説明

塗布装置および塗布膜形成システム

【課題】基材の一方の主面に塗布膜が形成されている場合において、他方の主面に良好に塗布膜を形成することができる塗布装置、および、この塗布装置を組み込んだ塗布膜形成システムを提供する。
【解決手段】塗布処理部10は、活物質の第1塗布膜6が形成された状態で、基材5の第2主面5bに活物質の塗布液を塗布する。塗布処理部10は、主として、ノズル11と、位置検出部13と、駆動部15と、を備えている。ノズル11は、バックアップローラ12と対向する位置に配置されている。位置検出部13は、いわゆる2次元レーザ変位計により構成されたセンサである。位置検出部13は、長手方向に沿った基材5の搬送経路8において、ノズル11の吐出位置PDより上流側の検出位置PSに配置されている。駆動部15は、ノズル11を前後左右上下に移動させることによって、バックアップローラ12に対する吐出口11aの位置を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学電池の電極材料として用いられる活物質の塗布液を基材に塗布することによって、基材上に塗布膜を形成する塗布装置、および、この塗布装置を組み込んだ塗布膜形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、基材として用いられる金属箔の上に、比較的高粘度の電極材料を塗布することによって、リチウムイオン二次電池などの化学電池を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
ここで、特許文献1の製造方法では、次のような手法により、金属箔上に塗布膜が形成される。まず、帯状の金属箔が、複数のローラにより、巻出し部から電極材料を吐出するスリットノズルの直下に搬送される。
【0004】
次に、金属箔の搬送方向(金属箔の長手方向と平行)においてスリットノズルより上流側に配置された位置検出センサによって、幅方向(長手方向と直交する方向)における金属箔の一端部(幅方向における金属箔の両端のうち一方の端部)の位置が検出される。
【0005】
続いて、検出された一端部の位置に基づいて、スリットノズルが、幅方向に沿って移動させられる。これにより、幅方向における金属箔の一端部を基準位置として、この基準位置から幅方向に沿って一定距離だけ離れた位置に、電極材料が塗布できる。そして、電極材料の塗布が金属箔の両主面(両面)に対して実行されることによって、金属箔の両面に塗布膜が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4259026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、幅方向における金属箔のサイズは、必ずしも一定でなく、一方の端部を基準位置とする塗布膜の塗布位置は、他方の端部を基準位置とする塗布膜の塗布位置とズレる。その結果、一方の主面に形成された塗布膜の基準位置が不明な場合、両主面に形成された塗布膜の塗布位置を一致させることができないという問題が生ずる。
【0008】
そこで、本発明では、基材の一方の主面に塗布膜が形成されている場合において、他方の主面に良好に塗布膜を形成することができる塗布装置、および、この塗布装置を組み込んだ塗布膜形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、帯状とされた基材の第1主面上に活物質の第1塗布膜が形成された状態で、前記基材の第2主面に活物質の塗布液を塗布することによって、前記第2主面上に第2塗布膜を形成する塗布装置であって、前記第1塗布膜は、前記基材の長手方向に沿って形成されてるとともに、前記第2塗布膜が形成される時、前記基材は、前記長手方向に沿って搬送され、前記基材の幅方向に沿ったスリット状の吐出口から前記基材の前記第2主面に向けて、前記塗布液を吐出するノズルと、前記長手方向に沿った前記基材の搬送経路において、前記ノズルの吐出位置より上流側の検出位置に配置されるとともに、前記幅方向おける前記第1塗布膜の第1両端位置を前記基材の各部分について検出する位置検出部と、前記ノズルを前記幅方向に沿って移動させる駆動部と、前記位置検出部により検出された前記第1両端位置に基づいて、前記幅方向における前記ノズルの位置を決定することによって、前記基材の各部分における前記第2塗布膜の形成位置を決定する制御部と、備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の塗布装置において、前記位置検出部は、2次元レーザ変位計であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3の発明は、請求項1に記載の塗布装置において、前記位置検出部は、前記幅方向における前記第1塗布膜の両端付近を撮像可能な撮像部と、前記撮像部により撮像された画像に基づいて、前記幅方向に沿った前記第1塗布膜の前記第1両端位置を演算する演算部とを有することを特徴とする。
【0012】
また、請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の塗布装置において、前記位置検出部は、前記基材の各部分について、前記幅方向における前記基材の第2両端位置を、前記第1両端位置とともに検出することを特徴とする。
【0013】
また、請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の塗布装置と、前記塗布装置で塗布された前記基材上の前記塗布液を乾燥させる乾燥装置とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1から請求項5に記載の発明によれば、位置検出部は、幅方向における第1塗布膜の第1両端位置を基材の各部分について検出することができる。これにより、幅方向における基材のサイズが、基材の各部分において変動しても、第1塗布膜の形成位置および幅が、正確に検出できる。
【0015】
そのため、基材の各部分において第1および第2塗布膜の形成位置が一致するように、ノズルの位置を決定することができる。また、検出された第1塗布膜の幅によって、第1塗布膜の形成不良を発見できる。
【0016】
特に、請求項4に記載の発明によれば、基材の各部分において、幅方向に沿った第1塗布膜の第1両端位置だけでなく、幅方向に沿った基材の第2両端位置をも検出することができる。そのため、第1塗布膜に関する情報だけでなく、基材の送り状況(例えば、幅方向における基材の蛇行状況)に関する情報をも取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る塗布装置を組み込んだ塗布膜形成システムの全体構成の一例を示す正面図である。
【図2】塗布処理部の概略構成を示す正面図である。
【図3】ノズルおよび位置検出部の位置関係を説明するための側面図である。
【図4】図3のVI−VI線から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
<1.塗布膜形成システムの構成>
図1は、本発明に係る塗布装置を組み込んだ塗布膜形成システム1の全体構成を示す図である。なお、図1および以降の各図には、方向関係を明確にするために、Z軸方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系が付されている。また、図1および以降の各図において、理解容易のため、必要に応じて、各部の寸法や数が誇張または簡略化して描かれている。
【0020】
塗布膜形成システム1は、基材5の上に活物質の塗布膜を形成するとともに、形成された塗布膜を乾燥させることによって、リチウムイオン二次電池の電極を製造する。図1に示すように、塗布膜形成システム1は、主として、塗布処理部10、予熱部60、乾燥部65、アニール部70、冷却部75、および搬送部80を備えている。また、塗布膜形成システム1は、電源および後述する制御部90(図2参照)等を収納する電装ボックス9を備えている。
【0021】
ここで、基材5は、リチウムイオン二次電池の集電体として機能する帯状の金属箔である。基材5の形状は、より具体的には、長尺のシート状とされている。また、基材5の幅および厚さは特に限定されるものではないが、基材5の幅は600mm〜700mmとすることができ、基材5の厚さは10μm〜20μmとすることができる。
【0022】
また、塗布膜形成システム1において、リチウムイオン二次電池の正極が製造される場合、基材5として例えばアルミニウム箔(Al)が使用できる。一方、負極が製造される場合、基材5として例えば銅箔(Cu)が使用できる。
【0023】
図1に示すように、帯状の基材5は、巻き出しローラ81から送り出されて巻き取りローラ82によって巻き取られることによって、塗布処理部10、予熱部60、乾燥部65、アニール部70、冷却部75の各部に、この順番で搬送される。搬送部80は、これら巻き出しローラ81および巻き取りローラ82と複数の補助ローラ83a〜83eとを備えて構成されており、基材5を矢印AR1方向に沿って搬送する。なお、補助ローラ83a〜83eの個数および配置については、図1の例に限定されるものではなく、必要に応じて適宜に増減することができる。
【0024】
塗布処理部10は、電極材料として用いられる活物質の塗布液を基材5に塗布することによって、基材5上に塗布膜を形成する。塗布処理部10は、基材5の長手方向(矢印AR1方向)(以下、単に、「長手方向」とも称する)に沿った搬送経路8において、巻き出しローラ81より下流側であって、予熱部60の上流側に配置されている。なお、塗布処理部10の詳細な構成については、後述する。
【0025】
予熱部60は、塗布処理部10での塗布処理によって基材5の上に形成された電極材料の塗布膜を昇温し、一定時間の予熱を行う。また、乾燥部65は、主たる乾燥処理を行う処理部であり、予熱部60にて予熱された塗布膜に熱風を吹き付けて加熱して溶剤を蒸発させる。さらに、アニール部70は、塗布膜をより高温に加熱し、塗布膜に残留している溶剤を除去するとともに、乾燥部65での乾燥処理で塗布膜中に発生した歪みおよび残留応力を除去する。冷却部75は、加熱された塗布膜に常温のドライエアを吹き付けることによって塗布膜を冷却する。
【0026】
このように、予熱部60、乾燥部65、アニール部70、および冷却部75は、塗布処理部10で塗布された基材5上の塗布液を乾燥させる乾燥装置として使用できる。なお、基材5の上に形成された塗布膜を乾燥させる乾燥装置としては、上記の4つの処理部を備えた構成に限定されるものではなく、塗布液の種類に応じて適宜のものとすることができる。例えば、乾燥装置は、予熱部60および乾燥部65のみによって構成されても良い。
【0027】
制御部90は、塗布膜形成システム1の各要素の動作を制御するとともに、種々のデータ演算を実現する。図2に示すように、制御部90は、主として、ROM91と、RAM92と、CPU93と、を有している。
【0028】
ROM(Read Only Memory)91は、いわゆる不揮発性の記憶部であり、例えば、プログラム91aが格納されている。なお、ROM91としては、読み書き自在の不揮発性メモリであるフラッシュメモリが使用されてもよい。RAM(Random Access Memory)92は、揮発性の記憶部であり、例えば、CPU93の演算で使用されるデータが格納される。
【0029】
CPU(Central Processing Unit)93は、ROM91のプログラム91aに従った制御(例えば、駆動部15によるノズル11の移動動作や、閉止バルブ20およびポンプ51による塗布液の吐出動作等の制御)が、実行される。
【0030】
<2.塗布処理部の構成>
図2は、本発明に係る塗布装置である塗布処理部10の概略構成を示す図である。図3は、ノズル11および位置検出部13の位置関係を説明するための側面図である。図4は、図3のVI−VI線から見た断面図である。ここでは、図2から図4を参照しつつ、塗布処理部10の構成を説明する。
【0031】
塗布処理部10は、図2に示すように、帯状とされた基材5の第1主面5aに活物質の第1塗布膜6が形成された状態で、基材5の第2主面5bに活物質の塗布液を塗布する。これにより、基材5の第2主面5b上に第2塗布膜7が形成される。図2に示すように、塗布処理部10は、主として、ノズル11と、位置検出部13と、駆動部15と、タンク50と、ポンプ51と、供給配管55と、閉止バルブ20と、を備えている。
【0032】
なお、基材5のように長手方向に延びる帯状シート体において、「主面」とは、基材5の長手方向および幅方向のそれぞれと平行な面を言うものとする。
【0033】
タンク50は、基材5に正極用または負極用の電極材料を供給するための供給源である。タンク50は、リチウムイオン二次電池の電極材料である活物質の溶液を、塗布液として貯留する。
【0034】
ここで、塗布膜形成システム1において正極が製造される場合、タンク50には、正極材料の塗布液として、例えば正極活物質であるコバルト酸リチウム(LiCoO2)と、導電助剤であるカーボン(C)と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)と、溶剤であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)と、の混合液が貯留される。
【0035】
正極活物質としては、コバルト酸リチウムに代えて、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn24)、または燐酸鉄リチウム(LiFePO4)等も使用できるが、これらの物質に限定されるものではない。
【0036】
一方、塗布膜形成システム1において負極が製造される場合、タンク50には、負極材料の塗布液として、例えば負極活物質である黒鉛(グラファイト)と、結着剤であるPVDFと、溶剤であるNMPと、の混合液が貯留する。
【0037】
負極活物質としては、黒鉛に代えて、ハードカーボン、チタン酸リチウム(Li4Ti512)、シリコン合金、またはスズ合金等も使用できるが、これらの物質に限定されるものではない。
【0038】
また、正極材料および負極材料の双方において、結着剤としては、PVDFに代えてスチレン−ブタジエンゴム(SBR)等も用いられ、溶剤としては、NMPに代えて水(H2O)等も使用できる。さらに、結着剤としてSBRが、溶剤として水が、それぞれ用いられる場合、カルボキシメチルセルロース(CMC)が、増粘剤として併用できる。
【0039】
さらに、これら正極材料および負極材料の塗布液は、固体(微粒子)が分散されたスラリーである。これら塗布液の粘度は、いずれも1Pa・s(パスカル秒)以上であり、一般的にチクソトロピー性を有する。
【0040】
タンク50には、攪拌機53およびエア加圧ユニット54が付設されている。攪拌機53は、スクリュー53aを有しており、スクリュー53aは、タンク50内の塗布液に浸漬可能とされている。したがって、スクリュー53aが回転させられることによって、タンク50に貯留された塗布液が撹拌される。
【0041】
エア加圧ユニット54は、高圧の空気をタンク50内の気相部分に送り込んで貯留されている塗布液の液面を加圧する。なお、ポンプ51のみで送液が可能であれば、エア加圧ユニット54は必須の要素ではない。
【0042】
タンク50とノズル11とは供給配管55によって連通接続されている。供給配管55としては、ステンレス管または樹脂管が使用できる。供給配管55の経路途中には、ポンプ51、閉止バルブ20、および流量計52が介挿されている。また、供給配管55の途中から分岐して循環配管56が設けられている。循環配管56の基端側は供給配管55の閉止バルブ20とポンプ51との間の位置に接続され、先端側はタンク50に接続されている。循環配管56には、循環バルブ57および流量調整バルブ58が介挿されている。
【0043】
ポンプ51は、供給配管55に設けられており、タンク50に貯留されている電極材料の塗布液を、ノズル11に向けて送り出す。流量計52は、供給配管55を流れる塗布液の流量を計測する。閉止バルブ20は、供給配管55の流路を開閉することによって、ノズル11への塗布液の供給を断続させる。
【0044】
循環配管56に設けられている循環バルブ57は、循環配管56の流路を開閉する。閉止バルブ20が供給配管55を閉止した状態で、循環バルブ57が開かれることによって、供給配管55を流れる塗布液は、循環配管56に流れ込み、タンク50へと帰還させられる。循環配管56を流れる塗布液の流量は、流量調整バルブ58により調整される。
【0045】
ノズル11は、図2に示すように、バックアップローラ12と対向する位置に配置されている。ノズル11の先端には、基材5の幅方向(図3の矢印AR2方向)(基材5の長手方向と直交する方向:以下、単に、「幅方向」と称する)に沿ったスリット状の吐出口11aが設けられている。そして、供給配管55を経由して送供され、吐出口11aから吐出される塗布液は、バックアップローラ12に押圧支持された基材5に向けて吐出される。
【0046】
位置検出部13は、いわゆる2次元レーザ変位計により構成されたセンサである。図2および図3に示すように、位置検出部13は、長手方向に沿った基材5の搬送経路8において、ノズル11の吐出位置PDより上流側の検出位置PSに配置されており、バックアップローラ13aと対向する。図4に示すように、位置検出部13は、主として、複数の測距ユニット14を有している。なお、図3では、ノズル11および位置検出部13の配置が、模式的に描かれており、吐出位置PDおよび検出位置PSが、実際よりも近く記載されている。
【0047】
複数の測距ユニット14は、図4に示すように、配列方向(矢印AR3方向)に沿って一次元的に配列されている。各測距ユニット14は、対象物までの距離に応じたアナログ信号を出力する。図4に示すように、各測距ユニット14は、投光光源14aと、受光部14bと、を有している。
【0048】
投光光源14aは、例えばレーザ光源であり、対象物に向けてレーザを出射する。受光部14bは、対応する投光光源14aから出射され、対象物で反射されたレーザを受光する。そして、各受光部14bは、受光されたレーザの強度に応じたアナログ信号(例えば、電圧)を出力する。
【0049】
したがって、位置検出部13は、各測距ユニット14から出力されるアナログ信号を制御部90のCPU93に比較させることによって、幅方向おける第1塗布膜6の両端位置PE1、PE2(第1両端位置:図3参照)を基材5の各部分について検出する。
【0050】
例えば、隣接する測距ユニット14のアナログ信号の値が、矢印AR3(図4参照)で規定される順序で比較される。そして、隣接する測距ユニット14のアナログ信号の値が同一符号であり、かつ、両アナログ信号の値が急峻に変化する場合、これら隣接する測距ユニット14の位置に基づいて位置PE1(図4参照)が求められる。
【0051】
そして、制御部90は、位置検出部13により検出された両端位置PE1、PE2に基づいて、幅方向におけるノズル11の位置を決定することにより、基材5の各部分における第2塗布膜7の形成位置を決定する。
【0052】
このように、位置検出部13は、幅方向における第1塗布膜6の両端位置PE1、PE2を基材5の各部分について検出することができる。これにより、幅方向における基材5のサイズが、基材5の各部分において変動しても、第1塗布膜6の形成位置が、正確に検出できる。そのため、塗布処理部10は、基材5の両主面5a、5bに形成される両塗布膜6、7の形成位置を正確に一致させることができる。その結果、これら両塗布膜6、7を有する化学電池の性能を向上させることができる。
【0053】
また、位置検出部13によって両端位置PE1、PE2が検出されると、基材5の各部分について、幅方向における第1塗布膜6のサイズ(以下、単に、「第1塗布膜6の幅」と称する)が取得できる。そして、得られた第1塗布膜6の幅の実測値と、第1塗布膜6の幅の設計値と、が比較されることによって、第1塗布膜6の形成不良が発見できる。
【0054】
また、位置検出部13は、基材5の各部分について、幅方向おける基材5の両端位置PB1、PB2(第2両端位置:図3参照)を、上述の両端位置PE1、PE2とともに検出することができる。
【0055】
例えば、各測距ユニット14のアナログ信号の値が、矢印AR3(図4参照)で規定される順序で比較される。そして、隣接する測距ユニット14のアナログ信号の値がほぼゼロとなる測距ユニット14の位置が、位置PB1とされる(図4参照)。
【0056】
そして、制御部90は、位置検出部13により検出された両端位置PB1、PB2に基づいて、基材5の送り状況(例えば、幅方向における基材5の蛇行状況)に関する情報を取得することができる。
【0057】
図2に戻って、駆動部15は、ノズル11を前後左右上下(図2のXYZ方向)に移動させることによって、バックアップローラ12に対する吐出口11aの位置を調整する。すなわち、駆動部15は、少なくとも幅方向に沿って、ノズル11を移動させる。
【0058】
圧力計18は、ノズル11内における塗布液の圧力を計測する。また、圧力計18によってノズル11内における塗布液の圧力が計測されるとともに、流量計52によって供給配管55を流れる塗布液の流量が計測されることによって、供給配管55を流れる塗布液の状態が把握できる。
【0059】
<3.本実施の形態の塗布処理部および塗布膜形成システムの利点>
以上のように、本実施の形態の塗布処理部10、および塗布処理部10を組み込んだ塗布膜形成システム1は、幅方向における第1塗布膜6の両端位置PE1、PE2を基材5の各部分について検出することができる。これにより、幅方向における基材5のサイズが、基材5の各部分において変動しても、第1塗布膜6の形成位置および幅が、正確に検出できる。
【0060】
そのため、基材5の各部分において第1および第2塗布膜6、7の形成位置が一致するように、ノズル11の位置を決定することができる。また、検出された第1塗布膜6の幅によって、第1塗布膜6の形成不良を発見できる。
【0061】
<4.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0062】
(1)本実施の形態において、位置検出部13は、いわゆる2次元レーザ変位計により構成されるものであるとして説明したが、これに限定されるものでない。例えば、撮像部と、演算部と、を有するものが、位置検出部とされても良い。また、塗布膜で反射されたレーザ光と、塗布膜を透過したレーザ光と、を用いて、第1および第2塗布膜6、7の膜厚が測定されても良い。
【0063】
例えば、撮像部と演算部とを有する位置検出部の場合、撮像部は、幅方向における第1塗布膜6の両端位置PE1、PE2付近を撮像する。また、演算部は、撮像部により撮像された画像に基づいて、幅方向に沿った第1塗布膜6の両端位置PE1、PE2を演算する。
【0064】
これにより、この位置検出部は、位置検出部13と同様に、幅方向における第1塗布膜6の両端位置PE1、PE2、および幅方向における基材5の両端位置PB1、PB2を、検出できる。なお、上述の演算部の機能は、制御部90のCPU93により実現されても良い。
【0065】
(2)また、本実施の形態において、制御部90は、塗布膜形成システム1の各要素(塗布処理部10、予熱部60、乾燥部65、アニール部70、および冷却部75)の動作制御や、これら各要素に関する演算処理を実行するものとして説明したが、これに限定されるものでない。例えば、制御部90は、塗布処理部10専用であっても良く、塗布処理部10に制御部90が含まれても良い。
【符号の説明】
【0066】
1 塗布膜形成システム
5 基材
5a 第1主面
5b 第2主面
6 第1塗布膜
7 第2塗布膜
8 搬送経路
10 塗布処理部
11 ノズル
11a 吐出口
13 位置検出部
15 駆動部
60 予熱部
65 乾燥部
70 アニール部
75 冷却部
80 搬送部
90 制御部
PS 検出位置
PD 吐出位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状とされた基材の第1主面上に活物質の第1塗布膜が形成された状態で、前記基材の第2主面に活物質の塗布液を塗布することによって、前記第2主面上に第2塗布膜を形成する塗布装置であって、
前記第1塗布膜は、前記基材の長手方向に沿って形成されてるとともに、
前記第2塗布膜が形成される時、前記基材は、前記長手方向に沿って搬送され、
(a) 前記基材の幅方向に沿ったスリット状の吐出口から前記基材の前記第2主面に向けて、前記塗布液を吐出するノズルと、
(b) 前記長手方向に沿った前記基材の搬送経路において、前記ノズルの吐出位置より上流側の検出位置に配置されるとともに、前記幅方向おける前記第1塗布膜の第1両端位置を前記基材の各部分について検出する位置検出部と、
(c) 前記ノズルを前記幅方向に沿って移動させる駆動部と、
(d) 前記位置検出部により検出された前記第1両端位置に基づいて、前記幅方向における前記ノズルの位置を決定することによって、前記基材の各部分における前記第2塗布膜の形成位置を決定する制御部と、
備えることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布装置において、
前記位置検出部は、2次元レーザ変位計であることを特徴とする塗布装置。
【請求項3】
請求項1に記載の塗布装置において、
前記位置検出部は、
(b-1) 前記幅方向における前記第1塗布膜の両端付近を撮像可能な撮像部と、
(b-2) 前記撮像部により撮像された画像に基づいて、前記幅方向に沿った前記第1塗布膜の前記第1両端位置を演算する演算部と、
を有することを特徴とする塗布装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の塗布装置において、
前記位置検出部は、前記基材の各部分について、前記幅方向における前記基材の第2両端位置を、前記第1両端位置とともに検出することを特徴とする塗布装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の塗布装置と、
前記塗布装置で塗布された前記基材上の前記塗布液を乾燥させる乾燥装置と、
を備えることを特徴とする塗布膜形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−212619(P2012−212619A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78465(P2011−78465)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】