説明

塩を含む粘着剤組成物

本発明は、連続相及び不連続相を含む粘着剤組成物に関し、ここで、a)上記連続相は、水蒸気透過性疎水性ポリマーを含み;そしてb)上記不連続相は、水溶性塩を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩を含む新規な吸収性粘着剤組成物、及び当該吸収性粘着剤組成物を含む医療デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤は、医療デバイス、例えば、造瘻術装具、被覆材(例えば、創傷被覆材)、外傷排液用バンデージ、小便収集用デバイス、肌に対する装具及び補綴具を取り付けるために長い間用いられている。人間は、短期間に、20,000g/m2/24h超の発汗をすることが報告されている(Main,K.,K.O.Nilsson及びN.E.Skakkebaek,1991,Influence of sex and growth hormone deficiency on sweating,Scand.J.Clin.Lab Invest 51:475−480)。
【0003】
従って、皮膚接触用粘着剤の水分ハンドリング能力、すなわち、上記粘着剤の吸水力及び水蒸気透過度が重要である。
皮膚用粘着剤を設計する場合、主要な課題の1つは、浸軟を防ぐために、上記粘着剤の下にある皮膚を比較的ドライに保つことである。浸軟は、皮膚が、蒸散により水分を取り除くことができず、そして皮膚のバリア機能が劣った場合に生ずる。
【0004】
通常、皮膚用粘着剤は、透水性であることにより皮膚を乾燥状態に保つ。これにより、上記粘着剤を介して、皮膚側から外側に水分を輸送することができ、そこで水分が蒸発する。この機構は、造瘻術皮膚用粘着剤の場合には用いることができない。というのは、不透水性層が、造瘻術用粘着剤の外側を覆っているからである。上記不透水性層は、造設された瘻からの排出物が、外側から上記粘着剤に入ることを予防する。従って、水分の蒸発は不可能である。よって、造瘻術装具用の粘着剤組成物は、吸水性とされる。吸収粒子又はヒドロコロイド(HC)が、疎水性の粘着剤マトリックス内に混合され、皮膚から水分が吸収され、それにより皮膚が比較的乾燥状態に保たれる。この技法は、当技術分野に周知であり(例えば、米国特許第6,451,883号明細書)、市販の造瘻術用粘着剤の基礎を形成する。
【0005】
HC粒子を有しない造瘻術用粘着剤の技術分野の従来の状態における粘着剤マトリックスは、透過性が非常に低く、非常に疎水性である。水が上記粘着剤内を透過することができる唯一の方式は、それらの中に混合されたヒドロコロイド粒子を介することである。これらの粒子は、上記接着剤層の厚さの合計よりも非常に小さいので、水が上記接着剤内に移動することができる唯一の方式は、HC粒子がお互いに接触し且つ水が透過するためのブリッジを形成することである。水の輸送のこの制限により、十分な粒子がお互いに接触するように、粘着剤内のヒドロコロイド粒子の比較的高い充填率が決定される。用いられる粒子は、上記粘着剤マトリックスと比較して硬いので、大量の粒子の添加により、粘着剤が硬くなりそして使用者にとって快適でなくなる。
【0006】
透水性粘着剤マトリックス、例えば、国際公開第05/032401号に記載される粘着剤を用いることにより、水の輸送は、お互いに接触する粒子の数に依存することが少なくなり、粘着剤内の適切な水の移動性を確保するためにより少ない粒子が必要となる。
【0007】
残念ながら、吸収粒子の量を減らすと、吸収力及び吸収速度が遅くなる。上記粘着剤内の吸水は、皮膚と、粘着剤内部との蒸気圧の差により駆動される。ヒドロコロイド上の蒸気圧は、水が上記粒子により吸収されると、平衡蒸気圧の方向に迅速に移行する。上記ヒドロコロイド内で蒸気圧が高くなると、駆動力が減り、そして水の輸送がより遅くなる。これはまた、不透過性の粘着剤マトリックスを有する一般的なHC粘着剤のケースであるが、水の輸送は、隣接する粒子とさらに接触しそしてブリッジをさらに形成することを開始する、展開する粒子により助けられる。このように、水の流動に対する抵抗性が減り、そしてより低い駆動力が補われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、粒子の量を減らすと、吸収力が減るだけではなく、粘着剤の吸収速度も遅くなる。現在公知の技術を用いると、軟らかく、高い吸水力を有し、そして比較的高く且つ一定の一時的な水の取り込みを有する造瘻術用粘着剤を製造することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、非常に低い粒子充填率を有し且つさらに高い保水力を有する吸収性粘着剤を提供する。
【0010】
従って、本発明は、連続相及び不連続相を含む粘着剤組成物に関し、
a)上記連続相は、水蒸気透過性疎水性ポリマーを含み;そして
b)上記不連続相は、水溶性塩を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、塩水内の24時間後の粘着剤の増量を示す。粘着剤CA1及び粘着剤A1〜A5を、NaCl含有率の関数としてプロットした。
【図2】図2において、20重量%のNaClを含む粘着剤の吸水性の結果を、純粋な粘着剤の透水度に対してプロットした。
【図3】図3は、異なる塩を用いた場合の吸水性を具体的に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、連続相及び不連続相を含む粘着剤組成物に関し、
a)上記連続相は、水蒸気透過性疎水性ポリマーを含み;そして
b)上記不連続相は、水溶性塩を含む。
本明細書において、上記粘着剤組成物の合計は、上記不連続相及び上記連続相の組み合わせを意味する。
【0013】
本明細書において、上記不連続相は、上記連続相中に分布している、一若しくは複数の塩、又は塩の混合物、あるいは任意の他の固形物、好ましくは粒子状形態における、例えば、フィラー(天然でん粉)、着色剤、ヒドロコロイドを意味する。
本明細書において、上記連続相は、上記不連続相を除いた粘着剤組成物の合計を意味する。
【0014】
本発明は、非常に低い粒子充填率を有し且つさらに高い保水力を有する吸収性粘着剤を提供する。これらの非常に魅力がある特徴は、吸収材として、吸水性粒子の代わりに水溶性塩結晶を用いることにより得られる。さらに、上記粘着剤マトリックスは、水蒸気透過性の及びイオン不透過性であることが要求される。この方式において、水蒸気は、塩結晶の方向に拡散し、そして上記塩結晶をゆっくりと溶解させることができるが、溶解された塩からのイオンは、上記粘着剤マトリックスから逃れることができない。
通常、水溶性塩を、吸収粒子として用いることはできない。というのは、水に接触した場合に水溶性塩が溶解し、そしてポリマーマトリックスから溶出するからである。
【0015】
驚くべきことに、水溶性塩及び透過性ポリマーの組み合わせは、塩溶液を浸出される悪影響なしで、水分を吸収することができる。これがどのように作用するかの理論の1つは、上記ポリマー及び塩の分布が透過性の効果を提供し、そして水分が、膜として作用する、蒸気透過性であるが液体不透過性であるポリマーを介して輸送されることである。上記液体不透過性のポリマーはまた、圧力平衡が十分に変化するまで、塩溶液をシールする機能を有する。これは、これらの粘着剤の通常の使用において、未だ到達したことが無く、輸送は、本質的に一方向のみである。上記粘着剤の表面に直接到達するトンネル又は開口部がない限り、上記塩溶液は、浸出することができない。
【0016】
粘着剤マトリックス内の塩結晶は、粘着剤マトリックス内の一般的なヒドロコロイドと本質的に異なる方式において「吸収する」。
第1に、所与の水の分圧において塩結晶が吸収することができる水の量が、ヒドロコロイドと比較して非常に大きいことができる。例えば、室温、75%相対湿度(RH)において、通常の台所の塩(NaCl)は自重の約3倍を吸収することができるが、Aquasorb A800のようなヒドロコロイドは、自重の約0.2倍のみを吸収する。従って、単なる台所の塩が、ヒドロコロイドよりも非常に大きい吸水力を有する。
【0017】
次に、塩粒子上の蒸気圧は、当該塩結晶が完全に溶解するまで、吸収された水の量から独立している。これは、吸収された水の量と共に平衡蒸気圧が迅速に高くなる上記ヒドロコロイド粒子と相反する。蒸気圧が高くなると、粘着剤及び皮膚上の蒸気圧の間の差が小さくなり、ひいては水の輸送の推進力が小さくなる。蒸気圧作用のこの差により、塩結晶を有する粘着剤の吸収速度がさらに時間内に一定になり、そして吸収された水の量の作用が小さくなる。
【0018】
最後に、上記粘着剤の機械的挙動がまた、水の吸収の際に変化する。粘着剤であって、その中に塩結晶を有するものの中に水が吸収されないと、上記粘着剤は、粒子を有しない均等の粘着剤よりも硬いであろう。これは、上記結晶粒子が、上記粘着剤マトリックスよりも硬いからである。しかし、上記粘着剤が水を吸収しはじめると、結晶が溶解し、そして上記粘着剤が、だんだんと軟らかくなる。
【0019】
溶解の際に液状に変化するが、上記ポリマーマトリックスを伴うポケット内に保持されている塩の驚くべき利益は、上記粘着剤の弾性率が小さくなることである。上記粘着剤は、より軟らかくなり、そして快適に身につけることができる。しかし、耐浸食抵抗性は小さくならない。
【0020】
塩を溶解する物理学から、一時近似への、満足な吸収速度を達成するための塩の最小溶解性を計算することが可能である。ラウールの法則は、ある種(この場合:水)の、当該種を含む溶液の平衡蒸気圧は、純粋な種の飽和蒸気圧に上記溶液内のそのモル分画を乗じたものに等しいことを教示している。
【0021】
【数1】

【0022】
本発明に従うと、上記粒子内の蒸気圧は、純水の98%未満である(等浸透圧性の水に非常に近い)ことが望ましい。というのは、皮膚及び粘着剤の間の蒸気圧勾配により、水が粘着剤内に輸送される必要があるからである。
本発明及びラウールの法則に従う最小蒸気圧要件から、最小塩溶解性を計算することができる。
【0023】
【数2】

【0024】
ここで、PH2Oは、水の分圧であり、PH2Osatは、純水の蒸気圧であり、xH2Oは、水のモル分率であり、そしてnH2O及びnsaltは、水及び塩のモル濃度である。この方程式に従うと、塩の最小溶解性は、1.13mol/L H2Oであると計算される。
【0025】
本発明に従う水溶性塩は、無機塩又は有機塩であることができる。
本明細書において、水溶性無機塩は、炭素以外の2種又は3種以上の化学元素がほぼ一定の比率で結合し、そして一部の化合物は炭素を含むが、炭素−炭素結合(例えば、カーボネート、シアニド)を欠く酸性物質を意味し、上記酸の全て又は一部の水素イオンが、金属イオン又は陽性基で置換されており、そして上記物質は、水中で、1モル/L以上において、透明な溶液まで完全に溶解する。
【0026】
本発明の実施形態の1つに従うと、水溶性塩は、1モル/Lにおいて完全に溶解する。
本明細書において、水溶性有機塩は、有機酸及び塩基の反応生成物、例えば、酢酸(CH3COOH)及び水酸化ナトリウム(NaOH)の反応からの酢酸ナトリウム(CH3COONa)を意味し、そして上記物質は、水中で、1モル/L以上において、透明な溶液まで完全に溶解する。
【0027】
本発明の実施形態の1つに従うと、上記粘着剤組成物は、無機塩を含む。
本発明の実施形態の1つに従うと、上記粘着剤組成物は、水溶性無機塩を含み、そこでは、正イオンは、1族、2族、遷移金属、アルミニウム及びアンモニウムからの任意のカチオンである。
【0028】
本発明の実施形態の1つに従うと、上記粘着剤組成物は、NaCl、CaCl2、K2SO4、NaHCO3、Na2CO3、KCl、NaBr、NaI、KI、NH4Cl、AlCl3、及びそれらの混合物の群(それらに限定されるものではない)由来の水溶性無機塩を含む。
本発明の好ましい実施形態に従うと、上記水溶性塩はNaClである。
本発明の別の実施形態に従うと、上記粘着剤組成物は有機塩を含む。
【0029】
本発明の実施形態の1つに従うと、上記粘着剤組成物は、CH3COONa、CH3COOK、COONa、COOK、及びそれらの混合物の群(それらに限定されるものではない)由来の水溶性有機塩を含む。
本発明の実施形態の1つに従うと、上記水溶性塩の塩含有率は、上記粘着剤組成物の合計の40重量%未満である。
【0030】
本発明の実施形態の1つに従うと、上記粘着剤組成物は、ポリプロピレンオキシド、ポリウレタン、シリコーン、ポリアクリル樹脂又はエチレンビニルアセテート及びそれらの混合物の群(それらに限定されるものではない)由来の水蒸気透過性疎水性ポリマーを含む。
本明細書において、水蒸気透過性疎水性ポリマーは、平衡において、5重量%未満、好ましくは1重量%未満を吸収し、そして20g/m2/24h超、好ましくは100g/m2/24h超の水蒸気透過度を有するポリマーを意味する。
【0031】
本発明の実施形態の一つでは、上記水蒸気透過性疎水性ポリマーは、架橋されている。
本明細書において、架橋は、2本超の鎖が広がる高分子(ポリマー鎖構造)内の小領域を意味する。連結は、共有結合性、物理的、又はイオン性であることができる。
【0032】
本発明の別の実施形態では、上記水蒸気透過性疎水性ポリマーは、20g/m2/24h超の透過度を有する。
本発明の別の実施形態では、上記水蒸気透過性疎水性ポリマーは、ブロックコポリマーである。
【0033】
本明細書において、ブロックコポリマーは、主鎖の繰り返し単位が、ブロック、例えば、
(a)m−(b)n−(a)p−(b)q−
(式中、a及びbは、繰り返し単位を表す)
において生じるコポリマーを意味する。
本発明の好ましい実施態様では、上記水蒸気透過性疎水性ポリマーは、ポリプロピレンオキシドである。
【0034】
本発明の好ましい実施態様では、上記水蒸気透過性疎水性ポリマーは、ポリウレタンである。
本発明の好ましい実施態様では、上記水蒸気透過性疎水性ポリマーは、シリコーンである。
【0035】
本発明の好ましい実施態様では、上記水蒸気透過性疎水性ポリマーは、ポリアクリル樹脂である。
本発明の好ましい実施態様では、上記水蒸気透過性疎水性ポリマーは、エチレンビニルアセテートである。
【0036】
上記不連続相の好ましい粒径は、可能な限り小さく、より小さい粒子は、肉眼で観察することがさらに難しく、そして目をさらに満足させる製品が得られる。粒径の上限は、上記粘着剤の最小寸法のサイズである。従って、300μm厚の粘着剤は、300μm超の直径を有する粒子を含むべきではない。吸収性粒子は凝集する傾向があり、そしてこの効果は、粒径の減少と共に大きくなる。従って、好ましい粒径は、10〜300μmであろう。また、上記粒子は、小粒子の凝集を少なくするために凝集防止剤を含んでもよい。
【0037】
本発明の実施形態の1つに従うと、上記水蒸気透過性疎水性ポリマーは、付加反応触媒の存在下で実施された、下記;
(i)1つ又は2つ以上の不飽和末端基を有するポリアルキレンオキシドポリマー;及び
(ii)1つ又は2つ以上のSi−H基を含むオルガノシロキサン:
の反応生成物を含む。
【0038】
本発明の別の実施形態に従うと、上記粘着剤組成物は、3つ又は4つ以上の炭素原子を有する重合されたアルキレンオキシド成分から成るポリアルキレンオキシドポリマーを90%w/w超含む。
【0039】
本発明の別の実施形態に従うと、上記粘着剤組成物は、付加反応触媒の存在下で実施された、下記;
(i)少なくとも2つの不飽和末端基を有するポリアルキレンオキシドポリマー、そして上記ポリアルキレンオキシドポリマーの90%w/w超は、3つ又は4つ以上の炭素原子を有する重合されたアルキレンオキシド成分から成る;
(ii)3つ又は4つ以上のSi−H基を含むポリシロキサン架橋剤;及び
(iii)所望による、最大2つのSi−H基を含むポリシロキサン連鎖延長剤:
の反応生成物を含む。
【0040】
本発明の好ましい実施形態に従うと、上記付加反応触媒は、Ptビニルシロキサン錯体である。
本発明の好ましい実施形態に従うと、上記ポリアルキレンオキシドポリマーは、ポリプロピレンオキシドである。
本発明のさらに好ましい実施形態に従うと、上記反応生成物中のポリアルキレンオキシドの重量%は、60%以上である。
【0041】
1つ又は2つ以上の不飽和基を有するポリアルキレンオキシドポリマーは、分岐鎖又は直鎖であることができる。
しかし、好適には、上記ポリアルキレンオキシドポリマーは、直鎖であり、そして2つの不飽和末端基を有する。
本発明の特定の実施形態の1つでは、上記ポリアルキレンオキシドポリマーは、ポリプロピレンオキシドである。
【0042】
不飽和末端基を有するポリプロピレンオキシドは、次の式の化合物であることができる:
CH2=C(R1)−(Z)−O−(X)n−(W)−C(R2)=CH2 (Ia)
又は
CH(R1)=CH−(Z)−O−(X)n−(W)−CH=CH(R2) (Ib)
(式中、
1及びR2は、独立して、水素及びC1〜6−アルキルから選択され;
Z及びWは、C1〜4−アルキレンであり;
Xは、−(CH23−O−又は−CH2−CH(CH3)−O−であり;そして
nは、1〜900、さらに好ましくは10〜600、又は最も好ましくは20〜600である)。
【0043】
不飽和末端基を有するポリアルキレンオキシドの数平均分子量は、好適には500〜100,000、さらに好ましくは500〜50,000、そして最も好ましくは1,000〜35,000である。
不飽和末端基を有するポリアルキレンオキシドを、米国特許第6,248,915号明細書及び国際公開第05/032401号に記載されるように、又はそれらに記載される方法と同様に調製することができる。他のポリアルキレンオキシドポリマーを、同様に調製することができる。
【0044】
3つ又は4つ以上のSi−H基を含むポリシロキサン架橋剤は、次の式を有する好適な化合物である:
R−SiO(R,R)−(SiO(R,R))m−Si−(R,R,R) (II)
(式中、
基Rの少なくとも3つは水素であり、そして基Rの残部は、それぞれ独立して、C1〜12−アルキル、C3〜8−シクロアルキル、C6〜14−アリール及びC7〜12−アリールアルキルから選択され;そして
mは、5〜50又は好ましくは10〜40である)。
GPCにより測定される数平均分子量は、好適には、500〜3000である。
【0045】
式(II)の架橋剤1種又は2種以上を、架橋反応に用いることができる。
【0046】
本発明の実施形態の一つでは、3つ又は4つ以上のSi−H基を含む式(II)の架橋剤1種又は2種以上と、最大2つのSi−H基を含むポリシロキサン連鎖延長剤との混合物を、架橋反応に用いる。
【0047】
上記ポリシロキサン連鎖延長剤は、次の式を有する好適な化合物である:
3−SiO(R3,R3)−(SiO(R3,R3))m−Si−(R3,R3,R3) (III)
(式中、
最大2個の基R3は水素であり、そして基R3の残部は、それぞれ独立して、C1〜12−アルキル、C3〜8−シクロアルキル、C6〜14−アリール及びC7〜12−アリールアルキルから選択され;そして
mは、0〜50である)。
GPCにより測定される数平均分子量は、好適には、200〜65000、最も好ましくは200〜17500である。
【0048】
本明細書において、C1〜12−アルキルは1〜12個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基を意味し、C1〜8−アルキルは1〜8個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基を意味し、そしてC1〜6−アルキルは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル及びヘキシルを意味する。
【0049】
本明細書において、C1〜4−アルキレンは、1〜4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の二価のアルキレン基、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン及びイソブチレンを意味する。
本明細書において、C3〜8−シクロアルキルは、3〜8個の炭素原子を有する環式アルキル基、例えば、シクロペンチル及びシクロヘキシルを意味する。
【0050】
本明細書において、C6〜14−アリールは、C1〜6−アルキルで所望により置換されているフェニル基又はナフチル基、例えば、トリル及びキシリルを意味する。
本明細書において、C7〜12−アリールアルキルは、C1〜6−アルキル基に結合されたアリールを意味し、C1〜6−アルキル及びアリールは、上記規定の通り、例えば、ベンジル、フェネチル及びo−メチルフェネチルである。
式(II)の化合物及び式(III)の化合物では、水素ではない基R及び基R3は、それぞれ独立して、基C1〜6−アルキル、C6〜14−アリール又はC7〜12−アリールアルキルの要素から選択されるのが好適である。
【0051】
Si−H基を、式(II)の化合物どちらかの末端のところに配置させることができる。しかし、少なくとも1つのSi−H基は、式(II)の化合物の(SiO(R3,R3))m−鎖内に配置させることが好ましい。
上記ポリシロキサン架橋剤及び連鎖延長剤を、特開2002−224706号公報及び国際公開第05/032401号明細書に記載されるように、又はそこに記載される方法と同様に調製することができる。
【0052】
付加反応は、その簡素な用語において、元素又は化合物の原子を、有機化合物中の二重結合又は三重結合と、当該結合を開裂させそしてそこに結合させ1つのより大きな化合物を形成することにより反応する化学反応である。付加反応は、複数の結合された原子を有する化学系化合物に限定される。ヒドロシリル化は、例えば、化合物内の炭素−炭素二重結合と、水素シロキサンからの反応性水素との間の付加反応である。
【0053】
好適な付加反応触媒は、任意のヒドロシリル化触媒、好ましくは白金(Pt)触媒である。2成分型シーラントの第1の部分に関するPt−触媒が、米国特許第6,248,915号明細書に記載されている。毒性の可能性の研究において、Ptが、ゼロの原子価状態であるPt錯体触媒が好ましい。好ましい触媒は、白金−ビニルシロキサン及び白金−オレフィン錯体、例えば、Pt−ジビニルテトラメチルジシロキサンである。
【0054】
反応は、好適には、25℃〜150℃の温度で、ニートで実施される。上記反応のために溶媒を用いる必要はなく、特に皮膚用途向けの粘着剤に関する優位性である。
好適には、上記ポリシロキサン架橋剤内の反応性Si−H基の数の、反応条件の下でSi−H基と反応性を有するポリプロピレンオキシド内の不飽和基の数に対する比率は、0.2〜1.0である。
【0055】
架橋のために用いられるポリシロキサンの量は、不飽和末端基を有するポリアルキレンオキシドポリマーの量の、好適には15%w/w未満、そしてさらに好ましくは10%w/w未満である。
上記架橋反応は、全てのポリアルキレンオキシドポリマーの架橋を完了するに至らない。上記粘着剤は、架橋されたポリアルキレンオキシドポリマーと、架橋されていないポリアルキレンオキシドポリマーとの混合物を含む。
【0056】
本発明に従う粘着剤組成物は、粘着剤組成物用の一般成分、例えば、粘着剤、増量剤、非反応性ポリマー、オイル(例えば、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマー、鉱物油)、可塑剤、フィラー、界面活性剤を含むことができる。上記粘着剤はまた、医薬活性成分を含むことができる。これらの所望による成分は、架橋反応の際、反応混合物中に存在することができる。
【0057】
本発明の実施形態の一つでは、上記粘着剤組成物は、連続相及び不連続相を含み、ここで
a)上記連続相は、水蒸気透過性及び疎水性であり;そして
b)上記不連続相は、水溶性塩を含む。
【0058】
本発明の好ましい実施態様では、上記水蒸気透過性及び疎水性の連続相は、上述のポリマーを含む。
本発明の実施形態の一つでは、上記粘着剤組成物は、ヒドロコロイドをさらに含む。
本発明の好ましい実施態様では、ヒドロコロイドの量は、組成物の総量の50%w/w未満である。
【0059】
本発明の別の実施形態では、基材層(backing layer)と、本発明に従う粘着剤組成物少なくとも1層とを含む層状粘着剤が構成する。
本発明は、化学的又は機械的のどちらかの複数の方式において、発泡された粘着剤に発泡されうる。
【0060】
化学系発泡剤又は上記粘着剤配合それ自体に添加された他の材料が、種々の機構により気泡を発生させることができる。これらの機構には、化学反応、物理変化、熱分解又は化学系分解、分散された相の浸出、低沸点材料の揮発又はこれらの方法の組み合わせが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
任意の商業的に公知の化学系発泡剤を用いることができる。当該化学系発泡剤は、分解の前及び後の両方において、無毒であり、皮膚に優しく、そして環境に安全であることが好適である。
【0062】
上記粘着剤混合物に添加すべき化学系発泡剤の量は、約0.01%から、最大約90重量%の範囲であることができ、そして経験的な範囲では、約1%から最大約20重量%が含まれる。添加されるべき気体の量は、候補の混合物から発生する気体の量を測定し、そして最終生成物のために要求される発泡の量を計算し、フォーミング工程の際に大気中に失われる気体の量を経験により調節して決定することができる。
【0063】
本発明の発泡された粘着剤を製造するための別の方法は、上記粘着剤塊を泡の中にホイップするのに似て、機械的方法を用いて物理的発泡剤を添加し、そのようにして発泡された構造体を製造する方法である。上記粘着剤の製造プロセスの際、空気、窒素、二酸化炭素若しくは他の気体、又は低沸点揮発性液体を導入することを含む工程を含む多くの方法が可能である。
【0064】
本発明はまた、上述の粘着剤組成物を含む医療デバイスに関する。
本発明に従う粘着剤組成物を含む医療デバイスは、造瘻術用装具、被覆材(例えば、創傷被覆材)、外傷排液用バンデージ、皮膚保護用バンデージ、小便収集用デバイス、装具又は補綴具、例えば、偽乳房、及び電子素子、例えば、測定機器、又は電力供給源、例えば、バッテリであることができる。
【0065】
上記医療デバイスはまた、皮膚に医療デバイス又はその一部を固定するため、あるいは皮膚に取り付けられた医療デバイスの周囲をシールするためのテープ(例えば、伸縮性テープ又はフィルム)、又は被覆材若しくはバンデージであることができる。
【0066】
上記医療デバイスは、その最も簡単な構成体において、本発明に従う粘着剤組成物の層と、基材層とを含む粘着剤構成体であることができる。
上記基材層により、好適には伸縮性(低い弾性率)を有し、皮膚の動きに一致させ、そして上記医療デバイスを用いる場合に快適性を提供する粘着剤構成体が可能となる。
【0067】
本発明に従って用いられる上記基材層の厚さは、用いられる基材の種類によって決まる。ポリマーフィルム、例えば、ポリウレタンフィルムの場合、総合的な厚さは、10〜100μm、好ましくは10〜50μm、最も好ましくは約30μmであることができる。
本発明の実施形態の一つでは、上記基材層は、非蒸気透過性である。
【0068】
本発明の別の実施形態では、上記基材層は水蒸気透過性を有し、そして500g/m2/24h超の水蒸気透過度を有する。このケースでは、本発明の粘着剤構成体は、良好な水分吸収速度及び吸収力を提供することができ、そして上記構成体を介して、そして皮膚から大量の水分を輸送することができる。上記粘着剤層の化学組成及び物理的構成と、上記基材層の化学的及び物理的構成との両方により、水蒸気透過性が影響を受ける。上記物理的構成に関して、上記基材層は、連続(水蒸気透過性に影響を与える、穴、穿孔、凹み無し、追加された粒子又は繊維無し)であるか、又は不連続(水蒸気透過性に影響を与える穴、穿孔、凹み、追加された粒子又は繊維を有する)であることができる。
【0069】
上記基材層の水蒸気透過度は、好適には、500g/m2/24h超、最も好ましくは1000g/m2/24h超、さらに好ましくは3000g/m2/24h超、そして最も好ましくは10,000g/m2/24h超である。
本発明に従う粘着剤組成物は、補綴用デバイスを皮膚に固定するために好適である。例えば、偽乳房を、本明細書に記載される粘着剤を用いて固定することができる。本発明に従う粘着剤組成物は、当技術分野の現状に対して優れている。というのは、本発明に従う粘着剤組成物が、水分を吸収することにより皮膚を乾燥状態に保つことができるからである。
【0070】
上記粘着剤組成物は、その性質において完全に伸縮性を有する。上記粘着剤組成物は水を吸収し、そして吸収材が漏出させない。従って、変形は、上記粘着剤の伸縮性により可逆的であり、そして吸水は、乾燥により可逆的である。従って、本発明に従う粘着剤組成物は、再利用可能な粘着剤として非常に好適である。
【0071】
本発明の造瘻術用装具は、2ピース型装具の一部を形成する粘着剤ウェーハの形態、又はストーマから排出される材料を集めるための収集バッグと、1ピース型装具をオストメイトの皮膚に取り付けるための接着剤フランジとを含む1ピース型装具の形態であることができる。別の収集バッグを、それ自体公知の様式、例えば、結合リングを用いた機械的結合により、又は接着剤フランジの使用により、上記粘着剤ウェーハに取り付けることができる。本発明に従う粘着剤は、粘着剤シート全体を作り上げる1又は2以上の層であることができる。
【0072】
本発明の別の実施形態では、上記粘着剤は、肛門周囲の皮膚への、糞便収集デバイス、取り付けバッグ又は別の収集デバイスの一部である。
本発明の被覆材又は粘着剤シートは、着用時間が減る被覆材の端部が「ロールアップ」するリスクを減らすために、傾斜した端部を有することができる。傾斜は、例えば、欧州特許第0,264,299号明細書又は米国特許第5,133,821号明細書に開示されるように、それ自体公知の様式において、不連続又は連続的に実施されうる。
【実施例】
【0073】
本発明に従う粘着剤と、比較用の粘着剤組成物とを調製するために、下記材料を用いた。
【0074】
ACX003:アリル末端化ポリエーテル(ポリプロピレンオキシド) 粘度16Pa.s,Kanekaより.
Catalyst,Pt−VTS:Pt−VTSは、IPA中のPt−ジビニルテトラ(tetera)メチルジシロキサン(Pt,3.0重量%)である。
CR600:Kanekaから入手可能なポリ−アルキル水素シロキサン硬化剤.
Kraton 1107(Kraton)SIS:スチレン 15%.
Arkon P115:Arakawa Chemical Industriesからの飽和の脂環式炭化水素樹脂.
DOA:ジオクチルアジペート,International Speciality Chemicals Ltdからの可塑剤.
Gelva GMS2853:Cytec Surface specialties Nordic A/Sからのアクリルコポリマー.
ポリオール:DOWからの14944−44 H dev.ポリオール.
Vorastar:DOWからのイソシアネート,HB6013.
シリコーンA:Dow Corning 7−9677 Part A.
シリコーンB:Dow Corning 7−9677 Part B.
PUフィルム:BL9601,Intellicoat.MVTR=10000g/m2/24h.
【0075】
[方法]
[水蒸気透過度(MVTR,moisture vapour transmission rate)の測定]
MVTRを、反転カップ法を用いて、24時間の期間にわたり、平方メートル当たりのグラム(g/m2)において測定した。
【0076】
開口部を有する不透水性及び蒸気不透過性の容器又はカップを用いた。20mLの塩水(0.9%NaCl,脱塩水中)を、上記容器内に置き、そして上記開口部を、試験用粘着剤フィルムでシールした。二重反復試験を用いて、上記容器を、電気加熱された湿度キャビネット内に置き、そして蒸気容器又はカップを、水が上記粘着剤と接触するように上下を逆さまにして置いた。上記キャビネットを、37℃及び15%相対湿度(RH)で保持した。約1時間後、上記容器を周囲と平衡にあるとみなし、そして上記容器を計量した。最初の計量の後24時間で、上記容器をさらに計量した。重量の差は、上記粘着剤フィルムを介した蒸気の蒸発のためである。この差を用いて、水蒸気透過度又はMVTRを計算した。MVTRは、24時間後の重量損失を、上記カップの開口部の面積により割って計算した(g/m2/24h)。
【0077】
材料のMVTRは、当該材料の厚さの一次関数である。従って、材料を特性づけるMVTRを報告する場合、MVTRを報告する材料の厚さの情報を与えることが重要である。我々は、参照として150μmを用いる。より薄い又はより厚い試料が評価される場合、MVTRを、150μm試料相当として報告した。従って、10g/m2/24hの測定されたMVTRを有する300μm試料は、試料の厚さと、試料のMVTRとの間の線状関係のために、150μm試料に関して、MVTR=20g/m2/24hを有するものとして報告される。最後に、この方法を用いることにより、支持PUフィルムを用いることによるエラーが持ち込まれることに我々は留意する。しかし、用いられたフィルムの透過性は非常に高く(10000g/m2/24h)、そして持ち込まれるエラーは非常に小さい。
【0078】
[吸水性の測定]
粘着剤片1×25×25mm3を、37℃で、塩水(0.9%NaCl、脱塩水中)に浸漬した。試料を取り出し、そして注意深くドリップドライし、そして30、60、90、120、240及び1440時間後に計量した。重量の変化を記録し、そして増量(g/cm2)として報告した。
【0079】
[試料調製]
[粘着剤A1〜A5及びA2p]
粘着剤ベース:100gの粘着剤ベースを、下記に示す表に与えられる比率において、ポリマーAC003、架橋剤CR600及び触媒を混合することにより製造した。
【0080】
【表1】

【0081】
吸水性用の試料を製造するために、20gの粘着剤ベースを小ビーカーに移動し、そして事前計量された量のNaClと混合し、表2に与えられる重量比を製造した。スラリーを、2枚の剥離ライナーであってその間に1mmの距離を有するものの間で硬化させ、1mm厚の粘着剤シートを製造した。
粘着剤A2pは、150μmの厚さの粘着剤層でPUフィルム(BL9601)をコーティングし、そして粘着剤を100℃で1時間硬化させることにより製造された。
【0082】
[比較用粘着剤CA1]
A1〜A5の粘着剤ベース25gを、2枚の剥離ライナーであってその間に1mmの距離を有するものの間で硬化させ、1mm厚の粘着剤シートを製造した。
【0083】
[比較用粘着剤CA2及びCA2p]
最初に、粘着剤ベースを混合した(SIS粘着剤):Kraton 1107(15g)、Arkon P115(25g)及びDOAオイル(5g)を、100ミリバールの減圧下で、140℃において、40分間、Z Mixer内で混合した。この粘着剤10gを取り出し、そしてNaCl 8.75gを添加し、そして混合を10分間続けた。
CA2pは、剥離ライナー及びPUフィルム(BL9601)の間で、NaClを有しない粘着剤をプレスすることにより製造された。上記粘着剤の厚さは、300μmであった。
【0084】
CA2は、厚さ1mmの粘着剤シートを製造するために、2枚の剥離ライナーであって、その間に1mmの距離を有するものの間で、塩含有粘着剤塊を圧縮成形することにより製造された。
【0085】
[粘着剤A9〜A12及び比較用粘着剤CA3]
粘着剤A1〜A5において調製されたもののように、粘着剤ベースを調製した。ベース材料20gを、塩(A9〜A12)又はシリカゲル(CA3)のどちらか5.0gと混合した。スラリーを、2枚の剥離ライナーであって、その間に1mmの距離を有するものの間で硬化させ、厚さ1mmの粘着剤シートを製造した。
【0086】
[粘着剤A6及びA6p]
PU粘着剤は、100.0gのポリオール(14944−44 H dev.ポリオール,DOW製)と、23.5gのイソシアネート(Vorastar HB6013,DOW製)とを混合することにより調製された。上記成分を、手で完全に混合した。
【0087】
A6pを製造するために、この粘着剤の一部を、非常に高い透水性を有するPUフィルム(BL9601)でコーティングした。上記粘着剤のコーティング厚さは、150μmであった。A6を、残余の粘着剤から製造した;20gを、小ビーカーに移動し、そして5.0gのNaClと混合した。スラリーを、2枚の剥離ライナーであって、その間に1mmの距離を有するものの間で硬化させ、厚さ1mmの粘着剤シートを製造した。硬化が幾分遅いので、塩粒子の沈降を予防するために、回転式オーブン内で実施しなければならなかった。
【0088】
[粘着剤A7及びA7p]
50.0gのシリコーンA及び50.0gのシリコーンBを混合することにより、シリコーン粘着剤を調製した。上記成分を、手で完全に混合した。
A7pを製造するために、この粘着剤の一部を、非常に高い透水性を有するPUフィルム(BL9601)でコーティングした。上記粘着剤のコーティング厚さは、150μmであった。
A7を、残部から製造した;20gを、小ビーカーに移動し、そして5.0gのNaClと混合した。スラリーを、2枚の剥離ライナーであって、その間に1mmの距離を有するものの間で硬化させ、厚さ1mmの粘着剤シートを製造した。
【0089】
[粘着剤A8及びA8p]
200gのアクリル系粘着剤を混合した(35%のGelva GMS2853及び65%のエチルアセテートを含む)。A8pを製造するために、この粘着剤の一部を、非常に高い透水性を有するPUフィルム(BL9601)でコーティングした。コーティングの後、溶媒を蒸発させ、ポリマーの層のみを残した。上記粘着剤の最終コーティング厚は、340μmであった。
【0090】
A8を、残部から製造した;60gを、小ビーカーに移動し、そして5.25gのNaClと混合した。スラリーを、溶媒の蒸発により「硬化」させ、21gのポリマー及び5.25gのNaClを残した(20重量%の塩,NaCl)。吸水性試験用に、1mm厚の粘着剤を製造した。
調製された試料を、それらの内容物(重量%)に関して以下の表に記載した。
【0091】
【表2】

【0092】
【表3】

【0093】
【表4】

【0094】
【表5】

【0095】
[塩濃度の効果]
塩濃度の効果を調査するために、試料A1〜A5及び比較用のCA1に関して、吸水性試験をセットした。塩水中で24時間浸漬した後に吸収された水に関して、結果を下記に示す。上記粘着剤のいくつかの塩は洗浄しなければならず、高い塩充填率の場合に、増量が減った。図1から、上記粘着剤中に塩が存在しない場合(比較用粘着剤CA1)、実際には、24時間後に吸水量が無いことが観察される。濃度曲線は、30〜40重量%で最高に達し、その後吸収が減少するように見える(塩が染み出たので、洗浄したことによると思われる)。しかし、これは、塩含有率を限定するものではない。上記粘着剤の頂部に塩を有しない粘着剤の透過層を置くことが簡易に想像され、これにより洗浄すべき塩が予防されるが、水蒸気に関して透過性を有する。
【0096】
[粘着剤マトリックス透水性の効果]
次に、水を吸収する粘着剤の能力を含む、同一塩上の粘着剤マトリックスの透水性の効果を試験した。最初に、上述の方法を用いて、塩を有しない純粋な粘着剤の透水性を測定した。結果を、以下の表に記載する。
【0097】
【表6】

【0098】
さらに、20重量%のNaClを含む同一の粘着剤の吸水性能を、吸水性試験において評価した。図2では、吸水性の結果を、純粋な粘着剤の透水性に対してプロットした。図2は、粘着剤A2、A6及びA7の全てが、比較的高い透過性及び良好な吸収性を有することを明確に示している。一方、比較用粘着剤CA2は、吸収が少なく、そして透水性が比較的低い。従って、良好な吸水性能に関して、150μm厚の純粋な粘着剤片に関して、少なくとも20g/m2/24hの粘着剤透過度が要求される。約400g/m2/24hの後、吸水が飽和し、そして純粋な粘着剤の透過性の効果は、低い透過度におけるよりも、吸水能力に対して影響が少ないように見える。
【0099】
[例3.異なる塩を用いた効果]
最後に、我々が用いる塩の種類の機能として、吸水性を調査した。同一量の水溶性塩を含む粘着剤A2及びA9〜A12を、国際公開第95/05138号に提案される不溶性添加剤(シリカゲル)を含む比較用粘着剤CA3と比較した。24時間後の吸収を、図3にプロットした。水溶性塩を含む粘着剤は、水不溶性塩を含む粘着剤よりも10倍高い吸水性を有することが観察される。
【0100】
[例4.塩を有するEVA粘着剤]
[材料]
・Levamelt 500,20KGy,EVAコポリマー,20KGyのガンマ線を照射,Lanxess,Germany
・Levamelt 700,20KGy,EVAコポリマー,20KGyのガンマ線を照射,Lanxess,Germany
・ポリグリコールB01/120(PPO),ポリ(プロピレンオキシド)オイル,Clariant,Germany
・Pine Crystal,KE311,樹脂,水素化ロジンエステル,Arakawa,Japan
・Suprasel,NaCl,微粒子NaCl粉末,Akzo Nobel Salt A/S,Denmark
【0101】
[配合]
粘着剤を、Brabender OHG,Duisburg,GermanyからのBrabenderミキサー(約60gの容積を有する)、又はLinden Maschinenfabrik,Marienheiden,GermanyからのHerrmann Linden LK II 0,5(約600gの容積を有する)内で混合した。ミキサー内のチャンバー温度は約120℃であり、そして粘着剤を約50〜60rpmで配合した。
【0102】
各ポリマーからプレミックスを製造した。ポリマーを上記ミキサーに添加し、そしてミキサーを始動させた。ポリマーが溶融され、そして滑らかな表面を有したら、オイルを、数mLで始動し、続いて増量する小ステップにおいてゆっくり添加した。オイルの次の部分は、以前の部分が、上記ポリマー内に良好に混合されるまで添加しなかった。上記プレミックス内のLevamelt:PPOの比は、概して約1:1であった。
【0103】
上記粘着剤を、ポリマー及びオイルのプレミックスから配合した。上記プレミックスを、樹脂と共に上記ミキサーに添加した。上記ミキサーを始動し、そして上記プレミックス及び樹脂が溶融し且つ滑らかな表面を有したら、追加のオイルを、数mLで始動し、続いて増量する小ステップにおいてゆっくり添加した。次いで、塩を上記粘着剤に添加し、そして混合を約15分間続けた。
【0104】
[デバイス]
塩(STR049.2,4,5,6,7,8)を有する得られた粘着剤を、軟らかいPU基材上の約1mm厚の層に熱成形した。
塩を有しない同一の粘着剤(STR048.0A&0B)を、2枚の剥離ライナーの間で、約100μmに熱成形した。
非吸収性粘着剤を、上記吸収性粘着剤の頂部に積層して、最終デバイスを形成した。
【0105】
【表7】

【0106】
【表8】

【0107】
[吸水]
NaClを有しない粘着剤の透水性は、MVTR方法に従って測定された約1000g/m2/24hであった。
【0108】
【表9】

【0109】
上記測定から、良好な吸水性は、少なくとも5%(w/w)のNaClと共に、長期間にわたり達成されることは明確である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続相及び不連続相を含む粘着剤組成物であって、
a)前記連続相が、水蒸気透過性疎水性ポリマーを含み、そして
b)前記不連続相が、水溶性塩を含む、
粘着剤組成物。
【請求項2】
前記水蒸気透過性疎水性ポリマーが、20g/m2/24h超の透過度を有する、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記水蒸気透過性疎水性ポリマーが、ポリプロピレンオキシド、ポリウレタン、シリコーン、ポリアクリル樹脂又はエチレンビニルアセテート、及びそれらの混合物の群由来のポリマーである、請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記水蒸気透過性疎水性ポリマーが架橋されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記水蒸気透過性疎水性ポリマーがブロックコポリマーである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記水蒸気透過性疎水性ポリマーがポリプロピレンオキシドである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
前記水蒸気透過性疎水性ポリマーがポリウレタンである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
前記水蒸気透過性疎水性ポリマーがシリコーンである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
前記水蒸気透過性疎水性ポリマーはポリアクリル樹脂である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項10】
前記水蒸気透過性疎水性ポリマーがエチレンビニルアセテートである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項11】
前記水蒸気透過性疎水性ポリマーが、付加反応触媒の存在下で実施された、以下;
(i)1つ又は2つ以上の不飽和末端基を有するポリアルキレンオキシドポリマー;及び
(ii)1つ又は2つ以上のSi−H基を含むオルガノシロキサン:
の反応生成物を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項12】
前記ポリアルキレンオキシドポリマーの90%w/w超が、3つ又は4つ以上の炭素原子を有する重合されたアルキレンオキシド成分から成る、請求項11に記載の粘着剤組成物。
【請求項13】
前記ポリマーが、付加反応触媒の存在下で実施された、以下;
(i)少なくとも2つの不飽和末端基を有するポリアルキレンオキシドポリマー、ここで、前記ポリアルキレンオキシドポリマーの90%w/w超が、3つ又は4つ以上の炭素原子を有する重合されたアルキレンオキシド成分から成る;
(ii)3つ又は4つ以上のSi−H基を含むポリシロキサン架橋剤;及び
(iii)所望による、最大2つのSi−H基を含むポリシロキサン連鎖延長剤:
の反応生成物を含む、請求項11又は12に記載の粘着剤組成物。
【請求項14】
前記付加反応触媒が、Ptビニルシロキサン錯体である、請求項11〜13のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項15】
前記ポリアルキレンオキシドポリマーがポリプロピレンオキシドである、請求項11〜14のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項16】
前記反応生成物中のポリアルキレンオキシドの重量%が、60%以上である、請求項11〜15のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項17】
連続相及び不連続相を含む粘着剤組成物であって、
a)前記連続相が水蒸気透過性且つ疎水性であり;そして
b)前記不連続相が水溶性塩を含む、
粘着剤組成物。
【請求項18】
前記連続相が、請求項1〜16のいずれか一項に従うポリマーを含む、請求項17に記載の粘着剤組成物。
【請求項19】
前記水溶性塩が無機である、請求項1〜18のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項20】
前記水溶性塩が有機である、請求項1〜18のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項21】
水溶性無機塩が、NaCl、CaCl2、K2SO4、NaHCO3、Na2CO3、KCl、NaBr、NaI、KI、NH4Cl、AlCl3、及びそれらの混合物の群由来の水溶性無機塩である、請求項1〜18のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項22】
前記水溶性塩がNaClである、請求項1〜18のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項23】
水溶性有機塩が、CH3COONa、CH3COOK、COONa、COOK、及びそれらの混合物の群由来の水溶性有機塩である、請求項1〜18のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項24】
前記水溶性塩が、1モル/Lにおいて完全に可溶性である、請求項1〜23のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項25】
前記水溶性塩の塩含有率が、粘着剤組成物の合計の40重量%未満である、請求項1〜24のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項26】
ヒドロコロイドをさらに含む、請求項1〜25のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項27】
前記ヒドロコロイドの量が、組成物の合計の50%w/w未満である、請求項26に記載の粘着剤組成物。
【請求項28】
基材層と、少なくとも1層の請求項1〜27のいずれか一項に記載の粘着剤組成物とを含む層状粘着剤構成体。
【請求項29】
請求項1〜27のいずれか一項に記載の粘着剤組成物と、基材層とを含む医療デバイス。
【請求項30】
前記基材層が非蒸気透過性である、請求項29に記載の医療デバイス。
【請求項31】
前記基材層が水蒸気透過性であり、そして500g/m2/24h超の水蒸気透過度を有する、請求項29に記載の医療デバイス。
【請求項32】
被覆材、造瘻術用装具、人工装具、例えば、偽乳房、小便収集デバイス、測定機器若しくは治療機器、医療用テープ、又は皮膚上の医療デバイスの周囲を密封するための被覆材若しくはバンデージである、請求項29〜31のいずれか一項に記載の医療デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−513608(P2010−513608A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541770(P2009−541770)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際出願番号】PCT/DK2007/050199
【国際公開番号】WO2008/074333
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(500085884)コロプラスト アクティーゼルスカブ (153)
【Fターム(参考)】