説明

基板搬送装置及び基板搬送方法

【課題】基板面積、或いは基板の厚さ寸法に拘わらず、基板面の平坦性を維持しながら搬送する。
【解決手段】基板保持手段7は、基板Gの幅方向両端において、該基板の下面を吸着保持する吸着部材7aと、前記吸着部材を前記基板の幅方向外側に引張る引張り手段7e、7f、7gとを備え、浮上ステージ2上に浮上する前記基板は、その幅方向両端の下面が前記吸着部材により吸着保持され、且つ、前記引張り手段により幅方向両端が幅方向外側に引張られた状態で、基板搬送手段6により搬送される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理基板を浮上させた状態で平流し搬送する基板搬送装置及び基板搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、FPD(フラットパネルディスプレイ)の製造においては、いわゆるフォトリソグラフィ工程により回路パターンを形成することが行われている。
具体的には、ガラス基板等の被処理基板に所定の膜を成膜した後、処理液であるフォトレジスト(以下、レジストと呼ぶ)を塗布してレジスト膜を形成し、回路パターンに対応してレジスト膜を露光し、これを現像処理するものである。
【0003】
ところで近年、このフォトリソグラフィ工程では、スループット向上の目的により、被処理基板を略水平姿勢の状態で搬送しながら、その被処理面に対しレジストの塗布、乾燥、加熱、冷却処理等の各処理を施す構成が多く採用されている。
前記基板搬送の構成としては、基板支持部材のレジスト塗布面への転写を防止するため、基板を略水平姿勢の状態で所定の高さに浮上させ、基板搬送方向に搬送する浮上搬送が注目されている。
【0004】
この浮上搬送を用いた基板搬送装置は、例えばレジスト塗布処理装置に採用されている。その一般的な構成について図10に基づいて説明する。
例えば、図10の基板搬送装置200は、被処理基板であるLCD基板(液晶ディスプレイ基板)Gを浮上搬送するための浮上ステージ201と、浮上ステージ201の左右両側に敷設された一対のレール202と、基板Gの左右両側を保持し、レール202上をスライド移動するスライダ203とを備えている。
【0005】
また、浮上ステージ201上で浮上搬送されるLCD基板Gの表面にレジスト液を供給するレジストノズル204を備え、このレジストノズル204には、基板幅方向に長いスリット状の吐出口(図示せず)が設けられている。
また、浮上ステージ201の前段及び後段には、複数の搬送コロ206,207が回転可能に設けられ、基板Gは搬送コロ206によって浮上ステージ201に搬入され、浮上搬送後の基板Gは前記搬送コロ207によって搬出される構成となされている。
【0006】
また、浮上ステージ201の上面には、上方(Z方向)に向かって不活性ガスを噴射するための多数のガス噴射孔201aと、吸気を行うための多数の吸引孔201bとが夫々、X方向とY方向に一定間隔で交互に設けられている。そして、ガス噴射孔201aから噴射されるガス噴射量と吸引孔201bからの吸気量との圧力負荷を一定とすることによって、基板Gを浮上ステージ201の表面から一定の高さに浮上させるように構成されている。
【0007】
この構成により、レジスト液の塗布処理に際しては、搬送コロ206によって浮上ステージ201に搬入された基板Gは、レール202上をスライド移動するスライダ203により左右両端が保持され、X軸方向に移動する。そして、基板Gがレジストノズル204の下方を移動する際、スリット状の吐出口(図示せず)よりレジスト液が帯状に供給され、レジスト液が基板Gに塗布される。
尚、被処理基板を浮上搬送しながら塗布処理を行う装置については特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−132422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、近年にあっては、被処理基板の大型化、及び薄型化が要求されている。
しかしながら、従来の装置構成を、単に大型化した基板面積、或いは薄くなされた基板厚さに合わせても、浮上ステージ201での基板搬送において不具合が生じる虞があった。
具体的には、基板面積に対する厚さが所定値よりも薄い基板Gを浮上ステージ201において浮上させた場合、ガス噴射孔201aからのガス噴射とガス吸引孔201bからのガス吸引とによって、基板面が波打つように凹凸状の撓みが生じるという課題があった。
【0010】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、被処理基板を浮上させた状態で平流し搬送する基板搬送装置において、基板面積、或いは基板の厚さ寸法に拘わらず、基板面の平坦性を維持しながら搬送することができる基板搬送装置及び基板搬送方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記した課題を解決するために、本発明に係る基板搬送装置は、基板搬送路を形成すると共に、上面に形成された複数のガス噴射孔からのガス噴射と複数のガス吸引孔からのガス吸引との圧力負荷により被処理基板を浮上させる浮上ステージと、前記浮上ステージ上に浮上する前記基板の幅方向両端を前記浮上ステージの両側から保持する少なくとも一対の基板保持手段と、前記基板保持手段を基板搬送路に沿って移動させることにより前記基板を平流し搬送する基板搬送手段とを具備する基板搬送装置であって、前記基板保持手段は、前記基板の幅方向両端において、該基板の下面を吸着保持する吸着部材と、前記吸着部材を前記基板の幅方向外側に引張る引張り手段とを備え、前記浮上ステージ上に浮上する前記基板は、その幅方向両端の下面が前記吸着部材により吸着保持され、且つ、前記引張り手段により幅方向両端が幅方向外側に引張られた状態で、前記基板搬送手段により搬送されることに特徴を有する。
【0012】
尚、前記浮上ステージ上に浮上する前記基板の撓み量が所定値以上か否かを検出する撓み検出手段と、前記撓み手段の検出結果に基づき前記引張り手段の駆動制御を行う制御手段とを備え、前記制御手段は、前記基板の撓み量が所定値以上である検出結果が前記撓み検出手段から入力された場合に、前記引張り手段を駆動し、前記吸着部材を前記基板の幅方向外側に引張るよう制御することが望ましい。
その場合、前記吸着部材は、前記基板保持手段において基板幅方向に沿って摺動自在に設けられ、前記引張り手段は、前記吸着部材の基板幅方向外側に接続されたワイヤと、前記基板保持手段において回転自在に設けられ、前記ワイヤを巻き取り可能な巻き取りロールと、前記巻き取りロールの回転を駆動する回転駆動部とを有し、前記制御手段は、前記基板の撓み量が所定値以上である検出結果が前記撓み検出手段から入力された場合に、前記回転駆動部を駆動し、前記吸着部材が基板幅方向外側に摺動するよう制御することが望ましい。
【0013】
或いは、前記引張り手段は、前記浮上ステージの左右両側に敷設された一対のガイドレールを有し、前記一対のガイドレールは、基板搬送方向に沿って、そのガイドレール間の幅寸法が徐々に拡張するように設けられ、前記基板保持手段は前記ガイドレールに沿って移動自在に設けられ、前記基板の幅方向両端を前記吸着部材により吸着保持する前記基板保持手段が前記一対のガイドレールに沿って移動することにより、該基板の幅方向両端が幅方向外側に引張られた状態となされるように構成してもよい。
その場合、前記吸着部材は、前記基板保持手段において基板幅方向に沿って摺動自在に設けられ、前記基板保持手段は、前記吸着部材により吸着される前記基板の両端が基板幅方向外側に引っ張られた際に、該吸着部材に対し基板幅方向内側に向けて付勢力を与える緩衝部材を有することが望ましい。
【0014】
或いは、前記基板保持手段は、前記吸着部材に接続されて、該吸着部材と前記基板との接触領域の空気を吸引する吸引手段を備え、前記引張り手段は、シリンダと、前記シリンダに対し基板幅方向に沿って摺動自在に設けられた中空のピストンとを有し、前記吸着部材は、前記ピストン上に設けられると共に、前記シリンダと前記ピストンとにより形成される内部空間を介して前記吸引手段と連通し、前記吸着部材が前記基板の下面に吸着することにより、前記シリンダと前記ピストンとにより形成される内部空間の容積が収縮され、該吸着部材が基板幅方向外側に移動されるように構成してもよい。
その場合、前記シリンダと、該シリンダに対し摺動自在に設けられたピストンとの間には、前記吸着部材が基板幅方向外側に移動された際に、該吸着部材に対し基板幅方向内側に向けて付勢力を与える緩衝部材を有することが望ましい。
【0015】
このような構成によれば、ガス噴出と吸引との圧力負荷により基板の浮上搬送を行う浮上ステージにおいて、前記引張り手段により、基板の幅方向両端が幅方向外側に引張られながら搬送される。これにより、基板における凹凸状の撓みを補正することができる。
即ち、基板面積、或いは基板の厚さ寸法に拘わらず、基板の平坦性を維持した状態で所定の基板処理を行うことができる。
【0016】
また、前記した課題を解決するために、本発明に係る基板搬送方法は、基板搬送路を形成すると共に、上面に形成された複数のガス噴射孔からのガス噴射と複数のガス吸引孔からのガス吸引とにより形成された気流により被処理基板を浮上させ、前記浮上ステージ上に浮上する前記基板の幅方向両端を前記浮上ステージの両側から保持した状態で、該基板を基板搬送路に沿って平流し搬送する基板搬送方法であって、前記浮上ステージ上に浮上する前記基板における幅方向両端の下面を吸着部材により吸着保持し、且つ、該基板の幅方向両端を幅方向外側に引張った状態で、該基板を基板搬送路に沿って搬送することに特徴を有する。
【0017】
このような方法によれば、ガス噴出と吸引との圧力負荷により基板の浮上搬送を行う浮上ステージにおいて、基板の幅方向両端が幅方向外側に引張られながら搬送される。これにより、基板における凹凸状の撓みを補正することができる。
即ち、基板面積、或いは基板の厚さ寸法に拘わらず、基板の平坦性を維持した状態で所定の基板処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、被処理基板を浮上させた状態で平流し搬送する基板搬送装置において、基板面積、或いは基板の厚さ寸法に拘わらず、基板面の平坦性を維持しながら搬送することができる基板搬送装置及び基板搬送方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明にかかる第一の実施形態の全体概略構成を示す平面図である。
【図2】図2は、図1のレジスト塗布処理ユニット(基板搬送装置)のA−A矢視断面図である。
【図3】図3は、図1のレジスト塗布処理ユニット(基板搬送装置)の動作を説明するためのフローである。
【図4】図4は、基板に生じた凹凸状の撓みを説明するための断面図である。
【図5】図5は、図4の凹凸状の撓みを補正した状態を説明するための断面図である。
【図6】図6は、本発明にかかる第二の実施形態の全体概略構成を示す平面図である。
【図7】図7は、図6のレジスト塗布処理ユニット(基板搬送装置)のB−B矢視断面図である。
【図8】図8は、図6のレジスト塗布処理ユニットにおいて、塗布処理部を搬送される状態を説明するための平面図である。
【図9】図9は、本発明にかかる第三の実施形態の基板保持部の構成を説明するための断面図である。
【図10】図10は、従来の基板搬送装置(レジスト塗布処理ユニット)の概略構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の基板搬送装置にかかる第一の実施形態を、図面に基づき説明する。尚、この実施形態にあっては、本発明に係る基板搬送装置が、被処理基板であるガラス基板を浮上搬送しながら、前記基板に対し処理液であるレジスト液の塗布処理を行うレジスト塗布処理ユニットにおいて適用される場合を例にとって説明する。
図1は、本発明の基板搬送装置が適用されるレジスト塗布ユニットの平面図であり、図2は、図1のA−A矢視断面図である。
【0021】
図1、図2に示すように、このレジスト塗布処理ユニット1は、ガラス基板Gを枚様式に一枚ずつ浮上搬送するための浮上ステージ2(基板搬送路)を備え、基板Gが所謂平流し搬送されるように構成されている。
浮上ステージ2は、基板搬送方向(X軸方向)に沿って、基板搬入部2Aと、塗布処理部2Bと、基板搬出部2Cとが順に配置され構成されている。基板搬入部2A及び基板搬出部2Cの上面には、図1に示すように多数のガス噴射孔2aがX方向とY方向に一定間隔で設けられ、ガス噴射孔2aからの不活性ガスの噴射による圧力負荷によって、ガラス基板Gを浮上させている。
【0022】
また、塗布処理部2Bの上面には、多数のガス噴射孔2aとガス吸引孔2bとがX方向とY方向に一定間隔で交互に設けられている。そして、この塗布処理部2Bにおいては、ガス噴射孔2aからの不活性ガスの噴射量と、ガス吸引孔2bからの吸気量との圧力負荷を一定とすることによって、ガラス基板Gをよりステージに近接させた状態で浮上させている。
【0023】
また、浮上ステージ2の幅方向(Y軸方向)の左右側方には、X軸方向に平行に延びる一対のガイドレール5が設けられている。
各ガイドレール5には、基板搬送方向(X軸方向)に移動可能に取り付けられたスライダ6(基板搬送手段)がそれぞれ複数(図では5台づつ)設けられている。各スライダ6には、ガラス基板Gの端部を下方から吸着保持する基板保持部7(基板保持手段)が設けられ、基板両側の計10台の基板保持部7により基板Gの幅方向両端部が保持されている。また、各スライダ6は、コンピュータからなる制御部40(制御手段)によって、その駆動が制御される。
【0024】
各基板保持部7は、図2に示すように、基板Gの下面に対し吸引動作により吸着可能な吸着部材7aと、吸着部材7aをスライダ6上に立設された支柱7bに沿って昇降移動させる昇降部材7cとを有する。更に、昇降部材7c上には、基板幅方向に沿ってガイド部材7dが設けられ、このガイド部材7dに沿って前記吸着部材7aが摺動自在に設けられている。
尚、吸着部材7aには、吸引ポンプ(図示せず)が接続され、基板Gとの接触領域の空気を吸引して真空状態に近づけることにより、基板Gに吸着するようになされている。
また、前記昇降部材7cと前記吸引ポンプとは、図2に示すように制御部40によって駆動制御される。
【0025】
また、前記昇降部材7cにおいて、前記吸着部材7aには、ワイヤ7eが接続され、このワイヤ7eがサーボモータ7f(回転駆動部)の駆動により巻き取りロール7gに所定長さ分を巻き取られることによって、吸着部材7aがガイドレール7dに沿って基板幅方向外側(図中矢印方向)に移動するようになされている。
尚、前記ワイヤ7eと前記巻き取りロール7gと前記サーボモータ7fとにより引張り手段が構成されている。また、前記サーボモータ7fは図2に示すように制御部40によって駆動制御される。
【0026】
また、支柱7b側に設けられたガイドレール7dの端部と前記吸着部材7aとの間には、前記ガイドレール7dに沿って戻りバネ7hが設けられ、吸着部材7aに対し基板幅方向内側に向けて戻りバネ7hの付勢力が与えられている。
これにより、サーボモータ7fの駆動が解除された際に、戻りバネ7hの付勢力により吸着部材7aが元の位置(基板幅方向内側)に戻されるように構成されている。
【0027】
また、昇降部材7cの先端(図ではガイドレール7dの先端)には、正面に対向する基板保持部7を対として、一方に所定波長の光照射を行う投光器8aが設けられ、他方に前記投光器8aから照射された光を受光する受光器8bが設けられている。受光器8bが検出した光信号は、電気信号に変換され、制御部40に入力されるようになっている。前記投光器8aと受光器8bとにより撓み検出センサ8(撓み検出手段)が構成されている。
【0028】
この撓み検出センサ8を設けることにより、基板Gの撓み量が所定値以上か否かを検出することができる。即ち、ガス噴射孔2aからの不活性ガスの噴射とガス吸引孔2bからの吸気とにより基板Gに大きな凹凸状の撓みが生じた場合、凹状に撓んだ部位が前記投光器8aから照射された光を遮る。これにより、受光器8bの受光量が大きく落ち込むため、その受光量(電気信号の大きさ)に所定の閾値を設定すれば、制御部40は、基板Gの撓み量が所定値以上か否かを検出することができる。
【0029】
また、図1に示すように塗布処理部2Bの上方には、基板Gにレジスト液を吐出するノズル11が設けられている。ノズル11は、基板幅方向(Y方向)に向けて長い略直方体形状に形成され、基板幅よりも長く形成されている。
また、図2に示すようにノズル11の下端部には、スリット状の吐出口(図示せず)が形成され、このノズル11には、レジスト液供給源(図示せず)からレジスト液が供給され、基板Gへの塗布処理時において前記吐出口からレジスト液が吐出されるようになされている。
尚、ノズル11は、基板Gへの塗布処理時において、昇降手段(図示せず)によって下降移動され、その吐出口が基板面に近接される構成となっている。
【0030】
続いて、このように構成されたレジスト塗布処理ユニット1における基板搬送の一連の流れについて図3を用いて説明する。
レジスト塗布処理ユニット1において、基板搬入部2Aに搬入されたガラス基板Gは、その幅方向両端が基板保持部7によって保持され、スライダ6の移動により基板搬入部2A上を搬送される(図3のステップS1)。この基板搬入部2Aにおける基板搬送時には、そのステージ上においてガス噴射孔2aより不活性ガスが噴射され、この不活性ガスが基板下面に当たることにより基板Gは浮上される。
【0031】
次いで、基板Gは塗布処理部2Bに搬入され(図3のステップS2)、塗布処理前の段階において、制御部40は撓み検出センサ8(受光器8b)からの入力信号に基づき、基板Gに所定値以上の撓み変位が生じているか否かを検出する(図3のステップS3)。
即ち、塗布処理部2Bにおいては、ガス噴射孔2aからの不活性ガスの噴射と、ガス吸引孔2bからの吸気とにより、基板面に反対方向の圧力負荷が一定間隔で与えられるため、特に基板面積に対して厚さ寸法が薄い基板Gにあっては、基板面に凹凸状の撓みが生じる。制御部40は、そのように塗布処理部2Bにおいて発生した基板Gの撓みを検出する。
【0032】
このステップS3において、例えば図4に示すように基板Gに所定値以上の撓み量dが検出された場合、制御部40は、各基板保持部7においてサーボモータ7fを駆動し、ワイヤ7eを所定の長さ分だけ巻き取りロール7gに巻き取る制御を行うことにより吸着部材7aをガイド部材7dに沿って基板幅方向外側に所定距離だけ移動させる(図3のステップS4)。
これにより、対となる基板保持部7は、その幅方向の距離が拡張され、基板Gは図5に示すように、その左右両端部が基板幅方向外側にそれぞれ引張られ、凹凸状の撓みが補正されて平坦度が維持される。
【0033】
このようにして平坦度が維持された基板Gは、塗布処理部2Bを搬送され、ノズル11によりレジスト液が基板面に吐出されることによりレジスト液の塗布処理が行われる(図3のステップS5)。
尚、ステップS3において、所定値以上の撓み量が検出されなかった場合には、ステップS4の保持幅の拡張動作は行われず、ステップS5における塗布処理がなされる。
また、塗布処理が完了した基板Gは、基板搬出部2Cから搬出される(図3のステップS6)。
【0034】
以上のように、本発明に係る第一の実施形態によれば、不活性ガスの噴出と吸引との圧力負荷により基板Gの浮上搬送を行う塗布処理部2Bにおいて、基板Gの撓み量が所定値以上の場合、その幅方向両端を基板幅方向外側にそれぞれ引張る制御がなされる。これにより、基板Gにおける凹凸状の撓みが補正される。
即ち、本実施の形態によれば、基板面積、或いは基板の厚さ寸法に拘わらず、基板Gの平坦性を維持した状態で塗布処理を行うことができる。
【0035】
尚、前記第一の実施形態にあっては、前記ワイヤ7eと前記巻き取りロール7gと前記サーボモータ7fとにより引張り手段が構成されるものとしたが、この構成に限定されるものではない。即ち、制御部40の命令に従い駆動可能な駆動手段と、この駆動手段により吸着部材7aを基板幅方向外側に引張ることが可能な手段とを備えればよい。
そのような構成としては、例えば、モータ駆動により動作する電動シリンダなどがあげられる。
【0036】
続いて、本発明の基板搬送装置にかかる第二の実施形態について図6、図7に基づき説明する。
図6は、本発明の基板搬送装置が適用されるレジスト塗布ユニットの第2の実施形態の平面図であり、図7は、図6のB−B矢視断面図である。
この第二の実施形態にあっては、前記した第一の実施形態の構成とは、一対のガイドレール5の配置、及び基板保持部7の構成がそれぞれ異なる。また、撓み検出センサ8を不要とする点が異なる。
【0037】
図面を用いて詳しく説明すると、図6に示すように一対のガイドレール5は、基板搬入部2Aにおいてはレール間の距離が狭い幅狭部5Aとされ、塗布処理部2Bの上流部においてはレール間の幅が徐々に広くなる拡幅部5Bとされ、塗布処理部2Bの下流部及び基板搬出部2Cにおいてはレール間の幅が広い幅広部5Cとなされている。
具体的には、拡幅部5Bは塗布処理部2Bの先頭から始まり、ノズル11の吐出口(図示せず)の直下で終わり、そこから幅広部5Cとなされている。また、幅狭部5Aのレール間の幅L1に対し幅広部5Cのレール間の幅L2は、例えば1.001〜1.01倍となるように拡幅部5Bが敷設されている。
【0038】
このように一対のガイドレール5が敷設され、スライダ6がガイドレール5上を基板搬送方向に沿って移動することにより、対となる基板保持部7の幅は塗布処理部2Bにおいて、塗布処理がなされる位置(ノズル11直下の位置)まで徐々に拡張されるようになされている。即ち、第二の実施形態において、一対のガイドレール5は、引張り手段として機能する。
【0039】
また、この第二の実施形態における基板保持部7は、前記第一の実施形態において図2に示した構成とは、吸着部材7aの位置を駆動機構(サーボモータ7f)により制御しない構成となされる。
即ち、図7に示す基板保持部7は、基板Gの下面に対し吸引動作により吸着可能な吸着部材7aと、吸着部材7aをスライダ6上に立設された支柱7bに沿って昇降移動させる昇降部材7cとを有する。
【0040】
また、昇降部材7c上には、基板幅方向に沿ってガイド部材7dが設けられ、このガイド部材7dに沿って前記吸着部材7aが摺動自在に設けられている。
また、支柱7b側に設けられたガイド部材7dの端部と前記吸着部材7aとの間には、前記ガイド部材7dに沿って戻りバネ7h(緩衝部材)が設けられ、吸着部材7aが基板幅方向外側に引張られた際に、基板幅方向内側に向けて戻りバネ7hの付勢力が与えられるようになされている。
【0041】
このように構成されたレジスト塗布処理ユニット1において、基板保持部7に保持された基板Gが塗布処理部2Bに搬入され、スライダ6がレール5上を移動すると、図8に示すように、対となる基板保持部7の幅寸法は、塗布処理がなされるノズル11直下の位置まで徐々に拡張される。
対となる基板保持部7の吸着部材7aにあっては、双方がその幅を拡張する方向に引っ張り合う力が働き、前記第一の実施形態と同様に図5に示したように基板Gの凹凸が補正され、平坦度が維持される。
即ち、本発明に係る第二の実施形態によれば、基板面積、或いは基板の厚さ寸法に拘わらず、基板Gの平坦性を維持した状態で塗布処理を行うことができる。
尚、前記第二の実施形態においては、緩衝部材として、戻りバネ7hを用いたが、これに代えて他の弾性部材を用いてもよい。
【0042】
続いて、本発明の基板搬送装置にかかる第三の実施形態について図9に基づき説明する。この第三の実施の形態にあっては、前記した第一の実施形態とは、基板保持部7の構成が異なる。また、撓み検出センサ8を不要とする点が異なる。
図9(a)、図9(b)は、第三の実施の形態における基板保持装置7の断面図である。図9に示す基板保持部7は、基板Gの下面に対し吸引動作により吸着可能な吸着部材7aと、吸着部材7aを支柱7b(図示省略)に沿って昇降移動させる昇降部材7cとを有する。また、昇降部材7c上には、基板幅方向に沿ってガイドレール7dが設けられ、このガイドレール7dに沿って前記吸着部材7aを保持する中空のピストン9(引張り手段)が移動自在に設けられている。
【0043】
前記ピストン9はシリンダ10(引張り手段)内に摺動自在に挿着され、その位置によってシリンダ10とピストン9とにより形成される内部空間9bの容積が変化するようになっている。
また、シリンダ10の端部10aとピストン9に形成された段差部9aとの間には、戻りバネ12(緩衝部材)が設けられている。尚、シリンダ10とピストン9とにより形成される内部空間9bの容積が収縮する方向にピストン9が移動する際には、ガイド部材7dに設けられたストッパ71によって、その最大移動距離が制限されている。
【0044】
また、吸着部材7aには、貫通孔72が形成され、基板Gを吸着しない状態にあっては、ピストン9内部の空間9bは外気側に連通している。また、シリンダ10とピストン9とにより形成された内部空間9bは、シリンダ10に設けられた排気孔10bを介して吸引ポンプ13に接続されている。
【0045】
このように構成された各基板保持部7に基板Gの左右両端部が保持されると、図9(b)に示すように吸着部材7aの貫通孔72が塞がれ、吸引ポンプ13の吸引により吸着部材7aは基板Gを吸着し、シリンダ10とピストン9とにより形成される内部空間9bは陰圧の状態となる。
このため、ピストン9は、前記内部空間9bの容積が収縮するようシリンダ10側に移動する。これにより対となる基板保持部7の吸着部材7aにあっては、双方がその幅を拡張する方向に引張り合う力(横引張力)が働き、前記第一の実施形態と同様に図5に示したように基板Gの凹凸が補正され、平坦度が維持される。
即ち、本発明に係る第三の実施形態によれば、基板面積、或いは基板の厚さ寸法に拘わらず、基板Gの平坦性を維持した状態で塗布処理を行うことができる。
【0046】
尚、この図9に示す構成にあっては、吸着部材7aに働く横引張力によって基板Gに対する吸着部材7aの吸着破壊が生じた場合、戻りバネ12の付勢力により吸着部材7aは図9(a)に示す状態に戻る。
このため、吸着部材7aを自動的に再び基板Gの下面に吸着させることができ、横引張力を維持することができる。
【0047】
尚、前記第三の実施形態においては、緩衝部材として、戻りバネ12を用いたが、これに代えて他の弾性部材を用いてもよい。
また、前記第一乃至第三の実施形態にあっては、浮上ステージ2の片側に5台のスライダ6と基板保持部7とを設け、両側で計10台の基板保持部7により基板両側を保持するものとしたが、その左右両側で対となる数は限定されるものではない。
また、前記第一乃至第三の実施形態にあっては、本発明にかかる基板搬送装置をレジスト塗布処理ユニットに適用した場合を例にとって説明したが、塗布処理ユニットに限定されることなく、他の基板処理ユニット等においても好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 レジスト塗布処理ユニット(基板搬送装置)
2 浮上ステージ(基板搬送路)
2a ガス噴出孔
2b ガス吸引孔
2B 塗布処理部(浮上ステージ)
5 ガイドレール(引張り手段)
6 スライダ(基板搬送手段)
7 基板保持部(基板保持手段)
7a 吸着部材
7e ワイヤ(引張り手段)
7g 巻き取りローラ(引張り手段)
7f サーボモータ(回転駆動部)
9 ピストン(引張り手段)
10 シリンダ(引張り手段)
G ガラス基板(被処理基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板搬送路を形成すると共に、上面に形成された複数のガス噴射孔からのガス噴射と複数のガス吸引孔からのガス吸引との圧力負荷により被処理基板を浮上させる浮上ステージと、前記浮上ステージ上に浮上する前記基板の幅方向両端を前記浮上ステージの両側から保持する少なくとも一対の基板保持手段と、前記基板保持手段を基板搬送路に沿って移動させることにより前記基板を平流し搬送する基板搬送手段とを具備する基板搬送装置であって、
前記基板保持手段は、前記基板の幅方向両端において、該基板の下面を吸着保持する吸着部材と、前記吸着部材を前記基板の幅方向外側に引張る引張り手段とを備え、
前記浮上ステージ上に浮上する前記基板は、その幅方向両端の下面が前記吸着部材により吸着保持され、且つ、前記引張り手段により幅方向両端が幅方向外側に引張られた状態で、前記基板搬送手段により搬送されることを特徴とする基板搬送装置。
【請求項2】
前記浮上ステージ上に浮上する前記基板の撓み量が所定値以上か否かを検出する撓み検出手段と、前記撓み手段の検出結果に基づき前記引張り手段の駆動制御を行う制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記基板の撓み量が所定値以上である検出結果が前記撓み検出手段から入力された場合に、前記引張り手段を駆動し、前記吸着部材を前記基板の幅方向外側に引張るよう制御することを特徴とする請求項1に記載された基板搬送装置。
【請求項3】
前記吸着部材は、前記基板保持手段において基板幅方向に沿って摺動自在に設けられ、
前記引張り手段は、前記吸着部材の基板幅方向外側に接続されたワイヤと、前記基板保持手段において回転自在に設けられ、前記ワイヤを巻き取り可能な巻き取りロールと、前記巻き取りロールの回転を駆動する回転駆動部とを有し、
前記制御手段は、前記基板の撓み量が所定値以上である検出結果が前記撓み検出手段から入力された場合に、前記回転駆動部を駆動し、前記吸着部材が基板幅方向外側に摺動するよう制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載された基板搬送装置。
【請求項4】
前記引張り手段は、前記浮上ステージの左右両側に敷設された一対のガイドレールを有し、
前記一対のガイドレールは、基板搬送方向に沿って、そのガイドレール間の幅寸法が徐々に拡張するように設けられ、
前記基板保持手段は前記ガイドレールに沿って移動自在に設けられ、
前記基板の幅方向両端を前記吸着部材により吸着保持する前記基板保持手段が前記一対のガイドレールに沿って移動することにより、該基板の幅方向両端が幅方向外側に引張られた状態となされることを特徴とする請求項1に記載された基板搬送装置。
【請求項5】
前記吸着部材は、前記基板保持手段において基板幅方向に沿って摺動自在に設けられ、
前記基板保持手段は、前記吸着部材により吸着される前記基板の両端が基板幅方向外側に引っ張られた際に、該吸着部材に対し基板幅方向内側に向けて付勢力を与える緩衝部材を有することを特徴とする請求項4に記載された基板搬送装置。
【請求項6】
前記基板保持手段は、前記吸着部材に接続されて、該吸着部材と前記基板との接触領域の空気を吸引する吸引手段を備え、
前記引張り手段は、シリンダと、前記シリンダに対し基板幅方向に沿って摺動自在に設けられた中空のピストンとを有し、
前記吸着部材は、前記ピストン上に設けられると共に、前記シリンダと前記ピストンとにより形成される内部空間を介して前記吸引手段と連通し、
前記吸着部材が前記基板の下面に吸着することにより、前記シリンダと前記ピストンとにより形成される内部空間の容積が収縮され、該吸着部材が基板幅方向外側に移動されることを特徴とする請求項1に記載された基板搬送装置。
【請求項7】
前記シリンダと、該シリンダに対し摺動自在に設けられたピストンとの間には、前記吸着部材が基板幅方向外側に移動された際に、該吸着部材に対し基板幅方向内側に向けて付勢力を与える緩衝部材を有することを特徴とする請求項6に記載された基板搬送装置。
【請求項8】
基板搬送路を形成すると共に、上面に形成された複数のガス噴射孔からのガス噴射と複数のガス吸引孔からのガス吸引とにより形成された気流により被処理基板を浮上させ、前記浮上ステージ上に浮上する前記基板の幅方向両端を前記浮上ステージの両側から保持した状態で、該基板を基板搬送路に沿って平流し搬送する基板搬送方法であって、
前記浮上ステージ上に浮上する前記基板における幅方向両端の下面を吸着部材により吸着保持し、
且つ、該基板の幅方向両端を幅方向外側に引張った状態で、該基板を基板搬送路に沿って搬送することを特徴とする基板搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−195533(P2012−195533A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60170(P2011−60170)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】