説明

基板用支持体及び基板収納容器

【課題】薄膜が支持片と接触して剥離したり、クラックが発生するのを抑制し、基板に設計通りの加工等を施すことができ、基板の汚染や製品の歩留まり低下を防止できる基板用支持体及び基板収納容器を提供する。
【解決手段】表面から裏面の周縁にかけて金属薄膜が積層された半導体ウェーハ1を挟んで対向する一対の支持枠41と、各支持枠41に形成されて半導体ウェーハ1の側部周縁に沿う複数の支持片46とを備え、複数の支持片46に半導体ウェーハ1を水平に支持させる。各支持片46を、支持枠41の前部に形成される前部支持片47と、支持枠41の後部に形成されて前部支持片47の後方に位置する後部支持片51に分割し、前部支持片47と後部支持片51に支持突部60を形成する。各支持突部60の表面の一部を湾曲させて半導体ウェーハ1の裏面に接触可能とし、表面の残部を半導体ウェーハ1の裏面に非接触の傾斜面とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ、ガラスウェーハ、マスクガラス等からなる基板を支持する基板用支持体及び基板収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の基板収納容器は、半導体ウェーハ1を収納可能なフロントオープンボックスタイプの容器本体と、この容器本体の開口した正面を開閉する蓋体と、容器本体の内部両側に配設されて半導体ウェーハ1を支持する基板用支持体とを備え、加工が施された半導体ウェーハ1を一時的に収納したり、保管したり、搬送する(特許文献1、2参照)。
【0003】
半導体ウェーハ1は、例えばφ300mmの丸いシリコンウェーハからなり、全表面から裏面2の周縁にかけて回路パターンの配線形成用の金属薄膜3が積層加工された(図7参照)後、所定の加工や処理が施される。また、基板用支持体は、容器本体の内側、換言すれば、容器本体の側壁内面に一体成形されたり、あるいは容器本体とは別体に成形されて後付けされ、容器本体の内方向に板形の支持片を突出させて半導体ウェーハ1の側部周縁(エッジ)やその金属薄膜3に接触させ、半導体ウェーハ1を水平に支持するよう機能する。
【0004】
ところで近年、半導体部品の微細化や回路パターンの配線の狭ピッチ化が進んでいるが、このような技術的な動向に鑑み、有機物の付着や発塵により半導体ウェーハ1が汚染しないよう、半導体ウェーハ1と基板用支持体との接触面積を減少させる様々な方法が検討され、提案されている。
例えば、支持片を先細りに形成してその半導体ウェーハ1の側部周縁や金属薄膜3に接触する表面を傾斜させ、半導体ウェーハ1と支持片との接触面積を減少させる方法等が提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005‐64378号公報
【特許文献2】特開2006‐324327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来における基板収納容器は、以上のように構成され、半導体ウェーハ1の全表面から裏面2の周縁にかけて回路パターンの配線形成用の金属薄膜3が積層されている場合、半導体ウェーハ1の側部周縁の金属薄膜3に基板用支持体の支持片が単に接触するので、金属薄膜3が支持片との接触に伴い、剥離したり、外部から衝撃が作用することでマイクロクラックが発生し、金属薄膜3が剥がれやすくなるおそれがある。
【0007】
金属薄膜3が剥離したり、マイクロクラックが発生すると、金属薄膜3の剥離部やマイクロクラックの発生部に設計通りの加工や処理を後から施すことができず、大きな問題が生じる。また、剥がれ落ちた金属薄膜3等により半導体ウェーハ1の汚染を招き、製品の歩留まりが低下してしまうこととなる。
【0008】
本発明は上記に鑑みなされたもので、薄膜が支持片と接触して剥離したり、クラックが発生するのを抑制し、基板に設計通りの加工等を施すことができ、しかも、基板の汚染や製品の歩留まりが低下するのを防ぐことができる基板用支持体及び基板収納容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明においては上記課題を解決するため、表面から裏面の周縁にかけて回路用の薄膜が積層された基板を挟んで対向する一対の支持体と、この一対の支持体にそれぞれ形成されて基板の側部周縁に沿う複数の支持片とを備え、この複数の支持片に基板を略水平に支持させるものであって、
支持片を、支持体の前部に形成される前部支持片と、支持体の後部に形成されて前部支持片の後方に位置する後部支持片とに分割し、これら前部支持片と後部支持片とに支持突部をそれぞれ形成し、支持突部の表面の一部を湾曲させて基板の裏面に接触可能とするとともに、支持突部の表面の残部を基板の裏面に非接触の傾斜面に形成したことを特徴としている。
【0010】
なお、支持体は、間隔をおいて対向する上下一対の横桟と、この一対の横桟の両端部間に架設される一対の縦桟とを備え、一対の横桟の間に屈曲連結片を架設して支持片の前部支持片と後部支持片との間に介在させることができる。
また、支持片の前部支持片と後部支持片との表面に支持突部をそれぞれ0.5〜3mmの高さで形成し、この支持突部を基板の周縁から1mm以上内側の裏面に接触させ、前部支持片あるいは後部支持片の表面と支持突部の傾斜面との角度を10〜30°とすることができる。
【0011】
また、本発明においては上記課題を解決するため、基板を収納する容器本体の開口した正面を蓋体により開閉するものであって、
容器本体の内部両側に請求項1又は2記載の基板用支持体を設けたことを特徴としている。
【0012】
ここで、特許請求の範囲における基板は、表面から裏面の周縁にかけて回路用の薄膜が積層されるのであれば、少なくともφ300、450、600mmの半導体ウェーハ、ガラスウェーハ、マスクガラスが含まれる。支持体は、中空の枠形でも良いし、板形等でも良い。また、容器本体の内部両側に基板用支持体を設ける場合には、容器本体の内部両側に基板用支持体を着脱自在に取り付けても良いし、可能であれば、基板用支持体を成形した後、容器本体用の金型にインサートして容器本体と一体成形しても良い。容器本体は、透明、不透明、半透明のいずれでも良い。
【0013】
本発明によれば、基板用支持体の支持片の支持突部、すなわち、前部支持片と後部支持片の各支持突部が基板の周縁ではなく、基板の周縁から内側の裏面に接触するので、基板周縁の薄膜に基板用支持体の支持突部が非接触となる。この支持突部の非接触により、基板を覆う薄膜が支持片との接触に伴い、剥離したり、外部から衝撃が作用することでクラックが発生し、薄膜が剥がれやすくなるおそれを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、薄膜が支持片と接触して剥離したり、クラックが発生するのを抑制することができるという効果がある。また、基板に設計通りの加工や処理等を施すことができ、基板の汚染や製品の歩留まりが低下するのを有効に防ぐことができるという効果がある。
【0015】
また、支持突部を基板の周縁から1mm以上内側の裏面に接触させれば、支持突部が基板周縁の薄膜に接触するのを防ぐことができる。また、支持片の前部支持片と後部支持片との表面に支持突部をそれぞれ0.5〜3mmの高さで形成し、前部支持片あるいは後部支持片の表面と支持突部の傾斜面との角度を10〜30°とすれば、支持突部と基板周縁の薄膜との接触を防止することができ、しかも、支持突部を含む基板用支持体を成形する際、金型から基板用支持体を容易に脱型することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【図2】本発明に係る基板収納容器の実施形態における容器本体から蓋体を取り外した状態を模式的に示す斜視説明図である。
【図3】図2の断面説明図である。
【図4】本発明に係る基板用支持体の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【図5】本発明に係る基板用支持体の実施形態における支持片と支持突部とを模式的に示す説明図である。
【図6】本発明に係る基板用支持体の実施形態における支持突部の支持状態を模式的に示す要部拡大説明図である。
【図7】半導体ウェーハの表面から裏面の周縁にかけて回路パターンの配線形成用の金属薄膜を積層した状態を模式的に示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、図1ないし図7に示すように、薄く撓みやすい半導体ウェーハ1を収納可能な容器本体10と、この容器本体10の開口した正面19を着脱自在に開閉する蓋体30と、容器本体10の内部両側に配設される基板用支持体40とを備え、この基板用支持体40の湾曲した支持片46を、前部支持片47と後部支持片51とに分割してそれら47・51の表面には半導体ウェーハ1用の支持突部60をそれぞれ形成するようにしている。
【0018】
半導体ウェーハ1は、図7に示すように、例えば925μmの厚さを有するφ450mmの大口径のシリコンウェーハからなり、周縁に位置合わせや識別用の図示しないノッチが平面半円形に切り欠かれており、容器本体10に複数枚(具体的には25枚等)が所定のピッチで整列して水平に収納される。この半導体ウェーハ1の全表面から裏面2の周縁にかけては回路パターンの配線形成用の金属薄膜3が積層加工され、その後、後工程で所定の加工や処理が順次施される。
【0019】
容器本体10と蓋体30とは、所定の樹脂を含有する成形材料により複数の部品がそれぞれ射出成形され、この複数の部品の組み合わせで構成される。この成形材料の所定の樹脂としては、例えば力学的性質や耐熱性等に優れるポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、液晶ポリマー、あるいは環状オレフィン樹脂等があげられる。これらの樹脂には、カーボン、カーボン繊維、金属繊維、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー、帯電防止剤、又は難燃剤等が必要に応じて選択的に添加される。
【0020】
容器本体10は、図1ないし図3に示すように、成形材料により不透明のフロントオープンボックスタイプに形成され、開口した横長の正面19を水平横方向に向けた状態で半導体加工装置や気体置換装置上に位置決めして搭載されたり、洗浄槽の洗浄液により洗浄される。
【0021】
容器本体10は、底板11の四隅部付近に円筒形のフィルタボスがそれぞれ穿孔して配設され、この複数のフィルタボスに給気用フィルタ12と排気用フィルタ13とがそれぞれOリングを介し着脱自在に嵌合される。これら給気用フィルタ12と排気用フィルタ13とは、気体置換装置に接続されて容器本体10内の空気を窒素ガスに置換し、半導体ウェーハ1の表面酸化等を防止するよう機能する。
【0022】
容器本体10の底板11の前部両側と後部中央とには、基板収納容器、具体的には容器本体10を位置決めする位置決め具がそれぞれ螺着される。また、容器本体10の底板11には、複数の給気用フィルタ12、排気用フィルタ13、及び位置決め具をそれぞれ露出させるボトムプレート14が水平に覆着され、このボトムプレート14の後部には、複数の識別孔が穿孔されており、この複数の識別孔に着脱自在の情報識別パッドが選択的に挿入されることにより、基板収納容器の種類や半導体ウェーハ1の枚数等が半導体加工装置に識別される。
【0023】
容器本体10の天板15の中央部には、工場の天井搬送機構に把持される搬送用のトップフランジ16が水平に螺着されており、容器本体10の背面壁の中央部には、必要に応じ、透明の覗き窓が二色成形法等により縦長に形成される。この覗き窓を必要に応じて形成した場合には、容器本体10の内部を外部から視覚的に観察・把握することができる。
【0024】
容器本体10の両側壁17の内面には、基板用支持体40を装着するための嵌合部や取付爪が配設され、両側壁17の表面(外面)には、搬送用のレール18が前後方向にそれぞれ伸長形成される。また、容器本体10の正面19の周縁には、外方向に張り出すリムフランジ20が膨出形成され、このリムフランジ20の内周面の上下両側部には、蓋体30の施錠機構34用の係止穴21がそれぞれ穿孔されており、リムフランジ20内に着脱自在の蓋体30が蓋体開閉装置により嵌合される。
【0025】
蓋体30は、図1に示すように、容器本体10の開口した正面19内に嵌合する横長の筐体31と、この筐体31の開口した表面(正面)を被覆する表面プレート32と、これら筐体31と表面プレート32との間に介在される施錠用の施錠機構34とを備えて構成される。筐体31は、基本的には枠形の周壁を備えた浅底の断面略皿形に形成され、周壁の上下両側部には、施錠機構34用の貫通孔がそれぞれ穿孔されており、各貫通孔がリムフランジ20の係止穴21に対向する。
【0026】
筐体31の裏面両側部には、筐体31に剛性を付与して反りを防止するリブがそれぞれ一体形成され、各リブには、半導体ウェーハ1の前部周縁を弾発的に保持するフロントリテーナがそれぞれ着脱自在に装着される。また、筐体31の裏面周縁部には枠形の嵌合溝が形成され、この嵌合溝には、容器本体10のリムフランジ20との間に複数の貫通孔を挟むリップタイプのガスケットが密嵌されており、このガスケットがリムフランジ20内に圧接する。
【0027】
ガスケットは、例えば耐熱性や耐候性等に優れるフッ素ゴム、シリコーンゴム、各種の熱可塑性エラストマー(例えば、オレフィン系、ポリエステル系、ポリスチレン系等)等を成形材料として弾性変形可能な枠形に成形され、外周面には、容器本体10の正面19から背面壁方向に傾斜しながら指向する先細りの屈曲突片がエンドレスに一体形成されており、この屈曲突片がリムフランジ20の内周面に屈曲しながら圧接し、気密性を確保する。
【0028】
表面プレート32は、筐体31の開口した表面に対応するよう横長の平板に形成され、左右両側部には、施錠機構34用の操作口33がそれぞれ穿孔される。また、施錠機構34は、表面プレート32の操作口33を貫通した蓋体開閉装置の操作ピンに回転操作される左右一対の回転プレートと、各回転プレートの回転に伴い上下方向にスライドする複数のスライドプレートと、各スライドプレートのスライドに伴い筐体31の貫通孔から突出してリムフランジ20の係止穴21に係止する複数の係止爪とを備え、容器本体10の正面19に嵌合した蓋体30を施錠して脱落を有効に防止する。
【0029】
基板用支持体40は、所定の樹脂、例えば滑り性に優れるポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、あるいはCOP等を含有する成形材料により射出成形される。この成形材料の樹脂には、カーボン繊維、金属繊維、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー、導電性の付与された樹脂等が必要に応じ選択的に添加される。
【0030】
基板用支持体40は、図2ないし図6に示すように、容器本体10の両側壁17内面にそれぞれ対向して半導体ウェーハ1を挟む左右一対の支持枠41と、この一対の支持枠41から上下に並んだ状態で突出し、半導体ウェーハ1の側部周縁に沿いながら水平に支持する複数の支持片46とを備え、各支持片46を、支持枠41の前部から水平横方向に突出して半導体ウェーハ1の少なくとも側部前方の周縁を水平に支持する前部支持片47と、支持枠41の後部から水平横方向に突出して半導体ウェーハ1の少なくとも側部後方の周縁を水平に支持する後部支持片51とから形成しており、容器本体10の両側壁17内面にそれぞれ着脱自在に装着される。
【0031】
一対の支持枠41は、相対向する左右一対の支持片46により、半導体ウェーハ1を両側から水平に支持するよう機能する。各支持枠41は、間隔をおいて相対向する上下一対の横桟42と、この一対の横桟42の前後両端部間に縦に架設される一対の縦桟43とを備えた横長に形成される。
【0032】
一対の横桟42は、その中央部間に、支持枠41内を前後に区画する屈曲連結片44が縦に架設され、この屈曲連結片44が支持片46の前部支持片47と後部支持片51との間に介在する。一対の横桟42の後部間には、屈曲連結片44の後方に位置する板形の補強連結片45が選択的に縦に架設され、一対の横桟42の後部は、半導体ウェーハ1の側部後方の周縁に沿うよう容器本体10の内方向に向け徐々に屈曲される。
【0033】
各横桟42の最前部には、容器本体10の側壁17内面の嵌合部に着脱自在に嵌合する取付ピンが上下方向に突出形成され、各横桟42の前部には、取付ピンの後方に低く位置する板形の位置決め取付片が上下方向に突出形成されており、この位置決め取付片が容器本体10の側壁17内面の嵌合部に着脱自在に位置決め嵌合される。また、横桟42の後部長手方向には、容器本体10内に接触する複数の高さ調整ピンが間隔をおき配列形成され、この複数の高さ調整ピンが支持枠41や複数の支持片46の上下方向の高さを適切に調整する。
【0034】
前部の縦桟43の中央部には、容器本体10の側壁17内面の取付爪に対する取付溝が切り欠かれ、後部の縦桟43の端部には、上下方向に伸びる断面略円形の取付膨張片が一体形成されており、この取付膨張片が容器本体10内に着脱自在に固定される。取付溝は、矩形に切り欠かれ、容器本体10からの支持枠41の飛び出しを防止する。
【0035】
各支持片46の前部支持片47は、支持枠41の前部、換言すれば、前部の縦桟43から半導体ウェーハ1の側部前方の周縁に直線的かつ水平に長く伸びる平板形の突出部48と、この突出部48の先端から半導体ウェーハ1の側部周縁に沿うよう湾曲しながら後方に伸びる平板形の屈曲部49とを備え、支持枠41との間に屈曲した平面略三角形の空洞部50が区画形成されており、屈曲部49の後端が支持枠41の屈曲連結片44に連結される。
【0036】
各支持片46の後部支持片51は、半導体ウェーハ1の側部後方の周縁に沿うよう平面略半円弧形の平板に形成され、後部の縦桟43と屈曲連結片44との間に水平に架設されるとともに、補強連結片45に水平に連結支持されており、屈曲部49の後端後方に隙間をおいて隣接する。
【0037】
各支持突部60は、図3ないし図6に示すように、基本的には略半球形あるいは略半楕球形に形成され、前部支持片47の屈曲部49前方と後部支持片51の後部の平坦な表面にそれぞれ突出形成されており、半導体ウェーハ1の裏面2に接触して水平に支持するよう機能する。この支持突部60の表面の一部61は、図5や図6に示すように、丸く湾曲して半導体ウェーハ1の周縁から1mm以上、好ましくは3mm以上内側の金属薄膜3の存在しない裏面2に点接触する。
【0038】
これに対し、支持突部60の表面の残部62は、同図に示すように、成形時に抜けにくいアンダーカット部になるのを防止する観点から、容器本体10の内方向から側壁17内面方向に向かうに従い徐々に下降して前部支持片47あるいは後部支持片51の表面に連なる傾斜面63に形成され、半導体ウェーハ1の裏面2に対して非接触の関係となる。
【0039】
支持突部60は、図5に示すように、前部支持片47と後部支持片51の表面にそれぞれ0.5〜3mmの高さhで形成され、前部支持片47あるいは後部支持片51の表面と傾斜面63との角度θが10〜30°の範囲に設定される。これは、支持突部60が0.5〜3mmの高さhで、傾斜面63の角度θが10〜30°の範囲であれば、支持突部60と半導体ウェーハ1の金属薄膜3との接触を防止することができ、しかも、支持突部60を含む基板用支持体40を金型により成形する際、金型から斜めに容易に脱型することができるからである。
【0040】
なお、前部支持片47と後部支持片51における支持突部60の少なくとも周縁部付近には、半導体ウェーハ1との接触磨耗を低減する観点から、平均表面粗さ(Ra)が15〜45μmのシボが選択的に形成される。
【0041】
上記構成によれば、基板用支持体40の支持突部60における表面の一部61が半導体ウェーハ1の側部周縁ではなく、半導体ウェーハ1の側部周縁から1mm以上内側に離れた裏面2に点接触するので、半導体ウェーハ1の側部周縁から裏面2側に回りこんだ金属薄膜3に基板用支持体40の支持突部60が接触しなくなる。これにより、金属薄膜3が支持片46との接触に伴い、剥離したり、外部から衝撃が作用することでマイクロクラックが発生し、金属薄膜3が剥がれやすくなるおそれを実に有効に払拭することができる。
【0042】
したがって、金属薄膜3の剥離部やマイクロクラックの発生部に設計通りの加工や処理を後から適切に施すことができ、しかも、剥がれ落ちた金属薄膜3等により半導体ウェーハ1の汚染を招いたり、製品の歩留まりが低下してしまうこともない。さらに、半導体ウェーハ1の側部周縁ではなく、側部周縁からから1mm以上内側に離れた裏面2に複数の支持突部60がそれぞれ接触するので、従来に比べ、半導体ウェーハ1の撓み量を大いに低減することができる。
【0043】
なお、上記実施形態では容器本体10の側壁17内面に基板用支持体40を単に装着したが、容器本体10の側壁17内面に係止部を形成し、この係止部に基板用支持体40を着脱自在に係止させても良い。この場合、係止部は、容器本体10の側壁17内面に一体形成しても良いが、別体として成形した後、容器本体10用の金型にインサートして容器本体10の側壁17内面に一体成形しても良い。また、支持枠41の屈曲連結片44を、前部支持片47と後部支持片51の湾曲方向とは反対側等に屈曲させたり、湾曲させることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 半導体ウェーハ(基板)
2 裏面
3 金属薄膜(薄膜)
10 容器本体
17 側壁
19 正面
30 蓋体
40 基板用支持体
41 支持体(支持枠)
42 横桟
43 縦桟
44 屈曲連結片
46 支持片
47 前部支持片
51 後部支持片
60 支持突部
61 表面の一部
62 表面の残部
63 傾斜面
h 支持突部の高さ
θ 傾斜面の角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面から裏面の周縁にかけて回路用の薄膜が積層された基板を挟んで対向する一対の支持体と、この一対の支持体にそれぞれ形成されて基板の側部周縁に沿う複数の支持片とを備え、この複数の支持片に基板を略水平に支持させる基板用支持体であって、
支持片を、支持体の前部に形成される前部支持片と、支持体の後部に形成されて前部支持片の後方に位置する後部支持片とに分割し、これら前部支持片と後部支持片とに支持突部をそれぞれ形成し、支持突部の表面の一部を湾曲させて基板の裏面に接触可能とするとともに、支持突部の表面の残部を基板の裏面に非接触の傾斜面に形成したことを特徴とする基板用支持体。
【請求項2】
支持片の前部支持片と後部支持片との表面に支持突部をそれぞれ0.5〜3mmの高さで形成し、この支持突部を基板の周縁から1mm以上内側の裏面に接触させ、前部支持片あるいは後部支持片の表面と支持突部の傾斜面との角度を10〜30°とした請求項1記載の基板用支持体。
【請求項3】
基板を収納する容器本体の開口した正面を蓋体により開閉する基板収納容器であって、
容器本体の内部両側に請求項1又は2記載の基板用支持体を設けたことを特徴とする基板収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−60877(P2011−60877A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206704(P2009−206704)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】