塗装ガラス容器の製造方法
【課題】ホットスタンプ工程のあとに、塗装工程の実施が可能であって、かつ、ホットスタンプ工程において、大面積の金属箔を転写する場合であっても、数種の装飾用塗料を塗布する場合であっても、均一な塗装を施した塗装ガラス容器が効率的に得られる塗装ガラス容器の製造方法を提供する。
【解決手段】下記(1)〜(4)の工程を含むことを特徴とする塗装ガラス容器の製造方法である。
(1)ガラス容器を準備する工程
(2)ガラス容器の所定箇所に印刷用インクを塗布して、半硬化させる工程
(3)加熱弾性体を用いてホットスタンピング箔を押圧し、印刷用インクに対応させて、表面の濡れ指数が25dyn/cm以上である金属箔を転写させる工程
(4)転写した金属箔の上から、ガラス容器の表面を塗装する工程
【解決手段】下記(1)〜(4)の工程を含むことを特徴とする塗装ガラス容器の製造方法である。
(1)ガラス容器を準備する工程
(2)ガラス容器の所定箇所に印刷用インクを塗布して、半硬化させる工程
(3)加熱弾性体を用いてホットスタンピング箔を押圧し、印刷用インクに対応させて、表面の濡れ指数が25dyn/cm以上である金属箔を転写させる工程
(4)転写した金属箔の上から、ガラス容器の表面を塗装する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットスタンプ工程を含む塗装ガラス容器の製造方法に関し、特に、ホットスタンプ工程において、大面積の金属箔を転写する場合であっても、数種の装飾用塗料を塗布する場合であっても、均一な塗装を施した塗装ガラス容器が得られる塗装ガラス容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化粧品容器などのガラス容器の表面には、ホットスタンプ方法によって、文字や図柄が盛り上がった美麗なメタリック加飾が施されていることが多い。
このようなホットスタンプ方法の代表的な実施方法について説明すれば、以下のとおりである。
【0003】
図10は、従来のホットスタンプ方法の一例を説明するための図である(特許文献1参照)。
かかるホットスタンプ方法によれば、まず、図10(A)に示されるガラス容器202の表面に、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を主成分とする印刷インクを、スクリーン印刷等の印刷法により印刷する。
次いで、図10(B)に示されるように、所望の文字や図柄に対応した隆起表示部204aを、ガラス容器202の表面上に、隆起させて形成する。
次いで、この隆起表示部204aを常温で放置するか又は所定温度で強制乾燥することにより、隆起表示部204aを実質上粘着性のない半硬化状態とする。
次いで、この隆起表示部204aの上面から、アルミ蒸着を施したホットスタンピング箔を当てた状態で加熱弾性体により圧着することにより、図10(C)に示されるように、隆起表示部204aにのみアルミニウムが転写し、アルミニウムからなるメタリック表示部206を形成する。
最後に、メタリック表示部206を含むガラス容器202を、所定温度で焼き付けることにより、隆起表示部204aが完全硬化して、接着剤204bとしての機能を発揮する。
かかるホットスタンプ方法によれば、従来の重ね印刷等と比較して、加飾時間が短い、重ね印刷の際の位置ずれがない、立体感が大きいといった効果を得ることができる。
【0004】
また、図11に示すように、耐摩耗性等を向上させるために、金属製品301に、下地印刷302を施した後、ホットスタンプ方法を実施して金属箔306を転写し、さらにその後に、転写された金属箔306の表面に、トップコーティング層307を形成する方法が提案されている(特許文献2参照)。
すなわち、金属製品301の表面に印刷手段によって下地印刷302を施した後に、所定箇所に、紫外線硬化型インキまたは電子線硬化型インキ303を隆起させた状態で印刷し、その上からホットスタンプ方法を施して金属箔306を転写し、最後に、転写された金属箔306の表面に、トップコーティング層307を形成する方法である。
【0005】
さらに、耐摩耗性等を向上させるために、ホットスタンプ方法によって転写される金属箔の表面に、保護層やクリヤー保護塗装膜を予め形成する方法が提案されている(特許文献3および4参照)。
すなわち、クリヤー保護塗装膜を形成するために、水酸基価(OH価)が、30〜95%のポリオールを主剤とした二液反応性ウレタン系塗料を使用し、かつ、保護層を形成する樹脂として、二液反応性ウレタン系塗料と相溶性を有するアクリル樹脂や塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体等を使用する方法が提案されている。
【特許文献1】特公昭55−23222号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平7 −205536号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平8 −71490号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開平10−236090号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜2に記載されたホットスタンプ方法では、転写された金属箔の上から、所定の装飾用の塗装を施すことができないという問題が見られた。すなわち、ホットスタンピング箔から金属箔が選択的かつ容易に剥離するように、金属箔の表面に剥離層が設けてあったり、剥離剤が塗布されていたりするため、装飾用塗料がはじかれてしまい、均一に塗装を施すことができないという問題が見られた。特に、数種の装飾用塗料を塗布する場合は、塗装むらが著しく大きくなって、所望の塗装を施すことができないという問題が見られた。
【0007】
また、特許文献3〜4に記載されたホットスタンプ方法では、保護層やクリヤー保護塗装膜を形成するための樹脂の種類が過度に制限されてしまい、かつ、水酸基価(OH価)が高いために、金属箔が腐食しやすいという問題が見られた。また、保護層やクリヤー保護塗装膜に起因して、ホットスタンプした際の剥離性が低下し、大面積の金属箔を転写することは困難であるという問題が見られた。さらに、保護層やクリヤー保護塗装膜の上から装飾用塗料を塗布した場合、その表面の剥離層や剥離剤によって、当該装飾用塗料がはじかれてしまい、特許文献1〜2と同様に、均一に塗装を施すことができないという問題が見られた。
【0008】
もちろん、金属箔の裏面に、印刷インクとの間の密着性を高めるための接着層を設けることにより、金属箔の表面における剥離層の厚さや、剥離剤の塗布量を低減する試みも行っている。
しかしながら、不完全な金属箔の転写状態しか得られず、特に、大面積の金属箔を精度良く転写することは困難であるという問題が見られた。
【0009】
そこで、本発明の発明者らは、鋭意研究した結果、ホットスタンピング箔を押圧する際の表面の濡れ指数としての表面張力を所定範囲に制御することにより、上述した問題を解決することができることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、ホットスタンプ工程のあとに、塗装工程の実施が可能であって、かつ、ホットスタンプ工程において、大面積の金属箔を転写する場合であっても、数種の装飾用塗料を塗布する場合であっても、均一な塗装を施した塗装ガラス容器が効率的に得られる塗装ガラス容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、下記(1)〜(4)の工程を含むことを特徴とする塗装ガラス容器の製造方法が提供され、上述した問題点を解決することができる。
(1)ガラス容器を準備する工程
(2)ガラス容器の所定箇所に印刷用インクを塗布して、半硬化させる工程
(3)加熱弾性体を用いてホットスタンピング箔を押圧し、印刷用インクに対応させて、表面の濡れ指数が25dyn/cm以上である金属箔を転写させる工程
(4)転写した金属箔の上から、ガラス容器の表面を塗装する工程
すなわち、このように実施することにより、ホットスタンプ工程のあとに、塗装工程の実施が可能であって、かつ、ホットスタンプ工程において、大面積の金属箔を転写する場合であっても、数種の装飾用塗料を塗布する場合であっても、均一な塗装を施した塗装ガラス容器を短時間かつ効率的に得ることができる。
なお、金属箔の表面の濡れ指数は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0011】
本発明の塗装ガラス容器の製造方法を実施するに際して、工程(3)において、金属箔の表面に、当該表面の濡れ指数を25dyn/cm以上とするための剥離調整層が形成してあるホットスタンピング箔を用いることが好ましい。
このように剥離調整層として、例えば、エポキシアクリレート樹脂や、エポキシ樹脂およびアクリレート樹脂の混合物を含む樹脂層を備えた金属箔を形成することにより、ホットスタンプ工程において、大面積の金属箔を転写する場合であっても、数種の装飾用塗料を塗布する場合であっても、密着性に優れた塗膜を確実に形成することができ、装飾性や耐久性に優れた塗装ガラス容器を効率的に製造することができる。
なお、ガラス容器の表面を塗装する工程を実施する前に、剥離調整層の表面の濡れ指数が所定範囲であることを確認するための確認工程を設けることが好ましい。
【0012】
本発明の塗装ガラス容器の製造方法を実施するに際して、工程(3)において、転写した金属箔の面積比率を、100cm2あたり、1〜80%の範囲内の値とすることが好ましい。
このように金属箔の面積比率を考慮して実施することにより、ホットスタンプ工程において、面積や形状等が異なる複数の金属箔を転写する場合であっても、密着性に優れた塗膜を確実に形成することができ、装飾性に優れた塗装ガラス容器をさらに短時間かつ効率的に製造することができる。
【0013】
本発明の塗装ガラス容器の製造方法を実施するに際して、工程(3)において、転写した金属箔の表面を洗浄し、当該表面の濡れ指数を25dyn/cm以上の値とすることが好ましい。
このように実施することにより、ホットスタンプ工程のあとに、塗装工程の実施が可能であって、密着性にさらに優れた塗膜を簡便な方法で確実に形成することができる。
【0014】
本発明の塗装ガラス容器の製造方法を実施するに際して、工程(3)において、金属箔を転写するとともに、当該金属箔の一部に、ガラス表面を露出させるための開口部を設けることが好ましい。
このように実施することにより、いわゆる中抜け模様の金属箔を転写する場合であっても、精度良くパターニングできるとともに、その金属箔の上に、密着性に優れた塗膜を形成することができる。
【0015】
本発明の塗装ガラス容器の製造方法を実施するに際して、工程(3)において、ガラス容器を回転させながら、加熱弾性体を用いてホットスタンピング箔を押圧することが好ましい。
このように実施することにより、ホットスタンプ工程において、円筒形等のガラス容器に対しても、装飾性に優れた金属箔を容易かつ精度良く転写することができる。
【0016】
本発明の塗装ガラス容器の製造方法を実施するに際して、工程(3)において、複数の金属箔を転写することが好ましい。
このように実施することにより、ホットスタンプ工程において、複数の金属箔が転写され、装飾性にさらに優れた塗装ガラス容器を効率的に得ることができる。
【0017】
本発明の塗装ガラス容器の製造方法を実施するに際して、工程(2)において、印刷用インクとして、消泡剤を含むエポキシ系接着剤を用いることが好ましい。
このように実施することにより、金属箔と、印刷インクとの間の密着性が向上し、装飾性に優れた金属箔を強固な状態で転写することができる。
【0018】
本発明の塗装ガラス容器の製造方法を実施するに際して、工程(4)において、ポリオール化合物を含むアクリルメラミン系塗料を被覆して、塗装することが好ましい。
このように実施することにより、ホットスタンプ工程のあとに、塗装工程の実施が可能であって、かつ、ホットスタンプ工程において、大面積の金属箔を転写する場合であっても、数種の装飾用塗料を塗布する場合であっても、均一な塗装を施した塗装ガラス容器を短時間かつ効率的に得ることができる。
【0019】
本発明の塗装ガラス容器の製造方法を実施するに際して、工程(1)において、表面に下地層を備えたガラス容器を準備することが好ましい。
このように実施することにより、装飾性にさらに優れた塗装ガラス容器を効率的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[第1の実施形態]
本発明におけるガラス容器に対するホットスタンプ方法は、下記(1)〜(4)の工程を含むことを特徴とする塗装ガラス容器の製造方法である。
(1)ガラス容器を準備する工程(工程(1)と称する場合がある。)
(2)ガラス容器の所定箇所に印刷用インクを塗布して、半硬化させる工程(工程(2)と称する場合がある。)
(3)加熱弾性体を用いてホットスタンピング箔を押圧し、印刷用インクに対応させて、表面の濡れ指数が25dyn/cm以上である金属箔を転写させる工程(工程(3)と称する場合がある。)
(4)転写した金属箔の上から、ガラス容器の表面を塗装する工程(工程(4)と称する場合がある。)
すなわち、図3および図4に示すように、工程(3)であるホットスタンプ工程において、大面積等の金属箔を転写する場合であっても、その上に、密着性に優れた塗膜を確実に形成することができ、その結果、装飾性や耐久性に優れた塗装ガラス容器を効率的に製造することができる。
以下、本発明の実施形態に係る塗装ガラス容器の製造方法につき、図3および図4等を適宜参照しながら、工程ごとに分けて具体的に説明する。
【0021】
1.ガラス容器準備工程
図3に示すガラス容器準備工程(1)において準備するガラス容器は、例えば化粧品容器や薬品収納用等に用いられるガラス容器であって、最終商品の用途、グレード等に適した形態を有するガラス容器を準備することが好ましい。
また、図3に示す次工程の印刷用インク塗布工程(2)において、ガラス容器との密着性にさらに優れた印刷用インクからなる隆起表示部を形成するために、サンドブラスト加工やフッ酸処理等によって、あらかじめ表面を粗らしたスモークドガラス容器を準備することも好ましい。
さらに、準備するガラス容器としては、美観や耐久性にさらに優れていることから、塗料を全体または部分的に予め塗布した塗装済のガラス容器を用いることも好ましい。
【0022】
また、ガラス容器準備工程(1)において、所定温度に調整されたガラス容器を準備することが好ましい。すなわち、次工程の印刷用インク塗布工程において、ガラス容器との密着性にさらに優れた印刷用インクからなる隆起表示部を形成するために、ガラス容器の平均温度を20〜60℃の範囲内の値にするとともに、温度分布を±10℃以内の値に制御することが好ましい。
この理由は、ガラス容器の平均温度が20℃未満の値となると、印刷用インクを塗布した際に、半硬化せずに、長時間流動状態を保つ場合があるためである。一方、ガラス容器の平均温度が60℃を超えると、印刷用インクの硬化状態の制御が困難となる場合があるためである。さらに、温度分布が±10℃を超えると、同様に、印刷用インクの硬化状態の制御が困難となって、ガラス容器との密着性に優れた、印刷用インクからなる隆起表示部を形成することが困難となる場合があるためである。
したがって、印刷用インクの硬化状態をより良好なものとするために、ガラス容器の平均温度を25〜50℃の範囲内の値とすることがより好ましく、30〜45℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。そして、ガラス容器の温度分布を±8℃の値にすることがより好ましく、温度分布を±5℃以内の値に制御することがさらに好ましい。
なお、かかるガラス容器の平均温度や温度分布を所定範囲に制御するには、製造工程中に、火炎照射部を設けて、ガラス容器の側面等に火炎を噴射したり、あるいは、工程中に、乾燥室を設けて乾燥空気等を吹き付けたりすることにより実施することが好ましい。そして、その際に、ガラス容器の平均温度や温度分布をリアルタイムでモニタしながら制御することがより好ましい。
【0023】
2.印刷用インク塗布工程
図3に示す印刷用インク塗布工程(2)は、印刷用インクを塗布し、次いで、それを部分硬化させて、半硬化状態の印刷用インクからなる隆起表示部を形成する工程である。より具体的には、図4(A)に示すガラス容器42の表面に、図4(B)に示すように、半硬化状態の印刷用インクからなる隆起表示部44aを直接的または間接的に形成する工程である。
かかる印刷用インク塗布工程は、ガラス容器との密着性に優れ、しかも線幅が細い場合であっても、均一な幅や高さを有する隆起表示部を形成しやすくするための工程である。さらに、かかる印刷用インク塗布工程は、次工程の金属箔転写工程において、その上に金属箔を精度良く転写するためにも重要な工程である。
【0024】
ここで、印刷用インクの種類としては、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、またはポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂を主成分とした樹脂インクを挙げることができる。
これらの樹脂インクであれば、ガラス容器上に比較的均一に塗布できる一方、簡易な乾燥処理により半硬化状態とすることができ、しかも、ガラス容器に対して、優れた密着性を示すことができる。
【0025】
また、これらの樹脂インクのうち、ガラス容器との密着性、金属箔との密着性、線幅が細いパターンへの対応性、硬化後の機械的強度、半硬化状態の制御性、作業性などがより良好なことから、エポキシ樹脂を主成分とした樹脂インクを用いることがより好ましい。
すなわち、エポキシ樹脂を主成分とした樹脂インクであれば、ガラス容器や金属箔に対して、特異的に優れた密着性を示すことができる一方、機械的強度や耐熱性に優れており、ホットスタンプした際に、金属箔を精度良く転写することが可能である。
なお、エポキシ樹脂を使用する場合、硬化剤として、ポリアミン化合物、イミダゾール化合物、メルカプト化合物、カルボン酸化合物等を所定量添加することが好ましい。
また、印刷用インクとして、上述した樹脂インクのかわりに、あるいは、樹脂インクと併用して、鉛を含むセラミックインクを使用することも好ましい。このようなセラミックインクであれば、熱劣化が少なく、高温での加熱硬化が可能であるため、ガラス容器に対して、極めて優れた密着力を示すことができる。
【0026】
また、印刷用インク中に、印刷用インクにおける主成分100重量部に対して、0.1〜20重量部の範囲になるように、シランカップリング剤を含むことが好ましい。
この理由は、このようにシランカップリング剤を含むことにより、印刷用インクのガラス容器に対する密着性を飛躍的に向上させることができるためである。また、シランカップリング剤を含むことにより、金属箔に対する印刷用インクの密着性を向上させることができるため、金属箔を精度良く転写することができる。
さらに、シランカップリング剤を含むことにより、消泡効果を発揮させて、印刷用インクにおける泡立ちを有効に防止することができるため、印刷用インクをさらに精度良く塗布し、良好な形状の隆起表示部を形成することができる。
なお、シランカップリング剤の種類についても、特に制限されるものではないが、例えば、シランカップリング剤が、アミン系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、およびウレイド系シランカップリング剤からなる群から選択される少なくとも一つのシランカップリング剤を使用することが好ましい。
【0027】
また、印刷用インク中に、上述したシランカップリング剤のほかに、各種添加剤を含むことも好ましい。このような添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、流動性調整剤、粘度調整剤、稀釈剤、溶剤、無機フィラー、金属粒子、熱膨張性粒子等が挙げられる。
特に、酸化防止剤や紫外線吸収剤を含むことにより、印刷用インクの酸化劣化等を防止できるため、その結果、ガラス容器に対する密着性の経時的低下を有効に防止することができる。
また、流動性調整剤、粘度調整剤、稀釈剤、または溶剤を含むことにより、印刷用インクの塗布性や、ガラス容器に対する印刷用インクの密着性を向上させることができる。さらに、無機フィラー、金属粒子、または熱膨張性粒子を含むことにより、印刷用インクからなる隆起表示部の形態の調整が容易となる。
【0028】
また、印刷用インクの粘度を100〜100,000cps(mPa・s、25℃)の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる印刷用インクの粘度が100cps未満の値となると、所定幅や、所定高さを有する印刷用インクからなる隆起表示部を形成することが困難となる場合があるためである。
一方、かかる印刷用インクの粘度が100,000cpsを超えると、気泡を巻き込みやすくなって、均一な厚さからなる隆起表示部を形成することが困難となる場合があるためである。
したがって、より良好な隆起表示部を形成することができることから、印刷用インクの粘度を300〜10,000cps(25℃)の範囲内の値とすることがより好ましく、500〜5,000cps(25℃)の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0029】
また、印刷用インクからなる隆起表示部の厚さを0.1μm〜100μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる隆起表示部の厚さが0.1μm未満の値となると、浮き出て見える効果が低下するとともに、金属箔の転写を精度良く実施することが困難となる場合があるためである。一方、かかる隆起表示部の厚さが100μmを越えた値となると、精度良く印刷することが困難となる場合があるためである。
したがって、印刷用インクからなる隆起表示部の厚さを0.5μm〜50μmの範囲内の値とすることがより好ましく、1μm〜25μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、印刷用インクからなる隆起表示部の幅は、文字、図形等の大きさや形状によって変化するものの、例えば、1μm〜20mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる隆起表示部の幅が1μm未満の値となると、線幅が細いパターンの再現性に乏しくなる場合があるためである。一方、かかる隆起表示部の幅が20mmを越えると、金属箔を精度良く転写することが困難となる場合があるためである。
したがって、印刷用インクからなる隆起表示部の幅を5μm〜10mmの範囲内の値とすることがより好ましく、10μm〜500μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0030】
また、印刷用インクの塗布方法としては、特に制限されるものでなく、公知のスクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法などの印刷方法を用いることができる。
ただし、品質の良い隆起表示部を形成するという観点から、スクリーン印刷を特に好ましく用いることができる。
【0031】
ここで、図5及び図6に、印刷用インク塗布工程に好ましく用いられるスクリーン印刷装置51、61を模式的にそれぞれ示す。すなわち、一般に曲面を有するガラス容器の表面に対して、精度良く、かつ大面積のスクリーン印刷を行うためには、スクリ−ンの円滑な移動と、このスクリーンの移動に同期したガラス容器表面の円滑な移動が重要である。したがって、この移動を考慮して作成した図5に示すスクリーン印刷装置51は、断面が円形であるガラス容器52の表面にスクリーン印刷を行うのに適したスクリーン印刷装置(タイプ1)である。同様に、図6に示すスクリーン印刷装置61は、断面が楕円形であるガラス容器62の表面にスクリーン印刷を行うのに適したスクリーン印刷装置(タイプ2)である。
すなわち、図5に示すスクリーン印刷装置51は、ほぼ円形の断面形状を有するとともに、その断面積が比較的小さなガラス容器52に適しており、そのため、例えば2個ずつ、2列に配列された回転ローラ56が設けられていて、その上にガラス容器52を載置可能に構成してあることが好ましい。
一方、図6に示すスクリーン印刷装置61は、楕円の断面形状を有するとともに、その断面積が比較的大きなガラス容器84に適しており、そのため、上面が、ガラス容器84の断面形状に対応した楕円形状を有する受け皿80が設けてあって、その上にガラス容器84が収容可能に構成してあることが好ましい。
【0032】
また、塗布した印刷用インク(印刷用インクからなる隆起表示部)を、所望により乾燥して、半硬化することが好ましい。
すなわち、溶剤等を多量に含んでいる場合には、次工程の金属箔転写工程において、ホットスタンプされる金属箔と隆起表示部との間で、密着性を確保することが困難となる場合があるためである。
ただし、過度に乾燥すると、塗布した印刷用インクの硬化が進み、逆に金属箔と隆起表示部との間で、密着性を確保することが困難となる場合がある。
したがって、塗布した印刷用インクを乾燥する場合、隆起表示部を構成する印刷用インクを完全硬化させずに半硬化状態に保つため、例えば、50〜100℃の温度にて、1秒〜10分程度加熱することが好ましい。
なお、印刷用インクの半硬化とは、完全硬化されるに至っていない状態(未硬化状態を含む。)を意味し、ホットスタンプする際に加熱することによって活性化できる硬化状態であれば良い。
【0033】
3.金属箔転写工程
図3に示す金属箔転写工程(3)は、加熱弾性体を用いて、ホットスタンピング箔から金属箔を転写させる工程である。より具体的には、図5(B)に示す半硬化状態の印刷用インクからなる隆起表示部44aに対応させて、金属箔46を転写させる工程である。
ここで、図7(A)〜(B)に、本発明のホットスタンプ方法に使用される金属箔転写装置80の一例を示す。
まず、図7(A)は、金属箔転写装置80を、シリコーンゴムからなる回転ローラ94の軸方向から見たときの断面図であり、図7(B)は、金属箔転写装置80を、ホットスタンピング箔90の移動方向に沿ってみたときの正面図である。
そして、この金属箔転写装置80は、図7(A)に示されるように、加熱弾性体として、シリコーンゴムからなる回転ローラ94を備えている。この回転ローラ94は、回転ローラ94に凹凸を設けてあり、そのうちの凸部96によって、ホットスタンピング箔90を介してガラス容器82を押圧し、金属箔を破断転写させる機能を有している。
また、回転ローラ94と、ホットスタンピング箔90と、ガラス容器82とは、所定距離において、一体となって移動することが可能な構造であることが好ましい。このように構成すると、ガラス容器82に対する回転ローラ94の押圧力が均一化される一方、比較的大面積であっても、精度良く、金属箔を転写することが可能となる。
【0034】
また、金属箔転写工程において、加熱弾性体として、硬度40〜90のシリコーンゴムからなる回転ローラを用いることが好ましい。
すなわち、このように加熱弾性体として、所定範囲の硬さを有する回転ローラを用いることにより、所望パターンに対応したホットスタンピング箔の転写個所のみを適度に加熱押圧することができるためである。逆に言うと、硬度40未満のシリコーンゴムからなる加熱弾性体を用いても、柔らかすぎて、精度良く金属箔を破断転写することが困難となる場合があるためである。一方、硬度90を超えるシリコーンゴムからなる加熱弾性体を用いた場合、硬すぎて、所定個所のみを均一に押圧することが不可能となって、同様に、精度良く金属箔を転写することが困難となる場合があるためである。しかも、硬度90を超えるシリコーンゴムからなる加熱弾性体を用いた場合、押圧した場合に、ガラス容器を破損させる場合があるためである。
したがって、より精度良く金属箔を転写することが可能となることから、硬度45〜85のシリコーンゴムからなる加熱弾性体を用いることがより好ましく、硬度50〜80のシリコーンゴムからなる加熱弾性体を用いることがさらに好ましい。
【0035】
また、加熱弾性体として、シリコーンゴムを用いているため、耐久性に優れているとともに、所定の離型性を有しており、加熱押圧後に、シリコーンゴムを移動させたとしても、一旦転写した金属箔を引き剥がすことが少なくなる。
そのため、ホットスタンプの引き剥がし動作がスムーズに進行し、線幅が細いパターンからなる金属箔、例えば、1mm以下の線幅が細いパターンからなる金属箔であっても、さらに精度良く転写することが可能となる。
なお、このようなシリコーンゴムの硬度は、シリコーンゴムに添加する架橋剤の添加量や、架橋剤の種類、あるいは架橋方法により、適宜変更することができる。また、シリコーンゴムの表面に対して、紫外線を照射することによっても、シリコーンゴムの硬度を変更することができる。また、シリコーンゴムの硬度は、硬度計により測定することができる。
【0036】
その他、図8に示される金属箔転写装置は、加熱弾性体の一例として、シリコーンゴムからなる回転ローラを有しているが、加熱弾性体の形態としては、適宜変更することができ、これに限られるものではない。
例えば、図8(B)に示すように、加熱弾性体が回転ローラの形態を有しているものの、その表面に凹凸部が設けてあり、このうち凸部96を用いて、ホットスタンピング箔から金属箔を転写させることが好ましい。
このような加熱弾性体を用いることにより、金属箔を転写したい個所に対してのみ、金属箔を選択的に転写することができる。
また、加熱弾性体として、回転ロールの形態ではなく、シート状のシリコーンゴムからなるスタンプを使用することも好ましい。このように構成すると、シリコーンゴムが劣化した場合には迅速に変更することができる一方、ホットスタンピング動作を行う機構をもった金属箔転写装置等も好ましく用いることができる。
【0037】
また、使用するホットスタンピング箔90の構造例を、図7(A)および図8を参照して説明する。
まず、図7(A)に示すホットスタンピング箔90の例では、基材91と、金属蒸着層を含む金属箔層92と、から構成してあるが、このような簡易な構成のホットスタンピング箔90であれば、極めて安価であることから好適に使用することができる。
また、図8に別のホットスタンピング箔102の例を示すが、このホットスタンピング箔102は、基材104と、この基材104の背面側にある背面層103と、基材104の腹面側に設けてある剥離層105と、蒸着アンカー層106と、金属蒸着層107と、接着層108と、から構成してある。このようなホットスタンピング箔102を用いることにより、金属箔をさらに精度良く転写することができる。
【0038】
そして、例えば、図7(A)に示す構成のホットスタンピング箔90を用いた場合、このホットスタンピング箔90は、ガラス容器82の表面にある隆起表示部84に当接した状態で、加熱状態にある回転ローラにより押圧されると、その部分だけ金属箔側層92の接着層(図示せず。)に含まれるワックスやアクリル樹脂等が溶け出すことになる。そのため、金属蒸着層としての金属箔が破断剥離して、半硬化状態の隆起表示部84が活性化されるに伴い、隆起表示部84に対して強固に付着して、転写することができる。
【0039】
一方、回転ローラにより加圧されない部分のホットスタンピング箔90については、接着層に含まれるワックスやアクリル樹脂等が十分に溶融せずに、金属蒸着層としての金属箔はホットスタンピング箔90からそのまま剥離せず、したがって、ガラス容器82の隆起表示部84以外の領域には付着しないことになる。
すなわち、回転ローラにより加圧された部分のみが、金属蒸着層としての金属箔が破断剥離した後、半硬化した状態にある印刷用インクからなる隆起表示部84についても、加熱されて活性化される。それに伴い、金属箔は、隆起表示部84に対して付着することにより、例えば、1mm以下の線幅が細いパターンを有する金属箔であっても、精度良く転写されて、外観性に優れたメタリック表示部86を形成することができる。
【0040】
また、ホットスタンプを良好に行うためには、加える圧力にもよるが、例えば、加熱弾性体の表面温度を160〜230℃の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる加熱弾性体の表面温度が160℃未満となると、半硬化した状態にある印刷用インクが十分に活性化せず、金属箔が破断剥離した後、半硬化した状態にある印刷用インクからなる隆起表示部に対して付着することが困難となる場合があるためである。また、かかる加熱弾性体の表面温度が160℃未満となると、ホットスタンピング箔におけるワックスやアクリル樹脂等が十分に溶融せず、その結果、微細な形状の金属箔からなるホットスタンプを実施することが困難となる場合があるためである。
一方、かかる加熱弾性体の表面温度が230℃を超えると、半硬化した状態にある印刷用インクが過度に活性化し、金属箔が破断剥離した後、逆に、隆起表示部に対して付着することが困難となったり、あるいは、金属箔の位置ズレが生じたりする場合があるためである。また、かかる加熱弾性体の表面温度が230℃を超えると、ホットスタンピング箔自体が熱変形し、その結果、微細な形状の金属箔からなるホットスタンプを実施することが困難となる場合があるためである。
したがって、加熱弾性体の表面温度を170〜220℃の範囲内の値とすることがより好ましく、180〜210℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0041】
また、ホットスタンピングの際の加熱弾性体による加圧時間を0.1〜30秒の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる加圧時間が0.1秒未満となると、半硬化した状態にある印刷用インクが十分に活性化せず、金属箔が破断剥離した後、半硬化した状態にある印刷用インクからなる隆起表示部に対して付着することが困難となる場合があるためである。また、かかる加圧時間が0.1秒未満となると、ホットスタンピング箔におけるワックスやアクリル樹脂等が十分に溶融せず、その結果、微細な形状の金属箔からなるホットスタンプを実施することが困難となる場合があるためである。
一方、かかる加圧時間が30秒を超えると、半硬化した状態にある印刷用インクが過度に活性化し、金属箔が破断剥離した後、逆に、隆起表示部に対して付着することが困難となったり、あるいは、金属箔の位置ズレが生じたりする場合があるためである。また、かかる加圧時間が30秒を超えると、ホットスタンピング箔自体が熱変形したり、生産効率が過度に低下したりする場合があるためである。
したがって、ホットスタンピングの際の加熱弾性体による加圧時間を0.5〜20秒の範囲内の値とすることがより好ましく、1〜10秒の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0042】
さらに、ホットスタンピングの際の加熱弾性体によって加える圧力を0.098〜9.8MPa(1〜100Kgf/cm2)の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる圧力が0.098MPa未満となると、ホットスタンピング箔における金属箔を破断剥離することが困難となる場合があるためである。
一方、かかる圧力が9.8MPaを超えると、金属箔の位置ズレが生じたり、ガラス容器が破損したりする場合があるためである。
したがって、ホットスタンピングの際の加熱弾性体によって加える圧力を0.49〜7.35MPaの範囲内の値とすることがより好ましく、0.98〜4.9MPaの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0043】
また、複数のホットスタンプ箔、例えば、2〜10種類のホットスタンプ箔を用いて、複数の金属箔を転写させることが好ましい。
このように実施することにより、ガラス容器の同一場所に重ねてホットスタンプした場合には、文字や図柄がさらに盛り上がった美麗なメタリック加飾を施すことができる。
また、ガラス容器の異なる場所にホットスタンプした場合には、よりに美的外観に優れたメタリック加飾を施すことができる。
さらに、一部の文字や記号等のみ、複数のホットスタンプ箔を用いて、複数の金属箔を転写させることも好ましい。
【0044】
また、金属箔転写工程において、表面の濡れ指数が25dyn/cm以上である金属箔を転写させることを特徴とする。
この理由は、このように実施することにより、ホットスタンプ工程のあとに、塗装工程の実施が可能であって、かつ、ホットスタンプ工程において、大面積の金属箔を転写する場合であっても、数種の装飾用塗料を塗布する場合であっても、均一な塗装を施した塗装ガラス容器を短時間かつ効率的に得ることができるためである。
但し、表面の濡れ指数の値が過度に大きくなると、ホットスタンプ工程において、大面積の金属箔を転写する場合や、微細パターンを有する金属箔を転写する場合に、これらの金属箔を精度良く転写することが困難となる場合がある。
したがって、金属箔の表面の濡れ指数を30〜70dyn/cmの範囲内の値とすることが好ましく、40〜60dyn/cmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0045】
なお、金属箔の表面の濡れ指数が所定範囲であることを確認するための確認工程を設けることが好ましい。そして、金属箔の表面の濡れ指数は、金属箔の種類、金属箔に対する表面処理剤の種類、かかる表面処理剤の処理量、金属箔に対する表面処理方法、後述する剥離調整層の有無、金属箔の表面洗浄等によって、適宜変更することができる。
さらに、簡易な金属箔の表面の濡れ指数の調整方法として、シラン原子を含む改質剤化合物として、沸点が10〜120℃である改質剤化合物、例えば、テトラメチルシランやヘキサメチルジシロキサンを含む燃料ガスに由来した火炎を、固体物質の表面に対して、全面または部分的に吹き付け処理するケイ酸化炎処理を行うことが好ましい。より具体的には、イトロ処理(イシマット・ジャパン株式会社、登録商標)を行うことが好ましい。
この理由は、かかるイトロ処理によれば、金属箔の表面の濡れ指数を、短時間で任意の値に調整することができるばかりか、金属箔の表面と、その上の塗膜との間の密着性を飛躍的に向上させることができるためである。
【0046】
ここで、図1を参照して、金属箔における表面の濡れ指数と、粘着テープを用いた密着性との関係を説明する。
すなわち、図1の横軸には、金属箔における表面の濡れ指数(dyn/cm)を採って示してあり、図1の縦軸には、粘着テープ(メンディングテープ、住友スリーエム(株)製、幅10mm相当)を用いて測定される90°剥離力(剥離速度100mm/分)としての密着力(g/10mm)採って示してある。
そして、図1中のラインAが、金属箔の面積比率が10%の場合を示しており、同様に、ラインBが、金属箔の面積比率が50%の場合を示している。
かかる図1に示すラインAから容易に理解できるように、金属箔における表面の濡れ指数が25(dyn/cm)を超えると、金属箔と、その上に形成した硬化塗膜の密着性が立ち上がり、急激に向上している。また、図1のラインBも同様の傾向であるが、若干、立ち上がりが、ラインAと比較して緩やかな傾向を示している。
したがって、金属箔の面積比率によって若干異なるものの、金属箔における表面の濡れ指数を25(dyn/cm)以上の値とすることにより、金属箔と、その上に貼付した粘着テープとの密着性とを効果的に高めることが理解される。すなわち、金属箔を含むガラス表面における塗膜に対しても同様の効果が発揮されることが期待される。
【0047】
次いで、図2を参照して、金属箔における表面の濡れ指数と、金属箔の上に形成した硬化塗膜の密着性との関係を説明する。
なお、形成した硬化塗膜は、実施例1に準拠して、160℃×20分の焼付け条件で形成した厚さ25μmの硬化塗膜である。
すなわち、図2の横軸には、金属箔における表面の濡れ指数(dyn/cm)を採って示してあり、図2の縦軸には、JIS K 5600に基づいた碁盤目試験により測定される硬化塗膜における、100碁盤目あたりのはがれ数(個/100碁盤目)を採って示してある。そして、図2の特性曲線は、金属箔の積比率が10%の場合を示している。
かかる図2から容易に理解できるように、金属箔における表面の濡れ指数が25(dyn/cm)を超えると、碁盤目試験での剥離数(個/100碁盤目)が急激に低下し、その後安定化する傾向を示している。
したがって、金属箔の面積比率によって若干異なることが予定されるものの、金属箔における表面の濡れ指数を25(dyn/cm)以上の値とすることにより、金属箔と、その上に形成した硬化塗膜の密着性とを、効果的に高めることが理解される。
【0048】
また、金属箔の表面に、当該表面の濡れ指数を25dyn/cm以上とするための剥離調整層が形成してあるホットスタンピング箔を用いることも好ましい。
この理由は、剥離調整層を備えた金属箔を形成することにより、ホットスタンプ工程において、大面積の金属箔を転写する場合であっても、数種の装飾用塗料を塗布する場合であっても、密着性に優れた塗膜を確実に形成することができ、装飾性や耐久性に優れた塗装ガラス容器を効率的に製造することができるためである。
なお、剥離調整層としては、シリカ粒子、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、あるいはエポキシ系樹脂等からなるプライマー層や、その他の樹脂層が該当する。そして、剥離調整層の機能を有効に発揮すべく、その厚さを0.01〜20μmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0049】
また、転写した金属箔の面積比率を、100cm2あたり、1〜80%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように金属箔の面積比率を考慮することにより、ホットスタンプ工程において、面積や形状等が異なる複数模様の金属箔を転写する場合であっても、密着性に優れた塗膜を確実に形成することができるためである。すなわち、金属箔の面積比率が1%未満の値になると、表面の導電性が変化して、逆に、静電塗装することが困難となる場合があるためである。一方、金属箔の面積比率が80%を超えると、所定パターンを有する金属箔を精度良く転写することが困難となったり、表面の導電性が変化して、逆に、静電塗装することが困難となったりする場合があるためである。
したがって、静電塗装を安定的に実施し、装飾性に優れた塗装ガラス容器をさらに短時間かつ効率的に製造することができることから、金属箔の面積比率を、100cm2あたり、5〜70%の範囲内の値とすることがより好ましく、20〜50%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0050】
また、転写した金属箔の表面を洗浄し、当該表面の濡れ指数を25dyn/cm以上の値とすることが好ましい。
この理由は、このように実施することにより、金属箔の表面に付着した剥離剤等を除去して、塗装工程を安定的に実施することが可能になり、そのため、金属箔の表面に対して、密着性にさらに優れた塗膜を形成することができるためである。
なお、金属箔の表面を洗浄する際に、洗浄剤として、グリコールやアルコール等を使用することが好ましく、さらに洗浄力を高めたい場合には、アミン化合物を、例えば、洗浄剤の全体量に対して、0.1〜30重量%の範囲で添加することが好ましい。
但し、金属箔の表面を洗浄すると、表面を傷つけたり、光沢性を低下させたりする場合がある。
したがって、転写した金属箔の表面の濡れ指数を洗浄のみで調整する場合、30dyn/cm〜50dyn/cmの範囲内の値とすることがより好ましく、35dyn/cm〜45dyn/cmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0051】
また、金属箔を転写するとともに、当該金属箔の一部に、ガラス表面を露出させるための開口部を設けることが好ましい。
この理由は、このように実施することにより、いわゆる中抜け模様の金属箔を転写する場合であっても、精度良くパターニングできるとともに、その金属箔の上に、密着性に優れた塗膜を形成することができるためである。
なお、かかる開口部の形状としては、特に制限されるものではないが、例えば、円形、楕円形、多角形、線状、星型、文字形状、数字形状、花形状等の一種または二種以上の組み合わせが挙げられる。したがって、唐草模様等の複雑な金属箔パターンを形成し、さらに装飾性に優れた塗装ガラス容器とすることができる。
【0052】
4.塗装工程
また、塗装工程において、塗料の種類は特に制限されるものではないが、例えば、ポリオール化合物を含むアクリルメラミン系塗料を被覆して、塗装することが好ましい。
ここで、アクリルメラミン系塗料を構成するホルムアルデヒド系樹脂の種類としては、メラミン樹脂、フェノ−ル樹脂、ユリア樹脂、グアナミン樹脂およびこれらの誘導体が代表的である。より具体的には、アルキルエーテル化メラミン樹脂(アルキル部分が、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、またはi−ブチル基)が、耐水性や耐候性に優れていることからより好適である。
また、ホルムアルデヒド系樹脂に、ポリオール化合物、例えば、ヒドロキシル基含有アクリル樹脂、ヒドロキシル基含有エポキシ樹脂、ヒドロキシル基含有ポリエステル樹脂、ヒドロキシル基含有ウレタン樹脂等を反応させて構成したポリオール変性ホルムアルデヒド系樹脂を使用することも好ましい。
この理由は、このようなポリオール変性ホルムアルデヒド系樹脂を使用することにより、ガラスに対する密着力を向上させるとともに、硬化塗膜の平滑性や薄膜性をより向上させることができるためである。
【0053】
また、アクリルメラミン系塗料において、ホルムアルデヒド系樹脂の硬化剤(硬化触媒を含む。以下、同様である。)を含むことが好ましい。
このような硬化剤としては、シュウ酸ジメチルエステル、シュウ酸ジエチルエステル、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、モノクロロ酢酸ナトリウム塩、モノクロロ酢酸カリウム塩、α、α−ジクロロヒドリン、エチルアミン塩酸塩、トリエタノールアミン塩酸塩、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム塩、硫酸アンモニウム塩、尿素誘導体、イミドスルフォン酸ニアンモニウム等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
また、ホルムアルデヒド系樹脂の硬化剤の添加量を、ホルムアルデヒド系樹脂100重量部に対して、0.1〜30重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる硬化剤の添加量が0.1重量部未満の値となると、添加効果が発現しない場合があるためであり、一方、かかる硬化剤の添加量が30重量部を超えると、ホルムアルデヒド系樹脂の反応性を制御することが困難となる場合があるためである。
【0054】
また、アクリルメラミン系塗料において、ポリオール化合物として、以下に示すようなアクリルポリオール化合物、ポリエステルポリオール化合物、含フッ素ポリオール化合物、ラクトンポリオール化合物等を添加することが好ましい。
すなわち、アクリルポリオール化合物として、ヒドロキシル基含有アクリルモノマーと、他のエチレン性不飽和モノマーとを、共重合して得られるポリオール化合物を添加することが好ましい。
また、ポリエステルポリオール化合物として、多価カルボン酸と、アルコール成分との重縮合物を添加することが好ましい。
【0055】
また、含フッ素ポリオール化合物として、少なくともヒドロキシル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーと、フルオロオレフィンモノマーとを共重合して得られるポリオール化合物、あるいは、フルオロオレフィンモノマーを重合させて得られるヒドロキシル基を有しないフッ素ポリマーに、アクリルポリオール化合物を混合して得られるポリオール化合物を添加することが好ましい。
さらに、ラクトンポリオール化合物は、ラクトンモノマー(γ−ラクトン、β−ラクトン、δ−ラクトン)を、アルコール類、あるいは芳香性液体やアルカリ剤を用いて開環して得られる化合物を添加することが好ましい。
ただし、これらのポリオール化合物のうち、比較的少量の添加により、硬化塗膜の強度の改良効果を発現することができることから、ラクトンポリオール化合物を使用することがより好ましい。
【0056】
また、アクリルメラミン系塗料に用いるポリオール化合物におけるヒドロキシル価を5〜300mgKOH/gの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるヒドロキシル価が5mgKOH/g未満の値となると、硬化性反応基量が少なすぎて、ホルムアルデヒド系樹脂やシランカップリング剤との反応性や、ポリオール化合物自身の硬化性が低下する場合があるためである。一方、かかるヒドロキシル価が300mgKOH/gを超えると、得られる塗膜に親水性基が残留し、塗膜の耐水性、耐酸性及び耐アルカリ性が低下する場合があるためである。
したがって、ポリオール化合物におけるヒドロキシル価を10〜250mgKOH/gの範囲内の値とすることがより好ましく、30〜200mgKOH/gの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0057】
また、アクリルメラミン系塗料に用いるポリオール化合物における数平均分子量を500〜20,000の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる数平均分子量が500未満の値となると、得られる塗膜の機械的強度が低下する場合があるためであり、一方、20,000を超えると、塗料組成物の粘度が高くなりすぎて、塗装性が低下する場合があるためである。
したがって、ポリオール化合物における数平均分子量を1,000〜18,000の範囲内の値とすることがより好ましく、1,800〜15,000の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0058】
また、アクリルメラミン系塗料に用いるポリオール化合物の添加量(含有量)を、ホルムアルデヒド系樹脂100重量部に対して、0.1〜100重量部の範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、かかるポリオール化合物の添加量が0.5重量部未満の値となると、硬化塗膜の密着性が著しく低下する場合があるためである。一方、かかるポリオール化合物の添加量が100重量部を超えると、硬化性蛍光組成物の反応性が著しく低下したり、あるいは得られる硬化塗膜の密着性や耐湿性が低下したりする場合があるためである。
したがって、ポリオール化合物の添加量(含有量)を、ホルムアルデヒド系樹脂100重量部に対して、1〜80重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、5〜50重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、図9を参照すれば、ポリオール化合物の添加量と、硬化塗膜のガラスに対する密着力(JIS K 5600に基づいた碁盤目試験により測定される硬化塗膜における100碁盤目あたりの、はがれ数(個/100碁盤目))との関係が容易に理解される。そして、初期評価結果を実線で示してあり、耐湿試験後(60℃×95%RH、24時間)の評価結果を点線で示してある。また、評価した硬化塗膜は、実施例1に準拠して、160℃×20分の焼付け条件で形成した厚さ25μmの硬化塗膜である。
【0059】
また、塗装工程において、複数の塗料を用いて、それらを組み合わせることにより、さらに装飾性に優れた塗装ガラス容器を得ることができる。
例えば、円筒形のガラス容器を、高さ方向に塗布するに際して、塗布場所を三分割(A、B,C)し、塗布場所Aには、青色の着色剤を含む塗料を用いて塗膜を形成し、塗布場所Bには、着色剤を含まない塗料を用いて透明塗膜を形成し、さらに塗布場所Cには、赤色の着色剤を含む塗料を用いて塗膜を形成することにより、従来にない、極めて装飾性に優れた塗装ガラス容器を得ることができる。
また、例えば、同様に円筒形のガラス容器を、高さ方向に塗布するに際して、場所を三分割(A、B,C)し、塗布場所Aには、青色の着色剤を比較多量に含む塗料を用いて第1の青色塗膜を形成し、塗布場所Bには、青色の着色剤を中程度含む塗料を用いて第2の青色塗膜を形成し、塗布場所Cには、青色の着色剤を少量含む塗料を用いて第3の青色塗膜を形成することにより、グラデーション効果を発揮する、従来にない装飾性に優れた塗装ガラス容器を得ることができる。
【0060】
5.硬化工程
印刷用インクの硬化工程は、金属箔を転写した後の半硬化した状態にある印刷用インクに対して、十分な加熱または光照射することにより、完全硬化させて、ガラス容器と印刷用インクとの間の密着性および、金属箔と印刷用インクとの間の密着性を、それぞれ向上させる工程である。
すなわち、この印刷用インク硬化工程により、ガラス容器に対するホットスタンピング方法が完結して、従来のものに比較してより微細な文字や図柄の盛り上がりのある美麗なメタリック加飾が施されたガラス容器を提供することができる。
ただし、ガラス容器の用途によっては、金属箔を転写しない状態の印刷用インクからなる文字や、図形等を混在して設ける場合があり、その場合には、印刷用インクのみの完全硬化が意図されることになる。
【0061】
また、印刷用インクの硬化工程において、熱硬化性樹脂からなる印刷用インクを用いた場合には、加熱温度を、通常140℃〜200℃の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる加熱温度が140℃未満となると、印刷用インクが十分に硬化せず、ガラス容器と印刷用インクとの間の密着性および、金属箔と印刷用インクとの間の密着性が向上しない場合があるためである。
一方、かかる加熱温度が200℃を超えると、半硬化した状態にある印刷用インクが急激に硬化し、内部クラックが生じたり、あるいは、金属箔が熱変形したり、金属箔の光沢が低下したりする場合があるためである。
したがって、かかる加熱温度を150〜180℃の範囲内の値とすることがより好ましく、160〜170℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、加熱時間は、加熱温度にもよるが、例えば、30秒〜30分の範囲内の値とすることが好ましい。
【実施例】
【0062】
[実施例1]
1.ホットスタンプ方法
(1)ガラス容器の準備工程
ベルトコンベヤ上に載置した円筒状のガラス容器を移動させながら、水シャワーにより十分に洗浄した後、加熱乾燥した。
次いで、ベルトコンベヤ上に載置したガラス容器を同様に移動させながら、ガラス容器の両側面から、ガスバーナーの火炎を噴射させて、ガラス容器の温度を高めるとともに、ガラス表面を乾燥させた。
その後、ベルトコンベヤ上に載置したガラス容器を、乾燥空気が循環する環境雰囲気中を移動させながら、ガラス容器の周囲湿度を50%RHとし、その平均温度を27℃とするとともに、ガラス容器における温度分布を均一化(±5℃以内)させた。
【0063】
(2)印刷用インクの塗布工程
以下の成分(A)〜(C)を含むスクリーン印刷用のブラックインクを、攪拌機を用いて、混合して調製した。また、このブラックインクに、希釈剤(D)を添加して、ポットライフ(最大3.5時間)が長くなるように調整して、塗布作業を円滑に行えるようにした。
(A)No.1900ブラック(ディーエムシースクェアー・ジャパン(株)製)
30g
なお、No.1900ブラックは、有機顔料、消泡剤(シランカップリング剤)、エポキシ樹脂、エステル系樹脂、印刷性向上剤、エーテル系溶剤、およびキシレンから構成されている。
(B)メジューム(T&D CERATEC Co.,LTD.製) 30g
なお、メジュームは、消泡剤(シランカップリング剤)、エポキシ樹脂、および溶剤から構成されている。
(C)硬化剤No.10(T&D CERATEC Co.,LTD.製) 15g
なお、硬化剤No.10は、ポリアミン樹脂、キシレン、およびn−ブタノールから構成されている。
(D)No.100希釈剤(ディーエムシースクェアー・ジャパン(株)製)
【0064】
次いで、スクリーン印刷装置として、曲面・平面両用スクリーン印刷機SK−250−V型(新栄工業(株)製)を用い、ガラス容器に対して、0.5mmの線幅を有するパターンと、10mmの線幅を有するパターンと、を含む混合パターンを形成するように、印刷用インクを塗布した。
次いで、ガラス容器を50℃で、1分間加熱して、印刷用インクを半硬化させて、所定の線幅を有する混合パターンからなる隆起表示部を形成した。
なお、転写工程において、金属箔の面積比率が、100cm2あたり、約10%となるように、隆起表示部の面積を調整した。
【0065】
(3)転写工程
次いで、ホットスタンプ装置(ナビタス(株)製)を用いて、半硬化状態にある隆起表示部に対して、表面温度が200℃に調整された加熱弾性体により、30kgf/cm2、2秒間の条件で、ホットスタンピング箔を押し付けた。次いで、隆起表示部に金属箔を付着させ、金属箔を転写して、メタリック表示部を形成した。
なお、加熱弾性体としては、硬度計で測定した硬度が65のシリコーンゴムからなる図7(B)に示す回転ローラを用いた。
また、ホットスタンピング箔の基本構造は、図8に説明したものと基本的に同様である。すなわち、実施例1のホットスタンピング箔102は、基材104(16μmのポリエチレンテレフタレート)と、基材の背面側にある背面層103(0.5μmのシリコーン変性ポリエステル層)と、基材の腹面側にある剥離層105(0.5μmのカルナバワックス層)と、蒸着アンカー層106(1μmのポリメタクリル酸メチルおよびエポキシ樹脂の混合層)と、金属蒸着層107(真空蒸着法により形成された500Åのアルミニウム膜)と、接着層108(2.5μmの塩化ビニル樹脂と酢酸ビニル樹脂との混合層)と、から構成してある。
さらに、金属箔の面積比率は、100cm2あたり、約10%となるように調整した。
【0066】
なお、転写した金属箔の表面の濡れ指数(室温25℃)を、表面張力として測定した。すなわち、金属箔の表面をイロプロパノールで洗浄した後、数種の標準液をスポイトで金属箔の表面に滴下し、標準液が水滴とならず、金属箔の表面に均一に塗布可能な標準液の番手を、金属箔の表面の濡れ指数とした。その結果、実施例1の金属箔の表面における濡れ指数としての表面張力は26dyn/cmであった。
【0067】
また、転写した金属箔の評価として、粘着テープ(メンディングテープ、住友スリーエム(株)製、幅10mm相当)を用いて測定される90°剥離力(剥離速度100mm/分)としての密着力(g/10mm)を測定した。その結果、実施例1の金属箔の表面における密着力は150g/10mmであった。
【0068】
(4)塗装工程
攪拌機付の混合容器内に、下記配合材料(A1〜D1)を仕込み、室温条件で、30分間攪拌して(回転数:1000rpm)、粘度40mPa・s(25℃)の熱硬化性組成物を得た。次いで、得られた熱硬化性組成物を、スプレーガンを用いて静電塗装した。
A1:アクリルメラミン樹脂(藤倉化成(株)製、PG2220A) 100重量部
B1:ラクトンポリオール化合物
(ヒドロキシル価200mgKOH/g、数平均分子量1,000) 10重量部
C1:ウレイドプロピルトリエトキシシラン 5重量部
D1:キシレン 50重量部
【0069】
(5)印刷用インク硬化工程
ホットスタンプおよび塗装を施したガラス容器を、オーブン中、150℃、10分の条件で加熱して、半硬化状態の隆起表示部を完全硬化させ、塗装ガラス容器とした。
【0070】
2.塗装ガラス容器の評価
塗装ガラス容器の評価として、JIS K−5400に準拠した碁盤目試験を行い、100碁盤目あたりの、金属箔のはがれ数(個/100碁盤目)をそれぞれ測定した。
【0071】
[実施例2〜5]
実施例2〜5においては、金属箔転写工程後に、金属箔の表面の濡れ指数を28、32、38、44dyn/cmとしたこと以外は、実施例1と同様に、ホットスタンプ方法を実施した後、密着力測定を行い、かつ、塗装ガラス容器に対して碁盤目試験を実施した。
すなわち、金属箔転写工程後に、イトロ処理(イシマット・ジャパン株式会社、登録商標)を時間変えて行い、金属箔の表面の濡れ指数を調整した。それぞれ得られた結果を表1に示す。
【0072】
[比較例1〜3]
比較例1〜3においては、金属箔転写工程において、金属箔の表面に、剥離剤を塗布し、その濡れ指数を10、20、23dyn/cmとしたこと以外は、実施例1と同様に、密着力測定および碁盤目試験を実施した。それぞれ得られた結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
[実施例6〜10]
実施例6〜10においては、金属箔転写工程において、金属箔の面積比率を100cm2あたり、約50%としたこと以外は、実施例1と同様にホットスタンプ方法を実施し、密着力測定を実施した。それぞれ得られた結果を表2に示す。
【0075】
[比較例4〜6]
比較例4〜6においては、金属箔転写工程において、金属箔の表面に、剥離剤を塗布し、その濡れ指数を10、20、23dyn/cmとするとともに、金属箔の面積比率を100cm2あたり、約50%としたこと以外は、実施例1と同様にホットスタンプ方法を実施し、密着力測定を実施した。それぞれ得られた結果を表2に示す。
【0076】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上、説明したように、本発明の塗装ガラス容器の製造方法は、印刷用インクに対応させて、転写した金属箔の表面の濡れ指数を所定範囲に制御することから、次工程における塗装工程の安定的実施が可能であって、かつ、ホットスタンプ工程において、大面積の金属箔を転写する場合であっても、数種の装飾用塗料を塗布する場合であっても、均一な塗装を施した塗装ガラス容器が効率的に得られるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、金属箔の表面の濡れ指数と、密着力との関係を説明するために供する図である。
【図2】図2は、金属箔の表面の濡れ指数と、碁盤目試験での塗膜の剥離数との関係を説明するために供する図である。
【図3】図3は、本発明の塗装ガラス容器の製造方法のプロセスフローを説明するために供する図である。
【図4】図4は、本発明のホットスタンプ方法を説明するために供する図である。
【図5】図5(A)〜(B)は、本発明に用いられるスクリーン印刷装置(タイプ1)を説明するために供する図である。
【図6】図6(A)〜(B)は、本発明に用いられるスクリーン印刷装置(タイプ2)を説明するために供する図である。
【図7】図7は、本発明に用いられる金属箔転写装置を説明するために供する図である。
【図8】図8は、本発明に用いられるホットスタンピング箔の構造を説明するために供する図である。
【図9】図9は、塗膜におけるポリオール化合物の添加量の影響を説明するために供する図である。
【図10】図10(A)〜(D)は、従来のホットスタンプ方法を説明するための図である。
【図11】図11は、従来のホットスタンプ方法により転写された金属箔を含む装飾層の模式的断面図である。
【符号の説明】
【0079】
51、61:スクリーン印刷装置
42、52、82、84:ガラス容器
44a:隆起表示部
56:回転ローラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットスタンプ工程を含む塗装ガラス容器の製造方法に関し、特に、ホットスタンプ工程において、大面積の金属箔を転写する場合であっても、数種の装飾用塗料を塗布する場合であっても、均一な塗装を施した塗装ガラス容器が得られる塗装ガラス容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化粧品容器などのガラス容器の表面には、ホットスタンプ方法によって、文字や図柄が盛り上がった美麗なメタリック加飾が施されていることが多い。
このようなホットスタンプ方法の代表的な実施方法について説明すれば、以下のとおりである。
【0003】
図10は、従来のホットスタンプ方法の一例を説明するための図である(特許文献1参照)。
かかるホットスタンプ方法によれば、まず、図10(A)に示されるガラス容器202の表面に、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を主成分とする印刷インクを、スクリーン印刷等の印刷法により印刷する。
次いで、図10(B)に示されるように、所望の文字や図柄に対応した隆起表示部204aを、ガラス容器202の表面上に、隆起させて形成する。
次いで、この隆起表示部204aを常温で放置するか又は所定温度で強制乾燥することにより、隆起表示部204aを実質上粘着性のない半硬化状態とする。
次いで、この隆起表示部204aの上面から、アルミ蒸着を施したホットスタンピング箔を当てた状態で加熱弾性体により圧着することにより、図10(C)に示されるように、隆起表示部204aにのみアルミニウムが転写し、アルミニウムからなるメタリック表示部206を形成する。
最後に、メタリック表示部206を含むガラス容器202を、所定温度で焼き付けることにより、隆起表示部204aが完全硬化して、接着剤204bとしての機能を発揮する。
かかるホットスタンプ方法によれば、従来の重ね印刷等と比較して、加飾時間が短い、重ね印刷の際の位置ずれがない、立体感が大きいといった効果を得ることができる。
【0004】
また、図11に示すように、耐摩耗性等を向上させるために、金属製品301に、下地印刷302を施した後、ホットスタンプ方法を実施して金属箔306を転写し、さらにその後に、転写された金属箔306の表面に、トップコーティング層307を形成する方法が提案されている(特許文献2参照)。
すなわち、金属製品301の表面に印刷手段によって下地印刷302を施した後に、所定箇所に、紫外線硬化型インキまたは電子線硬化型インキ303を隆起させた状態で印刷し、その上からホットスタンプ方法を施して金属箔306を転写し、最後に、転写された金属箔306の表面に、トップコーティング層307を形成する方法である。
【0005】
さらに、耐摩耗性等を向上させるために、ホットスタンプ方法によって転写される金属箔の表面に、保護層やクリヤー保護塗装膜を予め形成する方法が提案されている(特許文献3および4参照)。
すなわち、クリヤー保護塗装膜を形成するために、水酸基価(OH価)が、30〜95%のポリオールを主剤とした二液反応性ウレタン系塗料を使用し、かつ、保護層を形成する樹脂として、二液反応性ウレタン系塗料と相溶性を有するアクリル樹脂や塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体等を使用する方法が提案されている。
【特許文献1】特公昭55−23222号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平7 −205536号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平8 −71490号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開平10−236090号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜2に記載されたホットスタンプ方法では、転写された金属箔の上から、所定の装飾用の塗装を施すことができないという問題が見られた。すなわち、ホットスタンピング箔から金属箔が選択的かつ容易に剥離するように、金属箔の表面に剥離層が設けてあったり、剥離剤が塗布されていたりするため、装飾用塗料がはじかれてしまい、均一に塗装を施すことができないという問題が見られた。特に、数種の装飾用塗料を塗布する場合は、塗装むらが著しく大きくなって、所望の塗装を施すことができないという問題が見られた。
【0007】
また、特許文献3〜4に記載されたホットスタンプ方法では、保護層やクリヤー保護塗装膜を形成するための樹脂の種類が過度に制限されてしまい、かつ、水酸基価(OH価)が高いために、金属箔が腐食しやすいという問題が見られた。また、保護層やクリヤー保護塗装膜に起因して、ホットスタンプした際の剥離性が低下し、大面積の金属箔を転写することは困難であるという問題が見られた。さらに、保護層やクリヤー保護塗装膜の上から装飾用塗料を塗布した場合、その表面の剥離層や剥離剤によって、当該装飾用塗料がはじかれてしまい、特許文献1〜2と同様に、均一に塗装を施すことができないという問題が見られた。
【0008】
もちろん、金属箔の裏面に、印刷インクとの間の密着性を高めるための接着層を設けることにより、金属箔の表面における剥離層の厚さや、剥離剤の塗布量を低減する試みも行っている。
しかしながら、不完全な金属箔の転写状態しか得られず、特に、大面積の金属箔を精度良く転写することは困難であるという問題が見られた。
【0009】
そこで、本発明の発明者らは、鋭意研究した結果、ホットスタンピング箔を押圧する際の表面の濡れ指数としての表面張力を所定範囲に制御することにより、上述した問題を解決することができることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、ホットスタンプ工程のあとに、塗装工程の実施が可能であって、かつ、ホットスタンプ工程において、大面積の金属箔を転写する場合であっても、数種の装飾用塗料を塗布する場合であっても、均一な塗装を施した塗装ガラス容器が効率的に得られる塗装ガラス容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、下記(1)〜(4)の工程を含むことを特徴とする塗装ガラス容器の製造方法が提供され、上述した問題点を解決することができる。
(1)ガラス容器を準備する工程
(2)ガラス容器の所定箇所に印刷用インクを塗布して、半硬化させる工程
(3)加熱弾性体を用いてホットスタンピング箔を押圧し、印刷用インクに対応させて、表面の濡れ指数が25dyn/cm以上である金属箔を転写させる工程
(4)転写した金属箔の上から、ガラス容器の表面を塗装する工程
すなわち、このように実施することにより、ホットスタンプ工程のあとに、塗装工程の実施が可能であって、かつ、ホットスタンプ工程において、大面積の金属箔を転写する場合であっても、数種の装飾用塗料を塗布する場合であっても、均一な塗装を施した塗装ガラス容器を短時間かつ効率的に得ることができる。
なお、金属箔の表面の濡れ指数は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0011】
本発明の塗装ガラス容器の製造方法を実施するに際して、工程(3)において、金属箔の表面に、当該表面の濡れ指数を25dyn/cm以上とするための剥離調整層が形成してあるホットスタンピング箔を用いることが好ましい。
このように剥離調整層として、例えば、エポキシアクリレート樹脂や、エポキシ樹脂およびアクリレート樹脂の混合物を含む樹脂層を備えた金属箔を形成することにより、ホットスタンプ工程において、大面積の金属箔を転写する場合であっても、数種の装飾用塗料を塗布する場合であっても、密着性に優れた塗膜を確実に形成することができ、装飾性や耐久性に優れた塗装ガラス容器を効率的に製造することができる。
なお、ガラス容器の表面を塗装する工程を実施する前に、剥離調整層の表面の濡れ指数が所定範囲であることを確認するための確認工程を設けることが好ましい。
【0012】
本発明の塗装ガラス容器の製造方法を実施するに際して、工程(3)において、転写した金属箔の面積比率を、100cm2あたり、1〜80%の範囲内の値とすることが好ましい。
このように金属箔の面積比率を考慮して実施することにより、ホットスタンプ工程において、面積や形状等が異なる複数の金属箔を転写する場合であっても、密着性に優れた塗膜を確実に形成することができ、装飾性に優れた塗装ガラス容器をさらに短時間かつ効率的に製造することができる。
【0013】
本発明の塗装ガラス容器の製造方法を実施するに際して、工程(3)において、転写した金属箔の表面を洗浄し、当該表面の濡れ指数を25dyn/cm以上の値とすることが好ましい。
このように実施することにより、ホットスタンプ工程のあとに、塗装工程の実施が可能であって、密着性にさらに優れた塗膜を簡便な方法で確実に形成することができる。
【0014】
本発明の塗装ガラス容器の製造方法を実施するに際して、工程(3)において、金属箔を転写するとともに、当該金属箔の一部に、ガラス表面を露出させるための開口部を設けることが好ましい。
このように実施することにより、いわゆる中抜け模様の金属箔を転写する場合であっても、精度良くパターニングできるとともに、その金属箔の上に、密着性に優れた塗膜を形成することができる。
【0015】
本発明の塗装ガラス容器の製造方法を実施するに際して、工程(3)において、ガラス容器を回転させながら、加熱弾性体を用いてホットスタンピング箔を押圧することが好ましい。
このように実施することにより、ホットスタンプ工程において、円筒形等のガラス容器に対しても、装飾性に優れた金属箔を容易かつ精度良く転写することができる。
【0016】
本発明の塗装ガラス容器の製造方法を実施するに際して、工程(3)において、複数の金属箔を転写することが好ましい。
このように実施することにより、ホットスタンプ工程において、複数の金属箔が転写され、装飾性にさらに優れた塗装ガラス容器を効率的に得ることができる。
【0017】
本発明の塗装ガラス容器の製造方法を実施するに際して、工程(2)において、印刷用インクとして、消泡剤を含むエポキシ系接着剤を用いることが好ましい。
このように実施することにより、金属箔と、印刷インクとの間の密着性が向上し、装飾性に優れた金属箔を強固な状態で転写することができる。
【0018】
本発明の塗装ガラス容器の製造方法を実施するに際して、工程(4)において、ポリオール化合物を含むアクリルメラミン系塗料を被覆して、塗装することが好ましい。
このように実施することにより、ホットスタンプ工程のあとに、塗装工程の実施が可能であって、かつ、ホットスタンプ工程において、大面積の金属箔を転写する場合であっても、数種の装飾用塗料を塗布する場合であっても、均一な塗装を施した塗装ガラス容器を短時間かつ効率的に得ることができる。
【0019】
本発明の塗装ガラス容器の製造方法を実施するに際して、工程(1)において、表面に下地層を備えたガラス容器を準備することが好ましい。
このように実施することにより、装飾性にさらに優れた塗装ガラス容器を効率的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[第1の実施形態]
本発明におけるガラス容器に対するホットスタンプ方法は、下記(1)〜(4)の工程を含むことを特徴とする塗装ガラス容器の製造方法である。
(1)ガラス容器を準備する工程(工程(1)と称する場合がある。)
(2)ガラス容器の所定箇所に印刷用インクを塗布して、半硬化させる工程(工程(2)と称する場合がある。)
(3)加熱弾性体を用いてホットスタンピング箔を押圧し、印刷用インクに対応させて、表面の濡れ指数が25dyn/cm以上である金属箔を転写させる工程(工程(3)と称する場合がある。)
(4)転写した金属箔の上から、ガラス容器の表面を塗装する工程(工程(4)と称する場合がある。)
すなわち、図3および図4に示すように、工程(3)であるホットスタンプ工程において、大面積等の金属箔を転写する場合であっても、その上に、密着性に優れた塗膜を確実に形成することができ、その結果、装飾性や耐久性に優れた塗装ガラス容器を効率的に製造することができる。
以下、本発明の実施形態に係る塗装ガラス容器の製造方法につき、図3および図4等を適宜参照しながら、工程ごとに分けて具体的に説明する。
【0021】
1.ガラス容器準備工程
図3に示すガラス容器準備工程(1)において準備するガラス容器は、例えば化粧品容器や薬品収納用等に用いられるガラス容器であって、最終商品の用途、グレード等に適した形態を有するガラス容器を準備することが好ましい。
また、図3に示す次工程の印刷用インク塗布工程(2)において、ガラス容器との密着性にさらに優れた印刷用インクからなる隆起表示部を形成するために、サンドブラスト加工やフッ酸処理等によって、あらかじめ表面を粗らしたスモークドガラス容器を準備することも好ましい。
さらに、準備するガラス容器としては、美観や耐久性にさらに優れていることから、塗料を全体または部分的に予め塗布した塗装済のガラス容器を用いることも好ましい。
【0022】
また、ガラス容器準備工程(1)において、所定温度に調整されたガラス容器を準備することが好ましい。すなわち、次工程の印刷用インク塗布工程において、ガラス容器との密着性にさらに優れた印刷用インクからなる隆起表示部を形成するために、ガラス容器の平均温度を20〜60℃の範囲内の値にするとともに、温度分布を±10℃以内の値に制御することが好ましい。
この理由は、ガラス容器の平均温度が20℃未満の値となると、印刷用インクを塗布した際に、半硬化せずに、長時間流動状態を保つ場合があるためである。一方、ガラス容器の平均温度が60℃を超えると、印刷用インクの硬化状態の制御が困難となる場合があるためである。さらに、温度分布が±10℃を超えると、同様に、印刷用インクの硬化状態の制御が困難となって、ガラス容器との密着性に優れた、印刷用インクからなる隆起表示部を形成することが困難となる場合があるためである。
したがって、印刷用インクの硬化状態をより良好なものとするために、ガラス容器の平均温度を25〜50℃の範囲内の値とすることがより好ましく、30〜45℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。そして、ガラス容器の温度分布を±8℃の値にすることがより好ましく、温度分布を±5℃以内の値に制御することがさらに好ましい。
なお、かかるガラス容器の平均温度や温度分布を所定範囲に制御するには、製造工程中に、火炎照射部を設けて、ガラス容器の側面等に火炎を噴射したり、あるいは、工程中に、乾燥室を設けて乾燥空気等を吹き付けたりすることにより実施することが好ましい。そして、その際に、ガラス容器の平均温度や温度分布をリアルタイムでモニタしながら制御することがより好ましい。
【0023】
2.印刷用インク塗布工程
図3に示す印刷用インク塗布工程(2)は、印刷用インクを塗布し、次いで、それを部分硬化させて、半硬化状態の印刷用インクからなる隆起表示部を形成する工程である。より具体的には、図4(A)に示すガラス容器42の表面に、図4(B)に示すように、半硬化状態の印刷用インクからなる隆起表示部44aを直接的または間接的に形成する工程である。
かかる印刷用インク塗布工程は、ガラス容器との密着性に優れ、しかも線幅が細い場合であっても、均一な幅や高さを有する隆起表示部を形成しやすくするための工程である。さらに、かかる印刷用インク塗布工程は、次工程の金属箔転写工程において、その上に金属箔を精度良く転写するためにも重要な工程である。
【0024】
ここで、印刷用インクの種類としては、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、またはポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂を主成分とした樹脂インクを挙げることができる。
これらの樹脂インクであれば、ガラス容器上に比較的均一に塗布できる一方、簡易な乾燥処理により半硬化状態とすることができ、しかも、ガラス容器に対して、優れた密着性を示すことができる。
【0025】
また、これらの樹脂インクのうち、ガラス容器との密着性、金属箔との密着性、線幅が細いパターンへの対応性、硬化後の機械的強度、半硬化状態の制御性、作業性などがより良好なことから、エポキシ樹脂を主成分とした樹脂インクを用いることがより好ましい。
すなわち、エポキシ樹脂を主成分とした樹脂インクであれば、ガラス容器や金属箔に対して、特異的に優れた密着性を示すことができる一方、機械的強度や耐熱性に優れており、ホットスタンプした際に、金属箔を精度良く転写することが可能である。
なお、エポキシ樹脂を使用する場合、硬化剤として、ポリアミン化合物、イミダゾール化合物、メルカプト化合物、カルボン酸化合物等を所定量添加することが好ましい。
また、印刷用インクとして、上述した樹脂インクのかわりに、あるいは、樹脂インクと併用して、鉛を含むセラミックインクを使用することも好ましい。このようなセラミックインクであれば、熱劣化が少なく、高温での加熱硬化が可能であるため、ガラス容器に対して、極めて優れた密着力を示すことができる。
【0026】
また、印刷用インク中に、印刷用インクにおける主成分100重量部に対して、0.1〜20重量部の範囲になるように、シランカップリング剤を含むことが好ましい。
この理由は、このようにシランカップリング剤を含むことにより、印刷用インクのガラス容器に対する密着性を飛躍的に向上させることができるためである。また、シランカップリング剤を含むことにより、金属箔に対する印刷用インクの密着性を向上させることができるため、金属箔を精度良く転写することができる。
さらに、シランカップリング剤を含むことにより、消泡効果を発揮させて、印刷用インクにおける泡立ちを有効に防止することができるため、印刷用インクをさらに精度良く塗布し、良好な形状の隆起表示部を形成することができる。
なお、シランカップリング剤の種類についても、特に制限されるものではないが、例えば、シランカップリング剤が、アミン系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、およびウレイド系シランカップリング剤からなる群から選択される少なくとも一つのシランカップリング剤を使用することが好ましい。
【0027】
また、印刷用インク中に、上述したシランカップリング剤のほかに、各種添加剤を含むことも好ましい。このような添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、流動性調整剤、粘度調整剤、稀釈剤、溶剤、無機フィラー、金属粒子、熱膨張性粒子等が挙げられる。
特に、酸化防止剤や紫外線吸収剤を含むことにより、印刷用インクの酸化劣化等を防止できるため、その結果、ガラス容器に対する密着性の経時的低下を有効に防止することができる。
また、流動性調整剤、粘度調整剤、稀釈剤、または溶剤を含むことにより、印刷用インクの塗布性や、ガラス容器に対する印刷用インクの密着性を向上させることができる。さらに、無機フィラー、金属粒子、または熱膨張性粒子を含むことにより、印刷用インクからなる隆起表示部の形態の調整が容易となる。
【0028】
また、印刷用インクの粘度を100〜100,000cps(mPa・s、25℃)の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる印刷用インクの粘度が100cps未満の値となると、所定幅や、所定高さを有する印刷用インクからなる隆起表示部を形成することが困難となる場合があるためである。
一方、かかる印刷用インクの粘度が100,000cpsを超えると、気泡を巻き込みやすくなって、均一な厚さからなる隆起表示部を形成することが困難となる場合があるためである。
したがって、より良好な隆起表示部を形成することができることから、印刷用インクの粘度を300〜10,000cps(25℃)の範囲内の値とすることがより好ましく、500〜5,000cps(25℃)の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0029】
また、印刷用インクからなる隆起表示部の厚さを0.1μm〜100μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる隆起表示部の厚さが0.1μm未満の値となると、浮き出て見える効果が低下するとともに、金属箔の転写を精度良く実施することが困難となる場合があるためである。一方、かかる隆起表示部の厚さが100μmを越えた値となると、精度良く印刷することが困難となる場合があるためである。
したがって、印刷用インクからなる隆起表示部の厚さを0.5μm〜50μmの範囲内の値とすることがより好ましく、1μm〜25μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、印刷用インクからなる隆起表示部の幅は、文字、図形等の大きさや形状によって変化するものの、例えば、1μm〜20mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる隆起表示部の幅が1μm未満の値となると、線幅が細いパターンの再現性に乏しくなる場合があるためである。一方、かかる隆起表示部の幅が20mmを越えると、金属箔を精度良く転写することが困難となる場合があるためである。
したがって、印刷用インクからなる隆起表示部の幅を5μm〜10mmの範囲内の値とすることがより好ましく、10μm〜500μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0030】
また、印刷用インクの塗布方法としては、特に制限されるものでなく、公知のスクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法などの印刷方法を用いることができる。
ただし、品質の良い隆起表示部を形成するという観点から、スクリーン印刷を特に好ましく用いることができる。
【0031】
ここで、図5及び図6に、印刷用インク塗布工程に好ましく用いられるスクリーン印刷装置51、61を模式的にそれぞれ示す。すなわち、一般に曲面を有するガラス容器の表面に対して、精度良く、かつ大面積のスクリーン印刷を行うためには、スクリ−ンの円滑な移動と、このスクリーンの移動に同期したガラス容器表面の円滑な移動が重要である。したがって、この移動を考慮して作成した図5に示すスクリーン印刷装置51は、断面が円形であるガラス容器52の表面にスクリーン印刷を行うのに適したスクリーン印刷装置(タイプ1)である。同様に、図6に示すスクリーン印刷装置61は、断面が楕円形であるガラス容器62の表面にスクリーン印刷を行うのに適したスクリーン印刷装置(タイプ2)である。
すなわち、図5に示すスクリーン印刷装置51は、ほぼ円形の断面形状を有するとともに、その断面積が比較的小さなガラス容器52に適しており、そのため、例えば2個ずつ、2列に配列された回転ローラ56が設けられていて、その上にガラス容器52を載置可能に構成してあることが好ましい。
一方、図6に示すスクリーン印刷装置61は、楕円の断面形状を有するとともに、その断面積が比較的大きなガラス容器84に適しており、そのため、上面が、ガラス容器84の断面形状に対応した楕円形状を有する受け皿80が設けてあって、その上にガラス容器84が収容可能に構成してあることが好ましい。
【0032】
また、塗布した印刷用インク(印刷用インクからなる隆起表示部)を、所望により乾燥して、半硬化することが好ましい。
すなわち、溶剤等を多量に含んでいる場合には、次工程の金属箔転写工程において、ホットスタンプされる金属箔と隆起表示部との間で、密着性を確保することが困難となる場合があるためである。
ただし、過度に乾燥すると、塗布した印刷用インクの硬化が進み、逆に金属箔と隆起表示部との間で、密着性を確保することが困難となる場合がある。
したがって、塗布した印刷用インクを乾燥する場合、隆起表示部を構成する印刷用インクを完全硬化させずに半硬化状態に保つため、例えば、50〜100℃の温度にて、1秒〜10分程度加熱することが好ましい。
なお、印刷用インクの半硬化とは、完全硬化されるに至っていない状態(未硬化状態を含む。)を意味し、ホットスタンプする際に加熱することによって活性化できる硬化状態であれば良い。
【0033】
3.金属箔転写工程
図3に示す金属箔転写工程(3)は、加熱弾性体を用いて、ホットスタンピング箔から金属箔を転写させる工程である。より具体的には、図5(B)に示す半硬化状態の印刷用インクからなる隆起表示部44aに対応させて、金属箔46を転写させる工程である。
ここで、図7(A)〜(B)に、本発明のホットスタンプ方法に使用される金属箔転写装置80の一例を示す。
まず、図7(A)は、金属箔転写装置80を、シリコーンゴムからなる回転ローラ94の軸方向から見たときの断面図であり、図7(B)は、金属箔転写装置80を、ホットスタンピング箔90の移動方向に沿ってみたときの正面図である。
そして、この金属箔転写装置80は、図7(A)に示されるように、加熱弾性体として、シリコーンゴムからなる回転ローラ94を備えている。この回転ローラ94は、回転ローラ94に凹凸を設けてあり、そのうちの凸部96によって、ホットスタンピング箔90を介してガラス容器82を押圧し、金属箔を破断転写させる機能を有している。
また、回転ローラ94と、ホットスタンピング箔90と、ガラス容器82とは、所定距離において、一体となって移動することが可能な構造であることが好ましい。このように構成すると、ガラス容器82に対する回転ローラ94の押圧力が均一化される一方、比較的大面積であっても、精度良く、金属箔を転写することが可能となる。
【0034】
また、金属箔転写工程において、加熱弾性体として、硬度40〜90のシリコーンゴムからなる回転ローラを用いることが好ましい。
すなわち、このように加熱弾性体として、所定範囲の硬さを有する回転ローラを用いることにより、所望パターンに対応したホットスタンピング箔の転写個所のみを適度に加熱押圧することができるためである。逆に言うと、硬度40未満のシリコーンゴムからなる加熱弾性体を用いても、柔らかすぎて、精度良く金属箔を破断転写することが困難となる場合があるためである。一方、硬度90を超えるシリコーンゴムからなる加熱弾性体を用いた場合、硬すぎて、所定個所のみを均一に押圧することが不可能となって、同様に、精度良く金属箔を転写することが困難となる場合があるためである。しかも、硬度90を超えるシリコーンゴムからなる加熱弾性体を用いた場合、押圧した場合に、ガラス容器を破損させる場合があるためである。
したがって、より精度良く金属箔を転写することが可能となることから、硬度45〜85のシリコーンゴムからなる加熱弾性体を用いることがより好ましく、硬度50〜80のシリコーンゴムからなる加熱弾性体を用いることがさらに好ましい。
【0035】
また、加熱弾性体として、シリコーンゴムを用いているため、耐久性に優れているとともに、所定の離型性を有しており、加熱押圧後に、シリコーンゴムを移動させたとしても、一旦転写した金属箔を引き剥がすことが少なくなる。
そのため、ホットスタンプの引き剥がし動作がスムーズに進行し、線幅が細いパターンからなる金属箔、例えば、1mm以下の線幅が細いパターンからなる金属箔であっても、さらに精度良く転写することが可能となる。
なお、このようなシリコーンゴムの硬度は、シリコーンゴムに添加する架橋剤の添加量や、架橋剤の種類、あるいは架橋方法により、適宜変更することができる。また、シリコーンゴムの表面に対して、紫外線を照射することによっても、シリコーンゴムの硬度を変更することができる。また、シリコーンゴムの硬度は、硬度計により測定することができる。
【0036】
その他、図8に示される金属箔転写装置は、加熱弾性体の一例として、シリコーンゴムからなる回転ローラを有しているが、加熱弾性体の形態としては、適宜変更することができ、これに限られるものではない。
例えば、図8(B)に示すように、加熱弾性体が回転ローラの形態を有しているものの、その表面に凹凸部が設けてあり、このうち凸部96を用いて、ホットスタンピング箔から金属箔を転写させることが好ましい。
このような加熱弾性体を用いることにより、金属箔を転写したい個所に対してのみ、金属箔を選択的に転写することができる。
また、加熱弾性体として、回転ロールの形態ではなく、シート状のシリコーンゴムからなるスタンプを使用することも好ましい。このように構成すると、シリコーンゴムが劣化した場合には迅速に変更することができる一方、ホットスタンピング動作を行う機構をもった金属箔転写装置等も好ましく用いることができる。
【0037】
また、使用するホットスタンピング箔90の構造例を、図7(A)および図8を参照して説明する。
まず、図7(A)に示すホットスタンピング箔90の例では、基材91と、金属蒸着層を含む金属箔層92と、から構成してあるが、このような簡易な構成のホットスタンピング箔90であれば、極めて安価であることから好適に使用することができる。
また、図8に別のホットスタンピング箔102の例を示すが、このホットスタンピング箔102は、基材104と、この基材104の背面側にある背面層103と、基材104の腹面側に設けてある剥離層105と、蒸着アンカー層106と、金属蒸着層107と、接着層108と、から構成してある。このようなホットスタンピング箔102を用いることにより、金属箔をさらに精度良く転写することができる。
【0038】
そして、例えば、図7(A)に示す構成のホットスタンピング箔90を用いた場合、このホットスタンピング箔90は、ガラス容器82の表面にある隆起表示部84に当接した状態で、加熱状態にある回転ローラにより押圧されると、その部分だけ金属箔側層92の接着層(図示せず。)に含まれるワックスやアクリル樹脂等が溶け出すことになる。そのため、金属蒸着層としての金属箔が破断剥離して、半硬化状態の隆起表示部84が活性化されるに伴い、隆起表示部84に対して強固に付着して、転写することができる。
【0039】
一方、回転ローラにより加圧されない部分のホットスタンピング箔90については、接着層に含まれるワックスやアクリル樹脂等が十分に溶融せずに、金属蒸着層としての金属箔はホットスタンピング箔90からそのまま剥離せず、したがって、ガラス容器82の隆起表示部84以外の領域には付着しないことになる。
すなわち、回転ローラにより加圧された部分のみが、金属蒸着層としての金属箔が破断剥離した後、半硬化した状態にある印刷用インクからなる隆起表示部84についても、加熱されて活性化される。それに伴い、金属箔は、隆起表示部84に対して付着することにより、例えば、1mm以下の線幅が細いパターンを有する金属箔であっても、精度良く転写されて、外観性に優れたメタリック表示部86を形成することができる。
【0040】
また、ホットスタンプを良好に行うためには、加える圧力にもよるが、例えば、加熱弾性体の表面温度を160〜230℃の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる加熱弾性体の表面温度が160℃未満となると、半硬化した状態にある印刷用インクが十分に活性化せず、金属箔が破断剥離した後、半硬化した状態にある印刷用インクからなる隆起表示部に対して付着することが困難となる場合があるためである。また、かかる加熱弾性体の表面温度が160℃未満となると、ホットスタンピング箔におけるワックスやアクリル樹脂等が十分に溶融せず、その結果、微細な形状の金属箔からなるホットスタンプを実施することが困難となる場合があるためである。
一方、かかる加熱弾性体の表面温度が230℃を超えると、半硬化した状態にある印刷用インクが過度に活性化し、金属箔が破断剥離した後、逆に、隆起表示部に対して付着することが困難となったり、あるいは、金属箔の位置ズレが生じたりする場合があるためである。また、かかる加熱弾性体の表面温度が230℃を超えると、ホットスタンピング箔自体が熱変形し、その結果、微細な形状の金属箔からなるホットスタンプを実施することが困難となる場合があるためである。
したがって、加熱弾性体の表面温度を170〜220℃の範囲内の値とすることがより好ましく、180〜210℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0041】
また、ホットスタンピングの際の加熱弾性体による加圧時間を0.1〜30秒の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる加圧時間が0.1秒未満となると、半硬化した状態にある印刷用インクが十分に活性化せず、金属箔が破断剥離した後、半硬化した状態にある印刷用インクからなる隆起表示部に対して付着することが困難となる場合があるためである。また、かかる加圧時間が0.1秒未満となると、ホットスタンピング箔におけるワックスやアクリル樹脂等が十分に溶融せず、その結果、微細な形状の金属箔からなるホットスタンプを実施することが困難となる場合があるためである。
一方、かかる加圧時間が30秒を超えると、半硬化した状態にある印刷用インクが過度に活性化し、金属箔が破断剥離した後、逆に、隆起表示部に対して付着することが困難となったり、あるいは、金属箔の位置ズレが生じたりする場合があるためである。また、かかる加圧時間が30秒を超えると、ホットスタンピング箔自体が熱変形したり、生産効率が過度に低下したりする場合があるためである。
したがって、ホットスタンピングの際の加熱弾性体による加圧時間を0.5〜20秒の範囲内の値とすることがより好ましく、1〜10秒の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0042】
さらに、ホットスタンピングの際の加熱弾性体によって加える圧力を0.098〜9.8MPa(1〜100Kgf/cm2)の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる圧力が0.098MPa未満となると、ホットスタンピング箔における金属箔を破断剥離することが困難となる場合があるためである。
一方、かかる圧力が9.8MPaを超えると、金属箔の位置ズレが生じたり、ガラス容器が破損したりする場合があるためである。
したがって、ホットスタンピングの際の加熱弾性体によって加える圧力を0.49〜7.35MPaの範囲内の値とすることがより好ましく、0.98〜4.9MPaの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0043】
また、複数のホットスタンプ箔、例えば、2〜10種類のホットスタンプ箔を用いて、複数の金属箔を転写させることが好ましい。
このように実施することにより、ガラス容器の同一場所に重ねてホットスタンプした場合には、文字や図柄がさらに盛り上がった美麗なメタリック加飾を施すことができる。
また、ガラス容器の異なる場所にホットスタンプした場合には、よりに美的外観に優れたメタリック加飾を施すことができる。
さらに、一部の文字や記号等のみ、複数のホットスタンプ箔を用いて、複数の金属箔を転写させることも好ましい。
【0044】
また、金属箔転写工程において、表面の濡れ指数が25dyn/cm以上である金属箔を転写させることを特徴とする。
この理由は、このように実施することにより、ホットスタンプ工程のあとに、塗装工程の実施が可能であって、かつ、ホットスタンプ工程において、大面積の金属箔を転写する場合であっても、数種の装飾用塗料を塗布する場合であっても、均一な塗装を施した塗装ガラス容器を短時間かつ効率的に得ることができるためである。
但し、表面の濡れ指数の値が過度に大きくなると、ホットスタンプ工程において、大面積の金属箔を転写する場合や、微細パターンを有する金属箔を転写する場合に、これらの金属箔を精度良く転写することが困難となる場合がある。
したがって、金属箔の表面の濡れ指数を30〜70dyn/cmの範囲内の値とすることが好ましく、40〜60dyn/cmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0045】
なお、金属箔の表面の濡れ指数が所定範囲であることを確認するための確認工程を設けることが好ましい。そして、金属箔の表面の濡れ指数は、金属箔の種類、金属箔に対する表面処理剤の種類、かかる表面処理剤の処理量、金属箔に対する表面処理方法、後述する剥離調整層の有無、金属箔の表面洗浄等によって、適宜変更することができる。
さらに、簡易な金属箔の表面の濡れ指数の調整方法として、シラン原子を含む改質剤化合物として、沸点が10〜120℃である改質剤化合物、例えば、テトラメチルシランやヘキサメチルジシロキサンを含む燃料ガスに由来した火炎を、固体物質の表面に対して、全面または部分的に吹き付け処理するケイ酸化炎処理を行うことが好ましい。より具体的には、イトロ処理(イシマット・ジャパン株式会社、登録商標)を行うことが好ましい。
この理由は、かかるイトロ処理によれば、金属箔の表面の濡れ指数を、短時間で任意の値に調整することができるばかりか、金属箔の表面と、その上の塗膜との間の密着性を飛躍的に向上させることができるためである。
【0046】
ここで、図1を参照して、金属箔における表面の濡れ指数と、粘着テープを用いた密着性との関係を説明する。
すなわち、図1の横軸には、金属箔における表面の濡れ指数(dyn/cm)を採って示してあり、図1の縦軸には、粘着テープ(メンディングテープ、住友スリーエム(株)製、幅10mm相当)を用いて測定される90°剥離力(剥離速度100mm/分)としての密着力(g/10mm)採って示してある。
そして、図1中のラインAが、金属箔の面積比率が10%の場合を示しており、同様に、ラインBが、金属箔の面積比率が50%の場合を示している。
かかる図1に示すラインAから容易に理解できるように、金属箔における表面の濡れ指数が25(dyn/cm)を超えると、金属箔と、その上に形成した硬化塗膜の密着性が立ち上がり、急激に向上している。また、図1のラインBも同様の傾向であるが、若干、立ち上がりが、ラインAと比較して緩やかな傾向を示している。
したがって、金属箔の面積比率によって若干異なるものの、金属箔における表面の濡れ指数を25(dyn/cm)以上の値とすることにより、金属箔と、その上に貼付した粘着テープとの密着性とを効果的に高めることが理解される。すなわち、金属箔を含むガラス表面における塗膜に対しても同様の効果が発揮されることが期待される。
【0047】
次いで、図2を参照して、金属箔における表面の濡れ指数と、金属箔の上に形成した硬化塗膜の密着性との関係を説明する。
なお、形成した硬化塗膜は、実施例1に準拠して、160℃×20分の焼付け条件で形成した厚さ25μmの硬化塗膜である。
すなわち、図2の横軸には、金属箔における表面の濡れ指数(dyn/cm)を採って示してあり、図2の縦軸には、JIS K 5600に基づいた碁盤目試験により測定される硬化塗膜における、100碁盤目あたりのはがれ数(個/100碁盤目)を採って示してある。そして、図2の特性曲線は、金属箔の積比率が10%の場合を示している。
かかる図2から容易に理解できるように、金属箔における表面の濡れ指数が25(dyn/cm)を超えると、碁盤目試験での剥離数(個/100碁盤目)が急激に低下し、その後安定化する傾向を示している。
したがって、金属箔の面積比率によって若干異なることが予定されるものの、金属箔における表面の濡れ指数を25(dyn/cm)以上の値とすることにより、金属箔と、その上に形成した硬化塗膜の密着性とを、効果的に高めることが理解される。
【0048】
また、金属箔の表面に、当該表面の濡れ指数を25dyn/cm以上とするための剥離調整層が形成してあるホットスタンピング箔を用いることも好ましい。
この理由は、剥離調整層を備えた金属箔を形成することにより、ホットスタンプ工程において、大面積の金属箔を転写する場合であっても、数種の装飾用塗料を塗布する場合であっても、密着性に優れた塗膜を確実に形成することができ、装飾性や耐久性に優れた塗装ガラス容器を効率的に製造することができるためである。
なお、剥離調整層としては、シリカ粒子、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、あるいはエポキシ系樹脂等からなるプライマー層や、その他の樹脂層が該当する。そして、剥離調整層の機能を有効に発揮すべく、その厚さを0.01〜20μmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0049】
また、転写した金属箔の面積比率を、100cm2あたり、1〜80%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように金属箔の面積比率を考慮することにより、ホットスタンプ工程において、面積や形状等が異なる複数模様の金属箔を転写する場合であっても、密着性に優れた塗膜を確実に形成することができるためである。すなわち、金属箔の面積比率が1%未満の値になると、表面の導電性が変化して、逆に、静電塗装することが困難となる場合があるためである。一方、金属箔の面積比率が80%を超えると、所定パターンを有する金属箔を精度良く転写することが困難となったり、表面の導電性が変化して、逆に、静電塗装することが困難となったりする場合があるためである。
したがって、静電塗装を安定的に実施し、装飾性に優れた塗装ガラス容器をさらに短時間かつ効率的に製造することができることから、金属箔の面積比率を、100cm2あたり、5〜70%の範囲内の値とすることがより好ましく、20〜50%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0050】
また、転写した金属箔の表面を洗浄し、当該表面の濡れ指数を25dyn/cm以上の値とすることが好ましい。
この理由は、このように実施することにより、金属箔の表面に付着した剥離剤等を除去して、塗装工程を安定的に実施することが可能になり、そのため、金属箔の表面に対して、密着性にさらに優れた塗膜を形成することができるためである。
なお、金属箔の表面を洗浄する際に、洗浄剤として、グリコールやアルコール等を使用することが好ましく、さらに洗浄力を高めたい場合には、アミン化合物を、例えば、洗浄剤の全体量に対して、0.1〜30重量%の範囲で添加することが好ましい。
但し、金属箔の表面を洗浄すると、表面を傷つけたり、光沢性を低下させたりする場合がある。
したがって、転写した金属箔の表面の濡れ指数を洗浄のみで調整する場合、30dyn/cm〜50dyn/cmの範囲内の値とすることがより好ましく、35dyn/cm〜45dyn/cmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0051】
また、金属箔を転写するとともに、当該金属箔の一部に、ガラス表面を露出させるための開口部を設けることが好ましい。
この理由は、このように実施することにより、いわゆる中抜け模様の金属箔を転写する場合であっても、精度良くパターニングできるとともに、その金属箔の上に、密着性に優れた塗膜を形成することができるためである。
なお、かかる開口部の形状としては、特に制限されるものではないが、例えば、円形、楕円形、多角形、線状、星型、文字形状、数字形状、花形状等の一種または二種以上の組み合わせが挙げられる。したがって、唐草模様等の複雑な金属箔パターンを形成し、さらに装飾性に優れた塗装ガラス容器とすることができる。
【0052】
4.塗装工程
また、塗装工程において、塗料の種類は特に制限されるものではないが、例えば、ポリオール化合物を含むアクリルメラミン系塗料を被覆して、塗装することが好ましい。
ここで、アクリルメラミン系塗料を構成するホルムアルデヒド系樹脂の種類としては、メラミン樹脂、フェノ−ル樹脂、ユリア樹脂、グアナミン樹脂およびこれらの誘導体が代表的である。より具体的には、アルキルエーテル化メラミン樹脂(アルキル部分が、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、またはi−ブチル基)が、耐水性や耐候性に優れていることからより好適である。
また、ホルムアルデヒド系樹脂に、ポリオール化合物、例えば、ヒドロキシル基含有アクリル樹脂、ヒドロキシル基含有エポキシ樹脂、ヒドロキシル基含有ポリエステル樹脂、ヒドロキシル基含有ウレタン樹脂等を反応させて構成したポリオール変性ホルムアルデヒド系樹脂を使用することも好ましい。
この理由は、このようなポリオール変性ホルムアルデヒド系樹脂を使用することにより、ガラスに対する密着力を向上させるとともに、硬化塗膜の平滑性や薄膜性をより向上させることができるためである。
【0053】
また、アクリルメラミン系塗料において、ホルムアルデヒド系樹脂の硬化剤(硬化触媒を含む。以下、同様である。)を含むことが好ましい。
このような硬化剤としては、シュウ酸ジメチルエステル、シュウ酸ジエチルエステル、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、モノクロロ酢酸ナトリウム塩、モノクロロ酢酸カリウム塩、α、α−ジクロロヒドリン、エチルアミン塩酸塩、トリエタノールアミン塩酸塩、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム塩、硫酸アンモニウム塩、尿素誘導体、イミドスルフォン酸ニアンモニウム等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
また、ホルムアルデヒド系樹脂の硬化剤の添加量を、ホルムアルデヒド系樹脂100重量部に対して、0.1〜30重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる硬化剤の添加量が0.1重量部未満の値となると、添加効果が発現しない場合があるためであり、一方、かかる硬化剤の添加量が30重量部を超えると、ホルムアルデヒド系樹脂の反応性を制御することが困難となる場合があるためである。
【0054】
また、アクリルメラミン系塗料において、ポリオール化合物として、以下に示すようなアクリルポリオール化合物、ポリエステルポリオール化合物、含フッ素ポリオール化合物、ラクトンポリオール化合物等を添加することが好ましい。
すなわち、アクリルポリオール化合物として、ヒドロキシル基含有アクリルモノマーと、他のエチレン性不飽和モノマーとを、共重合して得られるポリオール化合物を添加することが好ましい。
また、ポリエステルポリオール化合物として、多価カルボン酸と、アルコール成分との重縮合物を添加することが好ましい。
【0055】
また、含フッ素ポリオール化合物として、少なくともヒドロキシル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーと、フルオロオレフィンモノマーとを共重合して得られるポリオール化合物、あるいは、フルオロオレフィンモノマーを重合させて得られるヒドロキシル基を有しないフッ素ポリマーに、アクリルポリオール化合物を混合して得られるポリオール化合物を添加することが好ましい。
さらに、ラクトンポリオール化合物は、ラクトンモノマー(γ−ラクトン、β−ラクトン、δ−ラクトン)を、アルコール類、あるいは芳香性液体やアルカリ剤を用いて開環して得られる化合物を添加することが好ましい。
ただし、これらのポリオール化合物のうち、比較的少量の添加により、硬化塗膜の強度の改良効果を発現することができることから、ラクトンポリオール化合物を使用することがより好ましい。
【0056】
また、アクリルメラミン系塗料に用いるポリオール化合物におけるヒドロキシル価を5〜300mgKOH/gの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるヒドロキシル価が5mgKOH/g未満の値となると、硬化性反応基量が少なすぎて、ホルムアルデヒド系樹脂やシランカップリング剤との反応性や、ポリオール化合物自身の硬化性が低下する場合があるためである。一方、かかるヒドロキシル価が300mgKOH/gを超えると、得られる塗膜に親水性基が残留し、塗膜の耐水性、耐酸性及び耐アルカリ性が低下する場合があるためである。
したがって、ポリオール化合物におけるヒドロキシル価を10〜250mgKOH/gの範囲内の値とすることがより好ましく、30〜200mgKOH/gの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0057】
また、アクリルメラミン系塗料に用いるポリオール化合物における数平均分子量を500〜20,000の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる数平均分子量が500未満の値となると、得られる塗膜の機械的強度が低下する場合があるためであり、一方、20,000を超えると、塗料組成物の粘度が高くなりすぎて、塗装性が低下する場合があるためである。
したがって、ポリオール化合物における数平均分子量を1,000〜18,000の範囲内の値とすることがより好ましく、1,800〜15,000の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0058】
また、アクリルメラミン系塗料に用いるポリオール化合物の添加量(含有量)を、ホルムアルデヒド系樹脂100重量部に対して、0.1〜100重量部の範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、かかるポリオール化合物の添加量が0.5重量部未満の値となると、硬化塗膜の密着性が著しく低下する場合があるためである。一方、かかるポリオール化合物の添加量が100重量部を超えると、硬化性蛍光組成物の反応性が著しく低下したり、あるいは得られる硬化塗膜の密着性や耐湿性が低下したりする場合があるためである。
したがって、ポリオール化合物の添加量(含有量)を、ホルムアルデヒド系樹脂100重量部に対して、1〜80重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、5〜50重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、図9を参照すれば、ポリオール化合物の添加量と、硬化塗膜のガラスに対する密着力(JIS K 5600に基づいた碁盤目試験により測定される硬化塗膜における100碁盤目あたりの、はがれ数(個/100碁盤目))との関係が容易に理解される。そして、初期評価結果を実線で示してあり、耐湿試験後(60℃×95%RH、24時間)の評価結果を点線で示してある。また、評価した硬化塗膜は、実施例1に準拠して、160℃×20分の焼付け条件で形成した厚さ25μmの硬化塗膜である。
【0059】
また、塗装工程において、複数の塗料を用いて、それらを組み合わせることにより、さらに装飾性に優れた塗装ガラス容器を得ることができる。
例えば、円筒形のガラス容器を、高さ方向に塗布するに際して、塗布場所を三分割(A、B,C)し、塗布場所Aには、青色の着色剤を含む塗料を用いて塗膜を形成し、塗布場所Bには、着色剤を含まない塗料を用いて透明塗膜を形成し、さらに塗布場所Cには、赤色の着色剤を含む塗料を用いて塗膜を形成することにより、従来にない、極めて装飾性に優れた塗装ガラス容器を得ることができる。
また、例えば、同様に円筒形のガラス容器を、高さ方向に塗布するに際して、場所を三分割(A、B,C)し、塗布場所Aには、青色の着色剤を比較多量に含む塗料を用いて第1の青色塗膜を形成し、塗布場所Bには、青色の着色剤を中程度含む塗料を用いて第2の青色塗膜を形成し、塗布場所Cには、青色の着色剤を少量含む塗料を用いて第3の青色塗膜を形成することにより、グラデーション効果を発揮する、従来にない装飾性に優れた塗装ガラス容器を得ることができる。
【0060】
5.硬化工程
印刷用インクの硬化工程は、金属箔を転写した後の半硬化した状態にある印刷用インクに対して、十分な加熱または光照射することにより、完全硬化させて、ガラス容器と印刷用インクとの間の密着性および、金属箔と印刷用インクとの間の密着性を、それぞれ向上させる工程である。
すなわち、この印刷用インク硬化工程により、ガラス容器に対するホットスタンピング方法が完結して、従来のものに比較してより微細な文字や図柄の盛り上がりのある美麗なメタリック加飾が施されたガラス容器を提供することができる。
ただし、ガラス容器の用途によっては、金属箔を転写しない状態の印刷用インクからなる文字や、図形等を混在して設ける場合があり、その場合には、印刷用インクのみの完全硬化が意図されることになる。
【0061】
また、印刷用インクの硬化工程において、熱硬化性樹脂からなる印刷用インクを用いた場合には、加熱温度を、通常140℃〜200℃の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる加熱温度が140℃未満となると、印刷用インクが十分に硬化せず、ガラス容器と印刷用インクとの間の密着性および、金属箔と印刷用インクとの間の密着性が向上しない場合があるためである。
一方、かかる加熱温度が200℃を超えると、半硬化した状態にある印刷用インクが急激に硬化し、内部クラックが生じたり、あるいは、金属箔が熱変形したり、金属箔の光沢が低下したりする場合があるためである。
したがって、かかる加熱温度を150〜180℃の範囲内の値とすることがより好ましく、160〜170℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、加熱時間は、加熱温度にもよるが、例えば、30秒〜30分の範囲内の値とすることが好ましい。
【実施例】
【0062】
[実施例1]
1.ホットスタンプ方法
(1)ガラス容器の準備工程
ベルトコンベヤ上に載置した円筒状のガラス容器を移動させながら、水シャワーにより十分に洗浄した後、加熱乾燥した。
次いで、ベルトコンベヤ上に載置したガラス容器を同様に移動させながら、ガラス容器の両側面から、ガスバーナーの火炎を噴射させて、ガラス容器の温度を高めるとともに、ガラス表面を乾燥させた。
その後、ベルトコンベヤ上に載置したガラス容器を、乾燥空気が循環する環境雰囲気中を移動させながら、ガラス容器の周囲湿度を50%RHとし、その平均温度を27℃とするとともに、ガラス容器における温度分布を均一化(±5℃以内)させた。
【0063】
(2)印刷用インクの塗布工程
以下の成分(A)〜(C)を含むスクリーン印刷用のブラックインクを、攪拌機を用いて、混合して調製した。また、このブラックインクに、希釈剤(D)を添加して、ポットライフ(最大3.5時間)が長くなるように調整して、塗布作業を円滑に行えるようにした。
(A)No.1900ブラック(ディーエムシースクェアー・ジャパン(株)製)
30g
なお、No.1900ブラックは、有機顔料、消泡剤(シランカップリング剤)、エポキシ樹脂、エステル系樹脂、印刷性向上剤、エーテル系溶剤、およびキシレンから構成されている。
(B)メジューム(T&D CERATEC Co.,LTD.製) 30g
なお、メジュームは、消泡剤(シランカップリング剤)、エポキシ樹脂、および溶剤から構成されている。
(C)硬化剤No.10(T&D CERATEC Co.,LTD.製) 15g
なお、硬化剤No.10は、ポリアミン樹脂、キシレン、およびn−ブタノールから構成されている。
(D)No.100希釈剤(ディーエムシースクェアー・ジャパン(株)製)
【0064】
次いで、スクリーン印刷装置として、曲面・平面両用スクリーン印刷機SK−250−V型(新栄工業(株)製)を用い、ガラス容器に対して、0.5mmの線幅を有するパターンと、10mmの線幅を有するパターンと、を含む混合パターンを形成するように、印刷用インクを塗布した。
次いで、ガラス容器を50℃で、1分間加熱して、印刷用インクを半硬化させて、所定の線幅を有する混合パターンからなる隆起表示部を形成した。
なお、転写工程において、金属箔の面積比率が、100cm2あたり、約10%となるように、隆起表示部の面積を調整した。
【0065】
(3)転写工程
次いで、ホットスタンプ装置(ナビタス(株)製)を用いて、半硬化状態にある隆起表示部に対して、表面温度が200℃に調整された加熱弾性体により、30kgf/cm2、2秒間の条件で、ホットスタンピング箔を押し付けた。次いで、隆起表示部に金属箔を付着させ、金属箔を転写して、メタリック表示部を形成した。
なお、加熱弾性体としては、硬度計で測定した硬度が65のシリコーンゴムからなる図7(B)に示す回転ローラを用いた。
また、ホットスタンピング箔の基本構造は、図8に説明したものと基本的に同様である。すなわち、実施例1のホットスタンピング箔102は、基材104(16μmのポリエチレンテレフタレート)と、基材の背面側にある背面層103(0.5μmのシリコーン変性ポリエステル層)と、基材の腹面側にある剥離層105(0.5μmのカルナバワックス層)と、蒸着アンカー層106(1μmのポリメタクリル酸メチルおよびエポキシ樹脂の混合層)と、金属蒸着層107(真空蒸着法により形成された500Åのアルミニウム膜)と、接着層108(2.5μmの塩化ビニル樹脂と酢酸ビニル樹脂との混合層)と、から構成してある。
さらに、金属箔の面積比率は、100cm2あたり、約10%となるように調整した。
【0066】
なお、転写した金属箔の表面の濡れ指数(室温25℃)を、表面張力として測定した。すなわち、金属箔の表面をイロプロパノールで洗浄した後、数種の標準液をスポイトで金属箔の表面に滴下し、標準液が水滴とならず、金属箔の表面に均一に塗布可能な標準液の番手を、金属箔の表面の濡れ指数とした。その結果、実施例1の金属箔の表面における濡れ指数としての表面張力は26dyn/cmであった。
【0067】
また、転写した金属箔の評価として、粘着テープ(メンディングテープ、住友スリーエム(株)製、幅10mm相当)を用いて測定される90°剥離力(剥離速度100mm/分)としての密着力(g/10mm)を測定した。その結果、実施例1の金属箔の表面における密着力は150g/10mmであった。
【0068】
(4)塗装工程
攪拌機付の混合容器内に、下記配合材料(A1〜D1)を仕込み、室温条件で、30分間攪拌して(回転数:1000rpm)、粘度40mPa・s(25℃)の熱硬化性組成物を得た。次いで、得られた熱硬化性組成物を、スプレーガンを用いて静電塗装した。
A1:アクリルメラミン樹脂(藤倉化成(株)製、PG2220A) 100重量部
B1:ラクトンポリオール化合物
(ヒドロキシル価200mgKOH/g、数平均分子量1,000) 10重量部
C1:ウレイドプロピルトリエトキシシラン 5重量部
D1:キシレン 50重量部
【0069】
(5)印刷用インク硬化工程
ホットスタンプおよび塗装を施したガラス容器を、オーブン中、150℃、10分の条件で加熱して、半硬化状態の隆起表示部を完全硬化させ、塗装ガラス容器とした。
【0070】
2.塗装ガラス容器の評価
塗装ガラス容器の評価として、JIS K−5400に準拠した碁盤目試験を行い、100碁盤目あたりの、金属箔のはがれ数(個/100碁盤目)をそれぞれ測定した。
【0071】
[実施例2〜5]
実施例2〜5においては、金属箔転写工程後に、金属箔の表面の濡れ指数を28、32、38、44dyn/cmとしたこと以外は、実施例1と同様に、ホットスタンプ方法を実施した後、密着力測定を行い、かつ、塗装ガラス容器に対して碁盤目試験を実施した。
すなわち、金属箔転写工程後に、イトロ処理(イシマット・ジャパン株式会社、登録商標)を時間変えて行い、金属箔の表面の濡れ指数を調整した。それぞれ得られた結果を表1に示す。
【0072】
[比較例1〜3]
比較例1〜3においては、金属箔転写工程において、金属箔の表面に、剥離剤を塗布し、その濡れ指数を10、20、23dyn/cmとしたこと以外は、実施例1と同様に、密着力測定および碁盤目試験を実施した。それぞれ得られた結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
[実施例6〜10]
実施例6〜10においては、金属箔転写工程において、金属箔の面積比率を100cm2あたり、約50%としたこと以外は、実施例1と同様にホットスタンプ方法を実施し、密着力測定を実施した。それぞれ得られた結果を表2に示す。
【0075】
[比較例4〜6]
比較例4〜6においては、金属箔転写工程において、金属箔の表面に、剥離剤を塗布し、その濡れ指数を10、20、23dyn/cmとするとともに、金属箔の面積比率を100cm2あたり、約50%としたこと以外は、実施例1と同様にホットスタンプ方法を実施し、密着力測定を実施した。それぞれ得られた結果を表2に示す。
【0076】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上、説明したように、本発明の塗装ガラス容器の製造方法は、印刷用インクに対応させて、転写した金属箔の表面の濡れ指数を所定範囲に制御することから、次工程における塗装工程の安定的実施が可能であって、かつ、ホットスタンプ工程において、大面積の金属箔を転写する場合であっても、数種の装飾用塗料を塗布する場合であっても、均一な塗装を施した塗装ガラス容器が効率的に得られるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、金属箔の表面の濡れ指数と、密着力との関係を説明するために供する図である。
【図2】図2は、金属箔の表面の濡れ指数と、碁盤目試験での塗膜の剥離数との関係を説明するために供する図である。
【図3】図3は、本発明の塗装ガラス容器の製造方法のプロセスフローを説明するために供する図である。
【図4】図4は、本発明のホットスタンプ方法を説明するために供する図である。
【図5】図5(A)〜(B)は、本発明に用いられるスクリーン印刷装置(タイプ1)を説明するために供する図である。
【図6】図6(A)〜(B)は、本発明に用いられるスクリーン印刷装置(タイプ2)を説明するために供する図である。
【図7】図7は、本発明に用いられる金属箔転写装置を説明するために供する図である。
【図8】図8は、本発明に用いられるホットスタンピング箔の構造を説明するために供する図である。
【図9】図9は、塗膜におけるポリオール化合物の添加量の影響を説明するために供する図である。
【図10】図10(A)〜(D)は、従来のホットスタンプ方法を説明するための図である。
【図11】図11は、従来のホットスタンプ方法により転写された金属箔を含む装飾層の模式的断面図である。
【符号の説明】
【0079】
51、61:スクリーン印刷装置
42、52、82、84:ガラス容器
44a:隆起表示部
56:回転ローラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)〜(4)の工程を含むことを特徴とする塗装ガラス容器の製造方法。
(1)ガラス容器を準備する工程
(2)前記ガラス容器の所定箇所に印刷用インクを塗布して、半硬化させる工程
(3)加熱弾性体を用いてホットスタンピング箔を押圧し、前記印刷用インクに対応させて、表面の濡れ指数が25dyn/cm以上である金属箔を転写させる工程
(4)転写した金属箔の上から、ガラス容器の表面を塗装する工程
【請求項2】
前記工程(3)において、前記金属箔の表面に、当該表面の濡れ指数を25dyn/cm以上とするための剥離調整層が形成してあるホットスタンピング箔を用いることを特徴とする請求項1に記載の塗装ガラス容器の製造方法。
【請求項3】
前記工程(3)において、前記転写した金属箔の面積比率を、100cm2あたり、1〜80%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1または2に記載の塗装ガラス容器の製造方法。
【請求項4】
前記工程(3)において、前記転写した金属箔の表面を洗浄し、当該表面の濡れ指数を25dyn/cm以上の値とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗装ガラス容器の製造方法。
【請求項5】
前記工程(3)において、前記金属箔を転写するとともに、当該金属箔の一部に、ガラス表面を露出させるための開口部を設けることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗装ガラス容器の製造方法。
【請求項6】
前記工程(3)において、前記ガラス容器を回転させながら、前記加熱弾性体を用いてホットスタンピング箔を押圧することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の塗装ガラス容器の製造方法。
【請求項7】
前記工程(3)において、複数の金属箔を転写することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の塗装ガラス容器の製造方法。
【請求項8】
前記工程(2)において、前記印刷用インクとして、消泡剤を含むエポキシ系接着剤を用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の塗装ガラス容器の製造方法。
【請求項9】
前記工程(4)において、ポリオール化合物を含むアクリルメラミン系塗料を被覆して、塗装することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の塗装ガラス容器の製造方法。
【請求項10】
前記工程(1)において、表面に下地層を備えたガラス容器を準備することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の塗装ガラス容器の製造方法。
【請求項1】
下記(1)〜(4)の工程を含むことを特徴とする塗装ガラス容器の製造方法。
(1)ガラス容器を準備する工程
(2)前記ガラス容器の所定箇所に印刷用インクを塗布して、半硬化させる工程
(3)加熱弾性体を用いてホットスタンピング箔を押圧し、前記印刷用インクに対応させて、表面の濡れ指数が25dyn/cm以上である金属箔を転写させる工程
(4)転写した金属箔の上から、ガラス容器の表面を塗装する工程
【請求項2】
前記工程(3)において、前記金属箔の表面に、当該表面の濡れ指数を25dyn/cm以上とするための剥離調整層が形成してあるホットスタンピング箔を用いることを特徴とする請求項1に記載の塗装ガラス容器の製造方法。
【請求項3】
前記工程(3)において、前記転写した金属箔の面積比率を、100cm2あたり、1〜80%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1または2に記載の塗装ガラス容器の製造方法。
【請求項4】
前記工程(3)において、前記転写した金属箔の表面を洗浄し、当該表面の濡れ指数を25dyn/cm以上の値とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗装ガラス容器の製造方法。
【請求項5】
前記工程(3)において、前記金属箔を転写するとともに、当該金属箔の一部に、ガラス表面を露出させるための開口部を設けることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗装ガラス容器の製造方法。
【請求項6】
前記工程(3)において、前記ガラス容器を回転させながら、前記加熱弾性体を用いてホットスタンピング箔を押圧することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の塗装ガラス容器の製造方法。
【請求項7】
前記工程(3)において、複数の金属箔を転写することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の塗装ガラス容器の製造方法。
【請求項8】
前記工程(2)において、前記印刷用インクとして、消泡剤を含むエポキシ系接着剤を用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の塗装ガラス容器の製造方法。
【請求項9】
前記工程(4)において、ポリオール化合物を含むアクリルメラミン系塗料を被覆して、塗装することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の塗装ガラス容器の製造方法。
【請求項10】
前記工程(1)において、表面に下地層を備えたガラス容器を準備することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の塗装ガラス容器の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−162645(P2008−162645A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354154(P2006−354154)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000162917)興亜硝子株式会社 (19)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000162917)興亜硝子株式会社 (19)
【Fターム(参考)】
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