説明

塗料洩れ検出装置

【課題】簡易な構成で確実に塗装装置の塗料洩れ検出することができる塗料洩れ検出装置を提供する。
【解決手段】塗装ロボットから洩れる塗料Tを検出する装置であって、塗装ロボットを設置したオイルパン4に配設された略コの字形状のベースプレート15と、このベースプレート15の上板15aに開けた貫通孔16に下方から軸部17aを挿通した昇降ボルト17と、この昇降ボルト17の頭部17bとベースプレート15の上板15aとの間に縮装されたばね部材18と、このばね部材18により昇降ボルト17の頭部17bが押圧する押圧プレート19と、この押圧プレート19とベースプレート15の下板15bとの間に介装され、塗料Tにより溶解する塗料検知部材20と、この塗料検知部材20が溶解前の状態で上板15aから突出した昇降ボルト17の軸部17aを嵌挿したパイプ部材21からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装ロボットなどの塗装装置から洩れる塗料を検出する塗料洩れ検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の塗料洩れ検出装置としては、特許文献1に記載のように、塗装ロボットのアームに取り付けて使用するもので、溶剤剥離性接着剤により一方の接触子を支持部材にバネを介して接着固定しておき、洩れた塗料によって接着剤が溶け、バネの弾性力により一方の接触子が他方の接触子に接触した状態を塗料洩れと判断する塗料洩れ検出装置が知られている。
【0003】
また、特許文献2に記載のように、塗装ロボットのアームに内装して使用するもので、ハウジングに内装されて光ファイバセンサに常時当接する被検知素子と、被検知素子の光ファイバセンサへの当接状態を維持するための溶解素子(発泡スチロール)と、溶解素子に対向する位置のハウジングに開けられた開口部より構成され、塗料により溶解素子が溶けて被検知素子が光ファイバセンサより分離することにより塗料洩れを検出する塗料洩れ検出装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−138089号公報
【特許文献2】特開2007−105684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1と特許文献2に記載されている塗料洩れ検出装置は、特定箇所の塗料洩れを検出する装置であるため、塗装装置全体の塗料洩れを確実に検出するには、多数の検出装置を取り付ける必要があり、コスト高になる。また、検出装置の取付場所によっては、塗料洩れを検出できず、塗料が大量に洩れて廃棄され、資源の無駄使いにもなるし、環境への影響も大きい。更に、塗装ロボットのように、常時屈曲動作を行う塗装装置では、検出装置の配線の取り回しが煩雑になり、断線対策が必要となる。
【0006】
本発明は、従来の技術が有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡易な構成で確実に塗装装置の塗料洩れ検出することができる塗料洩れ検出装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく請求項1に係る発明は、塗装装置から洩れる塗料を検出する装置であって、前記塗装装置を設置したオイルパンに配設された略コの字形状のベースプレートと、このベースプレートの上板に開けた貫通孔に下方から軸部を挿通した昇降ボルトと、この昇降ボルトの頭部と前記ベースプレートの上板との間に縮装されたばね部材と、このばね部材により前記昇降ボルトの頭部が押圧する押圧プレートと、この押圧プレートと前記ベースプレートの下板との間に介装され、塗料により溶解する塗料検知部材と、この塗料検知部材が溶解前の状態で前記上板から突出した前記昇降ボルトの軸部を嵌挿したパイプ部材からなるものである。
【0008】
また、前記パイプ部材の転倒状態を検出する超音波センサを設けることができる。
【0009】
また、前記パイプ部材の周面上部の一側に錘を取り付けることができる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、塗装装置を設置したオイルパンに塗装装置から洩れて溜まった塗料を検出対象としているので、塗装装置のいずれの箇所から洩れた塗料でも確実に検出することができる。また、配線や配管類を必要としないので、オイルパン上のあらゆる箇所に設置することが可能である。
【0011】
パイプ部材の転倒状態を検出する超音波センサを設ければ、作業者の視認による判断によらずに、自動で警報装置を作動させたり、塗装装置に非常停止信号などを送信させたりすることができる。
【0012】
パイプ部材の周面上部の一側に錘を取り付ければ、塗料により塗料検知部材が溶解すると、パイプ部材を確実に転倒させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る塗料洩れ検出装置を設置した塗装ブースの説明図
【図2】本発明に係る塗料洩れ検出装置をオイルパンに設置した状態の説明図で、(a)は一部断面の正面図、(b)は(a)のA矢視図
【図3】本発明に係る塗料洩れ検出装置の動作説明図
【図4】超音波センサを備えた塗料洩れ検出装置をオイルパンに設置した状態の説明図で、(a)は一部断面の正面図、(b)は(a)のB矢視図
【図5】超音波センサを備えた塗料洩れ検出装置の動作説明図
【図6】錘を設けた塗料洩れ検出装置をオイルパンに設置した状態の一部断面の正面図
【図7】錘を設けた塗料洩れ検出装置の動作説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1に示すように、塗装ブース1に形成された塗装室2内に搬送装置3を挟んでオイルパン4,4が設置されている。スノコ状床面5に設置された各オイルパン4,4には、搬送装置3で移動する搬送台車6上に位置決め載置された被塗物Wに塗料を塗布する多関節型塗装ロボット7と本発明に係る塗料洩れ検出装置8が設置されている。
【0015】
塗装ロボット7のアーム9先端には塗装ガン10が装着され、塗装ガン10は塗装室2の外部に設置された塗料供給源11とアーム9の内部を通って配設された塗料供給ホース12により接続されている。オイルパン4は、塗装装置としての塗装ロボット7から洩れる塗料を全て捉えるために、塗装ロボット7のアーム9の動作範囲をカバーできる大きさに形成されている。2aは塗装室2の側壁である。
【0016】
塗料洩れ検出装置8は、図2に示すように、側面視が略コの字形状のベースプレート15と、ベースプレート15の上板15aに開けた貫通孔16に下方から軸部17aを挿通した座付き昇降ボルト17と、昇降ボルト17の頭部17bとベースプレート15の上板15aとの間に縮装されたコイル状のばね部材18と、ばね部材18により昇降ボルト17の頭部17bが押圧する押圧プレート19と、押圧プレート19とベースプレート15の下板15bとの間に介装された塗料検知部材20と、上板15aから突出した昇降ボルト17の軸部17aを嵌挿したアルミ製のパイプ部材21より構成されている。
【0017】
塗料検知部材20は、発泡スチレン製で略直方体形状に形成され、有機溶剤が含まれる塗料Tにより溶解する性質がある。塗料検知部材20がベースプレート15の下板15bに向けて押圧プレート19により押圧されている状態では、昇降ボルト17の軸部17aはベースプレート15の上板15aより上方に突出した状態にある。上板15aより上方に突出している軸部17aの長さは、塗料検知部材20の厚み(高さ)とほぼ等しくなるよう設定されている。
【0018】
そして、昇降ボルト17の軸部17aがパイプ部材21に嵌挿されると、パイプ部材21はベースプレート15の上板15a上で起立状態を維持する。なお、座が付いていない昇降ボルトを使用する場合には、ワッシャーに座が付いていない昇降ボルトの軸部を挿通すれば、座付き昇降ボルト17の替わりになることができる。
【0019】
以上のように構成された本発明に係る塗料洩れ検出装置8の動作について説明する。塗料洩れ検出装置8をオイルパン4上に設置する。そして、塗装ロボット7により搬送台車6上に位置決め載置された被塗物Wに塗料を塗布する。すると、塗装ロボット7のアーム9による三次元動作によって、アーム9の内部を通って配設された塗料供給ホース12には部分的に応力が集中して疲労による亀裂が発生し、亀裂箇所より塗料Tが洩れ出す。
【0020】
洩れ出した塗料Tはオイルパン4に落下し貯留される。塗料Tには有機溶剤が含まれているため、貯留される塗料Tの液面が塗料検知部材20に達すると、図3に示すように、発泡スチレン製の塗料検知部材20は即座に溶解する。すると、押圧プレート19及び昇降ボルト17はばね部材18の弾発力により下降し、押圧プレート19がベースプレート15の下板15bに当接する。
【0021】
この時、昇降ボルト17の軸部17a先端はベースプレート15の上板15aより若干突出した状態になり、軸部17aとパイプ部材21との係合が解除される。すると、図3に示すように、搬送装置3の作動による振動などによりパイプ部材21は容易に転倒することになる。
【0022】
そして、パイプ部材21の転倒は作業者(オペレータ)によって容易に発見され、塗料供給ホース12の補修などを早期に実施することができる。これにより、廃棄される塗料を最小限に食い止めることが可能となり、資源の無駄使いが排除され、環境への影響も最小限にすることができる。
【0023】
また、配線や配管類を必要としない塗料洩れ検出装置8は、オイルパン4上のあらゆる箇所に設置可能である。そこで、塗料供給ホース12の疲労亀裂が発生し易い箇所の真下に設置すれば、オイルパン4に落下し貯留される塗料Tの液面上昇を待つまでもなく、落下する塗料Tが逸早く塗料検知部材20に接触し、塗料検知部材20を溶解するため、塗料洩れを早期に検出することができる。
【0024】
図4に示すように、塗料洩れ検出装置8にパイプ部材21の転倒を検知する防爆タイプの透過型超音波センサ25を備えることもできる。透過型超音波センサ25は、送波器26と受波器27と制御装置28からなり、オイルパン4の外側に送波器26と受波器27がパイプ部材21を挟んで対向するように設置される。
【0025】
透過型超音波センサ25は、送波器26より送波される超音波の一部がパイプ部材21により遮断される場合と、パイプ部材21の転倒によって送波器26より送波される超音波が全く遮断されない場合を制御装置28で識別することができる。制御装置28は、図5に示すように、パイプ部材21の転倒を検知したら、作業者の視認による判断に頼らずに塗料洩れと判断し、自動で警報装置29を作動させることができる。
【0026】
また、制御装置28は、パイプ部材21の転倒を検知したら、塗装ロボット7などの塗装装置に非常停止信号などを直接送信することもできる。なお、防爆タイプの透過型超音波センサ25の替わりに、防爆タイプの反射型超音波センサを用いることもできる。
【0027】
また、図6に示すように、パイプ部材21の周面上部の一側に錘30を取り付けることができる。錘30を周面上部の一側に取り付けることにより、パイプ部材21の起立状態が不安定となるため、図7に示すように、塗料洩れが発生し昇降ボルト17の軸部17とパイプ部材21との係合が解除されると、パイプ部材21は確実に転倒することになる。
【0028】
また、本発明の実施の形態では、アルミ製のパイプ部材21を用いたが、鉄や銅などの他の金属製のパイプ部材、紙などの非金属製のパイプ部材を用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明によれば、塗装ロボットなどの塗装装置を設置したオイルパン上に設置され、塗装装置から洩れて溜まった塗料を検出対象としているので、塗装装置のいずれの箇所から洩れた塗料でも確実に検出することができ、配線や配管類を必要としないため、オイルパン上のあらゆる箇所に設置可能な塗料洩れ検出装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0030】
1…塗装ブース、2…塗装室、3…搬送装置、4…オイルパン、7…多関節型塗装ロボット、8…塗料洩れ検出装置、9…アーム、10…塗装ガン、12…塗料供給ホース、15…ベースプレート、15a…上板、15b…下板、16…貫通孔、17…昇降ボルト、17a…軸部、17b…頭部、18…ばね部材、19…押圧プレート、20…塗料検知部材、21…パイプ部材、25…透過型超音波センサ、26…送波器、27…受波器、28…制御装置、29…警報装置、30…錘、T…塗料、W…被塗物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装装置から洩れる塗料を検出する装置であって、前記塗装装置を設置したオイルパンに配設された略コの字形状のベースプレートと、このベースプレートの上板に開けた貫通孔に下方から軸部を挿通した昇降ボルトと、この昇降ボルトの頭部と前記ベースプレートの上板との間に縮装されたばね部材と、このばね部材により前記昇降ボルトの頭部が押圧する押圧プレートと、この押圧プレートと前記ベースプレートの下板との間に介装され、塗料により溶解する塗料検知部材と、この塗料検知部材が溶解前の状態で前記上板から突出した前記昇降ボルトの軸部を嵌挿したパイプ部材からなることを特徴とする塗料洩れ検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の塗料洩れ検出装置において、前記パイプ部材の転倒状態を検出する超音波センサを設けたことを特徴とする塗料洩れ検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の塗料洩れ検出装置において、前記パイプ部材の周面上部の一側に錘を取り付けたことを特徴とする塗料洩れ検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−218271(P2011−218271A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88850(P2010−88850)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】