説明

塗料組成物及び塗装物品

【課題】 金属との密着性等に優れた塗料組成物であって、エラストマー用下塗り塗料組成物としても好適なものを提供する。
【解決手段】
エポキシ樹脂とアミン系硬化剤とを配合してなることを特徴とするエラストマー用下塗り塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラストマー用下塗り塗料組成物、フッ素ゴム塗料組成物及び塗装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
金属とフッ素ゴム層との密着力付与のため、旧来よりフェノール樹脂を含有する下塗り組成物が提案されてきた。その例としては、ポリアミドイミド樹脂、ノボラック型フェノール樹脂及びヘキサメチレンテトラミンを含有してなるエラストマー用下塗り塗料組成物等がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
フェノール樹脂を含有する下塗り組成物を改良するため、近年は、エポキシ樹脂を添加した組成物が提案されている。
エポキシ樹脂をも用いたエラストマー用下塗り塗料組成物として、ノボラック型エポキシ樹脂、ノボラック型p−置換フェノール樹脂、イミダゾール化合物及びフッ素ゴム配合物を含有してなるエラストマー用下塗り塗料組成物(例えば、特許文献2参照。)、クレゾールノボラック変性エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラックフェノール樹脂及びイミダゾール化合物を配合したプライマー(例えば、特許文献3参照。)等が提案されている。
【0004】
エポキシ樹脂をも用いた塗料組成物としてはまた、未加硫ゴムコンパウンドとフェノール樹脂又はエポキシ−フェノール樹脂との混合物を硬化被膜として金属板に直接積層したものが提案されている(例えば、特許文献4参照。)。しかしながら、この硬化被膜はフェノール系樹脂を必須成分としており、軟性に乏しく金属との密着性に劣る問題、また、特にゴムの量を増やすと密着性が低下し、樹脂の量を増やすと軟性が乏しくなる問題がある。
【0005】
フェノール樹脂とエポキシ樹脂とを添加した塗料組成物を用いたものとしては、また、金属板とフッ素ゴム層との間に、シラン系下塗り剤塗布後、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノール樹脂及び第3アミン化合物を含有する上塗り接着剤を設けた積層体が提案されている(例えば、特許文献5参照。)。
しかしながら、この下塗り層は、やはりフェノール系樹脂を必須成分とすることから、軟性が乏しく金属との密着性に劣る問題があるほか、積層体としては、上塗り接着剤の膜厚を厚くすると密着力が向上するものの軟性が低下する問題、上塗り接着剤の膜厚を薄くすると軟性が向上するものの密着力が低下する問題がある。
【特許文献1】特開昭58−187478号公報
【特許文献2】特開平6−88062号公報
【特許文献3】特開平7−18248号公報(〔0018〕)
【特許文献4】特開平11−1688号公報
【特許文献5】特開2004−76911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記現状に鑑み、金属との密着性等に優れた塗料組成物であって、エラストマー用下塗り塗料組成物としても好適なものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、エポキシ樹脂とアミン系硬化剤とを配合してなることを特徴とするエラストマー用下塗り塗料組成物である。
本発明は、エポキシ樹脂とアミン系硬化剤とフッ素ゴムとを配合してなることを特徴とするフッ素ゴム塗料組成物である。
本発明は、金属板、下塗り層及びフッ素ゴム層がこの順に積層されてなる塗装物品であって、上記下塗り層は、上記金属板の片面若しくは両面に上記エラストマー用下塗り塗料組成物を塗装することにより形成した層であることを特徴とする塗装物品である。
以下に本発明を詳細に説明する。
【0008】
本発明のエラストマー用下塗り塗料組成物は、エポキシ樹脂とアミン系硬化剤とを配合してなるものである。
上記エラストマー用下塗り塗料組成物は、例えば、金属等の基材にエラストマー層等を積層するに際し、該エラストマー層等と基材との間の接着層を形成することができる。上記エラストマー用下塗り塗料組成物は、エラストマー層との接着性向上の点で、エラストマーをも配合してなるものであってもよい。該下塗り塗料組成物におけるエラストマーとしては、層間接着性向上の点で、上層に使用するエラストマーと同じ種類のエラストマーを配合することが好ましく、例えば、フッ素ゴム等が挙げられる。
【0009】
本発明のフッ素ゴム塗料組成物は、エポキシ樹脂とアミン系硬化剤とフッ素ゴムとを配合してなるものである。上記フッ素ゴム塗料組成物を用いて得られる塗膜は、フッ素ゴムを配合してなるものであり、該塗膜上に、例えばフッ素ゴムその他のエラストマー等を有する上塗り層等の上層を形成する必要がない。
【0010】
本発明のエラストマー用下塗り塗料組成物と本発明のフッ素ゴム塗料組成物とは、上記のとおり、少なくとも、エポキシ樹脂とアミン系硬化剤とを配合してなる塗料組成物である点で共通する。用い得るエポキシ樹脂及びアミン系硬化剤並びに後述のフッ素ゴム、硬化触媒、充填剤、受酸剤、液状担体等は、それぞれ、両塗料組成物について共通する。本明細書において、これら両塗料組成物に共通する事項について以下に述べるが、その際、これら両塗料組成物を総称して「本発明の塗料組成物」ということがある。
【0011】
本明細書において、エポキシ樹脂は、樹脂を構成する分子中にエポキシ基を有するものである。該エポキシ樹脂としては、上記分子がフェノール性水酸基を有しないものが好ましい。
本発明におけるエポキシ樹脂は、好ましくは、ノボラック型エポキシ樹脂である。該ノボラック型エポキシ樹脂は、通常、ノボラック型フェノール樹脂におけるフェノール性水酸基にエポキシ基が結合してなる構造を有する分子からなるものである。本発明において、ノボラック型エポキシ樹脂としては、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0012】
本発明におけるエポキシ樹脂は、軟化点が一般に50〜110℃の範囲内にある。該軟化点は、好ましい下限が90℃であり、好ましい上限が96℃である。
本明細書において、上記軟化点は、JIS K 7234に規定の環球法にて測定した値である。
【0013】
本発明におけるエポキシ樹脂は、耐熱性の点で、エポキシ当量が150g/eq以上であることが好ましく、210〜240g/eqであることがより好ましい。
本明細書において、エポキシ当量とは1g当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数を意味する。
【0014】
本発明におけるアミン系硬化剤としては、特に限定されず、モノアミン、ジアミン、トリアミンの何れであってもよいが、モノアミン又はジアミンであることが好ましく、硬化性の点でジアミンであることがより好ましい。
上記アミン系硬化剤は、耐熱性の点で、芳香族アミンであることが好ましい。芳香族アミンとしては、第二アミン、第三アミンであってもよいが、硬化反応性の点で、第一アミンが好ましい。
上記アミン系硬化剤としては、ポットライフが長い点で、芳香族アミンが好ましく、なかでも芳香族ジアミンであることがより好ましい。
上記芳香族ジアミンとしては、例えば、メタフェニレンジアミン〔MPDA〕、メチレンジアニリン〔DDM〕、ジアミノジフェニルスルホン〔DDS〕、4−クロロ−o−フェニレンジアミン〔MOCA〕等が挙げられるが、中でも、DDSが好ましい。
本発明におけるアミン系硬化剤は、1種のみ配合するものであってもよいし、2種以上を混合して配合するものであってもよい。
【0015】
本発明の塗料組成物において、上記アミン系硬化剤は上記エポキシ樹脂1当量(g/eg)に対し0.5〜1.5当量(Hg/eg)であることが好ましい。上記アミン系硬化剤の配合割合は、上記エポキシ樹脂1当量(g/eg)に対し、より好ましい下限が0.8当量(Hg/eg)であり、また、より好ましい上限が1.2当量(Hg/eg)である。
【0016】
本発明の塗料組成物におけるフッ素ゴムとしては、特に限定されないが、架橋性の点で、主鎖に−CH−を有する繰り返し単位からなる含フッ素共重合体が好ましく、主鎖にビニリデンフルオライド[VdF]単位を有する弾性状含フッ素共重合体がより好ましい。
上記弾性状含フッ素共重合体としては、例えば、VdF/ヘキサフルオロプロピレン[HFP]共重合体、VdF/テトラフルオロエチレン[TFE]/HFP共重合体、エチレン[Et]/HFP共重合体、TFE/プロピレン[Pr]共重合体等が挙げられるが、VdF/ヘキサフルオロプロピレン[HFP]共重合体が好ましい。
本発明において、上記含フッ素重合体は、1種又は2種以上を用いることができる。
上記フッ素ゴムは、一般に、エポキシ樹脂100質量部に対し0.1〜50質量部の量で配合することができる。
【0017】
本発明の塗料組成物は、上述のエポキシ樹脂及びアミン系硬化剤に加え、必要に応じ、硬化触媒等を配合するものであってもよい。
【0018】
本発明の塗料組成物は、充填剤をも含有するものであってもよい。
上記充填剤としては特に限定されず用途に応じて選択することができるが、液状担体として有機溶剤を用いる場合、一般に、吸水率が低いものが好ましい。本発明における充填剤としては、例えば、カーボンブラック、二硫化モリブデン、ホワイトカーボン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、珪酸カルシウム等が挙げられ、なかでも、珪酸カルシウム等が好ましい。
本発明において、上記充填剤は、必要に応じて、1種類のみであってもよいし、複数種類を配合することもできる。
上記充填剤は、使用するエポキシ樹脂等の種類、添加量等に応じた量を適宜配合することができる。
【0019】
本発明の塗料組成物は、フッ素ゴムを配合したものである場合、所望により、受酸剤等をも含有するものであってもよい。
上記受酸剤としては、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト類などの複塩等が挙げられる。
上記受酸剤は、その活性度、フッ素ゴムの含有量や用いる加硫系等に応じた量を、適宜含有することができるが、通常、フッ素ゴムの固形分100質量部に対し、1〜40質量部であることが好ましい。
【0020】
本発明の塗料組成物は、上述の各成分を配合してなるものであれば特に限定されず、例えば、液状体であってもよいし、固体であってもよい。液状体としては、例えば、上述の成分に加え、更に、液状担体をも含有してなるもの等が挙げられる。
【0021】
本発明の塗料組成物における液状担体としては、有機溶剤を用いることが好ましい。
上記有機溶剤としては特に限定されないが、例えば、メチルエチルケトン〔MEK〕、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸ブチル、酢酸イソペンチル等のエステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;トルエン、キシレン等の炭化水素類;N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類等を用いることができる。
本発明の塗料組成物は、上記液状担体を1種のみ用いるものであってもよいし、2種以上の液状担体を用いるものであってもよい。
本発明において、上記液状担体の使用量は、上記塗料組成物に配合するエポキシ樹脂及びアミン系接着剤の種類に応じて適宜調整することができる。
【0022】
本発明の塗料組成物は、上述の各成分を混合することにより調製することができるし、上述の各配合物を液状担体に分散又は溶解させて使用することもできる。
本発明のフッ素ゴム塗料組成物は、フッ素ゴムを配合するに際し、フッ素ゴムと所望により用いる添加剤とを混練してコンパウンドとし、このコンパウンドを液状担体に分散又は溶解させたのち、予めエポキシ樹脂とアミン系硬化剤とを添加した液状担体を配合することにより調製することが好ましい。本発明のエラストマー用下塗り塗料組成物がフッ素ゴムを配合したものである場合も同様である。
【0023】
本発明の塗料組成物は、上述の成分を配合してなるものであるので、塗膜に加工したものであっても良好な軟性を有し、曲げ加工を行っても亀裂や剥離が発生しない、いわゆる耐屈曲性に優れており、また、金属との密着性及び耐薬液性に優れたものである。また、上記塗料組成物を用いて得られる塗装物品は、剪断試験により測定される破断強度が高い。
上記塗料組成物は、硬化剤として上述のアミン系硬化剤を配合してなるものであるので、ポットライフが長く、アミン系硬化剤の種類を適宜選択することにより上市用に一液型組成物として調製することもできる。
【0024】
本発明の塗料組成物を適用する基材としては、本発明による密着力を充分に発揮し得る点で、金属が好ましい。
上記基材は、金属である場合、上記塗料組成物を塗布する前に表面を脱脂、洗浄したものであることが好ましい。
【0025】
本発明のエラストマー用下塗り塗料組成物は、フッ素ゴム用下塗り塗料組成物であることが好ましい。
該フッ素ゴム用下塗り塗料組成物は、上層におけるエラストマーとしてフッ素ゴムを用いるものである。
該上層におけるフッ素ゴムとしては、特に限定されず、上述の例示のものが挙げられるが、VdF/HFP共重合体等が好ましい。
【0026】
本発明のエラストマー用下塗り塗料組成物を接着層として用い該接着層上に接し積層させる上層としては、特に限定されないがアミンを含有するものが好ましい。該上層がアミンを含有するものであると、該接着層を形成するために上記下塗り塗料組成物を金属等の基材上に適用し、得られる下塗り塗布膜上に上層用塗料組成物を適用した場合、該上層用塗料組成物中のアミンが下塗り塗布膜中に浸入して来て、下塗り塗布膜との界面でも硬化を促進することとなり、得られる下塗り層と上層との層間接着性を著しく向上することができる。
【0027】
本発明のエラストマー用下塗り塗料組成物を用いて形成した下塗り層は、厚みが0.5〜10μmであることが好ましく、上層は厚みが5〜50μmであることが好ましい。
【0028】
本発明のエラストマー用下塗り塗料組成物は、例えば、(1)予め液状担体に溶解若しくは分散させたエラストマー用下塗り塗料組成物を基材上に塗布し、乾燥又は加熱乾燥し、(2)得られる下塗り塗布膜上に上層用塗料組成物を塗布し乾燥した後、加熱を行うことにより硬化させることができる。
本発明のフッ素ゴム塗料組成物は、例えば、予め液状担体に溶解若しくは分散させたフッ素ゴム塗料組成物を基材上に塗布し、乾燥又は加熱乾燥を行うことにより硬化させることができる。
上記エラストマー用下塗り塗料組成物及び本発明のフッ素ゴム塗料組成物の塗布は、ディスペンサーコーティング、スクリーンコーティング、ハケ塗り、ディップ塗装、フローコーター塗装等、公知の方法にて基材上に塗布することができる。
上記各工程における乾燥は、使用するエラストマー用下塗り塗料組成物の組成や量等に応じて適宜設定することができる。
上記(1)における加熱温度は、上層の種類等に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、100〜250℃であることが好ましく、より好ましい下限が120℃であり、より好ましい上限が200℃である。本発明のフッ素ゴム塗料組成物の塗装における加熱温度についても同様である。
【0029】
本発明の塗料組成物は、基材との密着性、耐熱性、耐薬液性等が要求される分野において使用することができ、例えば、各種シート・ベルト類;O−リング、ダイヤフラム、バルブシール、化学プラント用ガスケット、エンジンガスケット等のシーリング材;耐薬品性チューブ、燃料ホース、継手等の薬液等流体輸送部材;複写機、プリンター、ファクシミリ等のOA機器用のロール(例えば、定着ロール、圧着ロール)又は搬送ベルト等をコーティングを用いて作製する際に使用することができ、中でも、ガスケットに好適に使用することができる。
【0030】
基材、下塗り層及びフッ素ゴム層がこの順に積層されてなる塗装物品であって、上記下塗り層は、上記基材の片面若しくは両面に本発明のエラストマー用下塗り塗料組成物を塗装することにより形成した層であるものも本発明の一つである。
上記基材としては特に限定されないが、金属板であることが好ましい。
本発明の塗装物品におけるフッ素ゴム層は、上述の本発明のエラストマー用下塗り塗料組成物の上層に用い得るフッ素ゴムからなる層と同じであってよい。
上記塗装物品において、上記下塗り層は厚みが0.5〜10μmであることが好ましく、上記フッ素ゴム層は厚みが5〜50μmであることが好ましい。
本発明の塗装物品は、下塗り層が上述の本発明のエラストマー用下塗り塗料組成物からなるものであるので、金属板とフッ素ゴム層との密着性、耐薬液性等に優れており、剪断試験により測定される破断強度が大きい。
【0031】
本発明の塗装物品は、本発明の塗料組成物の用途に関し挙げた製品等、金属板等の基材との密着性、耐熱性、耐薬液性等が要求される分野において使用することができ、ガスケット、特にエンジンガスケット、自動車用ガスケット等における金属被覆材として好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明のエラストマー用下塗り塗料組成物及びフッ素ゴム塗料組成物は、上述の構成よりなるものであるので、特に金属との密着性が高く、耐薬液性にも優れ、例えばエンジンガスケットに用いた場合、エンジンオイル、特にロングライフクーラント〔LLC〕に対する耐性が良好であることに加え、剪断試験により測定される破断強度が大きい塗装物品を得ることができ、更に、ポットライフが長く、一液型組成物として上市することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例により限定されるものではない。
本実施例及び比較例において、特に説明しない限り、「部」は「質量部」を表す。
【0034】
実施例1
(1)エラストマー用下塗り塗料組成物の調製
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポシキ当量:218g/eg)に対し、アミン系硬化剤(製品名:ジアミノジフェニルスルフォン、三井東圧化学製)をエポキシ当量1g/egに対し1Hg/egとなる割合で配合し、上記エポキシ樹脂と上記アミン系硬化剤との合計質量が3%になるようメチルエチルケトン〔MEK〕に溶かして、エラストマー用下塗り塗料組成物を得た。
(2)塗装物品の作成
予めアセトン洗浄しておいたSUS301板(縦100mm×横50mm×厚み0.5mm)に、得られたエラストマー用下塗り塗料組成物をディップ塗装して、風乾後、200℃にて5分乾燥し、冷却後、フッ素ゴム層として、フッ素ゴム塗料(ダイキン工業(株)製ダイエルDPA−C4)をフローコーターにて塗装し、100℃で30分乾燥した後に、200℃で30分焼成して、下塗り層厚み1μm、フッ素ゴム層厚み25μmの塗装板(塗装物品)を得た。
【0035】
比較例1
アミン系硬化剤の代わりにビスフェノールA硬化剤を使用する以外は実施例1と同じ方法により接着剤組成物を調製し、塗装物品を作製した。
【0036】
比較例2
アミン系硬化剤の代わりに脂環式系四塩基酸無水物硬化剤を使用する以外は実施例1と同じ方法により接着剤組成物を調製し、塗装物品を作製した。
【0037】
実施例及び比較例で作成した塗装板について、耐熱水性及び耐不凍液性を以下のようにして評価した。
<耐熱水性>
500ml容積の瓶にイオン交換水400mlを注入し、実施例1、比較例1又は比較例2の塗装板を各2枚入れて密閉し、120℃にて250時間、塗装板を浸漬した。
浸漬後、塗装板を取り出して洗浄、乾燥し、瞬間接着剤(スリーボンド社製)を使用して各塗装板のフッ素ゴム層塗装面同士2cmを張り合わせ、万能試験機(オリエンテック社製)で剪断試験を実施した。
破断面がゴム層内にあり基材の露出がなく、初期評価からの性能低下のないものを○、破断面がゴムとプライマーとの間又はプライマー層内にあり、初期評価からの性能低下のないものを△、破断面がゴムとプライマーとの間又ははプライマー層内にあり、初期評価からの性能低下があるものを×とした。
<耐不凍液性>
500ml容積の瓶に、市販のロングライフクーラント〔LLC〕の50容量%水溶液400mlを注入し、更に、実施例1、比較例1又は比較例2の塗装板を各2枚入れて密閉し、120℃にて500時間、塗装板を浸漬した。
浸漬後、塗装板を取り出して洗浄、乾燥し、上記瞬間接着剤を使用して、各塗装板のフッ素ゴム層塗装面同士2cmを張り合わせ、上記万能試験機で剪断試験を実施した。
破断面がゴム層内にあり基材の露出がなく、初期評価からの性能低下のないものを○、破断面がゴムとプライマーとの間又はプライマー層内にあり、初期評価からの性能低下のないものを△、破断面がゴムとプライマーとの間又はプライマー層内にあり、初期評価からの性能低下があるものを×とした。
各試験の結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
表1に示すように、実施例1の塗装板は、耐熱水性及び耐不凍液性ともに優れているが、比較例1及び比較例2の塗装板は、耐熱水性及び耐不凍液性ともに劣っていることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のエラストマー用下塗り塗料組成物及びフッ素ゴム塗料組成物は、上述の構成よりなるものであるので、特に金属との密着性が高く、耐薬液性にも優れ、例えばエンジンガスケットに用いた場合、エンジンオイル、特にLLCに対する耐性が良好であることに加え、剪断試験により測定される破断強度が大きい塗装物品を得ることができ、更に、ポットライフが長く、一液型組成物として上市することも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂とアミン系硬化剤とを配合してなる
ことを特徴とするエラストマー用下塗り塗料組成物。
【請求項2】
エポキシ樹脂は、ノボラック型エポキシ樹脂である請求項1記載のエラストマー用下塗り塗料組成物。
【請求項3】
エポキシ樹脂は、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂である請求項1記載のエラストマー用下塗り塗料組成物。
【請求項4】
アミン系硬化剤は、芳香族アミン系硬化剤である請求項1、2又は3記載のエラストマー用下塗り塗料組成物。
【請求項5】
フッ素ゴム用下塗り塗料組成物である請求項1、2、3又は4記載のエラストマー用下塗り塗料組成物。
【請求項6】
更に、フッ素ゴムをも配合してなる請求項1、2、3、4又は5記載のエラストマー用下塗り塗料組成物。
【請求項7】
エポキシ樹脂とアミン系硬化剤とフッ素ゴムとを配合してなる
ことを特徴とするフッ素ゴム塗料組成物。
【請求項8】
金属板、下塗り層及びフッ素ゴム層がこの順に積層されてなる塗装物品であって、
前記下塗り層は、前記金属板の片面若しくは両面に請求項1、2、3、4、5又は6記載のエラストマー用下塗り塗料組成物を塗装することにより形成した層である
ことを特徴とする塗装物品。
【請求項9】
エンジンガスケットである請求項8記載の塗装物品。

【公開番号】特開2008−308509(P2008−308509A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−276879(P2005−276879)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】