説明

塗工用樹脂液の塗布方法及び塗布装置

【課題】高粘度の樹脂液であっても筋状の跡を発生させることなく膜厚を均一にすることができる樹脂液の塗布技術を提供する。
【解決手段】ナイフコーター3には塗工用樹脂液を受けるための樹脂液受け面30が設けられる。ナイフコーター3には液供給ユニット10が装着される。液供給ユニット10の本体部11には、ナイフコーター3の幅方向に延びる樹脂液押圧面15と、樹脂液押圧面15を貫通する樹脂液供給口12とが設けられている。液供給ユニット10の樹脂液供給口12を介してナイフコーター3の樹脂液受け面30に塗工用樹脂液を供給し、ナイフコーター3の樹脂液受け面30と液供給ユニット10の樹脂液押圧面15との隙間18に塗工用樹脂液を充填することによって、ダム部材8上に塗工用樹脂液を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺のシート基材上に粘性の樹脂液を塗布する技術に関し、特に高粘性の樹脂液を塗布する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は、従来の塗布装置の概略構成図を示すものである。
図7に示すように、従来の塗布装置101は、搬送ローラ102と、搬送ローラ102の上方に設けられたナイフコーター103とを有している。
【0003】
搬送ローラ102は、例えばステンレス等の金属からなり、図示しない駆動モータによって所定の方向に回転するように構成されている。
搬送ローラ102には、例えばPETからなる一連の長尺なシート基材104が架け渡され、さらにこのシート基材104は、図示しない巻取ローラに架け渡されている。そして、シート基材104の上側部分104aが搬送ローラ102から離れる方向に水平に搬送されるようになっている。
【0004】
一方、ナイフコーター103は、例えばステンレス等の金属を用いて一体成型によって形成されており、その刃部103aが、搬送ローラ102上のシート基材104に対して近接配置されている。
搬送ローラ102及びナイフコーター103のシート搬送方向上流側には、樹脂液供給手段105が設けられている。
【0005】
この樹脂液供給手段105は、樹脂液源(図示せず)に接続された供給ホース106を有し、供給ホース106の先端部が、シート搬送方向上流側に設けられたダム部材108上に配置され、供給ホース106の先端部から塗工用樹脂液107を排出するようになっている。
【0006】
このような従来技術においては、供給ホース106の先端部から塗工用樹脂液107を排出するとともに、搬送ローラ102を図中時計回り方向へ回転させることにより、シート基材104の上側部分104aをシート搬送方向へ搬送させる。
【0007】
これにより、ダム部材108上に塗工用樹脂液107の液溜り107aが形成され、さらに搬送ローラ102を同方向へ回転させることにより、塗工用樹脂液107がナイフコーター103の刃部103aに接触して、所定の厚さに規制された塗布膜110が形成される。
【0008】
しかしながら、このような従来技術では、供給ホース106によって塗工用樹脂液107をダム部材108上に供給するようにしているため、その液圧に起因する筋状の跡(ムラ)が塗布膜110上に残ってしまうという問題がある。
このような筋状の跡は、特に高粘度の樹脂を用いた場合に生じやすく、その改善が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−117170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような従来の技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、高粘度の樹脂液であっても筋状の跡を発生させることなく膜厚を均一にすることができる樹脂液の塗布技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するためになされた本発明は、シート基材を支持して搬送する搬送ローラと、前記搬送ローラに近接配置され所定の幅を有するナイフコーターと、前記搬送ローラと前記ナイフコーターの刃部近傍の液溜め部に前記塗工用樹脂液を供給する樹脂液供給手段とを有する塗布装置を用い、前記搬送ローラと前記ナイフコーターの刃部との隙間に塗工用樹脂液を供給して前記シート基材上に塗工用樹脂液を塗布する方法であって、前記ナイフコーターには当該塗工用樹脂液を受けるための樹脂液受け面が設けられるとともに、当該ナイフコーターには、前記ナイフコーターの幅方向に延びる樹脂液押圧面と、当該樹脂液押圧面を貫通する樹脂液供給口とを有する本体部を備えた液供給ユニットが装着され、前記液供給ユニットの前記樹脂液供給口を介して前記ナイフコーターの樹脂液受け面に前記塗工用樹脂液を供給し、前記ナイフコーターの樹脂液受け面と前記液供給ユニットの樹脂液押圧面との隙間に当該塗工用樹脂液を充填することによって、前記液溜め部に当該塗工用樹脂液を供給する工程を有するものである。
本発明では、前記液供給ユニットが、前記刃部に対して前記液溜め部側に設けられている場合にも効果的である。
本発明では、前記液供給ユニットには、前記ナイフコーターの樹脂液受け面に対向するバッファ用の凹部が設けられ、当該バッファ用の凹部を介して塗工用樹脂液を供給することも効果的である。
本発明では、前記塗工用樹脂液が、球状又は扁平状のフィラー類を含有する場合にも効果的である。
本発明では、前記ナイフコーターの樹脂液受け面と当該液供給ユニットの樹脂液押圧面との隙間が、0.1mm〜1.0mmである場合にも効果的である。
本発明では、前記塗工用樹脂液の粘度が1〜250Pa・sである場合にも効果的である。
一方、本発明は、シート基材を支持して搬送する搬送ローラに近接配置され所定の幅を有するナイフコーターに装着可能な液供給ユニットであって、前記ナイフコーターに形成された樹脂液受け面に所定の間隔で対向配置され当該ナイフコーターの幅方向に延びる樹脂液押圧面と、当該樹脂液押圧面を貫通するように設けられた樹脂液供給口とを有する本体部を備えたものである。
また、本発明は、上述した液供給ユニットと、前記液供給ユニットの本体部の樹脂液供給口に塗工用樹脂液を供給する樹脂液供給手段とを有し、前記液供給ユニットの本体部の樹脂液供給口に供給された塗工用樹脂液を、前記ナイフコーターの樹脂液受け面と当該液供給ユニットの本体部の樹脂液押圧面との間の隙間を介して前記シート基材上に供給するように構成されている塗布装置である。
【0012】
本発明の場合、液供給ユニットの樹脂液供給口を介してナイフコーターの樹脂液受け面に塗工用樹脂液を供給し、ナイフコーターの樹脂液受け面と液供給ユニットの樹脂液押圧面との隙間に塗工用樹脂液を充填することにより、これら樹脂液受け面と樹脂液押圧面から塗工用樹脂液が均一に押圧されナイフコーターの幅方向に広がるように流動するため、高粘度の塗工用樹脂液を用いた場合であっても、筋状の跡を発生させることなくシート基材上において均一な膜厚の塗布を行うことができる。
【0013】
本発明において、液供給ユニットが、ナイフコーターの刃部に対して液溜め部側に設けられている場合には、従来技術と同じ方向から塗工用樹脂液を供給することができるので、装置構成を複雑にすることなく円滑に塗工用樹脂液を供給することができる。
【0014】
本発明において、液供給ユニットの本体部に、ナイフコーターの樹脂液受け面に対向するバッファ用の凹部を液供給ユニットに設け、このバッファ用の凹部を介して塗工用樹脂液を供給すれば、塗工用樹脂液がバッファ用の凹部に一旦充填された後にナイフコーターの樹脂液受け面と液供給ユニットの樹脂液押圧面との隙間に導かれるため、塗工用樹脂液をより円滑に流動させることができ、その結果、塗布の際においてより確実に筋状の跡の発生を防止することができる。
【0015】
一方、本発明の液供給ユニットによれば、従来のナイフコーターに対して多少の加工を施すだけで筋状の跡の発生を防止することができるので、イニシャル及びランニングコストの小さい塗布装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上述べたように本発明によれば、高粘度の樹脂液であっても筋状の跡を発生させることなくシート基材上において均一な膜厚の塗布を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a):本発明に係る塗布装置の実施の形態の構成を示す正面部分断面図である。(b):同塗布装置の要部を示す断面図である。
【図2】同塗布装置の外観を示す側面図である。
【図3】(a):同塗布装置における液供給ユニットの本体部を示す正面図である。(b):図3(a)のA−A線断面図である。(c):図3(a)のB−B線断面図である。
【図4】同塗布装置における塗布方法の例を示す図である(その1)。
【図5】同塗布装置における塗布方法の例を示す図である(その2)。
【図6】同塗布装置における塗布方法の例を示す図である(その3)。
【図7】従来の塗布装置及び塗布方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1(a)は、本発明に係る塗布装置の実施の形態の構成を示す正面部分断面図、図1(b)は、同塗布装置の要部を示す断面図である。
また、図2は、同塗布装置の外観を示す側面図、図3(a)は、本実施の形態における液供給ユニットの本体部を示す正面図、図3(b)は、図3(a)のA−A線断面図、図3(c)は、図3(a)のB−B線断面図である。
【0019】
図1(a)(b)に示すように、本実施の形態の塗布装置1は、シート基材4を支持して搬送する搬送ローラ2を有している。
この搬送ローラ2は、例えばステンレス等の金属からなり、図示しない駆動モータによって所定の方向(ここでは時計回り方向)に回転するように構成されている。
【0020】
搬送ローラ2には、例えばPETからなる一連の長尺なシート基材4が架け渡され、さらにこのシート基材4は、図示しない巻取ローラに架け渡されている。そして、シート基材4の上側部分4aが搬送ローラ2から離れる方向(矢印P方向、以下「シート搬送方向」という。)に水平に搬送されるようになっている。
【0021】
搬送ローラ2の上方には、ナイフコーター3が設けられている。
このナイフコーター3は、例えばステンレス等の金属を用いて構成されており、その刃部3aが、搬送ローラ2上のシート基材4に対して近接配置されている。
【0022】
本発明の場合、特に限定されることはないが所望の膜厚の塗布膜を確実に得る観点からは、搬送ローラ2上のシート基材4とナイフコーター3の刃部3aとの隙間の間隔を、50〜200μmに設定することが好ましい。
【0023】
搬送ローラ2及びナイフコーター3のシート搬送方向上流側には、樹脂液供給手段5が設けられ、また、樹脂液供給手段5の下方で搬送ローラ2の近傍には、液溜め部を構成するダム部材8が設けられている。
樹脂液供給手段5は、塗工用樹脂液の供給源(図示せず)に接続された供給ホース50を有し、この供給ホース50の先端部には、コネクタ51を介してパイプ状のノズル部52が取り付けられている。
【0024】
なお、本発明は、塗工用樹脂液(以下、「樹脂液」という。)として、有機又は無機系の球状或いは扁平状のフィラー類を含有する高粘度の樹脂溶液に対して特に効果があるものである。
このような樹脂液としては、例えば、フェノキシ樹脂、液状エポキシ樹脂、イミダゾール系潜在性硬化剤、無機フィラー、シランカップリング剤、溶剤としてトルエンを加えて攪拌して得られた樹脂液を用いることができる。
【0025】
一方、本実施の形態においては、ナイフコーター3のシート搬送方向上流側の部分が平面加工され、この加工面3bに、液供給ユニット10が装着されている。
この液供給ユニット10は、例えばステンレス等の金属材料からなる本体部11を有し、本実施の形態の場合、この本体部11は、例えば図7に示す従来のナイフコーター103におけるシート搬送方向上流側の部分を、ほぼ鉛直方向に切断したような形状、例えば矩形の平板形状に形成されている。
【0026】
図2に示すように、液供給ユニット10の本体部11は、シート基材4より若干幅狭に形成されている。そして、この本体部11の中央部分には、樹脂液を供給するための樹脂液供給口12が、本体部11を貫通するように形成されている。
ここで、液供給ユニット10の本体部11の樹脂液供給口12は、樹脂液供給手段5のノズル部52と嵌合する(はまり合う)形状及び大きさに形成されている。
【0027】
そして、例えば図1(a)(b)に示すように、ねじ13によって本体部11がナイフコーター3に取り付けられるとともに、樹脂液供給手段5のノズル部52が、例えば溶接によって樹脂液供給口12にシート基材搬送方向下流側から固定されるように構成されている。
本実施の形態においては、図1(b)に示すように、ナイフコーター3のシート搬送方向上流側の下半分には、平面状の樹脂液受け面30が形成されている。
【0028】
一方、図1(b)、図2及び図3(a)〜(c)に示すように、液供給ユニット10の本体部11における、ナイフコーター3の加工面3bと対向する部分には、平面状の基準面14が形成され、さらに、本体部11のナイフコーター3の樹脂液受け面30と対向する部分には、所定の間隔(ギャップ)Gをおいて、樹脂液押圧面15が形成されている。
【0029】
本実施の形態の場合、この樹脂液押圧面15は、ナイフコーター3の樹脂液受け面30と平行に形成されている。
本発明の場合、特に限定されることはないが、樹脂液中において泡の発生を防止する観点からは、ナイフコーター3の樹脂液受け面30と、液供給ユニット10の本体部11の樹脂液押圧面15との間隔Gは、できるだけ小さいことが好ましい。
ただし、加工の際の公差等を考慮すると、ナイフコーター3の樹脂液受け面30と、液供給ユニット10の本体部11の樹脂液押圧面15との間隔Gは、0.1mm〜1.0mmの間に設定することが好ましい。
【0030】
本実施の形態では、図3(b)に示すように、液供給ユニット10の本体部11に、基準面14に対して平行で、かつ、基準面14に対して高さを低くした樹脂液押圧面15を設けることにより、ナイフコーター3の樹脂液受け面30と液供給ユニット10の本体部11の樹脂液押圧面15との間隔Gを所望の値に設定するようにしている。
【0031】
さらに、本実施の形態においては、図3(a)に示すように、液供給ユニット10の本体部11の両側部分で、樹脂液受け面30の両側部分には、樹脂液を円滑に導いて押し出すため、本体部11の下縁部11aに向って広がるように形成されたガイド壁部15a、15bが設けられている。
【0032】
また、図3(a)〜(c)に示すように、本実施の形態においては、液供給ユニット10の本体部11のナイフコーター3と対向する側に、本体部11の幅方向に延びるバッファ凹部(バッファ用の凹部)16が形成されている。
このバッファ凹部16は、液供給ユニット10の本体部11の樹脂液供給口12と重なるように例えば帯状に形成されている。
【0033】
本実施の形態の場合、このバッファ凹部16は、その底面が基準面14に対して平行になるように形成されている。
そして、図3(c)に示すように、バッファ凹部16は、基準面14に対する樹脂液押圧面15より低く(深く)なるように形成されている。
本発明の場合、バッファ凹部16の基準面14に対する深さDは、特に限定されることはないが、均一な液供給圧力を確保する観点からは、1mm〜10mmの間に設定することが好ましい。
【0034】
さらに、本実施の形態では、液供給ユニット10の本体部11に、上述した樹脂液受け面30とバッファ凹部16との間に、例えば本体部11の幅方向に延びる帯状の傾斜面17が形成されている。
図4〜図6は、本実施の形態の塗布装置における塗布方法の例を示すを示すものである。
【0035】
本実施の形態においては、供給ホース50によって樹脂液20を供給しノズル部52の先端部から、液供給ユニット10の樹脂液供給口12に樹脂液20を供給する。
これにより、樹脂液20がナイフコーター3の樹脂液受け面30によって押し戻され、バッファ凹部16に沿ってナイフコーター3の幅方向に広がる。そして、更に樹脂液20の供給を継続すると、樹脂液20が液供給ユニット10の本体部11の傾斜面17及び樹脂液受け面30を介してナイフコーター3の樹脂液受け面30と液供給ユニット10の本体部11の樹脂液押圧面15との間に充填され、図4に示すように、ナイフコーター3の樹脂液受け面30と液供給ユニット10の本体部11との隙間18(図1(b)参照)から下方のシート基材4上に滴下される。
【0036】
さらに、樹脂液20の供給を継続するとともに、図5に示すように、搬送ローラ2をシート搬送方向へ回転させてシート基材4を矢印P方向へ搬送すると、ダム部材8上に樹脂液20の液溜り20aが形成され、さらに搬送ローラ2を同方向へ回転させることにより、図6に示すように、樹脂液20がナイフコーター3の刃部3aに接触して所定の厚さに規制され、所望の厚さの塗布膜21が形成される。
【0037】
以上述べた本実施の形態によれば、ナイフコーター3に設けた液供給ユニット10の本体部11の樹脂液供給口12を介して樹脂液受け面30に樹脂液20を供給し、ナイフコーター3の樹脂液受け面30と液供給ユニット10の樹脂液押圧面15との隙間18に樹脂液20を充填することにより、これら樹脂液受け面30と樹脂液押圧面15から樹脂液20が均一に押圧されナイフコーター3の幅方向に広がるように流動するため、高粘度の樹脂液20を用いた場合であっても、筋状の跡を発生させることなくシート基材4上において均一な膜厚の塗布を行うことができる。
【0038】
また、本実施の形態においては、液供給ユニット10が、ナイフコーター3の刃部3aに対して、液溜め部であるダム部材8側に設けられていることから、従来技術と同じ方向から樹脂液20を供給することができ、装置構成を複雑にすることなく円滑に樹脂液20を供給することができる。
【0039】
さらに、本実施の形態においては、ナイフコーター3の樹脂液受け面30に対向するバッファ凹部16を介して樹脂液20を供給することから、樹脂液20がバッファ凹部16に一旦充填された後にナイフコーター3の樹脂液受け面30と液供給ユニット10の樹脂液押圧面15との隙間18に導かれるため、樹脂液20をより円滑に流動させることができ、その結果、塗布の際においてより確実に筋状の跡の発生を防止することができる。
【0040】
さらにまた、本実施の形態の液供給ユニット10によれば、従来のナイフコーターに対して多少の加工を施すだけで筋状の跡の発生を防止することができるので、イニシャル及びランニングコストの小さい塗布装置1を提供することができる。
【0041】
なお、本発明の実施例として、フェノキシ樹脂(東都化成社製 YP50)10質量部、液状エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製 EP828)10質量部、イミダゾール系潜在性硬化剤(ノバキュア3941HP 旭化成社製)15質量部、無機フィラー(アドマテックス社製 SOE2)50質量部、シランカップリング剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製 A−187)1質量部に、溶剤としてトルエン100質量部を加えて攪拌し、均一な樹脂液を調製した。
【0042】
この樹脂液を用い、図7に示す従来の塗布装置と、上述した本発明の塗布装置によってシート基材上に樹脂液を塗布した。
その結果、図7に示す従来技術では、塗布膜上に筋状の跡が発生したのに対し、上述した本発明の塗布装置では筋状の跡は発生しなかった。
【0043】
本発明は上述の実施の形態に限られることなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、上述の実施の形態においては、液供給ユニット10をナイフコーター3の刃部3aに対して、シート基材4の搬送方向上流側、即ち液溜め部であるダム部材8側に設けるようにしたが、本発明はこれに限られず、シート基材4の搬送方向下流側に液供給ユニット10を設けることもできる。
【0044】
ただし、装置構成を複雑にすることなく円滑に樹脂液20を供給する観点からは、上記実施の形態のように、液供給ユニット10をナイフコーター3の刃部3aに対して、シート基材4の搬送方向上流側に設けることが好ましい。
【0045】
また、上記実施の形態においては、液供給ユニット10の本体部11に基準面14に対して高さを低くした樹脂液押圧面15を設けることにより、ナイフコーター3の樹脂液受け面30と液供給ユニット10の樹脂液押圧面15との間隔Gを所望の値に設定するようにしたが、本発明はこれに限られず、ナイフコーター3側を加工することにより、ナイフコーター3の樹脂液受け面30と液供給ユニット10の樹脂液押圧面15との間隔Gを所定の値に設定することもでき、また、ナイフコーター3及び液供給ユニット10の双方を加工することにより、当該間隔Gを所定の値に設定することもできる。
【0046】
ただし、安定した液供給を確保する観点からは、上記実施の形態のように、液供給ユニット10の本体部11に基準面14に対して高さを低くした樹脂液押圧面15を設けることにより、ナイフコーター3の樹脂液受け面30と液供給ユニット10の樹脂液押圧面15との間隔Gを所望の値に設定することが好ましい。
【符号の説明】
【0047】
1…塗布装置
2…搬送ローラ
3…ナイフコーター
3a…刃部
4…シート基材
5…樹脂液供給手段
8…ダム部材
10…液供給ユニット
11…本体部
12…樹脂液供給口
15…樹脂液押圧面
16…バッファ凹部(バッファ用の凹部)
18…隙間
20…塗工用樹脂液
30…樹脂液受け面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート基材を支持して搬送する搬送ローラと、前記搬送ローラに近接配置され所定の幅を有するナイフコーターと、前記搬送ローラと前記ナイフコーターの刃部近傍の液溜め部に前記塗工用樹脂液を供給する樹脂液供給手段とを有する塗布装置を用い、前記搬送ローラと前記ナイフコーターの刃部との隙間に塗工用樹脂液を供給して前記シート基材上に塗工用樹脂液を塗布する方法であって、
前記ナイフコーターには当該塗工用樹脂液を受けるための樹脂液受け面が設けられるとともに、当該ナイフコーターには、前記ナイフコーターの幅方向に延びる樹脂液押圧面と、当該樹脂液押圧面を貫通する樹脂液供給口とを有する本体部を備えた液供給ユニットが装着され、
前記液供給ユニットの前記樹脂液供給口を介して前記ナイフコーターの樹脂液受け面に前記塗工用樹脂液を供給し、前記ナイフコーターの樹脂液受け面と前記液供給ユニットの樹脂液押圧面との隙間に当該塗工用樹脂液を充填することによって、前記液溜め部に当該塗工用樹脂液を供給する工程を有する塗工用樹脂液の塗布方法。
【請求項2】
前記液供給ユニットが、前記刃部に対して前記液溜め部側に設けられている請求項1記載の塗工用樹脂液の塗布方法。
【請求項3】
前記液供給ユニットには、前記ナイフコーターの樹脂液受け面に対向するバッファ用の凹部が設けられ、当該バッファ用の凹部を介して塗工用樹脂液を供給する請求項1又は2のいずれか1項記載の塗工用樹脂液の塗布方法。
【請求項4】
前記塗工用樹脂液が、球状又は扁平状のフィラー類を含有する請求項1乃至3のいずれか1項記載の塗工用樹脂液の塗布方法。
【請求項5】
前記ナイフコーターの樹脂液受け面と当該液供給ユニットの樹脂液押圧面との隙間が、0.1mm〜1.0mmである請求項1乃至4のいずれか1項記載の塗工用樹脂液の塗布方法。
【請求項6】
前記塗工用樹脂液の粘度が1〜250Pa・sである請求項1乃至4のいずれか1項記載の塗工用樹脂液の塗布方法。
【請求項7】
シート基材を支持して搬送する搬送ローラに近接配置され所定の幅を有するナイフコーターに装着可能な液供給ユニットであって、
前記ナイフコーターに形成された樹脂液受け面に所定の間隔で対向配置され当該ナイフコーターの幅方向に延びる樹脂液押圧面と、当該樹脂液押圧面を貫通するように設けられた樹脂液供給口とを有する本体部を備えた液供給ユニット。
【請求項8】
請求項7記載の液供給ユニットと、
前記液供給ユニットの本体部の樹脂液供給口に塗工用樹脂液を供給する樹脂液供給手段とを有し、
前記液供給ユニットの本体部の樹脂液供給口に供給された塗工用樹脂液を、前記ナイフコーターの樹脂液受け面と当該液供給ユニットの本体部の樹脂液押圧面との間の隙間を介して前記シート基材上に供給するように構成されている塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−161424(P2011−161424A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30592(P2010−30592)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】