説明

塗装検査装置及び塗装検査方法

【課題】車両ボデーとなるワーク等に行った塗装における塗装不良の検出を、簡易な構成の機器を用いて確実に行う。
【解決手段】光源203は、ワークWKの表面の撮像を行うカメラ202の光軸AXを軸回りに取り囲むように、複数配置される。これらの光源203は、制御回路チップ204の制御によって一つずつ順次点灯し、ワークWKの表面に様々な方向から光を照射する。カメラ202は、光源203が一つずつ順次点灯するその都度に、ワークWKの表面を撮像する。画像処理装置104は、カメラ202から送信された画像データを受けて画像処理を行い、その処理結果をモニタ105に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装の良否を判定する塗装検査装置及び塗装検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両ボデーとなるワーク等に塗装を行うと、塵や埃、ブツが混入する等により、ワークの表面に凹凸が生じることがある。このような塗装不良の箇所を発見するために、従来、作業者は、塗装が施されたワークの表面を目視でチェックしている。また、別の発見手法として、特許文献1に記載の塗装検査装置や特許文献2に記載の塗面検査装置を用いて、塗装不良の箇所を検出することが考えられる。
【0003】
特許文献1に記載の塗装検査装置8は、検出部9と、画像処理部10とで構成され、塗装面Fを研磨することにより生じた微小傷群を視認しやすい状態にして、該微小傷群による塗装不良の有無を検査する装置である。検出部9は、作業者又は作業ロボットにより動かすことができるものであり、検査部位Faに向かって開口する箱形のフレーム17に、塗装面Fの検査部位に対して光を照射する照明手段11や、その反射光を受光する撮像手段12等の各部を一体的に備えて構成される。塗装面Fの検査部位に照射された光のうち、検査部位Faの表面にある微小傷群に当たった光は散乱光となる。画像処理部10は、検出部9にて撮像した反射光(散乱光)を画像として取り込み、この画像を検査部位Faの表面の微小傷群を視認しやすい状態に画像処理したものを表示出力し、この表示出力された画像に基づいて検査部位Faの塗装の良否を判断する。特許文献1では、照明手段11として、撮像手段12を介して対称に光源を配置して該撮像手段12を挟んで両側から検査部位Faを照らすように配置する、ということが記載されている。
【0004】
特許文献2に記載の塗面検査装置は、車両1の搬送路の両側に配置されたロボット39、39aのロボットアーム9、9aの先端部に取付けられた基部29に、面光源10及び撮像装置20が取付けられて構成される。ロボット39、39aは、撮像装置20を順にシフトさせるように塗面上を走査し、かつ各走査位置で塗面に対面する3次元位置及び3軸方向の角度を任意に制御可能になっている。面光源10は、円弧状に配列した複数個の発光ダイオード11aを基面12に奥行き方向へさらに配列した発光ダイオード群で構成される光源11と、円弧中心点を焦点Fとし発光ダイオード11aからの光を平行に偏向するフレネルレンズ15と、焦点Fの位置で奥行き方向へ縦長のスリット16を形成するスリット板17と、ケース13に収納させて構成される。特許文献2には、面光源10が平行光もしくは略平行光を発して検査対象塗面を照射し、撮像装置20が検査対象塗面での反射光を撮像装置20(アバランシェ増倍型固体撮像カメラ21)で撮像してその撮像範囲のアナログの画像信号を画像処理装置30に供給し、検査対象塗面の微小欠陥がその反射光で高感度に高解像度下で検知される、という点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−93340号公報(段落0028〜0033、0036及び図5)
【特許文献2】特開2006−38550号公報(段落0013、0018〜0020、図1、図4及び図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明者は、ワークの表面で生じた塗装不良をチェックする塗装検査作業の自動化を簡易な機械で実現するために、塗装を行ったワークに照明光を当て、この照明光が当たった状態のワークをカメラで撮像して画像データ化し、この画像データに対しデータ処理を施して影の部分に相当する箇所を抽出することを考えた。しかしながら、特許文献1に記載の塗装検査装置や特許文献2に記載の塗面検査装置のように、撮像手段(撮像装置)と照明手段(面光源)との位置関係が固定された装置では、ワークの表面に生じた塗装の凹凸の形状によっては、塗装不良の箇所があっても影が生じない場合があることに気がついた。
【0007】
本発明は、上記の点を鑑みてなされたものであり、塗装不良の検出を簡易な構成の機器を用いて確実に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の塗装検査装置は、塗装面の撮像を行う撮像部と、前記撮像部の光軸を軸回りに取り囲むように配置され、前記塗装面に光を照射する複数の光源と、前記光源を一つずつ順次点灯させその都度に前記撮像部に撮像させる制御部と、前記撮像部からの信号を受けて画像処理を行いその処理結果を出力する画像処理部と、を備える。
【0009】
本発明の塗装検査方法は、塗装面の撮像を行う撮像部の光軸を軸回りに取り囲むように配置された複数の光源が、一つずつ順次点灯して前記塗装面に光を照射する工程と、前記光源が一つずつ順次点灯するその都度に、前記撮像部が、前記塗装面を撮像する工程と、前記画像処理部が、前記撮像部からの信号を受けて画像処理を行いその処理結果を出力する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の光源が一つずつ順次点灯して塗装面に生じた塗装不良による影が生じやすくなるので、塗装不良の検出を簡易な構成の機器を用いて確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】塗装検査装置のブロック図である。
【図2】塗装検査ユニットを開口側から見た図である。
【図3】ワークの表面を検査している塗装検査ユニットの断面図である。
【図4】制御回路チップが行う処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】(a)〜(d)は、塗装検査装置におけるワークの表面の撮像の流れを示す説明図である。
【図6】(a)〜(d)は、ワークの表面に生じたブツやキズに光源からの光が当たって影が現れる様子を示す説明図である。
【図7】変形例の塗装検査ユニットを開口側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の一形態を、図1ないし図6に基づいて説明する。図1は、塗装検査装置101のブロック図である。塗装検査装置101は、ロボット102と、ロボット制御盤103と、塗装検査ユニット201と、画像処理装置104と、モニタ105とを備える。
【0013】
ロボット102は、自動車ボデーとなるワークWKに塗装を行う塗装工程ラインに沿って、ワークWKの搬送路の両側に配置される。ロボット102は、可動アーム102aを有する。可動アーム102aの先端には、塗装検査ユニット201が取り付けられている。ロボット102は、ロボット制御盤103から送信される制御信号に応じて動くための回路、機構及び動力源を備えており、ロボット制御盤103からの電気信号を受けて可動アーム102aを動かし、塗装検査ユニット201をワークWKの表面(塗装面)に沿って走査させる。可動アーム102aは、ユニバーサルジョイント(図示せず)を有し、各走査位置でワークWKの表面に対し三次元位置及び三軸方向の角度を任意に動かせるようになっている。
【0014】
塗装検査ユニット201は、ワークWKの表面を撮像して撮像結果に応じたデータ信号を画像処理装置104に送信する。画像処理装置104は、コンピュータであり、データ信号に基づく塗装検査ユニット201での撮像結果を画像処理するプログラムが組み込まれている。画像処理装置104は、この画像処理の結果を、モニタ105に出力表示する。このモニタ105には、一例として、液晶ディスプレイを採用することができる。
【0015】
図2は、塗装検査ユニット201を開口側から見た図である。図3は、ワークWKの表面を検査している塗装検査ユニット201の断面図である。図1ないし図3に基づいて、塗装検査ユニット201について詳細に述べる。塗装検査ユニット201は、撮像部としてのカメラ202と、複数の光源203と、制御部としての制御回路チップ204とを備える。カメラ202及び光源203は、一方の面を開口した扁平な直方体形状のフレーム205に収納される。フレーム205の開口に対面するフレーム205の底部205aの中央には、可動アーム102aが取り付けられている。また、この底部205aにおける可動アーム102aが延出する側の面には、制御回路チップ204が配置される。この制御回路チップ204は、カメラ202及び複数の光源203のそれぞれにコード(図示せず)を介して接続していて、これらを駆動制御する回路が組み込まれている。
【0016】
カメラ202は、フレーム205の底部205aの中央を貫通して配置され、フレーム205の開口からその外側を撮像する向きに配置される。このとき、カメラ202の光軸AXは、フレーム205の側部205bが延びる方向と平行に向けられる。
【0017】
複数の光源203は、可視光を発するもので、フレーム205が形成する空間の内側でフレーム205の側部205bのそれぞれに取り付けられ、カメラ202の光軸AXをその軸回りに取り囲んでいる。
【0018】
図4は、制御回路チップ204が行う処理の流れを示すフローチャートである。制御回路チップ204は、光源203を一つずつ順次点灯させ、その都度にカメラ202に撮像させ、撮像結果に基づく画像データを生成し、この画像データを画像処理装置104に送信出力する処理を行う。
【0019】
より詳細には、制御回路チップ204は、画像処理装置104からの撮像開始信号の入力を待機している(ステップS101)。画像処理装置104は、ロボット制御盤103に制御信号を送ってロボット102を動かし、ワークWKの表面のうち塗装検査を行おうとする箇所に塗装検査ユニット201を予め位置付けた上で、画像処理装置104に撮像開始信号を送信出力する。
【0020】
制御回路チップ204は、撮像開始信号が入力されると(ステップS101のY)、複数の光源203のうち一つの光源203のみを点灯させる(ステップS102)。これにより、ワークWKの表面は、点灯された光源203からの光で照射される。
【0021】
続いて、制御回路チップ204は、カメラ202を制御してワークWKの表面を撮像させる(ステップS103)。カメラ202、は、レンズ及び受光素子(いずれも図示せず)を備えており、レンズを通して受光素子に入射した光に基づいて画像データを生成し、この画像データを制御回路チップ204に送信する。制御回路チップ204は、カメラ202から入力された画像データを画像処理装置104に送信出力する(ステップS104)。
【0022】
続いて、まだ点灯していない光源203が残っている場合(ステップS105のY)、制御回路チップ204は、現在点灯している光源203を消灯させた後にまだ点灯させていない別の一つの光源203のみを点灯させ(ステップS106)、処理をステップS103に戻す。これにより、ワークWKの表面は、ステップS102とは異なる角度で入射される光源203からの光で照射される。
【0023】
一方、全ての光源203を点灯させてカメラ202による撮像を行った場合(ステップS106のN)、制御回路チップ204は、現在点灯している光源203を消灯させ(ステップS107)、画像処理装置104に対して撮像完了信号を送信出力し(ステップS108)、一連の処理を終える。撮像完了信号を受信した画像処理装置104は、ロボット制御盤103に制御信号を送ってロボット102を動かし、ワークWKの表面のうち上記の一連の処理で塗装検査を行った箇所とは別の箇所に塗装検査ユニット201を位置付けて、画像処理装置104に再び撮像開始信号を送信出力する。
【0024】
再び図1を参照する。画像処理装置104は、制御回路チップ204から送信出力された画像データを受信すると、画像処理装置104に組み込まれたプログラムの記述に従って画像処理を行い、この画像処理の結果をモニタ105に出力表示させる。この画像処理は、塗装検査ユニット201(制御回路チップ204)からの画像データに基づいて、カメラ202が撮像したワークWKの表面の塗装検査対象箇所に含まれる影の有無を判定するものである。画像処理の一例は、可動アーム102aの位置及び向きの情報に対応付けて画像データベース(図示せず)に予め格納されている塗装済みのワークWKの車種別の撮像済み画像データと、塗装検査ユニット201(制御回路チップ204)からの画像データとの画素同士を比較して不一致箇所の画素数が所定数以上である場合に、塗装不良と判定する処理である。画像処理の別の一例は、塗装検査ユニット201(制御回路チップ204)からの画像データにおける輝度を画素別に数値化し、この輝度が所定値以下である場合に塗装不良と判定する処理である。画像処理としては、この他にも、様々なものを用いることができる。
【0025】
図5(a)〜図5(d)は、塗装検査装置101におけるワークWKの表面の撮像の流れを示す説明図である。以下、塗装検査ユニット201に備わる四つの光源203を、図5(a)〜図5(d)における時計回り順に、第1光源203a、第2光源203b、第3光源203c、第4光源203dと呼ぶ。また、図5(a)〜図5(d)は、いずれも、カメラ202からワークWKの表面を見た塗装検査装置101を示している。
【0026】
塗装検査装置101では、制御回路チップ204の行う制御により、複数の光源203(第1光源203a〜第4光源203d)が一つずつ順次点灯する。点灯する順番の一例は、第1光源203a(図5(a))、第2光源203b(図5(b))、第3光源203c(図5(c))、第4光源203d(図5(d))の順である。このように、カメラ202の光軸AX(図3参照)を軸回りに取り囲むように配置された複数の光源203が一つずつ点灯することにより、ワークWKの表面には様々な方向から光が入射することになる。そして、光源203が一つずつ点灯するその都度、カメラ202がワークWKの表面を撮像し、その撮像されて生じた画像データが画像処理装置104で画像処理されてモニタ105に出力される。
【0027】
図6(a)〜図6(d)は、ワークWKの表面に生じたブツ301やキズ302に光源203からの光が当たって影303が現れる様子を示す説明図である。ワークWKの表面に光が入射することにより、ワークWKの表面に生じたブツ301やキズ302による塗装不良の箇所に影303が生じる。ここで、本実施の形態の塗装検査装置101で重要なのは、ワークWKの表面に対して上記のように様々な方向から光が入射されるために、ブツ301やキズ302がどのような形状をなしていても影303が確実に生じ、カメラ202によってその影303が撮像されてその結果がモニタ105に表示されるということである。
【0028】
このように、本実施の形態の塗装検査装置101によれば、カメラ202と複数の光源203とを備えるという簡易な機器構成でありながら、複数の光源203が一つずつ順次点灯してワークWKの表面に生じたブツ301やキズ302等の塗装不良による影303が生じやすくなるので、ワークWKの塗装工程での塗装不良の検出を確実にすることができる。そして、この塗装検査装置101では、確実に影303が生じるので、光の向きを変えるためにワークWKの表面に対して塗装検査ユニット201を360度回転させるような機構を備える必要がなく、塗装検査装置101の構成を簡易なものにすることができる。
【0029】
図7は、変形例の塗装検査ユニット201’を開口側から見た図である。複数の光源203は、カメラ202の光軸AXを軸回りに取り囲むように配置されていればよい。このため、光源203の個数は四個でなくてもよい。一例として、図7に示すように、塗装検査ユニット201’には八個の光源203が八角形をなすように取り付けられていてもよい。
【符号の説明】
【0030】
101 塗装検査装置
104 画像処理装置(画像処理部)
202 カメラ(撮像部)
203 光源
204 制御回路チップ(制御部)
AX 光軸
WK ワーク(塗装面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装面の撮像を行う撮像部と、
前記撮像部の光軸を軸回りに取り囲むように配置され、前記塗装面に光を照射する複数の光源と、
前記光源を一つずつ順次点灯させその都度に前記撮像部に撮像させる制御部と、
前記撮像部からの信号を受けて画像処理を行いその処理結果を出力する画像処理部と、
を備える塗装検査装置。
【請求項2】
塗装面の撮像を行う撮像部の光軸を軸回りに取り囲むように配置された複数の光源が、一つずつ順次点灯して前記塗装面に光を照射する工程と、
前記光源が一つずつ順次点灯するその都度に、前記撮像部が、前記塗装面を撮像する工程と、
前記画像処理部が、前記撮像部からの信号を受けて画像処理を行いその処理結果を出力する工程と、
を備える塗装検査方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−149814(P2011−149814A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11242(P2010−11242)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000108188)セントラル自動車株式会社 (66)
【Fターム(参考)】