説明

基板収納容器

【課題】 少数枚の基板の収納や保管に適し、効率や経済性を向上させることができるとともに、金型を使用した製造等の容易化を図ることができ、寸法誤差の少ない基板収納容器を提供する。
【解決手段】 2枚の半導体ウェーハを収納する容器本体1と、容器本体1の開口部を開閉する蓋体とを備え、容器本体1を正面視で横長のフロントオープンボックスとしてその正面の開口部の長辺と短辺の長さの比を1.6〜25の範囲とする。そして、容器本体1の大部分である天井3、背面壁、及び両側壁10を一体成形して残りを別体のボトムプレート25とし、これらを成形後に再度成形して一体化する。容器本体1の大部分とボトムプレート25とを別々に成形し、これらを後から組み立てて成形するので、容器本体1の開口部が狭く奥ゆきが長くなっても、成形時に金型からの離型が困難になることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数枚の半導体ウェーハ等を収納するスモールフープ(SMALL FOUP)と呼ばれる基板収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェーハからなる半導体ウェーハは多数のICチップを効率良く製造するため、近年、200mmタイプから300mmタイプに移行してきているが、この300mmタイプの半導体ウェーハは、ミニエンバイロメントシステムの一部である基板収納容器に多数枚が収納された状態で一括処理される。
ミニエンバイロメントシステムは、局所クリーン化を実現した空間において、直接人間を介することなく、半導体用の加工装置に対して半導体ウェーハを機械的に供給又は回収するシステムである。
【0003】
同システムの基板収納容器は、図16に示すように、例えば全長346mm×幅388mm×高さ330mm程度の大きさを有するフロントオープンボックスタイプに成形され、容器本体1Aに多数枚(例えば25枚)の半導体ウェーハを上下方向に水平に並べて整列収納できるよう構成されており、図示しない加工装置に接続される(特許文献1、2)。
【0004】
このような基板収納容器に多数枚が整列収納された300mmタイプの半導体ウェーハは、加工装置に基板収納容器が接続された後、この基板収納容器から順次取り出されて様々な加工処理が施される。この際、基板収納容器は、全ての半導体ウェーハの加工処理が終了するまで加工装置に接続され、他の工程や加工装置に対する移動が規制される。
【0005】
ところで、半導体ウェーハの加工処理時間は、画一的なものではなく、ICチップの要求性能、製品化の時期、製品の仕様等により少なからず変動する。例えば、メモリーデバイスメーカー等で加工処理される場合、特に加工処理対象が汎用製品の場合には、大量生産が要求されるので、多くの工程を通じ、長時間(例えば30〜40日)かけて加工処理が施される。
これに対し、LSIメーカー等で加工処理される場合には、多品種少量生産の要請、試作品、少ロット品にも対応する必要があるので、短時間(例えば14〜20日)のうちに加工処理される必要がある。
【0006】
そこで、半導体ウェーハは、メモリーデバイスメーカー等で加工処理される場合には、基板収納容器にその最大収納枚数(例えば25枚)が収納されるが、LSIメーカー等で加工処理される場合には、基板収納容器に僅か数枚(例えば1〜5枚)が収納され、一枚当たりの加工処理時間の短縮が図られる。
【特許文献1】特開平11‐91865号公報
【特許文献2】特開2000‐58633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来における基板収納容器は、以上のように構成され、LSIメーカー等で加工処理される場合には、多数枚を収納できるにもかかわらず、僅か数枚を収納するだけなので、容器本体1Aの占有容積やサイズ等が必要以上に大きくなり、スペース、収納、保管の効率が非常に悪く、不経済であるという大きな問題がある。
【0008】
このような問題を解消する手段としては、数枚の基板を収納する専用の基板収納容器の開発・製造が考えられるが、単に開発・製造するだけでは、金型を使用した製造に支障を来たし、寸法誤差が大きくなるという問題が新たに生じることとなる。
【0009】
この問題について詳しく説明すると、数枚の基板を収納する基板収納容器の容器本体1Aを製造する場合には、開口部が横長になり、前後方向の長さが横方向と同様の長さの構成となる。すなわち、開口部が狭く奥ゆきのある容器本体1Aになるので、成形時に金型からの離型量が大きくなり、金型からの抜きテーパを大きくしても離型時の抵抗で変形しやすく、結果として、容器本体1Aの寸法誤差が拡大してしまうおそれが少なくない。
【0010】
本発明は上記に鑑みなされたもので、少数枚の基板の収納や保管に適し、効率や経済性を向上させることができるとともに、金型を使用した製造等の容易化を図ることができ、寸法誤差の少ない基板収納容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明においては上記課題を解決するため、少数枚の基板を収納する容器本体と、この容器本体の開口部を開閉する蓋体とを含み、容器本体を正面視で横長のフロントオープンボックスとしてその正面の開口部の長辺と短辺の長さの比を1.6〜25の範囲としたものであって、
容器本体の一部を一体形成して残部を別体とし、これら一部と残部とを組み合わせて一体化するようにしたことを特徴としている。
なお、容器本体の一部を天井、背面壁、及び両側壁として一体成形し、残部を底板とすることができる。
【0012】
また、容器本体の一部を天井、背面壁、及び底板として一体成形し、残部を両側壁とすることができる。
また、容器本体の一部と残部との組み合わせ面を隙間をおいて対向させ、この隙間にエラストマーを充填して硬化させることにより、容器本体の一部と残部とを一体化することもできる。
さらに、容器本体の一部と残部とを相互に異なる材料により形成することもできる。
【0013】
ここで、特許請求の範囲における少数枚の基板とは、13枚以下、好ましくは5枚以下、より好ましくは1〜2枚の基板をいう。この基板には、少なくとも300mmや450mmの口径を有する半導体ウェーハ(ノッチ付きのシリコンウェーハ、拡散ウェーハ、SOIウェーハ、Hiウェーハ等)、石英ガラス、フォトマスクガラス、アルミディスク、液晶ガラス、タブレット等が含まれる。容器本体と蓋体との間には、気密性のガスケットを介在することができる。
【0014】
容器本体については、透明、半透明、不透明に形成し、背面壁の内面に、基板の周縁を保持する弾性のリテーナを断面略U字形あるいは略V字形に設けることができる。容器本体の一部と残部とは、インサート成形や二色成形法により一体化することができるが、この他にも、レーザ溶接、熱溶着、超音波溶着等の方法を使用して一体化することが可能である。この場合、容器本体の一部と残部とをパッキン等のシール部材を介して一体化することが可能である。このシール部材は、容器本体の一部や残部に予め一体化されたものでも良いし、そうでなくても良い。
【0015】
本発明によれば、少数枚の基板の枚数に応じて基板収納容器を低い正面略横長に構成したので、占有面積、容積、サイズ等が必要以上に大きくなることがない。また、容器本体の一部と残部とを別々に形成し、これらをその形成後に組み立てて一体化することができるので、例え容器本体の開口部が狭く奥ゆきが長くなっても、成形時に金型からの離型量が大きくなるのを抑制することができる。
【0016】
また、容器本体の一部を、天井、この天井の後部に形成されて下方に伸びる背面壁、及び天井の両側部に形成されて下方に伸ばされ、背面壁と一体化する両側壁とし、容器本体の残部を天井、背面壁、及び両側壁が形成する下部開口を覆う底板とすれば、容器本体の上面側と底面側の内面双方に大きな抜きテーパをそれぞれ設ける必要がない。すなわち、容器本体の上面側内面に大きな抜きテーパを設けるだけで良い。
【0017】
また、容器本体の一部を、天井、この天井の後部に形成されて下方に伸びる背面壁、及び天井に略対向する底板とし、容器本体の残部を天井、背面壁、及び底板が形成する開口に嵌め合わされて被覆する両側壁とすれば、大きな抜きテーパを複数設ける必要がなく、機能的な基板収納容器を得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、少数枚の基板の収納や保管に適し、効率や経済性を向上させることができるという効果がある。また、金型を用いた製造等の容易化を図ることができるし、基板収納容器の寸法誤差を抑制することもできる。
また、容器本体の一部と残部とを相互に異なる材料を使用して形成すれば、容器本体に複数の機能や性能を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、図1ないし図11に示すように、2枚の半導体ウェーハWを収納する不透明の容器本体1と、この容器本体1の開口部2を開閉する着脱自在の蓋体30と、図示しない加工装置における蓋体開閉装置からの外部操作に基づき、容器本体1を閉鎖する蓋体30を施錠・解錠する複数のロック機構50とを備えている。
【0020】
各半導体ウェーハWは、図4に示すように、多数のICチップを効率よく製造できるよう、口径300mm(12インチ)の大きさを有する薄い円板に形成され、表面に酸化膜等の膜が選択的に積層形成される。
【0021】
容器本体1は、図1ないし図3等に示すように、所定の成形材料を使用して例えば全長346mm×幅388mm×高さ60〜70mmの大きさを有する正面視で横長のフロントオープンボックスタイプとされ、従来の容器本体1Aよりも全高が低く設定されて2枚の半導体ウェーハWの収納に足るだけの空間を有している。この容器本体1は、図8や図10に示すように、その大部分(一部)である天井3、背面壁8、及び左右の両側壁10が一体成形されて残部が別体のボトムプレート25とされ、これらが嵌合して後から成形により一体化されることで構成される。
【0022】
容器本体1の天井3、背面壁8、及び両側壁10と別体のボトムプレート25の成形材料としては、例えばポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエーテルテルケトン等の樹脂、あるいはこれらの樹脂やアロイ樹脂に、カーボン、炭素繊維、カーボンナノチューブ、金属繊維、金属酸化物、導電性高分子等の添加された導電性の樹脂が選択して使用される。
【0023】
成形材料は、特に限定されるものではないが、力学的性質、耐熱性、寸法安定性に優れる導電性のポリカーボネートが最適である。容器本体1の天井3、背面壁8、及び両側壁10と別体のボトムプレート25とは、同一材料を使用して成形されても良いし、相互に異なる別の材料を使用して成形されても良い。
【0024】
容器本体1の天井3は、図1ないし図3、図5、図6に示すように、複数の段差4を備えた平面略多角形に形成され、半導体ウェーハWの後部周縁に対応するよう後部両側が内方向に傾斜して形成される。この天井3の表面中心部には、円筒形の被取付リブ5が立設され、この被取付リブ5の外周面から略板形の補強リブ6が起立した状態で半径外方向に複数伸長されるとともに、各補強リブ6の円柱形を呈した先端部には螺子穴が穿孔されており、これら被取付リブ5と複数の補強リブ6には、着脱自在の吊持フランジ7が螺子等の締結具を介して水平に螺着される。
【0025】
吊持フランジ7は、図2や図3に示すように、平面略三角形の板に形成され、図示しない搬送機構に把持される。そして、加工装置のスライド可能な吊持板に穿孔された嵌合孔に嵌合保持されることにより、基板収納容器が吊持された状態で加工装置にセットされる。
【0026】
容器本体1の背面壁8は、図3ないし図5、図7に示すように、天井3の後部に一体形成されて略垂直下方に伸長される。この背面壁8は、その一部が二色成形法等により透視可能な横長の矩形に形成され、この一部が収納された半導体ウェーハW用の除き窓9として機能する。
【0027】
容器本体1の両側壁10は、図1や図4に示すように、天井3の両側部に一体形成されて略垂直下方に伸長され、背面壁8と一体化される。この両側壁10の内面には、半導体ウェーハWを水平に支持する左右一対のティース11がそれぞれ形成され、この一対のティース11が上下方向に所定の間隔をおいて配列されており、これら複数対のティース11に半導体ウェーハWが上下方向に整列して収納される。
【0028】
各ティース11は、図4に示すように、半導体ウェーハWの周縁部に沿う平面略く字形あるいは平面略半円弧形の平板12と、この平板12の湾曲した前部内側上に形成される前部中肉領域13と、平板12の前部外側上に形成されて前部中肉領域13の外側、換言すれば、側壁10寄りに位置する前部厚肉領域14と、平板12の後部上に形成される後部中肉領域15とから形成される。
【0029】
このようなティース11は、前部中肉領域13と前部厚肉領域14との間に半導体ウェーハ接触用の段差が僅かに形成され、前部中肉領域13と後部中肉領域15とが半導体ウェーハWを略水平に支持するとともに、前部厚肉領域14が収納された半導体ウェーハWの飛び出しを防止するストッパとして機能する。係るティース11の採用により、半導体ウェーハWの支持搭載位置の精度を著しく向上させ、支持時に半導体ウェーハWが上下方向に斜めに傾くのを有効に防ぐことができる。
【0030】
容器本体1の天井3の前部と両側壁10の前部とは、図2ないし図4、図10に示すように、正面視で横長の枠体16が一体形成され、この枠体16が容器本体1の正面の開口部2として機能する。この枠体16は、その長辺と短辺の長さの比(長辺の長さ/短辺の長さ)が1.6〜25の範囲に設定され、横方向外側に張り出された左右の両側部には、上下方向に並ぶ複数の識別孔17がそれぞれ丸く穿孔されており、この複数の識別孔17に着脱自在の識別体18が選択的に挿入されることにより、基板収納容器のタイプ、半導体ウェーハWの有無や枚数等が加工装置に識別される。
【0031】
識別体18は、例えばポリカーボネート等の所定の合成樹脂を使用してピン形、螺子形、溝を備えた可撓性の割りピン形、あるいは可撓性を有するキャップ形等に形成される。このような識別体18の有無は、図示しない加工装置の検出手段(透過式や反射式の光電センサ、フォトセンサ、タッチセンサ等)により検出される。
【0032】
容器本体1の背面壁8の下部下縁、両側壁10の下部下縁、及び枠体16の下部裏面は、図8ないし図11に示すように、ボトムプレート嵌合用の下部開口19を区画するとともに、このボトムプレート25の周縁部に隙間を介して対向する段差付きの組み合わせ面20とされ、この段差付きの組み合わせ面20には、複数の凹部21が離れて選択的に形成される。
【0033】
容器本体1の背面壁8の下部下縁、両側壁10の下部下縁、及び枠体16の両側部下方からは図1、図3、図4、図8、図10、図11に示すように、平面略U字形のボトムフランジ22が水平方向に張り出され、このボトムフランジ22の周縁端部が上方に屈曲形成して補強される。このボトムフランジ22の両側部前方と後部中央とには、図示しない加工装置に対する位置決め用の溝23がそれぞれ形成され、ボトムフランジ22の後部両側には、複数のロック機構50のカウンターウェイトやバランサーとして機能するウェイト24がそれぞれ装着される。位置決め用の溝23は、断面略逆U字形や逆V字形等に成形される。
【0034】
ボトムプレート25は、図8ないし図11に示すように、容器本体1の背面壁8、両側壁10、及び枠体16に区画される下部開口19に嵌合する平面略多角形の板形に成形され、下部開口19に封止用のエラストマー26を介し溶融一体化される。この封止用のエラストマー26としては、各種の熱可塑性樹脂、具体的には、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリカーボネートとポリエステルとのアロイ樹脂(ポリブチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレートとのアロイ)、あるいはポリカーボネートとABS樹脂とのアロイ樹脂等があげられる。
【0035】
ボトムプレート25の周縁部は、図8ないし図11に示すように、容器本体1の組み合わせ面20、換言すれば、下部開口19の組み合わせ面20に隙間を介して対向する段差付きの組み合わせ面27とされ、この段差付きの組み合わせ面27には、封止用のエラストマー26の充填される凹部28が選択的に形成される。
【0036】
蓋体30は、図2、図4ないし図6に示すように、容器本体1の開口部2、換言すれば、枠体16内に嵌合される断面略皿形のボックス31と、この横長のボックス31の開口した表面を覆う横長の表面プレート37と、容器本体1の枠体16とボックス31との間に介在密嵌される弾性のガスケット40とから構成される。
【0037】
ボックス31は、横長の板体32を備え、この板体32の表面(内面)に、円形を呈したロック機構用の取付領域33が間隔をおいて左右横一列に配列され、各取付領域33に、前面方向に水平に指向する円筒形の支持軸34が形成される。板体32の周囲には、屈曲した周壁がエンドレスに形成され、この周壁の上下部には、横長の溝孔35がそれぞれ間隔をおいて複数穿孔される。ボックス31の裏面には、矩形で横長の取付穴が凹み形成され、この取付穴には弾性のフロントリテーナ36が装着されており、このフロントリテーナ36に各半導体ウェーハWの前部周縁が弾発的に嵌合保持される。
【0038】
表面プレート37は、複数の支持軸34に対応するよう、複数の貫通孔が間隔をおいて左右横一列に配列され、各貫通孔の斜め上下領域には、略半円弧形を呈した一対の操作孔38がそれぞれ穿孔されており、各操作孔38に蓋体開閉装置の操作爪が外部から挿通される。各貫通孔には取付螺子39が着脱自在に挿通され、この取付螺子39が支持軸34に螺挿されることにより、ボックス31の開口した表面に表面プレート37が強固に装着される。
【0039】
ガスケット40は、例えば耐久性、耐熱性、耐薬品性等に優れるフッ素ゴム、シリコーンゴム、ポリエステル系やポリオレフィン系の各種熱可塑性エラストマー等を使用してエンドレスの枠形に成形される。そして、ボックス31の板体周縁部から周壁の段差部にかけて嵌合され、容器本体1の開口部2である枠体16内に接触して圧縮変形する。
【0040】
各ロック機構50は、図2や図6に示すように、容器本体1の枠体16の内周に設けられる複数の係止穴51と、蓋体30に支持されて蓋体開閉装置の外部操作により回転する回転プレート52と、この回転プレート52から外方向に突出し、蓋体30の施錠時に容器本体1の係止穴51に溝孔35を介して嵌合係止し、蓋体30の解錠時に容器本体1の係止穴51から外れて蓋体30内に復帰する一対の係止爪55と、回転プレート52に嵌合されてその不要な回転を規制する一対の規制体56とから構成される。
【0041】
複数の係止穴51は、枠体16の内周上下に所定の間隔をおいて配列され、各係止穴51がボックス31の溝孔35に対応するよう横長に形成される。回転プレート52は、ポリカーボネート等の合成樹脂を使用して円板に形成され、中心部に蓋体30の支持軸34に貫通支持される中心孔53が穿孔されており、この中心孔53の周囲には、表面プレート37の操作孔38を貫通した蓋体開閉装置の操作爪に干渉される一対の取付孔54が所定の間隔で穿孔される。
【0042】
一対の係止爪55は、回転プレート52の周面に所定の間隔で突出形成され、各係止爪55が略台形に形成される。各規制体56は、屈曲した一対の弾性片が組み合わされることにより略U字形に構成され、回転プレート52の取付孔54に着脱自在に嵌合されてバネとして機能する。そして、取付領域33と回転プレート52との間に介在され、蓋体30の施錠時に回転プレート52を表面プレート37に圧接して回転プレート52の解施方向への回転を規制するよう機能する。
【0043】
上記構成において、基板収納容器の容器本体1を製造する場合には、先ず、別体のボトムプレート25を専用の金型により射出成形するとともに、容器本体1の大部分である天井3、背面壁8、及び両側壁10を専用の金型により一体的に射出成形する。
【0044】
こうして容器本体1の大部分とボトムプレート25とを別々に成形したら、容器本体1の大部分の下部開口19にボトムプレート25をインサート嵌合した状態で金型にセットし、その後、金型を型締めして容器本体1の下部開口19とボトムプレート25との隙間、換言すれば、組み合わせ面20・27の隙間に溶融した封止用のエラストマー26を射出し、この別材料のエラストマーを冷却硬化させて容器本体1の大部分とボトムプレート25とを一体化すれば、容器本体1を製造することができる。
【0045】
次に、ミニエンバイロメントシステムを利用して加工装置に半導体ウェーハWを短時間で供給又は回収する場合には、加工装置の吊持板に複数の基板収納容器が上下方向に並べて吊持され、この複数の基板収納容器中、任意の基板収納容器が選択されて加工装置にスライド接続され、この任意の基板収納容器のロック機構50が蓋体開閉装置により施錠、解錠される。
【0046】
先ず、蓋体30を施錠する場合には、蓋体開閉装置の操作爪が蓋体30の操作孔38を貫通して回転プレート52の取付孔54に嵌入するとともに、規制体56を撓ませて回転プレート52の回転を可能とし、操作爪が回転プレート52を施錠方向(例えば、時計方向)に回転させ、回転プレート52の係止爪55がボックス31の内部から溝孔35を介し容器本体1の係止穴51に嵌合係止する。この嵌合係止により、半導体ウェーハWを収納した容器本体1が蓋体30に強固に嵌合閉鎖される。
【0047】
蓋体30から蓋体開閉装置の操作爪が外れると、撓んでいた規制体56が復元して表面プレート37に回転プレート52を圧接し、回転防止用の段差や突起と接触したり、噛合して回転プレート52の解施方向への回転が規制される。
【0048】
これに対し、蓋体30を解錠する場合には、蓋体開閉装置の操作爪が蓋体30の操作孔38を貫通して回転プレート52の取付孔54に嵌入するとともに、規制体56を撓ませて回転プレート52の回転を可能とし、操作爪が回転プレート52を解錠方向(例えば、反時計方向)に回転させ、回転プレート52の係止爪55が容器本体1の係止穴51から溝孔35を介しボックス31内に移動する。
【0049】
この移動により、半導体ウェーハWを収納した容器本体1の開口部2から蓋体30が取り外し可能になる。蓋体30が取り外し可能になると、蓋体開閉装置が蓋体30を取り外し、フォークが容器本体1内に進出して半導体ウェーハWを下方から把持する。
【0050】
上記構成によれば、2枚という少数枚の半導体ウェーハWの枚数に応じて基板収納容器を薄く低い横長に構成したので、占有容積やサイズ等が必要以上に大きくなることがなく、効率や経済性を著しく高めることができる。また、容器本体1の大部分とボトムプレート25とを別々に成形し、これらを後から組み合わせてインサート成形するので、容器本体1の開口部2が狭く奥ゆきが長くなっても、成形時に金型からの離型量が大きくなることがない。したがって、容器本体1が離型時の抵抗で変形して寸法誤差が拡大するのを有効に抑制防止することができる。
【0051】
また、ロック機構50の係止穴51と回転プレート52との間、回転プレート52と係止爪55との間に、進退動する長いバーやシャフト等を介在させるのではなく、回転プレート52に短い係止爪55を直接設けて省スペース化を図るので、基板収納容器を薄く低く構成しても、蓋体30を簡易な構成で強固に施錠することが可能となる。特に撓みやすい蓋体30の中央部を省スペースのロック機構50により強固に施錠することが可能となる。また、ロック機構50の部品点数を削減して構成の簡素化を図ることも可能となる。
【0052】
また、容器本体1の底面に位置決め用の複数の溝を直接形成するのではなく、容器本体1から略水平外方向に張り出したボトムフランジ22に、位置決め用の溝23を複数形成するので、容器本体1の全高や加工装置と位置決めした場合の全高を低くすることができる。
【0053】
さらに、既存の25枚収納タイプの基板収納容器がアクセス可能なインターフェイス装置のアクセス部により多くのアクセス部を設けることができ、保管スペースの縮小も大いに期待できる。さらにまた、容器本体1の大部分とボトムプレート25における組み合わせ面20・27の凹部21・28が封止用のエラストマー26の充填量を増大させ、凹部21・28と硬化した封止用のエラストマー26とが凹凸に噛合するので、強固な結合構造が期待できる。
【0054】
次に、図12、図13は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、容器本体1の大部分とボトムプレート25の成形材料を異ならせ、ボトムプレート25を先に射出成形して容器本体1の大部分を成形する専用の金型にインサートし、その後、この専用の金型に容器本体1の大部分を成形する成形材料を充填してボトムプレート25を備えた容器本体1を二色成形するようにしている。
【0055】
ボトムプレート25の成形材料としては、容器本体1の大部分を成形する成形材料よりも摺動性の良い成形材料、例えば、ポリエーテルエーテルケトンやポリブチレンテレフタレート等があげられる。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0056】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、ボトムプレート25を摺動性に優れる成形材料により成形するので、蓋体開閉装置との位置決め精度を大幅に向上させることができるのは明らかである。また、容器本体1の下部開口19とボトムプレート25とを封止用のエラストマー26により一体化するのではなく、容器本体1の大部分を成形する際の熱を利用して直接的に一体化するので、作業工程の簡素化やコスト削減等を図ることができる。
【0057】
次に、図14、図15は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、基板収納容器を全長346mm×幅388mm×全高約210mmの13枚入りのタイプとし、容器本体1の大部分を天井3、背面壁8、及びボトムプレート25として残部を別体の両側壁10とするとともに、これら容器本体1の大部分と両側壁10の成形材料を異ならせ、両側壁10を先に射出成形して容器本体1の大部分を成形する専用の金型にインサートした後、この専用の金型に容器本体1の大部分を成形する成形材料を充填することにより、両側壁10を備えた容器本体1を二色成形法により製造するようにしている。
【0058】
基板収納容器の開口部2における長辺と短辺の長さの比(長辺の長さ/短辺の長さ)は、約1.8に設定される。また、両側壁10の成形材料としては、容器本体1の大部分を成形する成形材料よりも摺動性、耐汚染性、磨耗性に優れる成形材料、例えば、ポリエーテルエーテルケトンやポリブチレンテレフタレート等があげられる。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0059】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、ティース11付きの両側壁10を容器本体1の大部分とは異なり、摺動性や磨耗性に優れる成形材料で成形するので、半導体ウェーハWの汚染防止が期待できるのは明らかである。さらに、容器本体1の大部分に別体の両側壁10を後から装着する際の作業性の悪化を容易に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係る基板収納容器の実施形態における斜視正面説明図である。
【図2】本発明に係る基板収納容器の実施形態を示す斜視拡大説明図である。
【図3】本発明に係る基板収納容器の実施形態を示す斜視背面説明図である。
【図4】本発明に係る基板収納容器の実施形態を示す断面説明図である。
【図5】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体と蓋体との関係を模式的に示す斜視背面説明図である。
【図6】本発明に係る基板収納容器の実施形態を示す分解斜視説明図である。
【図7】本発明に係る基板収納容器の実施形態における開口した容器本体を示す正面図である。
【図8】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体とボトムプレートとを模式的に示す分解斜視裏面図である。
【図9】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体とボトムプレートとの要部を模式的に示す斜視断面図である。
【図10】本発明に係る基板収納容器の実施形態を示す断面模式説明図である。
【図11】本発明に係る基板収納容器の実施形態を示す要部断面説明図である。
【図12】本発明に係る基板収納容器の第2の実施形態を示す裏面斜視説明図である。
【図13】本発明に係る基板収納容器の第2の実施形態を示す断面模式説明図である。
【図14】本発明に係る基板収納容器の第3の実施形態を示す断面模式説明図である。
【図15】本発明に係る基板収納容器の第3の実施形態を示す要部断面説明図である。
【図16】多数枚の半導体ウェーハを整列収納する基板収納容器を示す斜視説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1 容器本体
2 開口部
3 天井
8 背面壁
10 側壁
11 ティース
16 枠体
19 下部開口
20 組み合わせ面
21 凹部
25 ボトムプレート(底板)
26 封止用のエラストマー
27 組み合わせ面
28 凹部
30 蓋体
40 ガスケット
50 ロック機構
W 半導体ウェーハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少数枚の基板を収納する容器本体と、この容器本体の開口部を開閉する蓋体とを含み、容器本体を正面視で横長のフロントオープンボックスとしてその正面の開口部の長辺と短辺の長さの比を1.6〜25の範囲とした基板収納容器であって、
容器本体の一部を一体形成して残部を別体とし、これら一部と残部とを組み合わせて一体化するようにしたことを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
容器本体の一部を天井、背面壁、及び両側壁として一体成形し、残部を底板とした請求項1記載の基板収納容器。
【請求項3】
容器本体の一部を天井、背面壁、及び底板として一体成形し、残部を両側壁とした請求項1記載の基板収納容器。
【請求項4】
容器本体の一部と残部との組み合わせ面を隙間をおいて対向させ、この隙間にエラストマーを充填して硬化させることにより、容器本体の一部と残部とを一体化するようにした請求項1、2、又は3記載の基板収納容器。
【請求項5】
容器本体の一部と残部とを相互に異なる材料により形成した請求項1ないし4いずれかに記載の基板収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−245206(P2006−245206A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−57543(P2005−57543)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】