塗布液被塗布材の製造方法
【課題】 より塗布パターンの非塗布表面部への塗布を防止する。
【解決手段】 本発明における塗布液を被塗布材表面に塗布してなる塗布液被塗布材の製造方法は、被塗布材表面における前記塗布液の塗布厚までの塗布について、前記塗布液を前記塗布厚以下の所定厚まで塗布する第一の塗布工程と、前記第一の塗布工程後に、前記所定厚まで塗布された前記塗布液を固化させる塗布液固化工程と、前記固化後の塗布液表面に、さらに塗布液を塗布して前記塗布液の塗布厚まで塗布させる第二の塗布工程とを含むことを特徴とする。
【解決手段】 本発明における塗布液を被塗布材表面に塗布してなる塗布液被塗布材の製造方法は、被塗布材表面における前記塗布液の塗布厚までの塗布について、前記塗布液を前記塗布厚以下の所定厚まで塗布する第一の塗布工程と、前記第一の塗布工程後に、前記所定厚まで塗布された前記塗布液を固化させる塗布液固化工程と、前記固化後の塗布液表面に、さらに塗布液を塗布して前記塗布液の塗布厚まで塗布させる第二の塗布工程とを含むことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、塗布液被塗布材の製造方法、特に塗布液を被塗布材表面に塗布してなる塗布液被塗布材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗布液を被塗布材表面に塗布してなる塗布液被塗布材の製造方法、すなわちウエットプロセスが知られている。例えば、塗布液被塗布材として有機EL素子を用いた製造方法が挙げられる。
【0003】
図1に有機EL素子の構造の一例を示す。有機EL素子は、発光機能層が主に有機物からなり、陽極からホールが、陰極から電子が注入され、発光層で再結合し発光する。有機EL素子の有機機能層は通常、ホール注入層/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層など、それぞれの機能を持つ複数の層からなる。これら各々の有機機能層は通常、有機物からなり、更に、低分子の有機物からなる場合、高分子の有機物からなる場合がある。
【0004】
有機機能層各層を構成する塗布液を塗布し、有機機能層を所定の形状に形成する技術は、下記特許文献1に報告されている。特に限定されるわけではないが、低分子の有機物からなる有機機能層は一般に蒸着法等のドライプロセス(真空プロセス)によって、高分子の有機物からなる有機機能層は一般にスピンコート法、ブレードコート法、ディップ法、スプレー塗布法そして印刷法等のウエットプロセスによって、それぞれ形成されるのが一般的である。一部に、ウエットプロセスが可能である有機溶媒に可溶な低分子材料、蒸着が可能である高分子材料も存在する。ウエットプロセスのうち、簡便に成膜できる方法として、例えばスプレー塗布法がある。
【0005】
下記特許文献1には、有機材料を溶解、分散した溶液を霧状に噴出するスプレー塗布法が開示されている。スプレー塗布法は、例えば本願の図2の一例図、同文献の図1に開示される通り、ノズルから溶液を霧状にして基板に吹き付けて成膜する方法である。同文献では、スプレー塗布法により有機EL素子を構成する層を形成することが報告されている。一般に、有機機能層をスプレー塗布法で形成する場合においては、図2に示されるように表面マスクなどを用いて塗布液が被塗布材表面に塗布される塗布表面部と、塗布液が被塗布材表面に塗布されない非塗布表面部とで構成される所定の形状にパターニングする必要がある。
【0006】
このパターニングの方法としては、例えば、下記特許文献1の図2などに示される方法を用いることができる。下記特許文献1の図2の方法では、同文献「0028」に記載されるように、赤、緑、青色の発光パターンに合わせたマスクや、それに限らず、発光色、発光形状による複数のマスクを交換して成膜できる技術が開示される。この方法では、発光形状の異なったマスクをマスク板収納室に備え、マスク板交換ロボットにより、適宜、パターンの違うマスクを交換することにより、様々なパターン表示が可能な有機EL素子を作製することが可能とされる。
【0007】
ノズルから噴射し、マスクを用いて、有機機能層を所定の形状に形成する技術は、下記特許文献2、下記特許文献3などに開示されている。
【0008】
下記特許文献2では、有機化合物の分散粒子を含む組成物を不活性ガスで噴射させ、マスクの開口部を通過させることにより、所定の形状の有機機能層を形成する技術が開示される。
【0009】
また、下記特許文献3には、真空雰囲気中で、高分子系EL材料を溶解した溶液をスプレー状に噴出する有機機能層の形成方法が開示される。同文献段落「0034」には画素塗り分けマスクを用いて赤色の発光層を形成した後、同マスクを所定量ずらし、順次、青色、緑色の発光層を形成する技術が記載される。
【0010】
上記では、一例としてスプレー塗布法を挙げたが、これに限られず、ウエットプロセスにより有機機能層を所定の形状に形成するには、スプレー塗布法の他に、フレキソ印刷やスクリーン印刷等、印刷法を用いることも可能である。
【0011】
図3Aに示されるようにスプレー塗布法や印刷法により基板上に塗布された塗布液は、塗布の直後では、凹凸やムラのある状態である。この凹凸を平坦化するために、レベリングが行われる。レベリングとは、塗布液が完全に乾いておらず流動性が残っている状態で一定時間放置することで、表面を平坦化させる手法が一般的である(図3B)。レベリングの後、乾燥させることで、平坦性の良いパターン化された膜を得ることができる(図3C)。
【特許文献1】特開2001−297876号公報
【特許文献2】特開2002−343566号公報
【特許文献3】特開2003−257631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、図4に示されるようにウエットプロセスにより塗布される塗布層は、基板横方向(基板に平行な方向)にも流動し、非塗布表面部まで塗布されやすくなる場合がある。特にその塗布厚みが増大すると、図4のような現象は顕著となる。
【0013】
レベリング工程は、乾燥前の膜の流動性を利用して時間経過による表面の平坦化を行うが、同時に、膜は基板に平行な方向にも動く場合があり、時間経過させる際に、塗布されたパターンが広がってしまうことがある。
【0014】
特に限定されるわけではないが一例として、スクリーン印刷等では、比較的粘度が高い、例えば1000mPa・s以上の塗布液を使用する場合が多い。その場合、パターンの広がりはほとんど生じず、実用的には差し支えない。しかし、スプレー塗布法やフレキソ印刷等では、比較的粘度が低い、例えば1000mPa・s以下の塗布液を使用する場合が多い。その場合、塗布された膜の流動性が高く、パターンの広がりが無視できなくなるという問題があった。一般に、塗布前の基板表面は塗布液の濡れ性が高い状態にしておくのが望ましいが、基板表面の濡れ性が高いと、特に、パターンの広がりが短時間のうちに起こる傾向がある。また、基板表面の濡れ性が十分良くない場合は、レベリング中に塗布液がはじいてしまい、むしろ膜の凹凸が増えてしまう場合もある。
【0015】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、より塗布パターンの非塗布表面部への塗布を防止する塗布液被塗布材の製造方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に記載の発明は、塗布液を被塗布材表面に塗布してなる塗布液被塗布材の製造方法であって、被塗布材表面における前記塗布液の塗布厚までの塗布について、前記塗布液を前記塗布厚以下の所定厚まで塗布する第一の塗布工程と、前記第一の塗布工程後に、前記所定厚まで塗布された前記塗布液を固化させる塗布液固化工程と、前記固化後の塗布液表面に、さらに塗布液を塗布して前記塗布液の塗布厚まで塗布させる第二の塗布工程とを含むことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本実施形態の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態については、本発明を実施するための一形態に過ぎず、本発明は本実施形態によって限定されるものではない。
【0018】
「塗布液被塗布材の製造方法」
本実施形態では、1層の膜を2回以上、複数回に分けて形成する。すなわち、被塗布材表面における前記塗布液の塗布厚までの塗布について、前記塗布液を前記塗布厚以下の所定厚まで塗布する第一の塗布工程と、前記第一の塗布工程後に、前記所定厚まで塗布された前記塗布液を固化させる塗布液固化工程と、前記固化後の塗布液表面に、さらに塗布液を塗布して前記塗布液の塗布厚まで塗布させる第二の塗布工程により塗布する。また、第二の塗布工程による塗布後に塗布液の表面平坦化、塗布液固化工程を行う。
【0019】
本実施形態は、有機EL素子を形成する層を被塗布材とし、層の材料を塗布液として塗布し、有機EL素子を塗布液被塗布材とする態様について例示して図5A〜図5Fを参照しつつ説明する。
【0020】
図5A:第一の塗布工程(膜1の塗布):
全体の塗布厚の一部分に相当する膜1を塗布する。全体の膜厚に対し、膜1をどの程度の厚さ塗布するかは、乾燥後の膜厚に換算して、少なくとも全体の膜厚の1/2未満、好ましくは全体の膜厚の1/5以下もしくは100nm以下、最も好ましくは全体の膜厚の1/10以下もしくは10nm以下、が望ましい。膜1の下限については、乾燥後の膜厚が、膜1に用いる材料の1分子の大きさ以上であれば、本実施形態の効果を発揮できる。膜1に用いる材料によるが、具体的には乾燥後の膜厚として1nm以上であればよい。
【0021】
図5B:表面平坦化(膜1のレベリング)、塗布液固化工程(膜1の乾燥工程):
塗布した膜1を、レベリング、乾燥して固化する。パターンの広がりを最小限にできるよう、膜1のレベリングは、短時間に行うか、特にレベリングを行わなくても良い。図のように、レベリングの際、膜表面の凹凸が残ったままになってもよい。乾燥も迅速に行うことが望ましい。パターンの広がりをできるだけ少なくするのが、膜1の形成で最も重要なことである。膜1の厚さを薄くすればするほど、パターンの広がりを防止できる。レベリング、及び乾燥が迅速に行われるため、膜1のパターンはほとんど広がらずに、塗布直後のパターンを維持する。
【0022】
図5C、図5D:第二の塗布工程(膜2の塗布):
図5C、図5Dで示されるように形成した膜1と略同一のパターンで膜2を塗布する。図5Dの様に、後のレベリング工程で膜2のパターンが広がることを考慮して、膜2の塗布パターンを、膜1の塗布パターンよりも内側に形成しても良い。膜1のパターンに対し、どの程度膜2のパターンを内側に形成するかは、塗布液の粘度や溶媒によるが、一般には10mm以下、好ましくは1mm以下、さらに好ましくは0.1mm以下、の幅でパターン2の好ましくは全周にわたり内側にすれば良い。
【0023】
図5E、図5F:表面平坦化(膜2のレベリング)、塗布液固化工程(膜2の乾燥工程):
膜2のレベリングは、膜表面の平坦性を重視し、十分に行う。レベリング中、膜2は基板と平行な方向にも広がろうとする。同一の材料で形成された膜1の領域では、濡れ性が非常に高く容易に広がるが、その外の領域には広がりにくい。つまり、レベリングを十分に行ったとしても、膜2のパターンは膜1と略同一となる。例えば、第二の塗布工程で膜2を膜1よりも小さな領域に形成した場合、膜2の広がりは膜1のパターンエッジでほぼ停止する。また、膜1上での濡れ性が非常に高いため、膜2のレベリングが効果的に行われる。次に、膜2を乾燥する。乾燥が進む段階で、同一の材料である膜1と膜2は一体化し1層の膜となる。
【0024】
また、「濡れ性」とは、被塗布材に対する塗布液の濡れ性を示す。塗布液の濡れ性は、塗布液の接触角で評価することができる。接触角が小さいほど、濡れ性良好と判断できる。一般に、塗布液が固形分である溶質と、溶質を溶解する溶媒とからなる場合、塗布液の濡れ性は、塗布液に用いる溶媒の影響を強く受ける。
【0025】
本実施形態では、従来例の図1と同様の構造の有機EL素子における有機機能層の少なくとも1層を上記のような工程で、より具体的一例としては、後述の製造方法により形成する。図1は有機機能層が4層からなる場合を示したもので、当然、本実施形態は4層以下、もしくは5層以上の公知のあらゆる有機EL素子の構造に適用可能である。
【0026】
本実施形態に用いることの出来る塗布可能な有機機能層材料は、たとえば以下のようなものが挙げられる。
【0027】
有機溶媒に可溶な有機物からなる有機機能層の例が、例えば、特開2003−7461に示されている。特開2003−7461、6頁「0023」〜「0024」には、有機機能層に用いる高分子材料として、PEDOT、ポリアニリン、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリアルキルフェニレン、ポリアセチレン誘導体、などが挙げられている。更に特開2003−7461、7頁「0031」によると、これらの高分子材料は、トルエン、ベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロホルム、テトラリン、キシレン、アニソール、ジクロロメタン、γブチロラクトン、ブチルセルソルブ、シクロヘキサン、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノン、ジオキサンまたは、THF (テトラヒドロフラン)等の溶媒から選ばれた1種または複数種、に前駆体を溶解し、塗布される。
【0028】
これら有機機能層は、既知のあらゆる成膜法を用いて形成することができる。特に可溶な有機物からなる有機機能層は、ウエットプロセスによって形成する事ができる。ウエットプロセスで形成する場合は、通常、材料を溶媒に溶解した塗布液を用いる。溶媒としては、前述の溶媒の他、PGME(propyleneglycol monomethyl ether)、PGMEA(propyleneglycol monomethyl ether acetate)、乳酸エチル、DMAc(N.N−dimethylacetamide)、MEK(methyl ethyl ketone)、MIBK(methyl isobutyl ketone)、IPA(iso propyl alcohol)、エタノール等、既知の溶剤を用いる事ができる。
【0029】
本実施形態は、塗布液の粘度が低い場合に特に有効で、具体的に塗布液の粘度は、1000mPa・s以下、好ましくは100mPa・s以下、もっとも好ましくは10mPa・s以下の場合、特に本実施形態が有効である。
【0030】
本実施形態に用いるウエットプロセスは、前述した通り、比較的粘度が低い塗布液が用いられる、スプレー法、フレキソ印刷やスクリーン印刷などの印刷法のほか、公知の溶液塗布方法を用いると好適である。
【0031】
塗布方式としては、インクジェット、グラビアコート、グラビアリバースコート、コンマコート、ダイコート、リップコート、キャストコート、ロールコート、エアーナイフコート、メイヤーバーコート、押し出しコート、オフセット、紫外線硬化オフセット、フレキソ、孔版、シルク、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、キスコート、ブレードコート、スムーズコート、スプレーコート、かけ流しコート、刷毛塗り等の各種印刷方式を用いることができる。
【0032】
レベリング方法は、塗布後単に所定の時間放置する、加熱や減圧を行いながら行うなど、種々の方法を用いることが出来るが、これに限定されない。前述した通り、本実施形態では、膜1のレベリングはあまり重要ではなく、膜2のレベリングは十分に行う。膜1と膜2のレベリング手法が同じ場合、(膜1のレベリング時間)<(膜2のレベリング時間)であることが望ましい。
【0033】
膜の乾燥は、加熱や減圧することによって行うことが出来る。加熱方法としては、ホットプレート、赤外線オーブン、温風循環式オーブン等が挙げられるが、これに限定されない。減圧乾燥、赤外線オーブンや温風循環式オーブン等、膜表面から加熱する加熱法では、膜の表面から乾燥が始まる。特に、減圧乾燥ではこの傾向が強い。その結果これらの乾燥方法では、膜表面が早く乾き、膜全体の流動を短時間のうちに抑えることができる。ただし、1μmを超えるような厚い膜の乾燥に用いると膜の内部まで完全に乾燥することが困難となる。よって、このような場合は、ホットプレート等、他の乾燥を併用することが望ましい。たとえば、減圧乾燥→ホットプレート等の加熱乾燥、のように順次行うと、良好な乾燥を行うことができる。
【0034】
乾燥方法の特性を利用して、本実施形態をより好適に実施することができる。膜1の乾燥では、膜の流動をできるだけ抑える必要がある。よって、膜1の乾燥では、まず始めに、減圧乾燥や膜表面から加熱する加熱法が望ましい。
通常、有機機能層の乾燥条件は、膜の特性を考慮して、最適に設定されるが、膜1の乾燥条件は必ずしもこの最適条件に設定される必要はない。膜2の乾燥工程で、膜1の乾燥も同時になされるからである。膜2の乾燥条件が最適に設定されていれば、膜1の乾燥は、膜の流動性がなくなる程度でよい。
【0035】
ただし、膜1の乾燥が不十分であると、膜2を塗布した際に膜2の溶媒によって膜1が溶解される場合があり、流動し、膜1のパターンが広がってしまう。
【0036】
膜1の乾燥によって、膜1の材料が、架橋、酸化などの化学変化を起こし、膜2の溶媒に対し溶解しにくくなると好ましい。つまり、(乾燥前の膜1固形分の、膜2の溶媒に対する溶解度)>(乾燥後の膜1固形分の、膜2の溶媒に対する溶解度)となることが望ましい。上記のように、膜1の材料の、膜2の溶媒に対する溶解度を、乾燥によって変化させることが困難な場合は、膜1と膜2の溶媒に工夫をすることで、乾燥後の膜1が膜2の溶媒に溶解しパターンが広がってしまう問題を解決できる。
【0037】
つまり、(膜1の溶媒の、膜1の材料に対する溶解度)>(膜2の溶媒の、膜1の材料に対する溶解度)とすることで、乾燥後の膜1が膜2の溶媒に溶解しにくくなる。この場合において、膜1の溶液の溶質と、膜2の溶液の溶質とを同一の材料とすれば、膜2の乾燥後の膜1と膜2が一体化し、一層の同一の成分からなる膜とすることができる。
【0038】
「有機EL素子製造方法」
スプレー法を用いて本実施形態を実施し、図1と同様の構造の有機EL素子を作製する場合の実施例を図6A〜Gを参照しつつ説明する。一例であって、本発明はこの実施形態になんら限定されない。作製される図1と同様の構造の有機EL素子は、発光機能層が主に有機物からなり、陽極からホールが、陰極から電子が注入され、発光層で再結合し発光する。有機EL素子の有機機能層は通常、ホール注入層/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層など、それぞれの機能を持つ複数の層からなる。
【0039】
図6A:第1電極の形成:
ガラス基板上に、例えばITO等からなる第1電極を所定のパターンで形成する。図のように、第1電極の一部が、第2電極の引き出し部となっていても良い。また、第1電極は必要に応じて、低抵抗金属を備えた2層構造となっていても良い。
【0040】
第1電極を形成する前に、TFTアレイ、種々の配線、カラーフィルターなどを形成しても良い。また、第1電極を形成した後に、必要に応じて、絶縁膜パターンなどを形成しても良い。
【0041】
図6B:膜1の塗布:
例えば20×70mmの開口部を有する、0.1mm厚のステンレス板からなるマスクを基板上に載置し、例えば酸をドープしたポリアニリンをNMPに溶解した塗布液を、スプレーノズルを走査することにより、塗布する。
【0042】
図6C:膜1のレベリング、乾燥:
塗布した膜1を、ほとんどレベリングせずに、塗布後速やかに、真空チャンバー内へ導入、真空ポンプで3分間ほど減圧する。真空チャンバーを常圧に戻し、基板を取り出す。取り出した基板を、ホットプレートで100℃10分間加熱する。乾燥がすばやく行われるため、膜1のパターンはマスクの開口部とほぼ同一の寸法となる。
【0043】
図6D:膜2の塗布:
形成した膜1と略同一の形状のマスクを、基板上に載置し、膜1の塗布と同様に膜2を塗布する。ただし、膜厚は、乾燥膜厚換算で95nmに相当する様にし膜2を塗布する。使用するマスクの開口を、例えば全周にわたり0.2mm幅ずつ小さくして、19.6×69.6mmとしても良い。
【0044】
図6E:膜2のレベリング:
塗布終了後、約2分間常温、常圧のまま放置し、膜2をレベリングする。レベリングを十分行っても、膜2が膜1のパターンをはみ出すことはほとんどない。
【0045】
図6F:膜2の乾燥:
基板をホットプレートにて200℃10分間加熱し膜2を乾燥する。
【0046】
図6G:その他の層の形成:
膜2の乾燥後の基板上に真空蒸着法にて、α−NPDを45nm、Alq3を60nm、Li2Oを1nm、Alを100nmそれぞれ成膜する。Alの第2電極は第1電極の形成で形成した引き出し部を通して外部に引き出される。第2電極と引き出し部分の接続部分に、有機機能層が成膜されてしまうと、接触不良となり、特に問題となるため、本実施形態により有機機能層のパターンを高精度に形成できると、大変効果的である。この後に防湿のための封止膜の形成、基板側からの保護バリア膜の形成を行うのが望ましい。
【0047】
上記実施例では、膜1の塗布パターンと、膜2の塗布パターンを略同一としたが、全く異なるパターンとしても良い。その場合、膜1と膜2が重なる部分では、膜2の高いレベリング効果が得られる。また、膜1のパターンエッジと、膜2のパターンエッジが近接する部分では、膜2のパターンを膜1のパターンの通りに形成できる効果がある。
【0048】
本実施形態では、膜2の形成前に、予め膜1を薄く形成しておくので、膜1のパターン上で、膜2の濡れ性が非常に良い状態となる。よって、膜2のレベリングを行う際、高い平坦化が達成される。また、膜2のレベリングを十分に行っても、膜2のパターンが膜1の外側に広がりにくく、パターン精度の高い成膜を行うことができる。これらの結果、特性の良好な有機EL素子をパターン精度良く作製することができる。
【0049】
本実施形態では、好適であることから第一の塗布工程と第二の塗布工程とが塗布液が被塗布材表面に塗布される塗布表面部と、塗布液が被塗布材表面に塗布されない非塗布表面部とで構成される塗布パターンに塗布する塗布パターンで塗布されるがこれに限定されない。第一の塗布工程と第二の塗布工程とのち少なくとも一方の塗布について、塗布パターンで塗布されても好適である。また、第一の塗布工程と第二の塗布工程ともに塗布パターンで塗布されなくともよい。
【0050】
本実施形態では、好適であることから前記第一の塗布工程と前記第二の塗布工程の両方を塗布パターンに塗布し、前記第一の塗布工程における塗布パターンと、前記第二の塗布工程における塗布パターンが略同一パターンとしているがこれに限られない。異なるパターンでも第一の塗布工程と第二の塗布工程とで分けて塗布する方法であればよい。
【0051】
本実施形態では、好適であることから前記塗布パターンに塗布可能な塗布パターン形成装置を用いているがこれに限られることがない。塗布パターンを形成するか否かに限られず、第一の塗布工程と第二の塗布工程とで分けて塗布する方法であればよい。
【0052】
また、本実施形態では、さらにより塗布パターンの非塗布表面部への塗布を防止することができることなどに好適であるので前記塗布パターン形成装置として、前記塗布表面部に対応する部分が貫通し、非塗布表面部に対応する部分が非貫通してなるマスクパターンが形成された表面マスクを用い、前記表面マスクを通して前記塗布パターンに前記塗布液を塗布することとしているがこれに限られない。他の版や印刷法を用いて前記塗布パターンに塗布してもよい。
【0053】
また、本実施形態では、より塗布パターンの非塗布表面部への塗布を防止することができることに好適であるので前記第一の塗布工程と前記第二の塗布工程の両方を塗布パターンに塗布し、前記第二の塗布工程における塗布パターンの塗布部分を、前記第一の塗布工程における塗布パターンの塗布部分よりも内側に塗布することとしてあるがこれに限られない。内側に塗布しなくともより塗布パターンの非塗布表面部への塗布を防止することができる場合がある。
【0054】
また、本実施形態では、工程上等に好適であるので塗布液固化工程は、前記塗布液を乾燥させて行うこととしているがこれに限られない。前記塗布液を少しでも固化できる工程で有ればよい。例えば塗布液に応じて、UV硬化、EB硬化、熱硬化などの固化工程を用いることもできる。
【0055】
また、本実施形態では、工程上、より塗布パターンの非塗布表面部への塗布を防止すること等に好適であるので、塗布液固化工程は、前記塗布液がほぼ固体化(乾燥)するまで行うこととしているがほぼ固体化するまでしなくてもよい。前記塗布液を少しでも固化できる工程で有ればよい。
【0056】
また、本実施形態では、工程上等に好適であるので前記第一の塗布工程における塗布液を用いて前記第二の塗布工程における塗布液としているがこれに限られない。前記第一の塗布工程における塗布液と前記第二の塗布工程に用いる塗布液とを代えてもよい。
【0057】
また、本実施形態では、工程上等に好適であるので前記塗布液固化工程における前記所定厚まで塗布された前記塗布液を固化させる固化速度を前記第二の塗布工程後の固化速度よりも大きくしているがこれに限られない。前記塗布液固化工程における固化速度を前記第二の塗布工程後の固化速度よりも大きくしているのに固化条件を相違、例えば、加熱を制御する等により乾燥速度を制御し、前記塗布液固化工程において、前記第二の塗布工程後よりも向上させるなどしているが、このような固化速度を相違させなくともよい場合がある。
【0058】
本実施形態では、膜1の乾燥によって、膜1の材料が、架橋、酸化などの化学変化を起こし、膜2の溶媒に対し溶解しにくくなること、(乾燥前の膜1固形分の、膜2の溶媒に対する溶解度)>(乾燥後の膜1固形分の、膜2の溶媒に対する溶解度)となることが望ましいがこれに限られない。乾燥以外の固化工程であっても、膜1を構成する表面材料が架橋、酸化などの化学変化を起こし、膜2の溶媒に対し溶解しにくくなる場合があるからである。すなわち、前記所定厚までの塗布液の少なくとも表面における前記第二の塗布液に対する溶解度を減少させる溶解度減少工程を含むと好適であるが、この工程がなくてもよい。また塗布液固化工程が溶解度減少工程を含むとは塗布液固化工程が溶解度減少工程の作用を兼ねる意味も含む。
【0059】
本実施形態では、好適であることから少なくとも前記第一の塗布工程における塗布液は溶媒成分と前記溶媒成分に溶解される溶質とを含み、前記第二の塗布工程における塗布液は、前記溶媒成分よりも前記溶質に対する溶解度を小さくすると好適であるがこれに限られない。
【0060】
本実施形態では、好適であることから前記塗布は噴射ノズルから前記塗布液を噴射するスプレー塗布によるものを挙げているがこれに限られない。
【0061】
本実施形態では、好適であることから、前記第一の塗布工程と前記第二の塗布工程との両方について、塗布後に塗布液の表面平坦化を行うこととしているがこれに限られない。前記第一の塗布工程と前記第二の塗布工程との一方であってもよく。両方なくてもよい場合がある。なお、塗布液の表面平坦化は、時間経過で塗布液が自発的に表面平坦化する場合と他の平坦化する一般的な工程を用いて平坦化する場合の両方を含むものである。塗布液の表面平坦化は必須の工程ではなく、好適な工程である。
【0062】
本実施形態では、前記第一の塗布工程における塗布液と前記第二の塗布工程における塗布液の両方が粘度1000mPa・s以下であると塗布パターンの非塗布表面部へ塗布が広がりやすいので、第一の塗布工程と第二の塗布工程とで分けて塗布する方法を用いてより塗布パターンの非塗布表面部への塗布を防止すると好適である。前記第一の塗布工程における塗布液と前記第二の塗布工程における塗布液の少なくとも一方が1000mPa・s以下であってもよいが、これに限定されない。
【0063】
本実施形態では、前記第一の塗布工程は単一の塗布工程であるが、複数の塗布工程を含んでいてもよい。また、本実施形態では、第二の塗布工程による塗布後に塗布液の表面平坦化、塗布液固化工程を行っているがこれらは省略可能である。
【0064】
本実施形態では、好適であるので有機EL素子構成層に対して、基板、陽極、有機機能層の各層、陰極、基板側の保護バリア膜、封止膜のうち少なくとも1層であることを例示して塗布方法を説明しているがこれに限られない。被塗布材が半導体基板、有機トランジスタ構成層であってもよく、これら以外であってもよい。有機トランジスタ構成層とは、ドレイン電極、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】従来技術における有機EL素子の断面図である。
【図2】従来技術における塗布液被塗布材の製造方法を模式的に説明する図である。
【図3A】従来技術における塗布液被塗布材の製造方法を模式的に説明する図である。
【図3B】従来技術における塗布液被塗布材の製造方法を模式的に説明する図である。
【図3C】従来技術における塗布液被塗布材の製造方法を模式的に説明する図である。
【図4】従来技術における塗布液被塗布材の製造方法の課題を模式的に説明する図である。
【図5A】本実施形態における塗布液被塗布材の製造方法を模式的に説明する図である。
【図5B】本実施形態における塗布液被塗布材の製造方法を模式的に説明する図である。
【図5C】本実施形態における塗布液被塗布材の製造方法を模式的に説明する図である。
【図5D】本実施形態における塗布液被塗布材の製造方法を模式的に説明する図である。
【図5E】本実施形態における塗布液被塗布材の製造方法を模式的に説明する図である。
【図5F】本実施形態における塗布液被塗布材の製造方法を模式的に説明する図である。
【図6A】本実施形態における有機EL素子の作製方法を模式的に説明する図である。
【図6B】本実施形態における有機EL素子の作製方法を模式的に説明する図である。
【図6C】本実施形態における有機EL素子の作製方法を模式的に説明する図である。
【図6D】本実施形態における有機EL素子の作製方法を模式的に説明する図である。
【図6E】本実施形態における有機EL素子の作製方法を模式的に説明する図である。
【図6F】本実施形態における有機EL素子の作製方法を模式的に説明する図である。
【図6G】本実施形態における有機EL素子の作製方法を模式的に説明する図である。
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、塗布液被塗布材の製造方法、特に塗布液を被塗布材表面に塗布してなる塗布液被塗布材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗布液を被塗布材表面に塗布してなる塗布液被塗布材の製造方法、すなわちウエットプロセスが知られている。例えば、塗布液被塗布材として有機EL素子を用いた製造方法が挙げられる。
【0003】
図1に有機EL素子の構造の一例を示す。有機EL素子は、発光機能層が主に有機物からなり、陽極からホールが、陰極から電子が注入され、発光層で再結合し発光する。有機EL素子の有機機能層は通常、ホール注入層/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層など、それぞれの機能を持つ複数の層からなる。これら各々の有機機能層は通常、有機物からなり、更に、低分子の有機物からなる場合、高分子の有機物からなる場合がある。
【0004】
有機機能層各層を構成する塗布液を塗布し、有機機能層を所定の形状に形成する技術は、下記特許文献1に報告されている。特に限定されるわけではないが、低分子の有機物からなる有機機能層は一般に蒸着法等のドライプロセス(真空プロセス)によって、高分子の有機物からなる有機機能層は一般にスピンコート法、ブレードコート法、ディップ法、スプレー塗布法そして印刷法等のウエットプロセスによって、それぞれ形成されるのが一般的である。一部に、ウエットプロセスが可能である有機溶媒に可溶な低分子材料、蒸着が可能である高分子材料も存在する。ウエットプロセスのうち、簡便に成膜できる方法として、例えばスプレー塗布法がある。
【0005】
下記特許文献1には、有機材料を溶解、分散した溶液を霧状に噴出するスプレー塗布法が開示されている。スプレー塗布法は、例えば本願の図2の一例図、同文献の図1に開示される通り、ノズルから溶液を霧状にして基板に吹き付けて成膜する方法である。同文献では、スプレー塗布法により有機EL素子を構成する層を形成することが報告されている。一般に、有機機能層をスプレー塗布法で形成する場合においては、図2に示されるように表面マスクなどを用いて塗布液が被塗布材表面に塗布される塗布表面部と、塗布液が被塗布材表面に塗布されない非塗布表面部とで構成される所定の形状にパターニングする必要がある。
【0006】
このパターニングの方法としては、例えば、下記特許文献1の図2などに示される方法を用いることができる。下記特許文献1の図2の方法では、同文献「0028」に記載されるように、赤、緑、青色の発光パターンに合わせたマスクや、それに限らず、発光色、発光形状による複数のマスクを交換して成膜できる技術が開示される。この方法では、発光形状の異なったマスクをマスク板収納室に備え、マスク板交換ロボットにより、適宜、パターンの違うマスクを交換することにより、様々なパターン表示が可能な有機EL素子を作製することが可能とされる。
【0007】
ノズルから噴射し、マスクを用いて、有機機能層を所定の形状に形成する技術は、下記特許文献2、下記特許文献3などに開示されている。
【0008】
下記特許文献2では、有機化合物の分散粒子を含む組成物を不活性ガスで噴射させ、マスクの開口部を通過させることにより、所定の形状の有機機能層を形成する技術が開示される。
【0009】
また、下記特許文献3には、真空雰囲気中で、高分子系EL材料を溶解した溶液をスプレー状に噴出する有機機能層の形成方法が開示される。同文献段落「0034」には画素塗り分けマスクを用いて赤色の発光層を形成した後、同マスクを所定量ずらし、順次、青色、緑色の発光層を形成する技術が記載される。
【0010】
上記では、一例としてスプレー塗布法を挙げたが、これに限られず、ウエットプロセスにより有機機能層を所定の形状に形成するには、スプレー塗布法の他に、フレキソ印刷やスクリーン印刷等、印刷法を用いることも可能である。
【0011】
図3Aに示されるようにスプレー塗布法や印刷法により基板上に塗布された塗布液は、塗布の直後では、凹凸やムラのある状態である。この凹凸を平坦化するために、レベリングが行われる。レベリングとは、塗布液が完全に乾いておらず流動性が残っている状態で一定時間放置することで、表面を平坦化させる手法が一般的である(図3B)。レベリングの後、乾燥させることで、平坦性の良いパターン化された膜を得ることができる(図3C)。
【特許文献1】特開2001−297876号公報
【特許文献2】特開2002−343566号公報
【特許文献3】特開2003−257631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、図4に示されるようにウエットプロセスにより塗布される塗布層は、基板横方向(基板に平行な方向)にも流動し、非塗布表面部まで塗布されやすくなる場合がある。特にその塗布厚みが増大すると、図4のような現象は顕著となる。
【0013】
レベリング工程は、乾燥前の膜の流動性を利用して時間経過による表面の平坦化を行うが、同時に、膜は基板に平行な方向にも動く場合があり、時間経過させる際に、塗布されたパターンが広がってしまうことがある。
【0014】
特に限定されるわけではないが一例として、スクリーン印刷等では、比較的粘度が高い、例えば1000mPa・s以上の塗布液を使用する場合が多い。その場合、パターンの広がりはほとんど生じず、実用的には差し支えない。しかし、スプレー塗布法やフレキソ印刷等では、比較的粘度が低い、例えば1000mPa・s以下の塗布液を使用する場合が多い。その場合、塗布された膜の流動性が高く、パターンの広がりが無視できなくなるという問題があった。一般に、塗布前の基板表面は塗布液の濡れ性が高い状態にしておくのが望ましいが、基板表面の濡れ性が高いと、特に、パターンの広がりが短時間のうちに起こる傾向がある。また、基板表面の濡れ性が十分良くない場合は、レベリング中に塗布液がはじいてしまい、むしろ膜の凹凸が増えてしまう場合もある。
【0015】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、より塗布パターンの非塗布表面部への塗布を防止する塗布液被塗布材の製造方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に記載の発明は、塗布液を被塗布材表面に塗布してなる塗布液被塗布材の製造方法であって、被塗布材表面における前記塗布液の塗布厚までの塗布について、前記塗布液を前記塗布厚以下の所定厚まで塗布する第一の塗布工程と、前記第一の塗布工程後に、前記所定厚まで塗布された前記塗布液を固化させる塗布液固化工程と、前記固化後の塗布液表面に、さらに塗布液を塗布して前記塗布液の塗布厚まで塗布させる第二の塗布工程とを含むことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本実施形態の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態については、本発明を実施するための一形態に過ぎず、本発明は本実施形態によって限定されるものではない。
【0018】
「塗布液被塗布材の製造方法」
本実施形態では、1層の膜を2回以上、複数回に分けて形成する。すなわち、被塗布材表面における前記塗布液の塗布厚までの塗布について、前記塗布液を前記塗布厚以下の所定厚まで塗布する第一の塗布工程と、前記第一の塗布工程後に、前記所定厚まで塗布された前記塗布液を固化させる塗布液固化工程と、前記固化後の塗布液表面に、さらに塗布液を塗布して前記塗布液の塗布厚まで塗布させる第二の塗布工程により塗布する。また、第二の塗布工程による塗布後に塗布液の表面平坦化、塗布液固化工程を行う。
【0019】
本実施形態は、有機EL素子を形成する層を被塗布材とし、層の材料を塗布液として塗布し、有機EL素子を塗布液被塗布材とする態様について例示して図5A〜図5Fを参照しつつ説明する。
【0020】
図5A:第一の塗布工程(膜1の塗布):
全体の塗布厚の一部分に相当する膜1を塗布する。全体の膜厚に対し、膜1をどの程度の厚さ塗布するかは、乾燥後の膜厚に換算して、少なくとも全体の膜厚の1/2未満、好ましくは全体の膜厚の1/5以下もしくは100nm以下、最も好ましくは全体の膜厚の1/10以下もしくは10nm以下、が望ましい。膜1の下限については、乾燥後の膜厚が、膜1に用いる材料の1分子の大きさ以上であれば、本実施形態の効果を発揮できる。膜1に用いる材料によるが、具体的には乾燥後の膜厚として1nm以上であればよい。
【0021】
図5B:表面平坦化(膜1のレベリング)、塗布液固化工程(膜1の乾燥工程):
塗布した膜1を、レベリング、乾燥して固化する。パターンの広がりを最小限にできるよう、膜1のレベリングは、短時間に行うか、特にレベリングを行わなくても良い。図のように、レベリングの際、膜表面の凹凸が残ったままになってもよい。乾燥も迅速に行うことが望ましい。パターンの広がりをできるだけ少なくするのが、膜1の形成で最も重要なことである。膜1の厚さを薄くすればするほど、パターンの広がりを防止できる。レベリング、及び乾燥が迅速に行われるため、膜1のパターンはほとんど広がらずに、塗布直後のパターンを維持する。
【0022】
図5C、図5D:第二の塗布工程(膜2の塗布):
図5C、図5Dで示されるように形成した膜1と略同一のパターンで膜2を塗布する。図5Dの様に、後のレベリング工程で膜2のパターンが広がることを考慮して、膜2の塗布パターンを、膜1の塗布パターンよりも内側に形成しても良い。膜1のパターンに対し、どの程度膜2のパターンを内側に形成するかは、塗布液の粘度や溶媒によるが、一般には10mm以下、好ましくは1mm以下、さらに好ましくは0.1mm以下、の幅でパターン2の好ましくは全周にわたり内側にすれば良い。
【0023】
図5E、図5F:表面平坦化(膜2のレベリング)、塗布液固化工程(膜2の乾燥工程):
膜2のレベリングは、膜表面の平坦性を重視し、十分に行う。レベリング中、膜2は基板と平行な方向にも広がろうとする。同一の材料で形成された膜1の領域では、濡れ性が非常に高く容易に広がるが、その外の領域には広がりにくい。つまり、レベリングを十分に行ったとしても、膜2のパターンは膜1と略同一となる。例えば、第二の塗布工程で膜2を膜1よりも小さな領域に形成した場合、膜2の広がりは膜1のパターンエッジでほぼ停止する。また、膜1上での濡れ性が非常に高いため、膜2のレベリングが効果的に行われる。次に、膜2を乾燥する。乾燥が進む段階で、同一の材料である膜1と膜2は一体化し1層の膜となる。
【0024】
また、「濡れ性」とは、被塗布材に対する塗布液の濡れ性を示す。塗布液の濡れ性は、塗布液の接触角で評価することができる。接触角が小さいほど、濡れ性良好と判断できる。一般に、塗布液が固形分である溶質と、溶質を溶解する溶媒とからなる場合、塗布液の濡れ性は、塗布液に用いる溶媒の影響を強く受ける。
【0025】
本実施形態では、従来例の図1と同様の構造の有機EL素子における有機機能層の少なくとも1層を上記のような工程で、より具体的一例としては、後述の製造方法により形成する。図1は有機機能層が4層からなる場合を示したもので、当然、本実施形態は4層以下、もしくは5層以上の公知のあらゆる有機EL素子の構造に適用可能である。
【0026】
本実施形態に用いることの出来る塗布可能な有機機能層材料は、たとえば以下のようなものが挙げられる。
【0027】
有機溶媒に可溶な有機物からなる有機機能層の例が、例えば、特開2003−7461に示されている。特開2003−7461、6頁「0023」〜「0024」には、有機機能層に用いる高分子材料として、PEDOT、ポリアニリン、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリアルキルフェニレン、ポリアセチレン誘導体、などが挙げられている。更に特開2003−7461、7頁「0031」によると、これらの高分子材料は、トルエン、ベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロホルム、テトラリン、キシレン、アニソール、ジクロロメタン、γブチロラクトン、ブチルセルソルブ、シクロヘキサン、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノン、ジオキサンまたは、THF (テトラヒドロフラン)等の溶媒から選ばれた1種または複数種、に前駆体を溶解し、塗布される。
【0028】
これら有機機能層は、既知のあらゆる成膜法を用いて形成することができる。特に可溶な有機物からなる有機機能層は、ウエットプロセスによって形成する事ができる。ウエットプロセスで形成する場合は、通常、材料を溶媒に溶解した塗布液を用いる。溶媒としては、前述の溶媒の他、PGME(propyleneglycol monomethyl ether)、PGMEA(propyleneglycol monomethyl ether acetate)、乳酸エチル、DMAc(N.N−dimethylacetamide)、MEK(methyl ethyl ketone)、MIBK(methyl isobutyl ketone)、IPA(iso propyl alcohol)、エタノール等、既知の溶剤を用いる事ができる。
【0029】
本実施形態は、塗布液の粘度が低い場合に特に有効で、具体的に塗布液の粘度は、1000mPa・s以下、好ましくは100mPa・s以下、もっとも好ましくは10mPa・s以下の場合、特に本実施形態が有効である。
【0030】
本実施形態に用いるウエットプロセスは、前述した通り、比較的粘度が低い塗布液が用いられる、スプレー法、フレキソ印刷やスクリーン印刷などの印刷法のほか、公知の溶液塗布方法を用いると好適である。
【0031】
塗布方式としては、インクジェット、グラビアコート、グラビアリバースコート、コンマコート、ダイコート、リップコート、キャストコート、ロールコート、エアーナイフコート、メイヤーバーコート、押し出しコート、オフセット、紫外線硬化オフセット、フレキソ、孔版、シルク、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、キスコート、ブレードコート、スムーズコート、スプレーコート、かけ流しコート、刷毛塗り等の各種印刷方式を用いることができる。
【0032】
レベリング方法は、塗布後単に所定の時間放置する、加熱や減圧を行いながら行うなど、種々の方法を用いることが出来るが、これに限定されない。前述した通り、本実施形態では、膜1のレベリングはあまり重要ではなく、膜2のレベリングは十分に行う。膜1と膜2のレベリング手法が同じ場合、(膜1のレベリング時間)<(膜2のレベリング時間)であることが望ましい。
【0033】
膜の乾燥は、加熱や減圧することによって行うことが出来る。加熱方法としては、ホットプレート、赤外線オーブン、温風循環式オーブン等が挙げられるが、これに限定されない。減圧乾燥、赤外線オーブンや温風循環式オーブン等、膜表面から加熱する加熱法では、膜の表面から乾燥が始まる。特に、減圧乾燥ではこの傾向が強い。その結果これらの乾燥方法では、膜表面が早く乾き、膜全体の流動を短時間のうちに抑えることができる。ただし、1μmを超えるような厚い膜の乾燥に用いると膜の内部まで完全に乾燥することが困難となる。よって、このような場合は、ホットプレート等、他の乾燥を併用することが望ましい。たとえば、減圧乾燥→ホットプレート等の加熱乾燥、のように順次行うと、良好な乾燥を行うことができる。
【0034】
乾燥方法の特性を利用して、本実施形態をより好適に実施することができる。膜1の乾燥では、膜の流動をできるだけ抑える必要がある。よって、膜1の乾燥では、まず始めに、減圧乾燥や膜表面から加熱する加熱法が望ましい。
通常、有機機能層の乾燥条件は、膜の特性を考慮して、最適に設定されるが、膜1の乾燥条件は必ずしもこの最適条件に設定される必要はない。膜2の乾燥工程で、膜1の乾燥も同時になされるからである。膜2の乾燥条件が最適に設定されていれば、膜1の乾燥は、膜の流動性がなくなる程度でよい。
【0035】
ただし、膜1の乾燥が不十分であると、膜2を塗布した際に膜2の溶媒によって膜1が溶解される場合があり、流動し、膜1のパターンが広がってしまう。
【0036】
膜1の乾燥によって、膜1の材料が、架橋、酸化などの化学変化を起こし、膜2の溶媒に対し溶解しにくくなると好ましい。つまり、(乾燥前の膜1固形分の、膜2の溶媒に対する溶解度)>(乾燥後の膜1固形分の、膜2の溶媒に対する溶解度)となることが望ましい。上記のように、膜1の材料の、膜2の溶媒に対する溶解度を、乾燥によって変化させることが困難な場合は、膜1と膜2の溶媒に工夫をすることで、乾燥後の膜1が膜2の溶媒に溶解しパターンが広がってしまう問題を解決できる。
【0037】
つまり、(膜1の溶媒の、膜1の材料に対する溶解度)>(膜2の溶媒の、膜1の材料に対する溶解度)とすることで、乾燥後の膜1が膜2の溶媒に溶解しにくくなる。この場合において、膜1の溶液の溶質と、膜2の溶液の溶質とを同一の材料とすれば、膜2の乾燥後の膜1と膜2が一体化し、一層の同一の成分からなる膜とすることができる。
【0038】
「有機EL素子製造方法」
スプレー法を用いて本実施形態を実施し、図1と同様の構造の有機EL素子を作製する場合の実施例を図6A〜Gを参照しつつ説明する。一例であって、本発明はこの実施形態になんら限定されない。作製される図1と同様の構造の有機EL素子は、発光機能層が主に有機物からなり、陽極からホールが、陰極から電子が注入され、発光層で再結合し発光する。有機EL素子の有機機能層は通常、ホール注入層/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層など、それぞれの機能を持つ複数の層からなる。
【0039】
図6A:第1電極の形成:
ガラス基板上に、例えばITO等からなる第1電極を所定のパターンで形成する。図のように、第1電極の一部が、第2電極の引き出し部となっていても良い。また、第1電極は必要に応じて、低抵抗金属を備えた2層構造となっていても良い。
【0040】
第1電極を形成する前に、TFTアレイ、種々の配線、カラーフィルターなどを形成しても良い。また、第1電極を形成した後に、必要に応じて、絶縁膜パターンなどを形成しても良い。
【0041】
図6B:膜1の塗布:
例えば20×70mmの開口部を有する、0.1mm厚のステンレス板からなるマスクを基板上に載置し、例えば酸をドープしたポリアニリンをNMPに溶解した塗布液を、スプレーノズルを走査することにより、塗布する。
【0042】
図6C:膜1のレベリング、乾燥:
塗布した膜1を、ほとんどレベリングせずに、塗布後速やかに、真空チャンバー内へ導入、真空ポンプで3分間ほど減圧する。真空チャンバーを常圧に戻し、基板を取り出す。取り出した基板を、ホットプレートで100℃10分間加熱する。乾燥がすばやく行われるため、膜1のパターンはマスクの開口部とほぼ同一の寸法となる。
【0043】
図6D:膜2の塗布:
形成した膜1と略同一の形状のマスクを、基板上に載置し、膜1の塗布と同様に膜2を塗布する。ただし、膜厚は、乾燥膜厚換算で95nmに相当する様にし膜2を塗布する。使用するマスクの開口を、例えば全周にわたり0.2mm幅ずつ小さくして、19.6×69.6mmとしても良い。
【0044】
図6E:膜2のレベリング:
塗布終了後、約2分間常温、常圧のまま放置し、膜2をレベリングする。レベリングを十分行っても、膜2が膜1のパターンをはみ出すことはほとんどない。
【0045】
図6F:膜2の乾燥:
基板をホットプレートにて200℃10分間加熱し膜2を乾燥する。
【0046】
図6G:その他の層の形成:
膜2の乾燥後の基板上に真空蒸着法にて、α−NPDを45nm、Alq3を60nm、Li2Oを1nm、Alを100nmそれぞれ成膜する。Alの第2電極は第1電極の形成で形成した引き出し部を通して外部に引き出される。第2電極と引き出し部分の接続部分に、有機機能層が成膜されてしまうと、接触不良となり、特に問題となるため、本実施形態により有機機能層のパターンを高精度に形成できると、大変効果的である。この後に防湿のための封止膜の形成、基板側からの保護バリア膜の形成を行うのが望ましい。
【0047】
上記実施例では、膜1の塗布パターンと、膜2の塗布パターンを略同一としたが、全く異なるパターンとしても良い。その場合、膜1と膜2が重なる部分では、膜2の高いレベリング効果が得られる。また、膜1のパターンエッジと、膜2のパターンエッジが近接する部分では、膜2のパターンを膜1のパターンの通りに形成できる効果がある。
【0048】
本実施形態では、膜2の形成前に、予め膜1を薄く形成しておくので、膜1のパターン上で、膜2の濡れ性が非常に良い状態となる。よって、膜2のレベリングを行う際、高い平坦化が達成される。また、膜2のレベリングを十分に行っても、膜2のパターンが膜1の外側に広がりにくく、パターン精度の高い成膜を行うことができる。これらの結果、特性の良好な有機EL素子をパターン精度良く作製することができる。
【0049】
本実施形態では、好適であることから第一の塗布工程と第二の塗布工程とが塗布液が被塗布材表面に塗布される塗布表面部と、塗布液が被塗布材表面に塗布されない非塗布表面部とで構成される塗布パターンに塗布する塗布パターンで塗布されるがこれに限定されない。第一の塗布工程と第二の塗布工程とのち少なくとも一方の塗布について、塗布パターンで塗布されても好適である。また、第一の塗布工程と第二の塗布工程ともに塗布パターンで塗布されなくともよい。
【0050】
本実施形態では、好適であることから前記第一の塗布工程と前記第二の塗布工程の両方を塗布パターンに塗布し、前記第一の塗布工程における塗布パターンと、前記第二の塗布工程における塗布パターンが略同一パターンとしているがこれに限られない。異なるパターンでも第一の塗布工程と第二の塗布工程とで分けて塗布する方法であればよい。
【0051】
本実施形態では、好適であることから前記塗布パターンに塗布可能な塗布パターン形成装置を用いているがこれに限られることがない。塗布パターンを形成するか否かに限られず、第一の塗布工程と第二の塗布工程とで分けて塗布する方法であればよい。
【0052】
また、本実施形態では、さらにより塗布パターンの非塗布表面部への塗布を防止することができることなどに好適であるので前記塗布パターン形成装置として、前記塗布表面部に対応する部分が貫通し、非塗布表面部に対応する部分が非貫通してなるマスクパターンが形成された表面マスクを用い、前記表面マスクを通して前記塗布パターンに前記塗布液を塗布することとしているがこれに限られない。他の版や印刷法を用いて前記塗布パターンに塗布してもよい。
【0053】
また、本実施形態では、より塗布パターンの非塗布表面部への塗布を防止することができることに好適であるので前記第一の塗布工程と前記第二の塗布工程の両方を塗布パターンに塗布し、前記第二の塗布工程における塗布パターンの塗布部分を、前記第一の塗布工程における塗布パターンの塗布部分よりも内側に塗布することとしてあるがこれに限られない。内側に塗布しなくともより塗布パターンの非塗布表面部への塗布を防止することができる場合がある。
【0054】
また、本実施形態では、工程上等に好適であるので塗布液固化工程は、前記塗布液を乾燥させて行うこととしているがこれに限られない。前記塗布液を少しでも固化できる工程で有ればよい。例えば塗布液に応じて、UV硬化、EB硬化、熱硬化などの固化工程を用いることもできる。
【0055】
また、本実施形態では、工程上、より塗布パターンの非塗布表面部への塗布を防止すること等に好適であるので、塗布液固化工程は、前記塗布液がほぼ固体化(乾燥)するまで行うこととしているがほぼ固体化するまでしなくてもよい。前記塗布液を少しでも固化できる工程で有ればよい。
【0056】
また、本実施形態では、工程上等に好適であるので前記第一の塗布工程における塗布液を用いて前記第二の塗布工程における塗布液としているがこれに限られない。前記第一の塗布工程における塗布液と前記第二の塗布工程に用いる塗布液とを代えてもよい。
【0057】
また、本実施形態では、工程上等に好適であるので前記塗布液固化工程における前記所定厚まで塗布された前記塗布液を固化させる固化速度を前記第二の塗布工程後の固化速度よりも大きくしているがこれに限られない。前記塗布液固化工程における固化速度を前記第二の塗布工程後の固化速度よりも大きくしているのに固化条件を相違、例えば、加熱を制御する等により乾燥速度を制御し、前記塗布液固化工程において、前記第二の塗布工程後よりも向上させるなどしているが、このような固化速度を相違させなくともよい場合がある。
【0058】
本実施形態では、膜1の乾燥によって、膜1の材料が、架橋、酸化などの化学変化を起こし、膜2の溶媒に対し溶解しにくくなること、(乾燥前の膜1固形分の、膜2の溶媒に対する溶解度)>(乾燥後の膜1固形分の、膜2の溶媒に対する溶解度)となることが望ましいがこれに限られない。乾燥以外の固化工程であっても、膜1を構成する表面材料が架橋、酸化などの化学変化を起こし、膜2の溶媒に対し溶解しにくくなる場合があるからである。すなわち、前記所定厚までの塗布液の少なくとも表面における前記第二の塗布液に対する溶解度を減少させる溶解度減少工程を含むと好適であるが、この工程がなくてもよい。また塗布液固化工程が溶解度減少工程を含むとは塗布液固化工程が溶解度減少工程の作用を兼ねる意味も含む。
【0059】
本実施形態では、好適であることから少なくとも前記第一の塗布工程における塗布液は溶媒成分と前記溶媒成分に溶解される溶質とを含み、前記第二の塗布工程における塗布液は、前記溶媒成分よりも前記溶質に対する溶解度を小さくすると好適であるがこれに限られない。
【0060】
本実施形態では、好適であることから前記塗布は噴射ノズルから前記塗布液を噴射するスプレー塗布によるものを挙げているがこれに限られない。
【0061】
本実施形態では、好適であることから、前記第一の塗布工程と前記第二の塗布工程との両方について、塗布後に塗布液の表面平坦化を行うこととしているがこれに限られない。前記第一の塗布工程と前記第二の塗布工程との一方であってもよく。両方なくてもよい場合がある。なお、塗布液の表面平坦化は、時間経過で塗布液が自発的に表面平坦化する場合と他の平坦化する一般的な工程を用いて平坦化する場合の両方を含むものである。塗布液の表面平坦化は必須の工程ではなく、好適な工程である。
【0062】
本実施形態では、前記第一の塗布工程における塗布液と前記第二の塗布工程における塗布液の両方が粘度1000mPa・s以下であると塗布パターンの非塗布表面部へ塗布が広がりやすいので、第一の塗布工程と第二の塗布工程とで分けて塗布する方法を用いてより塗布パターンの非塗布表面部への塗布を防止すると好適である。前記第一の塗布工程における塗布液と前記第二の塗布工程における塗布液の少なくとも一方が1000mPa・s以下であってもよいが、これに限定されない。
【0063】
本実施形態では、前記第一の塗布工程は単一の塗布工程であるが、複数の塗布工程を含んでいてもよい。また、本実施形態では、第二の塗布工程による塗布後に塗布液の表面平坦化、塗布液固化工程を行っているがこれらは省略可能である。
【0064】
本実施形態では、好適であるので有機EL素子構成層に対して、基板、陽極、有機機能層の各層、陰極、基板側の保護バリア膜、封止膜のうち少なくとも1層であることを例示して塗布方法を説明しているがこれに限られない。被塗布材が半導体基板、有機トランジスタ構成層であってもよく、これら以外であってもよい。有機トランジスタ構成層とは、ドレイン電極、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】従来技術における有機EL素子の断面図である。
【図2】従来技術における塗布液被塗布材の製造方法を模式的に説明する図である。
【図3A】従来技術における塗布液被塗布材の製造方法を模式的に説明する図である。
【図3B】従来技術における塗布液被塗布材の製造方法を模式的に説明する図である。
【図3C】従来技術における塗布液被塗布材の製造方法を模式的に説明する図である。
【図4】従来技術における塗布液被塗布材の製造方法の課題を模式的に説明する図である。
【図5A】本実施形態における塗布液被塗布材の製造方法を模式的に説明する図である。
【図5B】本実施形態における塗布液被塗布材の製造方法を模式的に説明する図である。
【図5C】本実施形態における塗布液被塗布材の製造方法を模式的に説明する図である。
【図5D】本実施形態における塗布液被塗布材の製造方法を模式的に説明する図である。
【図5E】本実施形態における塗布液被塗布材の製造方法を模式的に説明する図である。
【図5F】本実施形態における塗布液被塗布材の製造方法を模式的に説明する図である。
【図6A】本実施形態における有機EL素子の作製方法を模式的に説明する図である。
【図6B】本実施形態における有機EL素子の作製方法を模式的に説明する図である。
【図6C】本実施形態における有機EL素子の作製方法を模式的に説明する図である。
【図6D】本実施形態における有機EL素子の作製方法を模式的に説明する図である。
【図6E】本実施形態における有機EL素子の作製方法を模式的に説明する図である。
【図6F】本実施形態における有機EL素子の作製方法を模式的に説明する図である。
【図6G】本実施形態における有機EL素子の作製方法を模式的に説明する図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布液を被塗布材表面に塗布してなる塗布液被塗布材の製造方法であって、
被塗布材表面における前記塗布液の塗布厚までの塗布について、
前記塗布液を前記塗布厚以下の所定厚まで塗布する第一の塗布工程と、
前記第一の塗布工程後に、前記所定厚まで塗布された前記塗布液を固化させる塗布液固化工程と、
前記固化後の塗布液表面に、さらに塗布液を塗布して前記塗布液の塗布厚まで塗布させる第二の塗布工程とを含む塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布液被塗布材の製造方法であって、
第一の塗布工程と第二の塗布工程とのうち少なくとも一方の塗布について、塗布液が被塗布材表面に塗布される塗布表面部と、塗布液が被塗布材表面に塗布されない非塗布表面部とで構成される塗布パターンに塗布する塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の塗布液被塗布材の製造方法であって、
前記第一の塗布工程と前記第二の塗布工程の両方を塗布パターンに塗布し、
前記第一の塗布工程における塗布パターンと、前記第二の塗布工程における塗布パターンが略同一パターンである塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載の塗布液被塗布材の製造方法であって、
前記塗布パターンに塗布可能な塗布パターン形成装置を用いて前記塗布パターンに前記塗布液を塗布する塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の塗布液被塗布材の製造方法であって、
前記塗布パターン形成装置は、前記塗布表面部に対応する部分が貫通し、非塗布表面部に対応する部分が非貫通してなるマスクパターンが形成された表面マスクであって、
前記表面マスクを通して前記塗布パターンに前記塗布液を塗布する前記塗布液塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の塗布液被塗布材の製造方法であって、
前記第一の塗布工程と前記第二の塗布工程の両方を塗布パターンに塗布し、
前記第二の塗布工程における塗布パターンの塗布部分を、前記第一の塗布工程における塗布パターンの塗布部分よりも内側とする塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の塗布液被塗布材の製造方法であって、
塗布液固化工程は、前記塗布液を乾燥させて行う塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の塗布液被塗布材の製造方法であって、
塗布液固化工程は、前記塗布液がほぼ固体化するまで行う塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つに記載の塗布液被塗布材の製造方法であって、
前記第一の塗布工程における塗布液を用いて前記第二の塗布工程における塗布液とする塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1つに記載の塗布液被塗布材の製造方法であって、
前記塗布液固化工程について、
前記所定厚まで塗布された前記塗布液を固化させる固化速度を前記第二の塗布工程の塗布液の固化速度よりも大きくする塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1つに記載の塗布液被塗布材の製造方法であって、
前記塗布液固化工程は、さらに、
前記所定厚までの塗布液の少なくとも表面における前記第二の塗布工程における塗布液に対する溶解度を減少させる溶解度減少工程を含む塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1つに記載の塗布液被塗布材の製造方法であって、
少なくとも前記第一の塗布工程における塗布液は溶媒成分と前記溶媒成分に溶解される溶質とを含み、
前記第二の塗布工程における塗布液は、前記溶媒成分よりも前記溶質に対する溶解度を小さくする塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1つに記載の塗布液被塗布材の製造方法であって、
前記塗布は噴射ノズルから前記塗布液を噴射するスプレー塗布である塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1つに記載の塗布液被塗布材の製造方法であって、
前記第一の塗布工程と前記第二の塗布工程とのうち少なくとも一方について、塗布後に塗布液の表面平坦化を行う塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1つに記載の塗布液被塗布材の製造方法であって、
前記第一の塗布工程における塗布液と前記第二の塗布工程における塗布液のうち少なくとも一方の粘度が1000mPa・s以下である塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1つに記載の塗布液被塗布材の製造方法であって、
前記第二の塗布工程は複数の塗布工程を含む塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1つに記載の塗布液被塗布材の製造方法であって、
前記被塗布材が半導体基板、有機トランジスタ構成層、有機EL素子構成層のうち少なくとも1つである塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項18】
請求項17に記載の塗布液被塗布材の製造方法であって、
前記有機EL素子構成層は、基板、陽極、有機機能層の各層、陰極、基板側の保護バリア膜、封止膜のうち少なくとも1層である塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項1】
塗布液を被塗布材表面に塗布してなる塗布液被塗布材の製造方法であって、
被塗布材表面における前記塗布液の塗布厚までの塗布について、
前記塗布液を前記塗布厚以下の所定厚まで塗布する第一の塗布工程と、
前記第一の塗布工程後に、前記所定厚まで塗布された前記塗布液を固化させる塗布液固化工程と、
前記固化後の塗布液表面に、さらに塗布液を塗布して前記塗布液の塗布厚まで塗布させる第二の塗布工程とを含む塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布液被塗布材の製造方法であって、
第一の塗布工程と第二の塗布工程とのうち少なくとも一方の塗布について、塗布液が被塗布材表面に塗布される塗布表面部と、塗布液が被塗布材表面に塗布されない非塗布表面部とで構成される塗布パターンに塗布する塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の塗布液被塗布材の製造方法であって、
前記第一の塗布工程と前記第二の塗布工程の両方を塗布パターンに塗布し、
前記第一の塗布工程における塗布パターンと、前記第二の塗布工程における塗布パターンが略同一パターンである塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載の塗布液被塗布材の製造方法であって、
前記塗布パターンに塗布可能な塗布パターン形成装置を用いて前記塗布パターンに前記塗布液を塗布する塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の塗布液被塗布材の製造方法であって、
前記塗布パターン形成装置は、前記塗布表面部に対応する部分が貫通し、非塗布表面部に対応する部分が非貫通してなるマスクパターンが形成された表面マスクであって、
前記表面マスクを通して前記塗布パターンに前記塗布液を塗布する前記塗布液塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の塗布液被塗布材の製造方法であって、
前記第一の塗布工程と前記第二の塗布工程の両方を塗布パターンに塗布し、
前記第二の塗布工程における塗布パターンの塗布部分を、前記第一の塗布工程における塗布パターンの塗布部分よりも内側とする塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の塗布液被塗布材の製造方法であって、
塗布液固化工程は、前記塗布液を乾燥させて行う塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の塗布液被塗布材の製造方法であって、
塗布液固化工程は、前記塗布液がほぼ固体化するまで行う塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つに記載の塗布液被塗布材の製造方法であって、
前記第一の塗布工程における塗布液を用いて前記第二の塗布工程における塗布液とする塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1つに記載の塗布液被塗布材の製造方法であって、
前記塗布液固化工程について、
前記所定厚まで塗布された前記塗布液を固化させる固化速度を前記第二の塗布工程の塗布液の固化速度よりも大きくする塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1つに記載の塗布液被塗布材の製造方法であって、
前記塗布液固化工程は、さらに、
前記所定厚までの塗布液の少なくとも表面における前記第二の塗布工程における塗布液に対する溶解度を減少させる溶解度減少工程を含む塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1つに記載の塗布液被塗布材の製造方法であって、
少なくとも前記第一の塗布工程における塗布液は溶媒成分と前記溶媒成分に溶解される溶質とを含み、
前記第二の塗布工程における塗布液は、前記溶媒成分よりも前記溶質に対する溶解度を小さくする塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1つに記載の塗布液被塗布材の製造方法であって、
前記塗布は噴射ノズルから前記塗布液を噴射するスプレー塗布である塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1つに記載の塗布液被塗布材の製造方法であって、
前記第一の塗布工程と前記第二の塗布工程とのうち少なくとも一方について、塗布後に塗布液の表面平坦化を行う塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1つに記載の塗布液被塗布材の製造方法であって、
前記第一の塗布工程における塗布液と前記第二の塗布工程における塗布液のうち少なくとも一方の粘度が1000mPa・s以下である塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1つに記載の塗布液被塗布材の製造方法であって、
前記第二の塗布工程は複数の塗布工程を含む塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1つに記載の塗布液被塗布材の製造方法であって、
前記被塗布材が半導体基板、有機トランジスタ構成層、有機EL素子構成層のうち少なくとも1つである塗布液被塗布材の製造方法。
【請求項18】
請求項17に記載の塗布液被塗布材の製造方法であって、
前記有機EL素子構成層は、基板、陽極、有機機能層の各層、陰極、基板側の保護バリア膜、封止膜のうち少なくとも1層である塗布液被塗布材の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【公開番号】特開2006−239628(P2006−239628A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−61213(P2005−61213)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】
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