堆積物の掻寄装置
【課題】 駆動チェーンの調整を不要とすることができる堆積物の掻寄装置を提供する。
【解決手段】 堆積物の掻寄装置1は、堆積物を掻き寄るフライト12が複数配設された掻寄架台20と、掻寄架台20を槽10の底面10bに対して往復運動させる駆動装置50とを備える。駆動装置50では、ケーシング52が槽10の水中に配置され、ケーシング52の一端にはモータ51が配置されている。ケーシング52内において、モータ51の軸は中間軸62の上端に連結されており、中間軸62の下端はベベルギア58の軸に連結されている。ベベルギア58は、駆動軸61に取付けられたベベルギア59と噛合する。ケーシング62は水密構造となっており、中間軸62等は、槽10内の水に接触しないようにされている。
【解決手段】 堆積物の掻寄装置1は、堆積物を掻き寄るフライト12が複数配設された掻寄架台20と、掻寄架台20を槽10の底面10bに対して往復運動させる駆動装置50とを備える。駆動装置50では、ケーシング52が槽10の水中に配置され、ケーシング52の一端にはモータ51が配置されている。ケーシング52内において、モータ51の軸は中間軸62の上端に連結されており、中間軸62の下端はベベルギア58の軸に連結されている。ベベルギア58は、駆動軸61に取付けられたベベルギア59と噛合する。ケーシング62は水密構造となっており、中間軸62等は、槽10内の水に接触しないようにされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、槽の底に堆積した堆積物を掻き寄せる堆積物の掻寄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば沈殿池等の槽の底に堆積する堆積物を効率的に掻き寄せる堆積物の掻寄装置として、特許文献1に記載されているような装置が知られている。特許文献1記載の装置においては、駆動軸に固定された主務チェーンが水を満たした槽内で循環するようになっており、主務チェーンの外周には、複数の長板状のフライト(掻寄羽根)が一定間隔で取付けられている。水中に配置された駆動軸と水上に配置された原動モータとの間には駆動チェーンが設けられ、原動モータの回転動力が駆動チェーンによって駆動軸に伝達され、主務チェーンに取付けられたフライトが槽の底に沿って移動し、槽の底に堆積した堆積物を掻き寄せるようになっている。
【特許文献1】特開2004−344737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような堆積物の掻寄装置では、原動モータから駆動チェーンを介して動力を伝達し、フライトを駆動している。この駆動チェーンは、運転時間が長くなるにつれて伸びが発生し、放置すると駆動チェーンがスプロケットの歯から外れ、掻寄装置が運転不能となる。このため、掻寄装置の運転時間の経過とともに、しばしばテークアップ装置等でチェーンの張りを調整する必要がある。
【0004】
また、上記のような装置では、駆動チェーンが水中に没するため、水中の浮遊物あるいはスカムが付着し、運転の妨げとなっている。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、駆動チェーンの調整を不要とすることができる堆積物の掻寄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、槽の底に堆積する堆積物を掻き寄せる掻寄羽根と、掻寄羽根を前記槽の底に沿って運動させる駆動手段とを備え、駆動手段は、槽の水面上に配置され回転動力を発生する動力源と、動力源からの回転動力を伝達する動力伝達軸と、槽の水面下に配置され、動力伝達軸によって伝達された回転動力を掻寄羽根の運動に変換する動力変換手段とを有する堆積物の掻寄装置である。
【0007】
この構成によれば、動力伝達軸が、水面上に配置された動力源からの回転動力を、水面下に配置された動力変換手段に伝達するため、駆動チェーンの調整を不要とすることができる。
【0008】
この場合、動力伝達軸は水密構造の容器内に収容されているものであることが好適である。この構成によれば、動力伝達軸が水密構造の容器内に収容されているため、動力伝達軸に水中の浮遊物およびスカムが付着することがない。
【0009】
この場合、動力変換手段はスプロケットとチェーンとを含むものとすることができる。この構成によれば、据え付け等の精度があまり要求されないために設置やメンテナンスが容易である。
【0010】
この場合、動力変換手段は小歯車とラックとを含むものとすることができる。この構成によれば、堆積物等の夾雑物を含む水中での駆動により適する。
【0011】
この場合、動力変換手段は直交軸減速機を含むものとすることができる。なお、本明細書において、「直交軸減速機」とは、互いに直交する2軸間に回転動力を伝達する減速機を意味する。
【0012】
この場合、直交軸減速機はかさ歯車を含むものとすることができる。また、直交軸減速機はウォームギアを含むものとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の堆積物の掻寄装置によれば、駆動チェーンの調整を不要とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る堆積物の掻寄装置について説明する。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
図1は本実施形態に係る堆積物の掻寄装置を示す正面模式図、図2は本実施形態に係る堆積物の掻寄装置を示す側面模式図である。
【0016】
本実施形態の堆積物の掻寄装置1は、図1に示すように、槽10の底面10bに堆積する汚泥等の堆積物を汚泥ピット10aに向けて掻き寄せるものであって、堆積物を掻き寄るフライト12(掻寄羽根)が水平方向に複数配設された梯子状の掻寄架台20と、この掻寄架台20を槽10の底面10bに対して略平行に往復運動させる駆動装置50(駆動手段)と、を備えている。
【0017】
掻寄架台20は、図1及び図2に示すように、この掻寄架台20の往復方向に延在する2本の平行な駆動方向材21と、この2本の駆動方向材21に対して垂直に交差して配置されると共に互いに所定間隔離間された複数の平行材22と、を備えている。平行材22と駆動方向材21とは、図4に示すように、平行材22に固定された結合板22aと、駆動方向材21に固定された結合板21aと、がネジ固定されることによって接続され、梯子型の形状をなしている。
【0018】
この平行材22の両端には、この平行材22の軸周りに回転可能な主ローラ24が各々設置されている。また、この平行材22は、この平行材22の軸回りに揺動可能とされたアーム25を、この平行材22の両方の軸端に離間して2つ備えている。そして、上述の結合板22aは、図4及び図5に示すように、アーム25が、平行材22の鉛直下方に垂下する第一の揺動位置から復動側(図5の図示右側)への揺動を制限する突起としてのアームストッパ26を備えている。
【0019】
各アーム25の先端部には、図1及び図2に示すように、平行材22の軸方向に延在し、この槽10の底面10bに堆積した堆積物を掻き寄せるフライト12が設置されている。
【0020】
図1に示すように、隣接する3つのアーム25同士は、当該3つのアーム25の揺動動作を連動すべく連結部材110によって連結されている。連結部材110は、駆動方向材21の軸方向に延材し、3つのアーム25に対してピン111で各々回動可能に連結されている。なお、連結部材110はアーム25に代えてフライト12に連結されていてもよい。互いに連結された3つのアーム25の内の一つのアーム25には、図4に示すように、その先端側に平行材22の軸方向外側に向かって平行材22の両端の主ローラ24と略同じ位置まで突出するバー23と、バー23の先端に設置されこのバー23の軸周りに回転可能な副ローラ27と、を各々備えている。なお、副ローラ27はバー等を介してフライト12に設けられていてもよい。以下、便宜上、副ローラ27を有するアーム25と副ローラ25を有するアーム25に支持されるフライト12との組合せを主動部100と呼び、副ローラ27を有さないアーム25と副ローラ27を有さないアーム25に支持されたフライト12との組合せを従動部105と呼ぶ。
【0021】
駆動装置50は、図1〜3に示すように、槽10の水面上に当該回転軸を垂直にして配置され正逆方向に回転可能なモータ51(動力源)と、槽10の水面下に至りモータ51の回転動力を伝達する中間軸62(動力伝達軸)とを有する。中間軸62は、ケーシング52内に収容されている。また駆動装置50は、槽10の水面下において、ケーシング52内に中間軸62の回転軸方向を変換するベベルギア(かさ歯車)58,59を有し、さらに掻寄架台20の往復方向と垂直な水平軸回りに正逆回転されるピンギア(スプロケット)103と、駆動方向材21に固定部材102を介して曲折不能に固定され、掻寄架台20の往復方向に延在してピンギア103と噛合する噛合部材(チェーン)101とを有し、これらがモータ51の回転動力をフライト12の往復動に変換する動力変換手段を構成する。本実施形態のような噛合部材101とピンギア103を用いた駆動方式は、ピンギア方式とよばれ、掻寄架台20や噛合部材101等の据え付け等の精度があまり要求されないために設置やメンテナンスが容易とされ、堆積物等の夾雑物を含む水中での駆動にも適している。なお、場合によっては、ピンギア103に代えてピニオンギア(小歯車)を採用し、噛合部材101に代えてラックを採用した、いわゆるラックピニオン方式としてもよい。
【0022】
図3に示すように、本実施形態の駆動装置50においては、円筒状のケーシング52が、当該長手方向を垂直にして槽10に満たされた水中に配置されている。ケーシング52の一端は、槽10の水面上に突出しており、回転動力を発生するモータ51が配置されている。ケーシング52の上部は、振れ止め55によって、槽10の側壁10cに固定されており、モータ51の回転動力の反作用によって、ケーシング52自体が回転することを防いでいる。
【0023】
ケーシング52内において、モータ51の軸は、上部カップリング53によって中間軸62の上端に連結されている。中間軸62は、ケーシング62内において、上部軸受54と下部軸受57とによって支持されている。中間軸62の下端は、下部カップリング56によってベベルギア58の中空軸に連結されている。ベベルギア58は、ベベルギア59と噛合する。ベベルギア58,59は、中空軸型の水中減速機としての役割を果たす。ベベルギア59は駆動軸61に取付けられており、駆動軸61は端部を水中軸受60に支持されている。駆動軸61には、上述のピンギア103が取付けられており、ピンギア103は固定部材102により固定された噛合部材101と噛合する。ケーシング62は水密構造となっており、上部カップリング53、上部軸受54、下部カップリング56、下部軸受57、ベベルギア58,59および中間軸62は、槽10内の水に接触しないようにされている。なお、場合によっては、ベベルギアに代えて、ウォームとウォームホイールとを含むウォームギアによる等、他の直交軸減速機によって、中間軸62の回転軸方向を変換しても良い。
【0024】
また、駆動装置50は、図2及び図4に示すように、槽10における掻寄架台20の往復運動方向に平行な一対の側壁10c上に、矩形断面の樋状の主ガイドレール82を備えている。この主ガイドレール82は、槽10の底面10bに平行に、かつ、樋の開口側が掻寄架台20側を向くように設置されると共に、掻寄架台20の平行材22の両端の主ローラ24をこの主ガイドレール82内に常時収容している。この主ガイドレール82の底面10bからの高さは、図4及び図5に示すように、掻寄架台20のアーム25が第一の揺動位置にあるときに、フライト12の下端がほぼ槽10の底面10bに達するような高さとされている。そして、主ガイドレール82は、噛合部材101、ピンギア103等によって駆動される掻寄架台20を槽10の底面10bと平行に往復運動すべく案内する。
【0025】
ここで、本実施形態の堆積物の掻寄装置1は、掻寄架台20の運動方向に応じてフライト12の高さを調節するガイドユニット80を備えている。ガイドユニット80は、側壁10c上の主ガイドレール82の下方に、主ガイドレール82と同様に矩形断面の樋状の副ガイドレール83を備えている。この副ガイドレール83の底面10bからの高さは、アーム25が第一の揺動位置とされたときの副ローラ27の位置よりも高くされ、掻寄架台20のアーム25の副ローラ27を溝内に収容し(図3の仮想線)、案内可能となっている。この副ガイドレール83の下面の下側フランジ83aには、図1及び図5に示すように、副ローラ27をこの副ガイドレール83内と副ガイドレール83の外(下方)との間で進退可能とする開口部84が複数形成されている。
【0026】
また、ガイドユニット80は、図5に示すように、副ガイドレール83の下側フランジ83aで、開口部84の復動方向側、すなわち、汚泥ピット10aから遠い側の縁の近傍には、開口部84の下方に向いて延在する板状の下側案内フラップ85を備えている。この下側案内フラップ85は、開口部84に対応する大きさを有すると共に、上下方向に揺動自在に汚泥ピット10aから遠い側の縁の下側に軸90で軸支されている。
【0027】
さらに、このガイドユニット80は、この下側フランジ83aに、下側案内フラップ85が水平位置から所定の角度を超えて下方に揺動しないように制限するストッパ86を備えると共に、下側案内フラップ85を下方に付勢する引張バネ87を備えており、この下側案内フラップ85は、副ローラ27等による外力を受けない限り通常下方を向いて、ストッパ86によって揺動を止められた状態とされている。なお、場合によっては、引張バネに代えて、フラップの自重によってもよい。
【0028】
ここで、所定の角度としては、アーム25が平行材22の下方に垂下する第一の揺動位置とされている状態で掻寄架台20が復動(図示右方向に移動)する際に、副ローラ27が下側案内フラップ85の上面に当接可能であり、さらに、図5に示すように、アーム25が第一の揺動位置とされている状態で掻寄架台20が往動(図示左方向に移動)する際に、図6に示すように、アーム25の副ローラ27が下側案内フラップ85の下面に当接する角度に設定されている。
【0029】
そして、この下側案内フラップ85は、図5に示すように、所定の角度とされた状態で、第一の揺動位置とされたアーム25の副ローラ27が副ガイドレール83の下方を復動する場合に、図8に示すように、副ローラ27をその上面で受けて斜め上方向に誘導し開口部84を介して副ガイドレール83内に案内すると共に、逆に、副ガイドレール83上で案内される副ローラ27が開口部84の図示右側から往動する場合に、副ローラ27をその上面で受けて斜め下方に誘導し、開口部84を介して副ガイドレール83内から副ガイドレール83の外に案内する。
【0030】
さらに、図5に戻って、副ガイドレール83の下側フランジ83aで開口部84の往動側、すなわち、汚泥ピット10aに近い側の縁の近傍には、開口部84の上方に向かって延在する上側案内フラップ88を備えている。
【0031】
この上側案内フラップ88は、開口部84を覆うことができる程度の大きさとされると共に、下側フランジ83aの往動側の縁の下側に、上下に揺動可能に軸91によって軸支されている。また、この上側案内フラップ88は、圧縮バネ89により上側に付勢されており、上側案内フラップ88は、外力がかからない場合には通常上側に揺動して副ガイドレール83の上側フランジ83bと接触し、それ以上上方へ揺動されないように制限されている。また、この上側案内フラップ88は、下方に揺動する場合には、開口部84を全て覆う水平状態となったところで、開口部84の縁の下側フランジ83aと接触し、これ以上下方への揺動が制限されている。なお、場合によっては、圧縮バネに代えて、カウンターウエイトによってもよい。
【0032】
そして、この上側案内フラップ88は、図9に示すように、アーム25の副ローラ27が開口部84の図示左側から副ガイドレール83内を案内される状態で汚泥ピット10a側から復動(図示右方向に移動)する際に、この副ローラ27と当接し、図10に示すように、この復動する副ローラ27に押されて下側に揺動されて開口部84を覆い、副ローラ27が開口部84の上を通過することを可能とし、図11に示すように、この副ローラ27を開口部84より復動側の副ガイドレール83へ到達させる。また逆に、アーム25の副ローラ27が副ガイドレール83内を案内される状態で、開口部84の図示右側から往動(図示左方向に移動)する際には、図8に示すように、副ローラ27が、開口部84を飛び越えて再び副ガイドレール83の往動方向側に入ることのないように、案内路を遮るふたの役目をすると共に、下面の傾斜によって確実に開口部84を介してこの副ローラ27を副ガイドレール83の下方に案内する。
【0033】
次に、このような堆積物の掻寄装置1の作用について説明する。まず、図5に示すように、掻寄架台20のアーム25が第一の揺動位置に位置すると共に、副ローラ27が副ガイドレール83の外(下)に位置し、掻寄架台20のフライト12が槽10の底に沈殿した堆積物を掻き寄せ可能な状態から説明する。なお、図5〜11においては、説明の便宜上、主動部100のみについて記載し、従動部105および連結部材110等については記載を省略する。
【0034】
まず、この状態から、モータ51を回転させ、ケーシング52内の中間軸61からベベルギア58,59および駆動軸61を介して当該回転動力を伝達し、ピンギア103を図示時計回りに回転させることによって掻寄架台20を白矢印方向(図示左側)、すなわち、汚泥ピット10a方向に向かって動かす(往動)。これにより、各々のフライト12によって堆積物が汚泥ピット10a方向に掻き寄せられ、堆積物が汚泥ピット10a内に送られる(図5参照)。なお、フライト12が堆積物を掻き寄せる際、アーム25は、堆積物等から図示反時計回りのモーメントを受けるが、アームストッパ26によってアーム25のこれ以上の図示反時計方向への揺動が防止されているので、堆積物の掻き寄せが確実に可能とされている。
【0035】
このような掻き寄せを続けると、図6に示すように、アーム25等が往動方向側の隣の開口部84付近に到達する。このとき、アーム25の副ローラ27が下側案内フラップ85の下面と接触するが、下側案内フラップ85は、軸90を中心に上側に揺動可能とされているので、図7に示すように、上側に揺動し、このアーム25は障害なく開口部84下を通過して、堆積物を汚泥ピット10a方向へ掻き寄せ続ける。なお、副ローラ27が通過した後、下側案内フラップ85は、引張バネ87によって下側に付勢されているので、直ちに下方に揺動して元の所定の位置に確実に復帰する。
【0036】
このようにして、開口部84下を通過し、図5のような状態となった後、今度は、図1に示すモータ51を反対方向に回転させて、ピンギア103を図示反時計回りに回転させることによって掻寄架台20を黒矢印方向に移動させ、掻寄架台20を元の位置に復帰させる復動を始める。このとき、アーム25等が再び開口部84に到達することとなるが、図8に示すように、今度はアーム25の副ローラ27が下側案内フラップ85の上面と接触し、この下側案内フラップ85は、ストッパ86によって、これ以上の下方への揺動が制限されているので、掻寄架台20が図示右方向に復動するに従って、副ローラ27はこの下側案内フラップ85の上面に案内されて上昇し、開口部84を介して副ガイドレール83内に向かって進入する。
【0037】
そして、さらに掻寄架台20が図示右方向に復動すると、図11に示すように、アーム25の副ローラ27は、副ガイドレール83内を走行し、このままの状態で図示右方向へ復動を続け、復動方向側の隣の開口部84に向かう移動を続ける。このとき、アーム25は、垂直下向の第一の揺動位置に対して、汚泥ピット10a側に図示時計回りに傾くこととなり、フライト12が槽10の底部から所定の距離離間されて上昇するので、これ以降の掻寄架台20の図示右方向への復動において、往動時に掻き寄せた堆積物と接触して堆積物を汚泥ピット10aと逆方向に戻してしまうことがない。また、このとき、フライト12が堆積物中からほぼ垂直上方に徐々に引き抜かれるので、堆積物のまきあげも抑制されている。
【0038】
このようにして、副ローラ27が副ガイドレール83内を走行し隣の開口部84の上側案内フラップ88に到達してさらに復動方向側へ走行することとなる(図9参照)。この時、副ローラ27が上側案内フラップ88の上面と接触し、図10に示すように、上側案内フラップ88は下方に揺動可能なため、副ローラ27により力を受けて下方に揺動されると共に、開口部84を覆ってこれよりも先の通路を形成し、副ローラ27は開口部84から下方に出ることなく開口部84上を通過する。副ローラ27が通過した後、上側案内フラップ88は、圧縮バネ89によって付勢されているので、再び上方に揺動して、図11のように、上側フランジ83bに接触して停止し、元の状態に復帰する。
【0039】
そして、開口部84を通過してしばらくした後、再びモータ51を反対方向に回転させて、ピンギア103を図示時計回りに回転させることによって、掻寄架台20の汚泥ピット10a方向への往動を始める。このとき、副ガイドレール83内の副ローラ27が、開口部84に到達する。このとき、副ローラ27は、図8に示すように、下側案内フラップ85の上面によって形成される斜面に沿って開口部84を介して副ガイドレール83の外に徐々に案内されて、図5に示すように、アーム25が垂直下向の第一の揺動位置に復帰し、再び堆積物の掻き寄せが可能となる。
【0040】
本実施形態の堆積物の掻寄装置1は、このような往動と復動の一連の動作を繰り返すことにより、槽10の底面10bに沈殿する堆積物を、逆方向に戻すことや巻き上げることを防止し効率よく汚泥ピット10aに掻き寄せることが可能となっている。主動部100に連結部材110によって連結された従動部105も、上述したような主動部100の動作に従って同様の動作を行う。
【0041】
本実施形態の堆積物の掻寄装置1は、従来の堆積物の掻寄装置のように、モータから駆動チェーンを介して動力を伝達しているのではなく、水密構造のケーシング内に格納された中間軸によって動力を伝達している。このため、駆動チェーンの張りの調整を不要とすることができる。また、駆動チェーンに水中の浮遊物やスカムが付着することもない。このように駆動チェーンの調整や整備に関する労力が不要となるため、堆積物の掻寄装置の運転管理を容易なものとすることができる。
【0042】
尚、本発明の堆積物の掻寄装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態においては、フライトが槽内を往復動するカスケード式の掻寄装置を中心に説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、フライトが槽内を一方向にのみ動くチェーンフライト式の掻寄装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態に係る掻寄装置の正面模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る掻寄装置の側面摸式図である。
【図3】駆動装置の構造を示す側面図である。
【図4】図2中のB部の拡大図である。
【図5】図1中の開口部近傍であって、副ローラが副ガイドレールよりも下方に位置する状態を示す模式図である。
【図6】図5の状態から、副ローラが往動方向に進んで隣の開口部近傍に達した状態を示す模式図である。
【図7】図6の状態から、副ローラが往動方向に進んで開口部の下方に達した状態を示す模式図である。
【図8】副ローラが下側案内フラップの上面に達した状態を示す模式図である。
【図9】副ローラが副ガイドレール内に位置する状態を示す模式図である。
【図10】図9の状態から、副ローラが復動方向に進んで上側案内フラップ上を通過する状態を示す模式図である。
【図11】図10の状態から、副ローラが復動方向に進んだ状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0044】
1…堆積物の掻寄装置、10…槽、12…フライト(掻寄羽根)、20…掻寄架台、25…アーム、26…アームストッパ、27…副ローラ、50…駆動装置(駆動手段)、51…モータ(駆動源)、52…ケーシング、53…上部カップリング、54…上部軸受、55…振れ止め、56…下部カップリング、57…下部軸受、58…ベベルギア、59…ベベルギア、60…水中軸受、61…駆動軸、62…中間軸(動力伝達軸)、80…ガイドユニット、83…副ガイドレール、83b…上側フランジ、84…開口部、85…下側案内フラップ、86…ストッパ、87…引張バネ、88…上側案内フラップ、89…圧縮バネ、101…チェーン、103…ピンギア、110…連結部材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、槽の底に堆積した堆積物を掻き寄せる堆積物の掻寄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば沈殿池等の槽の底に堆積する堆積物を効率的に掻き寄せる堆積物の掻寄装置として、特許文献1に記載されているような装置が知られている。特許文献1記載の装置においては、駆動軸に固定された主務チェーンが水を満たした槽内で循環するようになっており、主務チェーンの外周には、複数の長板状のフライト(掻寄羽根)が一定間隔で取付けられている。水中に配置された駆動軸と水上に配置された原動モータとの間には駆動チェーンが設けられ、原動モータの回転動力が駆動チェーンによって駆動軸に伝達され、主務チェーンに取付けられたフライトが槽の底に沿って移動し、槽の底に堆積した堆積物を掻き寄せるようになっている。
【特許文献1】特開2004−344737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような堆積物の掻寄装置では、原動モータから駆動チェーンを介して動力を伝達し、フライトを駆動している。この駆動チェーンは、運転時間が長くなるにつれて伸びが発生し、放置すると駆動チェーンがスプロケットの歯から外れ、掻寄装置が運転不能となる。このため、掻寄装置の運転時間の経過とともに、しばしばテークアップ装置等でチェーンの張りを調整する必要がある。
【0004】
また、上記のような装置では、駆動チェーンが水中に没するため、水中の浮遊物あるいはスカムが付着し、運転の妨げとなっている。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、駆動チェーンの調整を不要とすることができる堆積物の掻寄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、槽の底に堆積する堆積物を掻き寄せる掻寄羽根と、掻寄羽根を前記槽の底に沿って運動させる駆動手段とを備え、駆動手段は、槽の水面上に配置され回転動力を発生する動力源と、動力源からの回転動力を伝達する動力伝達軸と、槽の水面下に配置され、動力伝達軸によって伝達された回転動力を掻寄羽根の運動に変換する動力変換手段とを有する堆積物の掻寄装置である。
【0007】
この構成によれば、動力伝達軸が、水面上に配置された動力源からの回転動力を、水面下に配置された動力変換手段に伝達するため、駆動チェーンの調整を不要とすることができる。
【0008】
この場合、動力伝達軸は水密構造の容器内に収容されているものであることが好適である。この構成によれば、動力伝達軸が水密構造の容器内に収容されているため、動力伝達軸に水中の浮遊物およびスカムが付着することがない。
【0009】
この場合、動力変換手段はスプロケットとチェーンとを含むものとすることができる。この構成によれば、据え付け等の精度があまり要求されないために設置やメンテナンスが容易である。
【0010】
この場合、動力変換手段は小歯車とラックとを含むものとすることができる。この構成によれば、堆積物等の夾雑物を含む水中での駆動により適する。
【0011】
この場合、動力変換手段は直交軸減速機を含むものとすることができる。なお、本明細書において、「直交軸減速機」とは、互いに直交する2軸間に回転動力を伝達する減速機を意味する。
【0012】
この場合、直交軸減速機はかさ歯車を含むものとすることができる。また、直交軸減速機はウォームギアを含むものとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の堆積物の掻寄装置によれば、駆動チェーンの調整を不要とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る堆積物の掻寄装置について説明する。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
図1は本実施形態に係る堆積物の掻寄装置を示す正面模式図、図2は本実施形態に係る堆積物の掻寄装置を示す側面模式図である。
【0016】
本実施形態の堆積物の掻寄装置1は、図1に示すように、槽10の底面10bに堆積する汚泥等の堆積物を汚泥ピット10aに向けて掻き寄せるものであって、堆積物を掻き寄るフライト12(掻寄羽根)が水平方向に複数配設された梯子状の掻寄架台20と、この掻寄架台20を槽10の底面10bに対して略平行に往復運動させる駆動装置50(駆動手段)と、を備えている。
【0017】
掻寄架台20は、図1及び図2に示すように、この掻寄架台20の往復方向に延在する2本の平行な駆動方向材21と、この2本の駆動方向材21に対して垂直に交差して配置されると共に互いに所定間隔離間された複数の平行材22と、を備えている。平行材22と駆動方向材21とは、図4に示すように、平行材22に固定された結合板22aと、駆動方向材21に固定された結合板21aと、がネジ固定されることによって接続され、梯子型の形状をなしている。
【0018】
この平行材22の両端には、この平行材22の軸周りに回転可能な主ローラ24が各々設置されている。また、この平行材22は、この平行材22の軸回りに揺動可能とされたアーム25を、この平行材22の両方の軸端に離間して2つ備えている。そして、上述の結合板22aは、図4及び図5に示すように、アーム25が、平行材22の鉛直下方に垂下する第一の揺動位置から復動側(図5の図示右側)への揺動を制限する突起としてのアームストッパ26を備えている。
【0019】
各アーム25の先端部には、図1及び図2に示すように、平行材22の軸方向に延在し、この槽10の底面10bに堆積した堆積物を掻き寄せるフライト12が設置されている。
【0020】
図1に示すように、隣接する3つのアーム25同士は、当該3つのアーム25の揺動動作を連動すべく連結部材110によって連結されている。連結部材110は、駆動方向材21の軸方向に延材し、3つのアーム25に対してピン111で各々回動可能に連結されている。なお、連結部材110はアーム25に代えてフライト12に連結されていてもよい。互いに連結された3つのアーム25の内の一つのアーム25には、図4に示すように、その先端側に平行材22の軸方向外側に向かって平行材22の両端の主ローラ24と略同じ位置まで突出するバー23と、バー23の先端に設置されこのバー23の軸周りに回転可能な副ローラ27と、を各々備えている。なお、副ローラ27はバー等を介してフライト12に設けられていてもよい。以下、便宜上、副ローラ27を有するアーム25と副ローラ25を有するアーム25に支持されるフライト12との組合せを主動部100と呼び、副ローラ27を有さないアーム25と副ローラ27を有さないアーム25に支持されたフライト12との組合せを従動部105と呼ぶ。
【0021】
駆動装置50は、図1〜3に示すように、槽10の水面上に当該回転軸を垂直にして配置され正逆方向に回転可能なモータ51(動力源)と、槽10の水面下に至りモータ51の回転動力を伝達する中間軸62(動力伝達軸)とを有する。中間軸62は、ケーシング52内に収容されている。また駆動装置50は、槽10の水面下において、ケーシング52内に中間軸62の回転軸方向を変換するベベルギア(かさ歯車)58,59を有し、さらに掻寄架台20の往復方向と垂直な水平軸回りに正逆回転されるピンギア(スプロケット)103と、駆動方向材21に固定部材102を介して曲折不能に固定され、掻寄架台20の往復方向に延在してピンギア103と噛合する噛合部材(チェーン)101とを有し、これらがモータ51の回転動力をフライト12の往復動に変換する動力変換手段を構成する。本実施形態のような噛合部材101とピンギア103を用いた駆動方式は、ピンギア方式とよばれ、掻寄架台20や噛合部材101等の据え付け等の精度があまり要求されないために設置やメンテナンスが容易とされ、堆積物等の夾雑物を含む水中での駆動にも適している。なお、場合によっては、ピンギア103に代えてピニオンギア(小歯車)を採用し、噛合部材101に代えてラックを採用した、いわゆるラックピニオン方式としてもよい。
【0022】
図3に示すように、本実施形態の駆動装置50においては、円筒状のケーシング52が、当該長手方向を垂直にして槽10に満たされた水中に配置されている。ケーシング52の一端は、槽10の水面上に突出しており、回転動力を発生するモータ51が配置されている。ケーシング52の上部は、振れ止め55によって、槽10の側壁10cに固定されており、モータ51の回転動力の反作用によって、ケーシング52自体が回転することを防いでいる。
【0023】
ケーシング52内において、モータ51の軸は、上部カップリング53によって中間軸62の上端に連結されている。中間軸62は、ケーシング62内において、上部軸受54と下部軸受57とによって支持されている。中間軸62の下端は、下部カップリング56によってベベルギア58の中空軸に連結されている。ベベルギア58は、ベベルギア59と噛合する。ベベルギア58,59は、中空軸型の水中減速機としての役割を果たす。ベベルギア59は駆動軸61に取付けられており、駆動軸61は端部を水中軸受60に支持されている。駆動軸61には、上述のピンギア103が取付けられており、ピンギア103は固定部材102により固定された噛合部材101と噛合する。ケーシング62は水密構造となっており、上部カップリング53、上部軸受54、下部カップリング56、下部軸受57、ベベルギア58,59および中間軸62は、槽10内の水に接触しないようにされている。なお、場合によっては、ベベルギアに代えて、ウォームとウォームホイールとを含むウォームギアによる等、他の直交軸減速機によって、中間軸62の回転軸方向を変換しても良い。
【0024】
また、駆動装置50は、図2及び図4に示すように、槽10における掻寄架台20の往復運動方向に平行な一対の側壁10c上に、矩形断面の樋状の主ガイドレール82を備えている。この主ガイドレール82は、槽10の底面10bに平行に、かつ、樋の開口側が掻寄架台20側を向くように設置されると共に、掻寄架台20の平行材22の両端の主ローラ24をこの主ガイドレール82内に常時収容している。この主ガイドレール82の底面10bからの高さは、図4及び図5に示すように、掻寄架台20のアーム25が第一の揺動位置にあるときに、フライト12の下端がほぼ槽10の底面10bに達するような高さとされている。そして、主ガイドレール82は、噛合部材101、ピンギア103等によって駆動される掻寄架台20を槽10の底面10bと平行に往復運動すべく案内する。
【0025】
ここで、本実施形態の堆積物の掻寄装置1は、掻寄架台20の運動方向に応じてフライト12の高さを調節するガイドユニット80を備えている。ガイドユニット80は、側壁10c上の主ガイドレール82の下方に、主ガイドレール82と同様に矩形断面の樋状の副ガイドレール83を備えている。この副ガイドレール83の底面10bからの高さは、アーム25が第一の揺動位置とされたときの副ローラ27の位置よりも高くされ、掻寄架台20のアーム25の副ローラ27を溝内に収容し(図3の仮想線)、案内可能となっている。この副ガイドレール83の下面の下側フランジ83aには、図1及び図5に示すように、副ローラ27をこの副ガイドレール83内と副ガイドレール83の外(下方)との間で進退可能とする開口部84が複数形成されている。
【0026】
また、ガイドユニット80は、図5に示すように、副ガイドレール83の下側フランジ83aで、開口部84の復動方向側、すなわち、汚泥ピット10aから遠い側の縁の近傍には、開口部84の下方に向いて延在する板状の下側案内フラップ85を備えている。この下側案内フラップ85は、開口部84に対応する大きさを有すると共に、上下方向に揺動自在に汚泥ピット10aから遠い側の縁の下側に軸90で軸支されている。
【0027】
さらに、このガイドユニット80は、この下側フランジ83aに、下側案内フラップ85が水平位置から所定の角度を超えて下方に揺動しないように制限するストッパ86を備えると共に、下側案内フラップ85を下方に付勢する引張バネ87を備えており、この下側案内フラップ85は、副ローラ27等による外力を受けない限り通常下方を向いて、ストッパ86によって揺動を止められた状態とされている。なお、場合によっては、引張バネに代えて、フラップの自重によってもよい。
【0028】
ここで、所定の角度としては、アーム25が平行材22の下方に垂下する第一の揺動位置とされている状態で掻寄架台20が復動(図示右方向に移動)する際に、副ローラ27が下側案内フラップ85の上面に当接可能であり、さらに、図5に示すように、アーム25が第一の揺動位置とされている状態で掻寄架台20が往動(図示左方向に移動)する際に、図6に示すように、アーム25の副ローラ27が下側案内フラップ85の下面に当接する角度に設定されている。
【0029】
そして、この下側案内フラップ85は、図5に示すように、所定の角度とされた状態で、第一の揺動位置とされたアーム25の副ローラ27が副ガイドレール83の下方を復動する場合に、図8に示すように、副ローラ27をその上面で受けて斜め上方向に誘導し開口部84を介して副ガイドレール83内に案内すると共に、逆に、副ガイドレール83上で案内される副ローラ27が開口部84の図示右側から往動する場合に、副ローラ27をその上面で受けて斜め下方に誘導し、開口部84を介して副ガイドレール83内から副ガイドレール83の外に案内する。
【0030】
さらに、図5に戻って、副ガイドレール83の下側フランジ83aで開口部84の往動側、すなわち、汚泥ピット10aに近い側の縁の近傍には、開口部84の上方に向かって延在する上側案内フラップ88を備えている。
【0031】
この上側案内フラップ88は、開口部84を覆うことができる程度の大きさとされると共に、下側フランジ83aの往動側の縁の下側に、上下に揺動可能に軸91によって軸支されている。また、この上側案内フラップ88は、圧縮バネ89により上側に付勢されており、上側案内フラップ88は、外力がかからない場合には通常上側に揺動して副ガイドレール83の上側フランジ83bと接触し、それ以上上方へ揺動されないように制限されている。また、この上側案内フラップ88は、下方に揺動する場合には、開口部84を全て覆う水平状態となったところで、開口部84の縁の下側フランジ83aと接触し、これ以上下方への揺動が制限されている。なお、場合によっては、圧縮バネに代えて、カウンターウエイトによってもよい。
【0032】
そして、この上側案内フラップ88は、図9に示すように、アーム25の副ローラ27が開口部84の図示左側から副ガイドレール83内を案内される状態で汚泥ピット10a側から復動(図示右方向に移動)する際に、この副ローラ27と当接し、図10に示すように、この復動する副ローラ27に押されて下側に揺動されて開口部84を覆い、副ローラ27が開口部84の上を通過することを可能とし、図11に示すように、この副ローラ27を開口部84より復動側の副ガイドレール83へ到達させる。また逆に、アーム25の副ローラ27が副ガイドレール83内を案内される状態で、開口部84の図示右側から往動(図示左方向に移動)する際には、図8に示すように、副ローラ27が、開口部84を飛び越えて再び副ガイドレール83の往動方向側に入ることのないように、案内路を遮るふたの役目をすると共に、下面の傾斜によって確実に開口部84を介してこの副ローラ27を副ガイドレール83の下方に案内する。
【0033】
次に、このような堆積物の掻寄装置1の作用について説明する。まず、図5に示すように、掻寄架台20のアーム25が第一の揺動位置に位置すると共に、副ローラ27が副ガイドレール83の外(下)に位置し、掻寄架台20のフライト12が槽10の底に沈殿した堆積物を掻き寄せ可能な状態から説明する。なお、図5〜11においては、説明の便宜上、主動部100のみについて記載し、従動部105および連結部材110等については記載を省略する。
【0034】
まず、この状態から、モータ51を回転させ、ケーシング52内の中間軸61からベベルギア58,59および駆動軸61を介して当該回転動力を伝達し、ピンギア103を図示時計回りに回転させることによって掻寄架台20を白矢印方向(図示左側)、すなわち、汚泥ピット10a方向に向かって動かす(往動)。これにより、各々のフライト12によって堆積物が汚泥ピット10a方向に掻き寄せられ、堆積物が汚泥ピット10a内に送られる(図5参照)。なお、フライト12が堆積物を掻き寄せる際、アーム25は、堆積物等から図示反時計回りのモーメントを受けるが、アームストッパ26によってアーム25のこれ以上の図示反時計方向への揺動が防止されているので、堆積物の掻き寄せが確実に可能とされている。
【0035】
このような掻き寄せを続けると、図6に示すように、アーム25等が往動方向側の隣の開口部84付近に到達する。このとき、アーム25の副ローラ27が下側案内フラップ85の下面と接触するが、下側案内フラップ85は、軸90を中心に上側に揺動可能とされているので、図7に示すように、上側に揺動し、このアーム25は障害なく開口部84下を通過して、堆積物を汚泥ピット10a方向へ掻き寄せ続ける。なお、副ローラ27が通過した後、下側案内フラップ85は、引張バネ87によって下側に付勢されているので、直ちに下方に揺動して元の所定の位置に確実に復帰する。
【0036】
このようにして、開口部84下を通過し、図5のような状態となった後、今度は、図1に示すモータ51を反対方向に回転させて、ピンギア103を図示反時計回りに回転させることによって掻寄架台20を黒矢印方向に移動させ、掻寄架台20を元の位置に復帰させる復動を始める。このとき、アーム25等が再び開口部84に到達することとなるが、図8に示すように、今度はアーム25の副ローラ27が下側案内フラップ85の上面と接触し、この下側案内フラップ85は、ストッパ86によって、これ以上の下方への揺動が制限されているので、掻寄架台20が図示右方向に復動するに従って、副ローラ27はこの下側案内フラップ85の上面に案内されて上昇し、開口部84を介して副ガイドレール83内に向かって進入する。
【0037】
そして、さらに掻寄架台20が図示右方向に復動すると、図11に示すように、アーム25の副ローラ27は、副ガイドレール83内を走行し、このままの状態で図示右方向へ復動を続け、復動方向側の隣の開口部84に向かう移動を続ける。このとき、アーム25は、垂直下向の第一の揺動位置に対して、汚泥ピット10a側に図示時計回りに傾くこととなり、フライト12が槽10の底部から所定の距離離間されて上昇するので、これ以降の掻寄架台20の図示右方向への復動において、往動時に掻き寄せた堆積物と接触して堆積物を汚泥ピット10aと逆方向に戻してしまうことがない。また、このとき、フライト12が堆積物中からほぼ垂直上方に徐々に引き抜かれるので、堆積物のまきあげも抑制されている。
【0038】
このようにして、副ローラ27が副ガイドレール83内を走行し隣の開口部84の上側案内フラップ88に到達してさらに復動方向側へ走行することとなる(図9参照)。この時、副ローラ27が上側案内フラップ88の上面と接触し、図10に示すように、上側案内フラップ88は下方に揺動可能なため、副ローラ27により力を受けて下方に揺動されると共に、開口部84を覆ってこれよりも先の通路を形成し、副ローラ27は開口部84から下方に出ることなく開口部84上を通過する。副ローラ27が通過した後、上側案内フラップ88は、圧縮バネ89によって付勢されているので、再び上方に揺動して、図11のように、上側フランジ83bに接触して停止し、元の状態に復帰する。
【0039】
そして、開口部84を通過してしばらくした後、再びモータ51を反対方向に回転させて、ピンギア103を図示時計回りに回転させることによって、掻寄架台20の汚泥ピット10a方向への往動を始める。このとき、副ガイドレール83内の副ローラ27が、開口部84に到達する。このとき、副ローラ27は、図8に示すように、下側案内フラップ85の上面によって形成される斜面に沿って開口部84を介して副ガイドレール83の外に徐々に案内されて、図5に示すように、アーム25が垂直下向の第一の揺動位置に復帰し、再び堆積物の掻き寄せが可能となる。
【0040】
本実施形態の堆積物の掻寄装置1は、このような往動と復動の一連の動作を繰り返すことにより、槽10の底面10bに沈殿する堆積物を、逆方向に戻すことや巻き上げることを防止し効率よく汚泥ピット10aに掻き寄せることが可能となっている。主動部100に連結部材110によって連結された従動部105も、上述したような主動部100の動作に従って同様の動作を行う。
【0041】
本実施形態の堆積物の掻寄装置1は、従来の堆積物の掻寄装置のように、モータから駆動チェーンを介して動力を伝達しているのではなく、水密構造のケーシング内に格納された中間軸によって動力を伝達している。このため、駆動チェーンの張りの調整を不要とすることができる。また、駆動チェーンに水中の浮遊物やスカムが付着することもない。このように駆動チェーンの調整や整備に関する労力が不要となるため、堆積物の掻寄装置の運転管理を容易なものとすることができる。
【0042】
尚、本発明の堆積物の掻寄装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態においては、フライトが槽内を往復動するカスケード式の掻寄装置を中心に説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、フライトが槽内を一方向にのみ動くチェーンフライト式の掻寄装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態に係る掻寄装置の正面模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る掻寄装置の側面摸式図である。
【図3】駆動装置の構造を示す側面図である。
【図4】図2中のB部の拡大図である。
【図5】図1中の開口部近傍であって、副ローラが副ガイドレールよりも下方に位置する状態を示す模式図である。
【図6】図5の状態から、副ローラが往動方向に進んで隣の開口部近傍に達した状態を示す模式図である。
【図7】図6の状態から、副ローラが往動方向に進んで開口部の下方に達した状態を示す模式図である。
【図8】副ローラが下側案内フラップの上面に達した状態を示す模式図である。
【図9】副ローラが副ガイドレール内に位置する状態を示す模式図である。
【図10】図9の状態から、副ローラが復動方向に進んで上側案内フラップ上を通過する状態を示す模式図である。
【図11】図10の状態から、副ローラが復動方向に進んだ状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0044】
1…堆積物の掻寄装置、10…槽、12…フライト(掻寄羽根)、20…掻寄架台、25…アーム、26…アームストッパ、27…副ローラ、50…駆動装置(駆動手段)、51…モータ(駆動源)、52…ケーシング、53…上部カップリング、54…上部軸受、55…振れ止め、56…下部カップリング、57…下部軸受、58…ベベルギア、59…ベベルギア、60…水中軸受、61…駆動軸、62…中間軸(動力伝達軸)、80…ガイドユニット、83…副ガイドレール、83b…上側フランジ、84…開口部、85…下側案内フラップ、86…ストッパ、87…引張バネ、88…上側案内フラップ、89…圧縮バネ、101…チェーン、103…ピンギア、110…連結部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽の底に堆積する堆積物を掻き寄せる掻寄羽根と、
前記掻寄羽根を前記槽の底に沿って運動させる駆動手段と、
を備え、
前記駆動手段は、
前記槽の水面上に配置され、回転動力を発生する動力源と、
前記動力源からの回転動力を伝達する動力伝達軸と、
前記槽の水面下に配置され、前記動力伝達軸によって伝達された回転動力を前記掻寄羽根の運動に変換する動力変換手段と、
を有する堆積物の掻寄装置。
【請求項2】
前記動力伝達軸は水密構造の容器内に収容されている、請求項1に記載の堆積物の掻寄装置。
【請求項3】
前記動力変換手段はスプロケットとチェーンとを含む、請求項1または2に記載の堆積物の掻寄装置。
【請求項4】
前記動力変換手段は小歯車とラックとを含む、請求項1または2に記載の堆積物の掻寄装置。
【請求項5】
前記動力変換手段は直交軸減速機を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の堆積物の掻寄装置。
【請求項6】
前記直交軸減速機はかさ歯車を含む、請求項5に記載の堆積物の掻寄装置。
【請求項7】
前記直交軸減速機はウォームギアを含む、請求項5に記載の堆積物の掻寄装置。
【請求項1】
槽の底に堆積する堆積物を掻き寄せる掻寄羽根と、
前記掻寄羽根を前記槽の底に沿って運動させる駆動手段と、
を備え、
前記駆動手段は、
前記槽の水面上に配置され、回転動力を発生する動力源と、
前記動力源からの回転動力を伝達する動力伝達軸と、
前記槽の水面下に配置され、前記動力伝達軸によって伝達された回転動力を前記掻寄羽根の運動に変換する動力変換手段と、
を有する堆積物の掻寄装置。
【請求項2】
前記動力伝達軸は水密構造の容器内に収容されている、請求項1に記載の堆積物の掻寄装置。
【請求項3】
前記動力変換手段はスプロケットとチェーンとを含む、請求項1または2に記載の堆積物の掻寄装置。
【請求項4】
前記動力変換手段は小歯車とラックとを含む、請求項1または2に記載の堆積物の掻寄装置。
【請求項5】
前記動力変換手段は直交軸減速機を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の堆積物の掻寄装置。
【請求項6】
前記直交軸減速機はかさ歯車を含む、請求項5に記載の堆積物の掻寄装置。
【請求項7】
前記直交軸減速機はウォームギアを含む、請求項5に記載の堆積物の掻寄装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−50321(P2007−50321A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−235858(P2005−235858)
【出願日】平成17年8月16日(2005.8.16)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月16日(2005.8.16)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】
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