説明

基板用カセット

【課題】少なくとも基板と接触する箇所の部材が、表面抵抗率10〜1014Ω/□の範囲内の所望の値に安定的に制御され、場所による表面抵抗率のバラツキが小さく、帯電防止性及び耐摩擦磨耗性に優れた樹脂部材によって形成された基板用カセットを提供する。
【解決手段】少なくとも基板と接触する箇所の部材が、合成樹脂30〜94重量%、10〜1010Ω・cmの体積抵抗率を有する炭素前駆体5〜40重量%、及び10未満の体積抵抗率を有する導電性充填材1〜30重量%を含有する樹脂組成物から形成された樹脂部材であり、かつ、該樹脂部材の電位が5000Vから50Vに低下するまでのスタティックディケイ時間が2秒以下である基板用カセット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板用カセットに関し、さらに詳しくは、エレクトロニクス実装技術分野における大型または超大型のガラス基板等の基板を収容するための基板用カセットに関する。本発明の基板用カセットは、例えば、液晶ディスプレイ用ガラス基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板、サーマルヘッド用ガラス基板などの薄板状の基板を収容するのに特に有用である。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクス実装技術では、膜技術と微小接続技術を駆使して、半導体や機能部品、回路部品などを配線基板の上に配置して接続し、これを他の構成部品とともに組み立てて、所望の電子回路を構成している。基板としては、例えば、ガラス基板、セラミック基板、シリコン基板、複合基板(例えば、樹脂/セラミック基板、樹脂/シリコン基板)、メタルベース・メタルコア基板(絶縁層は、ガラスやポリイミドなど)などの薄板状の基板が用いられている。
【0003】
これらの基板材料、導体パターンが形成された基板、薄膜トランジスタ(TFT)などの高機能素子を組み込んだ基板(例えば、液晶ディスプレイ用ガラス基板)などの各種基板は、実装基板や電子回路部品の製造工程等において、搬送、保管、組立作業などのために、複数枚が一緒にまとめられて一つの基板用カセットに収容されている。
【0004】
基板用カセットには、各基板が互いに接触しないように出し入れすることができるとともに、各基板を分離して支持し収容することができる構造を有していることが求められている。そのため、基板用カセットは、通常、箱型枠体から形成されており、該枠体の一対の対向する側面には溝付き側板が配置された構造を有している(特許文献1〜6)。各基板は、これら一対の側板の対応する溝間に収容される。溝付き側板の形状としては、側板の背肉部から多数のリブ状棚片が張り出した形状のものが一般的である。隣接する棚片間の空隙が溝となり、そこに基板が収容される。
【0005】
上記のような構造を有する基板用カセットの具体例について、図1及び2を参照しながら説明する。図1は、基板用カセットの一例の正面図である。この基板用カセットは、底面側フレーム1、上面側フレーム2、2枚の側板3,3、これら側板のそれぞれに設けられた複数のリブ状棚片4,4,・・・、及び受け側フレーム5,5から構成されている。隣接するリブ状棚片間が溝となって、そこに基板Aが収容される。
【0006】
図2に、上記の基板用カセットの斜視図を示す。図2に示す基板用カセットでは、箱型枠体の一対の側面に、溝付き側板3,3がそれぞれ3個づつ配置されているが、この個数は、基板の大きさなどに応じて適宜変更することができる。底面側フレーム1及び上面側フレーム2は、いずれも格子状に形成されているが、他の形状であってもよい。これらの各部材は、一般に、樹脂材料の射出成形により作製され、箱型枠体に組み立てられる。また、補強のために、樹脂部材と金属部材とを複合化した基板用カセットも用いられている。
【0007】
ガラス基板のサイズが大きくなると、その撓みが大きくなるため、溝付き側板のリブ状棚片でガラス基板を支える支承方式によっては、棚片間のピッチをかなり大きくしないとガラス基板の円滑な出し入れ操作を行うことができず、1個のカセットに収容しうるガラス基板の枚数も少なくなる。特許文献4には、ガラス基板の大型化に対処すべく、側板のリブ状棚片の長さを従来に比し著しく長くしたカセットが提案されている。リブ状棚片の長さを著しく長くすると、ガラス基板との接触による帯電や発塵の問題が発生しやすくなる。
【0008】
従来、基板の大型化または超大型化に対処しうる基板用カセットとして、トレイ形のカセットが提案されている(特許文献7)。特許文献7に開示されている基板用カセットは、例えば、図3に示すように、矩形骨格を形作る周枠31と、その周枠31間に架設された桟36とからなる基本構造を有する格子状のトレイ形のカセットである。周枠31のうちの左周枠32、右周枠34および後方周枠33により、主枠が構成されると共に、それら主枠の上面は、実質的に同一平面にある。周枠31のうちの前方周枠35と桟36とにより副枠が構成される。主枠は、その上面より低い位置に、主枠内側面または主枠底面から張り出す張出部材37を有している。主枠に付設の張出部材37上及び副枠36上には、基板を下方から支承するための樹脂ピン38,38,・・・が突設されると共に、これら樹脂ピン38の上端は、主枠上面で形成される平面よりも低位置の実質的に同一平面にある。さらに、主枠は、トレイの積み重ねを可能にする入り組み係合構造を有している。この基板用カセットは、多数の樹脂ピンで基板を安定して支承するため、基板の大型化に対処することができる。
【0009】
特許文献7には、基板と接する前記樹脂ピン38としては、基板との摩擦によっても発塵を生じ難い発塵防止性樹脂(例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、ポリアミド、超高分子量ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、各種エラストマー)で成形した成形体を用いることが望ましく、そのときには、フィラーを実質的に配合していないナチュラル品を用いて成形を行うことが記載されている。
【0010】
しかし、導電性充填材などのフィラーを実質的に含有していない合成樹脂を用いて成形した樹脂ピンは、高度の絶縁体であるため、ガラス基板と接触した際にガラス基板を帯電させたり、ガラス基板の回路を損傷したりするなどの不都合が生じる。例えば、基板用カセットに、薄膜トランジスタを形成したガラス基板を収容する場合、該ガラス基板と接触する部材が表面抵抗率が1014Ω/□より大きい絶縁体であると、該部材表面に帯電した静電気によりガラス基板の回路が損傷を受けたり、静電気によって空中に浮遊している塵埃がガラス基板に吸着されたりする。
【0011】
前記特許文献5には、基板支承用側板に設けた背肉部と舌状棚片を樹脂体で形成し、基板との接当部を発塵防止性樹脂で形成し、それ以外の部分を導電性物質配合樹脂で形成した基板支承用側板とそれを用いたカセットが開示されている。このカセットの棚片も、導電性物質を含まない樹脂で形成されているため、上記と同様の問題点を有している。
【0012】
一方、ガラス基板と接触するカセット部材の表面抵抗率が10Ω/□未満であると、該部材にガラス基板が接触した際、感電、漏電または帯電していたガラス基板が急激に放電して、回路が破損することがある。
【0013】
基板を静電気から保護し、塵埃を寄せつけずに適切なクリーン度を保つという点、並びに急激な放電を防ぎ、かつ絶縁体であるガラス基板を帯電させないという点からは、ガラス基板と接触するカセット部材の表面抵抗率を10〜1014Ω/□の範囲に調整することが望まれている。
【0014】
従来、合成樹脂に帯電防止剤や電気抵抗の小さなフィラー(導電性充填材)を配合した樹脂組成物から形成された成形物が、基板用カセットの部材として用いられている。しかし、帯電防止剤を含有する樹脂組成物から形成された成形物は、長期間の帯電防止性が十分ではない。すなわち、成形物の表面に存在する帯電防止剤は、水洗、摩擦などにより除去され、やがて帯電防止効果が失われる。帯電防止効果を長期間にわたって持続させるために、帯電防止剤の配合割合を高めると、多量の帯電防止剤が成形物の表面にブリードして、塵埃の付着が起こることに加えて、帯電防止剤の溶出及び揮発により周囲の環境が汚染されるという問題があった。
【0015】
導電性充填材を含有する樹脂組成物を用いて成形した基板用カセットの具体例としては、樹脂成分に、金属繊維とウイスカー状導電性材料とを含有せしめた樹脂組成物を溶融成形してなる基板用カセット(特許文献3)、樹脂成分に、金属繊維、金属粒子、カーボン繊維、カーボンブラック、グラファイト等の導電性物質を含有せしめた樹脂組成物を成形してなる部材を用いた基板用カセット(特許文献4)、基板との接当部以外の部分を導電性物質(金属繊維、金属粒子、カーボン繊維、カーボンブラック、グラファイト、イオン性高分子)を配合した樹脂組成物で形成した基板用カセット(特許文献5)が提案されている。
【0016】
しかし、電気絶縁性の合成樹脂からなる樹脂成分に導電性充填材を配合した樹脂組成物を用いて成形すると、導電性充填材と樹脂成分の電気抵抗率が大きくかけ離れていることや導電性充填材の均一分散が困難であることもあって、得られた成形物の電気抵抗率は、導電性充填材の含有量の僅かの変化でも急激に変化する。特に、基板用カセットに要求される表面抵抗率が10〜1014Ω/□の範囲において、表面抵抗率の変動が急激である。しかも、該樹脂組成物を成形してなる成形物の表面抵抗率は、場所によるバラツキが大きい。
【0017】
したがって、合成樹脂と前記の如き導電性充填材とを含有する樹脂組成物を用いたのでは、10〜1014Ω/□の範囲内の所望の表面抵抗率値を有する成形物を安定して成形することが極めて困難である。また、導電性充填材を配合した樹脂組成物を用いる従来技術では、成形物の場所による表面抵抗率のバラツキが大きいため、いずれの箇所をとっても一定の帯電防止性や表面抵抗率を示す基板用カセットとその部材を製造することが困難である。
【0018】
他方、特許文献8には、ポリアリーレンスルフィドとポリスルホンとのブレンドに、炭素前駆体と導電性充填材とを配合した樹脂組成物から形成された基板用カセットが提案されているが、帯電防止性、耐摩擦磨耗性、発塵防止性などの点でさらなる改良が求められている。
【0019】
【特許文献1】特開平6−286812号公報
【特許文献2】特開平6−247483号公報
【特許文献3】特開平5−147680号公報
【特許文献4】特開平9−36219号公報
【特許文献5】特開平8−46022号公報
【特許文献6】特開平8−310588号公報
【特許文献7】特開平10−287382号公報
【特許文献8】特開2002−80720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の課題は、少なくとも基板と接触する箇所の部材が、表面抵抗率10〜1014Ω/□の範囲内の所望の値に安定的に制御され、場所による表面抵抗率のバラツキが小さく、帯電防止性及び耐摩擦磨耗性に優れた樹脂部材によって形成された基板用カセットを提供することにある。
【0021】
また、本発明の課題は、少なくとも基板と接触する部材が、表面抵抗率10〜1014Ω/□の範囲内の所望の値に安定的に制御され、帯電防止性及び耐摩擦磨耗性に優れた突状の樹脂ピンである基板用カセットを提供することにある。
【0022】
特に、本発明の課題は、図3に示されているような矩形骨格を形作る周枠と該周枠間に架設された桟とからなる基本構造を有する格子状のトレイ形の基板用カセットであって、周枠に設けた張出部材上及び桟(副枠)上に配置された突状の樹脂ピンによって基板を支承する構造の基板用カセットにおいて、少なくとも樹脂ピンが、表面抵抗率10〜1014Ω/□の範囲内の所望の値に安定的に制御され、帯電防止性及び耐摩擦磨耗性に優れた樹脂部材によって形成された基板用カセットを提供することにある。
【0023】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、少なくとも基板と接触する箇所の部材が、合成樹脂30〜94重量%、10〜1010Ω・cmの体積抵抗率を有する炭素前駆体5〜40重量%、及び10未満の体積抵抗率を有する導電性充填材1〜30重量%を含有する樹脂組成物から形成された樹脂部材であり、かつ、該樹脂部材の電位が5000Vから50Vに低下するまでのスタティックディケイ時間が2秒以下である基板用カセットに想到した。
【0024】
特に、基板を支承する樹脂ピンを該樹脂組成物から形成すると、帯電防止性と耐摩擦磨耗性に優れた樹脂ピンを備えた基板用カセットを形成することができることに加えて、該樹脂ピンをアース(接地)することにより、帯電防止性をさらに向上させることができる。合成樹脂として、耐熱性、機械的特性、溶融流動性などに優れた樹脂材料を使用すると、これらの樹脂材料を単独で使用した場合に比べて、耐摩擦磨耗性に優れ、発塵防止性が改良された樹脂部材を形成することができる。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
かくして、本発明によれば、基板用カセットにおいて、少なくとも基板と接触する箇所の部材が、合成樹脂30〜94重量%、10〜1010Ω・cmの体積抵抗率を有する炭素前駆体5〜40重量%、及び10未満の体積抵抗率を有する導電性充填材1〜30重量%を含有する樹脂組成物から形成された樹脂部材であり、かつ、該樹脂部材の電位が5000Vから50Vに低下するまでのスタティックディケイ時間が2秒以下であることを特徴とする基板用カセットが提供される。
【0026】
特に、本発明によれば、少なくとも基板と接触する部材が、表面抵抗率10〜1014Ω/□の範囲内の所望の値に安定的に制御され、帯電防止性及び耐摩擦磨耗性に優れた突状の樹脂ピンである基板用カセットが提供される。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、少なくとも基板と接触する箇所の部材が、表面抵抗率10〜1014Ω/□の範囲内の所望の値に安定的に制御され、場所による表面抵抗率のバラツキが小さく、さらには、帯電防止性及び耐摩擦磨耗性に優れた樹脂部材によって形成された基板用カセットが提供される。本発明によれば、前記樹脂部材が基板を支承する樹脂ピンである基板用カセットが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
1.合成樹脂
本発明で使用する合成樹脂は、特に限定されず、例えば、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブテン、ポリ−p−キシレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリウレタン、ポリジメチルシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、ABS樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィドケトン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリエーテルニトリル、全芳香族ポリエステル、フッ素樹脂、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアミノビスマレイド、トリアジン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ジアリルテレフタレート樹脂、及びこれらの変性物などが挙げられる。
【0029】
フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニル、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体、プロピレン/テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロェチレン/パーフルオロアルキルパーフルオロビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/クロロトリフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン/イソブチレン共重合体、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/エチルビニルエーテル共重合体などが挙げられる。これらの合成樹脂は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
これらの合成樹脂の中でも、熱可塑性樹脂が好ましい。好ましい熱可塑性樹としては、例えば、ポリフェニレンスルフィドなどのポリアリーレンスルフィド;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトンなどを挙げることができる。
【0031】
より好ましい合成樹脂は、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート及びポリブチレンテレフタレートからなる群より選ばれる少なくとも一種の合成樹脂である。これらの合成樹脂に炭素前駆体と導電性充填材とを組み合わせて配合した樹脂組成物を使用することにより、炭素前駆体や導電性充填材を含有しない合成樹脂を用いた場合に比べて、耐摩擦磨耗性が改善された成形物(樹脂部材)を得ることができる。
【0032】
基板用カセットの基板と接触する箇所の樹脂部材は、基板との接触によって摩擦を受けて磨耗すると、樹脂粉などの粉末が脱落して基板を汚染する。このような脱落粉を発生し難い観点からは、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、及びポリブチレンテレフタレートからなる群より選ばれる少なくとも一種の合成樹脂を用いることが特に好ましい。
【0033】
基板を安定して支承し、かつ、基板の変形を引き起こさないようにするため、基板用カセットを構成する各種樹脂部材には、高度の寸法精度を有することが求められる。ポリエーテルスルホンは、脱落粉の発生が少ないことに加えて、成形性に優れており、成形物のアニーリング工程を省略しても、寸法精度の高い成形物を与えることができる。
【0034】
ポリエーテルスルホンと、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート及びポリブチレンテレフタレートからなる群より選ばれる少なくとも一種の合成樹脂との樹脂組成物は、脱落粉の防止性(発塵防止性)、成形性、寸法精度に優れるので好ましい。
【0035】
該樹脂組成物は、ポリエーテルスルホン5〜95重量%と他の合成樹脂95〜5重量%とを含有することが好ましく、ポリエーテルスルホン20〜80重量%と他の合成樹脂80〜20重量%とを含有することがより好ましく、ポリエーテルスルホン30〜70重量%と他の合成樹脂70〜30重量%とを含有することが特に好ましい。該樹脂組成物の中でも、ポリエーテルスルホンとポリフェニレンスルフィドとのブレンドが好ましい。
【0036】
基板用カセットを構成する樹脂部材は、帯電防止性に優れていることが重要である。炭素前駆体と導電性充填材とを配合した樹脂組成物から形成された成形物(樹脂部材)の帯電防止性は、後記するスタティックディケイ時間によって評価することができる。樹脂部材の電位が5000Vから50Vに低下するまでのスタティックディケイ時間が著しく短時間である点で、合成樹脂として、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルスルホンを含有する樹脂組成物、及びポリブチレンテレフタレートが好ましく、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、及びポリエーテルスルホン含有樹脂組成物がより好ましい。
【0037】
炭素前駆体と導電性充填材とを配合した樹脂組成物から形成された成形物(樹脂部材)が、基板との接触によって該基板に帯電させ難い観点からは、合成樹脂として、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルスルホン含有樹脂組成物、ポリエーテルイミド、及びポリブチレンテレフタレートが好ましく、ポリエーテルスルホンとポリフェニレンスルフィドとの樹脂組成物の如きポリエーテルスルホンを含有する樹脂組成物がより好ましい。
【0038】
樹脂組成物中の合成樹脂の配合割合は、30〜94重量%、好ましくは40〜92重量%、より好ましくは50〜87重量%、特に好ましくは60〜80重量%である。合成樹脂の配合割合が大きすぎると、炭素前駆体と導電性充填材の配合割合が過小となるため、成形物(樹脂部材)の表面抵抗率を十分に低くすることができず、所望の半導電性領域の表面抵抗率(10〜1014Ω/□)を有する樹脂部材を得ることが困難になる。合成樹脂の配合割合が小さすぎると、炭素前駆体と導電性充填材の配合割合が過大となるため、成形物(樹脂部材)の引張伸びなどの機械的特性が低下する。
【0039】
2.炭素前駆体
本発明で使用する体積抵抗率が10〜1010Ω・cmの範囲内にある炭素前駆体は、有機物質を不活性雰囲気中400℃〜900℃の温度で焼成することにより得ることができる。このような炭素前駆体は、例えば、(1)石油タール、石油ピッチ、石炭タール、石炭ピッチなどのピッチやタールを加熱し、芳香族化と重縮合を行い、必要に応じて、酸素雰囲気中において酸化・不融化し、さらに、不活性雰囲気において加熱・焼成する方法、(2)ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂を酸素雰囲気中において不融化し、さらに、不活性雰囲気中で加熱・焼成する方法、(3)フェノール樹脂、フラン樹脂などの熱硬化性樹脂を加熱硬化後、不活性雰囲気中で加熱・焼成する方法により製造することができる。炭素前駆体とは、これらの処理によって、炭素の含有量が97重量%以下の完全には炭素化していない物質を意味する。
【0040】
有機物を不活性雰囲気中で加熱・焼成すると、焼成温度が上昇するにつれて、得られる焼成体の炭素含有量が上昇する。炭素前駆体の炭素含有量は、焼成温度を適正に設定することによって、容易に制御することができる。本発明で使用する、体積抵抗率が10〜1010Ω・cmの炭素前駆体は、炭素含有量が通常85〜97重量%の範囲内であって、完全には炭化していない状態の炭素材料として得ることができる。
【0041】
炭素前駆体の炭素含有量が少なすぎると、その体積抵抗率が大きくなり、得られる樹脂部材の表面抵抗率を小さくすることが困難となる。炭素前駆体の炭素含有量が多すぎると、その体積抵抗率が小さくなり、得られる成形物(樹脂部材)の表面抵抗率が小さくなりすぎ、しかも炭素前駆体の配合割合の僅かの変化でも得られる樹脂部材の表面抵抗率が急激に変化する。したがって、このような炭素前駆体を用いると、所望の半導電性領域の表面抵抗率を有する樹脂部材を、安定して再現性よく製造することが困難となる。炭素前駆体の体積抵抗率は、好ましくは10〜10Ω・cm、より好ましくは10〜10Ω・cmである。
【0042】
炭素前駆体は、通常、粒子または繊維の形状で使用される。本発明で用いる炭素前駆体粒子の平均粒子径は、1mm以下が好ましい。炭素前駆体粒子の平均粒径が大きすぎると、樹脂組成物を成形した場合に、良好な外観の成形物を得ることが難しくなる。炭素前駆体粒子の平均粒子径は、通常、0.1μm〜1mm、好ましくは1μm〜0.1mm、より好ましくは5〜500μmである。多くの場合、5〜50μm程度の平均粒子径の炭素前駆体粒子を使用することにより、良好な結果を得ることができる。炭素前駆体の平均粒子径は、フルイ分け法(マイクロメッシュシーブ、標準フルイ)により測定することができる。
【0043】
本発明で使用する炭素前駆体繊維の平均直径は、0.1mm以下が好ましい。炭素前駆体繊維の平均直径が0.1mmを越えると、樹脂組成物を成形した場合に、良好な外観の成形物を得ることが難しくなる。炭素前駆体繊維の平均直径の下限値は、1μm程度である。炭素前駆体繊維は、平均繊維長が通常100mm以下、多くの場合50mm以下の短繊維であることが分散性の観点から好ましい。炭素前駆体繊維の平均繊維長の下限値は、通常5μm、多くの場合10μm程度である。
【0044】
合成樹脂組成物中の体積抵抗率が10〜1010Ω・cmの範囲内にある炭素前駆体の配合割合は、5〜40重量%、好ましくは7〜35重量%、より好ましくは10〜30重量%、特に好ましくは15〜25重量%である。炭素前駆体の配合割合が大きすぎると、得られる成形物(樹脂部材)の引張伸びが低下し、機械的特性が悪化する。炭素前駆体の配合割合が小さすぎると、樹脂部材の表面抵抗率を十分に下げることが困難となるか、表面抵抗率を半導電性領域に制御することが困難となる。
【0045】
3.導電性充填材
本発明で使用する体積抵抗率が10Ω・cm未満の導電性充填材としては、例えば、炭素繊維、導電性カーボンブラック、黒鉛、金属粉末が挙げられる。これらの中でも、表面抵抗率の制御性及び再現性の観点から、炭素繊維、導電性カーボンブラック、黒鉛、及びこれらの混合物などの導電性炭素材料が好ましく、炭素繊維がより好ましい。本発明で使用する導電性炭素材料は、短繊維状または粒状(粉末状や鱗片状を含む)である。
【0046】
本発明で使用する炭素繊維としては、例えば、セルロース系炭素繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、リグニン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維(石炭ピッチ系炭素繊維及び石油ピッチ系炭素繊維)が挙げられる。これらの中でもPAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、及びこれらの混合物が好ましい。炭素繊維の体積抵抗率は、通常、10−1Ω・cmから10−3Ω・cm程度である。
【0047】
炭素繊維の平均直径は、0.1mm以下であることが好ましい。炭素繊維の平均直径が大きすぎると、良好な外観や金型転写性を有する成形物を得ることが難しくなる。炭素繊維の平均直径の下限値は、通常5μm、多くの場合10μm程度である。炭素繊維は、平均繊維長が50μm以上で、かつ、短繊維であることが好ましい。炭素繊維の平均繊維長が50μm以上であることにより、クリープ特性、弾性率、強度等の機械的性質の改善効果が顕著となる。炭素繊維の混合前の平均繊維長の上限は80mm程度である。混合・押出後の樹脂組成物中での炭素繊維の平均繊維長の上限は、1000μm程度である。
【0048】
本発明で使用する導電性カーボンブラックとしては、例えば、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラックを挙げることができる。これらの中でも、導電性グレードであるアセチレンブラック及びオイルファーネスブラックが好ましい。導電性グレードのカーボンブラックの体積抵抗率は、通常、10−1Ω・cmから10−2Ω・cm程度である。これらの導電性カーボンブラックは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0049】
本発明で使用する黒鉛としては、例えば、コークス、タール、ピッチなどを高温で黒鉛化処理した人造黒鉛;鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛、及び土状黒鉛等の天然黒鉛を挙げることができる。黒鉛の体積抵抗率は、通常、10−2Ω・cm程度である。
【0050】
本発明で使用する導電性充填材の体積抵抗率は、10Ω・cm未満であり、その下限は、通常、金属粉末や金属繊維などの金属材料の体積抵抗率である。
【0051】
体積抵抗率が10Ω・cm未満の導電性充填材の配合割合は、0.5〜30重量%、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは3〜20重量%、特に好ましくは5〜15重量%である。導電性充填材の配合割合が大きすぎると、得られる成形物(樹脂部材)の表面抵抗率が低くなりすぎて、表面抵抗率を所望の半導電性領域に制御することが困難となる。導電性充填材の配合割合が小さすぎると、得られる成形物の表面抵抗率を十分に下げることが困難となるか、表面抵抗率を所望の半導電性領域に制御することが困難となる。導電性充填材の配合割合を小さくして、炭素前駆体の配合割合を大きくすると、成形物(樹脂部材)の機械的特性が低下するか、ガラス基板の表面電位を十分に下げることができなくなる。
【0052】
4.その他の充填材
本発明の基板用カセットの樹脂部材を構成する樹脂組成物には、機械的強度や耐熱性の向上を目的として、その他の各種充填材を配合することができる。その他の充填材としては、例えば、ガラス繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリ繊維などの無機繊維状物;ステンレス、アルミニウム、チタン、鋼、真鍮などの金属繊維状物:ポリアミド、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などの高融点有機質繊維状物質;等の繊維状充填材が挙げられる。
【0053】
また、その他の充填材として、例えば、マイカ、シリカタルク、アルミナ、カオリン、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、フェライト、クレー、ガラス粉、酸化亜鉛、炭酸ニッケル、酸化鉄、石英粉末、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム等の粒状または粉末状充填材を挙げることができる。ただし、成形物の表面抵抗率を好ましい範囲内に制御するには、非導電性の充填材を用いることが望ましい。
【0054】
その他の充填材は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。その他の充填材は、必要に応じて、集束剤または表面処理剤により処理されていてもよい。集束剤または表面処理剤としては、例えば、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物などの官能性化合物が挙げられる。これらの化合物は、充填材に対して予め表面処理または集束処理を施して用いるか、あるいは樹脂組成物の調製の際に、他の充填材と同時に添加してもよい。
【0055】
5.その他の添加剤
本発明の基板用カセットには、前記以外のその他の添加剤として、例えば、エポキシ基含有α−オレフィン共重合体のような衝撃改質剤、エチレングリシジルメタクリレートのような樹脂改良剤、ペンタエリスリトールテトラステアレートのような滑剤、難燃剤、染料や顔料等の着色剤等を適宜添加することができる。
【0056】
6.樹脂組成物
本発明で使用する樹脂組成物は、一般に樹脂組成物の調製に用いられる設備と方法を用いて調製することができる。例えば、各原料成分をヘンシェルミキサーやタンブラー等の混合機により予備混合し、必要に応じて、ガラス繊維等のその他の充填材を加えてさらに混合した後、1軸または2軸の押出機を使用して混練し、押し出して成形用ペレットとすることができる。必要成分の一部をマスターバッチとしてから残りの成分と混合する方法、また、各成分の分散性を高めるために、使用する原料の一部を粉砕し、粒径を揃えて混合し、溶融押出することも可能である。
【0057】
7.基板用カセット
本発明の基板用カセットは、少なくとも基板と接触する箇所の部材が、合成樹脂30〜94重量%、10〜1010Ω・cmの体積抵抗率を有する炭素前駆体5〜40重量%、及び10未満の体積抵抗率を有する導電性充填材1〜30重量%を含有する樹脂組成物から形成された樹脂部材であり、かつ、該樹脂部材の電位が5000Vから50Vに低下するまでのスタティックディケイ時間が2秒以下である。
【0058】
樹脂部材のスタティックディケイ時間は、好ましくは1.5秒以下、より好ましくは1秒以下である。合成樹脂として、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルスルホン含有樹脂組成物(例えば、ポリエーテルスルホンとポリフェニレンスルフィドとを含有する樹脂組成物)、ポリカーボネート、及びポリブチレンテレフタレートを使用すると、スタティックディケイ時間を0.5秒以下にすることができる。ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、及びポリエーテルスルホン含有樹脂組成物を使用すると、スタティックディケイ時間を0.01秒以下にまで短くすることができる。
【0059】
本発明の樹脂組成物から形成された樹脂部材の表面抵抗率は、10〜1014Ω/□の範囲内の所望の値に制御することができる。樹脂部材の表面抵抗率は、好ましくは10〜1013Ω/□、より好ましくは10〜1012Ω/□である。樹脂部材の場所による表面抵抗率のバラツキは、極めて小さいものである。また、本発明の樹脂組成物から形成された樹脂部材は、ガラス基板などの基板に対する帯電性が顕著に抑制されており、該樹脂部材と接触した基板の表面電位を低水準に維持することが可能である。本発明の樹脂組成物から形成された樹脂部材は、耐摩擦磨耗性に優れており、基板との接触により脱落粉を生じがたいものである。
【0060】
本発明の樹脂部材の引張伸び(ASTM D638)は、機械的特性の観点から、2.0%以上であることが好ましい。樹脂部材の引張伸びが低すぎると、可撓性が損なわれて、衝撃などの外力によって破損しやすくなる。引張伸びの上限値は、合成樹脂の種類や各成分の配合割合にもよるが、通常10%程度である。
本発明において、樹脂部材のスタティックディケイ時間、表面抵抗率、引張伸びなどの諸特性は、後述する実施例に記載されている測定法によって測定された値である。
【0061】
本発明の基板用カセットは、特定の構造のものに限定されないが、通常は、箱型枠体から形成されたものであって、該枠体の一対の対向する側面には溝付き側板が配置された構造を有している。前述した通り、このような基板用カセットの具体例は、図1及び図2に示されているような構造を有している。
【0062】
典型的な基板用カセットは、図1及び2に示すように、底面側フレーム1、上面側フレーム2、一対の側板3,3、これらの側板のそれぞれに設けられたリブ状の棚片4,4,・・・、及び受け側フレーム5,5から構成されている。リブ状棚片は、側板の背肉部から所定のピッチで平行に多数枚が突き出すように設けられている。隣接するリブ状の棚片間が溝となって、そこに基板Aが収容される。溝付き側板の形状や大きさは、所望に応じて、種々に変えることができる。これらの各部材は、通常、射出成形により製造され、その後、箱型枠体に組み立てられる。各部材は、それぞれ全体が樹脂組成物から成形されていてもよく、あるいは金属インサート品またはアウトサート品など金属体との複合物であってもよい。
【0063】
このような構造の基板用カセットは、少なくとも基板と接触する箇所を、前記樹脂組成物から形成された樹脂部材とで構成する。全部材が樹脂組成物から形成されていてもよい。基板と接触する部材としては、例えば、溝付き側板3,3、受け側フレーム5,5などがある。溝付き側板3,3は、側板本体とリブ状棚片とが樹脂組成物により一体的に成形されていてもよく、あるいは別々に成形された樹脂部材を一体的に組み立ててもよい。また、側板本体は、骨格を金属で作成し、そのまわりに樹脂組成物をインサートまたはアウトサート成形により複合化したものであってもよい。受け側フレーム5,5は、1つでもよく、2つ以上であってもよい。また、受け側フレームは、平板状であってもよいが、溝付き側板と同様に、リブ状の棚片を設けたものであってもよい。
【0064】
本発明の好適な基板用カセットの構造としては、基板を支承する樹脂部材が突状の樹脂ピンから構成された構造のものである。樹脂ピンを備えた基板用カセットの代表的な例としては、矩形骨格を形作る周枠と該周枠間に架設された桟とからなる基本構造を有する格子状のトレイ形の基板用カセットであって、周枠に設けた張出部材上及び桟(副枠)上に配置された突状の樹脂ピンによって基板を支承する構造の基板用カセットである。
【0065】
樹脂ピンを備えた基板用カセットは、例えば、図3に示すように、矩形骨格を形作る周枠31と、その周枠31間に架設された桟36とからなる基本構造を有する格子状のトレイ形のカセットである。周枠31のうちの左周枠32、右周枠34および後方周枠33により、主枠が構成されると共に、それら主枠の上面は、実質的に同一平面にある。周枠31のうちの前方周枠35と桟36とにより副枠が構成される。主枠は、その上面より低い位置に、主枠内側面または主枠底面から張り出す張出部材37を有している。主枠に付設の張出部材37上及び副枠36上には、基板を下方から支承するための樹脂ピン38,38,・・・が突設されている。この基板用カセットは、多数の樹脂ピンで基板を安定して支承するため、基板の大型化に対処することができる。このトレイ形カセットは、複数のカセットを積み重ねて使用することができる。
【0066】
少なくとも基板と接する樹脂ピン38は、前記樹脂組成物によって形成する。樹脂ピンと張出部材、樹脂ピンと張出部材と周枠、樹脂ピンと桟は、樹脂組成物によって、それぞれ一体的に成形してもよい。本発明の基板用カセットは、それを構成する樹脂部材を表面抵抗率10〜1014Ω/□の範囲内の所望の値に安定的に制御された成形物によって形成するため、帯電防止性及び耐摩擦磨耗性に優れるとともに、半導電性を利用して、基板と接触する樹脂ピンをアースして、帯電防止性や放電性を高度に抑制することができる。樹脂ピンのアースには、樹脂部材で形成された基板用カセットの適当な箇所に導線を接続し、接地すればよい。このような樹脂ピンのアースは、従来のナチュラル品(フィラーを含有しない合成樹脂成形物)による樹脂ピンでは不可能であった。
【0067】
本発明の好ましい他の基板用カセットの例を図4に示す。図4に示す基板用カセット41は、前記図1及び2に示される基板用カセットと同様、箱型枠体からなる基板用カセットであり、図4は、その正面図である。図4に示される基板用カセット41は、底面側フレーム49、上面側フレーム48、一対の側柱42,42、これらの側柱42,42のそれぞれに設けられた支持棒43,43,・・・、及び受け側柱45から構成されている。支持棒43,43、・・・は、側柱42,42から所定のピッチで平行に突き出すように設けられている。支持棒43,43,・・・の先端部には、樹脂ピン44,44,・・・が配置されている。
【0068】
このような樹脂ピン44が配置された支持棒43,43,・・・を備えた側柱42,42の一対が、必要数(例えば、3〜4対)だけ奥行き方向に配置されている。この点では、図1及び2において、リブ状棚片を備えた側板3,3の一対が複数配置されているのと同様である。基板は、対向する一対の支持棒43,43の樹脂ピン44,44上に載置される。箱型枠体の後方には、受け側柱45,45,・・・が配置されている。この受け側柱45,45,・・・にも、前方に突き出した受け側支持棒46,46,・・・が設けられており、その先端部にも樹脂ピン47,47,・・・が設けられている。この受け側支持棒の樹脂ピン上にまで基板を押し込んで載置することにより、基板中央部のたるみを防止することができる。受け側支持棒は、複数(例えば、2〜5個)を配置することができる。
【0069】
樹脂ピン44,47は、前記樹脂組成物によって形成する。側柱42,42、支持棒43,43、受け側柱45,45、受け側支持棒46,46は、導電性材料(例えば、ステンレス、アルミニウムなどの金属)により構成することができる。底面側フレーム49及び上面側フレーム48も、導電性材料により構成することができる。これらの導電性材料から構成された側柱などを接地すれば、樹脂ピンをアースすることができる。
【0070】
本発明の基板用カセットに収容する基板としては、ガラス基板、セラミック基板、シリコン基板、複合基板(例えば、樹脂/セラミック基板、樹脂/シリコン基板)、メタルベース・メタルコア基板(絶縁層は、ガラスやポリイミドなど)などの薄板状の基板を挙げることができる。これらの基板の用途としては、エレクトロニクス実装技術分野における液晶ディスプレイ用ガラス基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板、サーマルヘッド用ガラス基板、LSIパッケージ用セラミック基板、ハイブリッドIC用セラミック基板など挙げることができる。本発明の基板用カセットは、特に液晶ディスプレイ用ガラス基板などのガラス基板を収容するのに好適である。
【実施例】
【0071】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。物性及び特性の測定方法は、以下に示すとおりである。
【0072】
(1)表面抵抗率
試料の表面抵抗率が1×10Ω/□以上の場合は、JIS K6911に従って、定電圧器(菊水社製300−1A型)、電流計(ケースレー社製616型)及び試料セル(横河・ヒューレトパッカード社製1608A型)を用い、印加電圧100Vで表面抵抗率を測定した。試料の表面抵抗率が1×10Ω/□未満の場合には、JIS K7194に従って、三菱化学社製ロレスターHPを用いて測定した。試料の表面抵抗率は、単位表面積当りの抵抗を表す。表面抵抗率の単位は、Ωであるが、単なる抵抗値と区別するために、Ω/□またはΩ/sq.(オーム・パー・スクエア)と表記する。
【0073】
(2)ガラス基板の表面電位測定
室温23℃、相対湿度50%の条件で、試料(形状=20cm×20cm×1cm)をガラス基板(形状=6cm×4cm×0.05cm)と摩擦させた後のガラス基板の表面電位を、表面電位計(トレックジャパン社製、商品名「Model344」)で測定した。摩擦は、ガラス基板を試料上に配置した後、イオナイザーで除電し、次いで、リストストラップで接地した人間がガラス基板を10回スライドさせる方法により行った。スライド後、ガラス基板の表面電位を測定した。この表面電位(V)は、試料のガラス基板に対する帯電性の指標となるものであり、表面電位が大きいほど、帯電させ易い傾向が強いことを示す。
【0074】
(3)スタティックディケイ時間(Static Decay Time)の評価
ETS社製のスタティックディケイ測定器(商品名「STATIC DECAY METER−406C」)を用い、MIL−B−81705Cに従って、5000Vから50Vへのスタティックディケイ時間を測定した。より具体的には、試料(形状=12cm×10cm×0.3cm)をチャージプレートモニター上に置き、5000Vまでチャージアップした後、該試料を通じて電荷をディスチャージし、該試料の電位が50Vになるまでの時間(秒)を測定した。このスタティックディケイ時間が短いほど、静電気の蓄積傾向が弱いことを示す。
【0075】
(4)耐摩擦磨耗性
試料(形状=20cm×20cm×1cm)の上でガラス基板(形状=6cm×4cm×0.05cm)を手で押さえながら1000回スライドさせて摩擦磨耗させ、その後、試料の状態を目視により下記の5段階で評価した。
A:試料の削れが極めて小さい、
B:試料の削れが小さい、
C:試料の削れが少しある、
D:試料の削れが少し目立つ、
E:試料の削れが極めて大きい。
(5)引張伸び
試料の引張伸びは、ASTM D638に従って測定した。引張伸びが2.0%以上であれば、実用上の機械的特性が十分である。
【0076】
[製造例1]炭素前駆体の製造例
軟化点210℃、キノリン不溶分1重量%、H/C原子比0.63の石油系ピッチ68kgとナフタレン32kgとを、攪拌翼のついた内容積300リットルの耐圧容器に仕込み、190℃に加熱して溶解混合した後、80〜90℃に冷却して押し出し、直径が約500μmの紐状成形体を得た。次いで、この紐状成形体を直径と長さの比が約1.5になるように粉砕し、得られた粉砕物を、93℃に加熱した0.53%のポリビニルアルコール(ケン化度88%)水溶液中に投下し、撹拌分散し、冷却して球状ピッチ成形体を得た。さらに、濾過を行なって水分を除去し、球状ピッチ成形体の約6倍量のn−ヘキサンでピッチ成形体中のナフタレンを抽出除去した。
【0077】
このようにして得られた球状ピッチ成形体を、加熱空気を通じながら、260℃で1時間保持して酸化処理を行い、酸化ピッチを得た。この酸化ピッチを窒素気流中で580℃で1時間熱処理した後、粉砕して、平均粒子径が約25μmの炭素前駆体粒子とした。この炭素前駆体粒子の炭素含有量は、91重量%であった。この炭素前駆体の体積抵抗率を調べるために、炭素前駆体粒子13gを、断面積80cmの円筒金型に充填し、圧力196MPaで成形して、成形体試料を得た。この試料について、JIS K 7194に準拠して体積抵抗率を測定したところ、5×10Ω・cmであった。
【0078】
[実施例1]
ポリエーテルエーテルケトン(ビクトレックス社製、VICTREX PEEK 150P)72重量部、製造例1で調製した炭素前駆体16重量部、及び炭素繊維(東邦レーヨン社製、商品名「ベスファイトHTA3000」)12重量部をヘンシェルミキサーで均一にドライブレンドした後、混合物を45mmφの2軸混練押出機(池貝鉄工所社製「PCM−45」)へ供給し、溶融押出を行いペレットを作製した。得られたペレットを乾燥した後、射出成形機(東芝機械社製IS−75)により、測定用試料(平板)を作製した。結果を表1に示す。
【0079】
[実施例2〜6]
合成樹脂の種類と各成分の配合割合を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、測定用試料を作製した。結果を表1に示す。
【0080】
[比較例1〜6]
合成樹脂の種類と各成分の配合割合を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、測定用試料を作製した。結果を表1に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
(脚注)
(1)ポリエーテルエーテルケトン(ビクトレックス社製150P)、
(2)ポリエーテルスルホン(住友化学社製3600P)、
(3)ポリフェニレンスルフィド(株式会社クレハ製フォートロンKPS W−214)、
(4)ポリエーテルイミド(GEポリマーランドジャパン社製1000−1010)、
(5)ポリカーボネート(三菱ガス化学社製ユーピロンS−2000)、
(6)ポリブチレンテレフタレート(ポリプラスチックス社製ジュラネックス2002)、
(7)炭素前駆体(体積抵抗率5×10Ω・cm、炭素含有量91重量%)、
(8)PAN系炭素繊維(東邦レーヨン社製ベスファイトHTA3000)、
(9)表面抵抗率の値について、例えば、2E+08との表記は、2×10を意味する。
【0083】
<考察>
表1の結果から明らかなように、合成樹脂、炭素前駆体、及び導電性充填材を特定の割合で併用すると(実施例1〜6)、10〜1014Ω/□の表面抵抗率を示し、かつ、スタティックディケイ時間が2秒以下である成形物を得ることができる。合成樹脂として、ポリエーテルエーテルケトン(実施例1)、ポリエーテルスルホン(実施例2)、ポリエーテルスルホン含有樹脂組成物(実施例3;ポリエーテルスルホンとポリフェニレンスルフィドとを含有する樹脂組成物)、ポリカーボネート(実施例5)、及びポリブチレンテレフタレート(実施例6)を使用すると、スタティックディケイ時間を0.5秒以下にすることができる。合成樹脂として、ポリエーテルエーテルケトン(実施例1)、ポリエーテルスルホン(実施例2)、及びポリエーテルスルホン含有樹脂組成物(実施例3)を使用すると、スタティックディケイ時間を0.01秒以下にすることができる。
【0084】
本発明の樹脂組成物を用いて形成した成形物は、ガラス基板と摩擦させた場合のガラス基板表面電位を低水準に抑えることができ、基板用カセットの材料としての要求特性を満足する。合成樹脂として、ポリエーテルエーテルケトン(実施例1)、ポリエーテルスルホン(実施例2)、ポリエーテルスルホンを含有するブレンド(実施例3)、及びポリブチレンテレフタレート(実施例6)を使用すると、ガラス基板の表面電位を150V以下の低水準に抑制することができ、特にポリエーテルスルホンを含有するブレンド(実施例3)を使用すると、ガラス基板の表面電位を極めて低水準に抑制することができる。
【0085】
これに対して、炭素前駆体と導電性充填材を含有しない合成樹脂を用いた場合(比較例1〜6)には、成形物の表面抵抗率が1015Ω/□以上と大きいことに加えて、スタティックディケイ時間が60秒以上と長く帯電防止機能が働いていないものである。しかも、比較例1〜6の成形物は、摩擦によりガラス基板の表面電位を1000V以上にまで上昇させるため、基板用カセットに対する要求水準を満足しないものである。
【0086】
本発明の樹脂組成物を用いて形成した成形物(実施例1〜6)は、それぞれ対応する合成樹脂を用いて形成した比較例の成形物(比較例1〜6)と比べて、耐摩擦磨耗性が改善されている。例えば、ポリエーテルエーテルケトンを単独で使用した成形物(比較例1)に比べて、ポリエーテルエーテルケトンに炭素前駆体と炭素繊維を配合した樹脂組成物から形成した成形物(実施例1)は、これらの充填材を含有するにもかかわらず、耐摩擦磨耗性の評価がBからAに向上している。同様の傾向は、実施例2と比較例2との対比、実施例4と比較例4との対比、実施例5と比較例5との対比、実施例6と比較例6との対比結果にも現れており、いずれも合成樹脂に炭素前駆体と炭素繊維を配合した樹脂組成物から形成した成形物の方が、これらの充填材を含有しない合成樹脂から形成した成形物に比べて、耐摩擦磨耗性が改善されている。
【0087】
特に、合成樹脂として、ポリエーテルスルホンとポリフェニレンスルフィドとを含有する樹脂組成物を用いて形成した成形物(実施例3)は、ポリエーテルスルホン成形物(比較例2)及びポリフェニレンスルフィド成形物(比較例3)に比べて、耐摩擦磨耗性が顕著に改善されている。
【0088】
本発明の樹脂組成物から形成された成形物(樹脂部材)は、空気中を浮遊している塵埃などを吸着することがなく、薄膜トランジスタを組み込んだガラス基板の回路を破壊するおそれもない。
【0089】
[比較例7〜10]
合成樹脂の種類と各成分の配合割合を表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、測定用試料を作製した。結果を表2に示す。
【0090】
【表2】

【0091】
(脚注)
(1)ポリエーテルエーテルケトン(ビクトレックス社製150P)、
(2)炭素前駆体(体積抵抗率5×10Ω・cm、炭素含有量91重量%)、
(3)PAN系炭素繊維(東邦レーヨン社製ベスファイトHTA3000)、
(4)表面抵抗率の値について、例えば、2E+08との表記は、2×10を意味する。
【0092】
<考察>
ポリエーテルエーテルケトンに、PAN系炭素繊維を単独で配合した樹脂組成物から形成された成形物(比較例7)は、表面抵抗率が低くなりすぎる上、ガラス基板の表面電位を十分に低くすることが困難である。PAN系炭素繊維の配合割合を小さくすると(比較例8)、スタティックディケイ時間が長くなり、ガラス基板の表面電位も著しく大きくなる。
【0093】
ポリエーテルエーテルケトンに、炭素前駆体を単独で多量に配合した樹脂組成物から形成された成形物(比較例9)は、引張伸びが小さく、機械的特性に劣るものである。炭素前駆体の配合割合を小さくすると(比較例10)、引張伸びを改善することができるものの、スタティックディケイ時間が長くなり、ガラス基板の表面電位も著しく大きくなる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の基板用カセットは、エレクトロニクス実装技術分野における液晶ディスプレイ用ガラス基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板、サーマルヘッド用ガラス基板、LSIパッケージ用セラミック基板、ハイブリッドIC用セラミック基板などの各種基板のカセットとして有用である。また、本発明の基板用カセットは、樹脂ピンを備えた構造の大型基板用のカセットとして使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】図1は、基板用カセットの一例を示す正面図である。
【図2】図2は、基板用カセットの一例を示す斜視図である。
【図3】図3は、格子状のトレイ形基板用カセットの一例を示す斜視図である。
【図4】図4は、基板用カセットの他の一例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0096】
1:底面側フレーム、
2:上面側フレーム、
3:側板、
4:リブ状の棚片、
5:受け側フレーム、
A:基板、
31:矩形骨格を形作る周枠、
32:左周枠、
33:後方周枠、
34:右周枠、
35:前方周枠、
36:桟(副枠)、
37:張出部材、
38:樹脂ピン、
41:基板用カセット、
42:側柱、
43:支持棒、
44:樹脂ピン、
45:受け側柱、
46:受け側支持棒、
47:樹脂ピン、
48:上面側フレーム、
49:底面側フレーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板用カセットにおいて、少なくとも基板と接触する箇所の部材が、合成樹脂30〜94重量%、10〜1010Ω・cmの体積抵抗率を有する炭素前駆体5〜40重量%、及び10未満の体積抵抗率を有する導電性充填材1〜30重量%を含有する樹脂組成物から形成された樹脂部材であり、かつ、該樹脂部材の電位が5000Vから50Vに低下するまでのスタティックディケイ時間が2秒以下であることを特徴とする基板用カセット。
【請求項2】
該樹脂部材の表面抵抗率が、10〜1014Ω/□の範囲である請求項1記載の基板用カセット。
【請求項3】
該樹脂部材の引張伸びが、2.0%以上である請求項1または2記載の基板用カセット。
【請求項4】
該樹脂部材が、基板を支承する突状の樹脂ピンである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の基板用カセット。
【請求項5】
該樹脂ピンが、アースされた構造を有する請求項4記載の基板用カセット。
【請求項6】
該合成樹脂が、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、及びポリブチレンテレフタレートからなる群より選ばれる少なくとも一種の合成樹脂である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の基板用カセット。
【請求項7】
該合成樹脂が、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、及びポリブチレンテレフタレートからなる群より選ばれる少なくとも一種の合成樹脂である請求項6記載の基板用カセット。
【請求項8】
該合成樹脂が、ポリエーテルスルホン5〜95重量%と、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、及びポリブチレンテレフタレートからなる群より選ばれる少なくとも一種の合成樹脂95〜5重量%とを含有する樹脂組成物である請求項6記載の基板用カセット。
【請求項9】
該樹脂組成物が、ポリエーテルスルホン5〜95重量%及びポリフェニレンスルフィド95〜5重量%を含有するブレンドである請求項8記載の基板用カセット。
【請求項10】
該炭素前駆体が、85〜97重量%の炭素含有量を有し、完全には炭化していない炭素材料である請求項1乃至9のいずれか1項に記載の基板用カセット。
【請求項11】
該炭素前駆体が、平均粒子径0.1μm〜1mmの粒子である請求項10記載の基板用カセット。
【請求項12】
該導電性充填材が、炭素繊維である請求項1乃至11のいずれか1項に記載の基板用カセット。
【請求項13】
該炭素繊維が、平均直径が0.1mm以下で、平均繊維長が50μm〜80mmの短繊維である請求項12記載の基板用カセット。
【請求項14】
ガラス基板を収容するためのカセットである請求項1乃至13のいずれか1項に記載の基板用カセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−324640(P2006−324640A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−77555(P2006−77555)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】