説明

場所打ちライニング工法に用いる掘進機

【課題】覆工コンクリートの打設時にコンクリート供給量や掘進速度の変化によって生じる打設圧力の変動を抑制することにより、覆工コンクリートの健全性を確保し、周辺地盤への悪影響を防止することができる場所打ちライニング工法に用いる掘進機を提供する。
【解決手段】シールド掘進機の筒状のスキンプレートの内部に、圧力制御用の短尺ジャッキ23と妻型枠移動用の長尺ジャッキ21とを軸方向に直列に連結した複数の妻型枠ジャッキ11が並列に設置される。環状の妻型枠は、長尺ジャッキ21に連結され、長尺ジャッキ21の伸縮により移動可能とする。短尺ジャッキ23は、妻型枠ジャッキ11の移動量を調整する調整部41と、妻型枠ジャッキ11の圧力を制御する制御部39とに分割され、ロッド47に設けられた2つのピストン43、ピストン45が、それぞれ制御部39、調整部41に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、場所打ちライニング工法に用いる掘進機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、場所打ちライニング工法では、複数本のシールドジャッキおよび妻型枠ジャッキを有する掘削機を用い、シールドジャッキを伸長して内型枠に反力をとりつつ掘削機でトンネル坑を掘削し、シールドジャッキを縮めて坑内に1ストローク分の内型枠を組み立て、妻型枠ジャッキで妻型枠を支持しつつ内型枠と坑壁との間に覆工コンクリートを打設している。妻型枠ジャッキは、妻型枠清掃等の定期的なメンテナンス時に切羽側に引き出せるよう、内型枠幅程度のストローク長を有する長尺ジャッキを使用している。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
覆工コンクリートを打設する際には、掘進機の掘進速度に合わせてコンクリートポンプの供給量を調整し、所定の打設量を確保している。掘進速度は、掘削機の掘削能力や想定した掘削土層の地盤強度等を考慮し、周辺地盤に影響のないように設定している。覆工コンクリート打設量は、掘削機の掘進速度から算出された覆工コンクリート理論打設量を下回らないよう、配管流量計およびポンプ流量計によりコンクリート供給量を設定している。
【0004】
また、覆工コンクリートを打設する際には、妻型枠に取り付けた複数の油圧ジャッキの伸縮により、妻型枠を前後移動させ、覆工コンクリート打設圧力の調整を行っている。覆工コンクリート打設圧力は、周辺地盤の土水圧を下回らないよう、掘削機後端に設置した妻型枠を妻型枠ジャッキにより前後移動させることにより設定している。妻型枠ジャッキは、複数本のジャッキ長をそれぞれ計測し制御することにより妻型枠位置を調整し、ジャッキ油圧力を計測し制御することにより打設圧力を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−120397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、覆工コンクリート打設圧力は、コンクリートの自重によりトンネル下部に行くほど上昇し、掘削機の掘進速度やコンクリート供給量によっても変動する。そのため、妻型枠ジャッキの等圧力制御は不可能である。また、妻型枠ジャッキを等長制御とした場合、覆工コンクリートの圧力変動を制御できないため、覆工コンクリートや周辺地盤への悪影響が懸念される。
【0007】
さらに、長尺ジャッキである妻型枠ジャッキは、微量の伸縮制御が難しいため、覆工コンクリート打設圧力の微調整が困難である。覆工コンクリート打設圧力が周辺地盤や地下水の圧力を下回った場合、覆工コンクリートの品質低下や覆工厚過多、地表面の隆起や沈下を誘発する危険性がある。
【0008】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、覆工コンクリートの打設時にコンクリート供給量や掘進速度の変化によって生じる打設圧力の変動を抑制することにより、覆工コンクリートの健全性を確保し、周辺地盤への悪影響を防止することができる場所打ちライニング工法に用いる掘進機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために本発明は、筒状のスキンプレートと、圧力制御用短尺ジャッキと、前記圧力制御用短尺ジャッキの軸方向後方に直列に配置された妻型枠移動用長尺ジャッキとを有し、前記スキンプレートの内部に並列に設置された複数の妻型枠ジャッキと、前記妻型枠移動用長尺ジャッキに連結され、前記妻型枠移動用長尺ジャッキにより移動可能な環状の妻型枠と、を具備し、前記圧力制御用短尺ジャッキは、前記妻型枠ジャッキの移動量を調整する調整部と、前記妻型枠ジャッキの圧力を制御する制御部と、を有する場所打ちライニング工法に用いる掘進機である。
【0010】
妻型枠移動用長尺ジャッキは、妻型枠ジャッキの後端に突出する第1のロッドと、第1のロッドに設けられた第1のピストンとを具備する。妻型枠移動用長尺ジャッキの油室は、第1のピストンにより、第1の移動油室と、第2の移動油室とに区分される。複数の妻型枠ジャッキは、第1の移動油室同士が接続され、同一の油圧源と接続されており、複数の妻型枠ジャッキのそれぞれの第1のロッドが同期して移動する。
【0011】
複数の妻型枠ジャッキは、複数本の妻型枠ジャッキを一群とする、複数のジャッキ群に分けられる。圧力制御用短尺ジャッキは、調整部と制御部とが直列に設けられ、調整部と制御部とを貫通して妻型枠ジャッキの前方に突出して端部がスキンプレート内部に固定される第2のロッドと、調整部と制御部にそれぞれ設けられ、第2のロッドに設けられた第2のピストンと第3のピストンとを有する。制御部は、第2のピストンにより第1の制御油室と第2の制御油室とに区分され、複数の前記妻型枠ジャッキそれぞれの第1の制御油室同士が接続され、同一の油圧源と接続されている。調整部は、第3のピストンにより第1の調整油室と第2の調整油室とに区分され、一のジャッキ群において、一の妻型枠ジャッキの第1の調整油室が、他の妻型枠ジャッキの第2の調整油室と接続されて閉回路が形成される。制御部は、油圧力が可変であり、任意の圧力を上限としてリリーフさせる手段をさらに具備する。
【0012】
ジャッキ群は、n本の妻型枠ジャッキを1組とし(n≧2)、(360/n)度間隔に設置されたm−1本目の第1の調整油室とm本目の第2の調整油室とを連結し(2≦m≦n)、n本目の第1の調整油室と1本目の第2の調整油室とを連結することにより、n本を連動して伸縮させる。n本の妻型枠ジャッキの中心は、妻型枠の中心と一致するものとする。
【0013】
掘削機は、スキンプレートの内部に並列に設置されたシールドジャッキをさらに具備し、覆工コンクリートの打設時に、シールドジャッキ長に合わせて妻型枠移動用長尺ジャッキを縮める同調制御を行う。
【0014】
掘削機は、圧力制御用短尺ジャッキのストロークを計測する短尺ジャッキ用ストローク計と、妻型枠移動用長尺ジャッキのストロークを計測する長尺ジャッキ用ストローク計と、をさらに具備し、任意の圧力制御用短尺ジャッキ、妻型枠移動用長尺ジャッキのストロークを計測する。
【0015】
本発明では、圧力制御用短尺ジャッキの軸方向後方に直列に妻型枠移動用長尺ジャッキを配置して妻型枠ジャッキを構成する。圧力制御用短尺ジャッキは、調整部と制御部とが直列に設けられ、調整部と制御部とを貫通する第2のロッドと、調整部と制御部にそれぞれ設けられ、第2のロッドに設けられた第2のピストンと第3のピストンとを有する。圧力制御用短尺ジャッキの制御部を任意の圧力により制御し、微量に伸縮させることにより、覆工コンクリート打設圧力の微調整を行うことが可能となる。
【0016】
妻型枠ジャッキは、複数本の妻型枠ジャッキを一群とする、複数のジャッキ群に分けられる。ジャッキ群を構成する複数本の妻型枠ジャッキの中心は、妻型枠の中心と一致する。圧力制御用短尺ジャッキの調整部は、一のジャッキ群において、一の妻型枠ジャッキの第1の調整油室が、他の妻型枠ジャッキの第2の調整油室と接続されて閉回路を形成する。これにより、偏荷重による妻型枠ジャッキの動作のばらつきを解消し、妻型枠を偏りなく滑らかに動作させることが可能となる。
【0017】
本発明では、覆工コンクリートの打設時に、シールドジャッキ長に合わせて妻型枠移動用長尺ジャッキを縮める同調制御を行うことにより、掘進速度のばらつきによる覆工コンクリート打設圧力の増減を防止できる。また、任意の圧力制御用短尺ジャッキ、妻型枠移動用長尺ジャッキのストロークを計測することにより、掘進速度の変化による覆工コンクリート圧力変動を防止するとともに、妻型枠ジャッキの誤作動を検知することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、覆工コンクリートの打設時にコンクリート供給量や掘進速度の変化によって生じる打設圧力の変動を抑制することにより、覆工コンクリートの健全性を確保し、周辺地盤への悪影響を防止することができる場所打ちライニング工法に用いる掘進機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】地山1に場所打ちライニングを形成するシールド掘進機3の軸方向の断面図
【図2】妻型枠ジャッキ11をシールド掘進機3の中心側から見た図
【図3】妻型枠ジャッキ11の軸方向の断面図
【図4】シールド掘進機3の周方向の断面図
【図5】ジャッキ群の油圧回路を示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は、地山1に場所打ちライニングを形成するシールド掘進機3の軸方向の断面図である。図1に示すように、シールド掘進機3は、カッタヘッド5、スキンプレート7、妻型枠ジャッキ11、妻型枠13、シールドジャッキ15等からなる。
【0021】
カッタヘッド5は、筒状のスキンプレート7の前端部に設けられる。妻型枠ジャッキ11は、スキンプレート7の内部9に、複数本が並列に設置される。妻型枠ジャッキ11の前端部は、取付部材24を介してスキンプレート7に連結される。妻型枠13は、スキンプレート7の内部9に配置された環状の部材である。妻型枠13は、取付部材22を介して妻型枠ジャッキ11の後端部に連結され、妻型枠ジャッキ11の伸縮により前後に移動可能である。シールドジャッキ15は、スキンプレート7の内部9に、複数本が並列に設置される。シールドジャッキ15は、取付部材(図示せず)を介してスキンプレート7に連結される。
【0022】
図2は、妻型枠ジャッキ11をシールド掘進機3の中心側から見た図である。図2に示すように、妻型枠ジャッキ11は、長尺ジャッキ21、短尺ジャッキ23、長尺ジャッキ用ストローク計25、短尺ジャッキ用ストローク計27等からなる。
【0023】
圧力制御用の短尺ジャッキ23と妻型枠移動用の長尺ジャッキ21とは、直列に配置され、短尺ジャッキ23の後端部と長尺ジャッキ21の前端部とが連結される。短尺ジャッキ23のロッド47は、妻型枠ジャッキ11の前方に突出し、ロッド47の端部は、スキンプレート7(図1)に固定された取付部材24に連結される。すなわち、短尺ジャッキ23のロッド47が突出すると、シリンダ39、37(図3)が後方に移動する。長尺ジャッキ21のロッド31は、妻型枠ジャッキ11の後端に突出し、ロッド31の端部は、妻型枠13に固定された取付部材22に連結される。
【0024】
長尺ジャッキ用ストローク計25は、前端部が取付部材26に、後端部が取付部材22に連結される。取付部材26は、短尺ジャッキ23のシリンダ37に固定される。短尺ジャッキ用ストローク計27は、前端部が取付部材28に、後端部が短尺ジャッキ23のシリンダ37に固定される。取付部材28は、スキンプレート7に固定される。
【0025】
図3は、妻型枠ジャッキ11の軸方向の断面図である。図3に示すように、長尺ジャッキ21のシリンダ30の内部は、ロッド31に設けられた第1のピストン29により、第1の移動油室33と、第2の移動油室35とに区分される。
【0026】
短尺ジャッキ21のシリンダ37の内部は、隔壁46により、妻型枠ジャッキ11の圧力を制御する制御部39と妻型枠ジャッキ11の移動量を調整する調整部41とに分割されている。制御部39と調整部41とは直列であり、制御部39がシールド掘進機3の掘進方向後方に、調整部41が掘進方向前方に設けられる。
【0027】
制御部39は、ロッド47に設けられた第2のピストン43により、第1の制御油室49と、第2の制御油室51とに区分される。調整部41は、ロッド47に設けられた第3のピストン45により、第1の調整油室53と、第2の調整油室55とに区分される。第1の調整油室53と、第2の調整油室55とは、内部の体積が等しい。
【0028】
図4は、シールド掘進機3の周方向の断面図である。図4は、図1に示す矢印A−Aによる断面図である。なお、図4では、シールドジャッキ15の図示を省略している。
【0029】
図4に示すように、妻型枠ジャッキ11は、例えば、周方向に所定の間隔をおいて、18本が配置される。18本の妻型枠ジャッキ11は、120度間隔に配置された3本の妻型枠ジャッキ11を一群とする、複数のジャッキ群11a、11b、11c、11d、11e、11fに分けられる。ジャッキ群11a、11b、11c、11d、11e、11fを構成する3本の妻型枠ジャッキ11の中心は、いずれも妻型枠13の中心と一致する。
【0030】
図5は、ジャッキ群の油圧回路を示す図である。図5に示すように、長尺ジャッキ21の第1の移動油室33同士は、回路57により接続され、同一の油圧源(図示せず)に接続されている。また、長尺ジャッキ21の第2の移動油室35同士は、回路61により接続されている。
【0031】
全ての長尺ジャッキ21は、同一の油圧源により一定の圧力で制御され、ロッド31が同期して移動する。なお、回路57および回路61には操作切替弁(図示せず)が設けられ、これにより長尺ジャッキ21の伸縮操作の切替えが行われる。
【0032】
短尺ジャッキ23の制御部39の第1の制御油室49同士は、回路65により接続され、同一の油圧ポンプ67に接続される。回路65には、元圧設定弁73、加圧設定弁71、背圧設定弁69が設けられる。また、第2の制御油室51同士は、回路75により接続される。
【0033】
元圧設定弁73は、油圧ポンプ67から供給されている油圧力を常時リリーフしながら安定供給する。加圧設定弁71は、覆工コンクリート19の打設圧力に対抗するために必要な油圧力を設定する。加圧設定弁71の設定圧力は可変であり、打設圧力に応じて適切に調整される。背圧設定弁69は、覆工コンクリート19の打設圧力が加圧設定圧力を卓越した場合に、任意の圧力を上限として油圧力を逃がす。
【0034】
全ての短尺ジャッキ23の制御部39は、同一の油圧ポンプ67から供給される油圧力を元圧設定弁73、加圧設定弁71、背圧設定弁69により制御することにより、覆工コンクリート19の打設圧力により発生するジャッキ縮方向の外力に対抗する。
【0035】
短尺ジャッキ23の調整部41は、図4に示す3本1組のジャッキ群(11a〜11f)毎に、一の短尺ジャッキ23の第1の調整油室53が他の短尺ジャッキ23の第2の調整油室55と接続され、閉回路79を形成する。3本1組のジャッキ群では、短尺ジャッキ23の調整部41が、それぞれの短尺ジャッキ23に発生する覆工コンクリート19の打設圧力による圧縮力を等配分する。
【0036】
シールド掘削機3で場所打ちライニングを施工する際には、図1に示すように、シールド掘進機3のシールドジャッキ15を伸長し、既設の内型枠17から反力をとって掘進させつつ、カッタヘッド5で地山1にトンネル坑を掘削する。同時に、妻型枠ジャッキ11の長尺ジャッキ21および短尺ジャッキ23を制御しつつ、トンネル坑壁と内型枠17と妻型枠13とに囲まれた空間に覆工コンクリート19を打設する。
【0037】
覆工コンクリート19の打設時には、シールド掘進機3の掘進速度のばらつきによる打設圧力の増減を防止するため、シールドジャッキ15の長さに合わせて妻型枠移動用の長尺ジャッキ21を縮める同調制御を行う。全ての長尺ジャッキ21は、上述したように同一の油圧源により一定の圧力で制御されているため、ロッド31が同期して移動する。
【0038】
覆工コンクリート19の打設時には、地山1の崩落を防止するため、圧力制御用の短尺ジャッキ23で妻型枠13に常に適切な圧力をかける。すなわち、短尺ジャッキ23の制御部39を、加圧設定弁71で設定された任意の油圧力で伸側に加圧し、覆工コンクリート19の打設圧力に対抗させる。覆工コンクリート19の打設圧力が加圧設定圧力を卓越した場合には、背圧設定弁69で油圧力を逃がし、短尺ジャッキ23の伸縮により妻型枠13を引きこむ。これにより、覆工コンクリート19の打設圧力が減圧され、覆工コンクリート19に異常圧力が発生しない。
【0039】
短尺ジャッキ23の調整部41は、120度間隔で配置された3本1組のジャッキ群11a〜11f毎に、それぞれの短尺ジャッキ23に発生する覆工コンクリート19の打設圧力による圧縮力を等配分する。
【0040】
全ての短尺ジャッキ23の制御部39は、上述したように、同一の油圧源により所定の圧力で制御されているため、ロッド47が同期して移動する。また、短尺ジャッキ23の調整部41は、ジャッキ群11a〜11fの全ての組において、1組あたりの圧力がトンネル中心部圧力相当となるため、特定のジャッキ群が単独で動作することはない。
【0041】
覆工コンクリート19の打設時には、短尺ジャッキ用ストローク計27を用いて、任意の短尺ジャッキ23のストロークを計測する。また、長尺ジャッキ用ストローク計25を用いて、任意の長尺ジャッキ21のストロークを計測する。
【0042】
短尺ジャッキ23のストロークの計測値が伸縮限となった場合には、警報や掘進停止により運転者へ警告する。また、各ジャッキストローク差異を監視し、油圧回路不良による誤動作を検知する。
【0043】
場所打ちライニングを施工する際には、内型枠17の最前端まで覆工コンクリート19を打設した後、シールドジャッキ15を縮めて新たな内型枠17を設置する。そして、掘進および覆工コンクリート19の打設を繰り返す。
【0044】
なお、妻型枠13のメンテナンス等が必要な場合には、妻型枠ジャッキ11の長尺ジャッキ21を伸縮させて実施する。長尺ジャッキ21のロッド31の長さは、妻型枠13のメンテナンス等が実施できるよう、内型枠17のリング幅に応じたものとする。
【0045】
このように、本実施の形態では、妻型枠移動用の長尺ジャッキ21と圧力制御用の短尺ジャッキ23とを直列に連結して妻型枠ジャッキ11を構成する。本実施の形態によれば、覆工コンクリート19の打設時にシールドジャッキ15の長さに合わせて長尺ジャッキ21を縮める同調制御を行うことにより、シールド掘削機3の掘進速度のばらつきによる覆工コンクリート19の打設圧力の増減を防止できる。
【0046】
また、短尺ジャッキ23のロッド47に2つのピストン43、ピストン45を連結し、シリンダ37の内部を、妻型枠ジャッキ11の圧力を制御する制御部39と妻型枠ジャッキ11の移動量を調整する調整部41とに分割した構造とすることにより、短尺ジャッキ23を微量に伸縮させて覆工コンクリート19の打設圧力の微調整を行うことができる。すなわち、大きな移動量を得ることができる長尺ジャッキ21と、長尺ジャッキの油室よりも小容量の油室を有し、圧力の微調整を可能とする短尺ジャッキ23とが直列に連結されるため、確実に圧力を制御可能であるとともに、必要時には、妻型枠13を大きく移動させ、メンテナンス等を行うことができる。
【0047】
短尺ジャッキ23の制御部39は、全ジャッキとも伸側に加圧し、覆工コンクリート19の打設圧力により発生するジャッキ縮方向の外力に対抗する。加圧する油圧力は可変式とし、覆工コンクリート19の打設圧力に応じて加圧設定弁71で任意に設定する。油圧力は任意の圧力を上限として背圧設定弁69でリリーフさせる。これにより、周辺地盤の地盤強度や土水圧に応じて覆工コンクリート19の打設圧力を適切に設定することが可能となり、覆工コンクリート19の品質低下や地表面の隆起沈下等の悪影響を防止できる。
【0048】
短尺ジャッキ23の調整部41は、3本を1組として、一の調整部41の縮側の調整油室55と他の調整部41の伸側の調整油室53とを連結して閉回路79を形成する。3本のジャッキのいずれかに偏荷重が発生してもジャッキが単独で動作することはなく、1組あたりの圧力は全ての組においてトンネル中心部圧力相当となるため、偏荷重により妻型枠13が傾くのを防止し、妻型枠13を滑らかに前後させることができる。
【0049】
本実施の形態では、任意の長尺ジャッキ21および短尺ジャッキ23のストロークを計測し、監視する。また、長尺ジャッキ21をシールドジャッキ15と同調制御する。これにより、シールド掘進機3の掘進速度変化による覆工コンクリート19の圧力変動を防止するとともに、油圧回路不良による誤動作を検知できる。
【0050】
なお、本実施の形態では、18本の妻型枠ジャッキ11を設置したが、妻型枠ジャッキの設置数は、妻型枠13の断面積に応じて決定される。また、本実施の形態では、120度間隔で配置された3本を1組のジャッキ群としたが、1組のジャッキ群を構成する妻型枠ジャッキの本数は、3本に限らない。ジャッキ群は、n本の妻型枠ジャッキを1組とし(n≧2)、(360/n)度間隔に設置されたm−1本目の第1の調整油室とm本目の第2の調整油室とを連結し(2≦m≦n)、n本目の第1の調整油室と1本目の第2の調整油室とを連結することにより、n本の短尺ジャッキ23を連動して伸縮させる。いずれにしても、一組のジャッキ群を構成する各妻型枠ジャッキ11の中心が、妻型枠13の中心と一致し、妻型枠13に偏荷重を与えることなく、制御することができる。
【0051】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0052】
1………地山
3………シールド掘進機
7………スキンプレート
9………内部
11………妻型枠ジャッキ
11a、11b、11c、11d、11e、11f………ジャッキ群
13………妻型枠
15………シールドジャッキ
19………覆工コンクリート
21………長尺ジャッキ
23………短尺ジャッキ
25………長尺ジャッキ用ストローク計
27………短尺ジャッキ用ストローク計
29、43、45………ピストン
31、47………ロッド
33、35………移動油室
49、51………制御油室
53、55………調整油室
57、61、65、75………回路
79………閉回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のスキンプレートと、
圧力制御用短尺ジャッキと、前記圧力制御用短尺ジャッキの軸方向後方に直列に配置された妻型枠移動用長尺ジャッキとを有し、前記スキンプレートの内部に並列に設置された複数の妻型枠ジャッキと、
前記妻型枠移動用長尺ジャッキに連結され、前記妻型枠移動用長尺ジャッキにより移動可能な環状の妻型枠と、
を具備し、
前記圧力制御用短尺ジャッキは、前記妻型枠ジャッキの移動量を調整する調整部と、前記妻型枠ジャッキの圧力を制御する制御部と、を有する場所打ちライニング工法に用いる掘進機。
【請求項2】
前記妻型枠移動用長尺ジャッキは、
前記妻型枠ジャッキの後端に突出する第1のロッドと、
前記第1のロッドに設けられた第1のピストンと、
を具備し、
前記妻型枠移動用長尺ジャッキの油室は、前記第1のピストンにより、第1の移動油室と、第2の移動油室とに区分され、
前記複数の妻型枠ジャッキの前記第1の移動油室同士が接続され、同一の油圧源と接続されており、前記複数の妻型枠ジャッキのそれぞれの前記第1のロッドが同期して移動することを特徴とする請求項1記載の場所打ちライニング工法に用いる掘進機。
【請求項3】
前記複数の妻型枠ジャッキは、複数本の妻型枠ジャッキを一群とする、複数のジャッキ群に分けられ、
前記圧力制御用短尺ジャッキは、
前記調整部と前記制御部とが直列に設けられ、前記調整部と前記制御部とを貫通して前記妻型枠ジャッキの前方に突出して端部が前記スキンプレート内部に固定される第2のロッドと、前記調整部と前記制御部にそれぞれ設けられ、前記第2のロッドに設けられた第2のピストンと第3のピストンと、を有し、
前記制御部は、前記第2のピストンにより第1の制御油室と第2の制御油室とに区分され、複数の前記妻型枠ジャッキそれぞれの前記第1の制御油室同士が接続され、同一の油圧源と接続されており、
前記調整部は、前記第3のピストンにより第1の調整油室と第2の調整油室とに区分され、一の前記ジャッキ群において、一の前記妻型枠ジャッキの前記第1の調整油室が、他の前記妻型枠ジャッキの前記第2の調整油室と接続されて閉回路を形成することを特徴とする請求項1または請求項2記載の場所打ちライニング工法に用いる掘進機。
【請求項4】
前記制御部は、油圧力が可変であり、任意の圧力を上限としてリリーフさせる手段をさらに具備することを特徴とする請求項3記載の場所打ちライニング工法に用いる掘進機。
【請求項5】
前記ジャッキ群は、n本の前記妻型枠ジャッキを1組とし(n≧2)、(360/n)度間隔に設置されたm−1本目の第1の調整油室とm本目の第2の調整油室とを連結し(2≦m≦n)、n本目の第1の調整油室と1本目の第2の調整油室とを連結することにより、n本を連動して伸縮させ、前記n本の前記妻型枠ジャッキの中心が、前記妻型枠の中心と一致することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の場所打ちライニング工法に用いる掘進機。
【請求項6】
前記スキンプレートの内部に並列に設置されたシールドジャッキをさらに具備し、
前記覆工コンクリートの打設時に、前記シールドジャッキ長に合わせて前記妻型枠移動用長尺ジャッキを縮める同調制御を行うことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の場所打ちライニング工法に用いる掘進機。
【請求項7】
前記圧力制御用短尺ジャッキのストロークを計測する短尺ジャッキ用ストローク計と、
前記妻型枠移動用長尺ジャッキのストロークを計測する長尺ジャッキ用ストローク計と、
をさらに具備し、
任意の前記圧力制御用短尺ジャッキ、前記妻型枠移動用長尺ジャッキのストロークを計測することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の場所打ちライニング工法に用いる掘進機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−247002(P2011−247002A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122106(P2010−122106)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】