説明

基板実装装置及び基板実装方法

【課題】生産タクトが高く、しかも実装部品を実装基板に確実に接着できる基板実装装置と、この基板実装装置を用いた基板実装方法を得る。
【解決手段】実装基板14に実装される複数の実装部品16A、16B、16Cのそれぞれに対応させて分割された複数の基板側加熱部材24A、24B、24Cが基板保持部材20に設けられる。実装部品16を実装する部分でのみ基板側加熱部材24により熱硬化性樹脂18を加熱し、実装部品16が未だ実装されていない部分では熱硬化性樹脂18を硬化させないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実装基板に複数の実装部品を実装するための基板実装装置と、この基板実装装置を用いた基板実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
実装基板に複数の実装部品を実装する場合、実装部品を実装基板に接着するときの熱が、実際に接合する実装部品以外の領域以外に作用してしまうと、部品接着前の熱硬化性樹脂を不用意に硬化させてしまうおそれがある。
【0003】
たとえば特許文献1には、実装基板上に配置された半導体チップの裏面側からチップ搭載箇所を加熱する加熱支持ブロックを備え、加熱を行っていない半導体チップはノズルからのエアを吹付けて冷却するようにした半導体チップの実装方法及び装置が記載されている。
【0004】
しかし、特許文献1に記載の構成では、1つの実装部品を実装基板に接着した後、次の実装部品を実装基板に接着するために、実装基板を実装装置から一旦外し、実装位置に加熱支持ブロックが位置するようにセットしなおす必要があり、生産タクトの向上が求められる。
【0005】
特許文献2には、作製するチップモジュールの被実装体側と半導体装置側とが略同等の熱プロファイルとなるように加熱して、被実装体と半導体装置との間の熱硬化性樹脂を硬化させ、チップモジュールの反りを抑制した半導体装置の実装方法及び実装装置が記載されている。
【0006】
しかし、特許文献2に記載のように、被実装体側と半導体装置側とを略同等の熱プロファイルにすると、実際に接合する実装部品以外の領域に熱が作用し、熱硬化性樹脂を不用意に硬化させてしまうことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−274227号公報
【特許文献2】特開平9−219417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事実を考慮し、生産タクトが高く、しかも実装部品を実装基板に確実に接着できる基板実装装置と、この基板実装装置を用いた基板実装方法を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明では、熱硬化性材料が実装面に塗布されると共に該実装面に複数の実装部品が実装される実装基板を保持する基板保持部材と、前記基板保持部材に複数設けられ、前記実装面の裏面側から前記実装基板を通して前記熱硬化性材料を加熱する基板側加熱部材と、前記実装部品を保持し、前記基板側加熱部材で加熱される領域にある前記実装面の前記熱硬化性材料に前記実装部品を配置させる部品保持部材と、を有する。
【0010】
この基板実装装置では、実装基板が基板保持部材によって保持される。そして、部品保持部材によって保持された実装部品が基板保持部材に保持された実装基板の実装面に配置される。ここで、実装面の裏面側から実装基板を通して熱硬化性材料を加熱する基板側加熱部材は、基板保持部材に複数設けられている。したがって、実装部品が配置された部分の基板側加熱部材では、実装基板を通じて熱硬化性材料を加熱し硬化させることができる。すなわち、実装部品が配置された部分でのみ、実装基板を通じて熱硬化性材料を加熱により硬化させ、実装部品が配置されていない部分では熱硬化性材料の不用意な硬化を抑制できる。実際に実装部品を接着するときに、熱硬化性材料を硬化させることになるので、確実に接着できる。
【0011】
次の実装部品を実装基板に接着するときは、複数の基板側加熱部材のうち、熱硬化性材料の加熱に用いる基板側加熱部材を切り替えることで、次の実装部品を実装する部分の熱硬化性材料のみを加熱できる。実装基板を基板保持部材から一旦外してセットし直す手間を省略できるため、生産タクトが高くなる。
【0012】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記基板側加熱部材で加熱される加熱範囲が、複数の前記実装部品のそれぞれの実装される範囲に合わせて設定されている。
【0013】
すなわち、複数の実装部品をたとえばグループ化し、それぞれのグループごとに基板側加熱部材による加熱範囲を設定してもよいが、実装部品のそれぞれが実装される個別の範囲に合わせて加熱範囲を設定することで、個別の実装部品に対応して熱硬化性材料を硬化させて実装部品を接着することができ、実装部品が配置されていない部分における熱硬化性材料の硬化をより確実に抑制可能となる。
【0014】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記基板側加熱部材で加熱される加熱範囲の前記基板保持部材の伝熱係数が、それ以外の加熱範囲外の基板保持部材の伝熱係数よりも高い。
【0015】
これにより、加熱範囲内では熱硬化性材料を効率的に加熱すると共に、加熱範囲外への熱の伝わりを抑制することが可能になる。
【0016】
請求項4に記載の発明では、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記部品保持部材に設けられ、保持された前記実装部品を加熱する部品側加熱部材、を有する。
【0017】
したがって、部品側加熱部材により、実装部品側からも熱硬化性材料を加熱することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明では、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記基板側加熱部材が、レーザー光により加熱するレーザー加熱手段である。
【0019】
これにより、加熱範囲内の熱硬化性材料を集中的に加熱し、それ以外の範囲の熱硬化性材料を加熱することを抑制できる。
【0020】
請求項6に記載の発明では、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記基板側加熱部材が、赤外線により加熱する赤外線加熱手段である。
【0021】
これにより、簡単な構造で基板側加熱部材を構成できる。
【0022】
請求項7に記載の発明では、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の基板実装装置を用いて実装基板に実装部品を実装する基板実装方法であって、複数の前記基板側加熱部材のうち、前記部品保持部材によって前記実装部品が配置された領域の基板側加熱部材のみによって前記実装基板を通じて前記熱硬化性材料を加熱する。
【0023】
この基板実装方法では、部品保持部材によって実装部品が配置された領域の基板側加熱部材のみによって、実装基板を通じて熱硬化性材料を加熱して硬化させる。すなわち、実装部品が配置された部分でのみ、実装基板を通じて熱硬化性材料を加熱して硬化させ、実装部品が配置されていない部分では熱硬化性材料の不用意な硬化を抑制できる。実際に実装部品を接着するときに、熱硬化性材料を硬化させることになるので、確実に接着できる。
【0024】
そして、次の実装部品を実装基板に接着するときは、複数の基板側加熱部材のうち、熱硬化性材料の加熱に用いる基板側加熱部材を切り替えることで、次の実装部品を実装する部分の熱硬化性材料のみを加熱できる。実装基板を基板保持部材から一旦外してセットし直す手間を省略できるため、生産タクトが高くなる。
【0025】
請求項8に記載の発明では、請求項4に記載された基板実装装置を用いた請求項7に記載の基板実装方法であって、前記基板側加熱部材の加熱温度が、前記部品側加熱部材の加熱温度よりも低く設定されている。
【0026】
このように、基板側加熱部材の加熱温度を、部品側加熱部材の加熱温度よりも低く設定することで、基板側加熱部材から加熱範囲外へ作用する熱をより少なくすることができる。
【0027】
請求項9に記載の発明では、請求項4に記載された基板実装装置を用いた請求項7に記載の基板実装方法であって、前記基板側加熱部材の加熱温度が、前記部品側加熱部材の加熱温度と等しくなるように設定されている。
【0028】
このように、基板側加熱部材の加熱温度を、部品側加熱部材の加熱温度と等しくすることで、実装基板の反りを抑制することができる。しかも、基板側加熱部材の加熱温度を、部品側加熱部材の加熱温度と等しくしても、実装部品が配置された部分でのみ熱硬化性材料を加熱して硬化させるので、実装部品が配置されていない部分では熱硬化性材料を不用意に硬化させない、という本来的な効果を発揮させることができる。
【0029】
請求項10に記載の発明では、前記実装基板が、液体の流路となる複数の開口部が形成された液滴吐出ヘッド用の基板であり、この基板に対し前記請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載の基板実装方法によって実装部品を実装する。
【0030】
一般に、液滴吐出ヘッド用の基板では、液体の流路となる複数の開口部が高密度で近接して配置されることが多く、実装部品としても微細な構造のものが実装基板に対し高密度で近接して配置されることが多い。このような液滴吐出ヘッドの基板を実装基板として実装部品を実装する場合に、本発明を好ましく適用できる。
【発明の効果】
【0031】
本発明は上記構成としたので、生産タクトが高く、しかも実装部品を実装基板に確実に接着できる基板実装装置と、この基板実装装置を用いた基板実装方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】(A)は本発明の一実施形態の基板実装装置を、実装部品が実装された実装基板と共に示す正面図であり、(B)は基板実装装置を構成する基板保持部材を、実装部品が実装された実装基板と共に示す平面図である。
【図2】本発明の一実施形態の基板実装装置を用いて実装基板に実装部品を実装する基板実装方法の一部工程を概略的に示す正面図である。
【図3】本発明の一実施形態の基板実装装置を用いて実装基板に実装部品を実装する基板実装方法の一部工程を概略的に示す正面図である。
【図4】本発明の一実施形態の基板実装装置を用いて実装基板に実装部品を実装する基板実装方法の一部工程を概略的に示す正面図である。
【図5】本発明の一実施形態の基板実装装置の適用対象の一例であるインクジェット用基板を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明の一実施形態の基板実装装置12について、図1〜図4を参照しつつ説明する。この基板実装装置12は、実装基板14に対し、複数の実装部品16を実装するために用いられる。
【0034】
図1(A)および(B)に示すように、実装基板14としては、たとえば、プリント配線基板、樹脂基板、ガラス基板、シリコン基板、フレキシブル基板等が本発明の適用対象である。実装基板14の形状も特に限定されるものではないが、本実施形態では、図1(B)にも示すように、実装基板14として、平面視して長方形状に形成されたものを挙げている。
【0035】
また、実装部品16としては、例えば、電子部品、半導体素子、集積回路(IC)、センサ等が本発明の適用対象であるが、本実施形態では、図1(B)にも示すように、平面視して略長方形状あるいは略正方形状に形成されたもの(たとえば集積回路がこれに該当する)を挙げている。なお、このような実装部品16がすでに実装された実装基板14をあらためて実装部品として用い、この実装基板14をさらに他の実装基板14に実装する場合にも、本発明の基板実装装置12を用いることができる。
【0036】
実装基板14の一方の面は実装面14Aとされている。実装面14Aには、熱硬化性樹脂18が貼付されており、この 熱硬化性樹脂18を接着剤として利用して、実装部品16が実装基板14に接着される。なお、熱硬化性樹脂18は本発明に係る熱硬化性材料の一例であり、より具体的には、エポキシ等の熱硬化性樹脂を用いることができる。また、本発明の熱硬化性材料としては、この他にも、はんだ等の金属、あるいは、このような金属と上記したエポキシ等の熱硬化性樹脂との混合物を用いることができる。また、熱硬化性材料の形態としては、たとえば、液状、ペースト状、ゲル状、フィルム状等を挙げることができる。これらの熱硬化性材料は、その粘度やその他の物性に合わせて、各種の塗布方法により実装面14Aに塗布できる。本実施形態では、あらかじめテープ状(薄膜状)に形成した異方性導電膜を用い、これを実装面14Aに貼り付けている。
【0037】
また、本実施形態では、実装基板14の幅方向(矢印W方向)に接近させて、3つの実装部品16A、16B、16Cを実装する例を挙げている。本発明は、1枚の実装基板14に対し複数の実装部品16が接着される場合に適用されるものであり、実装部品16の数は、複数であれば特に限定されない。
【0038】
図1(A)及び(B)に示すように、基板実装装置12は、実装基板14を保持する基板保持部材20を有している。実装基板14は、基板保持部材20上に、実装面14Aが上になるように保持される。基板保持部材20には、図示しない保持機構が備えられており、実装基板14をずれたり変形したりしないように保持することができる。保持機構としては、実装基板14を確実に保持できればその構成は特に限定されず、吸盤や噛合機構等を用いることができる。
【0039】
基板保持部材20は、保持された実装基板14の実装面14Aに実装部品16A、16B、16Cが実装される3箇所の実装位置22A、22B、22Cが設定されている。また、基板保持部材20には、これらの実装位置22A、22B、22Cに合わせて、3つの基板側加熱部材24A、24B、24Cが幅方向(矢印W方向)に並べて備えられている。換言すれば、実装基板14の下面(実装面14Aの反対面)の略全域に亘って配置されるべき基板側加熱部材が、3つの基板側加熱部材24A、24B、24Cに分割された構成である。これらの基板側加熱部材24は、図示しない制御装置で加熱制御されるようになっており、それぞれ独立して、実装基板14の対応する実装位置22A、22B、22Cにおける熱硬化性樹脂18を加熱することができる。実質的に、実装位置22A、22B、22Cのそれぞれが、本発明における加熱範囲となっている。
【0040】
基板保持部材20は、基板側加熱部材24A、24B、24Cによって実装基板14を加熱する範囲である加熱範囲内領域26(実質的に、実装位置22A、22B、22Cのそれぞれにおける、基板側加熱部材24A、24B、24Cと実装基板14の間の部分)では、相対的に伝熱係数の大きい部材で構成されているが、これらの加熱範囲の外部の領域である加熱範囲外領域28(たとえば基板側加熱部材24A、24B、24Cの周囲や、基板側加熱部材24A、24B、24Cの間の領域)では、相対的に伝熱係数の小さい材料で構成されている。これにより、基板側加熱部材24A、24B、24Cのいずれかで熱硬化性樹脂18を加熱するとき、このように加熱している範囲の外部(熱硬化性樹脂18を不用意に硬化させたくない部分)への熱の伝わりを抑制することができる。
【0041】
基板保持部材20には、後述するように、実装基板14に対する実装部品16の位置合わせを容易且つ正確にするために、所定のアライメントマーク(図示省略)が設けられている。
【0042】
さらに、基板実装装置12は、実装部品16を保持すると共に、実装部品16ごとに決まられた所定の実装位置22A、22B、22Cのいずれかへ搬送可能な部品保持部材30を有している。所定の図示しない待機位置で待機された実装部品16は、接続端子16Tが下になるように部品保持部材30で保持され、実装部品ごとに決められた所定の実装位置22A、22B、22Cのいずれかにセットされる(図2〜図4参照)。部品保持部材30にも、図示しない保持機構が備えられており、実装部品16を保持する。保持機構としては、実装部品16を確実に保持できれば、その構成は特に限定されず、吸盤等の吸着機構や噛合機構等を用いることができる。
【0043】
部品保持部材30には、部品側加熱部材32が備えられている。部品側加熱部材32も、図示しない制御装置によって加熱制御されるようになっており、保持された実装部品16を、基板側加熱部材24から独立して加熱することができる。
【0044】
部品保持部材30には、基板保持部材20のアライメントマークに対応する所定のアライメントマーク(図示省略)が設けられている。
【0045】
次に、本実施形態の基板実装装置12を用いて、実装基板14に実装部品16を実装する基板実装方法及び、基板実装装置12の作用を説明する。
【0046】
まず、実装基板14及び実装部品16を用意する。そして、実装基板14の実装面14Aに対し、未硬化の熱硬化性樹脂18をあらかじめ貼付する。本実施形態では上記したように、テープ状の熱硬化性樹脂18を用いており、貼付後は不用意にはがれないように、硬化温度よりも低温で加熱して(必要に応じて、さらに加圧して)半硬化させている。なお、半硬化後は冷却してもよい。
【0047】
そして、図2に示すように、基板保持部材20で実装基板14を保持させると共に、部品保持部材30で、最初の実装部品16Aを保持させる。この状態で、部品保持部材30を駆動して、実装部品16Aを、対応する実装位置22Aへ移動させ、実装部品16Aと実装基板14との位置合わせを行う(位置合わせ工程)。具体的には、実装部品16Aが実装基板14から離間した所定の高さを維持した状態で、図2に示す矢印W方向へと実装部品16Aを移動させて位置あわせする。このとき、部品保持部材30に設けられたアライメントマークと、基板保持部材20に設けられたアライメントマークとを、図示しない画像認識装置等を用いて認識することで、位置あわせを容易に且つ正確に行うことができる。位置合わせにより、実装部品16Aが対応する実装位置22Aに至ると、実装部品16Aを矢印D方向へ降下させる。これにより、実装部品16Aが、対応する実装位置22Aに配置される。なお、部品保持部材30に代えて基板保持部材20を移動させてもよいし、部品保持部材30と基板保持部材20の双方を移動させてもよい。
【0048】
ついで、実装基板14に対し実装部品16を仮接着する(仮接着工程)。すなわち、実装部品16Aが配置された実装位置22Aの基板側加熱部材24Aにより、熱硬化性樹脂18を硬化温度以下の温度に加熱し、熱硬化性樹脂18を部分的に半硬化させる。これにより、実装部品16Aが実装基板14に仮接着され、不用意に位置ズレしなくなる。ただし、この状態では熱硬化性樹脂18は完全には硬化していないので、実装部品16Aの位置を微調整することも可能である。なお、仮接着の際には、熱硬化性樹脂18を介して、実装部品16Aを部品保持部材30により加圧してもよい。また、仮接着後は、熱硬化性樹脂18を冷却してもよい。
【0049】
このようにして、実装基板14に対する実装部品16Aの位置合わせ及び仮接着が行われる。但し、これらの位置合わせ工程及び仮接着工程を行うことなく、以下の本接着工程を行い、実装基板14に実装部品16Aを実装することも可能である。
【0050】
その後、実装基板14に対し実装部品16Aを本接着する。すなわち、実装部品16Aが仮接着された実装位置22Aの基板側加熱部材24Aにより、熱硬化性樹脂18を硬化温度以上の温度に加熱する。また、部品側加熱部材32からも熱硬化性樹脂18を硬化温度以上の温度に加熱する。これにより、熱硬化性樹脂18が硬化され、実装部品16Aが所定の実装位置22Aに本接着され、実装される。このとき、実装部品16Aを本接着しない実装位置22B、22Cの基板側加熱部材24B、24Cは、全く加熱を行わなくてもよいが、本実施形態では、熱硬化性樹脂18の硬化温度以下の温度で加熱することで、実装基板14に反りが発生することを抑制している。
【0051】
これにより、実装基板14に対し実装部品16Aが接続されて接続部34が構成された状態で、硬化した熱硬化性樹脂18によって実装部品16が実装基板14上に固定される。なお、ここでいう接続には、たとえば実装部品16Aが上記した集積回路や、その他の電気部品である場合には、電気的に接続されていること(通電可能になっている)を意味するが、絶縁部材の場合には、これらが分離不能に結合されていることをいう。また、後述するように、インクジェット用基板の場合には、流路を構成する開口部どうしが互いに連通するような接続であってもよい。
【0052】
以降は、上記と同様の工程を繰り返すことにより、図4に示すように、次の実装部品16Bを、対応する実装位置22Bに対して実装する。さらに、図4に二点鎖線で示すように、最後の実装部品16Cを、対応する実装位置22Cに対し実装する。このようにして、予定されていた全ての実装部品16が実装基板14の所定の実装位置22にそれぞれ実装されて、最終的な基板が得られる。
【0053】
以上の説明から分かるように、本実施形態に係る基板実装装置12では、複数の実装基板14を実装するそれぞれの実装位置22に対応させて、平面視にて複数に分割された基板側加熱部材24を有する構成としている。そして、この基板実装装置12を用いた基板実装方法では、個々の実装部品16を実装する実装位置22でのみ基板側加熱部材24により熱硬化性樹脂18を硬化温度以上に加熱し、それ以外の基板側加熱部材24では、硬化温度以下に加熱する(加熱しない場合も含む)している。これにより、実装部品16が配置されていない部分の熱硬化性樹脂18を不用意に硬化させず、未硬化の状態を維持できる。このため、未硬化の熱硬化性樹脂18の部分に実装部品16を実装する際に、確実に熱硬化性樹脂18を硬化させて接着させ、実装することができる。
【0054】
上記の基板実装方法において、実装部品16を実装基板14に実装(本接着)する際の、基板側加熱部材24及び部品側加熱部材32の加熱温度は、要するに熱硬化性樹脂18を硬化させることができれば特に制限はない。たとえば、熱硬化性樹脂18として硬化温度180℃の異方性導電膜を使用した場合、部品側加熱部材32の加熱温度を300℃、基板側加熱部材24の加熱温度を80℃に設定すれば、熱硬化性樹脂18の温度を180℃に到達させることが可能である。また、部品側加熱部材32と基板側加熱部材24とで、加熱温度にこのような大きな差がない場合でも、基板側加熱部材24の加熱温度を、部品側加熱部材32の加熱温度よりも低くしておけば、未硬化の熱硬化性樹脂18を基板側加熱部材24からの熱で不用意に硬化させてしまう事態を回避可能となる。しかし、本実施形態では、基板側加熱部材24の加熱温度と、部品側加熱部材32の加熱温度とを同程度(たとえば、180℃)にした場合でも、基板側加熱部材24の熱によって、未硬化の熱硬化性樹脂18を不用意に硬化させないようにすることが可能である。そして、基板側加熱部材24の加熱温度と、部品側加熱部材32の加熱温度とを同程度とする(あるいは、温度差を従来よりも小さくする)ことで、実装基板14の反りや変形を抑制することが可能となる。
【0055】
なお、未硬化の熱硬化性樹脂18を不用意に硬化させないようにすると共に、実際に実装部品16を実装するときには確実に硬化させるためには、以下に示す各種の基板実装方法も考えられる。しかし、本実施形態では、これらの基板実装方法に対して、以下に示す各種の優れた効果を有する。
【0056】
たとえば、熱硬化性樹脂を、個別の実装位置(図1(B)に示した例では実装位置22A、22B、22C)ごとに分割し、個別の実装位置への熱硬化性樹脂の貼付と実装部品16の実装とを、順次繰り返して行う基板実装方法が考えられる。この方法では、実装部品16が未だ接着されていない部分では、熱硬化性樹脂も貼付されていないので、不用意に熱硬化性樹脂が効果することはない。しかし、この方法では、熱硬化性樹脂を個別に複数回貼付する必要があり、熱硬化性樹脂を貼付する工程と、実装部品16を実装する工程とを繰り返し行う必要が生じる。本実施形態では、熱硬化性樹脂18を貼着する工程が少なくて済み(実質的には1回で十分である)、工程の繰り返しや後戻りの回数を抑制できるので、生産タクトが向上する。特に、実装位置22A、22B、22Cがライン状になっている場合に、熱硬化性樹脂18としてテープ状フィルムとされたものを用いると、ライン毎に一度に熱硬化性樹脂18を貼付でき、特に生産タクトが向上する。
【0057】
また、基板保持部材に単一の基板側加熱部材を設けた構成では、1つの実装部品を実装した後、次の実装部品を実装する場合い、実装基板を一度実装基板を基板保持部材から取り外して、別の位置で再度保持させる必要がある。本実施形態では、基板保持部材20から実装基板14を取り外すことなく、複数の実装部品16を実装基板14に順に実装できるので、生産タクトが向上する。
【0058】
特に、1つの実装部品を実装する間に、他の実装位置における熱硬化性樹脂を冷却する構成では、実装部品と実装基板との間の実装時の温度差に起因する線膨張量差により、実装基板に反りが発生するおそれがある。このように反りが発生した実装基板を、基板保持部材に保持させると、実装基板の反りによる残留応力が、既に実装された実装部品に対し接合を剥がす方向に作用してしまう。しかし、本実施形態では、このような実装基板14の反りを抑制でき、しかも、基板保持部材20から実装基板14を取り外して再度保持させる必要すらないので、実装部品16の剥がれを抑制できる。たとえば、前述のように、基板側加熱部材24の加熱温度と、部品側加熱部材32の加熱温度をいずれも、180℃)にした場合には、実装基板14の反りや変形を抑制することが可能となる。
【0059】
このように、本実施形態では、熱硬化性樹脂18の多数回の貼着や、基板保持部材20からの実装基板14の取り外しといった、生産タクトを低下させる要因が無いため、生産タクトを高く維持しつつ、未接合部分における熱硬化性樹脂18の不用意な硬化や実装基板14の反りを抑制して、実装基板14の実装不良や信頼性低下を抑制することが可能となる。
【0060】
本実施形態において、適用対象となる実装基板14の具体的構成は特に限定されないが、たとえば図5に示すような、インクジェット記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)を構成するインクジェット用基板52に、好ましく適用できる。このインクジェット用基板52は、実装基板14に相当する基板本体54に、インク吐出口あるいはインク流路の一部を構成する複数の開口部58が高密度で形成されている。また、基板本体54には、実装部品16の一例である複数の集積回路56が、互いに接近した位置で実装されている。このインクジェット用基板52において、開口部58がインク吐出口として用いられる場合、インクの吐出エネルギーを付与するための駆動素子(ピエゾ素子や発熱素子等)を備えた駆動部が、集積回路56によって駆動制御される。
【0061】
このようなインクジェット用基板52では、集積回路56の間隔が狭いため、実装時には、1つの集積回路56を実装しているときに、他の集積回路56を実装するための熱硬化性樹脂18(図1(A)等を参照)に熱が伝わりやすい。したがって、複数の集積回路56等が高密度で互いに接近して実装されるインクジェット用基板52に、本発明を好ましく適用できる。
【0062】
また、本発明において、基板側加熱部材24の形状及び配置は、それぞれの実装部品16の実装位置22に個別に対応した形状及び配置とされている必要はない。すなわち、実装部品16が3つ以上の場合には、これらの実装部品16を複数の部品グループに分け、これらのグループごとに対応した、基板側加熱部材24の形状及び配置としてもよい。この構成では、1つの部品グループの実装部品16は同時に実装され、他の部品グループに対応する実装位置では、基板側加熱部材24からの熱で熱硬化性樹脂18が不用意に硬化しない構成とすることができる。前述の実施形態のように、実装部品16のそれぞれに対応して、基板側加熱部材24の形状及び配置しておけば、個別の実装部品16に対応して実装できると共に、それ以外の実装位置22の熱硬化性樹脂18を硬化させないので、より好ましい。
【0063】
基板側加熱部材24の具体的構成は特に限定されないが、レーザーの照射によって加熱するレーザー加熱手段を用いれば、実装部品16を実装する加熱範囲内、すなわち熱硬化性樹脂18を硬化させたい範囲内のみを集中的に加熱し、加熱範囲外の熱硬化性樹脂18を不用意に加熱することを抑制できる。また、赤外線の照射によって加熱する赤外線加熱手段を用いれば、簡単な構造で基板側加熱部材24を構成できる。
【0064】
基板側加熱部材24の加熱温度も、熱硬化性樹脂18を硬化させることが可能であればよく、たとえば、熱硬化性樹脂18のガラス転移点Tg以上とすれば、熱硬化性樹脂の場合はより確実の硬化させることができる。ただし、あまりに高くしても、過分のエネルギーを消費してしまうことになる。一例として熱硬化性樹脂18を異方性導電膜を用いた場合には、150℃以上260℃以下とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0065】
12 基板実装装置
14 実装基板
14A 実装面
16 実装部品
18 熱硬化性樹脂
20 基板保持部材
22 実装位置
24 基板側加熱部材
26 加熱範囲内領域
28 加熱範囲外領域
30 部品保持部材
32 部品側加熱部材
34 接続部
52 インクジェット用基板
54 基板本体
56 集積回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性材料が実装面に塗布されると共に該実装面に複数の実装部品が実装される実装基板を保持する基板保持部材と、
前記基板保持部材に複数設けられ、前記実装面の裏面側から前記実装基板を通して前記熱硬化性材料を加熱する基板側加熱部材と、
前記実装部品を保持し、前記基板側加熱部材で加熱される領域にある前記実装面の前記熱硬化性材料に前記実装部品を配置させる部品保持部材と、
を有する基板実装装置。
【請求項2】
前記基板側加熱部材で加熱される加熱範囲が、複数の前記実装部品のそれぞれの実装される範囲に合わせて設定されている請求項1に記載の基板実装装置。
【請求項3】
前記基板側加熱部材で加熱される加熱範囲の前記基板保持部材の伝熱係数が、それ以外の加熱範囲外の基板保持部材の伝熱係数よりも高い請求項1又は請求項2に記載の基板実装装置。
【請求項4】
前記部品保持部材に設けられ、保持された前記実装部品を加熱する部品側加熱部材、
を有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の基板実装装置。
【請求項5】
前記基板側加熱部材が、レーザー光により加熱するレーザー加熱手段である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の基板実装装置。
【請求項6】
前記基板側加熱部材が、赤外線により加熱する赤外線加熱手段である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の基板実装装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の基板実装装置を用いて実装基板に実装部品を実装する基板実装方法であって、
複数の前記基板側加熱部材のうち、前記部品保持部材によって前記実装部品が配置された領域の基板側加熱部材のみによって前記実装基板を通じて前記熱硬化性材料を加熱する基板実装方法。
【請求項8】
請求項4に記載された基板実装装置を用いた請求項7に記載の基板実装方法であって、
前記基板側加熱部材の加熱温度が、前記部品側加熱部材の加熱温度よりも低く設定されている基板実装方法。
【請求項9】
請求項4に記載された基板実装装置を用いた請求項7に記載の基板実装方法であって、
前記基板側加熱部材の加熱温度が、前記部品側加熱部材の加熱温度と等しくなるように設定されている基板実装方法。
【請求項10】
前記実装基板が、液体の流路となる複数の開口部が形成された液滴吐出ヘッド用の基板であり、この基板に対し前記請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載の基板実装方法によって実装部品を実装する基板実装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−199184(P2011−199184A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66789(P2010−66789)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】