説明

基板収納容器

【課題】蓋体の施錠や開閉に支障を来たすおそれの少ない基板収納容器を提供する。
【解決手段】2枚の半導体ウェーハを収納する容器本体の正面部を開閉する蓋体20に、容器本体の正面部を閉塞した蓋体20を施錠する施錠機構40を設け、施錠機構40を、蓋体20に支持されてその左右内外方向にスライド可能なリンクプレート41と、リンクプレート41の先端部に回転可能に支持され、蓋体側壁の溝孔23から突出して容器本体の正面部内側の係止溝に干渉可能な係止爪45と、リンクプレート41を蓋体20の左右外方向にスライドさせて係止爪45を蓋体20の溝孔23から突出させるコイルバネ47と、リンクプレート41の最末端部43側に穿孔され、蓋体20外部から操作ピンが挿入される操作孔48とから構成し、操作孔48を正面略楕円形に形成してその蓋体20の左右内方向側に位置する周縁部を直線的な縦平坦部49とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等からなる少数枚の基板を収納する基板収納容器に関し、特に蓋体を施錠する施錠機構の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LSIメーカ等で半導体ウェーハを短時間で加工処理する際に使用される基板収納容器は、図示しないが、3枚以下の半導体ウェーハを収納する容器本体と、この容器本体の開口した正面部を開閉する蓋体と、容器本体の正面部に嵌合した蓋体を施錠する施錠機構とを備えて構成されている(特許文献1参照)。
施錠機構は、例えば蓋体内に複数の回転体が回転可能に軸支され、各回転体が回転してその周縁部から突出した複数の係止爪を蓋体の周壁から露出させ、各係止爪が容器本体の正面部内周に係止することにより、蓋体を施錠するよう機能する。
【特許文献1】特開2006−100712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来における基板収納容器は、以上のように構成され、施錠機構により容器本体の正面部に嵌合した蓋体を強固に施錠することができるものの、容器本体から蓋体を取り外す場合でないにもかかわらず、回転体が自由回転して係止爪が容器本体の正面部内周から外れ、蓋体の施錠や開閉に支障を来たすおそれが考えられる。
【0004】
本発明は上記に鑑みなされたもので、蓋体の施錠や開閉に支障を来たすおそれの少ない基板収納容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明においては上記課題を解決するため、三枚以下の基板を収納する容器本体の略横長に開口した正面部を開閉する蓋体に、容器本体の正面部を閉じた蓋体を施錠する施錠機構を設けたものであって、
施錠機構は、蓋体に支持されてその左右内外方向にスライド可能なスライド体と、このスライド体の先端部に回転可能に支持され、蓋体側壁の貫通孔から突出して容器本体の正面部内側の係止溝に干渉可能な係止爪と、スライド体を蓋体の左右外方向にスライドさせて係止爪を蓋体の貫通孔から突出させるバネと、スライド体の末端部側に設けられ、蓋体外部から操作ピンが挿入される操作孔とを含み、スライド体の操作孔を略円形に形成してその蓋体の左右内方向側に位置する一部を直線的な縦平坦部とし、
容器本体の正面部から蓋体を取り外す場合に、スライド体の操作孔に操作ピンを挿入してスライド体を蓋体の左右内方向にスライドさせ、突出した係止爪を蓋体の貫通孔内に退没させるようにしたことを特徴としている。
【0006】
なお、容器本体の背面壁と両側壁のうち少なくとも背面壁にリブフランジを成形し、このリブフランジを容器本体の金型からの脱型時に突出しピンに外側から略対向させることができる。
【0007】
また、蓋体は、容器本体の開口した正面部に嵌め合わされて施錠機構を内蔵する筐体と、この筐体の開口した正面部を被覆する表面カバーと、この表面カバーに設けられて施錠機構のスライド体の操作孔に対向する操作口とを含み、操作口を蓋体の左右内外方向に伸びる横長に形成してその左右外方向側を拡幅部とするとともに、左右内方向側に位置する残部を狭幅部とすることができる。
【0008】
また、蓋体に、容器本体との間に介在する弾性変形可能なガスケットを取り付け、このガスケットを、蓋体に取り付けられる取付部と、この取付部に形成されて容器本体の開口した正面部内に接触する接触部とから形成し、これら取付部と接触部のうち少なくとも接触部には、ダイヤモンドライクカーボンをコーティングすることができる。
【0009】
また、蓋体の内部に、施錠機構のスライド体を蓋体の左右内外方向に挟んで案内するガイドを形成することが可能である。
また、施錠機構のスライド体にスライド可能に嵌められる筒体と、スライド体に回転可能に連結されて蓋体に支持され、蓋体の左右内外方向に回転するアームとを含み、スライド体の先端部側と筒体との間にバネを介在して筒体をアームに接触させることも可能である。
【0010】
また、容器本体の係止溝に干渉する係止爪の干渉部分に、ローラを回転可能に支持させると良い。
また、操作ピンは、スライド体の操作孔に挿入される略円柱形のピン部と、このピン部に形成されて幅方向外側に膨らみ、表面カバーの操作口に干渉する膨出部とを含むと良い。
【0011】
さらに、操作ピンは、スライド体の操作孔に挿入されるピン部と、このピン部に形成されて幅方向外側に膨らみ、表面カバーの操作口に干渉する膨出部とを含み、ピン部の一部分をスライド体の操作孔に対応する形に形成することもできる。
【0012】
ここで、特許請求の範囲における基板には、少なくとも各種のガラス基板、カバーガラス、半導体ウェーハ(口径200mm、300mm、450mm等)、フォトマスク等が含まれる。容器本体は、透明、不透明、半透明等を特に問うものではないが、口径300mmの半導体ウェーハを25、26枚収納する基板収納容器よりも背が低くされる。例えば、口径300mmの半導体ウェーハからなる基板を2枚収納する場合には、6cm以下の高さとされる。
【0013】
蓋体は、透明、不透明、半透明等を特に問うものではない。容器本体と蓋体との間には、気密性を確保するガスケットが介在されるが、このガスケットは、エンドレスの線条でも良いし、そうでなくても良い。また、施錠機構の回転という用語には、回動や揺動等が含まれる。バネとローラとは、単数複数を特に問うものではない。バネは、コイルバネでも良いし、板バネ等でも良い。また、スライド体の末端部側には、末端部と最末端部のいずれもが含まれる。さらに、操作孔の略円形という用語には、少なくとも円形、楕円形、長円形、又はこれらに類似する形が含まれる。
【0014】
本発明によれば、容器本体の開口した正面部を蓋体により閉じる場合には、容器本体の正面部内に蓋体を嵌め入れ、容器本体の正面部内の係止溝に蓋体側壁の貫通孔を対向させれば良い。すると、施錠機構のバネによりスライド体が蓋体の左右外方向にスライドして係止爪を回転させ、この係止爪が蓋体の貫通孔から突出して容器本体の係止溝に嵌まり、これにより、容器本体の正面部が蓋体により閉じられ、施錠される。
【0015】
これとは逆に、容器本体の正面部から蓋体を取り外す場合には、施錠機構のスライド体の操作孔に操作ピンを蓋体の外部から挿入し、スライド体を蓋体の左右内方向にスライドさせれば良い。すると、スライド体がバネを撓ませながら蓋体の左右内方向にスライドし、係止爪が回転して蓋体の貫通孔内に退没し、この係止爪の退没により、容器本体の係止溝から係止爪が外れて容器本体から蓋体を取り外すことが可能になる。
上記のように容器本体から蓋体を取り外さない場合や施錠機構に負荷が作用しない場合には、容器本体の係止溝に係止爪がバネにより干渉して容器本体の正面部を蓋体により閉じるので、容器本体から蓋体の外れることが少ない。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、蓋体の施錠や開閉に支障を来たすおそれの少ない基板収納容器を提供することができるという効果がある。
また、操作口を蓋体の左右内外方向に伸びる横長に形成してその左右外方向側を拡幅部とするとともに、左右内方向側に位置する残部を狭幅部とすれば、施錠機構のスライド体を操作ピンによりスライドさせる際、蓋体の左右内方向側に操作ピンを円滑に導くことができる。
【0017】
また、操作ピンを、スライド体の操作孔に挿入される略円柱形のピン部と、このピン部に形成されて幅方向外側に膨らみ、表面カバーの操作口に干渉する膨出部とから形成すれば、膨出部が表面カバーの操作口に接触して支持機能を発揮するので、取り外し作業時における蓋体の脱落を招くことが少ない。
また、ピン部の一部分をスライド体の操作孔に対応する形に形成すれば、蓋体の繰り返しの着脱作業に伴う操作孔の変形を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明に係る基板収納容器の好ましい実施形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、図1ないし図22に示すように、少数枚の半導体ウェーハWを収納する容器本体1の正面部を開閉する蓋体20に、容器本体1の正面部を閉塞した蓋体20を施錠する施錠機構40を設け、この施錠機構40を、蓋体20の左右内外方向にスライド可能な一対のリンクプレート41と、各リンクプレート41に支持され、蓋体20の溝孔23から突出して容器本体1の係止溝14に干渉可能な係止爪45と、各リンクプレート41を蓋体20の左右外方向にスライドさせて係止爪45を蓋体20の溝孔23から突出させるコイルバネ47と、各リンクプレート41に設けられて操作ピン50に操作される操作孔48とから構成するようにしている。
【0019】
各半導体ウェーハWは、図7に示すように、例えば薄く丸い口径300mmのシリコンタイプからなり、周縁部に位置合わせや識別用のオリフラあるいは平面略半円形のノッチが選択的に形成される。
【0020】
容器本体1は、図1、図2、図5ないし図8に示すように、成形用の金型に所定の樹脂を含む成形材料が射出されることにより、2枚以下の半導体ウェーハWを整列収納する背の低い(例えば6cm以下)フロントオープンボックスタイプに射出成形され、開口した横長の正面部に同形の蓋体20がエンドレスのガスケット28を介し着脱自在に嵌合される。金型は、図示しない射出成形用のタイプが使用され、射出成形機に装着される。この金型には、型開きと共に突き出る往復動可能な複数の突出しピン2が突き出し板に固定された状態で内蔵される(図4参照)。
【0021】
容器本体1の成形材料の所定の樹脂としては、例えば力学的性質、耐熱性、寸法安定性等に優れるポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート等があげられる。これらの樹脂には、必要なカーボン、カーボン繊維、金属繊維、カーボンナノチューブ、帯電防止剤、難燃剤等が選択的に添加される。
【0022】
容器本体1の内部、具体的には相対向する両側壁の内面には図7や図8に示すように、半導体ウェーハWを水平に支持する左右一対のティース3が対設され、この一対のティース3が上下方向に間隔をおいて配列される。各ティース3は、容器本体1の前後方向に細長い板に成形され、容器本体1の背面壁寄りの末端部が先細りとされる。また、容器本体1の外周面には図1、図2、図4ないし図6に示すように、容器本体1の機械的強度や剛性を高めるリブフランジ4が成形され、背面壁側のリブフランジ4が容器本体1の脱型時に突出しピン2に対向する。
【0023】
リブフランジ4は、容器本体1の背面壁と両側壁とに外側から一体成形され、変形した平面略U字形を呈する。背面壁のリブフランジ4は、例えば細長い肉厚の板形に形成され、両側部5が容器本体1の背面壁両側部の略中央に水平に位置しており、中央部6が容器本体1の背面壁中央部の下方に位置する。また、背面壁のリブフランジ4の両側部5は、図4に示すように、容器本体1の正面部が下方に傾かないよう金属製のバランスウェイト7が下方からそれぞれ後付けで螺着され、容器本体1の金型からの脱型時に複数の突出しピン2に外側から対向するよう機能する。
【0024】
背面壁のリブフランジ4の中央部6は、略W字形に屈曲形成されて凹部を形成し、この凹部の開口が下方に向いて容器本体1の加工装置に対する位置決め部8として機能する。また、各側壁のリブフランジ4は、図1、図2、図5、図6に示すように、例えば細長い肉厚の板形に形成され、前部9が各側壁前部の下方に位置しており、前部9以外の残部10が各側壁の前部以外の残部の略中央に水平に位置して背面壁のリブフランジ4と一体化する。各側壁のリブフランジ4の前部9は、略逆V字形に屈曲して凹部を形成し、この凹部の開口が下方に向いて容器本体1の加工装置に対する位置決め部8として機能する。
【0025】
容器本体1の天井の略中心部には図7等に示すように、平面略Y字形を呈する複数の被取付リブ11が立設され、この複数の被取付リブ11上には、図示しない搬送機構に把持される平面略三角形あるいは多角形の吊持フランジ12が螺子等の締結具を介し着脱自在に後から螺着される(図1、図4ないし図6参照)。
【0026】
容器本体1の開口した正面部は、図3、図5ないし図8に示すように、外方向に広がるよう屈曲形成されてリムフランジ13を形成し、このリムフランジ13の内部両側には、蓋体20施錠用の係止溝14がそれぞれ上下方向に切り欠かれる。リムフランジ13の左右に張り出した両側部には、複数の識別孔15がそれぞれ上下に並べて丸く穿孔され、この複数の識別孔15に図示しない識別ピンが選択的に挿入され、かつ図示しない加工装置の検出手段(例えば、光電センサ、フォトセンサ、タッチセンサ等)に検出されることにより、半導体ウェーハWの有無や枚数、基板収納容器のタイプ等が加工装置に識別される。
【0027】
蓋体20は、図3、図6、図9、図10等に示すように、容器本体1の開口したリムフランジ13に着脱自在に嵌合され、施錠機構40を内蔵する横長の筐体21と、この筐体21の開口した正面部(表面部)に螺着されて被覆する透明の表面カバー32とを備えて構成され、容器本体1に対して図示しない蓋体開閉装置により取り付け、取り外しされる。
【0028】
筐体21は、その内部両側に施錠機構40用の複数の保持リブ22がそれぞれ一体的に突出形成され、周壁の両側部には、容器本体1の係止溝14に対向する施錠機構40用の溝孔23がそれぞれ切り欠かれており、各溝孔23の内周縁付近には、施錠機構40用の支持リブ24が一体的に突出形成される。筐体21の裏面中央部には図10に示すように、横長の取付穴25が凹み形成され、この取付穴25には、複数の半導体ウェーハWの前部周縁を弾性片により弾発的に保持するフロントリテーナ26が装着される。
【0029】
筐体21の裏面周縁部には図10に示すように、横長で枠形の取付溝27が切り欠かれ、この取付溝27には、容器本体1との間に介在する弾性のガスケット28が嵌合される。このガスケット28は、例えば耐熱性、難燃性、耐寒性、圧縮特性に優れるシリコーンゴム、フッ素ゴム、あるいはダイヤモンドライクカーボン(DLCともいう)31をコーティング可能な各種の熱可塑性エラストマー(例えば、オレフィン系等)等を成形材料として弾性変形可能な横長の枠形に成形される。
【0030】
ガスケット28は、図11ないし図13に示すように、蓋体20の取付溝27に嵌合するエンドレスで枠形の取付部29と、この取付部29に一体形成されて容器本体1の開口したリムフランジ13内に圧接して変形する接触部30とを備え、この接触部30の全面に、高平滑性、耐磨耗性、耐腐食性、低摩擦係数、高ガスバリヤ性に優れる硬質のダイヤモンドライクカーボン31がバッチ処理等によりコーティングされており、このダイヤモンドライクカーボン31がリムフランジ13の内周縁に接触する。
【0031】
ガスケット28は、断面形が略U字形に形成されてその両自由端部の厚さと長さとが相違し、この両自由端部の内側自由端部よりも外側自由端部が長く伸長される。このガスケット28の両自由端部は、薄肉の内側自由端部が容易に変形するよう斜めにカットされて蓋体20の取付溝27内に密嵌し、厚肉の外側自由端部の端面が断面略三角形に尖って接触部30とされており、この接触部30以外の残部が取付部29とされる。
【0032】
ダイヤモンドライクカーボン31は、炭素を含有したガスがプラズマ中で原子状に分解されることにより非晶質の硬質膜に形成され、緻密なアモルファス構造により表面が滑らかで結晶粒界があるという特徴を有しており、ガスケット28の柔軟性や追従性を維持する観点から10〜100nm程度の厚さにコーティングされる。
【0033】
表面カバー32は、図3、図6、図9、図14、図15、図18、図19に示すように、横長の略矩形に形成され、両側部には、施錠機構40用の操作口33がそれぞれ略凸字形に穿孔されており、最両側部には、蓋体開閉装置に真空吸着される正面円形の吸着領域36がそれぞれ形成される。各操作口33は、蓋体20の左右内外方向に伸びる横長に形成され、左右外方向側が湾曲辺付きの拡幅部34とされるとともに、左右内方向側に位置する残部が矩形の狭幅部35とされており、裏面側周縁部には、施錠機構40用の一対のガイド片37が筐体21の内方向に向け一体形成される。
【0034】
施錠機構40は、図9、図16ないし図19に示すように、筐体21の内部両側に支持されて左右内外方向にスライド可能な一対のリンクプレート41と、筐体21の各溝孔23に出没可能に軸支されてリンクプレート41の先端部に連結支持され、容器本体1の係止溝14に嵌合して干渉する揺動可能な一対の係止爪45と、各リンクプレート41に嵌入されて容器本体1の係止溝14に係止爪45を干渉させる一対のコイルバネ47と、各リンクプレート41の最末端部43側に穿孔され、蓋体外部から各操作ピン50が挿入される操作孔48とを備えて構成される。
【0035】
各リンクプレート41は、図9、図16、図18、図19等に示すように、例えば先端部が二股に分かれた略Y字形の板に形成され、棒形の中央部にはコイルバネ47用の筒体であるカラー42がスライド可能に嵌入されており、末端部と最末端部43とが表面カバー32の一対のガイド片37にスライド可能に挟持されるとともに、最末端部43には、表面カバー32の操作口33に対向する正面略半楕円形の操作孔48が穿孔される。
【0036】
リンクプレート41の末端部には、カラー42のスライドや脱落を規制する略U字形のアームであるリンクアーム44がピンを介し左右内外方向に揺動可能に嵌入軸支され、このリンクアーム44が筐体21の保持リブ22にピンを介し左右内外方向に揺動可能に軸支される。
【0037】
各係止爪45は、図17に示すように、変形した略V字形に屈曲形成され、屈曲部が筐体21の支持リブ24にピンを介し揺動可能に軸支される。この係止爪45は、その一端部がリンクプレート41の二股の先端部間にピンを介し揺動可能に軸支され、二股に分岐した他端部の間には、容器本体1の係止溝14内に摺接する複数のローラ46がピンを介し回転可能に支持される。各ローラ46は、例えば容器本体1と同様の材料等を使用して筒形に成形される。
【0038】
各コイルバネ47は、リンクプレート41の中央部に嵌通されてリンクプレート41の幅広の先端部側とカラー42との間に介在し、カラー42をリンクアーム44に圧接するとともに、筐体21の溝孔23から係止爪45の他端部、すなわち複数のローラ46を外部に突出させる。
【0039】
各操作孔48は、図16、図18、図19に示すように、基本的には正面略楕円形に形成され、その蓋体20の左右内方向側に位置する周縁部が上下方向に直線的な縦平坦部49に切り欠かれており、この縦平坦部49に操作ピン50が蓋体20の取り外し時に接触する。
【0040】
各操作ピン50は、図20に示すように、細長い円柱形のピン部51と、このピン部51に一体成形されて半径外方向に膨出する膨出部52とを備え、自動あるいは手動により操作される。この操作ピン50は、ピン部51が操作口33を貫通してリンクプレート41の操作孔48に挿入され、膨出部52が表面カバー32の操作口33に適切に接触・干渉して蓋体20を支持するよう機能する。
【0041】
上記構成において、半導体ウェーハWを収納した容器本体1の開口したリムフランジ13を蓋体20により閉じる場合には、容器本体1のリムフランジ13内に蓋体20を蓋体開閉装置により押圧して嵌合し、容器本体1のリムフランジ13の内周縁にガスケット28の接触部30をダイヤモンドライクカーボン31を介して圧接・変形させ、容器本体1の各係止溝14に蓋体20の溝孔23を対向させれば良い。
【0042】
すると、圧縮されていた各コイルバネ47の復元作用によりリンクプレート41が保持リブ22、ガイド片37、リンクアーム44に案内されつつ蓋体20の左右外方向に水平にスライドして係止爪45を蓋体20の表裏方向に揺動させ、この係止爪45の他端部が蓋体20の溝孔23から外部に弧を描きながら突出して回転可能な複数のローラ46を容器本体1の係止溝14に嵌入し、この複数のローラ46の嵌入により、容器本体1のリムフランジ13が蓋体20により強固に閉じられ、かつ気密性や密閉性が確保される。
【0043】
このように施錠機構40に負荷が作用しない場合には、容器本体1の各係止溝14内に揺動突出した係止爪45のローラ46が転がり接触可能に嵌入し、容器本体1のリムフランジ13が蓋体20により覆われることとなる。
【0044】
これに対し、半導体ウェーハWを収納した容器本体1のリムフランジ13から施錠状態の蓋体20を取り外す場合には、一対のリンクプレート41の操作孔48(図18参照)に操作ピン50を蓋体20の操作口33を介し外部からそれぞれ挿入し、各操作ピン50を操作口33の拡幅部34から狭幅部35方向に動かすことにより、各リンクプレート41を蓋体20の左右内方向にスライドさせれば良い(図19参照)。
【0045】
すると、各リンクプレート41がコイルバネ47を圧縮しながら蓋体20の左右内方向に水平にスライドし、係止爪45が弧を描きながら揺動してその露出した他端部、すなわち複数のローラ46を蓋体20の溝孔23内に退没させ、この係止爪45の他端部の退没により、容器本体1の係止溝14から複数のローラ46が外れて容器本体1から蓋体20を取り外すことが可能になる。
【0046】
上記構成によれば、容器本体1から蓋体20を取り外さない施錠機構40の非操作時には、容器本体1の係止溝14に係止爪45がコイルバネ47により絶えず嵌入して容器本体1のリムフランジ13を蓋体20により強固に閉じるので、容器本体1から蓋体20が外れることが全くなく、蓋体20の施錠や開閉に支障を来たすおそれがない。また、容器本体1の係止溝14に係止爪45が直接嵌入するのではなく、係止爪45の回転可能な複数のローラ46が嵌入して摺接するので、容器本体1と係止爪45との擦れによりパーティクルが発生して半導体ウェーハWを汚染させるおそれがない。
【0047】
また、各操作孔48を丸い円形ではなく、フラットな縦平坦部49付きの略半楕円形に形成するので、蓋体20の嵌合に支障を来たすのを防止することができる。この点について説明すると、例えば操作孔48が円形の場合に、容器本体1から蓋体20を取り外すため、リンクプレート41の操作孔48に操作ピン50を挿入し、リンクプレート41を蓋体20の左右内方向にスライドさせる(図21の左側参照)と、操作孔48の周縁下部に操作ピン50がずれて圧接して蓋体20を下方に押し下げ(図21の右側参照)、この状態で容器本体1から蓋体20が取り外された後、容器本体1が元の位置に復帰する。
【0048】
そしてその後、元の位置に復帰した容器本体1のリムフランジ13に蓋体20が再度嵌合されるが、この際、容器本体1のリムフランジ13の下部に押し下げられたままの蓋体20(同図の右側参照)が衝突することになるので、位置ずれにより、蓋体20を円滑に嵌合することができなくなる。
【0049】
これに対し、本実施形態によれば、操作孔48が略半楕円形を呈してその施錠機構40の解除方向側に位置する縦平坦部49が操作ピン50のガタツキ防止機能を発揮するので、リンクプレート41の操作孔48と操作ピン50との位置が相対的に上下にずれていても、セットされた位置でリンクプレート41を蓋体20の左右内方向にスライドさせることができ、容器本体1に蓋体20を円滑に嵌合することができる(図22参照)。
【0050】
また、操作ピン50の膨出部52が表面カバー32の操作口33に接触して支持機能を発揮するので、たとえ蓋体開閉装置に蓋体20が適切に真空吸着されない場合でも、蓋体20の脱落を招くことがなく、蓋体20の確実な保持が大いに期待できる。また、容器本体1に対するガスケット28の接触部30に、高平滑性や耐磨耗性のダイヤモンドライクカーボン31がコーティングされるので、たとえガスケット28が長時間容器本体1と蓋体20との間に介在したとしても、容器本体1内にガスケット28が貼り付き、蓋体20の開放に支障を来たすことが全くない。
【0051】
また、ガスケット28の硬度を高く変更する必要がないので、ガスケット28の追従性を確保して気密性や密閉性を向上させることができる。また、金型の突出しピン2に容器本体1のリブフランジ4の両側部が外側から対向して障害物となり、背面壁の強度を高めて補強機能を発揮するので、例え突出しピン2が突き出されて大きな負荷が作用しても、容器本体1の背面側が突出しピン2により突き破られることがなく、これにより製造時の容器本体1の損傷をきわめて有効に防止することが可能になる。
【0052】
また、金型から容器本体1を脱型する際の抜き角度を大きく変更する必要がないので、半導体ウェーハWの出し入れに支障を来たすこともない。さらに、背面壁のリブフランジ4と位置決め部8とを別々に形成するのではなく、背面壁のリブフランジ4の中央部に位置決め部8を一体形成するので、構成の簡易化が大いに期待できる。
【0053】
次に、図23は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、各リンクプレート41の操作孔48に挿入される操作ピン50を、細長い柱形のピン部51Aと、このピン部51Aに一体成形されて幅方向外側に膨出する膨出部52とから形成し、ピン部51Aの一部分をリンクプレート41の操作孔48に対応する略相似形、すなわち断面略半楕円形に形成し、このピン部51Aの縦平坦面53を操作孔48の縦平坦部49よりも小さく短くするようにしている。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
【0054】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、ピン部51Aの一部分と操作孔48の形状が近似するので、蓋体20の繰り返しの着脱作業に伴う操作孔48の変形を有効に防止することができるのは明らかである。
【0055】
なお、本発明に係る基板収納容器は、上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、容器本体1の背面壁の中央部上方に、半導体ウェーハWを視認する覗き窓をインサート成形法や二色成形法等により形成しても良い。また、容器本体1やそのリブフランジ4に、FRIDシステムのRFタグを取り付けて自動の移動体識別システムに資するようにしても良い。また、リブフランジ4に複数の位置決め部8を形成するのではなく、容器本体1の平坦な底面の前部両側と後部中央とに加工装置に対する位置決め部8をそれぞれ形成しても良い。
【0056】
また、背面壁のリブフランジ4の中央部を略W字形ではなく、略V字形に屈曲形成して凹部としても良い。また、特に支障が生じなければ、各側壁のリブフランジ4を省略することもできる。また、ガスケット28の接触部30のみにダイヤモンドライクカーボン31をコーティングしたが、特に限定されるものではなく、ガスケット28の取付部29と接触部30とにダイヤモンドライクカーボン31をそれぞれコーティングすることもできる。
【0057】
また、ガスケット28の接触部30にダイヤモンドライクカーボン31を単にコーティングしても良いが、特に問題がなければ、ガスケット28の接触部30にダイヤモンドライクカーボン31を部分的にコーティングすることもできる。また、同様の作用効果が期待できるのであれば、表面カバー32に正面略台形の操作口33を穿孔しても良い。さらに、リンクプレート41の操作孔48は、正面略半楕円形でも良いが、正面略半長円形でも良いし、正面略半円形等でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す平面説明図である。
【図2】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す底面説明図である。
【図3】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す正面説明図である。
【図4】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す背面説明図である。
【図5】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す側面説明図である。
【図6】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【図7】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体を模式的に示す正面説明図である。
【図8】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体を模式的に示す断面側面図である。
【図9】本発明に係る基板収納容器の実施形態における蓋体を模式的に示す分解斜視図である。
【図10】本発明に係る基板収納容器の実施形態における蓋体の裏面側を模式的に示す斜視説明図である。
【図11】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるガスケットを模式的に示す正面説明図である。
【図12】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるガスケットを模式的に示す部分説明図である。
【図13】図11のXIII−XIII線断面説明図である。
【図14】本発明に係る基板収納容器の実施形態における蓋体の表面カバーを模式的に示す斜視説明図である。
【図15】本発明に係る基板収納容器の実施形態における表面カバーの裏側を模式的に示す斜視説明図である。
【図16】本発明に係る基板収納容器の実施形態における施錠機構のリンクプレートを模式的に示す斜視説明図である。
【図17】本発明に係る基板収納容器の実施形態における施錠機構の係止爪を模式的に示す斜視説明図である。
【図18】本発明に係る基板収納容器の実施形態における基準位置のリンクプレートを模式的に示す要部説明図である。
【図19】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるスライド状態のリンクプレートを模式的に示す要部説明図である。
【図20】本発明に係る基板収納容器の実施形態における操作ピンを模式的に示す説明図である。
【図21】本発明に係る基板収納容器の実施形態における丸い操作孔に関する問題点を模式的に示す説明図である。
【図22】本発明に係る基板収納容器の実施形態における操作孔の効果を模式的に示す説明図である。
【図23】本発明に係る基板収納容器の第2の実施形態を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0059】
1 容器本体
2 突出しピン
4 リブフランジ
13 リムフランジ(開口した正面部)
14 係止溝
20 蓋体
21 筐体
23 溝孔(貫通孔)
28 ガスケット
31 ダイヤモンドライクカーボン
32 表面プレート
33 操作口
34 拡幅部
35 狭幅部
36 ガイド片
40 施錠機構
41 リンクプレート(スライド体)
42 カラー
43 最末端部(末端部側)
44 リンクアーム
45 係止爪
46 ローラ
47 コイルバネ(バネ)
48 操作孔
49 縦平坦部
50 操作ピン
51 ピン部
51A ピン部
52 膨出部
53 縦平坦面
W 半導体ウェーハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三枚以下の基板を収納する容器本体の略横長に開口した正面部を開閉する蓋体に、容器本体の正面部を閉じた蓋体を施錠する施錠機構を設けた基板収納容器であって、
施錠機構は、蓋体に支持されてその左右内外方向にスライド可能なスライド体と、このスライド体の先端部に回転可能に支持され、蓋体側壁の貫通孔から突出して容器本体の正面部内側の係止溝に干渉可能な係止爪と、スライド体を蓋体の左右外方向にスライドさせて係止爪を蓋体の貫通孔から突出させるバネと、スライド体の末端部側に設けられ、蓋体外部から操作ピンが挿入される操作孔とを含み、スライド体の操作孔を略円形に形成してその蓋体の左右内方向側に位置する一部を直線的な縦平坦部とし、
容器本体の正面部から蓋体を取り外す場合に、スライド体の操作孔に操作ピンを挿入してスライド体を蓋体の左右内方向にスライドさせ、突出した係止爪を蓋体の貫通孔内に退没させるようにしたことを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
蓋体は、容器本体の開口した正面部に嵌め合わされて施錠機構を内蔵する筐体と、この筐体の開口した正面部を被覆する表面カバーと、この表面カバーに設けられて施錠機構のスライド体の操作孔に対向する操作口とを含み、操作口を蓋体の左右内外方向に伸びる横長に形成してその左右外方向側を拡幅部とするとともに、左右内方向側に位置する残部を狭幅部とした請求項1記載の基板収納容器。
【請求項3】
操作ピンは、スライド体の操作孔に挿入される略円柱形のピン部と、このピン部に形成されて幅方向外側に膨らみ、表面カバーの操作口に干渉する膨出部とを含んでなる請求項2記載の基板収納容器。
【請求項4】
操作ピンは、スライド体の操作孔に挿入されるピン部と、このピン部に形成されて幅方向外側に膨らみ、表面カバーの操作口に干渉する膨出部とを含み、ピン部の一部分をスライド体の操作孔に対応する形に形成した請求項2記載の基板収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−49289(P2009−49289A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215906(P2007−215906)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】