説明

塗装装置の噴射量制御方法及び装置

【課題】スプレーガンに吐出する塗料の流速を安定させて微流量の塗料を精度良く吐出できるようにする。
【解決手段】塗料供給タンク51を昇降可能に設け、塗料供給タンク51をスプレーガン50よりも高い位置に調節することにより塗料供給タンク51内の塗料aを重力によってスプレーガン50に供給し、塗料aの一部をスプレーガン50から吐出させて霧化用エア55により噴射させると共に、スプレーガン50から吐出されない塗料は回収配管56により回収タンク57に回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレーガンによって噴射する塗料の噴射量を精度良く調節できるようにした塗装装置の噴射量制御方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、シャフトに耐熱コーティング膜を形成するための塗装を行う場合には、アルミニウム等の金属粉が混入された塗料をシャフトに噴射して塗装膜を形成し、その後、焼付けを行って塗装膜をシャフトに一体化させている。この種の塗料には、目的に応じて種々の溶媒に金属粉を混合した水系、溶剤系のものがあり、例えば重量比で数十%の金属粉を含む高濃度のものもある。
【0003】
上記したように金属粉が混入した塗料を用いてシャフトを塗装する際は、塗装後の焼付時に塗装膜がひび割れ等の問題を生じないように、薄く均一な厚さの塗装膜を形成することが厳しく要求されている。
【0004】
しかし、金属粉が混入した塗料は、粉体が沈殿・分離し易く、そのために詰まりを生じ易いという問題がある。更に、特に水系の塗料の場合には塗布した際に液垂れを生じ易く、そのために少量ずつ噴射して薄い塗装膜を形成する必要がある。このため、前記シャフトを塗装する際には、10μm以下程度の薄く均一な厚さになるように塗装を行って乾燥した後、この塗装・乾燥の作業を例えば6〜7回繰り返して重ね塗りすることにより50〜60μm前後の塗装膜を形成するようにしている。
【0005】
上記したように、10μm以下程度の薄い厚さの塗装膜を均一に形成するには、極めて微流量の塗料を安定して噴射できる塗装装置が必要である。
【0006】
溶媒に粉体が混入された塗料を用いて塗装する塗装装置としては、塗料を循環供給することで粉体の沈殿を防ぐようにしたもの(特許文献1)、或いは、粉体と溶媒とを噴射直前に混合するようにしたもの(特許文献2)等がある。又、スプレーガンへ供給する塗料を循環させる際に、バイパス路を設けてバイパス流路の流量を絞ることで、スプレーガンへの塗料の流量を調整するようにしたもの(特許文献3)がある。
【0007】
しかし、上記特許文献1〜3は、いずれも供給ポンプによってスプレーガンに塗料を供給するようにしているために、塗料の供給が脈動することが避けられず、前記したように微流量の塗料をスプレーガンから安定して吐出させることは困難である。
【0008】
一方、図3は、本発明者等が実施した初期の塗装装置の一例を示すもので、塗料aが装入された塗料供給タンク1には圧送用エア供給装置2からの圧送用エア3が電空レギュレータ等の供給側圧力設定器4を介して供給されており、塗料供給タンク1の塗料aを圧送用エア3の圧力によって供給配管6を介しスプレーガン5に供給するようにしている。スプレーガン5に供給された塗料aは、スプレーガン5に備えたニードル弁等の開閉手段15によって一部がスプレーガン5に吐出され、吐出した塗料は霧化用エア供給装置13から供給される霧化用エア14により霧化されてスプレーガン5の先端5aから噴射されるようになっている。一方、スプレーガン5に吐出されなかった残りの塗料a'は、戻り配管7により塗料回収タンク8に回収されるようになっている。上記塗料回収タンク8の上部は開口9により大気開放されている。
【0009】
又、塗料供給タンク1と塗料回収タンク8には、攪拌用エア供給装置11からの攪拌用エア12により或いは電気的に回転されて前記塗料aを攪拌することにより塗料の粉体が沈殿するのを防止するようにした攪拌機10を設けている。
【0010】
上記した如く、塗料供給タンクに圧送用エアを供給してエア圧力によって塗料をスプレーガンに供給するようにしたものとしては特許文献4がある。又、循環流路をスプレーガンの内部まで通すようにした循環式スプレーガンとしては特許文献5がある。
【0011】
上記図3及び特許文献4、5の装置によれば、前記特許文献1〜3と比較するとスプレーガンから噴射される塗料の噴射量を安定させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−330119号公報
【特許文献2】特開2003−033681号公報
【特許文献3】特開平06−047330号公報
【特許文献4】特開2000−325837号公報
【特許文献5】特開2006−055736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図3及び特許文献4、5に示した装置において、圧送用エア3のエア圧力により塗料供給タンク1の塗料aをスプレーガン5に供給して噴射させる際には、図4に実線で示すように、塗料供給タンク1の供給圧P1(塗料の循環速度と相関関係にある)の塗料aは供給配管6及び戻り配管7を通る間に圧力が低下し、塗料回収タンク8に回収されると大気圧P0となる。そして、前記塗料供給タンク1の供給圧P1と大気圧P0との間における比較的高い吐出圧P2において塗料の一部がスプレーガン5から吐出されるようにしている。この吐出圧P2はスプレーガン5から吐出される塗料の吐出速度(流量)と相関関係にある。ここで、スプレーガン5による塗料の噴射量を制御するには、スプレーガン5に対する塗料の吐出圧を精度良く制御する必要がある。
【0014】
従って、スプレーガン5から微流量の塗料を吐出するためには、破線Aで示すように前記塗料供給タンク1の供給圧P1を低く設定して、スプレーガン5の吐出圧P2を低く調節することが必要になるが、このように供給圧P1を低く調節すると、スプレーガン5における塗料の吐出部の流速が小さくなるためにスプレーガン5における塗料の吐出圧が不安定になる問題がある。即ち、流速が小さくなると粉体が分離し易くなると共に、供給圧P1が低いことによって供給配管6の流路抵抗等による圧力の変動を受け易くなって塗料の吐出が不安定となり、特に微流量を吐出する際にはこの現象が更に顕著になるという問題があった。
【0015】
このように、スプレーガン5に微流量の塗料を吐出する際に安定した吐出ができないことにより、スプレーガン5から微流量の塗料を噴射して薄い均一な塗装膜を精度良く形成することは困難であった。
【0016】
本発明は、上記実情に鑑みてなしたもので、スプレーガンに吐出する塗料の流速を安定させて微流量の塗料を精度良く吐出させられるようにした塗装装置の噴射量制御方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、塗料供給タンクを昇降可能に設け、前記塗料供給タンクをスプレーガンよりも高い位置に調節することにより該塗料供給タンク内の塗料を重力によってスプレーガンに供給し、塗料の一部をスプレーガンから吐出させて霧化用エアにより噴射させると共に、スプレーガンから吐出されない塗料は回収配管により回収タンクに回収することを特徴とする塗装装置の噴射量制御方法、に係るものである。
【0018】
上記塗装装置の噴射量制御方法において、前記塗料供給タンクの高さを種々変化させたときに、スプレーガンから吐出する塗料の吐出量を吐出量検出装置で計測することにより、塗料供給タンクの高さ位置とスプレーガンによる塗料の吐出量との関係を予め求めておき、求めた関係に基づき、スプレーガンによる目的吐出量が保持されるように塗料供給タンクを昇降させて高さを調整することは好ましい。
【0019】
又、上記塗装装置の噴射量制御方法において、前記塗料回収タンクの塗料を前記塗料供給タンクに戻して循環使用することは好ましい。
【0020】
又、上記塗装装置の噴射量制御方法において、前記塗料供給タンクに加圧エアを供給して、スプレーガンに供給する塗料の供給圧力を高めることは好ましい。
【0021】
本発明は、塗料を収容する塗料供給タンクと、
塗料供給タンクに塗料供給配管を介して接続され、塗料供給タンクからの塗料の一部を吐出するようにしたスプレーガンと、
前記塗料供給タンクを昇降させてスプレーガンより高い位置に調節することにより塗料供給タンク内の塗料を重力によってスプレーガンに供給するようにしたタンク昇降装置と、
前記スプレーガンから吐出されない塗料を回収する回収タンクと、
を有することを特徴とする塗装装置の噴射量制御装置、に係るものである。
【0022】
上記塗装装置の噴射量制御装置において、前記スプレーガンから吐出する塗料の吐出量を検出する吐出量検出装置と、前記塗料供給タンクの高さを種々変化させたときにスプレーガンから吐出する塗料の吐出量を前記吐出量検出装置で検出して入力することにより、塗料供給タンクの高さ位置とスプレーガンによる塗料の吐出量との関係を予め求めておき、スプレーガンによる目的吐出量の指令信号が入力されると、スプレーガンから目的吐出量の塗料が吐出されるようにタンク昇降装置に制御信号を発して塗料供給タンクの高さを調整する制御器とを備えることは好ましい。
【0023】
又、上記塗装装置の噴射量制御装置において、前記塗料回収タンクの塗料を前記塗料供給タンクに戻す循環配管を有することは好ましい。
【0024】
又、上記塗装装置の噴射量制御装置において、前記塗料供給タンクに加圧エアを供給して加圧する加圧エア供給手段を有することは好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の塗装装置の噴射量制御方法及び装置によれば、塗料供給タンクをスプレーガンより高い位置に調節して該塗料供給タンク内の塗料を重力によってスプレーガンに供給し、塗料の一部をスプレーガンから吐出させて霧化用エアにより噴射させると共に、スプレーガンから吐出されない塗料は回収タンクに回収するようにしたので、重力によって供給される塗料は流速変動を生じることなく安定してスプレーガンに供給することができ、粉体が沈殿する問題を防止し、スプレーガンによる塗料の吐出が安定するという優れた効果を奏し得る。
【0026】
更に、塗料供給タンクの高さ位置を調節してスプレーガンに供給する塗料の流速を調節するようにしたので、スプレーガンの塗料の吐出量に関連する吐出速度を任意に設定することができ、よって、スプレーガンから微流量の塗料を安定して精度良く吐出させて、微流量の塗料の噴射により薄い均一な塗装膜を精度良く形成できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明における塗装装置の一実施例を示すブロック図である。
【図2】本発明における塗装装置の他の実施例を示すブロック図である。
【図3】本発明者等が実施した初期の塗装装置の一例を示すブロック図である。
【図4】図3の塗装装置における塗料供給タンクの供給圧と、塗料回収タンク圧と、吐出圧の関係を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0029】
図1は本発明の塗装装置の一実施例を示すもので、図中50は塗料aを噴射して塗装を行うスプレーガン、51はスプレーガン50に塗料供給配管52を介して塗料aを供給するための塗料供給タンクであり、該塗料供給タンク51はタンク昇降装置53によりその高さ位置を任意に調節できるように支持されている。塗料供給配管52はフレキシブル配管により構成されている。そして、タンク昇降装置53によって塗料供給タンク51の高さをスプレーガン50よりも高い位置に調節すると、塗料供給タンク51の塗料aは重力によってスプレーガン50に供給することができる。前記スプレーガン50には図示しないニードル弁等の開閉手段が備えられており、塗料供給タンク51から塗料供給配管52を介して供給された塗料aの一部はニードル弁が開けられたスプレーガン50から吐出され、霧化用エア供給装置54からの霧化用エア55によって霧化され、スプレーガン50の先端50aから噴射される。
【0030】
又、前記スプレーガン50に吐出されない大半の塗料a'は、回収配管56を介して下部に設けた回収タンク57で回収するようにしている。58は回収タンク57内の回収した塗料a'のレベルを計測するレベル計である。
【0031】
更に、前記回収タンク57内の塗料aは、循環ポンプ59を備えた循環配管60により前記塗料供給タンク51に循環して供給できるようにしている。59aは循環配管60により循環される塗料aの流量を検出する流量計である。前記塗料供給タンク51と回収タンク57には、内部の塗料aを攪拌するための攪拌機51a,57aが設けられている。
【0032】
前記タンク昇降装置53としては、電動シリンダ、油圧シリンダ等の塗料供給タンク51の高さ位置を任意に調節できるものであればよいが、電動シリンダを用いるのが好ましい。
【0033】
又、前記スプレーガン50の塗料を噴射する先端50aの下部には、霧化用エア供給装置54からの霧化用エア55の供給が停止された状態において、スプレーガン50から塗料を吐出させた時に落下する塗料の液滴Xの滴下を検出するようにした投光器61と受光器62からなる光センサ63(吐出量検出装置)が設けてあり、この光センサ63によって検出した液滴Xの滴下信号63aから制御器64により、スプレーガン50から吐出される塗料の吐出量を計測するようになっている。更に、前記スプレーガン50の入口にはスプレーガン50に供給する塗料aの圧力を検出する圧力計65が設けてあり、該圧力計65で検出した圧力信号65aが前記制御器64に入力されている。
【0034】
タンク昇降装置53によって塗料供給タンク51の高さを調節することでスプレーガン50入口の圧力計65で検出される塗料aの供給圧力を種々変化させたときに、スプレーガン50から滴下する液滴Xの滴下間隔を光センサ(吐出量検出装置)63で計測することにより、塗料供給タンク51の高さ位置とスプレーガン50による塗料aの吐出量との関係を予め求めて、その関係が制御器64に入力してあり、制御器64は、任意の目的吐出量の指令信号Sが入力されると、目的吐出量が保持されるようにタンク昇降装置53に制御信号S'を発して塗料供給タンク51の高さ位置を自動的に制御するようになっている。
【0035】
更に、図1では、前記塗料供給タンク51、スプレーガン50、回収タンク57及び配管52,56,60の洗浄を行うために、前記回収タンク57に開閉弁66を有する洗浄水流路67によって洗浄水68を供給するようにしており、更に、前記回収配管56には3方弁69を介して洗浄排水管70を接続している。71は排水タンクである。
【0036】
図1では、前記スプレーガン50、塗料供給タンク51、タンク昇降装置53、回収タンク57、循環ポンプ59及び排水タンク71を防爆ブース72内に備えるようにした場合を示している。従って、前記タンク昇降装置53及び循環ポンプ59には防爆仕様のものを用いている。
【0037】
73は前記防爆ブース72の外部に備えたエアパネルであり、該エアパネル73には、工場エア74を取入れてドライヤ、エアフィルタ、ミストセパレータ等の浄化器75等を経た後のエア74'の一部を、圧力設定器76、切換弁77、流量計78等を有する前記霧化用エア供給装置54を介し、霧化用エア55として前記スプレーガン50に供給するようにしている。又、前記浄化器75からのエア74'の一部は圧力設定器76、切換弁77を介し、シリンダ駆動エア79としてスプレーガン50に供給することによりスプレーガン50の図示しないニードル弁の開閉を制御するようになっている。
【0038】
更に、前記浄化器75からのエア74'の一部は、圧力設定器76、切換弁77a,7bを介し、弁操作エア80として前記開閉弁66及び3方弁69に供給して弁の切り換えを行うようになっている。
【0039】
又、塗料供給配管52における圧力計65の上流には開閉弁81が設けてあり、前記浄化器75からのエア74'の一部は、圧力設定器76、切換弁77を介し、弁操作エア82として前記開閉弁81に供給して弁の切り換えを行うようになっている。
【0040】
一方、前記工場エア74を取入れて浄化器75'等を経たエア74'は、圧力設定器76、切換弁77を介し、攪拌用エア83として塗料供給タンク51及び回収タンク57に備えた攪拌機51a,57aを駆動するようになっている。
【0041】
以下に上記図1の実施例の作動を説明する。
【0042】
塗料aが収容された塗料供給タンク51をタンク昇降装置53を駆動してスプレーガン50よりも高い位置に保持した状態において、弁操作エア82により開閉弁81を開作動すると、塗料供給タンク51内の塗料aは重力により塗料供給配管52を介してスプレーガン50に供給され、塗料aの一部はスプレーガン50から吐出されるようになる。
【0043】
又、スプレーガン50で吐出されなかった残りの塗料a'は回収配管56により回収タンク57に回収される。
【0044】
このとき、タンク昇降装置53によって塗料供給タンク51の高さを調節することでスプレーガン50入口の圧力計65で検出される塗料aの供給圧力を種々変化させたときに、スプレーガン50から滴下する液滴Xの滴下間隔を光センサ(吐出量検出装置)63で計測して、塗料供給タンク51の高さ位置とスプレーガン50からの塗料aの吐出量との関係を予め求めて制御器64に入力してあるので、制御器64に目標吐出量の指令信号Sを入力すると、制御器64は目標吐出量が保持される塗料供給タンク51の高さ位置になるように、タンク昇降装置53を自動的に制御する。
【0045】
このように、スプレーガン50から目標吐出量の塗料aが吐出された状態で、霧化用エア供給装置54からの霧化用エア55をスプレーガン50に供給すると、吐出された塗料は霧化されてスプレーガン50の先端50aから噴射される。スプレーガン50から塗料が安定して噴射された状態において塗装を行う。
【0046】
上記したように、塗料供給タンク51の塗料aを重力によってスプレーガン50に供給するようにしたので、塗料の沈殿や流路抵抗による脈動の問題を低減することができ、よって塗料供給配管52内の塗料aの流動が安定するので、スプレーガン50から微流量の塗料を噴射させて薄い塗装膜を重ね塗りするような場合における塗装品質を大幅に向上することができる。
【0047】
又、前記塗料供給タンク51によってスプレーガン50に供給される塗料aの一部をスプレーガン50から吐出させ、スプレーガン50で吐出されない大半の塗料a'を回収タンク57に導くことにより、スプレーガン50に対する塗料aの流動を安定せることができるが、一方、塗料供給タンク51の塗料aは短時間で減少してしまう。このため、循環ポンプ59を駆動して回収タンク57の塗料aを前記塗料供給タンク51に循環供給することにより、連続して塗装を行うことができる。循環ポンプ59は連続運転してもよく、又は、回収タンク57のレベル計58にて検出される塗料のレベルが所定値になった時に運転するようにしてもよい。
【0048】
循環ポンプ59の運転によって回収タンク57の塗料aを塗料供給タンク51に循環供給すると、塗料供給タンク51内の塗料aの量が増加するために塗料供給配管52による塗料aの供給圧力が増加するため、圧力計65で検出される圧力に基づいて、前記制御器64によって塗料供給タンク51の高さ位置を補正することができる。
【0049】
塗装作業が中断したときにおいても、前記循環ポンプ59を運転して塗料aを塗料供給タンク51及びスプレーガン50に循環させることにより、塗料aの粉体が沈殿する問題を防止することができる。
【0050】
塗装作業が終了した後に塗装装置を洗浄する際には、弁操作エア80により開閉弁66を開けて洗浄水流路67により洗浄水68を回収タンク57に供給し、その後、循環ポンプ59を駆動して回収タンク57の洗浄水を循環配管60により塗料供給タンク51に導き、更に、塗料供給配管52によりスプレーガン50を経て回収タンク57へ戻すことにより洗浄を行なう。その後、弁操作エア80により3方弁69を切り換え、循環ポンプ59を駆動して回収タンク57の洗浄水を循環配管60により塗料供給タンク51に導くと、洗浄水は、塗料供給配管52によりスプレーガン50及び3方弁69を経た後、洗浄排水管70介して排水タンク71へ排水される。
【0051】
図2は、本発明の塗装装置の他の実施例を示すものであり、図2では、図1に示した塗料供給タンク51に蓋84を備えることにより気密を保持できる構造とし、前記浄化器75からのエア74'の一部を圧力設定器76、切換弁77を介し加圧エア85として前記塗料供給タンク51に供給するようにした加圧エア供給手段86を備えて、塗料供給タンク51を加圧エア85で加圧できるようにしている。
【0052】
図2の実施例によれば、前記タンク昇降装置53によって塗料供給タンク51の高さ位置を変更することでスプレーガン50に供給する塗料aの供給圧力を重力で調整することに加えて、加圧エア85の圧力によって塗料aの供給圧力を更に高めることができる。このように、加圧エア85の圧力によって塗料aの供給圧力を高い圧力に設定することが容易に可能になる。
【0053】
従って、タンク昇降装置53による塗料供給タンク51の昇降高さを小さくしても塗料aの供給圧力を高めることができるため、タンク昇降装置53を小型なものにすることができる。このとき、タンク昇降装置53は供給圧力を微調整するためだけに用いることもできる。
【0054】
尚、本発明は上記形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
50 スプレーガン
51 塗料供給タンク
52 塗料供給配管
53 タンク昇降装置
55 霧化用エア
56 回収配管
57 回収タンク
59 循環ポンプ
60 循環配管
63 光センサ(吐出量検出装置)
64 制御器
65 圧力計
85 加圧エア
86 加圧エア供給手段
a 塗料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料供給タンクを昇降可能に設け、前記塗料供給タンクをスプレーガンよりも高い位置に調節することにより該塗料供給タンク内の塗料を重力によってスプレーガンに供給し、塗料の一部をスプレーガンから吐出させて霧化用エアにより噴射させると共に、スプレーガンから吐出されない塗料は回収配管により回収タンクに回収することを特徴とする塗装装置の噴射量制御方法。
【請求項2】
前記塗料供給タンクの高さを種々変化させたときに、スプレーガンから吐出する塗料の吐出量を吐出量検出装置で計測することにより、塗料供給タンクの高さ位置とスプレーガンによる塗料の吐出量との関係を予め求めておき、求めた関係に基づき、スプレーガンによる目的吐出量が保持されるように塗料供給タンクを昇降させて高さを調整することを特徴とする請求項1に記載の塗装装置の噴射量制御方法。
【請求項3】
前記塗料回収タンクの塗料を前記塗料供給タンクに戻して循環使用することを特徴とする請求項1又は2に記載の塗装装置の噴射量制御方法。
【請求項4】
前記塗料供給タンクに加圧エアを供給して、スプレーガンに供給する塗料の供給圧力を高めることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の塗装装置の噴射量制御方法。
【請求項5】
塗料を収容する塗料供給タンクと、
塗料供給タンクに塗料供給配管を介して接続され、塗料供給タンクからの塗料の一部を吐出するようにしたスプレーガンと、
前記塗料供給タンクを昇降させてスプレーガンより高い位置に調節することにより塗料供給タンク内の塗料を重力によってスプレーガンに供給するようにしたタンク昇降装置と、
前記スプレーガンから吐出されない塗料を回収する回収タンクと、
を有することを特徴とする塗装装置の噴射量制御装置。
【請求項6】
前記スプレーガンから吐出する塗料の吐出量を検出する吐出量検出装置と、前記塗料供給タンクの高さを種々変化させたときにスプレーガンから吐出する塗料の吐出量を前記吐出量検出装置で検出して入力することにより、塗料供給タンクの高さ位置とスプレーガンによる塗料の吐出量との関係を予め求めておき、スプレーガンによる目的吐出量の指令信号が入力されると、スプレーガンから目的吐出量の塗料が吐出されるようにタンク昇降装置に制御信号を発して塗料供給タンクの高さを調整する制御器とを備えたことを特徴とする請求項5に記載の塗装装置の噴射量制御装置。
【請求項7】
前記塗料回収タンクの塗料を前記塗料供給タンクに戻す循環配管を有することを特徴とする請求項5又は6に記載の塗装装置の噴射量制御装置。
【請求項8】
前記塗料供給タンクに加圧エアを供給して加圧する加圧エア供給手段を有することを特徴とする請求項5〜7のいずれか1つに記載の塗装装置の噴射量制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−25151(P2011−25151A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173245(P2009−173245)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】