホルダ1の下面に取り付けられた基板sの下面、すなわち処理面が開閉される。
【0032】
図1では図示しておらず、図2にのみ図示しているが、前記シャッタ4の下方にクヌードセンセル、衝撃型電子線セル等の分子線源mやイオン原が配置され、1つ以上配置されたそれらの分子線源mやイオン原から発射された分子やイオン等が、シャッタ2が開いたときのみ、基板ホルダ1の基板sの表面に入射する。これによって、基板sの表面に薄膜を形成したり、イオンを注入したりする。
【0033】
このような基板加熱冷却装置において、基板ホルダ1に装着された基板sを加熱するときは、図1〜図3に示すように、基板ホルダ1の周辺部は反射鏡6の両側下縁から離れている。この状態でヒータ5により基板ホルダ1をその背面から加熱し、それに装着した基板sを所定の温度に加熱する。
【0034】
次にこの状態から、基板ホルダ1に装着された基板sを冷却するときは、回転導入機19によりスクリューシャフト14を回転し、第一のフレーム12を上昇させる。この時、第一のフレーム12は、スライドブッシュ18、18にスライド自在に嵌め込まれたサポートロッド17、17に沿ってガイドされる。これにより、第一のフレーム12に設けられたスライドブッシュ15が上昇し、弾性部材11が圧縮され、この圧縮歪みにより弾性部材11に圧縮方向の弾力が付勢される。この弾性部材11の弾力により、サポートロッド13、13が上昇され、第二のフレーム28及び支柱26、26を介してホルダーサポート27が押し上げられる。従って、このホルダーサポート27に取り付けられた基板ホルダ1が上昇する。この結果、図4に示すように、基板ホルダ1の背面の周辺部分が反射鏡6の両側下縁に当接する。
【0035】
基板ホルダ1の周辺部が反射鏡6の両側下縁に当接すると、基板ホルダ1の熱が反射鏡6に伝達され、この熱が反射鏡6の内部の冷媒通路8を通る冷却水等の冷媒に吸収される。熱を吸収した冷媒は、真空チャンバ24内の内部配管9とフランジ23に設けた流体ジョイント22を介して真空チャンバ24の外側に配置した冷却器(図示せず)に送られ、そこで冷媒の保有する熱が放熱される。これにより、基板ホルダ1は急速に冷却され、それに取り付けられた基板sも急速冷却される。
【0036】
前述のように、基板ホルダ1は弾性部材11を介して押し上げられ、同弾性部材11の弾力により反射鏡6に当接されるため、当接時に基板ホルダ1が受ける衝撃が前記弾性部材11の弾力により吸収され、緩和される。なお且つ弾性部材11の弾力により基板ホルダ1の周辺部が反射鏡6の両側下縁に確実に当接する。
【0037】
基板ホルダ1とそれに取り付けられた基板sの冷却が完了した後は、回転導入機19によりスクリューシャフト14を反転し、第一のフレーム12を下降させる。これにより、第一のフレーム12に設けられたスライドブッシュ15も下降し、弾性部材11の圧縮が解除され、サポートロッド13、13が下降し、第二のフレーム28、支柱26、26及びホルダーサポート27も下降する。この結果、ホルダーサポート27に取り付けられた基板ホルダ1が下降し、図1〜図3に示すように、基板ホルダ1の周辺部が反射鏡6の両側下縁から離れる。
【0038】
以下、基板ホルダ1とそれに取り付けられた基板sの加熱と冷却を繰り返す毎に基板ホルダ1が上下動する。すなわち、基板sの加熱時に基板ホルダ1の周辺部が反射鏡6の両側下縁から離れ、基板sの冷却時に基板ホルダ1の周辺部が反射鏡6の両側下縁に当接される。これにより特に基板ホルダ1とそれに取り付けられた基板sの冷却時間が短縮され、加熱−冷却サイクルの短縮化を図ることが出来る。
【0039】
図5は、本発明の一実施例による基板加熱冷却装置において、基板sを600℃に加熱した状態から基板ホルダ1の周辺部を反射鏡6の両側下縁に当接した直後経過した時間と基板温度の関係を示すグラフである。この例では、図5のグラフから明らかな通り、基板ホルダ1の周辺部を反射鏡6の両側下縁に当接した直後60分で基板sの温度は600℃から52℃に下降しており、急激な温度の下降が見られる。すなわち急速冷却が可能となっている。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は真空蒸着法、スパッタリング法等により、半導体ウエハ等の基板の表面にコーティングしたり、或いは表面をエッチングする等の表面処理を行うに当たり、基板を加熱、冷却する装置として利用することが出来る。基板の急速冷却が可能であるため、基板の加熱した状態での表面処理工程においてスループットの向上を図ることが出来る。
【符号の説明】
【0041】
1 基板ホルダ
5 ヒータ
6 反射鏡
8 反射鏡の冷媒通路
11 弾性部材
24 真空チャンバ
s 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板ホルダ(1)に保持された基板(s)を加熱し、冷却する装置で基板加熱冷却装置におて、基板ホルダ(1)とこれに装着された基板(s)を加熱するヒータ(5)と、このヒータ(5)から発射される熱を基板ホルダ(1)と基板(s)側に反射する反射鏡(6)とを有し、前記反射鏡(6)に冷却手段を設け、前記基板(s)を装着した基板ホルダ(1)を移動させることにより、同基板ホルダ(1)を前記反射鏡(6)に当接し、離間する移動機構を備えることを特徴とする基板加熱冷却装置。
【請求項2】
基板ホルダ(1)は、その背面の周辺部分が反射鏡(6)に当接されることを特徴とする請求項1に記載の基板加熱冷却装置。
【請求項3】
基板ホルダ(1)が反射鏡(6)に当接するとき、基板ホルダ(1)が弾性部材(11)を介して押し上げられることを特徴とする請求項1または2に記載の基板加熱冷却装置。
【請求項4】
冷却手段として、基板(s)が配置される真空チャンバ(24)の外側で冷却される冷媒が流通する冷媒通路(8)が反射鏡(6)の内部に設けられたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の基板加熱冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−46788(P2012−46788A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188996(P2010−188996)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(390027683)株式会社エイコー・エンジニアリング (14)
【Fターム(参考)】