説明

基板検査装置、部品実装システム、基板検査方法、プログラム

【課題】複数の不良発生原因に対応して的確にはんだ付け不良を検出可能な基板検査装置を提供する。
【解決手段】はんだ印刷工程後にはんだ体積、はんだ形状、はんだ印刷位置を測定する。また、部品装着工程後に部品形状、部品装着位置を測定する。基板検査装置は、はんだ形状、はんだ印刷位置、部品形状、部品装着位置を利用して判定対象の部品の接触面積を求め、さらに接触面積とはんだ体積を乗算した乗算値の比率に応じた評価値を算出する。そして、基板検査装置は、評価値と閾値とを比較することにより判定対象の部品についての部品浮きによる不良の有無を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板のはんだ付け不良を検査する基板検査装置、基板検査方法およびプログラムに関する。また、基板検査装置を備える部品実装システムに関する。
【背景技術】
【0002】
基板に対する部品実装技術としてSMT(Surface Mount Technology:表面実装技術)が知られている。SMTは、基板に部品実装用の孔部を形成するのではなく、基板上に載置するように部品を装着し、装着面に対するはんだ付けにより部品の固定と接続を行うという技術である。このSMTによる基板への部品実装は、はんだ印刷工程、部品装着工程、リフロー工程の順に行われる。
【0003】
このSMTにより実装される部品として、その両端にそれぞれ電極を有するチップ型の部品が広く知られている。このチップ型の部品は、リフロー工程後において「部品浮き」または「部品立ち(マンハッタンあるいはツームストーン)」などと呼ばれるはんだ付け不良が発生する場合がある。この部品浮きとは、チップ型の部品の一方の端部が基板から浮き上がる(立ち上がる)ことではんだと電極の接合が不良となる現象である。
【0004】
上記部品浮きによる不良を検査するものとして、以下の特許文献1の技術が知られている。つまり、はんだ印刷工程、部品装着工程およびリフロー工程の各工程において基板を撮像し、リフロー工程の撮像画像から浮き不良を検査し、浮き不良が検出された場合に、部品実装工程の撮像画像からはんだにじみの有無を判定し、はんだにじみが有る場合に、浮き不良の発生原因がはんだペースト量の過多であると特定する。また、はんだにじみが無い場合には、部品両端のはんだ面積の差異が閾値以上であれば、はんだペースト量が過多であったと判定するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4617998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の技術によれば、はんだにじみの有無に基づいて、はんだペースト量の過多を原因とする不良を検出できる。また、部品両端のはんだ面積の差異に基づいてはんだペースト量の過多を原因とする不良を検出できる。しかし、これらの不良の検出は、それぞれが個別に独立して行われている。
【0007】
実際においては、複数の原因が複合してはじめて不良が発生する場合もある。また、これらの複数の原因が互いの作用を打ち消し合う結果、不良が発生しない場合もある。特許文献1のように複数の原因を個別に解析する構成では、上記のような複数の原因が複合することによる不良発生の有無を的確に検出することができない。
【0008】
そこでこの発明は、複数の不良発生原因に対応して的確にはんだ付け不良を検出可能な基板検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題を解決すべくなされたもので、本発明の一態様としての基板検査装置は、はんだ印刷工程により基板のパッドに塗布されたはんだを対象とした測定結果としてはんだ体積を含むはんだ情報を取得するはんだ情報取得部と、前記はんだ印刷工程の後の部品装着工程によって前記基板に装着された部品を対象とした測定結果を含む部品情報を取得する部品情報取得部と、前記はんだ情報と前記部品情報とに基づいて、判定対象の部品とパッドの接触面積を算出し、当該算出された接触面積と前記はんだ体積とに基づいて、前記判定対象の部品におけるはんだ付けの不良の有無を判定するのに利用する評価値を求める評価値算出部と、前記評価値に基づいて前記判定対象の部品ごとにおけるはんだ付けの不良の有無を判定する不良判定部とを備える。
【0010】
また、本発明の一態様としての部品実装システムは、基板のパッドにはんだを塗布するはんだ印刷工程を行うはんだ印刷装置と、前記はんだ印刷装置により塗布されたはんだを対象として測定を行い、その測定結果としてはんだ体積を含むはんだ情報を生成するはんだ測定装置と、前記はんだ印刷装置によりはんだが塗布された前記基板に部品を装着する部品装着工程を行う部品装着装置と、前記部品装着装置により装着された前記部品を対象として測定を行い、その測定結果を含む部品情報を生成する部品測定装置と、前記部品装着装置により前記部品が装着された前記基板を加熱して前記はんだを溶融させることにより、装着された前記部品を前記パッドにはんだ付けするリフロー工程を行うリフロー炉と、前記基板におけるはんだ付け不良を検査する基板検査装置とを備え、前記基板検査装置は、前記はんだ測定装置から前記はんだ情報を取得するはんだ情報取得部と、前記部品装着装置から前記部品情報を取得する部品情報取得部と、前記はんだ情報と前記部品情報とに基づいて、判定対象の部品とパッドの接触面積を算出し、当該算出された接触面積と前記はんだ体積とに基づいて、前記判定対象の部品におけるはんだ付けの不良の有無を判定するのに利用する評価値を求める評価値算出部と、前記評価値に基づいて前記判定対象の部品ごとにおけるはんだ付けの不良の有無を判定する不良判定部とを備える。
【0011】
また、本発明の一態様としての基板検査方法は、はんだ印刷工程により基板のパッドに塗布されたはんだを対象とした測定結果としてはんだ体積を含むはんだ情報を取得するはんだ情報取得ステップと、前記はんだ印刷工程の後の部品装着工程によって前記基板に装着された部品を対象とした測定結果を含む部品情報を取得する部品情報取得ステップと、前記はんだ情報と前記部品情報とに基づいて、判定対象の部品とパッドの接触面積を算出し、当該算出された接触面積と前記はんだ体積とに基づいて、前記判定対象の部品におけるはんだ付けの不良の有無を判定するのに利用する評価値を求める評価値算出ステップと、前記評価値に基づいて前記判定対象の部品ごとにおけるはんだ付けの不良の有無を判定する不良判定ステップとを備える。
【0012】
また、本発明の一態様としてのプログラムは、コンピュータを、はんだ印刷工程により基板のパッドに塗布されたはんだを対象とした測定結果としてはんだ体積を含むはんだ情報を取得するはんだ情報取得手段、前記はんだ印刷工程の後の部品装着工程によって前記基板に装着された部品を対象とした測定結果を含む部品情報を取得する部品情報取得手段、前記はんだ情報と前記部品情報とに基づいて、判定対象の部品とパッドの接触面積を算出し、当該算出された接触面積と前記はんだ体積とに基づいて、前記判定対象の部品におけるはんだ付けの不良の有無を判定するのに利用する評価値を求める評価値算出手段、前記評価値に基づいて前記判定対象の部品ごとにおけるはんだ付けの不良の有無を判定する不良判定手段として機能させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の不良発生原因に対応して的確にはんだ付け不良を検出可能な基板検査装置を提供できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態としての基板検査装置を含む部品実装システムの構成例を示す図である。
【図2】はんだ印刷工程によりはんだが印刷された基板を示す図である。
【図3】部品装着工程により部品が装着された基板を示す図である。
【図4】リフロー工程によりはんだが溶融している状態で生じる、はんだ体積に応じた表面張力を模式的に示す図である。
【図5】リフロー工程によりはんだが溶融している状態で生じる、パッドと部品の接触面積に応じた表面張力を模式的に示す図である。
【図6】本実施形態における基板検査装置の構成例を示す図である。
【図7】本実施形態における基板検査装置の機能構成例を示す図である。
【図8】はんだ情報の構造例を示す図である。
【図9】部品情報の構造例を示す図である。
【図10】本実施形態における評価値算出部の構成例を示す図である。
【図11】部品装着工程後における部品に対するパッドの接触面積とはんだ体積の一状態例を示す図である。
【図12】部品装着工程後における部品に対するパッドの接触面積とはんだ体積の一状態例を示す図である。
【図13】部品装着工程後における部品に対するパッドの接触面積とはんだ体積の一状態例を示す図である。
【図14】本実施形態の部品実装システムの工程手順を示すフローチャートである。
【図15】本実施形態の基板検査装置が実行する処理手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[部品実装システムの構成]
図1は、本実施形態の基板検査装置100を含む部品実装システム1の構成例を示している。本実施形態の部品実装システム1は、基板のしかるべき位置に対して部品をはんだ付けすることにより部品実装を行うものであり、そのための複数の装置から成る。また、本実施形態の部品実装システム1は、SMT(Surface Mount Technology)に対応する。SMTは、基板上に部品を装着し、基板上の部品実装面に対してはんだ付けを行うことにより部品の固定と接続を行うというものであり、はんだ印刷工程、部品装着工程、リフロー工程の順で進行する。
【0016】
はんだ印刷工程は、基板に形成されたパッドといわれる電極31に対してクリーム状のはんだを塗布する工程である。部品装着工程は、上記のようにクリーム状のはんだが塗布されたパッド位置に対して部品を載せ置くように装着する工程である。リフロー工程は、部品が装着された基板全体を加熱することによりはんだを溶融させ、これにより基板に部品を固定させる工程である。
【0017】
本実施形態の部品実装システム1は、はんだ印刷装置2、はんだ測定装置3、部品装着装置4、部品測定装置5、リフロー炉6および基板検査装置100から成る。
【0018】
はんだ印刷装置2は、はんだ印刷工程としての動作を実行する装置である。はんだ印刷装置2には、部品が固定される導体であるパッドのパターンが形成された基板10が搬入されてくる。はんだ印刷装置2は、搬入されてくる基板10のパッドに対してクリーム状のはんだを塗布する。このはんだの塗布は、例えばスクリーン印刷ともいわれる。
【0019】
はんだの塗布が終了してはんだ印刷装置2から排出された基板10は、はんだ測定装置3に搬送される。はんだ測定装置3は、搬送された基板10ごとに、はんだ印刷装置2により塗布されたはんだを対象として測定を行い、その測定結果としてはんだの体積を示すはんだ体積を含むはんだ情報を生成する。具体的に、はんだ測定装置3は、上記はんだ体積のほか、はんだ外形と、はんだ印刷位置を測定する。はんだ外形は、例えば塗布されたはんだの平面方向におけるサイズ(面積に相当)や厚さ(高さ)を示す。はんだ印刷位置は、はんだが印刷された位置として、例えば基板10における所定位置を基準座標としてはんだが印刷された座標を示す。
【0020】
部品装着装置4には、上記のようにはんだ印刷装置2によりはんだが塗布され、はんだ測定装置3による測定が終了した基板10が搬入される。部品装着装置4は、この基板10のパッドに対して電極が位置するように部品を装着する部品装着工程を行う。
【0021】
部品の装着が終了して部品装着装置4から排出された基板10は、部品測定装置5に搬送される。部品測定装置5は、搬送された基板10ごとに、部品装着装置4により装着された部品を対象として測定を行い、その測定結果を含む部品情報を生成する。具体的に、部品測定装置5は、部品外形と、部品装着位置を測定する。部品外形は、例えば装着された部品の平面方向におけるサイズを含む。はんだ印刷位置は、部品が装着された位置として、例えば基板10における所定位置を基準座標として部品が装着された座標を示す。
【0022】
リフロー炉6には、上記のように部品装着装置4により部品が装着され、部品測定装置5による測定が終了した基板10が搬入される。リフロー炉6は、搬入された基板10を加熱してはんだを溶融させることにより、装着された前記部品を前記パッドにはんだ付けするリフロー工程を行う。これにより、リフロー炉6からは、部品が固定された状態で実装された基板10が排出されることになる。
【0023】
基板検査装置100は、基板10におけるはんだ付け不良を検査する。つまり、基板検査装置100によるはんだ付け不良の有無について判定する。なお、基板検査装置100がはんだ付け不良の有無を判定するための構成については後述する。
【0024】
[はんだ印刷工程と部品装着工程に応じた基板状態例]
図2(a)および図2(b)は、はんだ印刷装置2(はんだ印刷工程)によりはんだの塗布が行われた基板10の状態例を示す平面図および側面図である。
【0025】
この図においては、基板10の上において形成されるパッドのうち、1つの同じ部品に対応する一対のパッド11a、11bを抜き出して示している。このパッド11a、11bに対応する部品はチップ部品ともいわれるもので、チップ型の外形形状を有し、その両端においてパッド11a、11bの各々とはんだ付けにより接合されるべき電極が設けられている。はんだ印刷装置2が行うスクリーン印刷により、図示するようにこのパッド11a、11bの上に対してクリーム状のはんだ21a、21bが塗布される。
【0026】
また、図3(a)の平面図および図3(b)の側面図は、部品装着装置4(部品装着工程)により、上記図2(a)および図2(b)に示した基板10に対して部品30が装着された状態を示している。この図に示すように、上記チップ部品としての部品30は、その両端の電極31a、31bがそれぞれ、パッド11a、11bに位置して載せ置かれるように装着される。これにより、部品30は、その両端の電極31a、31bが、それぞれ、はんだ21a、21bの上に押し当てられる状態となる。
【0027】
[はんだ付け不良発生原因の考察]
上記チップ部品は、リフロー工程後において「部品浮き」と呼ばれるはんだ付け不良が発生する場合がある。この部品浮きとは、チップ型の部品の一方の端部が基板から浮き上がる(立ち上がる)ことではんだと電極の接合が不良となる現象である。なお、このような不良は、「部品立ち(マンハッタンあるいはツームストーン)」などともいわれる。
【0028】
そこで、この部品浮きの発生原因について図4および図5を参照して考察する。図4(a)には、部品30の両端のうちの一方の電極31aの近傍を拡大し、リフロー工程としてのリフロー炉6の加熱によって、パッド11aに塗布されたはんだ21aが溶融している状態を示している。
【0029】
なお、この図に示されるパッド11a、はんだ21、電極31は、図3の電極31a、はんだ21a、パッド11aの組と、パッド11b、はんだ21b、電極31bの組のいずれか一方に相当する。以降において、パッド11aとパッド11b、はんだ21aとはんだ21b、電極31aと電極31bについて、両者を特に区別する必要のない場合には、同図のようにパッド11、はんだ21、電極31と表記する。
【0030】
はんだ21が溶融している状態において生じる表面張力Fは、図示するように、電極31とはんだ21の界面に対してはんだ21の表面の接線方向に働く。また、表面張力Fの水平方向成分Fhは、電極31の上端部に対して水平方向に働く力であり、接触角θの正弦と表面張力Fの積で表される。水平方向成分Fhは、点Cとして示される電極31の下側角部を回転中心とするトルクとして働くことから、部品浮きの発生要因との関係性が大きいと考えられる。つまり、はんだ21a、21bの各水平方向成分Fhについて、一方が他方に対して大きくなるほど、その一方により部品30を引っ張られる力が強く働き、部品浮きが発生する可能性が高くなるということである。
【0031】
そこで、いつくかのはんだ21の典型的な状態例における水平方向成分Fhについて考察する。まず、図4(b)は、はんだ印刷工程によるはんだ21の塗布量が図4(a)の場合よりも少ない場合を示す。このようにはんだ21の塗布量が少ない場合、はんだ21が電極31からパッド11にかけて薄く広がる状態となるため、接触角θは図4(a)の場合よりも小さくなる。ここではんだ21の成分に大きなばらつきがないことを前提とすれば、図4(a)と図4(b)の場合とで出表面張力Fは等しい。これにより、図4(b)の水平方向成分Fhは図4(a)の場合より小さくなる。
【0032】
これに対して、図4(c)は、はんだ印刷工程によるはんだ21の塗布量が図4(a)の場合よりも多い場合を示す。この場合には、はんだ21が盛り上がるような状態となることから接触角θは図4(a)の場合よりも大きくなる。この場合にも、図4(a)と図4(c)の場合とで出表面張力Fは等しい。これにより、図4(c)の水平方向成分Fhは図4(a)の場合より大きくなる。
【0033】
このように、表面張力Fの水平方向成分Fhは、塗布されたはんだ21の量、すなわちはんだ21の体積に応じて異なるものとなる。
【0034】
次に、図5を参照して、パッド11に対する電極31の位置に応じた表面張力Fの水平方向成分Fhについて考察する。図5(a)は、パッド11の上面に対して、電極31の下面の一部が外れるようにしてずれた位置状態を示している。これに対して、図5(b)は、パッド11の上面に対して、電極31の下面の全領域が収まるように位置している状態を示している。
【0035】
ここで、図5(a)と図5(b)におけるパッド11と部品30の接触面の幅をそれぞれW1、W2として表すと、(W1<W2)の関係が成立する。この関係は、平面図による図示は省略するが、パッド11と部品30の接触面積は、図5(a)に対して図5(b)のほうが大きいことを示している。
【0036】
図5(a)の場合、パッド11と部品30の接触面積が小さくなるのに応じて、パッド11が部品30と接触しない面部の面積が大きくなり、この面部に対してはんだ21が薄く広がることになる。一方、図5(b)の場合には、パッド11と部品30の接触面積が大きくなるのに応じて、パッド11が部品30と接触しない面部の面積は小さくなるため、はんだ21は盛り上がる状態となる。これにより、接触角θは、図5(b)のほうが図5(a)より大きくなる。これに応じて、表面張力Fの水平方向成分Fhも図5(b)のほうが図5(a)より大きくなる。
【0037】
このように、表面張力Fの水平方向成分Fhは、パッド11と部品30の接触面積に応じて異なるものとなる。
【0038】
上記図4および図5によれば、部品浮きを発生させる原因としては、部品30両端のはんだ21a、21bにおける水平方向成分Fhの差であることになる。そのうえで、水平方向成分Fhの大きさは、はんだ体積とパッド11に対する部品30の接触面積のそれぞれに応じて変化することが分かる。これは、部品浮きの発生原因として、部品30両端におけるはんだ体積の差と、上記接触面積の差の2つが存在することを意味している。
【0039】
実際の部品浮きの発生に際しては、上記はんだ体積と接触面積のいずれか一方のみが原因となる場合がある。また、上記はんだ体積と接触面積の個々の要因によっては直接に部品浮きを発生させるものではないが、両者が複合することによりはじめて部品浮きを発生させる場合もある。また、逆に、はんだ体積と接触面積の個々の要因に着目すれば不良と判定できてしまうが、それぞれの要因が相殺することによって実際には不良が発生しない場合もある。このように、部品浮きによる不良判定は、はんだ体積と接触面積の関係を考慮して行うべき必要がある。
【0040】
[基板検査装置の構成]
本実施形態の基板検査装置100は、上記のはんだ体積と接触面積の関係を考慮した部品浮きについての不良判定を的確に行うことができるように構成される。以下に、基板検査装置100の構成について説明する。
【0041】
図6は、基板検査装置100の構成例を示している。この図に示す基板検査装置100は、CPU101、RAM102、記憶部103、入力インターフェース104、出力インターフェース105およびデータインターフェース106を備える。また、これらの部位はデータバス107により接続される。
【0042】
CPU101は、記憶部103に記憶されるプログラムを実行することにより、基板検査装置100としての動作を実現する部位である。
【0043】
RAM102は、主記憶装置として機能するもので、CPU101が実行すべきプログラムが記憶部103から読み出されて展開される。また、RAM102は、CPU101が演算処理を実行する際の作業領域として使用される。
【0044】
記憶部103は、補助記憶装置として機能するもので、CPU101により実行されるプログラムや各種データを格納する。なお、この記憶部103には、例えばハードディスクやフラッシュメモリなどの半導体記憶装置を採用することができる。
【0045】
入力インターフェース104は、例えばキーボードやマウスなどの操作デバイスをはじめとする入力デバイスを一括して示したものである。出力インターフェース105は、例えばディスプレイデバイス(表示部)やスピーカ(音声出力部)などの出力デバイスを一括して示したものである。
【0046】
データインターフェース106は、CPU101の制御に応じて、所定の1以上のデータインターフェース規格に対応して通信を実行する。本実施形態においては、データインターフェース106に対してはんだ測定装置3と部品測定装置5が接続される。これにより、基板検査装置100は、はんだ測定装置3にて生成されたはんだ情報と、部品測定装置5にて生成された部品情報をデータインターフェース106経由で入力することができる。なお、この図6に示す構成は、例えばコンピュータ装置により具現化することができる。
【0047】
[基板検査装置の機能構成例]
図7は基板検査装置100のCPU101がプログラムを実行することにより実現される機能部の構成例を示している。CPU101は、図示するようにはんだ情報取得部111、部品情報取得部112、評価値算出部113、不良判定部114および通知制御部115としての各機能部を備える。また、同図においては、RAM102が記憶するデータのうち、CPU101が基板検査に利用するデータとして、はんだ情報210と部品情報220が示される。
【0048】
はんだ情報取得部111は、はんだ測定装置3から出力されたはんだ情報210を取得する。つまり、はんだ情報取得部111は、データインターフェース106経由で入力したはんだ情報210をRAM102に記憶させる。
【0049】
部品情報取得部112は、部品測定装置5から出力された部品情報220を取得する。つまり、部品情報取得部112は、データインターフェース106経由で入力した部品情報220をRAM102に記憶させる。なお、はんだ情報210と部品情報220の構造例については後述する。
【0050】
評価値算出部113は、部品におけるはんだ付けの不良の有無を判定するのに利用する評価値を求める。このために、評価値算出部113は、判定対象の部品が接合されるパッドごとに対応付けられたはんだ情報210と部品情報220とに基づいて、当該判定対象の部品が接合されるパッド11ごとに部品30との接触面積を算出する。そして、この算出された接触面積と、はんだ情報210に含まれるはんだ体積とに基づいて上記評価値を求める。
【0051】
不良判定部114は、上記評価値に基づいて判定対象の部品ごとにおけるはんだ付けの不良の有無を判定するもので、具体的には、上記評価値と閾値を比較した結果に基づいて不良の有無を判定する。また、不良判定部114は、基板10におけるすべての部品30のはんだ付けについて不良無しと判定した場合に基板10の不良が無いと判定する。
【0052】
通知制御部115は、不良判定部114により基板10について不良有りと判定されたことに応じて、作業者に対して基板不良の発生を通知するための制御を実行する。通知の具体例としては、通知制御部115により、出力インターフェース105におけるスピーカなどから、基板不良が発生したことを通知するアラーム音を出力させることが考えられる。また、不良が発生した基板10を示す情報や基板10において不良が発生した箇所を示す情報などを出力インターフェース105におけるディスプレイデバイスなどに表示させることが考えられる。
【0053】
[はんだ情報と部品情報の構成]
図8は、はんだ情報210の構造例を示している。このはんだ情報210は、1つの基板10についてはんだ測定装置3が測定した結果を反映している。はんだ情報210は、図示するように、部品識別子領域211、パッド情報領域212、はんだ体積領域213、はんだ外形領域214およびはんだ印刷位置領域215を対応付けた構造を有する。
【0054】
部品識別子領域211は、対応の基板10において装着される部品30ごとの部品識別子を格納する。
【0055】
パッド情報領域212は、1つの部品識別子領域211により識別される部品30が接合されるパッド11a、11bごとについての所定のパッド情報を格納する。パッド情報の具体例として、パッド11a、11bの位置(座標)、パッド識別子などを挙げることができる。
【0056】
はんだ体積領域213は、対応のパッド情報領域212に格納されるパッド情報が対応するパッド11に塗布されたはんだ21を対象としてはんだ測定装置3が測定したはんだ体積を示す値を格納する。
【0057】
はんだ外形領域214は、対応のパッド情報領域212に格納されるパッド情報が対応するパッド11に塗布されたはんだ21を対象としてはんだ測定装置3が測定した外形(面積および高さ)を示す値を格納する。
【0058】
はんだ印刷位置領域215は、対応のパッド情報領域212に格納されるパッド情報が対応するパッド11に塗布されたはんだ21を対象としてはんだ測定装置3が測定した位置(座標)を格納する。
【0059】
図9は、部品情報220の構造例を示している。この部品情報220は、1つの基板10について部品測定装置5が測定した結果を反映している。部品情報220は、図示するように、部品識別子領域221、パッド情報領域222、部品外形領域223および部品装着位置領域224を対応付けた構造を有する。
【0060】
部品識別子領域221およびパッド情報領域222は、図8の部品識別子領域211およびパッド情報領域212と同様である。
【0061】
部品外形領域223は、対応の部品識別子領域221に格納される部品識別子により特定される部品30を対象として部品測定装置5が測定した外形を示す値を格納する。
【0062】
部品装着位置領域224は、対応の部品識別子領域221に格納される部品識別子により特定される部品30を対象として部品測定装置5が測定した位置(座標)を格納する。
【0063】
[評価値算出部の構成]
図10を参照して、先に図7に示した評価値算出部113の構成例について説明する。この図に示す評価値算出部113は、評価値算出部113は、接触面積算出部121、乗算部122および評価値演算部123を備える。
【0064】
接触面積算出部121は、はんだ情報210と部品情報220に基づいて判定対象の部品30とパッド11a、11bごとの接触面積を算出する。具体的に、接触面積算出部121は、1つの判定対象の部品30を選択すると、はんだ情報210から、判定対象の部品30に対応するパッド11a、11bのはんだ外形とはんだ印刷位置を読み込む。つまり、接触面積算出部121は、はんだ情報210から判定対象の部品30の部品識別子を格納する部品識別子領域211に対応付けられたはんだ外形領域214とはんだ印刷位置領域215を検索し、ここに格納されているはんだ外形とはんだ印刷位置を読み込む。
【0065】
また、接触面積算出部121は、部品情報220から、判定対象の部品30に対応するパッド11a、11bの部品外形と部品装着位置を読み込む。つまり、接触面積算出部121は、部品情報220から判定対象の部品30の部品識別子を格納する部品識別子領域221に対応付けられた部品外形領域223と部品装着位置領域224を検索し、ここに格納されている部品外形と部品装着位置を読み込む。
【0066】
上記の読み込みにより、接触面積算出部121は、判定対象の部品30に対応するパッド11a、11bのそれぞれに塗布されたはんだ21a、21bのはんだ外形とはんだ印刷位置を取得したことになる。また、接触面積算出部121は、判定対象の部品30の外形と部品装着位置を取得したことになる。
【0067】
そこで、接触面積算出部121は、はんだ印刷位置と部品装着位置に基づいて、部品30の両端のそれぞれにおけるはんだ外形が示す面積と、部品外形が示す部品の面積の重複部分を求める。このように求められる重複部分が接触面積である。ここでは、パッド11a、11bのそれぞれに対応して求めた接触面積を、それぞれ接触面積Sa、Sbとして表す。
【0068】
乗算部122は、パッド11aに対応してはんだ情報210から読み込んだはんだ体積Vaと上記接触面積Saとを乗算する。また、パッド11bに対応してはんだ情報210から読み込んだはんだ体積Vbと上記接触面積Sbとを乗算する。つまり、下記の式により、パッド11a、11bのそれぞれに対応する乗算値SVa、SVbを算出するものである。
SVa=Sa・Va
SVb=Sb・Vb
【0069】
評価値算出部113は、上記乗算値SVa、SVbを利用して評価値Eを算出する。具体的には、下記の式により評価値Eを算出する。
E=|(SVa/SVb)−1|
上記のように求められる評価値Eは、乗算値SVaとSVbが等しければ「0」であり、両者の差が大きくなるのに応じて増加する。これは、評価値Eが大きいほど部品浮きが発生する可能性が高くなることを意味している。この評価値Eは、乗算値SVaとSVbにより求められるが、乗算値SVaとSVbは、それぞれ、はんだ体積Vaと接触面積Saの積、はんだ体積Vbと接触面積Sbの積である。つまり、先に図4と図5により説明したように部品浮きの原因となるはんだ体積と接触面積の両方の要素が含まれたものとなっている。
【0070】
[不良判定部の不良判定処理例]
不良判定部114は、上記のように求められた評価値Eに基づいて、以下のように判定対象の部品ごとに不良判定処理を実行する。つまり、不良判定部114は、評価値Eと予め設定された閾値thとを比較して
E≦th
が成立するか否かについて判定する。不良判定部114は、判定対象の部品30について、上式が成立した場合に部品浮きの発生は無いとみてよいとみなし、不良無しであると判定する。これに対して、評価値Eが閾値thを越えて上式が成立しなかった場合には、以降のリフロー工程によってはんだ浮きが発生する可能性が高いとして、不良有りと判定する。
【0071】
上記不良判定の一具体例について、図11から図13を参照して説明する。図11には、部品装着工程後の基板10が示されている。この場合、図11(a)の平面図に示すように、平面方向からみたはんだ21aとはんだ21bの面積は同じである。これに対して、図11(b)の側面図に示すように、厚さ(高さ)については、はんだ21aのほうがはんだ21bよりも大きい。これは、はんだ体積についてみれば、はんだ21aのほうがはんだ21bよりも大きいことを示している。ここでのはんだ体積の比率は、はんだ21bを「1」とすると、はんだ21aは「1.5」であるとする。
【0072】
また、この図の部品30は、パッド11aとパッド11bとに対して、それぞれ電極31aと31bが均等に位置している。したがって、部品30とパッド11aとの接触面積Saと、部品30とパッド11bとの接触面積Sbは(1:1」で等しい状態にある。
【0073】
つまり、図11に示す状態は、はんだ体積についてはパッド11a側と11b側とで差異が生じているが、接触面積についてはパッド11a側と11b側とで同じである場合を示している。この場合の評価値Eは、「0.5」となる。
【0074】
次に、図12に示す部品装着工程後の基板10の状態について説明する。図12の場合、はんだ体積については、図11の場合と同様にはんだ21aのほうがはんだ21bよりも大きい状態にある。ここでも、ここでのはんだ体積の比率も、はんだ21bを「1」として、はんだ21aは「1.5」であるとする。
【0075】
そのうえで、図12の場合には、部品30が図11の場合よりもパッド11a側に偏って装着されている。これにより、パッド11a側よりもパッド11b側の部品30との接触面積のほうが大きくなるように差異が生じている。ここでは、パッド11a側とパッド11b側の接触面積SaとSbの比は、「5:3」となっている。
【0076】
このように、図12は、はんだ体積と接触面積のいずれについてもパッド11a側とパッド11b側とで差異が生じている状態を示している。そのうえで、この場合には、パッド11a側において、はんだ体積と接触面積の両者が大きくなっている。したがって、表面張力Fの水平方向成分Fhとしては、パッド11b側に対してパッド11a側のほうが相当に大きくなっている状態である。
【0077】
次に、図13に示す部品装着工程後の基板10の状態であるが、はんだ体積については、図11および図12の場合と同様に、はんだ21aのほうがはんだ21bよりも大きい状態にある。ここでも、ここでのはんだ体積の比率も、はんだ21bを「1」として、はんだ21aは「1.5」であるとする。
【0078】
さらに、図13の場合には、部品30がパッド11b側に偏って装着されている。これにより、パッド11a側の接触面積Saよりもパッド11b側の接触面積Sbのほうが大きくなるように差異が生じている。ここでは、接触面積SaとSbの比は、「3:5」となっている。
【0079】
このように、図13においては、はんだ体積と接触面積のいずれについてもパッド11a側とパッド11b側とで差異が生じている。ただし、はんだ体積が大きいのはパッド11a側であるのに対して、接触面積が大きいのはパッド11b側となっており、それぞれの要因により増加する表面張力Fの水平方向成分Fhは互いに反対方向となって打ち消し合う関係にある。
【0080】
先の評価値Eを求める式によれば、上記図11に示す状態において求められる評価値Eは「0.5」である。図12に示す状態において求められる評価値Eは「1.5」である。図13に示す状態において求められる評価値Eは「0.1」である。
【0081】
ここで、例えば試験やシミュレーションなどにより、図11に示す状態は浮き不良が発生する可能性が低く、図12に示す状態は浮き不良が発生する可能性が高く、図13に示す状態は浮き不良が発生する可能性が低いとの結果が得られたものと想定する。このような結果を考慮して、閾値thについて例えば「1」を設定することができる。この「1」の閾値thを利用することで、不良判定部114は、図11に示す状態を不良無しと判定し、図12に示す状態を不良有りと判定し、図13に示す状態を不良無しと判定する。
【0082】
また、はんだ体積または接触面積のアンバランスの度合いが高ければ、そのいずれか一方を要因として部品浮きが発生する場合もある。具体例として、図11と図12に示す状態は浮き不良が発生する可能性が高く、図13に示す状態は浮き不良が発生する可能性が低いとの試験の結果が得られた場合を想定する。これに対応しては、例えば閾値thについて「0.4」を設定することができる。これにより、不良判定部114は、図11と図12に示す状態とを不良有りと判定し、図13に示す状態を不良無しと判定することができる。このように本実施形態においては、はんだ体積と接触面積の両者の不良発生要因を考慮した的確な不良判定が可能になる。
【0083】
これまでの説明から分かるように、本実施形態の評価値Eは、はんだ体積とパッド11に対する部品30の接触面積の積である乗算値SVa、SVbに基づいている。つまり、先に図4と図5により説明したように部品浮きの原因となるはんだ体積と接触面積の両方の要素が含まれたものとなっている。したがって、上記不良判定部114による判定対象の部品30ごとの不良判定は、はんだ体積と接触面積の両方の要素を考慮して行っているということになる。これにより、本実施形態では、はんだ体積と接触面積の個々の要素によっては不良とみなされないが両者が組み合わされたことにより部品浮きが発生するような場合であっても、的確に不良であると判定することができる。
【0084】
不良判定部114は、上記のように、判定対象の部品ごとに評価値Eに基づいた部品浮きの発生可能性の判定、つまり不良判定を行う。そして、基板10におけるすべての部品30についての不良判定を行った結果に基づき、基板10が不良であるか否かの基板不良判定を行う。つまり、少なくとも1つの部品30について不良有りと判定された場合には基板不良であると判定し、すべての部品30について不良無しと判定されたのであれば基板不良ではないと判定する。
【0085】
[部品実装システムの工程手順例]
図14は、図1に示した部品実装システム1により行われる、1枚の基板10を対象とする工程手順例を示すフローチャートである。まず、はんだ印刷装置2は、はんだ印刷工程としてのはんだ印刷を行う(ステップS101)。これにより基板10のパッド11に対してはんだ21が塗布される。
【0086】
次に、はんだ測定装置3は、はんだ印刷装置2によりはんだ21が塗布された基板10を対象に、塗布されたはんだ21ごとのはんだ体積、はんだ外形、はんだ印刷位置を測定する(ステップS102)。そして、はんだ測定装置3は、これらの測定結果を含むはんだ情報210を生成し、基板検査装置100に出力する(ステップS103)。
【0087】
部品装着装置4は、部品装着工程に対応して、上記はんだ測定装置3による測定が終了した基板10に対して部品30を装着する(ステップS104)。
【0088】
次に、部品測定装置5は、部品30が装着された基板10を対象に、装着された部品30ごとの部品外形、部品装着位置を測定する(ステップS105)。そして、部品測定装置5は、これらの測定結果を含むはんだ情報210を生成し、基板検査装置100に出力する(ステップS106)。
【0089】
基板検査装置100は、ステップS103によりはんだ測定装置3から出力されたはんだ情報210と、ステップS106により部品測定装置5から出力された部品情報220を取得する。そのうえで、これらの取得したはんだ情報210と部品情報220とを利用して基板不良判定を行う(ステップS107)。
【0090】
基板検査装置100は、上記ステップS107による基板不良判定により基板不良有りとの判定結果が得られたか否かについて判定する(ステップS108)。ここで、基板不良無しと判定された場合(ステップS108−NO)、基板10はリフロー炉6に搬入される。リフロー炉6は、搬入された基板10を加熱してはんだ付けするリフロー工程を行う(ステップS109)。これに対して、基板不良有りと判定した場合、基板10をステップS109のリフロー工程に送ることなく、基板検査装置100における通知制御部115が基板不良発生に応じた通知のための制御を実行する(ステップS110)。
【0091】
このように、本実施形態においては、リフロー工程の前段階において基板不良を判定できる。例えば特許文献1では、基板不良の検査はリフロー工程後において行われるようになっている。部品実装完了後(リフロー工程後)の基板に不良が検出された場合には、この基板から部品を取り外して付け直しなどの修正を行うことになるが、リフロー工程後においては、部品と基板のパッドとはんだにより既に接合された状態になっているため、はんだを溶かすなどして部品を外す必要があり手間がかかる。これに対して、本実施形態のようにリフロー工程の前段階で不良が検出可能となれば、まだはんだによる接合が完了していないので、基板に実装された部品の取り外し作業は非常に容易なものとなり、製造効率が向上する。
【0092】
[基板検査装置の処理手順例]
図15のフローチャートは、上記図14のステップS107としての基板不良判定のために基板検査装置100が実行する処理手順例を示している。この図に示す処理は、図7および図8に示したCPU101における機能部が実行するものとしてみることができる。
【0093】
まず、はんだ情報取得部111は、図14のステップS103によりはんだ測定装置3から出力されたはんだ情報210を取得する(ステップS201)。取得したはんだ情報210は前述のようにRAM102に記憶される。
【0094】
また、部品情報取得部112は、図14のステップS106により部品測定装置5から出力された部品情報220を取得する(ステップS202)。取得したはんだ情報210はRAM102に記憶される。
【0095】
次に、評価値算出部113は、判定対象の部品30を1つ選択する(ステップS203)。そして、RAM102に記憶されるはんだ情報210と部品情報220から、判定対象の部品30に対応付けられている所定の情報を読み込む(ステップS204)。つまり、はんだ情報210からは、判定対象の部品30のパッド11a、11bごとに対応するはんだ外形とはんだ印刷位置とはんだ体積Va、Vbを読み込む。また、部品情報220からは、判定対象の部品30に対応する部品外形と部品装着位置を読み込む。
【0096】
次に、評価値算出部113の接触面積算出部121は、上記のように読み込んだはんだ外形、はんだ印刷位置、部品外形および部品装着位置を利用して、前述のように、パッド11a、11bごとに対応する接触面積Sa、Sbを算出する(ステップS205)。
【0097】
評価値算出部113の乗算部122は、接触面積Saとはんだ体積Vaを乗算してパッド11aに対応した乗算値SVaを求めるとともに、接触面積Sbとはんだ体積Vbを乗算してパッド11bに対応した乗算値SVbを求める(ステップS206)。そして、評価値算出部113の評価値演算部123は、乗算値SVa、SVbを利用して、前述のように評価値Eを算出する(ステップS207)。
【0098】
不良判定部114は、上記のように算出された評価値Eと閾値thとについて、前述のように(E≦th)が成立するか否かについて判定する(ステップS208)。(E≦th)が成立する場合(ステップS208−YES)、不良判定部114は、判定対象の部品30について部品浮きの不良無しと判定する(ステップS209)。これに対して、(E≦th)が成立しない場合(ステップS208−NO)、不良判定部114は、判定対象の部品30について部品浮きの不良有りと判定する(ステップS210)。
【0099】
上記ステップS209またはS210の判定の後、不良判定部114は、基板不良判定対象の基板10におけるすべての部品30についての不良判定を終了したか否かについて判定する(ステップS211)。ここで、まだ不良判定を行っていない部品30が残っている場合には(ステップS211−NO)、ステップS203に戻ることで、次の判定対象の部品30についての不良判定処理に移行する。
【0100】
これに対して、すべての部品30の不良判定を終了した場合(ステップS211−YES)、不良判定部114は、これまでの部品30ごとの不良判定によりすべての部品について不良無しの判定結果が得られているか否かについて判定する(ステップS212)。ここで、すべての部品30について不良無しの判定結果が得られていると判定した場合には(ステップS212−YES)、基板不良無しと判定する(ステップS213)。これに対して、少なくとも1つの部品30について不良有りの判定結果が得られている場合(ステップS212−NO)、不良判定部114は、基板不良有りと判定する(ステップS214)。
【0101】
なお、上述の基板検査装置は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した不良判定の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0102】
また、図7における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより本実施形態における不良判定を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0103】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0104】
1 部品実装システム
2 印刷装置
3 はんだ測定装置
4 部品装着装置
5 部品測定装置
6 リフロー炉
10 基板
11、11a、11b パッド
30 部品
31、31a、31b 電極
100 基板検査装置
111 はんだ情報取得部
112 部品情報取得部
113 評価値算出部
114 不良判定部
115 通知制御部
121 接触面積算出部
122 乗算部
123 評価値演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ印刷工程により基板のパッドに塗布されたはんだを対象とした測定結果としてはんだ体積を含むはんだ情報を取得するはんだ情報取得部と、
前記はんだ印刷工程の後の部品装着工程によって前記基板に装着された部品を対象とした測定結果を含む部品情報を取得する部品情報取得部と、
前記はんだ情報と前記部品情報とに基づいて、判定対象の部品とパッドの接触面積を算出し、当該算出された接触面積と前記はんだ体積とに基づいて、前記判定対象の部品におけるはんだ付けの不良の有無を判定するのに利用する評価値を求める評価値算出部と、
前記評価値に基づいて前記判定対象の部品ごとにおけるはんだ付けの不良の有無を判定する不良判定部と
を備えることを特徴とする基板検査装置。
【請求項2】
前記はんだ情報は、前記はんだを対象とした測定結果として、はんだの外形を示すはんだ外形と、はんだが塗布された基板上の座標を示すはんだ印刷位置をさらに含み、
前記部品情報は、前記部品を対象とした測定結果として、部品の外形を示す部品外形と、部品が装着された基板上の座標を示す部品装着位置を含み、
前記評価値算出部は、
前記はんだ外形と前記はんだ印刷位置と前記部品外形と前記部品装着位置に基づいて、前記判定対象の部品とパッドごとの前記接触面積を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の基板検査装置。
【請求項3】
前記評価値算出部は、
前記判定対象の部品とパッドごとの前記接触面積と前記はんだ体積を乗算した乗算値に基づいて評価値を求める
ことを特徴とする請求項2に記載の基板検査装置。
【請求項4】
前記評価値算出部は、
前記判定対象の部品が接合されるパッドごとに対応して求められた前記乗算値の相違の割合を評価値として求める
ことを特徴とする請求項3に記載の基板検査装置。
【請求項5】
前記不良判定部は、基板におけるすべての部品のはんだ付けについて不良無しと判定した場合に、基板の不良が無いと判定する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の基板検査装置。
【請求項6】
基板のパッドにはんだを塗布するはんだ印刷工程を行うはんだ印刷装置と、
前記はんだ印刷装置により塗布されたはんだを対象として測定を行い、その測定結果としてはんだ体積を含むはんだ情報を生成するはんだ測定装置と、
前記はんだ印刷装置によりはんだが塗布された前記基板に部品を装着する部品装着工程を行う部品装着装置と、
前記部品装着装置により装着された前記部品を対象として測定を行い、その測定結果を含む部品情報を生成する部品測定装置と、
前記部品装着装置により前記部品が装着された前記基板を加熱して前記はんだを溶融させることにより、装着された前記部品を前記パッドにはんだ付けするリフロー工程を行うリフロー炉と、
前記基板におけるはんだ付け不良を検査する基板検査装置とを備え、
前記基板検査装置は、
前記はんだ測定装置から前記はんだ情報を取得するはんだ情報取得部と、
前記部品装着装置から前記部品情報を取得する部品情報取得部と、
前記はんだ情報と前記部品情報とに基づいて、判定対象の部品とパッドの接触面積を算出し、当該算出された接触面積と前記はんだ体積とに基づいて、前記判定対象の部品におけるはんだ付けの不良の有無を判定するのに利用する評価値を求める評価値算出部と、
前記評価値に基づいて前記判定対象の部品ごとにおけるはんだ付けの不良の有無を判定する不良判定部とを備える
ことを特徴とする部品実装システム。
【請求項7】
はんだ印刷工程により基板のパッドに塗布されたはんだを対象とした測定結果としてはんだ体積を含むはんだ情報を取得するはんだ情報取得ステップと、
前記はんだ印刷工程の後の部品装着工程によって前記基板に装着された部品を対象とした測定結果を含む部品情報を取得する部品情報取得ステップと、
前記はんだ情報と前記部品情報とに基づいて、判定対象の部品とパッドの接触面積を算出し、当該算出された接触面積と前記はんだ体積とに基づいて、前記判定対象の部品におけるはんだ付けの不良の有無を判定するのに利用する評価値を求める評価値算出ステップと、
前記評価値に基づいて前記判定対象の部品ごとにおけるはんだ付けの不良の有無を判定する不良判定ステップと
を備えることを特徴とする基板検査方法。
【請求項8】
コンピュータを、
はんだ印刷工程により基板のパッドに塗布されたはんだを対象とした測定結果としてはんだ体積を含むはんだ情報を取得するはんだ情報取得手段、
前記はんだ印刷工程の後の部品装着工程によって前記基板に装着された部品を対象とした測定結果を含む部品情報を取得する部品情報取得手段、
前記はんだ情報と前記部品情報とに基づいて、判定対象の部品とパッドの接触面積を算出し、当該算出された接触面積と前記はんだ体積とに基づいて、前記判定対象の部品におけるはんだ付けの不良の有無を判定するのに利用する評価値を求める評価値算出手段、
前記評価値に基づいて前記判定対象の部品ごとにおけるはんだ付けの不良の有無を判定する不良判定手段
として機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−69872(P2013−69872A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207451(P2011−207451)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】