説明

塗工装置

【課題】ダイとバックアップロールとの間の塗工間隙を適正に制御できる塗工装置を提供する。
【解決手段】制御部34は、この検出した両端部の位置に関する座標と、走行速度とに基づいて、ウエブWの塗工部分の幅寸法Mを測定する。制御部34は、測定した幅寸法M<基準幅寸法M0のときは、ダイ12とバックアップロール14との塗工間隙aを大きくし、幅寸法M<準幅寸法Mのときは、塗工間隙aを小さくするフィードバック制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状のウエブに塗工液をダイによって塗工する塗工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、フィルム、布帛、紙、金属箔、金属メッシュなどの長尺状のウエブに塗工液をダイによって塗工する塗工装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この塗工装置は、ウエブがバックアップロール上を搬送され、このウエブにダイから塗工液を吐出して塗工する。
【0004】
上記塗工装置において、ダイとバックアップロールとの塗工間隙の調整は、従来、作業者の経験で行われてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−179156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ダイとバックアップロールとの塗工間隙が広いと、ネックインによって、塗工部分の両端部が盛り上がり、又は、かすれ等の塗工の不具合が発生するという問題点がある。また、逆に塗工間隙が狭い場合には、ダイの上流より塗工液がフローを起こし、ポンプから定量供給された塗工液が全量塗工されず、塗工厚みの適正化が図れないという問題点がある。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、ダイとバックアップロールとの間の塗工間隙を適正に制御できる塗工装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、長尺状のウエブを搬送するバックアップロールと、走行する前記ウエブに塗工液を塗工するダイと、前記ダイに前記塗工液を供給するポンプと、前記ダイを前記バックアップロールに対し接近させたり、又は、退避させることにより、前記ダイにおける塗工液の吐出口と前記ウエブとの塗工間隙を調整する移動手段と、前記ウエブに塗工された塗工部分の幅方向の幅寸法を測定する幅測定手段と、前記測定した幅寸法が、予め設定した基準幅寸法より広いときは、前記塗工間隙を大きくし、前記測定した幅寸法が、前記基準幅寸法より狭いときは、前記塗工間隙を小さくするフィードバック制御を行う制御手段と、を有したことを特徴とする塗工装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、塗工部分の幅寸法を基準幅寸法にフィードバック制御することにより、塗工間隙を適正な大きさに制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例を示す塗工装置の説明図である。
【図2】ダイとウエブの平面図である。
【図3】塗工装置の制御状態を示すフローチャートである。
【図4】変更例のダイとウエブの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施例の塗工装置10について図1に基づいて説明する。
【0012】
本実施例の塗工装置10は、長尺状のウエブW(例えば、リチウムイオン電池の電極部材である金属箔)に塗工液を塗工するものであり、塗工ヘッドとしてはダイ12を用いている。塗工厚さとしては20〜100μmである。
【0013】
(1)塗工装置10の構成
まず、塗工装置10の構成について説明する。
【0014】
図1に示すように、バックアップロール14によってウエブWが下から上に搬送され、このバックアップロール14の側方にダイ12が配置されている。ダイ12は、上部ヘッド16と、この上部ヘッド16の下面に取り付けられた下部ヘッド18とから構成され、先端にいくほど先細りとなっている。ダイ12の幅方向の寸法は、ウエブWより幅広に構成されている。下部ヘッド18には、液溜め部20が設けられ、液溜め部20から、ダイ12の先端部に向かってスリット22が設けられている。すなわち、上部ヘッド16と下部ヘッド18との間にシム17が挟まれており、これによりスリット22が形成され、このスリット22の先端部が塗工液の吐出口となる。シム17は、図2に示すように略コの字状をなし、上部ヘッド16の下面と、下部ヘッド18の上面との間に挟持されるものであり、このシムの両端部の間隔bが、ダイ12におけるスリット22の幅方向の寸法、すなわち、キャビティ幅bとなる。なお、ウエブWの幅をLとすると、塗工部分の幅寸法Mは、L>Mである。そして、ウエブWに塗工される塗工部分の塗工幅Mは、キャビティ幅bよりも0.5〜10mm広く塗工される。液溜め部20の下部であって、かつ、幅方向の中心には塗工液入口24が開口している。
【0015】
塗工装置10は、塗工液を貯留しているタンク26と、タンク26に貯留されている塗工液をダイ12の液溜め部20に圧送するポンプ28を有している。ポンプ28とダイ12の塗工液入口24の間には、塗工液を圧送するための給液配管30が配されている。
【0016】
給液配管30の途中には、給液バルブ32が設けられている。この給液バルブ32は、アクチュエータにより開閉する。
【0017】
ダイ12を水平方向に移動させて、ダイ12をウエブWから退避、又は、ダイ12をウエブWに近づけてニップさせる移動装置38が設けられている。この移動装置38は、コッター又はACサーボモータにより移動可能であり、1μm単位でダイ12の位置を調整できる。そして、この移動装置38によって、ダイ12とバックアップロール14との間隙である塗工間隙aを調整できる。
【0018】
(2)塗工装置10の電気的構成
次に、塗工装置10の電気的構成について図1に基づいて説明する。
【0019】
コンピュータよりなる制御部34にはバックアップロール14を回転させる走行モータ36、ポンプ28のポンプモータ、給液バルブ32のアクチュエータ、移動装置38の移動モータとがそれぞれ接続されている。
【0020】
また、この制御部34には、ウエブWに塗工された塗工部分の厚さである塗工厚さhを検出する厚み検出センサ40と、塗工部分の両端部を検出する端部検出センサ42が接続されている。この端部検出センサ42は、光電管、光ファイバー、画像処理装置(CCDカメラなど)等のセンサ部分を、ウエブWの幅方向に移動させながら、塗工部分の両端部を検出する。そして、制御部34は、この検出した両端部の位置に関する座標と、走行速度とに基づいて、ウエブWの塗工部分の幅寸法Mを測定する。例えば、x方向をウエブWの幅方向、y方向を走行方向と設定し、検出された塗工部分の右端部の座標が(Rx,Ry)、左端部の座標が(Lx,Ly)、走行速度をV、端部検出センサ42が右端部から左端部まで移動する時間をtとすると、塗工幅M=|Rx−Ry|となる。このように制御部34は、端部検出センサからの検出信号によって幅寸法Mを測定しているため、幅測定手段も兼ねている。
【0021】
(3)塗工装置10の動作状態
次に、塗工装置10の動作状態について説明する。
【0022】
ステップ1において、制御部34は、バックアップロール14によってウエブWを所定の走行速度Vで搬送し、ダイ12を移動装置38によって近づけて、ニップを行う。そして、ポンプ28から塗工液を圧送し、開閉バルブ32を開状態にして、ダイ12の吐出口から塗工液を吐出し、走行するウエブWの表面に塗工液を塗工する。この場合に、塗工部分の塗工厚さは、ポンプ28の供給量によって決まり、単位時間当たりの供給量に対応した塗工液がウエブWに塗工される。また上記したように、ウエブWに塗工される塗工部分の塗工幅Mは、キャビティ幅bよりも0.5〜10mm広く塗工される。制御部34は、塗工液の塗工状態が定常状態になるとステップ2に進む。
【0023】
ステップ2において、制御部34は、端部検出センサ42が検出した塗工部分の両端部の位置から、塗工部分の幅寸法Mを測定し、ステップ3に進む。
【0024】
ステップ3において、制御部34は、測定した幅寸法Mと、基準幅寸法M0とを比較する。この基準幅寸法M0は、作業者がウエブWに対し予め塗工したい幅寸法に設定しておく。そして、検出した幅寸法M>基準幅寸法M0であればステップ4に進み、幅寸法M<基準幅寸法M0であればステップ5に進み、幅寸法M=基準幅寸法M0であれば、設定通りの塗工が行われているとしてステップ6に進む。
【0025】
ステップ4において、幅寸法M>基準幅寸法M0であるため、制御部34は、移動装置38を用いて、ダイ12とバックアップロール14との塗工間隙aを広げる。すなわち、検出した幅寸法Mが基準幅寸法M0よりも広いということは、塗工間隙aが狭すぎて、塗工液が両側にはみ出して幅寸法Mを広げているからである。そして、制御部34は、塗工間隙aを広げたら、ステップ3に戻る。
【0026】
ステップ5において、幅寸法M<基準幅寸法M0であるため、制御部34は、移動装置38を用いて、ダイ12とバックアップロール14との塗工間隙aを狭める。すなわち、幅寸法Mが基準幅寸法M0よりも狭いということは、塗工間隙aが広すぎて、ポンプ28から定量供給された塗工液が全量塗工されていない可能性があるからである。制御部34は、塗工間隙aを狭めたら、ステップ3に戻る。
【0027】
ステップ6において、幅寸法M=基準幅寸法M0であるので、次に、塗工幅を調整する。制御部34は、厚み検出センサ40を用いてウエブWの塗工厚さhを検出し、ステップ7に進む。
【0028】
ステップ7において、制御部34は、塗工厚さhと予め定めた基準塗工厚さh0とを比較する。この基準塗工厚さh0は、作業者が塗工したい厚さに設定しておく。制御部34は、塗工厚さh>基準塗工厚さh0であればステップ8に進み、塗工厚さh<基準塗工厚さh0であればステップ9に進み、塗工厚さh=基準塗工厚さh0であればステップ10に進む。
【0029】
ステップ8において、塗工厚さh>基準塗工厚さh0であるので、ダイ12から吐出される塗工液の吐出量を減らす必要がある。そのため、制御部34は、ポンプ28の回転数を落として、塗工液の供給量を減少させ、ステップ7に戻る。
【0030】
ステップ9において、塗工厚さh<基準塗工厚さh0であるので、ダイ12から吐出される塗工液の吐出量を増加させる必要がある。そのため、制御部34は、ポンプ28の回転数を増加させて、塗工液の供給量を増加させ、ステップ7に戻る。
【0031】
ステップ10において、制御部34は、塗工が終了したか否かを判断し、塗工が終了していれば本制御を終了し、終了していなければステップ2に戻りフィードバック制御を続ける。
【0032】
(4)効果
本実施例によれば、従来経験で行われてきた塗工間隙の調整を、ウエブWの塗工部分の幅寸法に着目することにより、塗工間隙aの調整を自動で、かつ、適切に行うことができる。そのため、従来発生したネックインによる塗工部分の両端部の盛り上がりやかすれ等の塗工不具合がなくなり、また、ダイ12の上流より塗工液のフローが発生しない。
【0033】
(5)変更例
上記実施例では、端部検出センサ42を幅方向に移動させながら、ウエブWの塗工部分の端部を検出したが、これに代えて、幅方向に延びるCCDカメラを用いて、ウエブWの塗工部分を全て撮影し、これを画像処理して端部を検出してもよい。この場合には、幅方向に延びるCCDカメラであるため、端部検出センサ42のように幅方向に移動させる必要がない。
【0034】
また、図4に示すように、端部検出センサとしては、ウエブWの予め設定した両側に端部検出センサを固定しておき、この固定した端部検出センサで塗工部分の端部を検出してもよい。すなわち、予め定めた塗工幅の左右両端部に、右側の端部検出センサ42R1,42R2及び左側の端部検出センサ42L1,42L2を配置し、内側にある端部検出センサ42R1,42L1とがON状態、外側にある端部検出センサ42R2,42L2がOFF状態のときに、塗工部分が、適正な範囲で塗工されているとする。そして、これら端部検出センサ42のON/OFFが上記設定よりも異なった場合には、塗工間隙aを変更して、上記ON/OFF状態になるように制御する。
【0035】
上記端部検出センサ42R1,R2,L1,L2の制御を更に詳しく説明すると、まず、ウエブWをダイ12の幅方向の中心と、走行するウエブWの幅方向との中心を一致させる。そして、端部検出センサ42R1,42L1がON状態であり、端部検出センサ42R2,42L2がOFF状態のときに適正な幅寸法Mとする。このとき、ON状態が塗工部分を検出した状態であり、OFF状態が塗工部分を検出できない状態を意味する。そして、端部検出センサ42R1又は42L1が、OFF状態になると、幅寸法Mが小さくなったと判断する。一方、端部検出センサ42R2又は42L2がON状態になった場合には、幅寸法Mが基準幅寸法M0よりも大きくなったと判断する。
【0036】
上記では本発明の一実施例を説明したが、この実施例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施例やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
W ウエブ
10 塗工装置
12 ダイ
14 バックアップロール
20 液溜め部
22 スリット
24 塗工液入口
26 タンク
28 ポンプ
34 制御部
38 移動装置
40 厚み検出センサ
42 端部検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状のウエブを搬送するバックアップロールと、
走行する前記ウエブに塗工液を塗工するダイと、
前記ダイに前記塗工液を供給するポンプと、
前記ダイを前記バックアップロールに対し接近させたり、又は、退避させることにより、前記ダイにおける塗工液の吐出口と前記ウエブとの塗工間隙を調整する移動手段と、
前記ウエブに塗工された塗工部分の幅方向の幅寸法を測定する幅測定手段と、
前記測定した幅寸法が、予め設定した基準幅寸法より広いときは、前記塗工間隙を大きくし、前記測定した幅寸法が、前記基準幅寸法より狭いときは、前記塗工間隙を小さくするフィードバック制御を行う制御手段と、
を有したことを特徴とする塗工装置。
【請求項2】
前記ウエブにおける前記塗工部分の塗工厚さを検出する厚さ検出手段をさらに有し、
前記制御手段は、前記厚さ検出手段が検出した検出塗工厚さが、予め設定した基準厚さより小さいときは、前記ポンプの塗工液の供給量を多くし、前記検出塗工厚さが、前記基準厚さより大きいときは、前記ポンプの塗工液の供給量を少なくするフィードバック制御を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の塗工装置。
【請求項3】
前記幅測定手段は、前記塗工部分の両端部の位置を検出する端部検出手段を有し、
前記幅測定手段は、前記端部検出手段が検出した前記塗工部分の両端部の位置から前記幅寸法を計算する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の塗工装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−75980(P2012−75980A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220887(P2010−220887)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000240341)株式会社ヒラノテクシード (58)
【Fターム(参考)】