説明

基板収納容器

【課題】簡単な構成にも拘わらず、作業員が容易に持ち上げることのできる基板収納容器を提供する。
【解決手段】搬送手段によって搬送可能な基板収納容器である。基板収納容器は、正面に形成された開口を通して基板を収納できる容器本体と、この容器本体の前記開口を閉鎖する蓋体と、前記容器本体の外周面の一部に前記搬送手段に把持される把持部とを備えて構成される。前記把持部には作業員が指を挿入できる指係止部が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板収納容器に係り、特に、半導体ウェーハ、マスクガラス等からなる精密基板を収納し、搬送がなされるとともに、前記精密基板を加工・処理する加工装置に位置決め固定される基板収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の基板収納容器は、いわゆるフロントオープンボックスタイプと称され、正面に形成された開口を通して精密基板(以後、基板と称す)を収納できる容器本体と、この容器本体の前記開口を閉鎖する蓋体と、を備えたものが知られている。容器本体の内周面の一部には上下方向に並設された複数の支持溝が対向して設けられ、各基板は支持溝のそれぞれに支持されて容器本体内に同軸上に整列配置されて収納されるようになっている。
【0003】
また、このような基板収納容器は、半導体デバイスの製造工程において、作業者による搬送方法に代え、様々な自動機によって搬送されるようになっている。これにより、基板収納容器内の各基板の汚染を防止できるとともに、効率的な作業を実現することができる。
【0004】
たとえば、工場内には、OHT(Overhead Hoist
Transportation)と称される方式が採用され、基板収納容器の天面に取り付けられたロボティックフランジを搬送機構によって把持することによって、いわゆる天井搬送ができるようになっている。
【0005】
また、上記OHT方式の他に、基板収納容器の底部に取り付けられた一対のボトムレールや、基板収納容器の左右側面のそれぞれに取り付けられサイドフォークリフトフランジを使用して基板収納容器を持ち上げ、搬送するAGV(Automated Guided Vehicle)方式、PGV(Person
Guided Vehicle)方式等が採用されている。
【0006】
このことから、基板収納容器は、その天面においてロボティックフランジが予め固定され、あるいは着脱可能に構成されている。同様に、サイドフォークリフトフランジ等においても、予め固定され、あるいは着脱可能に構成されている。ここで、ロボティックフランジ等が着脱可能に構成されるのは、基板の加工・処理を行う工場の仕様等を考慮したものとなっている。すなわち、工場によっては、たとえばOHT方式等を採用していない場合があり、この場合には、ロボティックフランジ等を取り外していた方が作業性に優れるようになるからである。
【0007】
このような構成からなる基板収納基板の構成は、たとえば下記特許文献1に開示がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000-306988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、基板収納容器は、自動機によって搬送されるように構成されたものとなっているが、往々にして、たとえば緊急時において、作業員が基板収納容器を持ち上げなければならない状況になる場合がある。
【0010】
この場合、基板収納容器の外周面から突起されて形成されるロボティックフランジあるいはサイドフォークリフトフランジ等を持って持ち上げようとするのが通常であるが、持ち上げ難く、バランスをくずして落下させる恐れがあった。
【0011】
すなわち、従来のロボティックフランジあるいはサイドフォークリフトフランジ等は、搬送機構によって把持できる機能のみを有した構成となっているため、作業員がロボティックフランジあるいはサイドフォークリフトフランジ等を持って基板収納容器を持ち上げるには不適切な形状として構成されていた。換言すれば、ロボティックフランジあるいはサイドフォークリフトフランジ等には引っかかる部分がなく持つのに滑りやすい構造となっていた。
【0012】
近年では、基板収納容器は、収納する基板の大きさがたとえば直径450mm程度となってきており、大型化され、重量も大きくなっていることから、上述した不都合は、深刻なものとなっている。
【0013】
ここで、このような不都合を回避するため、基板収納容器の外周面の一部に作業員が把持できるハンドル等を新たに取り付けることも考えられるが、スペース的に取り付け個所がない場合もあり、また、構成が複雑になるという問題も生じる。
【0014】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであって、簡単な構成にも拘わらず、作業員がたとえば緊急時等において容易に持ち上げることのできる基板収納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成によって把握することができる。
(1)本発明の基板収納容器は、搬送機構によって搬送可能な基板収納容器であって、正面に形成された開口を通して基板を収納できる容器本体と、この容器本体の前記開口を閉鎖する蓋体と、前記容器本体の外周面の一部に前記搬送機構に把持される把持部と、把持部に設けられる1又は複数の指係止部とを備えることを特徴とする。
(2)本発明の基板収納容器は、(1)において、前記把持部は、前記容器本体の天面に取り付けられ、前記天面と対向して配置されるフランジ部と、このフランジ部の周辺に設けられ前記容器本体に対して直接あるいは間接的に固定される側壁部とからなるロボティックフランジからなり、前記指係止部は前記側壁部に形成されていることを特徴とする。
(3)本発明の基板収納容器は、(1)において、前記把持部は、前記容器本体の天面に取り付けられ、前記天面と対向して配置されるフランジ部と、このフランジ部の周辺に設けられ前記容器本体に対して直接あるいは間接的に固定される側壁部とからなるロボティックフランジからなり、前記把持部には指係止部が形成され、前記指係止部は、前記フランジ部の前記側壁部に近接する個所に形成されていることを特徴とする。
(4)本発明の基板収納容器は、(1)において、前記把持部は、前記容器本体の左右側面のそれぞれに取り付けられ、前記容器本体の前後方向に延在するフランジ部からなるサイドフォークリフトフランジからなり、前記係止部は、前記フランジ部に形成されていることを特徴とする。
(5)本発明の基板収納容器は、(1)において、前記把持部には指係止部が形成され、前記指係止部は、容器本体に収納される基板の中心位置から前記蓋体の方向にずれた位置に形成されていることを特徴とする。
(6)本発明の基板収納容器は、(3)ないし(5)において、前記指係止部は、貫通孔、凹部、リブのいずれかによって形成され、あるいはこれら貫通孔、凹部、リブの組み合わせによって形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
このような構成からなる基板収納容器によれば、簡単な構成にも拘わらず、作業員がたとえば緊急時等において容易に持ち上げることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の基板収納容器の実施形態1を正面から観た斜視図である。
【図2】本発明の基板収納容器を蓋体を外した状態で観た正面図である。
【図3】本発明の基板収納容器を水平面と平行な切断面を上方から観た断面図である。
【図4】図3のIV−IV線における断面図である。
【図5】本発明の基板収納容器のロボティックフランジを上面から示した図である。
【図6】本発明の基板収納容器を左側側面から観た図である。
【図7】本発明の基板収納容器に形成される指係止部の断面を示す図である。
【図8】本発明の基板収納容器の実施形態2を正面から観た斜視図である。
【図9】本発明の基板収納容器の実施形態3を正面から観た斜視図である。
【図10】本発明の基板収納容器の実施形態4を正面から観た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
(実施形態1)
図1は、本発明の基板収納容器を正面側から観た斜視図である。図1に示す基板収納容器100はいわゆるフロントオープンボックスタイプと称される基板収納容器である。
【0019】
図1において、基板収納容器100は、正面側に開口(図示せず)が設けられた容器本体10と、この容器本体10の開口を閉鎖して配置される蓋体20とからなっている。容器本体10の天面にはロボティックフランジ30が取り付けられている。このロボティックフランジ30は、半導体装置の製造がなされる工場内にOHT(Overhead Hoist Transportation)が設置されている場合、その搬送機構によって把持され、基板収納容器100を天井搬送できるようになっている。また、容器本体10の底部には、図示しないが、位置決め機構が配設され、基板を加工等するための加工装置に対する位置決めができるようになっている。
【0020】
なお、後の説明を便宜ならしめるため、蓋体20側から観た基板収納容器100において、奥行き方向に相当する方向を前後方向とし、水平方向に相当する方向を左右方向とし、垂直方向に相当する方向を上下方向と称する場合がある。
【0021】
図2は、基板収納容器100において、蓋体20が取り外された状態の容器本体10を示す正面図である。容器本体10内には開口を通してたとえば半導体ウェーハからなる複数の基板Wを水平に収納できるようになっている。各基板Wは、その周辺において、容器本体10の左右側の内側面に対向して設けられた一対の支持部12A、12Bに支持されて配置されている。各支持部12A、12Bは、上下方向に並設された複数の溝14を有し、各基板Wは、各支持部12A、12Bの対応する溝14内に周辺が配置されることよって該支持部12A、12Bに支持されるようになっている。これにより、基板Wのそれぞれは、中心軸がほぼ一致づけられて上下方向に整列配置されるようになる。基板Wは、大口径のものが用いられ、たとえば直径が450mmとなっている。
【0022】
蓋体20は、内部に空間を有する二重壁構造で構成され、図1に示すように、前記内部に図中点線で示すようにラッチ機構22を配置させた構成となっている。ラッチ機構22は蓋体20を容器本体10に閉鎖させるための係止機構として構成され、たとえば図中左右に2個設けられている。それぞれのラッチ機構は、図示しないキーによって回転される回転プレート24と、この回転プレート24に連結されて図中上下方向にスライド可能な一対の動力伝達プレート25A、25Bと、これら動力伝達プレート25A、25Bの先端に連結される係止クランプ(図示せず)とからなっている。回転プレート24の周縁部には、一方の動力伝達プレート25Aに形成されたガイドピン26Aを嵌合させるガイド溝27Aと、他方の動力伝達プレート25Bに形成されたガイドピン26Bを嵌合させるガイド溝27Bが形成されている。ガイド溝27A、27Bは、蓋体20の容器本体10に対する閉鎖の際の回転プレート24の回転にともない、動力伝達プレート25A、25Bのガイドピン26A、26Bを外方に導くように半径が大きくなる弧状をなしている。これにより一対の各動力伝達プレート25A、25Bは回転プレート24と反対側の方向(図中矢印方向α)に移動し、該動力伝達プレート25A、25Bの先端に設けられた係止クランプ(図示せず)が、容器本体10の開口部の係止孔(図2中、符号28に示す)に嵌入することにより蓋体20の容器本体10に対する閉鎖を行うことができる。
【0023】
図3は、図1に示した基板収納容器100を水平面と平行な切断面を上方から観た断面図である。上述したように、容器本体10内には、基板Wが一対の支持部12A、12Bに支持されて配置されている。図3において、蓋体20は、図中上側に示され、この蓋体20の周辺にはエンドレスのガスケット21が固定されている。このガスケット21は、蓋体20の容器本体10への閉鎖の際には容器本体10の開口部に当接することにより容器本体10内の気密性が図れるようになっている。なお、図3において、蓋体20に内蔵される前記ラッチ機構22は図示を省略している。また、図3に示すように、蓋体20の内壁面には、一対のフロントリテーナ29が取り付けられている。これらフロントリテーナ29は、図3のIV−IV線の断面図である図4に示すように、各基板Wの側の面に各基板Wに対向されて形成されたたとえばV字形の溝29Aが各基板Wの整列方向に複数形成されている。蓋体20を容器本体10に閉鎖した際に、各溝29Aは、その内周面において各基板Wの周縁と当接されるようになっている。これにより、支持部12A、12Bに支持された各基板Wは、蓋体20の容器本体10への閉鎖の際にフロントリテーナ29によって奥側へ押し込められるようになっている。図3では図示されていないが、各支持部12A、12Bの奥側の端部には、基板Wが前記フロントリテーナ29によって押し込められた際に、基板Wの周縁に接触する内壁面が形成されており、これにより、基板Wは正規の位置に位置決めされるようになっている。
【0024】
図1に示したロボティックフランジ30は、たとえば、容器本体10に着脱自在に取り付けられる構成となっている。このような構成とすることによって、たとえば工場内にOHT方式を採用していない場合に、ロボティックフランジ30を取り外して基板収納容器を使用することができるようになっている。
【0025】
図5(a)は、前記ロボティックフランジ30を上面から観た平面図である。図5(a)において、容器本体10の天面には、前後方向に延在する一対の案内レール15A、15Bがたとえば容器本体10に一体に形成されている。一対の案内レール15A、15Bは、平面的に観て、左右対称に配置され、それらの左右幅方向の距離が背面側から正面側にかけて小さくなるように形成されている。また、一対の案内レール15A、15Bは、たとえば、図2に示すように、それぞれの頭部が対向する側に屈曲された断面逆L字状をなしている。
【0026】
一対の案内レール15A、15Bの間には、たとえば板状からなるベース部32が配置され、その左右の各辺は、対応する側の案内レール15A、15Bの内側の側壁に当接されるように形成されている。これにより、ベース部32は、案内レール15A、15Bの頭部の屈曲部によって係止され、上下方向の移動が規制されるようになっている。
【0027】
また、ベース部32の上方にはこのベース部32に対向してほぼ矩形状をなすフランジ部34が配置され、フランジ部34は側壁部35A、35B、35C、35Dを介してベース部32と固定されている。側壁部35A、35B、35C、35Dはフランジ部34の4辺のそれぞれに近接して設けられ、前後方向に延在する一対の左右側壁部35A、35Bと左右方向に延在する一対の前後側壁部35C、35Dとがそれぞれ連結して形成されている。これにより、フランジ部34は側壁部35A、35B、35C、35Dによって、前記ベース部32、案内レール15A、15Bを介して、容器本体10と間接的に固定されるようになっている。フランジ部34は、その周縁の所定の個所において、V字状の溝36が形成されている。この溝36は、搬送機構のロボットハンドによってフランジ部34が把持される際に位置決め溝として機能するようになっている。
【0028】
そして、たとえば、ベース部32のほぼ中央には容器本体10に形成される螺子ボス(図示せず)が露出され、この裸子ボスにはフランジ部34の上方からたとえばボルト37が螺入されるようになっている。これにより、フランジ部34はベース部32とともに前後方向の移動が規制され、容器本体10へのロボティックフランジ30の固定がなされるようになっている。なお、ロボティックフランジ30の容器本体10への固定手段は、上述した構成に限定されず、他の係止構造であってもよいことはもちろんである。
【0029】
このように構成されるロボティックフランジ30は、たとえば前記ボルト37を外し、図5(b)に示すように、フランジ部34を案内レール15A、15Bに沿って容器本体10の後方(図中矢印方向)に沿って移動させることにより、ロボティックフランジ30を容器本体10から容易取り外すことができる。また、逆の操作をすることによって、ロボティックフランジ30を容器本体10に容易に装着できるようになる。
【0030】
さらに、ロボティックフランジ30は、たとえば、図1に示すように、側壁部35A、35B、35C、35Dおよびフランジ部34において貫通孔39Aが形成されている。これら貫通孔39Aは作業者が指を挿入できる指係止部として機能できるようになっている。すなわち、フランジ部34の4辺における各側壁部35A、35B、35C、35Dにおいて、それぞれ、そのほぼ中央に、側壁部35A、35B、35C、35Dの長手方向に沿ってたとえば2個の貫通孔39Aが並設されて形成されている。各側壁部35A、35B、35C、35Dに貫通孔39Aを2個設けているのは、たとえば、一方の貫通孔39Aに人差し指を挿入し他方の貫通孔39Aに中指を挿入できるようにしているからである。また、フランジ部34の周辺においても、各側壁部35A、35B、35C、35Dに形成された貫通孔39Aのそれぞれに隣接するようにして貫通孔39Bが形成されている。フランジ部34にこのような貫通孔39Bを設けることで、指を側壁部35A、35B、35C、35Dの貫通孔39Aに挿入した後、指を曲げながら深く突っ込むことでフランジ部の34各貫通孔39Bから出すことができ、ロボティックフランジ30を指によって強固に把持することができるようになる。
【0031】
また、図6は、基板収納容器100の左側側面図を示している。図6において、基板収納容器100の前後方向に延在する側壁部35A、35Bに形成される貫通孔39Aは、その中心部が容器本体100に収納された基板Wの中心(図中一点鎖線で示す)よりも蓋体20側に距離Lだけずらして形成されていることを示している。ここで、側壁部35A、35Bに形成される貫通孔39Aがたとえば2個並列されている場合、貫通孔39Aの中心部は、各貫通孔39Aの中心を結ぶ線分の中心としている。後述するように、側壁部35A、35Bに1個の貫通孔39Aが形成されている場合には、その貫通孔39Aの中心部は当該貫通孔39Aの中心となる。
【0032】
上述した構成からなる基板収納容器100は、通常、収納された基板Wの中心よりも蓋体20側に偏心した位置に重心がくるようになっている。蓋体20は、容器本体10との機密性を充分に図るため、通常、ラッチ機構22等を内蔵させたりせねばならず、重量が大きくなっているからである。このため、重心の位置に合わせて側壁部35A、35Bに形成する貫通孔39Aも蓋側20にずらして形成するようにしている。具体的には、貫通孔39Aの中心部の位置は、基板Wの中心位置から0mmより大きく50mm以下の範囲内で蓋体20側にずらすのが好適である。
【0033】
このように構成した場合、作業員は、基板収納容器100のほぼ重心部を把持することができることから、バランスをくずすことなく基板収納容器100を持ち上げられる効果を奏する。
【0034】
なお、図6では、左右側側壁部35A、35Bのうち左側に配置される側壁部35Bについて示したが、右側に配置される側壁部35Aについても同様となっている。また、前後側壁部35C、35Dにおいては、基板収納容器100の左右方向に重心の偏心がないことから、それぞれの側壁部35C、35Dのほぼ中央に貫通孔を設けることが好ましくなる。
【0035】
なお、左右側側壁部35A、35Bに形成する貫通孔39Aは、基板Wの中心からずらして配置されることが必須となるものではないことはもちろんである。たとえば、容器本体10の蓋体20と反対側の奥側において、重心のバランスを図る重り等を配置させる等の他の対策によって、上述した弊害を解消できるからである。
【0036】
また、上述した実施形態1では、ロボティックフランジ30に貫通孔39A、39Bを設けることによってこの貫通孔39A、39Bを指係止部として構成したものである。たとえば側壁部35A、35B、35C、35Dにおいて貫通孔39Aが形成された部分の断面図を図7(a)に示している。しかし、この指係止部は必ずしも貫通孔39Aに限定されるものではなく、他の形態であってもよいことはいうまでもない。たとえば、図7(a)に対応させて描いた図7(b)に示すように側壁部35A、35B、35C、35Dに凹部40を設け、この凹部40を指係止部として機能させることができる。また、図7(a)に対応させて描いた図7(c)に示すように側壁部35A、35B、35C、35Dにリブ41を設け、このリブ41を指係止部として機能させることができる。なお、このような構成からなる指係止部は、以下に説明する実施形態においても同様に適用できるものである。
(実施形態2)
図8は、本発明の基板収納容器の実施形態2を示す構成図で、図1と対応させて描いた図となっている。
【0037】
図8において、図1と比較した場合に異なる構成は、フランジ部34には貫通孔39Bを設けていない構成となっている。これにより、作業者は側壁部35A、35B、35C、35Dに形成された貫通孔39Aに指を挿入するだけとなるが、基板収納容器100を持ち上げることにおいて、何ら不便を感じることはないことから、このような構成であってもよい。
(実施形態3)
図9は、本発明の基板収納容器の実施形態3を示す構成図で、図8と対応させて描いた図となっている。図9において、図8と比較した場合に異なる構成は、各側壁部35A、35B、35C、35Dに形成する貫通孔39Aは複数ではなく1個となっている。そして、この場合、該貫通孔39Aには、たとえば人差し指と中指が同時に挿入できるように、基板収納容器100の前後方向に延在する長孔として形成されたものとなっている。
【0038】
なお、この場合において、フランジ部34の周辺に各側壁部35A、35B、35C、35Dの貫通孔39Aに隣接するようにして該貫通孔39Aとほぼ同大の長孔からなる貫通孔を設けるようにしてもよいことはもちろんである。
(実施形態4)
上述した実施形態では、ロボティックフランジ30に指係止部を設けた構成としたものである。しかし、これに限定されることはなく、たとえば、サイドフォークリフトフランジ等において指係止部を設ける構成としてもよい。図10は、基板収納容器100にサイドフォークリフトフランジ50が取り付けられている実施例を示した図である。サイドフォークリフトフランジ50は、容器本体10の左右側面の外周面においてたとえば底部に近い位置に着脱自在に取り付けられている。
【0039】
サイドフォークリフトフランジ50は、たとえば、容器本体10の前後方向に延在し側面とほぼ平行に配置される平板52と、この平板52から水平方向に一体に延在するフランジ部54とから構成されている。このフランジ部54の周辺に、搬送機構のロボットハンドによってフランジ部54が把持される際の位置決めのための溝56が形成されていることは、ロボティックフランジ30の場合と同様となっている。なお、サイドフォークリフトフランジ50の前記平板52の前方端部および後方端部には、前記平板52を容器本体10に取り付けるためのたとえば螺子58が螺合されている。
【0040】
このような構成からなるサイドフォークリフトフランジ50のフランジ部54には、貫通孔59が設けられ、この貫通孔59は指係止部として機能するようになっている。このように構成することによって、作業員がたとえば緊急時等においてサイドフォークリフトフランジ50を持って基板収納容器100を持ち上げる際に、容易に持ち上げることができるようになる。
【0041】
なお、サイドフォークリフトフランジ10にたとえば凹部、あるいはリブからなる指係止部を設ける場合、これらの凹部、あるいはリブはフランジ部54の裏側の面(基板収納容器100の底部側の面)に設けるのが好適となる。
(実施態様5)
上述したロボティックフランジ30、あるいはサイドフォークリフトフランジ50は、いずれも容器本体10に着脱ができるように構成したものである。しかし、これに限定されることはなく、容器本体10に常時固定される構成としてもよい。たとえばロボティックフランジ30を容器本体10に常時固定させる構成としては、フランジ部34の周辺に設けられた側壁部35A、35B、35C、35Dを、ベース部32、案内レール15A、15B等を介することなく、容器本体10に対して直接に固定させるようにしたものが考えられる。このような構成であっても本発明を適用できるからである。
(実施態様6)
上述した実施態様では、基板収納容器に収納する基板は、たとえば半導体ウェーハを例に挙げて説明したものである。しかし、半導体ウェーハに限定されることはなく、たとえば、マスクガラス、液晶セル、記録媒体等であってもよいことはいうまでもない。
【0042】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0043】
100……基板収納容器、10……容器本体、20……蓋体、30……ロボティックフランジ、12A、12B……支持部、14……溝、15A、15B……案内レール、21……ガスケット、22……ラッチ機構、24……回転プレート、25A、25B……動力伝達プレート、26A、26B……ガイドピン、27A、27B……ガイド溝、28……係止孔、29……フロントリテーナ、29A……溝、32……ベース部、34……フランジ部、35A、35B、35C、35D……側壁部、36……溝、37……ポルト、39A、39B……貫通孔、40……凹部、41……リブ、50……サイドフォークリフトフランジ、52……平板、54……フランジ部、56……溝、58……螺子、59……貫通孔、W……基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送機構によって搬送可能な基板収納容器であって、
正面に形成された開口を通して基板を収納できる容器本体と、
この容器本体の前記開口を閉鎖する蓋体と、
前記容器本体の外周面の一部に前記搬送機構に把持される把持部と
前記把持部に設けられる1又は複数の指係止部と
を備えることを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
前記把持部は、前記容器本体の天面に取り付けられ、前記天面と対向して配置されるフランジ部と、このフランジ部の周辺に設けられ前記容器本体に対して直接あるいは間接的に固定される側壁部とからなるロボティックフランジからなり、前記指係止部は前記側壁部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の基板収納容器。
【請求項3】
前記把持部は、前記容器本体の天面に取り付けられ、前記天面と対向して配置されるフランジ部と、このフランジ部の周辺に設けられ前記容器本体に対して直接あるいは間接的に固定される側壁部とからなるロボティックフランジからなり、前記把持部には指係止部が形成され、前記指係止部は、前記フランジ部の前記側壁部に近接する個所に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の基板収納容器。
【請求項4】
前記把持部は、前記容器本体の左右側面のそれぞれに取り付けられ、前記容器本体の前後方向に延在するフランジ部からなるサイドフォークリフトフランジからなり、前記係止部は、前記フランジ部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の基板収納容器。
【請求項5】
前記把持部には指係止部が形成され、指係止部は、容器本体に収納される基板の中心位置から前記蓋体の方向にずれた位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の基板収納容器。
【請求項6】
前記指係止部は、貫通孔、凹部、リブのいずれかによって形成され、あるいはこれら貫通孔、凹部、リブの組み合わせによって形成されていることを特徴とする請求項3又は5に記載の基板収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−249372(P2011−249372A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117888(P2010−117888)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】