説明

塗料組成物、アルミニウム塗装板及びプレコートアルミニウムフィン材

【課題】 アルミニウム材の表面に耐食性、塗膜密着性、意匠性及びホルムアルデヒド吸着性において優れた性能を発揮する塗膜を形成し得る塗料組成物、当該塗膜を備えたアルミニウム塗装板、ならびに、当該アルミニウム塗装板から加工形成されるプレコートアルミニウムフィン材を提供する。
【解決手段】 セルロース系樹脂を5〜200g/リットルと、烏龍茶成分を0.05〜5g/リットルとを含有する塗料組成物、このような塗料組成物によって形成される塗膜を備えたアルミニウム塗装板、このようなアルミニウム塗装板から成るプレコートアルミニウムフィン材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム材又はアルミニウム合金材の表面に、(1)高耐食性、(2)塗膜密着性、(3)着色性及び(4)有害物質であるホルムアルデヒドの吸着性を発現させる塗膜を形成させるのに好適な塗料組成物、当該組成物を表面に塗布したアルミニウム材又はアルミニウム合金材の塗装板、ならびに、当該アルミニウム塗装板から成形された、例えば熱交換器に用いられるプレコートアルミニウムフィン材に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、特にルームエアコン及びパッケージエアコン等のエアコンに使用される熱交換器においては、腐食防止を目的とした防食処理が施されている。これらの処理は、熱交換器を組み立てた後に浸漬等により処理するポストコート法ではなく、多くの場合、熱交換器に組み込まれるアルミニウムフィン材に予めフィン加工を施すプレコート法により行われている。
【0003】
これは、ポストコート法では、組み立てられた熱交換器一台一台を処理液槽に浸漬し、その後に加熱乾燥処理を行う必要があるため、時間及びコストがかかると共に、処理液の廃液コストも莫大なものとなる不都合がある。また、近時のエアコンの小型化によりフィン間隔が狭まっているため、ポストコート法では、フィン間の溝に処理液によって形成された膜が詰まって所謂目詰まりを生じさせてしまう不都合もある。
【0004】
このように、耐食性を補うべくプレコート法が採用されているが、プレコートされた後にプレス成形によってフィン材がフィン形状に加工されるため、アルミニウムフィン材の表面に形成される高防食性の皮膜によって、プレス成形性が損なわれるようなものは用いられない。
【0005】
アルミニウムフィン材に高耐食性を付与する方法としては、耐食性を有する親水性皮膜を表面に形成する方法が挙げられる。耐食性を与えるために、クロメート処理皮膜、ベーマイト皮膜、陽極酸化皮膜などが適用され、これらの皮膜上に、親水性を付与するための水溶性アクリル樹脂などの有機皮膜、シリカ、アルミナ、水ガラスなどの無機皮膜、或いは、有機皮膜と無機皮膜との混合皮膜が形成される。このような耐食性の親水性皮膜は、下記特許文献1〜4に開示されている。
【特許文献1】特許昭61−8598号公報
【特許文献2】特開昭58−126989号公報
【特許文献3】特開昭55−99976号公報
【特許文献4】特開昭56−20971号公報 しかしながら、上述の親水性皮膜はそれ自体が水を透過し易いために耐食性に劣るという難点があった。
【0006】
また、近年になって、環境に対する関心がますます高まっており、建物の室内などにおける建物から発生するホルムアルデヒドに起因する環境汚染が指摘されている。ホルムアルデヒドは、人体に対して有害であることが判明しており、合板、建材、家具などに使用されている接着剤が主な発生源で、室内での環境汚染を生じさせている。そのため、このような室内での環境汚染を改善するために、室内空調を行いながら尚かつ空気清浄を目的とした空調機が、ホルムアルデヒドに代表される揮発性有機化合物(VOCs)を吸着するフィルターを取り付けているが、VOCsを十分取り除かれないのが現状である。そこで、空調機の中でも室内空気に最も多く接触している部品のひとつであるフィンの接触面積を活用して、ホルムアルデヒドを多量に吸着させることにより、室内中のホルムアルデヒドを低減させようとする要求がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、アルミニウム材又はアルミニウム合金材からなる熱交換器用アルミニウム材上に、高耐食性、塗膜密着性及び着色性に優れており、しかも、ホルムアルデヒド吸着性にも優れた耐食性塗膜を形成し得る塗料組成物の開発について鋭意検討した結果、樹脂としてセルロース系樹脂を含有し、烏龍茶成分を含有することを特徴とする塗料組成物を特定の方法によって塗膜にすることにより、高耐食性、塗膜密着性、着色性及びホルムアルデヒド吸着性のいずれにおいても優れた性能を発揮する高耐食性塗膜が形成可能なことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の目的は、高耐食性、塗膜密着性、着色性及びホルムアルデヒド吸着性において優れた性能を発揮する耐食性塗膜を形成し得る塗料組成物を提供することにある。本発明の他の目的は、このような塗料組成物により形成された高耐食性塗膜を備えたアルミニウム塗装板を提供することであり、更に他の目的は、このようなアルミニウム塗装板からなるプレコートアルミニウムフィン材、特に熱交換器用のプレコートアルミニウムフィン材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は請求項1において、セルロース系樹脂を5〜200g/リットルと、烏龍茶成分を0.05〜5g/リットルとを含有する塗料組成物とした。
【0010】
本発明は請求項2において、緑茶成分及び紅茶成分の少なくともいずれか一方の0.05〜5g/リットルを更に含有する塗料組成物とした。
【0011】
本発明は請求項3において、クロム系、ジルコニウム系及びチタン系から成る群から選択される少なくとも一種の化成処理皮膜であって金属元素換算にて2〜50mg/m2の金属を含有する化成処理皮膜を、少なくとも一方の表面に備え、前記化成処理皮膜上に、請求項1又は2に記載の塗料組成物より形成した100〜5000mg/m2の塗膜を備えたアルミニウム塗装板とした。
【0012】
本発明は請求項4において、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂及びアクリル系樹脂から成る群から選択される少なくとも一種を含有し、かつ、500〜10000mg/m2の樹脂皮膜を、少なくとも一方の表面に備え、当該樹脂皮膜上に、請求項1又は2に記載の塗料組成物より形成した100〜5000mg/m2の塗膜を備えたアルミニウム塗装板とした。
【0013】
本発明は請求項5において、50〜10000nmの厚さの酸化アルミニウムからなる陽極酸化皮膜を少なくとも一方の表面に備え、当該陽極酸化皮膜上に、請求項1又は2に記載の塗料組成物より形成した100〜5000mg/m2の塗膜を備えたアルミニウム塗装板とした。
【0014】
本発明は請求項6において、請求項3〜5に記載のアルミニウム塗装板から成るプレコートアルミニウムフィン材とした。
【発明の効果】
【0015】
本発明の塗料組成物によれば、アルミニウム塗装板等の材料表面に高耐食性、塗膜密着性、着色性及びホルムアルデヒド吸着性において優れた性能を発揮する高耐食性塗膜を形成することができ、これを用いて形成されたアルミニウム塗装板にて製造されたプレコートアルミニウムフィン材を例えば熱交換器に用いた場合には、長期に亘って優れた耐食性及び吸着性を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
A.塗料組成物
A−1.樹脂成分
本発明の塗料組成物は、樹脂成分としてセルロース系樹脂を5〜200g/リットル含有する。
樹脂成分としてセルロース系樹脂を用いるのは、高耐食性を有するセルロース系を含有させることにより、耐食性、密着性、成形性をバランスよく取れるからである。セルロース系樹脂は網状構造を有するため、透水率も低く抑え易く、かつ、腐食生成物である酸化物や水酸化物を安定に保持する作用も有する。従って、緻密な腐食反応生成物が金属基材に生成した時点で金属基材は保護皮膜で覆われることになることから、耐食性は著しく高められる。
【0017】
本発明に用いるセルロース系樹脂の分子量は特に限定されるものではないが、5000〜700,000の範囲の重量平均分子量を有しているものが好ましく、10,000〜500,000の範囲の重量平均分子量を有しているものが特に好ましい。重量平均分子量が5000未満では耐食性が不足し、700,000を超えると成形性に悪影響を及ぼす。
【0018】
本発明において用いるセルロース系樹脂の種類は特に限定されるものではないが、アセチルセルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、ニトロセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースが好適に用いられる。
【0019】
また、セルロース系樹脂のほかに、架橋剤を添加することが可能である。架橋剤を添加することにより、セルロース系樹脂の網状構造が更に緻密となり、塗膜の透水率が向上して耐食性が高められる。添加する架橋剤としては、特に限定されるものではないが、メラミンが好適に用いられる。
【0020】
塗料組成物におけるセルロース系樹脂の含有量は、5〜200g/リットル、好ましくは20〜100g/リットルである。セルロース系樹脂の添加量が5g/リットル未満では、塗料組成物の粘度が低くなり、塗膜を形成する際に十分な塗膜厚さを得難く、且つ、塗膜が架橋し難くなり、その結果、所望の耐食性及び塗膜密着性が得られ難くなる。一方、200g/リットルを超えたのでは、塗料組成物の粘度が高くなり過ぎ、被覆を形成する際に塗膜厚さが一定になり難く、良好な塗工性が得られない。
【0021】
また、塗膜を強固にするための架橋剤の添加量は、1〜50g/リットルが望ましい。架橋剤の添加量が1g/リットル未満では十分な架橋反応が生起せず、50g/リットルを超えると硬化が進行して成形性に悪影響を及ぼす。
【0022】
A−2.烏龍茶成分
本発明においては、塗料組成物中に上記樹脂成分に加えて烏龍茶成分が添加される。烏龍茶成分は、ホルムアルデヒドを吸着する機能を有する。烏龍茶成分は、塗料組成物の1リットル中に、0.05〜5g、好ましくは0.1〜1g含有される。烏龍茶成分が0.05g/リットル未満であるとホルムアルデヒド吸着性が得難く、5g/リットルより多いと吸着性が飽和し不経済となる。
【0023】
本発明に用いられる烏龍茶成分の製造方法は特に限定されるものではない。例えば、烏龍茶の葉や茎を、室温から所定温度に加熱する際に、水、酸性水溶液、含水エタノール、エタノール、含水メタノール、メタノール、アセトン、酢酸エチル又はグリセリン水溶液等の溶媒又はこれらの混合溶媒によって抽出した抽出物が用いられる。抽出液から溶媒を除去した抽出物を用いるだけでなく、抽出によって得られる抽出液(烏龍茶抽出成分と抽出溶媒からなる)としても、或いは、当該抽出液の濃縮液としても用いることができる。特に、室温水又は温水によって抽出した抽出液自体を塗料組成物に添加する方法が、ホルムアルデヒド吸着性の観点から好ましい。
【0024】
このような抽出によって得られる烏龍茶成分には、カテキン類(カテキン、ガロカテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート);タンニン類が含有される。その他、ケンフェロール、クエルセチン、ミリセチン等のフラボノイド;GODポリフェノール等のポリフェノール類;マロン酸、コハク酸、没食子酸等の有機酸;カフェイン;アミノ酸;糖類;ビタミン類;等の種々の成分が含有されている。
【0025】
上記カテキン類等の烏龍茶成分を塗料組成物に含有させることにより、ホルムアルデヒドの吸着性が高められる。烏龍茶抽出成分の中でも、カテキン類(カテキン、ガロカテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート)がホルムアルデヒド吸着性に大きく寄与する。特に、これらのカテキン類が会合した多量体、好ましくはカテキン2量体及び3量体が、ホルムアルデヒドの吸着性を高めるのに有効に作用する。このカテキンの2量体及び3量体は茶類の中でも特に烏龍茶に多く含まれているので、ホルムアルデヒド吸着性を確保するのために烏龍茶を塗料組成物の必須成分とするものである。
【0026】
A−3.緑茶成分及び紅茶成分
更に、本発明においては、上記の塗料組成物中に、烏龍茶成分に加えて緑茶成分及び紅茶成分の少なくともいずれか一方を添加する。これら緑茶成分及び紅茶成分は、烏龍茶成分によって吸着したホルムアルデヒドを組成物中に定着する機能を有する。したがって、緑茶成分や紅茶成分を塗料組成物中に添加することにより、吸着したホルムアルデヒドの脱着率が低減することにより定着性が高められる。結果的に、塗料組成物の吸着性が一層向上することになる。
【0027】
緑茶及び紅茶成分の少なくともいずれか一方は、塗料組成物の1リットル中に、0.05〜5g、好ましくは0.1〜1g含有される。これらの成分が0.05g/リットル未満ではホルムアルデヒド定着性が得難く、5g/リットルより多いと所望のホルムアルデヒド定着性が飽和し不経済となる。なお、これら含有量は、緑茶成分単独又は紅茶成分単独の場合にはそれぞれ単独含有量としてのものであり、緑茶成分と紅茶成分の両方を用いる場合には両者を合計した含有量としてのものである。
【0028】
本発明に用いられる緑茶成分及び紅茶成分の製造方法もまた、特に限定されるものではない。これら緑茶成分及び紅茶成分の製造方法としては、上記の烏龍茶成分の抽出方法と同様の方法が用いられる。緑茶成分及び紅茶成分のうちポリフェノール類が示すホルムアルデヒド定着性が特に優れているので、ポリフェノール類をより多く含有する緑茶成分や紅茶成分を添加するのが好ましい。
【0029】
なお、本発明で用いる烏龍茶成分はホルムアルデヒドだけでなく、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等の他のアルデヒド類、更には、他の種類の臭気成分等の吸着にも用いることができる。また、本発明で用いる緑茶成分、紅茶成分はホルムアルデヒドだけでなく、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等の他のアルデヒド類、更には、他の種類の臭気成分等の定着にも用いることができる。
【0030】
A−4.その他の成分
本発明の塗料組成物には、必要に応じて、貯蔵中の腐敗防止を目的とした有機銅系、有機ヨード系、イミダゾール系、イソチアゾリン系、ピリチオン系、トリアジン系、銀系等の抗菌・抗黴作用を有する防腐剤;タンニン酸、没食子酸、フイチン酸、ホスフィン酸等の防錆剤;ポリアルコールのアルキルエステル類、ポリエチレンオキサイド縮合物等のレベリング剤;相溶性を損なわない範囲で添加されるポリアクリルアミド、ポリビニルアセトアミド等の充填剤;アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩系等の界面活性剤;酸化亜鉛、酸化シリコン(シリカ)、酸化アルミ(アルミナ)、酸化チタン等の無機酸化物等;を添加することができる。
【0031】
本発明に係る塗料組成物は、液状組成物が通常用いられるが、樹脂等の成分の媒体となる溶媒は、各成分を溶解又は分散させるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、水等の水性溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルiso−ブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系溶剤、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、ペンタノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールアルキルエーテル系溶剤;ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコールアルキルエーテル系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル系溶剤、及びエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の一連のグリコールアルキルエーテル系溶剤のエステル化物等が挙げられ、その中でも水性溶媒が好ましく、水が特に好ましい。
【0032】
B.アルミニウム塗装板
次いで、アルミニウム塗装板について説明する。
B−1.アルミニウム材
本発明で用いるアルミニウム塗装板の基材となるアルミニウム板としては、純アルミニウム材及びアルミニウム合金材が用いられる。アルミニウム合金材としては、A1200、A3003、A5052等が用いられる。なお、本発明では、「アルミニウム材」又は単に「アルミニウム」の用語は、純アルミニウム材及びアルミニウム合金材の双方を含む意とする。
【0033】
B−2.化成処理皮膜、樹脂皮膜及び陽極酸化皮膜(第1層
本発明の塗料組成物を用いて、例えば熱交換器用アルミニウム板に耐食性塗膜を設けてアルミニウム塗装板を形成するには、まず、アルミニウム板の表面を脱脂処理して乾燥し、その表面に第1層として化成処理皮膜、樹脂皮膜及び陽極酸化皮膜の少なくともいすれか一つを形成する。化成処理皮膜、樹脂皮膜及び陽極酸化皮膜は、アルミニウム板に耐食性を付与すると共に、アルミニウム板と塗料組成物の塗膜との間に介在して当該塗膜の密着性を増加させるためのものである。
このような化成処理皮膜としては、クロム系、ジルコニウム系及びチタン系が用いられるが、その中でも、耐食性、塗膜密着性の観点からクロム系皮膜が好ましい。樹脂皮膜としては、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂及びアクリル系樹脂の少なくともいずれか一つを含むものが用いられ、耐食性及び成形性の観点からエポキシ系樹脂が好ましい。また、陽極酸化皮膜とは、アルミニウム材を陽極として酸化する際に表面に形成される酸化アルミニウムの皮膜である。
【0034】
樹脂皮膜のウレタン系樹脂としては、ジイソシアナートとグリコールとの重付加反応により得られるもの、脱塩酸剤の存在下でジアミンにグリコールのビスクロルギ酸エステルを作用させて得られるもの、ジアミンと炭酸エチレンとの反応により得られるもの、ω−アミノアルコールをクロルギ酸エステル又はカルバミン酸エステルに変えこれを縮合させて得られるもの、ビスウレタンとジアミンとの反応により得られるものが用いられる。ジイソシアナートとグリコールとの重付加反応により得られるものが多く用いられ、ジイソシアナートとしては、トリレンジイソシアナート(2,4−及び2,6−の混合物)が多く用いられ、水酸基を有する化合物としては、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレングリコールのようなエーテル系と、アジピン酸とエチレングリコールを縮合させたポリエステル系のものが多く用いられる。
【0035】
エポキシ系樹脂としては、例えると、ビスフェノール型、ノボラック型、グリシジルエーエル型などの環状脂肪族型、非環状脂肪族型などある。エポキシ樹脂のエポキシ当量としては、特に制限されるものではないが、エマルジョン化が容易で、かつこれを塗料として用いた際の防食性に優れる点から、150〜3000g/eqであることが好ましく、160〜1800g/eqであることが特に好ましい。これらの中でも、工業的汎用性及び耐食性が良好である点から、特にビスフェノール類を反応させて得られるエポキシ樹脂で好ましい。前記ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA等が挙げられ、1種のみを単独で使用しても、2種以上の混合物として使用しても良い。この中でも、工業的汎用性から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
【0036】
アクリル系樹脂としては、α、βモノエチレン系不飽和単量体とこれに重合可能な単量体との共重合体やブロック重合体、或いは、α、βモノエチレン系不飽和単量自体の重合体からなる樹脂が用いられる。
α、βモノエチレン系不飽和単量体としては、例えばアクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸nブチル、アクリル酸2エチルへキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸2エチルブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸3エトキシプロピル等);メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸nへキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸デシルオクチル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸2メチルへキシル、メタクリル酸3メトキシブチル等);アクリロニトリル;メタクリロニトリル;酢酸ビニル;塩化ビニル;ビニルケトン;ビニルトルエン;及びスチレン等が用いられる。
【0037】
上記α、βモノエチレン系不飽和単量体と共重合し得る単量体とは、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、エチレン、トルエン、プロピレン、アクリルアミド、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸2ヒドリキシエチル、メタクリル酸2ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、Nメチロールアクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸等が用いられる。
【0038】
化成処理皮膜の形成方法としては、塗布型処理方法、電解型処理方法、反応型処理方法等のいずれの方法を用いてもよい。処理皮膜の乾燥温度も任意である。上記方法のうち、成形性、塗膜密着性、耐食性に優れた塗布型クロメート法が好ましい。形成された化成処理皮膜は、金属元素換算で2〜50mg/mの皮膜量であるのが好ましく、5〜15mg/mであるのが特に好ましい。皮膜量が2mg/m未満では、耐食性、塗膜密着性が得られない。また、皮膜量が50mg/mを超えたのでは、耐食性が飽和し不経済である。
【0039】
樹脂皮膜の形成方法としては、後述する塗料組成物からなる塗膜の形成方法と同様の方法を採用することができ特に制限はないが、ロールコーターを用いる方法が特に好適に用いられる。樹脂皮膜の皮膜厚は、500〜10000mg/mである。皮膜厚が500mg/m未満であると十分な耐食性が得られない。また、10000mg/mを超えても、耐食性が飽和し不経済である。樹脂皮膜の皮膜厚は、好ましくは500〜8000mg/m、更に好ましくは1000〜5000mg/mである。なお、樹脂皮膜を形成するのに液状樹脂組成物を用いる場合には、成分の媒体としての溶媒は、成分を溶解又は分散させるものであれば特に限定されるものではなく、塗料組成物の溶媒として上述したものと同じ溶媒を用いることができ、その中でも水性溶媒が好ましく、水が特に好ましい。
【0040】
また、樹脂皮膜は、顔料成分及び染料成分のいずれか一方を含有することにより、塗料塗膜に高級感、着色性を付与することができる。樹脂皮膜の表面にホルムアルデヒド吸着性のセルロース系の塗料塗膜が形成され、この緻密なセルロース系塗膜の保護により顔料成分や染料成分の溶出が抑えられ、長期的に色調が付与されることが可能となる。顔料成分及び染料成分は、塗料分野で汎用に使用されているものであれば特に限定されない。顔料成分としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化クロム、硫化カドミウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、クレー、タルク、黄鉛、酸化鉄、カーボンブラック等の無機顔料;アゾ系、ジアゾ系、縮合アゾ系、チオインジゴ系、インダンスロン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ベンゾイミダゾール系、ペリレン系、ペリノン系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラピリジン系、ジオキサジン系等の有機顔料;が用いられる。また、染料成分としては、直接染料や反応染料、酸性染料、カチオン染料、バット染料、媒染染料等が用いられる。
【0041】
上記の顔料成分又は染料成分は、樹脂皮膜に少なくともいずれかが加えられる。すなわち、顔料成分又は染料成分として上述のものを単独又は2種類以上が含有される。樹脂皮膜中における顔料成分又は染料成分の少なくともいずれか一方は、樹脂皮膜用の組成物(溶液)の0.1〜5重量%含有されるのが好ましい。0.1重量%未満であると皮膜が十分に着色せず皮膜の確認が困難となり、5重量%を超えると耐食性を劣化してしまう。
【0042】
陽極酸化皮膜は、例えば、アルミニウム板を陽極とし電解液として硫酸、リン酸、シュウ酸等の酸、リン酸塩等のアルカリを用いた陽極酸化処理によって得られる。陽極酸化皮膜の厚さは、50〜10000nmであり、好ましくは100〜5000nmである。50nm未満では十分な耐食性が得られず、10000nmを超えても耐食性が飽和し不経済となる。
【0043】
B−3.塗膜(第2層)
次ぎに、このようにして形成した化成処理皮膜、樹脂皮膜及び陽極酸化皮膜の少なくとも一つ(第1層)の上に、上述の本発明に係る塗料組成物(セルロース系樹脂及び烏龍成分を必須成分とし、緑茶成分及び紅茶成分の少なくともいずれか一方を含有する場合もある)を主成分する塗膜(第2層)を100〜5000mg/mの厚さで形成する。塗膜厚が100mg/m未満であると、耐食性が得られない。また、塗膜厚が5000mg/m2を超えても、耐食性が飽和し不経済である。塗膜厚は、好ましくは200〜3000mg/mであり、より好ましくは500〜3000mg/mである。
【0044】
塗料組成物の塗布方法としては、ロールコーター法、ロールスクイズ法、ケミコーター法、エアナイフ法、浸漬法、スプレー法、静電塗装法等の方法が用いられ、塗膜の均一性に優れ、生産性が良好なロールコーター法が好ましい。ロールコーター法としては、塗布量管理が容易なグラビアロール方式や、厚塗りに適したナチュラルコート方式や、塗布面に美的外観を付与するのに適したリバースコート方式等を採用することができる。また、塗膜の乾燥には一般的な加熱法、誘電加熱法等が用いられる。
【0045】
塗膜形成する際の焼付けは、焼付け温度(到達表面温度)が180〜300℃で、焼付け時間が1〜60秒の条件で行うのが好ましい。塗膜形成における焼付け温度が180℃未満であったり、焼付け時間が1秒未満である場合には、塗膜が十分に形成されず塗膜密着性が低下する。焼付け温度が300℃を超えたり、焼付け温度が60秒を超える場合には、塗膜中の烏龍茶成分、緑茶成分、紅茶成分が分解してしまい、ホルムアルデヒドの吸着性を著しく低下させることになる。
【0046】
なお、本発明に係る組成物を塗布して塗膜を形成する基材としては、アルミニウム材だけでなく、他の金属、他の金属からなる合金、セラミックス、プラスチック樹脂等の目的に応じた種々の材料を用いることもできる。
【0047】
C.プレコートアルミニウムフィン材
次に、本発明に係るプレコートアルミニウムフィン材は、上述のアルミニウム塗装板の表面にプレス成形加工用の揮発性プレス油を塗布してからスリット加工やコルゲート加工等の成形加工を施すことにより、所望形状のフィン材としたものである。このようなプレコートアルミニウムフィン材は、例えば空調機用熱交換器のフィン材として好適に用いられるが、フィン材間の結露等を防止する用途であれば、空調機用熱交換器に限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明する。
【0049】
実施例1〜26及び比較例1〜6
表1に示すように、実施例1では、樹脂成分としてセルロース系樹脂を含有し、烏龍茶成分として、所定のポリフェノール、カテキン、カフェイン等を含有するものを含有する塗料組成物を調製した。実施例2〜26及び比較例3〜6では、架橋剤としてメラミンを含有させた。実施例16〜26では、烏龍茶成分に加えて緑茶成分及び紅茶成分の少なくとも一方も添加した。比較例1ではセルロース系樹脂に代わってアクリル系樹脂を用い、比較例2ではセルロース系樹脂に代わってポリエステル系樹脂を用いた。比較例4では、セルロース系樹脂を含有するが茶成分を含有しない。比較例5及び6では、セルロース系樹脂と緑茶成分を含有する。
なお、塗料組成物の溶媒には水を用いた。表1に示す各成分の含有量は、溶媒である水の1リットル中における重量である。
【0050】
【表1】

【0051】
なお、烏龍茶抽出液、緑茶抽出液及び紅茶抽出液は、表2の成分にて調整された溶出液であり、それぞれの烏龍茶抽出液、緑茶抽出液及び紅茶抽出液において、Aは市販の烏龍茶抽出液であり、Bは市販の烏龍茶葉からの抽出液であり、C〜Fは市販の烏龍茶葉からの抽出液をカラムに吸着し、これをアセトン含有水溶液に溶出し、各成分を調整した烏龍茶抽出液である。緑茶Gは、市販の緑茶抽出液であり、Hは市販の緑茶葉からの抽出液であり、I及びJは市販の緑茶葉からの抽出液をカラムに吸着し、これをアセトン含有水溶液に溶出し、各成分を調整した緑茶抽出液であり、Kは市販の紅茶葉からの抽出液である。ポリフェノール等の各成分は、高速液体クロマト法により測定した。
なお、表2に示すポリフェノール、カテキン、カフェイン、その他茶成分は、抽出液から抽出溶媒を除去した抽出物であり、各成分の重量%は、この抽出物全体を100%とした場合の数値を表す。
【0052】
【表2】

【0053】
アルミニウム材表面には、塗料組成物の塗膜を以下のようにして形成した。アルミニウム合金板(1100−H24材、0.100mm厚さ)を弱アルカリ脱脂し、水洗した後に乾燥した。次いで、このように処理したアルミニウム合金板表面に、塗布型クロメート(日本ペイント社製SAT427)を塗布、焼付けし、金属クロム換算にてクロム付着量が10mg/m2 の塗布型クロメート系の化成皮膜を第1層として形成した下地処理板を作製した。次に、この下地処理板に、表1に示す各塗料組成物をロールコーターにて塗布し、到達板表面温度(PMT)250℃で20秒間焼付けしてアルミニウム塗装板を得た。形成された塗膜の付着量は1000mg/mであった。
【0054】
このようにして作製したアルミニウム塗装板の耐食性、塗膜密着性及びホルムアルデヒド吸着性を以下の方法で測定、評価した。結果を表3に示す。
【0055】
【表3】

【0056】
〔耐食性〕
JIS Z2371に基づき、SST1000時間行い、レイティングナンバー(L.N.)により耐食性を測定した。L.N.が9.0以上を合格とした。
【0057】
〔塗膜密着性〕
JIS H4001における付着性試験を用い、碁盤目におけるテープ剥離後の残存個数を測定した。100個の内95個(95/100)以上残存した場合を、性能を満足する合格とした。
【0058】
〔ホルムアルデヒド吸着性〕
1.吸着試験
ホルムアルデヒド雰囲気の容器中に各アルミニウム塗装板を配置し、ホルムアルデヒドを吸着させた後の容器内のホルムアルデヒド濃度(Ca)を測定した。Caは未吸着のホルムアルデヒド量に対応する濃度である。測定条件は以下の通りであった。なお、下記のホルムアルデヒド初期濃度(15ppm)から上記ホルムアルデヒド濃度Caを差し引いた濃度(Cb)が、アルミニウム塗装板によるホルムアルデヒド吸着量に対応する濃度である。
試料の面積 :100×200 mm
試料容器 :5リットルデシケータ
容器のガス量:5リットル
ガス初期濃度:ホルムアルデヒド 15ppm
ガス測定方法:ホルムアルデヒド検知管
試験室温度 :20℃
測定時間 :24時間
【0059】
2.脱着試験
大気雰囲気の容器中にホルムアルデヒドを吸着した各アルミニウム塗装板を配置し、ホルムアルデヒドを脱着させた後の容器内のホルムアルデヒド濃度(Cc)を測定した。測定条件は以下の通りであった。なお、上記ホルムアルデヒド濃度Cbから上記ホルムアルデヒド濃度Ccを差し引いた濃度(Cd)が、アルミニウム塗装板によるホルムアルデヒド定着量に対応する濃度である。したがって、ホルムアルデヒドの定着率(%)は、(Cd/Cb)×100で表わされる。
試料の面積 :100×200 mm
試料容器 :5リットルデシケータ
容器のガス量:5リットル
ガス初期濃度:ホルムアルデヒド 0ppm
ガス測定方法:ホルムアルデヒド検知管
試験室温度 :20℃
測定時間 :24時間
【0060】
吸着後の容器内のホルムアルデヒド濃度(Ca)が10ppm未満の場合であって、定着率が50%以上の場合を、ホルムアルデヒド吸着性を満足する合格とした。
【0061】
表3に示すように、実施例1〜26ではいずれも、耐食性、塗膜密着性、ホルムアルデヒド吸着性を満足するものである。
上記の実施例の中でも、烏龍茶抽出物A、B、D、Eを含有しているものは、ホルムアルデヒド吸着性に優れている。実施例6、8、9、13、14は、カテキン類の中でも、2量体、3量体のカテキン含有量が多い烏龍茶成分を含むので、更にホルムアルデヒド吸着性に優れている。また、緑茶成分及び紅茶成分の少なくともいずれか一方を含有している実施例16〜26は、ホルムアルデヒド定着性に優れている。なお、ホルムアルデヒドの吸着率(%)とは、{(15−Ca)/15}×100で表されるものである。
また、メラミン架橋剤の添加した塗料組成物が、一般に耐食性に優れていた。
【0062】
比較例1ではセルロース系樹脂の代わりにアクリル系樹脂を、比較例2ではセルロース系樹脂の代わりにポリエステル系樹脂を使用したため、耐食性を満足することはできなかった。比較例3は、セルロース系樹脂の含有量が3g/リットルと少ないため、耐食性及び塗膜密着性を満足することができなかった。比較例4は、烏龍茶を含有していないため、ホルムアルデヒドの吸着性を満足することができなかった。比較例5、6は、烏龍茶の代わりに、緑茶を配合したため、ホルムアルデヒドの吸着性を満足することができなかった。
【0063】
実施例27〜52及び比較例7〜14
表4に示すように、実施例27〜52及び比較例7〜11、13、14の塗料組成物では、樹脂成分としてセルロース系樹脂を含有し、架橋剤としてメラミンを含有する。実施例27〜52、比較例7〜11、13では、烏龍茶成分として、所定のポリフェノール、カテキン、カフェイン等を含有する烏龍茶Aを含有する。実施例44〜48、51、52、比較例10、11、13及び14では緑茶成分も添加した。比較例12は、第1層である樹脂皮膜のみで塗膜を備えていない。比較例14は烏龍茶成分を含有していない。実施例46〜52及び比較例10、11、13、14では、界面活性剤としてリン酸エステルを含有している。
【0064】
【表4】

【0065】
アルミニウム合金板(1100−H24材、0.100mm厚さ)を弱アルカリ脱脂、水洗、乾燥後に、所定の化成処理皮膜、樹脂皮膜及び陽極酸化皮膜の少なくともいずれか一つからなる第1層を形成して下地処理板を作製した。化成処理種、金属元素換算による付着量、樹脂皮膜の付着量及び陽極酸化皮膜の膜厚の測定結果を表4に示す。実施例49及び51では、第1層を化成処理皮膜及び樹脂皮膜によって形成した。実施例50及び52では、第1層を樹脂皮膜及び陽極酸化皮膜によって形成した。実施例46〜52及び比較例12〜14の樹脂皮膜には、着色剤を含有させた。次に、このようにして得た下地処理板に各塗料組成物をロールコーターにて塗布し、250℃で20秒焼付けし、アルミニウム塗装板を得た。
【0066】
このようにして作製したアルミニウム塗装板の耐食性、塗膜密着性、着色性及びホルムアルデヒド吸着性を測定、評価した。結果を表5に示す。耐食性、塗膜密着性及びホルムアルデヒド吸着性の測定及び評価は、実施例1〜26及び比較例1〜6と同じである。
【0067】
【表5】

【0068】
〔色調〕
着色性のうちの色調は、以下のようにして測定した。水に対する溶出試験として、1dmの試料片を精製水500ml(水温:27℃)に入れマグネチックスターラーで60時間攪拌した。溶出試験の前後における試料片のΔE(色差)を色差計にて測定した。浸漬後におけるΔEの減少量にて◎及び○を性能を満足する合格とした。
◎:ΔEの減少量が0.5以下であった。
○:ΔEの減少量が0.5〜1であった。
【0069】
〔色調持続性〕
着色性のうちの色調持続性は、以下のようにして測定した。所定の下地処理及び所定の塗料組成物で塗装したアルミニウム合金板の着色状態を色差計にてE値を測定し、顔料を加えない同様の塗装板との差ΔEとし、着色の度合いとした。◎及び○を性能を満足する合格とした。
◎:7≦ΔE
○:5<ΔE<7
×:ΔE≦5
【0070】
表5に示すように、実施例27〜52はいずれも、耐食性、塗膜密着性、着色性及びホルムアルデヒド吸着性を満足することができた。その中でも、緑茶成分を含んだ実施例44〜48、51及び52はホルムアルデヒド定着性に際立って優れている。また、実施例46〜52では顔料を含有したことから、長期に亘って色調持続性を発揮しており、良好な着色性を付与することができた。
【0071】
比較例7は第1層を備えておらず、比較例8はクロム付着量が少ないため、共に耐食性を満足することはできなかった。比較例9は、第1層の陽極酸化皮膜の厚さが8nmと薄かったため耐食性を満足することはできなかった。比較例10は、樹脂皮膜がポリエステル皮膜であったため耐食性を満足することができなかった。比較例11は、樹脂皮膜の付着量が少ないため耐食性を満足することができなかった。比較例12は、第2層である塗膜が形成されていないので色調持続性及びホルムアルデヒト吸着性を満足することができなかった。比較例13は、第2層である塗膜の付着量が少ないため耐食性、色調持続性及びホルムアルデヒト吸着性を満足することができなかった。比較例14は、第2層である塗膜に烏龍茶が含有されていないためホルムアルデヒト吸着性を満足することができなかった
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の塗料組成物を用いて、耐食性、塗膜密着性、着色性及びホルムアルデヒド吸着性において優れた性能を発揮する塗膜を表面に備えるアルミニウム塗装板が得られ、さらにこのアルミニウム塗装板を加工成形することにより得られる空調機の熱交換用フィン等の熱交換器は長期に亘って優れた熱交換効率を発揮する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース系樹脂を5〜200g/リットルと、烏龍茶成分を0.05〜5g/リットルとを含有することを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
緑茶成分及び紅茶成分の少なくともいずれか一方の0.05〜5g/リットルを更に含有する、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
クロム系、ジルコニウム系及びチタン系から成る群から選択される少なくとも一種の化成処理皮膜であって金属元素換算にて2〜50mg/m2の金属を含有する化成処理皮膜を、少なくとも一方の表面に備え、前記化成処理皮膜上に、請求項1又は2に記載の塗料組成物より形成した100〜5000mg/m2の塗膜を備えることを特徴とするアルミニウム塗装板。
【請求項4】
ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂及びアクリル系樹脂から成る群から選択される少なくとも一種を含有し、かつ、500〜10000mg/m2の樹脂皮膜を、少なくとも一方の表面に備え、前記樹脂皮膜上に、請求項1又は2に記載の塗料組成物より形成した100〜5000mg/m2の塗膜を備えることを特徴とするアルミニウム塗装板。
【請求項5】
50〜10000nmの厚さの酸化アルミニウムからなる陽極酸化皮膜を少なくとも一方の表面に備え、前記陽極酸化皮膜上に、請求項1又は2に記載の塗料組成物より形成した100〜5000mg/m2の塗膜を備えたアルミニウム塗装板。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか一項に記載のアルミニウム塗装板から成るプレコートアルミニウムフィン材。

【公開番号】特開2006−348105(P2006−348105A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−173617(P2005−173617)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【出願人】(000107538)古河スカイ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】