説明

塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法、及び塗装装置において使用されるワークを吊下げる装置

【課題】従来、籠、ラック用の籠形の棚、又は小物等のフック(ワーク)の塗装時に、吊下げ用のワイヤを介してワークを吊下する支持方法であって、ワークを懸架手段と搬送手段で吊下、搬送し、その過程で加熱及び/又は塗装を行い、塗装終了後に脱荷して一連の塗装作業が終了する。その後、ニッパー等の切断冶具を利用し、製品と支持具との切離し作業をする。しかし、完成された製品には支持具残痕(硬質の支持具残痕)が存在する。
【構成】本発明は、周回搬送するチェーンに差渡した各支持杆と、このチェーンをガイドする各歯車及び駆動部を備えた搬送手段と、搬送手段の適所に設けた塗装部とで構成した塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法で、懸架手段に係止される耐熱性繊維で構成した紐を利用して吊下し、紐を利用してワークを吊下げて塗装した後に、紐を鋏等の切断手段を介して切断する塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法、及び塗装装置において使用されるワークを吊下げる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、線体(線材)を編成し、籠、ラック用の籠形の棚、又は小物等のフック等(線体形状の小物、以下ワークとする)を塗装する際に、このワークを吊下する支持する方法(支持具)としては、次のような構成がある。吊下げ用のワイヤを介して支持する方法(実開昭54−63376号)と、吊下げ用ハンガーを介して支持する方法(実開昭58−35972号)と、又は吊下げ冶具を介して支持する方法(特開昭62−155967号、特開平10−165851号)かが知られている。
【0003】
しかし、これらの支持具を介して支持する方法では、ワークを、懸架手段及び搬送手段とを介して吊下、搬送しつつ、その過程で加熱及び/又は塗装を行い。この塗装が終了した後に、脱荷して一連の塗装作業が終了する。その後、製品と、製品に取付いている支持具(ワークに取付けた支持具)を、ニッパー等の切断冶具を利用し、この製品と支持具との切離し作業を行なう。この切離し作業を介して完成された製品には、残念ながら、支持具残痕(硬質の支持具残痕)が存在する。この支持具残痕による問題がある。その一つは、製品を移動する際に、その被摺動面(床面、又は机上面等)に傷を付けるおそれがあることであり、また他の大きな問題は、人の指等に損傷を与えることであり、その改良が望まれている。
【0004】
尚、支持具残痕傷と、支持具とワークとの関係の一例を図6、図7に示している。この例において、ワーク(籠)をワイヤの支持具で吊下し、粉体塗装して製品を完成する方法であって、完成後に、このワイヤを切断した状態を示しているが、前述の如く、支持具残痕が見られる。従って、前述の問題を抱えている。
【0005】
また本発明の粉体塗装と類似する文献としては、特開2003−118669の「自転車かごの製造方法」がある。この発明は、粉体塗装において、この塗料に透明樹脂と反射材とを混入することを特徴とする。そして、この発明は、ファッション性及び/又は事故防止の向上を意図する。
【0006】
【特許文献1】特開2003−118669
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記文献(1)は、粉体塗装の材料自在の発明であって、その効果も、この材料がもたらすものであり、斬新性が乏しいものと考えられる。また本発明が意図する支持具残痕に関しても、明細書中に記載がなく、従来の課題を残したままの発明と考えられる。
【0008】
以上のようなことを考えた場合には、この文献(1)では、解決すべき課題と、問題点を、依然として残していると思量される処である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、製品に従来のような硬質の支持具残痕を残さないので、床面等の被摺動面及び/又は人の指等を保護すること、またこの支持具残痕は、耐熱性繊維で構成した紐であって、軟質の支持具残痕であるので、切断時に時間を要さず、またニッパー等の切断冶具を要さず挾、ナイフ等の日常の切断具(文房具)による切断を可能とすること等を意図する。またこの請求項1の発明は、ワークへの取付けの容易化と、この取付け時の怪我を無くすことと、何人も簡易かつ確実に取付け得る耐熱性繊維で構成した紐を利用すること等を意図する。さらに請求項1の発明は、このワークを支持できる耐熱性繊維で構成した紐と、高温、例えば、300°〜500°の高温雰囲気下でも耐え得る耐熱性繊維で構成した紐の提供を意図する。そして、望ましくは、この請求項1の発明は、この耐熱性繊維で構成した紐をワークに取付けたままの状態で、段積み又は気兼ねなく支持かつ運搬できる人に優しい塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法を提供すること意図する。
【0010】
請求項1は、周回搬送するチェーン、ロープ等の懸架手段と、この搬送手段の適所に差渡した複数本の複数本の支持杆と、当該懸架手段が懸架される搬送手段と、この搬送手段
の適所に設けた塗装部とで構成した塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法であって、
この吊下げ方法は、前記懸架手段に係止される耐熱性繊維で構成した紐を利用して吊下する構成とし、この紐を利用して吊下げてワークを塗装した後に、この紐を鋏等の切断手段を介して切断する構成とした塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法である。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の目的を達成すること、この目的を達成するに最適な耐熱性繊維で構成した紐と、塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法の構造を提供することを意図する。
【0012】
請求項2は、請求項1に記載の塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法において、その紐の基端を折り曲げて環状の折曲げ部位とし、この環状の折曲げ部位に、前記紐の自由端を差込み、ワーク係止用の環体部位を形成し、この環体部位でワークの線体、板材等の構成部材を結縛する構成とした塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法である。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1の目的を達成すること、この目的を達成するに最適な塗装部の構造を提供することを意図する。
【0014】
請求項3は、請求項1に記載の塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法において、その塗装部が、エアブロワを備えたケースと、このケースに充填かつ浮上状態に維持された前記樹脂粉体で構成し、またこの塗装部の前後にそれぞれ加熱装置を配備する構成とした塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法である。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1の目的を達成すること、この目的を達成するに最適な他の塗装部の構造を提供することを意図する。
【0016】
請求項4は、請求項1に記載の塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法において、その塗装部が、吹付け塗装、又は浸漬塗装等の他の塗装手段とすることを特徴とした塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法である。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1の目的を達成すること、この目的を達成するに最適な塗装装置において使用されるワークを吊下げる装置の構造を提供することを意図する。
【0018】
請求項5は、請求項1に記載の塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法において、その耐熱性繊維で構成した紐を、ワークの線体、板材等の構成部材に結縛し、この結縛でワークを緊締して塗装装置において使用されるワークを吊下げる装置である。
【0019】
請求項6・7の発明は、請求項1の目的を達成すること、この目的を達成するに最適な塗装装置において、耐熱性繊維で構成した紐の結縛の構造を提供することを意図する。
【0020】
請求項6は、請求項1に記載の塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法において、その耐熱性繊維で構成した紐を、ワークの線体、板材等の構成部材のクロス部位、又は直線部位に結縛し、この結縛でワークを緊締して塗装装置において使用されるワークを吊下げる装置である。
【0021】
請求項7は、請求項1に記載の塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法において、その耐熱性繊維で構成した紐を、ワークの線体のクロス部位に潜らせた状態で結縛し、この結縛でワークを緊締して塗装装置において使用されるワークを吊下げる装置である。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明は、周回搬送するチェーン、ロープ等の懸架手段と、搬送手段の適所に差渡した複数本の支持杆と、当該懸架手段が懸架される搬送手段と、この搬送手段の適所に設けた塗装部とで構成した塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法であって、
吊下げ方法は、懸架手段に係止される耐熱性繊維で構成した紐を利用して吊下する構成とし、紐を利用して吊下げてワークを塗装した後に、紐を鋏等の切断手段を介して切断する構成とした塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法である。
【0023】
従って、請求項1は、製品に従来のような硬質の支持具残痕を残さないので、床面等の被摺動面及び/又は人の指等を保護できること、またこの支持具残痕は、耐熱性繊維で構成した紐であって、軟質の支持具残痕であるので、切断時に時間を要さず、またニッパー等の切断冶具を要さず挾、ナイフ等の日常の切断具(文房具)での切断が可能となり有益である。またこの請求項1は、ワークへの取付けの容易化と、この取付け時の怪我を無くすことと、何人も簡易かつ確実に取付け得る耐熱性繊維で構成した紐を利用できること等の特徴を有する。さらに請求項1は、このワークを支持できる耐熱性繊維で構成した紐と、高温、例えば、300°〜500°の高温雰囲気下でも耐え得る耐熱性繊維で構成した紐を提供できる実益がある。そして、望ましくは、この請求項1は、この耐熱性繊維で構成した紐をワークに取付けたままの状態で、段積み又は気兼ねなく支持かつ運搬できる人に優しい塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法を提供できる等の特徴を有する。
【0024】
請求項2の発明は、請求項1に記載の塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法において、紐の基端を折り曲げて環状の折曲げ部位とし、環状の折曲げ部位に、紐の自由端を差込み、ワーク係止用の環体部位を形成し、環体部位でワークの線体、板材等の構成部材を結縛する塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法である。
【0025】
従って、請求項2は、請求項1の目的を達成できること、この目的を達成するに最適な耐熱性繊維で構成した紐と、塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法の構造を提供できること等の特徴を有する。
【0026】
請求項3の発明は、請求項1に記載の塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法において、その塗装部が、エアブロワを備えたケースと、ケースに充填かつ浮上状態に維持された樹脂粉体で構成し、また塗装部の前後にそれぞれ加熱装置を配備する構成とした塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法である。
【0027】
従って、請求項3は、請求項1の目的を達成できること、この目的を達成するに最適な塗装部の構造を提供できること等の特徴を有する。
【0028】
請求項4の発明は、請求項1に記載の塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法において、塗装部が、吹付け塗装、又は浸漬塗装等の他の塗装手段とする塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法である。
【0029】
従って、請求項4の発明は、請求項1の目的を達成すること、この目的を達成するに最適な他の塗装部の構造を提供することを意図する。
【0030】
請求項5の発明は、請求項1に記載の塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法において、耐熱性繊維で構成した紐を、ワークの線体、板材等の構成部材に結縛し、結縛でワークを緊締して塗装装置において使用されるワークを吊下げる装置である。
【0031】
従って、請求項5は、請求項1の目的を達成できること、この目的を達成するに最適な塗装装置において使用されるワークを吊下げる装置の構造を提供できること等の特徴を有する。
【0032】
請求項5の発明は、請求項1に記載の塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法において、耐熱性繊維で構成した紐を、ワークの線体のクロス部位に結縛し、結縛でワークを緊締して塗装装置において使用されるワークを吊下げる装置である。
【0033】
請求項6は、請求項1に記載の塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法において、耐熱性繊維で構成した紐を、ワークの線体、板材等の構成部材のクロス部位、又は直線部位に結縛し、結縛でワークを緊締して塗装装置において使用されるワークを吊下げる装置である。
【0034】
請求項7は、請求項1に記載の塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法において、耐熱性繊維で構成した紐を、ワークの線体のクロス部位に潜らせた状態で結縛し、結縛でワークを緊締して塗装装置において使用されるワークを吊下げる装置である。
【0035】
従って、請求項6・7は、請求項1の目的を達成できること、この目的を達成するに最適な塗装装置において、耐熱性繊維で構成した紐の結縛の構造を提供できること等の特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の一例を説明する。
【0037】
先ず、図1〜図4−3−2に示した第一の実施例について説明する。最初に塗装装置の概要を説明すると、フレーム1に複数基軸支した歯車2、2等(2とする)と、この歯車2間に懸架された併設したチェーン、ロープ等の懸架手段3と、この懸架手段3を周回搬送する前記歯車2を駆動するモータ等の駆動部(図示せず)でなる搬送手段と、前記懸架手段3間に多数本差渡した各支持杆5、5等(5とする)と、前記フレーム1に設けたバーナー等の加熱手段6と、この加熱手段6の高温空気が搬送される炎道7と、このフレーム1の中間に設けた塗装部8と、この塗装部8を構成する塗装槽80の昇降を司るリフター81と、この塗装槽80にエアを供給するエアブロワ82とで構成されている。従って、懸架手段3が歯車2の回転を介して周回搬送すると、前記フレーム1の始端側1aから加熱手段6の近傍を通過し、その後、塗装部8の直下で降下し、この塗装部8を経由し、リターン側1bのピットと歯車2を介して経由し、フレーム1の左右の上方側1c、1dの歯車2、2間に至った後に、最初の始端側1aに至り、一周する構成である。またリフター81を省略した例もあり得る。なお、リフター81は、昇降式がよい。
【0038】
そして、この構成において、始端側1aでワークWを、耐熱性繊維で構成した紐10を介して懸架手段3に引掛け支持する。その後は、この懸架手段3の流れに沿って、搬送されるが、先ず、加熱手段6によりワークWは略300°〜400°に加熱される。この加熱時において、耐熱性繊維で構成した紐10は充分に耐え得る特性を備えている。その後、ワークWの降下と塗装部8の昇降とで、このワークWは、塗装槽80に陥没されるともに、エアによる粉体塗料の浮遊流体の中で、このワークWに粉体塗料が付着かつまぶされる。ワークWに付着した粉体塗料は、一般にワークWの線体、板材等の構成部材(原則として線材とする)に接する部位が溶解されるが、外側に付着している粉体塗料は、十分に溶解されない。従って、このワークWにまぶされた余分の粉体塗料は、適宜の振動(搬送時の振動も可)を介して払拭される。その後、炎道7に至ってまぶされた粉体塗料が溶解されて、表面の平滑性が確保される。以後、ワークWは、懸架手段3の流れに沿って搬送かつ空冷された後、始端側1aに至り、この懸架手段3から離間される(脱荷される)。
【0039】
この脱荷された状態が、図2に示したものであって、製品A(籠)の底部A1に耐熱性繊維で構成した紐10の残りであって、所謂、軟質の支持具残痕であるので、切断時に時間を要さず、またニッパー等の切断冶具を要さず、例えば、挾、ナイフ等の日常の切断具(文房具)での切断が可能となり、例えば、脱荷時、搬送時等の取扱い時に、人、物に損傷を与えることは皆無であり有益である。そして、カットした後は、前述のような数々の特徴と、有益性を備える。また廃棄時の取扱いも容易であり、かつ環境の保護にも役立つこと等の特徴を有する。尚、この耐熱性繊維で構成した紐10は、粉体塗料が付着しない構造が理想であり、剥離剤を添加した構造、付着しない平滑な表面構造、これらの併用等が望ましい。
【0040】
尚、この耐熱性繊維で構成した紐10をワークWに結縛する方法としては、図3−1〜図4−3−2に示した各例があるので順に説明する。図3−1〜図3−2は、本発明が、耐熱性繊維で構成した紐10を採用することで、このワークWを容易に支持でき、またこのワークWのずれ防止に有効であると考えられる。先ず、図3−1の如く、耐熱性繊維で構成した紐10を略1/2に折曲げて略U字形の折曲げ部を形成し、そして、図3−2の如く、この折曲げ部を、ワークWの底部の船体のクロス部位の下側(一方側)に差入れる。そして、図3−3の如く、この折曲げ部に、ワークWのクロス部位の上側(他方側)を跨ぐようにして折曲げた耐熱性繊維で構成した紐10の自由端を挿入する。その後、この挿入した耐熱性繊維で構成した紐10の自由端を引上げることで、ワークWの所定の箇所に結縛される。この結縛は、図3−4に示すように羽交い絞めの如くなり、確実、かつずれることなく取付けられる。そして、この例では、二箇所に耐熱性繊維で構成した紐10を結縛する。このようにして、耐熱性繊維で構成した紐10を取付けたワークWを、前述の如く、このワークWの開口部を下側にして懸架手段3に取付ける。この取付けは、一個か数個とする。また図4−1は、クロス部位の下側に耐熱性繊維で構成した紐10を潜らせた後、その潜った自由端と、耐熱性繊維で構成した紐10の本体とを、通常の方法で縛り付けて結縛する一例を示した。そして、この例では、塗装時に使用した耐熱性繊維で構成した紐10の切断跡は、軟質の支持具残痕となるので、例えば、脱荷時、搬送時等の取扱い時に、人、物に損傷を与えることは皆無となりさらに有益性が向上する。さらに図4−2はワークWの直線部位に、図3−1〜図3−2に示した方法による羽交い絞めを介して結縛する一例を示した。この羽交い絞めでは、この例の如く、直線部位においても、ワークWのずれがなくなって有効であり、従来の番線を主体とした結縛(番線及び/又は補助支持具とによる結縛)では、考えられない特徴である。その他は前述の4−1に準ずる。尚、図4−3−1〜図4−3−2に示した結縛する構成でも可能であり、この例は少し面倒であるが、後述するように結び目がクロス部位の内側になることから、塗装時に使用した耐熱性繊維で構成した紐10の切断跡は、軟質の支持具残痕となるので、前述と同様な効果が期待できる。そこで、この結縛する構成(結縛方法)を説明する。この例では、耐熱性繊維で構成した紐10を、先ず、右側に向って傾斜する一方の線材の一方の下側から、左側に向って傾斜する他方の線材の上側に跨り、その後、前記右側に向って傾斜する一方の線材の他方の下側を経由し、この耐熱性繊維で構成した紐10の基側に向って引張り、このクロス部位の上方で結縛することで緊締する。この緊締状態で、前述の如く、塗装する。
【0041】
先ず、図5に示した第二の実施例について説明する。この実施例においては、前述の第一の実施例に使用した符号と名称を使用する。フレーム1に複数基軸支した歯車2と、この歯車2間に懸架された併設したチェーン、ロープ等の懸架手段3と、この懸架手段3を周回搬送する前記歯車2を駆動するモータ等の駆動部(図示せず)と、この懸架手段3間に多数本差渡した各支持杆5と、前記フレーム1に設けたバーナー等の第一及び第二の加熱手段6a、6bと、このフレーム1の中間に設けた塗装部8と、この塗装部8を構成する塗装槽80の昇降を司るリフター81と、この塗装槽80にエアを供給するエアブロワ82と、完成した耐熱性繊維で構成した紐10付の製品を水冷する水槽9で構成されている。従って、懸架手段3が歯車2の回転を介して周回搬送すると、前記フレーム1の始端側1aから加熱手段6の近傍を通過し、その後、塗装部8の直下で降下し、この塗装部8を経由し、リターン側1bのピットと歯車2を介して経由し、フレーム1の左右の上方側1c、1dの歯車2、2間に至った後に、最初の始端側1aに至り、一周する構成である。
【0042】
そして、この構成において、始端側1aでワークWを、耐熱性繊維で構成した紐10を介して懸架手段3に引掛け支持する。その後は、この懸架手段3の流れに沿って、搬送されるが、先ず、第一の加熱手段6aによりワークWは略300°〜400°に加熱される。この加熱時において、耐熱性繊維で構成した紐10は充分に耐え得る特性を備えている。その後、ワークWの降下と塗装部8の昇降により、このワークWは、塗装槽80に陥没されるともに、エアによる粉体塗料の浮遊流体の中で、このワークWに粉体塗料が付着かつまぶされる。尚、このワークWにまぶされた余分の粉体塗料は、適宜の振動(搬送時の振動も可)を介して払拭される。その後、第二の加熱手段6bに至ってまぶされた粉体塗料が溶解されて、表面の平滑性が確保される。以後、ワークWは、懸架手段3の流れに沿って搬送かつ水槽9により水冷された後、取外し側1eに至り、この懸架手段3から離間される(脱荷される)。尚、この第二の実施例における耐熱性繊維で構成した紐10の結縛と、その切断は前述の例に準ずる。
【0043】
先ず、図6に示した第三の実施例について説明する。この実施例においては、前述の第一の実施例等に使用した符号と名称を使用する。この実施例では、搬送手段に耐熱性繊維で構成した紐10を介して吊下したワークWに、エアーガン12等の塗装手段による塗装を示している。この例では、ワークWは、高温となることが少ないので、耐薬品性及び/又は強靭性を備えた紐10aの場合もあり得る。その他は前述の各実施例に準ずる。
【0044】
また図7に示した第四の実施例について説明する。この実施例においては、前述の第一の実施例等に使用した符号と名称を使用する。この実施例では、開閉自在のケーシング13内に懸架手段3を配置し、下方に設けた他の加熱手段6cで構成した例である。そして、この例では、ワークWを、懸架手段3に設けた耐熱性繊維で構成した紐10を介して吊下し、このワークWを、他の加熱手段6cで加熱した後に取出し、塗装部8で粉体塗装をまぶす作業をする。その後、まぶされた粉体塗料の不要なものを払拭し、再度加熱し(例えば、ケーシング13に入れて)、まぶされた粉体塗料を溶解して、表面の平滑性を確保する。その後に、耐熱性繊維で構成した紐10を切断する。なお、この作業は、手動操作に適しており、小ロット等の際において、望ましい。その他は前述の各実施例に準ずる。
【0045】
そして、塗装部8の他の構造、例えば、他の吹付け塗装、又は浸漬塗装等の他の塗装手段とする塗装装置に関しては説明しないが、耐熱性繊維で構成した紐10を使用することの利便性は、同等に考えられる。そして、またその取扱いと、特徴等は原則として、前述の各例に準ずる。
【0046】
図8、図9はワークWの板材等の構成部材の他の例であり、図8は型材、装置等の部品を示し、図9は小型のフックを示している。これらのワークWは前述の線材と略同じ取扱いであり、また孔、係止部等に耐熱性繊維で構成した紐10を取付ける(係止する)。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第一の実施例を示した空冷式の塗装装置の概念図
【図2】耐熱性繊維で構成した紐を結縛(緊締)した一例を示した斜視図
【図3−1】耐熱性繊維で構成した紐をワークに結縛する方法における耐熱性繊維で構成した紐の折曲げ状態の斜視図
【図3−2】耐熱性繊維で構成した紐をワークに結縛する方法における耐熱性繊維で構成した紐の一辺の折曲げ部に、その自由端を挿入する過程を示す状態の斜視図
【図3−3】図3−1から耐熱性繊維で構成した紐を介して結縛する状態の拡大斜視図
【図3−4】図3−1から耐熱性繊維で構成した紐を介して結縛が完了した状態の拡大斜視図
【図4−1】ワークに耐熱性繊維で構成した紐を結縛する方法の一例を示した拡大斜視図
【図4−2】ワークに耐熱性繊維で構成した紐を結縛する方法の他の一例を示した拡大斜視図
【図4−3−1】ワークに耐熱性繊維で構成した紐を結縛する方法のさらに他の一例を示した拡大斜視図
【図4−3−2】ワークに耐熱性繊維で構成した紐を結縛する方法のさらに他の一例を示した拡大斜視図
【図5】第二の実施例を示した水冷式の塗装装置の概念図
【図6】第三の実施例の塗装方法の一例を示した模式図
【図7】第四の実施例の塗装方法の一例を示した模式図
【図8】ワークの他の構成部材の一例を示した一部省略の模式図
【図9】ワークのさらに他の構成部材の一例を示した模式図
【図10】従来のワイヤをワイヤに結縛した一例を示した斜視図
【図11】製品に硬質の支持具残痕が存在する状態を示した拡大斜視図
【符号の説明】
【0048】
1 フレーム
1a 始端側
1b リターン側
1c 上方側
1d 上方側
1e 取外し側
2 歯車
3 懸架手段
5 支持杆
6 加熱手段
6a 第一の加熱手段
6b 第二の加熱手段
6c 他の加熱手段
7 炎道
8 塗装部
80 塗装槽
81 リフター
82 エアブロワ
9 水槽
10 耐熱性繊維で構成した紐
10a 耐薬品性及び/又は強靭性を備えた紐
12 エアーガン
13 ケーシング
A 製品
A1 底部
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周回搬送するチェーン、ロープ等の懸架手段と、この搬送手段の適所に差渡した複数本の支持杆と、この搬送手段の適所に設けた塗装部とで構成した塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法であって、
この吊下げ方法は、前記懸架手段に係止される耐熱性繊維で構成した紐を利用して吊下する構成とし、この紐を利用して吊下げてワークを塗装した後に、この紐を鋏等の切断手段を介して切断する構成とした塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法。
【請求項2】
請求項1に記載の塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法において、その紐の基端を折り曲げて環状の折曲げ部位とし、この環状の折曲げ部位に、前記紐の自由端を差込み、ワーク係止用の環体部位を形成し、この環体部位でワークの線体、板材等の構成部材を結縛する構成とした塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法。
【請求項3】
請求項1に記載の塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法において、その塗装部が、エアブロワを備えたケースと、このケースに充填かつ浮上状態に維持された前記樹脂粉体で構成し、またこの塗装部の前後にそれぞれ加熱装置を配備する構成とした塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法。
【請求項4】
請求項1に記載の塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法において、その塗装部が、吹付け塗装、又は浸漬塗装等の他の塗装手段とする構成とした塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法。
【請求項5】
請求項1に記載の塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法において、その耐熱性繊維で構成した紐を、ワークの線体、板材等の構成部材に結縛し、この結縛でワークを緊締して塗装装置において使用されるワークを吊下げる装置。
【請求項6】
請求項1に記載の塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法において、その耐熱性繊維で構成した紐を、ワークの線体、板材等の構成部材のクロス部位、又は直線部位に結縛し、この結縛でワークを緊締して塗装装置において使用されるワークを吊下げる装置。
【請求項7】
請求項1に記載の塗装装置において使用されるワークの吊下げ方法において、その耐熱性繊維で構成した紐を、ワークの線体のクロス部位に潜らせた状態で結縛し、この結縛でワークを緊締して塗装装置において使用されるワークを吊下げる装置。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3−1】
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【図4−3−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−307470(P2007−307470A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−138331(P2006−138331)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(506167890)株式会社 上杉製作所 (1)
【Fターム(参考)】