説明

塗布具

【課題】ノズルから液体または粉末を噴出した際に当該ノズルに目詰まりが生じた場合でも、その逆流を確実に防止することができる塗布具を提供すること。
【解決手段】塗布具は、第1の液体L1および第2の液体L2を供給する液体供給手段と、液体供給手段から供給され、第1の流路44を通過した第1の液体L1と第2の流路45を通過した第2の液体L2とが合流する合流部47と、合流部47で合流した2液体とともに噴射するガスGが通過する第3の流路46とを有し、合流部47と第3の流路46とは、それらを画成する壁部を介して隣接しており、壁部の少なくとも一部が、各液体に対して撥液性を有し、ガスGが透過可能な通気膜48で構成されたノズル4と、第3の流路46内の圧力を調整する圧力調整手段としての弁体49とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2種以上の液体を混合して患部等に噴射し、癒着防止材や生体組織接着材などを形成する方法が知られており、そのための塗布具が開発されている。
【0003】
このような塗布具は、混合すると凝固する成分同士、例えばトロンビンを含有する溶液とフィブリノーゲンを含有する溶液を互いに分別した状態で、患部付近まで送り、患部で混合しながら塗布するという構成によるものである。
【0004】
従来の塗布具としては、異なる種類の液体をそれぞれ含有する2つのシリンジと、各シリンジからの液体を混合して噴出するノズルとを有するものがある(例えば、特許文献1参照)。また、特許文献1に記載の塗布具は、ノズルが、無菌ガスを供給するガス供給源と接続されており、この無菌ガスとともに液体を噴出するよう構成されている。このノズルの具体的な構成は、各シリンジからの液体がそれぞれ内部を通過する2本の内管と、当該2本の内管が挿入され、これらの内管との間をガスが通過する外管とで構成された二重管構造となっている。そして、各内管は、それぞれ、先端開口が、液体が噴出する液体噴出口として機能している。また、外管は、先端開口が、その内側に液体噴出口が配置され、ガスが噴出するガス噴出口として機能している。
【0005】
このような構成のノズルでは、液体噴出操作を停止した際、各内管内の残圧によって、当該内管の液体噴出口から液体がそれぞれ外方に向かって突出した状態となる。この状態では、液体同士が混合することとなり、よって、これら液体同士が凝固してしまう。その結果、各液体噴出口に目詰まりが生じる。また、各内管の液体噴出口から外方に向かって突出した液体は、それぞれ、ガス噴出口にも行き渡ることとなり、ガス噴出口でも液体同士が混合、凝固して、目詰まりが生じる。ガス噴出口に目詰まりが生じると、外管内でのガスの逃げ場がなくなり、当該ガスの残圧によって各内管が押圧されて潰れる。このため、各内管内の液体がシリンジ側に押し戻されてしまう、すなわち、逆流してしまう。また、その逆流の程度によっては、逆流した液体によってガスケットが押圧されて、シリンジから抜け出すおそれもある。
【0006】
【特許文献1】特開2002−282368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ノズルから液体または粉末を噴出した際に当該ノズルに目詰まりが生じた場合でも、その逆流を確実に防止することができる塗布具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)〜(10)の本発明により達成される。
(1) 液体を供給する供給手段と、
前記供給手段から供給された前記液体が通過する液体流路と、前記液体とともに噴射するガスが通過するガス流路とを有し、前記液体流路と前記ガス流路とは、それらを画成する壁部を介して隣接しており、該壁部の少なくとも一部が、前記液体に対して撥液性を有し、前記ガスが透過可能な通気膜で構成されたノズルと、
前記ガス流路内の圧力を調整する圧力調整手段とを備えることを特徴とする塗布具。
【0009】
(2) 前記ノズルは、内管と外管とで構成された二重管構造をなしており、前記内管内が前記液体流路として機能し、前記内管と前記外管との間の間隙が前記ガス流路として機能するものであり、
前記圧力調整手段は、前記外管の管壁を貫通する側孔、または該側孔に設置され、前記ガス流路の圧力の上昇によって開く弁体で構成されている上記(1)に記載の塗布具。
【0010】
(3) 前記通気膜は、前記ノズルの先端に露出または突出する露出部を有し、
前記通気膜の前記露出部から前記ガス流路に臨む部分までが前記圧力調整手段として機能する上記(1)または(2)に記載の塗布具。
【0011】
(4) 前記圧力調整手段は、前記液体流路内の前記液体の流動が停止したときに、前記通気膜を介して前記ガスが前記液体流路内に侵入し該液体流路内の残液を上流側へ戻す圧力を超えないように、前記ガス流路内の圧力を調整する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の塗布具。
【0012】
(5) 前記圧力調整手段は、前記ガス流路内の圧力が上昇したとき、該ガス流路内のガスを排出して、圧力を減少させるよう構成されている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の塗布具。
【0013】
(6) 前記液体が噴出しているとき、前記ガスは、前記圧力調整手段によって排出されるよりも優先的に前記通気膜を介して前記液体流路内に流入する上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の塗布具。
【0014】
(7) 前記液体流路は、複数設置されており、該各液体流路内を互いに液組成が異なる液体が通過する上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の塗布具。
【0015】
(8) 前記複数の液体流路は、互いに途中で合流する合流部を形成する上記(7)に記載の塗布具。
【0016】
(9) 前記通気膜は、前記合流部に配置されている上記(8)に記載の塗布具。
【0017】
(10) 粉末を供給する供給手段と、
前記供給手段から供給された前記粉末が通過する粉末流路と、前記粉末とともに噴射するガスが通過するガス流路とを有し、前記粉末流路と前記ガス流路とは、それらを画成する壁部を介して隣接しており、該壁部の少なくとも一部が、前記ガスが透過可能な通気膜で構成されたノズルと、
前記ガス流路内の圧力を調整する圧力調整手段とを備えることを特徴とする塗布具。
【0018】
また、前記各液体流路の前記合流部に開口する開口部は、互いに前記液体流路の長手方向にずれた位置に形成されているのが好ましい。
【0019】
前記通気膜は、疎水性を有する材料で構成されたもの、または、疎水化処理が施されたものであるのが好ましい。
【0020】
前記供給手段は、シリンジ外筒と、該シリンジ外筒内に挿入されたガスケットと、該ガスケットを前記シリンジ外筒の長手方向に沿って移動操作する押し子とを有するシリンジであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ノズルから液体または粉末を噴出した際に当該ノズルに目詰まりが生じた場合でも、圧力調整手段によって、ノズル(ガス流路)内のガスの逃げ場が確保される、ノズル内のガスが排出されて、当該ノズル内のガスの残圧が解消される。これにより、ノズル内に残留したガスによって液体または粉末が押圧されて逆流するのを確実に防止することができる。
【0022】
また、ノズルは、内管と外管とで構成され、内管と外管との間の間隙がガス流路として機能するものであり、圧力調整手段が外管の管壁を貫通する貫通孔で構成されている場合には、当該貫通孔を介して、ノズル内のガスが確実に排出するため、ガスの残圧が確実に解消される。これにより、液体または粉末の逆流をより確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の塗布具を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の塗布具の第1実施形態を示す平面図、図2〜図4は、それぞれ、図1に示す塗布具におけるノズルの先端部付近の縦断面図(塗布具の作動状態の経時的な変化を示す図)である。なお、以下では、説明の都合上、図1〜図4中(図5〜図8も同様)の右側を「基端」、左側を「先端」と言う。
【0024】
図1に示す塗布具1は、例えば腹腔鏡下手術の際に、腹腔内に挿入して、液組成が異なる2種の液体(第1の液体L1、第2の液体L2)を混合しながら、その混合物を臓器や腹壁等に塗布するものである。
【0025】
この塗布具1は、第1の液体L1を収納する第1のシリンジ(液体供給手段)2と、第2の液体L2を収納する第2のシリンジ(液体供給手段)3とをそれぞれ装填して用いられる。第1のシリンジ2と第2のシリンジ3とは、ほぼ同様の構成であるため、代表的に第1のシリンジ2について説明する。
【0026】
第1のシリンジ2は、外筒(シリンジ外筒)21と、外筒21内で摺動し得るガスケット24と、ガスケット24を外筒21の長手方向(軸方向)に沿って移動操作する押し子(プランジャロッド)26とを備えている。ガスケット24は、押し子26の先端に連結されている。
【0027】
外筒21は、有底筒状の部材で構成され、先端側底部の中央部には、外筒21の胴部に対し縮径した縮径部(口部)22が一体的に突出形成されている。
【0028】
外筒21の後端外周には、フランジ23が一体的に形成されている。
また、外筒21の外周面には、液量を示す目盛りが付されている。
【0029】
外筒21の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)のような各種樹脂が挙げられるが、その中でも、成形が容易であり、かつ水蒸気透過性が低い点で、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリエステルのような樹脂が好ましい。なお、外筒21の構成材料は、内部の視認性を確保するために、実質的に透明であるのが好ましい。
【0030】
このような外筒21内には、弾性材料で構成されたガスケット24が収納されて(挿入されて)いる。ガスケット24の外周面が外筒21の内周面に密着しつつ摺動することにより、外筒21内を液密性を確実に保持しつつ、第1の液体L1を口部22に向けて押し出すことができる。ガスケット24の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの混合物等の弾性材料が挙げられる。
【0031】
ガスケット24の移動は、押し子26を移動操作することにより行われる。押し子26は、長尺な部材であり、その端側には、円盤状のフランジ29が形成されている。また、押し子26の構成材料としては、前述した外筒21と同様のものを用いることができる。
【0032】
第1のシリンジ2は、塗布具1に装填される以前に、外筒21とガスケット24とで囲まれた空間(貯液空間)に、第1の液体L1が充填される。第2のシリンジ3には、筒21とガスケット24とで囲まれた空間(貯液空間)に、第2の液体L2が充填される。
【0033】
第1のシリンジ2に充填される第1の液体L1と、第2のシリンジ3に充填される第2の液体L2とは、それらの組成(成分)が異なるものである。
【0034】
本発明においては、第1の液体L1と第2の液体L2とは、塗布具1の用途、使用目的、症例等に応じて適宜選定される。例えば、生体組織接着材の投与に使用する場合、第1の液体L1および第2の液体L2のうちの一方は、トロンビンを含有する液体(溶液等)、他方はフィブリノーゲンを含有する液体(溶液等)とすることができる。
【0035】
また、癒着防止材の投与に使用する場合、第1の液体L1および第2の液体L2のうちの一方は、スクシンイミジル基で修飾したカルボキシメチルデキストリンを含有する液体(溶液等)、他方は、リン酸水素二ナトリウムを含有する液体(溶液等)とすることができる。
【0036】
このような組み合わせの第1の液体L1および第2の液体L2は、それらを混合すると、変質、すなわち、ゲル化(固化)する。ゲル化することにより、例えば、第1の液体L1と第2の液体L2とが混合したもの(以下、「混合物(混合液)」という場合がある)が、塗布された生体組織(目的部位)に確実に留まることができる。また、混合物が目的部位に確実に留まるため、当該目的部位において、生体組織接着材や癒着防止材としての機能を確実に発揮することができる。
【0037】
なお、第1の液体L1および第2の液体L2の種類および組み合わせは、上述したものに限定されないことは、言うまでもない。
【0038】
このような構成の第1のシリンジ2および第2のシリンジ3は、それぞれ、後述するノズル4に接続され、各押し子26を押圧操作することより、ノズル4の第1の流路44に第1の液体L1を、第2の流路45に第2の液体L2を容易かつ確実に供給する(送る)ことができる。また、各押し子26の押圧操作は、塗布具1の操作者(使用者)により手動で行なわれる。このため、操作者は、混合物の塗布を自身の任意のタイミングで行なうことができる。
【0039】
また、塗布具1は、第1の液体L1と第2の液体L2とを無菌ガスG(以下、単に「ガスG」と言う)とともに噴出するものである(図1、図3参照)。このガスGにより、前記混合物が霧化され、前記混合物を目的部位(患部等の目標部位)に均一に塗布することができる。ガスGは、ガスボンベ300bにより供給される。ガスボンベ300bは、チューブ302bを介してノズル4と接続されている。
【0040】
ガスボンベ300bは、その内部空間に高圧の(圧縮された)ガスGが充填されており、高速に流れるガスGを塗布具1(ノズル4)に供給する(送る)ことができる。このガスボンベ300bまたはチューブ302bの途中には、塗布具1に対するガスGの供給/供給停止を制御する開閉自在なバルブ(コック)(図示せず)が設置されている。前記混合物を塗布ときには、このバルブを開状態にする。なお、ガスGとしては、例えば、二酸化炭素が挙げられる。
【0041】
図1に示すように、塗布具1は、塗布具本体7と、塗布具本体7の先端側に設置されたノズル4とを備えている。
【0042】
塗布具本体7は、第1のシリンジ2の外筒21と第2のシリンジ3の外筒21とを保持するシリンジ保持部71と、第1のシリンジ2の押し子26のフランジ29と第2のシリンジ3の押し子26のフランジ29とを連結するフランジ連結部72とで構成されている。
【0043】
シリンジ保持部71は、第1のシリンジ2(外管21)および第2のシリンジ3(外管21)を並べて(並列に)固定するものである。このシリンジ保持部71は、各外管21の口部22が嵌合する(挿入される)嵌合部711と、嵌合部711よりも基端側に位置し、各外管21のフランジ23の縁部が挿入される挿入部712と、嵌合部711と挿入部712とを連結する連結部と713を有している。
【0044】
嵌合部711に各外管21の口部22が嵌合すると、第1のシリンジ2の口部22は、ノズル4の第1の流路(液体流路(液体移送路))44に接続され、第2のシリンジ3の口部22は、第2の流路(液体流路(液体移送路))45に接続される。これにより、第1の流路44に第1の液体L1を、第2の流路45に第2の液体L2を供給可能となる(図3参照)。
【0045】
また、嵌合部711の外周部には、ガスボンベ300bからのガスGが通過するチューブ302bの端部が接続される接続部715が突出形成されている。接続部715にチューブ302bが接続されると、当該チューブ302bは、ノズル4の第3の流路(ガス流路)46に接続される。これにより、第3の流路46にガスGを供給可能となる(図3参照)。
【0046】
挿入部712には、各外管21のフランジ23の縁部が挿入される溝714が形成されている。
【0047】
シリンジ保持部71では、嵌合部711に各外管21の口部22が嵌合し、挿入部712(溝714)に管21のフランジ23が挿入されることにより、各外管21を確実に保持することできる。
【0048】
フランジ連結部72は、第1のシリンジ2の押し子26のフランジ29と第2のシリンジ3の押し子26のフランジ29とを連結する板状の部材である。フランジ連結部72には、各押し子26のフランジ29の縁部が挿入される溝721が形成されている。このフランジ連結部72を先端方向に向かって押圧することにより、各押し子26を一括して先端方向に向かって移動させることができる。このように、フランジ連結部72は、塗布具1を使用する、すなわち、混合物を患部等の目標部位に塗布するとき、使用者によって押圧操作される操作部とし機能するものである。
【0049】
シリンジ保持部71およびフランジ連結部72の構成材料としては、例えば、外筒21についての説明で上げたような各種樹脂を用いることができる。
【0050】
図1に示すように、塗布具本体7の先端側には、ノズル4が設置されている。このノズル4は、ガスGとともに第1の液体L1、第2の液体L2(混合物)を噴出するものである。ノズル4は、長尺状のノズル本体43と、ノズル本体43の外径よりも拡径したノズルヘッド42とを有している。
【0051】
図2〜図4に示すように、ノズル本体43は、第1のシリンジ2から供給された第1の液体L1が通過する第1の流路44と、第2のシリンジ3から供給された第2の液体L2が通過する第2の流路45と、ガスボンベ300bから供給されたガスGが通過する第3の流路46とを有している。
【0052】
各液体が通過する第1の流路44および第2の流路45は、それぞれ、内チューブ(内管)で画成された内腔で構成されている。第1の流路44を構成する内チューブは、その基端部が第1のシリンジ2の口部22に接続される位置まで延在している。これと同様に、第2の流路45、を構成する内チューブは、その基端部が第2のシリンジ3の口部22に接続される位置まで延在している。
【0053】
第1の流路44と第2の流路45とは、それらの先端側の部分(先端部)で、互いに合流し、合流部47が形成されている。図3に示すように、この合流部47では、第1の液体L1と第2の液体L2とが合流して均一かつ確実に混合した混合液となる。また、合流部47の先端部471は、後述する第3の流路46を構成する外チューブ(外管)の先端内周部461に嵌合して、固定されている。
【0054】
ガスGが通過する第3の流路46は、第1の流路44および第2の流路45をそれぞれ構成する内チューブと、その外周側に位置する、すなわち、各内チューブが挿通された外チューブとで画成された間隙で構成されている。この外チューブは、その基端部が塗布具本体7の接続部715を介してチューブ302bに接続される位置まで延在している。また、外チューブの先端は、開口しており、合流部47で第1の液体L1と第2の液体L2とが混合して形成された混合液がガスGとともに噴出する噴出口424となっている。また、混合液は、ガスGとともに噴出するため、霧化されることとなり、目的部位に対して、均一に塗布される。
【0055】
このように、ノズル4は、内チューブと外チューブとで構成された二重管構造をなすものである。これにより、内チューブ(第1の流路44、第2の流路45)と外チューブ(第3の流路46)とが並列な位置関係となり、前述したように各チューブをそれぞれ流路として好適に用いることができる。各チューブの構成材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)のような各種の軟質または硬質樹脂、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、ステンレス鋼、アルミニウム、銅または銅系合金等の各種金属材料、各種ガラス、アルミナ、シリカ等の各種セラミックスが挙げられる。
【0056】
図2〜図4に示すように、合流部47の壁部(管壁)は、その全体が通気膜48で構成されている。この通気膜48は、全体形状が筒状(管状)をなし、前述したように先端部471が第3の流路46を構成する外チューブの先端内周部461に嵌合しており、基端部472が第1の流路44および第2の流路45をそれぞれ構成する各内チューブの先端部441、451に嵌合している。これにより、通気膜48(合流部47)は、両端部が支持され、確実に固定される。
【0057】
通気膜48は、第3の流路46内のガスGが透過可能なものである。これにより、通気膜48を介して、ガスGが合流部47内に流入することができ、よって、この流入したガスGは、混合液(第1の液体L1、第2の液体L2)とともに、噴出口424から噴出する(図3参照)。これにより、混合液が霧状になり、患部に塗布される。
【0058】
また、前述したように通気膜48が全体形状として管状をなしていることにより、ガスGは、通気膜48を介して、その周方向のいずれの部分からも合流部47内に流入することができる。これにより、ガスGを合流部47内に過不足なく供給することができ、よって、噴出口424から噴出する混合液が確実に霧状となる。
【0059】
このようなガスGが透過する通気膜48には、多数の細孔(図示せず)が形成されている。各細孔は、それぞれ通気膜48をその厚さ方向に貫通するものである。これらの細孔の平均孔径は、特に限定されないが、例えば、2μm以下が好ましい。このような細孔を有する通気膜48としては、例えば、住友電工ファインポリマー社製「ポアフロンチューブ(TB−0201)」が挙げられる。これは、平均孔径が約1μmの通気膜48である。
【0060】
また、孔径を0.01〜0.45μmとすることにより、ガスGが確実に透過できるとともに、通気膜48が菌不透過性を有することになる。通気膜48が菌不透過性を有することにより、仮にボンベ300b内のガスGが無菌状態のものでない場合であっても、通気膜48でガスG内の菌類が除去され、当該菌類が合流部47内に流入するのが確実に防止される。これにより、無菌状態の混合液を患部へ塗布することができる。
【0061】
また、通気膜48の膜厚(壁圧)は、特に限定されず、例えば、0.1〜1mmであるのが好ましく、0.3〜0.8mmであるのがより好ましい。
【0062】
また、通気膜48の表面積(外周面の面積)は、20〜200mmであるのが好ましく、40〜100mmであるのがより好ましい。
【0063】
通気膜48は、第1の液体L1や第2の液体L2に対して不透過性(撥水性)、すなわち、疎水性を有している。これにより、通気膜48を介して、合流部47内の混合液が第3の流路46内に逆流する(流れ込む)のが確実に防止される。このような通気膜48は、疎水性を有する材料で構成されたもの、または、その表面が疎水化処理が施されたものである。疎水性を有する材料(構成材料)としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレンとテトラフルオロエチレンの共重合体(ETFE)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンの共重合体(ECTFE)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。通気膜48は、これらの材料を、延伸法、ミクロ相分離法、電子線エッチング法、焼結法、アルゴンプラズマ粒子等の方法で多孔質としたものが好適に用いられる。また、疎水化処理の方法としては、特に限定されず、例えば、通気膜48の表面に、前記疎水性を有する材料をコーティングする方法等が挙げられる。このような方法により、通気膜48が疎水性を確実に担持する。
【0064】
図3に示すように、混合液を噴出しているときには、通気膜48を透過したガスGは、合流部47を通過する混合液中でマイクロバブル(気泡)となる。このマイクロバブルにより、混合液は、合流部47を通過する過程で攪拌される。これにより、第1の液体L1と第2の液体L2とは、均一かつ確実に混合し、混合液となって噴霧される。特に、両液体の粘度が互いに異なる場合には、これら液体同士を単に合流するだけでは均一な混合液になり難いが、本発明では、前述したようにマイクロバブルは、第1の液体L1と第2の液体L2とを攪拌してそれらの混合を促進する攪拌作用を発揮するため、均一な混合液を得る。
【0065】
なお、合流部47は、本実施形態ではそれを画成する壁部全体が通気膜48で構成されているが、これに限定されず、例えば、前記壁部の一部が通気膜48で構成されていてもよい。また、通気膜48の設置位置は、本実施形態では合流部47であるが、これに限定されず、例えば、第1の流路44、第2の流路45の途中(一部)に設置されていてもよい。
【0066】
さて、第3の流路46(ノズルヘッド42)の外周部(壁部)には、当該外周部を貫通する側孔462が形成されており、その側孔462に弁体49が固定されて(設置されて)いる(図2〜図4参照)。この弁体49は、第3の流路46内の圧力を調整する圧力調整手段として機能するものである。なお、弁体49の固定方法としては、特に限定されないが、例えば、図示のような嵌合による方法、接着(接着剤や溶媒による接着)による方法等が挙げられる。
【0067】
弁体49は、円板状をなす弾性体で構成され、第3の流路46の壁部の一部を構成している。この弁体49には、その厚さ方向に貫通するスリット(貫通孔)491が形成されている。弁体49が弾性体(弾性材料)で構成されているため、スリット491は自己閉塞性を有する。図2に示すように、混合液の塗布が行われていないときには、スリット491は、前記自己閉塞性により閉口して(閉塞して)いる。これにより、ノズル4では、第3の流路46(ノズル4)内とその外部とが遮断された状態となる。この状態では、第3の流路46内の無菌性が維持される。また、図3に示すように、混合液の塗布が行われているときに、第3の流路46内の圧力が一定値を超えると、その圧力によって、スリット491が押圧されて開口する(開放する)。これにより、ノズル4では、開口したスリット491を介して、第3の流路46(ノズル4)内とその外部とが連通した状態となる。また、この状態では、開口したスリット491から、第3の流路46内のガスGの一部が流出する(排出される)。これにより、第3の流路46内が減圧され、当該第3の流路46内の圧力が調整される。
なお、塗布具1では、開口したスリット491を排気孔(排気口)ということもできる。
【0068】
また、スリット491の形状は、特に限定されないが、例えば、一文字状、十文字状、「ト」字状、「Y」字状、ドット状等が挙げられる。
【0069】
また、本実施形態では、ノズル4は、側孔462に弁体49が設置されたものであるが、弁体49が省略されていてもよい。この場合、側孔462が第3の流路46内の圧力を調整する圧力調整手段として機能する。側孔462の形成数は、1つまたは2つ以上とすることができる。
【0070】
また、弁体49の設置数は、図示の構成では1つであるが、これに限定されず、例えば、2つ以上であってもよい。
【0071】
また、弁体49の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ガスケット24についての説明で上げたような各種弾性材料を用いることができる。
【0072】
次に、使用可能状態となった、すなわち、第1の液体L1が充填された第1のシリンジ2と、第2の液体L2が充填された第2のシリンジ3とが装填され、かつボンベ300bに接続された状態の塗布具1(ノズル4)の作動状態(塗布状態)について図2〜図4を参照しつつ、説明する。
【0073】
第1のシリンジ2および第2のシリンジ3には、それぞれ、患部に塗布するのに必要な(十分な)程度の液量の第1の液体L1および第2の液体L2が充填されている。この状態では、図2に示すように、第1の流路44には、第1の液体L1が供給されておらず、第2の流路45には、第2の液体L2が供給されていない。また、ボンベ300bからは、塗布具1に対してガスGを供給可能となっているが、前述した塗布具1に対するガスGの供給/供給停止を制御する開閉自在なバルブ(コック)が閉状態となっている。このため、第3の流路46にもガスGが供給されていない。このため、ノズル4からは、未だ混合液が噴出していない。
【0074】
次に、前記バルブを開状態とし、手指等で塗布具1のフランジ連結部72を図1中の矢印方向に押圧操作すると、第1の流路44には、第1の液体L1が供給され、第2の流路45には、第2の液体L2が供給され、第3の流路46には、ガスGが供給される(図3参照)。
【0075】
さらに塗布具1のフランジ連結部72に対する押圧を続けると、第1の液体L1と第2の液体L2とが合流部47に流入して合流する(混合する)。一方、ガスGは、通気膜48に達すると、当該通気膜48を介して、合流部47内に流入する。そして、噴出口424からは、混合液がガスGとともに噴出する(図3参照)。この混合液は、高速に噴出するガスGによって霧状になり、患部に塗布される。
【0076】
また、混合液が塗布されて(噴出して)いるときには、弁体49のスリット491は、第3の流路46内のガスGの上昇した(増加した)圧力によって、押圧されて開口する(開放する)。この開口したスリット491を介して第3の流路46内のガスGが排出されるが、その排出量は、第3の流路46内のガスGの通気膜48を介して合流部47内に流入する流入量よりも少ない。すなわち、塗布具1は、混合液が噴出しているとき、第3の流路46内のガスGは、開口したスリット491を介して排出されるよりも、優先的に通気膜48を介して合流部47(液体流路)内に流入するよう構成されている。これにより、混合液を霧化して噴出するのに十分な程度の量のガスGが確保される(合流部47に流入する)。
【0077】
なお、ガスGが外部へ排出される排出量と、ガスGが合流部47に流入する流入する流入量との大小関係を設定を行う方法としては、例えば、弁体49の設置数、スリット491の大きさ、通気膜48の膜厚、通気膜48の表面積、通気膜48の細孔の形成数、通気膜48の細孔の孔径、通気膜48の空孔率等の諸条件を適宜設定することより可能となる。
【0078】
そして、患部に対する所定量の混合液の塗布が完了した後、前記コックを再度閉状態とするとともに、塗布具1のフランジ連結部72に対する押圧を止める。これにより、第1の流路44への第1の液体L1の供給が停止し、第2の流路45への第2の液体L2の供給が停止する。また、第3の流路46へのガスGの供給も停止する。その結果、混合液の合流部47内での流動が停止して、噴出口424からの噴出も停止する(図4参照)。この混合液は、合流部47内に残ったままとなる。
【0079】
図4に示す状態では、ガスGの供給が停止した後も、第3の流路46内の残圧によって、ガスGが通気膜48を介して合流部47内に侵入する(流入する)。この流入したガスGは、気泡Bとして、混合液とともに合流部47内に残留する。また、ガスGは、通気膜48を介して合流部47内に流入するものの他に、開状態の弁体49を介して外部へ排出される(流出する)ものがある。なお、このときの第3の流路46内のガスGの残圧の大きさは、当該ガスGによって合流部47内の混合液を噴出口424から吹き飛ばす程度には至らないが、弁体49(スリット491)を開状態とするには十分な大きさとなっている。
【0080】
このようにガスGが開状態の弁体49から排出されるのに伴って、ガス流路46内の圧力が減少する、すなわち、前記残圧が解消される。なお、この残圧の解消の程度としては、通気膜48を介して合流部47内に侵入したガスGが当該合流部47内の残液(混合液)を上流側(基端側)へ戻す圧力を超えない程度とされる。また、前記残圧が解消されると、当該弁体49は再度閉状態となる。
【0081】
塗布具1では、合流部47内に残留した混合液によって噴出口424に目詰まりが生じても、第3の流路46内のガスGの逃げ場が確保される、すなわち、第3の流路46内のガスGが開状態の弁体49を介して排出されるため、第3の流路46内の残圧が解消される。これにより、通気膜48を介して合流部47内に流入したガスGが基端側へ逆流するのを確実に防止することができる。また、この合流部47内に流入したガスGによって、混合液(第1の液体L1、第2の液体L2)が基端側へ押し戻される(逆流する)のを確実に防止することができる。
【0082】
そして、この逆流が生じていない状態(好適な状態)の塗布具1を再度、患部への塗布に用いることができる。
【0083】
<第2実施形態>
図5は、本発明の塗布具(第2実施形態)におけるノズルの先端部付近の縦断面図である。
【0084】
以下、この図を参照して本発明の塗布具の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、通気膜の設置状態が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0085】
図5に示すノズル4Aでは、合流部47の壁部を構成する通気膜48Aは、その先端面がノズル4Aの先端に露出した露出面(露出部)473となっている。
【0086】
本実施形態の塗布具1によって混合液の塗布操作を行い、その塗布操作を停止した際、ガスGは、ガス流路46から通気膜48Aを通過して、当該通気膜48Aの露出面473から排出される。これにより、ガス流路46内の残圧が解消される(圧力が減少する)。
【0087】
本実施形態でも、塗布具1では、合流部47内に残留した混合液によって噴出口424に目詰まりが生じるが、前述したように第3の流路46内のガスGが排出されるため、第3の流路46内の残圧が解消される。これにより、通気膜48Aを介して合流部47内に流入したガスGが基端側へ逆流するのを確実に防止することができる。また、この合流部47内に流入したガスGによって、混合液が基端側へ押し戻されるのを確実に防止することができる。
【0088】
このように、本実施形態では、通気膜48A全体(具体的には、通気膜48Aの露出部473からガス流路46に臨む部分まで)が、ガス流路46内の圧力を調整する圧力調整手段として機能している。
【0089】
なお、本実施形態では、ガス流路46を構成する外管からは前記第1実施形態のような弁体49が省略されているが、これに限定されず、前記外管に弁体49が設置されていてもよい。
【0090】
<第3実施形態>
図6は、本発明の塗布具(第3実施形態)におけるノズルの先端部付近の縦断面図である。
【0091】
以下、この図を参照して本発明の塗布具の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、通気膜の設置状態が異なること以外は前記第2実施形態と同様である。
【0092】
図6に示すノズル4Bでは、合流部47の壁部を構成する通気膜48Bは、その先端部がノズル4Aの先端から突出した突出部(露出部)474となっている。
【0093】
本実施形態の塗布具1によって混合液の塗布操作を行い、その塗布操作を停止した際、ガスGは、ガス流路46から通気膜48Bを通過して、当該通気膜48Bの突出部474から排出される。これにより、ガス流路46内の残圧が解消される。
【0094】
本実施形態でも、塗布具1では、合流部47内に残留した混合液によって噴出口424に目詰まりが生じるが、前述したように第3の流路46内のガスGが排出されるため、第3の流路46内の残圧が解消される。これにより、通気膜48Bを介して合流部47内に流入したガスGが基端側へ逆流するのを確実に防止することができる。また、この合流部47内に流入したガスGによって、混合液が基端側へ押し戻されるのを確実に防止することができる。
【0095】
このように、本実施形態では、通気膜48B全体(具体的には、通気膜48Bの突出部474からガス流路46に臨む部分まで)が、ガス流路46内の圧力を調整する圧力調整手段として機能している。
【0096】
また、通気膜48Bでは、その突出部474のノズル4Aの先端からの露出面積(表面積)が、前記第2実施形態の通気膜48Aの露出面473の露出面積よりも大きくなっている。ガスGの排出量が多くなるように設定したい場合には、通気膜48Bの構成が有効である。また、通気膜48Bの突出部474により、ノズル4Aの先端に付着する液量(ゲル量)を抑えることができ、目詰まりが起こりずらいと言う利点がある。
【0097】
<第4実施形態>
図7は、本発明の塗布具(第4実施形態)におけるノズルの先端部付近の縦断面図である。
【0098】
以下、この図を参照して本発明の塗布具の第4実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、合流部の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0099】
図7に示すノズル4Cでは、第1の流路44の合流部47に開口する先端部441(開口部)の最先端441aの位置は、第2の流路45の合流部47に開口する先端部451(開口部)の最先端451aの位置よりも先端側に位置している。すなわち、第1の流路44の先端部441の最先端441aと、第2の流路45の先端部451の最先端451aとは、互いにノズル4Cの長手方向にずれた位置に形成されている。
【0100】
本実施形態では、前述したように混合液の塗布操作を行い、その塗布操作を停止した際、残圧によって合流部47内に流入したガスGが、当該合流部47内の混合液を噴出口424から吹き飛ばす場合がある。この場合、合流部47内に混合液が残留するのが防止され(図7参照)、よって、当該合流部47内で混合液が凝固して、噴出口424に目詰まりが生じるのが防止される。また、第1の流路44の先端部441の最先端441aから合流部47内に第1の液体L1が不本意に流出し、第2の流路45の先端部451の最先端451aからも第2の液体L2が不本意に流出したとしても、最先端441aと最先端451aとがノズル4Cの長手方向にずれた位置に配置されていることにより、これらの流出した第1の液体L1と第2の液体L2とが混合するのを確実に防止することができる。これにより、合流部47内でこれらの2液が凝固して、噴出口424に目詰まりが生じるのが防止される。
【0101】
<第5実施形態>
図8は、本発明の塗布具(第5実施形態)におけるノズルの先端部付近の縦断面図である。
【0102】
以下、この図を参照して本発明の塗布具の第5実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、合流部が省略されていること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0103】
図8に示すノズル4Dでは、前記第1実施形態のような合流部47が省略されており、ノズル4Dの先端面に、第1の流路44Dからの第1の液体L1が噴出する噴出口421と、第2の流路45Dからの第2の液体L2が噴出する噴出口422とが形成されている。また、第1の流路44Dおよび第2の流路45は、それぞれを画成する壁部の一部が通気膜48となっている。これにより、各流路内にガスGが流入することができる。
【0104】
このような構成のノズル4Dでは、第1の液体L1および第2の液体L2は、それぞれ、霧状となって噴出する。これにより、第1の液体L1と第2の液体L2とが確実に混合され、患部に塗布される。
【0105】
また、噴出口421および噴出口422のうちの少なくとも一方の噴出口で、前記2液が残留して凝固し目詰まりが生じたとしても、前述したように、第3の流路46内のガスGが弁体49を介して排出されるため、第3の流路46内の残圧が解消される。これにより、各流路の通気膜48を介して当該流路内に流入したガスGが基端側へ逆流するのを確実に防止することができる。また、この流路内に流入したガスGによって、当該流路内の液体が基端側へ押し戻されるのを確実に防止することができる。
【0106】
<第6実施形態>
図9は、本発明の塗布具(第6実施形態)におけるノズルの先端部付近の縦断面図である。
【0107】
以下、この図を参照して本発明の塗布具の第5実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、弁体の形状が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0108】
図9に示すノズル4Eでは、弁体49Eがダックビル弁で構成されている。具体的には、弁体49Eは、2枚の弾性体が縁部492で互いに密着しており、全体形状が収斂形状(漏斗状)をなすものである。この弁体49Eは、第3の流路46内の圧力の上昇により、前記密着した縁部492同士が離間して開状態となる。この開状態の弁体49Eを介して、第3の流路46内のガスGが排出される。これにより、ガス流路46内の残圧が解消される(圧力が調整される)。
【0109】
以上、本発明の塗布具を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、塗布具を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0110】
また、本発明の塗布具は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0111】
また、塗布具は、ガスとともに噴霧するものとしては、液体であるが、粒子状をなすもの(粉末)にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の塗布具の第1実施形態を示す平面図である。
【図2】図1に示す塗布具におけるノズルの先端部付近の縦断面図(塗布具の作動状態の経時的な変化を示す図)である。
【図3】図1に示す塗布具におけるノズルの先端部付近の縦断面図(塗布具の作動状態の経時的な変化を示す図)である。
【図4】図1に示す塗布具におけるノズルの先端部付近の縦断面図(塗布具の作動状態の経時的な変化を示す図)である。
【図5】本発明の塗布具(第2実施形態)におけるノズルの先端部付近の縦断面図である。
【図6】本発明の塗布具(第3実施形態)におけるノズルの先端部付近の縦断面図である。
【図7】本発明の塗布具(第4実施形態)におけるノズルの先端部付近の縦断面図である。
【図8】本発明の塗布具(第5実施形態)におけるノズルの先端部付近の縦断面図である。
【図9】本発明の塗布具(第6実施形態)におけるノズルの先端部付近の縦断面図である。
【符号の説明】
【0113】
1 塗布具
2 第1のシリンジ(液体供給手段)
21 外筒
22 縮径部(口部)
23 フランジ
24 ガスケット
26 押し子
29 フランジ
3 第2のシリンジ(液体供給手段)
4、4A、4B、4C、4D、4E ノズル
42 ノズルヘッド
421 噴出口
422 噴出口
424 噴出口
43 ノズル本体
44、44D 第1の流路(液体流路(液体移送路))
441 先端部
441a 最先端
45、45D 第2の流路(液体流路(液体移送路))
451 先端部
451a 最先端
46 第3の流路(ガス流路)
461 先端内周部
462 側孔
47 合流部
471 先端部
472 基端部
473 露出面(露出部)
474 突出部(露出部)
48、48A、48B 通気膜
49、49E 弁体
491 スリット(貫通孔)
492 縁部
7 塗布具本体
71 シリンジ保持部
711 嵌合部
712 挿入部
713 連結部
714 溝
715 接続部
72 フランジ連結部
721 溝
300b ガスボンベ(ガス供給手段)
302b チューブ
B 気泡
L1 第1の液体
L2 第2の液体
G ガス(無菌ガス)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を供給する供給手段と、
前記供給手段から供給された前記液体が通過する液体流路と、前記液体とともに噴射するガスが通過するガス流路とを有し、前記液体流路と前記ガス流路とは、それらを画成する壁部を介して隣接しており、該壁部の少なくとも一部が、前記液体に対して撥液性を有し、前記ガスが透過可能な通気膜で構成されたノズルと、
前記ガス流路内の圧力を調整する圧力調整手段とを備えることを特徴とする塗布具。
【請求項2】
前記ノズルは、内管と外管とで構成された二重管構造をなしており、前記内管内が前記液体流路として機能し、前記内管と前記外管との間の間隙が前記ガス流路として機能するものであり、
前記圧力調整手段は、前記外管の管壁を貫通する側孔、または該側孔に設置され、前記ガス流路の圧力の上昇によって開く弁体で構成されている請求項1に記載の塗布具。
【請求項3】
前記通気膜は、前記ノズルの先端に露出または突出する露出部を有し、
前記通気膜の前記露出部から前記ガス流路に臨む部分までが前記圧力調整手段として機能する請求項1または2に記載の塗布具。
【請求項4】
前記圧力調整手段は、前記液体流路内の前記液体の流動が停止したときに、前記通気膜を介して前記ガスが前記液体流路内に侵入し該液体流路内の残液を上流側へ戻す圧力を超えないように、前記ガス流路内の圧力を調整する請求項1ないし3のいずれかに記載の塗布具。
【請求項5】
前記圧力調整手段は、前記ガス流路内の圧力が上昇したとき、該ガス流路内のガスを排出して、圧力を減少させるよう構成されている請求項1ないし4のいずれかに記載の塗布具。
【請求項6】
前記液体が噴出しているとき、前記ガスは、前記圧力調整手段によって排出されるよりも優先的に前記通気膜を介して前記液体流路内に流入する請求項1ないし5のいずれかに記載の塗布具。
【請求項7】
前記液体流路は、複数設置されており、該各液体流路内を互いに液組成が異なる液体が通過する請求項1ないし6のいずれかに記載の塗布具。
【請求項8】
前記複数の液体流路は、互いに途中で合流する合流部を形成する請求項7に記載の塗布具。
【請求項9】
前記通気膜は、前記合流部に配置されている請求項8に記載の塗布具。
【請求項10】
粉末を供給する供給手段と、
前記供給手段から供給された前記粉末が通過する粉末流路と、前記粉末とともに噴射するガスが通過するガス流路とを有し、前記粉末流路と前記ガス流路とは、それらを画成する壁部を介して隣接しており、該壁部の少なくとも一部が、前記ガスが透過可能な通気膜で構成されたノズルと、
前記ガス流路内の圧力を調整する圧力調整手段とを備えることを特徴とする塗布具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−207513(P2009−207513A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50372(P2008−50372)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】