説明

塗工装置

【課題】 塗布作業と平行して塗布材の流速等を計測して塗布材の流量制御ができるようにする。
【解決手段】 塗布材が吐出されるスリット20を備えたダイヘッド16と、ダイヘッド16に塗布材を圧送するポンプ12と、ダイヘッド16とポンプ12とを接続する配管25の途中に設けられて、スリット20を流動する塗布材の流量に対応した寸法に形成された計測チャネル及び該計測チャネルを流動する塗布材の動的特性を計測するセンサを備えた計測部14と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布材の塗工作業に用いられる塗工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2次電池の製造工程においては、シート材の上に電極材料を薄く塗布する必要があり、その膜厚の精度が電池の性能や品質に大きく影響する。そこで、このような塗布材の塗工作業に用いるための塗布装置が提案されている。
【0003】
例えば、特開平11−223594号公報においては、図5に示すような構成の塗布システムを提案している。この塗布システムは、配管接続されたタンク101とダイヘッド105とを備える。この配管途中には、ポンプ102が設けられて、タンク101に貯留された塗布材を圧送する。これにより、塗布材はダイヘッド105のスリット106から吐出される。
【0004】
また、ポンプ102とダイヘッド105との間の配管には、切替弁103が設けられて、塗布材をタンク101に戻す流路と、ダイヘッド105に流動させる流路とを切り替えられるようになっている。切替弁103からタンク101に戻る配管には、スリット106に対応した寸法のスリット相当管部104aが設けられると共に、このスリット相当管部104aの下流位置に流量計104bが設けられている。
スリット相当管部104aは、スリット106に対応した寸法に形成されているので、塗布材がスリット106を通過する際の流速と、スリット相当管部104aを通過する際の流速とは、一致する。そこで、スリット106から吐出する塗布材の流速を計測する場合には、塗布材がタンク101に戻るように切替弁103を切替て、スリット相当管部104aを流動する塗布材の流量を流量計104bにより計測する。これにより、スリット106を流動する塗布材の流速を知ることができるので、塗布量の制御が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−223594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特開平11−223594号公報にかかる構成では、塗布材の流速は、切替弁103を切り替えて計測されるため、塗布作業を中断して計測しなければならない。即ち、塗布作業中にリアルタイムに塗布材の流速を計測できないため、塗布作業を効率良く行うことが困難であった。
【0007】
そこで、本発明の主目的は、塗布材の流速等を塗布作業と平行して計測して、リアルタイムに塗布量の制御ができる塗工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、塗布材が吐出されるスリットを備えたダイヘッドと、ダイヘッドに塗布材を圧送するポンプと、ダイヘッドとポンプとを接続する配管途中に設けられて、スリットと同一寸法に形成された計測チャネル及び該計測チャネルを流動する塗布材の動的特性を計測するセンサを備えた計測部と、計測部からの制御信号に基づきポンプを制御してダイヘッドから吐出される塗布材の量を制御する制御部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポンプとダイヘッドとを接続する配管途中に、塗布材の塗布口となるスリットと同一寸法に形成された計測チャネルを備える計測部を設けて、計測チャネルを流動する塗布材の流速等の動特性を計測するようにしたので、塗布材の流速等を塗布作業と平行してリアルタイムに塗布量の制御ができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる塗工装置の概略図である。
【図2】第1の実施形態にかかる塗工装置におけるダイヘッドの斜視図である。
【図3】第1の実施形態にかかる塗工装置における計測部の斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態にかかる塗工装置の概略図である。
【図5】関連技術にかかる塗布システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態を説明する。図1は、本実施形態にかかる塗工装置の概略図である。この塗工装置2Aは、塗布材を貯留するタンク10、タンク10に貯留された塗布材を圧送するポンプ12、塗布材を吐出するダイヘッド16、ダイヘッド16から吐出される塗布材の流速等の動特性を計測する計測部14、計測部14からの計測信号に基づきポンプ12等を制御する制御部22を備える。
【0012】
なお、図1において番号4はローラであり、番号6は塗布工物である。ローラ4は図示しない動力源により回転し、この回転により塗布工物6が搬送される。従って、ダイヘッド16から吐出した塗布材は、ローラ4の回転に従い搬送される塗布工物6に連続的に塗布される。
【0013】
以下の説明においては、計測部14は塗布材の流速を計測する場合について説明するが、塗布材が非ニュートン体である場合には、塗布材の粘度や受圧を計測してもよい。非ニュートン体の剪断速度等の流速は、同じ圧力差である場合には、粘度に大きく依存し、また粘度は塗布材が受ける圧力(受圧)等に依存する。従って、塗布材の粘度又は受圧等を制御することは、流速を制御することと等価とみなせる。本実施形態においては、塗布材の流速、粘度、受圧等を、動的特性と呼称する。
【0014】
タンク10は、配管25を介してポンプ12に接続されており、計測部14はポンプ12とダイヘッド16との間の配管25の途中に設けられている。
【0015】
ダイヘッド16にはマニホールド18及びスリット20が、形成されている。スリット20は、例えばシム等によって形成されて、スリット20の幅は希望する塗工幅に応じて調整可能に設けられている。
【0016】
図2は、ダイヘッド16の斜視図である。なお、同図において、マニホールド18は図示省略している。また、図3は、計測部14の斜視図である。計測部14には、塗布材が流動する計測チャネル14aが形成されると共に、この計測チャネル14aを流動する塗布材の流速を計測するセンサ14bが設けられている。図2及び図3において、符号Wは、スリット20及び計測チャネル14aの幅寸法、符号Hはスリット20及び計測チャネル14aの高寸法、符号Dは、奥行き寸法を示している。そして、スリット20及び計測チャネル14aの幅寸法W,高寸法H及び、奥行き寸法Dは、同じ寸法に形成されている。
【0017】
スリット20と計測チャネル14aとは、同一形状に形成されている。従って、塗布材が計測チャネル14aを流動する際に受ける圧力は、スリット20を通過する際に受ける圧力に一致する。塗布材が非ニュートン体のとき、受圧が同じであるため、粘度も同じ値になる。従って、計測チャネル14aを流動する際の流速と、スリット20を通過する際の流速とは、一致する。即ち、計測チャネル14aにおける塗布材の流速を測定することにより、スリット20における塗布材の流速が検出できる。ポンプ12は、センサ14bによる計測結果に基づきスリット20から吐出する塗布材の流速が常に(リアルタイムに)一定の流速を保つように、制御される。
【0018】
以上説明したように、スリットと同一形状の計測チャネルを備える計測部をダイヘッドとポンプとの間の配管に設けたので、塗工作業を中断することなくリアルタイムで塗布材の動的特性の制御が可能になり、塗工作業の効率化及び塗布量の均一化による高品質な製品が製造可能になる。
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。なお、第1の実施形態と同一構成に関しては、同一符号を付して説明を適宜省略する。
【0019】
第1の実施形態においては、計測部14を、ポンプ12とダイヘッド16との間の配管25に設けた。そして、この計測部14における計測チャネル14aは、ダイヘッド16のスリット20と同一形状に形成されていた。ところで、ダイヘッド16の幅は、被塗工物6の幅寸法より適宜大きい必要があるので、計測部14の幅寸法も大きくする必要があった。これに対し、本実施形態においては、計測部14の幅寸法を小さくできるようにする。
【0020】
図4は、本実施形態にかかる塗工装置2Bの概略図である。塗工装置2Bは、タンク10、ポンプ12、ダイヘッド16、計測部14、制御部22を備える。そして、計測部14は、配管25の途中に設けられたバイパス配管26の途中に設けられている。なお、バイパス配管26は分岐後、また配管25と合流する。これにより、ポンプ12により圧送された塗布材の一部は、バイパス配管26に分流して、計測部14により動的特性が計測されて、配管25に戻る。
【0021】
計測部14における計測チャネル14aの高寸法及び奥行き寸法は、ダイヘッド16におけるスリット20の高寸法と同じ寸法であるが、それぞれの幅寸法は異なっている。
【0022】
計測チャネル14aの幅寸法は、ポンプ12から吐出された塗布材の流量に対するバイパス配管26を流動する塗布材の量の比に対応している。即ち、ポンプ12から吐出される塗布材の流量を1としたとき、バイパス配管26に流れる塗布材の量が1/5である場合、計測チャネル14aの幅寸法は、スリット20の幅寸法の1/5に設定されている。従って、計測チャネル14aを分流する塗布材の流速を計測することにより、スリット20から吐出する塗布材の流速を知ることが可能になる。
【0023】
以上説明したように、計測部の幅寸法を小さくすることができるので、塗工装置の小型化が可能になる。
【符号の説明】
【0024】
2A,2B 塗工装置
4 ローラ
6 被塗工物
10 タンク
12 ポンプ
14 計測部
14a 計測チャネル
14b センサ
16 ダイヘッド
18 マニホールド
20 スリット
22 制御部
25 配管
26 バイパス配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布材が吐出されるスリットを備えたダイヘッドと、
前記ダイヘッドに塗布材を圧送するポンプと、
前記ダイヘッドと前記ポンプとを接続する配管途中に設けられて、前記スリットを流動する前記塗布材の流量に対応した寸法に形成された計測チャネル及び該計測チャネルを流動する前記塗布材の動的特性を計測するセンサを備えた計測部と、を有することを特徴とする塗工装置。
【請求項2】
請求項1に記載の塗工装置であって、
前記ポンプと前記ダイヘッドとが1本の配管に接続されて、該配管に前記計測部が設けられていることを特徴とする塗工装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の塗工装置であって、
前記計測チャネルは、前記スリットと同一寸法に形成されていることを特徴とする
塗工装置。
【請求項4】
請求項1に記載の塗工装置であって、
前記ポンプと前記ダイヘッドとを接続する配管の途中にバイパス配管が設けられて、該バイパス配管に前記計測部が設けられていることを特徴とする塗工装置。
【請求項5】
請求項4に記載の塗工装置であって、
前記バイパス配管に設けられた前記計測部の幅寸法と前記スリットの幅寸法との比は、前記バイパス配管を流動する前記塗布材の流量と前記スリットから吐出される前記塗布材の流量との比に等しいことを特徴とする塗工装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の塗工装置であって、
前記計測部からの計測信号に基づき前記ポンプを制御して、前記スリットから吐出される塗布材の量を制御する制御部、を有することを特徴とする塗工装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の塗工装置であって、
前記計測部は、前記塗布材の流速、受圧、粘度のうち少なくとも1つを計測することを特徴とする塗工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−61444(P2012−61444A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209341(P2010−209341)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】