説明

塩形態

【課題】適当な原薬であり、喘息を包含する状態の治療に有用である化合物を提供すること。
【解決手段】本発明は、N4−[(2,2−ジフルオロ−4H−ベンゾ[1,4]オキサジン−3−オン)−6−イル]−5−フルオロ−N2−[3−(メチルアミノカルボニルメチレンオキシ)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンのキシナホ酸塩に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N4−[(2,2−ジフルオロ−4H−ベンゾ[1,4]オキサジン−3−オン)−6−イル]−5−フルオロ−N2−[3−(メチルアミノカルボニルメチレンオキシ)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンのキシナホ酸塩ならびにそのような化合物を含む医薬組成物およびそのような化合物の製造方法に関する。さらに、本発明は、様々な状態の治療、特に、喘息などの炎症状態の治療における前記塩およびその組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物N4−[(2,2−ジフルオロ−4H−ベンゾ[1,4]オキサジン−3−オン)−6−イル]−5−フルオロ−N2−[3−(メチルアミノカルボニルメチレンオキシ)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンは、構造式(I):
【0003】
【化1】

を有し、WO−A−03/063794の440ページに実施例7.3.907として開示されている。この化合物は、2−{3−[4−(2,2−ジフルオロ−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]オキサジン−6−イルアミノ)5−フルオロ−ピリミジン−2−イルアミノ]フェノキシ}N−メチル−アセトアミドとしても知られており、Sykキナーゼの阻害薬であり、したがって、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの炎症状態の治療に有用であると開示されている化合物属のうちの1つである。化合物は、それらの遊離形態で、または水和物、溶媒和物、N−オキシドもしくは薬学的に許容できる塩の形態で医薬組成物に製剤化できることが記述されている(70〜71ページ)。化合物のうちの1つおよびラクトースまたはデンプンなどの適当な粉末基剤を含む吸入に適している医薬組成物が具体的に述べられている(72ページ)。
【0004】
ある化合物を薬物として開発しようとする場合、ラージスケールで信頼できるよう調製および精製することができ、安定であり、保存時に分解しない化合物の形態(原薬として一般に知られている)を提供することが重要である。そのような特徴は、普通、結晶性で高融点である原薬において見いだされ、高融点の結晶性固体は、再結晶による精製が容易であり、保存時に安定であるという傾向がある。さらに、原薬は、意図する投与経路に従って選択される剤形での製剤化に適していなければならない。吸入に適している乾燥粉末として製剤化する場合、非吸湿性は、良好な流動特性を得るために特に重要である。ラクトースおよびデンプンなどの従来型の賦形剤との適合性は、他の必須要件である。さらに、原薬は、通常、吸入に適している粒径を得るために処理を必要とするであろうし、いかなる結晶性形態も、最終製品の特性が予測でき、かつ信頼できるように、そのような処理中に安定でなければならない。手短に言えば、ある化合物が薬物としての商品化に適しているか否かは、意図する投与経路に従って決定される特性の独特な組合せを有する化合物の形態を見いだすことに左右される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
WO−A−03/063794に開示されているN4−[(2,2−ジフルオロ−4H−ベンゾ[1,4]オキサジン−3−オン)−6−イル]−5−フルオロ−N2−[3−(メチルアミノカルボニルメチレンオキシ)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンの遊離形態は、それが、圧倒的に非晶質性であるか、または無秩序な結晶性形態で存在し、水和および溶媒和する傾向があることから、薬物としての商品化に適していない。したがって、必要とされる特性を有するN4−[(2,2−ジフルオロ−4H−ベンゾ[1,4]オキサジン−3−オン)−6−イル]−5−フルオロ−N2−[3−(メチルアミノカルボニルメチレンオキシ)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンの新たな形態を提供することが必要である。塩形成は、調査の1つの可能な道であるが、塩の性質は、予測するのが難しく、しかもなお悪いことに、化合物は、多くの一般的な薬学的に許容できる酸と塩を形成しないであろう。メシル酸塩、フマル酸塩、ヘミフマル酸塩、臭化水素塩、塩酸塩、D−酒石酸塩、ヘミ硫酸塩およびイセチオン酸塩などの形成する多くの塩形態は、不十分な結晶化度ならびに水和物および/または溶媒和物を形成する傾向などの1つまたは複数の不満足な性質を有する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
しかしながら、広範囲にわたる研究の結果、今回、乾燥粉末製剤で投与するのを理想的にする独特な一連の特性を有するN4−[(2,2−ジフルオロ−4H−ベンゾ[1,4]オキサジン−3−オン)−6−イル]−5−フルオロ−N2−[3−(メチルアミノカルボニルメチレンオキシ)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンの形態を設計することが可能になった。キシナホ酸塩は、高度に結晶性であり、約233℃の融点を有し、本質的に非吸湿性であり、結晶性形態のいかなる変化も引き起こすことなくジェットミリングにより微粉化することができる。さらに、キシナホ酸塩は、ラクトース一水和物とブレンドされて熱および湿度の侵攻的な条件下に保存された場合に良好な安定性を示し、ラクトースブレンドは、標準的な乾燥粉末インヘイラーと併せて使用される場合に十分エアロゾル化する。
【0007】
したがって、本発明は、第一の態様において、以下の式(II)に示す構造を有するN4−[(2,2−ジフルオロ−4H−ベンゾ[1,4]オキサジン−3−オン)−6−イル]−5−フルオロ−N2−[3−(メチルアミノカルボニルメチレンオキシ)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンのキシナホ酸塩を提供する。キシナホ酸塩は、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩の慣用名である。この分子は、水素イオンの位置に応じていくつかの異なる互変異性形態で描くことができ、それらはすべて等価であることに留意すべきである。
【0008】
【化2】

【0009】
さらに、本発明は、医薬品として使用するためのN4−[(2,2−ジフルオロ−4H−ベンゾ[1,4]オキサジン−3−オン)−6−イル]−5−フルオロ−N2−[3−(メチルアミノカルボニルメチレンオキシ)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンのキシナホ酸塩、Sykキナーゼ阻害薬が適応とされる状態の治療において使用するためのN4−[(2,2−ジフルオロ−4H−ベンゾ[1,4]オキサジン−3−オン)−6−イル]−5−フルオロ−N2−[3−(メチルアミノカルボニルメチレンオキシ)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンのキシナホ酸塩、Sykキナーゼ阻害薬が適応とされる疾患を治療するための医薬品を製造するためのN4−[(2,2−ジフルオロ−4H−ベンゾ[1,4]オキサジン−3−オン)−6−イル]−5−フルオロ−N2−[3−(メチルアミノカルボニルメチレンオキシ)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンのキシナホ酸塩の使用、N4−[(2,2−ジフルオロ−4H−ベンゾ[1,4]オキサジン−3−オン)−6−イル]−5−フルオロ−N2−[3−(メチルアミノカルボニルメチレンオキシ)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンのキシナホ酸塩および薬学的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物、Sykキナーゼ阻害薬が適応とされる疾患を治療するための医薬組成物であって、N4−[(2,2−ジフルオロ−4H−ベンゾ[1,4]オキサジン−3−オン)−6−イル]−5−フルオロ−N2−[3−(メチルアミノカルボニルメチレンオキシ)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンのキシナホ酸塩を含む医薬組成物、ならびに哺乳動物においてSykキナーゼ阻害薬が適応とされる疾患を治療する方法であって、それを必要としている哺乳動物に、治療有効量のN4−[(2,2−ジフルオロ−4H−ベンゾ[1,4]オキサジン−3−オン)−6−イル]−5−フルオロ−N2−[3−(メチルアミノカルボニルメチレンオキシ)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンのキシナホ酸塩を投与することを含む方法を提供する。Syk阻害薬が適応とされる好ましい疾患は、喘息、鼻炎およびCOPDなどの炎症性呼吸器疾患、特に、喘息である。
【0010】
キシナホ酸塩は、N4−[(2,2−ジフルオロ−4H−ベンゾ[1,4]オキサジン−3−オン)−6−イル]−5−フルオロ−N2−[3−(メチルアミノカルボニルメチレンオキシ)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンおよび1〜1.1モル当量の1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を最小量の適当な有機溶媒に溶解し、溶液から塩が沈殿するまで、場合により撹拌しながら溶液をゆっくりと冷却することにより調製することができる。適当な溶媒は、アセトン、アセトニトリルおよびメチルエチルケトン(MEK)であり、各々は、少量の水(例えば、10%未満)を含有していてもよい。メチルエチルケトンは、特に適しており、5容積%の水と一緒に使用されることが好ましい。反応物は、通常、室温を超えるが溶媒の沸点未満の温度において溶媒に溶解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
N4−[(2,2−ジフルオロ−4H−ベンゾ[1,4]オキサジン−3−オン)−6−イル]−5−フルオロ−N2−[3−(メチルアミノカルボニルメチレンオキシ)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンは、WO−A−03/063794に開示されている一般的かつ具体的方法により調製することができる。例えば、式
【0012】
【化3】

の化合物を、式
【0013】
【化4】

の化合物と反応させることにより調製することができる。
【0014】
反応は、通常、適当な溶媒、好ましくは、イソアミルアルコールまたはイソプロピルアルコールなどのアルコール中、トリフルオロ酢酸などの酸触媒の存在下で行われる。反応は、高温において最もよく行われる。例えば、アミルアルコールが溶媒として選択される場合、約100℃の温度が好ましい。
【0015】
式(III)の化合物は、以下のスキーム1に示されている経路により調製することができる。
【0016】
【化5】

【0017】
式(III)の化合物は、式(V)の化合物中のニトロ基を還元することにより調製することができる。好ましい手順において、水素化が使用される。通常、エタノール(EtOH)と酢酸エチル(EtOAc)の混合物などの適当な有機溶媒中の式(V)の化合物の溶液を、炭素上パラジウムなどの水素化触媒で処理し、水素ガスに暴露する。水素は、通常、大気を超える圧力にて、好ましくは、30ポンド/平方インチ(psi)にて適用される。
【0018】
式(V)の化合物は、式(VI)の酸を、メチルアミン、またはその塩(塩酸塩など)と縮合させることにより調製することができる。アミド結合を形成するのに適している任意の縮合剤を原則として使用することができるが、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)の使用が好ましい。TBTUにより触媒される縮合は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などの適当な有機溶媒中、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)などの塩基の存在下で行われる。
【0019】
式(VI)の化合物は、3−ニトロフェノール(VII)をブロモ酢酸でアルキル化することにより調製することができる。反応は、通常、高温において、例えば、選択した溶媒の還流温度において、水酸化ナトリウム(NaOH)などの塩基の存在下、水または水性エタノール(EtOH)などの適当な溶媒中で行われる。
【0020】
式(IV)の化合物は、以下のスキーム2に示されている経路により調製することができる。
【0021】
【化6】

【0022】
式(IV)の化合物は、式(VIII)の化合物を5−フルオロ−2,4−ジクロロピリミジンと反応させることにより調製することができる。典型的な手順において、エタノール(EtOH)またはエタノールとテトラヒドロフラン(THF)の混合物などの適当な有機溶媒中の反応物の溶液を、炭酸水素ナトリウムなどの塩基で処理する。
【0023】
式(VIII)の化合物は、式(IX)の化合物中のニトロ基を還元することにより調製することができる。好ましい手順において、水素化が使用される。通常、エタノール(EtOH)などの適当な有機溶媒中の式(IX)の化合物の溶液を、炭素上パラジウムなどの水素化触媒で処理し、水素ガスに暴露する。水素は、通常、大気を超える圧力にて、好ましくは、30ポンド/平方インチ(psi)にて適用される。
【0024】
式(IX)の化合物は、式(X)の化合物の環化により調製することができる。典型的な手順において、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)または酢酸イソプロピルなどの適当な有機溶媒中の式(X)の化合物の溶液を、炭酸カリウムなどの塩基で処理し、例えば、溶媒の還流温度において加熱する。DMFが溶媒として選択される場合、約120℃の温度が好ましい。酢酸イソプロピルが溶媒として選択される場合、約85℃の温度が好ましい。
【0025】
式(X)の化合物は、式(XI)のアニリンの塩化2−ブロモ−2,2−ジフルオロアセチルによるアシル化により調製することができる。反応は、トリエチルアミンなどの塩基の存在下、ジクロロメタン(DCM)またはアセトニトリルなどの適当な有機溶媒中で行われることが好ましい。反応は、発熱性であり、したがって、例えば0℃まで、冷却することが必要とされることがある。
【0026】
本発明は、N4−[(2,2−ジフルオロ−4H−ベンゾ[1,4]オキサジン−3−オン)−6−イル]−5−フルオロ−N2−[3−(メチルアミノカルボニルメチレンオキシ)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンのキシナホ酸塩のすべての結晶性形態および薬学的に許容できる同位体標識形態を包含する。同位体標識形態において、1個または複数の原子は、同じ原子番号であるが、天然において優位を占める原子質量または質量数と異なる原子質量または質量数を有する1個または複数の原子により置き換えられる。
【0027】
適当な同位体は、HおよびHなどの水素、11C、13Cおよび14Cなどの炭素、13Nおよび15Nなどの窒素、15O、17Oおよび18Oなどの酸素、ならびに35Sなどのイオウの同位体を包含する。放射性同位体を組み入れている化合物などの特定の同位体標識化合物は、薬物および/または基質の組織分布研究に有用である。放射性同位体であるトリチウム、すなわちH、および炭素−14、すなわち14Cは、それらを組み入れる容易さおよびそれらを検出する手段が用意されていることに鑑みてこの目的に特に有用である。重水素、すなわちHなどのより重い同位体による置換は、より大きな代謝安定性に由来する特定の治療上の利点、例えば、in vivo半減期の増加または用量要件の軽減を提供することがあるため、ある環境において好ましいことがある。11C、18F、15Oおよび13Nなどのポジトロン放出同位体による置換は、基質受容体占有を調べるためのポジトロン放出断層撮影(PET)研究において有用なことがある。一般的に、同位体標識化合物は、当業者に知られている従来技法により、またはこれまでに用いた非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を用い、添付の実施例および調製に記載されているプロセスに類似したプロセスにより調製することができる。
【0028】
N4−[(2,2−ジフルオロ−4H−ベンゾ[1,4]オキサジン−3−オン)−6−イル]−5−フルオロ−N2−[3−(メチルアミノカルボニルメチレンオキシ)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンは、Sykキナーゼ阻害薬であり、肥満細胞、好塩基性細胞、好中性細胞および/または好酸性細胞などの免疫細胞の脱顆粒を阻害することができる。N4−[(2,2−ジフルオロ−4H−ベンゾ[1,4]オキサジン−3−オン)−6−イル]−5−フルオロ−N2−[3−(メチルアミノカルボニルメチレンオキシ)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンは、本発明により開示されているキシナホ酸塩およびその他の形態で、以下の状態、すなわち、
・あらゆるタイプ、原因、または病因の治療可能な閉塞性、拘束性または炎症性気道疾患、特に、
〇喘息、特に、アトピー性喘息、アレルギー性喘息、アトピー性気管支IgE媒介性喘息、非アトピー性喘息、気管支喘息、非アレルギー性喘息、本態性喘息、真性(true)喘息、病態生理学的障害により引き起こされる内因性喘息、原因不明もしくは原因不顕性の本態性喘息、気腫性喘息、運動誘発性喘息、感情誘発性喘息、環境因子により引き起こされる外因性喘息、冷気誘発性喘息、職業性喘息、細菌、真菌、原虫、もしくはウイルス感染により引き起こされるか、またはそれらに関連した感染型喘息、初発性喘息、喘鳴幼児症候群、細気管支炎、咳喘息または薬物誘発性喘息、
○環境要因に対する気管支過敏反応性、
○あらゆるタイプ、原因、または病因の鼻炎または副鼻腔炎、特に、季節性アレルギー性鼻炎、通年性アレルギー性鼻炎、通年性鼻炎、血管運動神経性鼻炎、後鼻漏、化膿性もしくは非化膿性副鼻腔炎、急性もしくは慢性副鼻腔炎および篩骨、前頭、上顎、もしくは蝶形骨副鼻腔炎、
○あらゆるタイプ、原因、または病因の慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性閉塞性肺疾患(COLD)、慢性閉塞性気道疾患(COAD)または小気道閉塞、特に、慢性気管支炎、肺気腫、気管支拡張症、嚢胞性線維症、閉塞性細気管支炎、閉塞性細気管支炎器質化肺炎(BOOP)、慢性器質化肺炎(COP)、閉塞性線維性細気管支炎、濾胞性細気管支炎またはそれらに伴う呼吸困難、
○あらゆるタイプ、原因、または病因の気管支炎、特に、急性気管支炎、急性喉頭気管性気管支炎、アラキジン酸気管支炎、カタル性気管支炎、クループ性気管支炎、慢性気管支炎、乾性気管支炎、感染性喘息性気管支炎、湿咳性気管支炎、ブドウ球菌性またはレンサ球菌性気管支炎および肺胞性気管支炎、
○あらゆるタイプ、原因、または病因の気管支拡張症、特に、円柱状気管支拡張症、嚢状気管支拡張症、紡錘状(fusiform)気管支拡張症、毛細管性気管支拡張症、嚢胞状気管支拡張症、嚢胞性線維症、カルタゲナー症候群、乾性気管支拡張症または濾胞性気管支拡張症、
○あらゆるタイプ、原因、または病因の肺好酸球性症候群、特に、急性好酸球性肺炎(特発性または薬物もしくは寄生虫に起因する)、単純性肺好酸球増加症、レフラー症候群、熱帯性肺好酸球増加症、慢性好酸球性肺炎、アレルギー性気管支肺真菌症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)、チャーグ−シュトラウス症候群または特発性好酸球増加症候群、
○あらゆるタイプ、原因、または病因の間質性肺疾患(ILD)または肺線維症、特に、特発性肺線維症、特発性線維化性肺胞炎、線維化性肺胞炎、結合組織疾患(全身性エリテマトーデス、混合性結合組織疾患、多発性筋炎、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、全身性硬化症、強皮症、関節リウマチ)に伴うILDもしくは肺線維症、通常型間質性肺炎(UIP)、剥離性間質性肺炎(DIP)、肉芽腫性肺疾患、サルコイドーシス、ウェジナー肉芽腫症、ヒスチオサイトーシスX、ランゲルハンス細胞肉芽腫症、過敏性肺臓炎、外因性アレルギー性肺胞炎、珪肺症、慢性好酸球性肺炎、リンパ脈管筋腫症、薬物誘発性ILDもしくは肺線維症、放射線誘発性ILDもしくは肺線維症、肺胞タンパク症、移植片対宿主疾患(GVHD)、肺移植拒絶、環境/職業暴露に起因するILDもしくは肺線維症、BOOP、COP、閉塞性線維性細気管支炎、濾胞性細気管支炎、特発性急性間質性肺臓炎(ハマンリッチ症候群)または肺胞出血症候群、
○あらゆるタイプ、原因、または病因の塵肺症、特に、アルミニウム肺症もしくはボーキサイト労働者病、炭粉症もしくは坑夫喘息、進行性塊状線維症(PMF)、石綿沈着症もしくは蒸気管修繕人喘息、石粉症もしくは石灰肺、ダチョウの羽からの粉塵を吸入することにより引き起こされるダチョウ塵肺症、鉄粒子の吸入により引き起こされる鉄沈着症、珪肺症もしくは塵埃病、綿肺症もしくは綿屑性喘息または滑石塵肺症、
○あらゆるタイプ、原因、または病因の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、成人呼吸窮迫症候群または急性肺損傷、
○誤嚥性肺臓炎または誤嚥性肺炎につながるあらゆるタイプ、原因、または病因の誤嚥性障害、
○あらゆるタイプ、原因、または病因の肺胞出血、特に、特発性肺ヘモジデリン沈着症、薬物もしくは他の外因性要因に起因する肺胞出血、HIVもしくは骨髄移植に伴う肺胞出血または自己免疫性肺胞出血(例えば、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、ウェジナー肉芽腫症、顕微鏡的多発性血管炎、チャーグ−シュトラウス症候群、少免疫(pauci−immune)型糸球体腎炎に伴う)からなる群のメンバー、
○急性または慢性の喉頭炎または咽頭炎、
○あらゆるタイプ、原因、または病因の咳嗽、特に、特発性咳嗽または胃食道逆流疾患(GERD)、薬物、気管支過敏反応性、喘息、COPD、COLD、COAD、気管支炎、気管支拡張症、肺好酸球増加症候群、塵肺症、間質性肺疾患、肺線維症、誤嚥性障害、鼻炎、喉頭炎もしくは咽頭炎に伴う咳嗽
などの閉塞性、拘束性または炎症性気道疾患、
・あらゆる原因のアナフィラキシーおよび1型過敏性反応、
・あらゆるタイプ、原因、または病因のアトピー性、アレルギー性、自己免疫性または炎症性皮膚障害、特に、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、接触性皮膚炎、アレルギー性もしくはアトピー性湿疹、扁平苔癬、肥満細胞症、結節性紅斑、多形性紅斑、良性家族性天疱瘡、紅斑性天疱瘡、落葉状天疱瘡、および尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、表皮水疱症、疱疹状皮膚炎、乾癬、免疫媒介性蕁麻疹、補体媒介性蕁麻疹、蕁麻疹誘発材料誘発性蕁麻疹、物理的因子誘発性蕁麻疹、ストレス誘発性蕁麻疹、特発性蕁麻疹、急性蕁麻疹、慢性蕁麻疹、血管性浮腫、コリン性蕁麻疹、常染色体優性型もしくは後天性型の寒冷蕁麻疹、接触性蕁麻疹、巨大蕁麻疹または丘疹性蕁麻疹、
・あらゆるタイプ、原因、または病因の結膜炎、特に、照射性結膜炎、急性カタル性結膜炎、急性流行性結膜炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性結膜炎、慢性カタル性結膜炎、化膿性結膜炎または春季カタル、
・あらゆるタイプ、原因、または病因の多発性硬化症、特に、原発性進行性多発性硬化症または寛解しつつある多発性硬化症の再発、
・あらゆるタイプ、原因、または病因の自己免疫性/炎症性疾患、特に、自己免疫性血液障害、溶血性貧血、再生不良性貧血、真正赤血球性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、全身性硬化症、リウマチ性多発性筋痛、皮膚筋炎、多発性筋炎、多発性軟骨炎、ウェジナー肉芽腫症、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、スティーヴンス−ジョンソン症候群、特発性スプルー、自己免疫性炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、内分泌性眼病、グレイヴス病、サルコイドーシス、肺胞炎、慢性過敏性肺臓炎、原発性胆汁性肝硬変、若年性糖尿病もしくはI型糖尿病、乾性角結膜炎、流行性角結膜炎、ネフローゼ症候群を伴う、および伴わない糸球体腎炎、急性糸球体腎炎、特発性ネフローゼ症候群、微小変化型腎症、間質性肺疾患および/もしくは肺線維症に伴う自己免疫障害、または自己免疫性もしくは炎症性皮膚障害、
・あらゆるタイプ、原因、または病因の炎症性腸疾患(IBD)、特に、膠原性大腸炎、ポリープ性大腸炎、全層性大腸炎、潰瘍性大腸炎またはクローン病(CD)、
・肺動脈高血圧症、肺静脈高血圧症、呼吸器系の障害および/または低酸素血症に伴う肺高血圧症、慢性血栓性および/または塞栓性疾患に起因する肺高血圧症ならびに肺血管系に直接影響を及ぼす障害に起因する肺高血圧症を包含するあらゆるタイプ、原因、または病因の肺高血圧症、
・あらゆるタイプ、原因、または病因の関節炎、特に、関節リウマチ、骨関節炎、痛風性関節炎、ピロリン酸関節症、急性石灰化関節周囲炎、慢性炎症性関節炎、結合組織障害(例えば、全身性エリテマトーデス、多発性筋炎、皮膚筋炎、全身性硬化症、強皮症)に伴う関節炎、サルコイドーシス、リウマチ性多発性筋痛、変性関節炎、感染性関節炎、ライム関節炎、増殖性関節炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、頸部脊椎症、脊椎関節炎、若年性関節炎(スティル病)、アミロイド症、強直性脊椎骨増殖症(フォレスティエ病)、ベーチェット病、薬物誘発性関節炎、家族性地中海熱、運動過剰症候群、離断性骨軟骨症、骨軟骨腫症、回帰性リウマチ、色素性絨毛結節性滑膜炎、再発性多発性軟骨炎、顎関節疼痛機能障害症候群または高脂血症に伴う関節炎、
・あらゆるタイプ、原因、または病因の好酸球関連障害、特に、肺好酸球増加症候群、アスペルギルス腫、好酸球を含有する肉芽腫、アレルギー性肉芽腫性血管炎すなわちチャーグ−シュトラウス症候群、結節性多発性動脈炎(PAN)または全身性壊死性血管炎、
・あらゆるタイプ、原因、または病因のブドウ膜炎、特に、ブドウ膜のすべてもしくは一部の炎症、前部ブドウ膜炎、虹彩炎、毛様体炎、虹彩毛様体炎、肉芽腫性ブドウ膜炎、非肉芽腫性ブドウ膜炎、水晶体抗原性ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎、脈絡膜炎または脈絡網膜炎、
・あらゆるタイプ、原因、または病因の敗血症性ショック、
・骨粗鬆症および骨減少症を包含する骨の沈着/吸収の障害、
・リンパ増殖性障害(例えば、リンパ腫、骨髄腫)、
・HIVまたはAIDs関連障害、
・感染症、特にHIV−1、HIV−2、およびHIV−3、サイトメガロウイルス(CMV)、インフルエンザ、アデノウイルスならびにヘルペスゾスター(Herpes zoster)およびヘルペスシンプレックス(Herpes simplex)を包含するヘルペスウイルスからなる群から選択されるメンバーであるウイルスを包含するウイルス(そのようなウイルスは、それらの宿主におけるTNF−αの産生を高めるか、またはそのようなウイルスは、それらの複製または他の生命活動が悪影響を受けるほどに、それらの宿主におけるTNF−αのアップレギュレーションに対して感受性である)に起因する感染症、
・酵母および真菌感染症(酵母または真菌は、TNF−αによるアップレギュレーションに感受性であるか、または宿主におけるTNF−α産生を誘発する)、例えば、特に、ポリミキシン(例えば、ポリマイシンB)、イミダゾール(例えば、クロトリマゾール、エコナゾール、ミコナゾール、およびケトコナゾール)、トリアゾール(例えば、フルコナゾールおよびイトラナゾール(itranazole))ならびにアンホテリシン(例えば、アンホテリシンBおよびリポソームのアンホテリシンB)を包含するがこれらに限定されない、全身性の酵母および真菌感染症を治療するための他の第一選択薬と併せて投与される場合の真菌性髄膜炎、
・例えば、結核菌(mycobacterium tuberculosis)に起因するマイコバクテリア感染症
の治療に有用であることがある。
【0029】
N4−[(2,2−ジフルオロ−4H−ベンゾ[1,4]オキサジン−3−オン)−6−イル]−5−フルオロ−N2−[3−(メチルアミノカルボニルメチレンオキシ)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンのキシナホ酸塩(これからは、本発明の化合物と呼ばれる)は、単独で投与することができるが、一般的に、1種または複数の薬学的に許容できる賦形剤と併せた製剤として投与されるであろう。「賦形剤」という用語は、本明細書において、本発明の化合物以外の任意の成分を記載するために使用される。賦形剤の選択は、特定の投与様式、溶解性および安定性に対する賦形剤の影響、ならびに剤形の性質などの要素により大きく左右されるであろう。
【0030】
本発明の化合物を送達するのに適している医薬組成物およびそれらを調製するための方法は、当業者には容易に明らかであろう。そのような組成物およびそれらを調製するための方法は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第19版(Mack Publishing Company、1995)中に見いだすことができる。
【0031】
本発明の化合物は、経口的に投与することができる。経口投与は、化合物が胃腸管に入るように嚥下することを含むことがあり、または、化合物が口から直接血流に入る口腔もしくは舌下投与が用いられることがある。
【0032】
経口投与に適している製剤は、錠剤、微粒子剤、液剤、または散剤を含有するカプセル剤、ロゼンジ剤(液体入りを含む)、咀嚼剤(chew)、多粒子およびナノ粒子剤、ゲル剤、固溶体、リポソーム、フィルム剤、膣坐剤、噴霧剤などの固形製剤ならびに液状製剤を包含する。
【0033】
液状製剤は、懸濁剤、液剤、シロップ剤およびエリキシル剤を包含する。そのような製剤は、軟質または硬質カプセル剤における充填剤として用いることができ、通常、担体、例えば、水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース、または適当な油、ならびに1種または複数の乳化剤および/または懸濁化剤を含む。液状製剤は、例えばサシェから、固体の再構成により調製することもできる。
【0034】
本発明の化合物は、LiangおよびChenによるExpert Opinion in Therapeutic Patents、11(6)、981〜986(2001)に記載されている剤形などの速溶解性、速崩壊性剤形において使用することもできる。
【0035】
錠剤剤形の場合、投与量に応じて、本発明の化合物は、剤形の1重量%〜80重量%、より典型的には、剤形の5重量%〜60重量%を占めることがある。
【0036】
さらに、錠剤は、一般的に、崩壊剤を含有する。崩壊剤の例は、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、微結晶性セルロース、低級アルキル置換ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、アルファ化デンプンおよびアルギン酸ナトリウムを包含する。一般的に、崩壊剤は、剤形の1重量%〜25重量%、好ましくは、5重量%〜20重量%を占めるであろう。
【0037】
一般的に、錠剤製剤に凝集性を付与するために結合剤も使用される。適当な結合剤は、微結晶性セルロース、ゼラチン、糖、ポリエチレングリコール、天然および合成ゴム、ポリビニルピロリドン、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロースならびにヒドロキシプロピルメチルセルロースを包含する。錠剤は、ラクトース(一水和物、噴霧乾燥一水和物、無水など)、マンニトール、キシリトール、ブドウ糖、スクロース、ソルビトール、微結晶性セルロース、デンプンおよび第二リン酸カルシウム二水和物などの希釈剤を含有することもある。
【0038】
また、錠剤は、ラウリル硫酸ナトリウムおよびポリソルベート80などの界面活性剤、ならびに二酸化ケイ素および滑石などの流動促進剤を含んでいてもよい。存在する場合に、界面活性剤は、錠剤の0.2重量%〜5重量%を占め、流動促進剤は、錠剤の0.2重量%〜1重量%を占めることがある。
【0039】
また、錠剤は、一般的に、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリルフマル酸ナトリウム、およびステアリン酸マグネシウムとラウリル硫酸ナトリウムの混合物などの滑沢剤を含有する。一般的に、滑沢剤は、錠剤の0.25重量%〜10重量%、好ましくは、0.5重量%〜3重量%を占める。
【0040】
他の可能な錠剤成分は、抗酸化剤、着色剤、矯味剤、保存剤および味覚マスキング剤を包含する。
【0041】
例示的錠剤は、薬物約80%まで、結合剤約10重量%〜約90重量%、希釈剤約0重量%〜約85重量%、崩壊剤約2重量%〜約10重量%、および滑沢剤約0.25重量%〜約10重量%を含有する。
【0042】
錠剤ブレンドを、直接、またはローラーにより圧縮し、錠剤を作製することができる。代替方法として、錠剤ブレンドまたはブレンドの一部を、打錠前に湿式、乾式、もしくは融解式造粒するか、融解式凝結させるか、または押し出すことができる。最終製剤は、1つまたは複数の層からなっていてよく、コーティングされていてもされていなくてもよく、カプセル化されてもよい。
【0043】
錠剤の製剤化は、H.LiebermanおよびL.LachmanによるPharmaceutical Dosage Forms:Tablets、第1巻(Marcel Dekker、New York、1980)中で論じられている。
【0044】
本発明の化合物は、ヒトまたは動物使用のために消費できる経口フィルムの形態で経口的に投与することもできる。そのようなフィルムは、通常、速溶解性であるか、または粘膜付着性であってよい柔軟な水溶性または水膨潤性の薄膜剤形であり、通常、本発明の化合物、フィルム形成ポリマー、結合剤、溶媒、湿潤剤、可塑剤、安定剤または乳化剤、粘度調整剤および溶媒を含む。製剤の一部の成分は、2つ以上の機能を果たすことがある。
【0045】
フィルム形成ポリマーは、天然多糖、タンパク質、または合成親水コロイドから選択することができ、通常、0.01〜99重量%の範囲、より典型的には、30〜80重量%の範囲で存在する。
【0046】
他の可能なフィルム剤成分は、抗酸化剤、着色剤、香味料および調味料、保存剤、唾液刺激剤、冷却剤、共溶媒(油を包含する)、緩和薬、充填剤、消泡剤、界面活性剤および味覚マスキング剤を包含する。
【0047】
通常、本発明によるフィルム剤は、剥離可能な裏打用の支持体または紙の上にコーティングされた薄い水性フィルムを蒸発乾燥させることにより調製される。これは、乾燥炉またはトンネル乾燥機、通常は、複合コーター乾燥機中で、または凍結乾燥もしくは真空乾燥により行うことができる。
【0048】
経口投与のための固形製剤は、即時放出および/または放出調節であるように製剤化することができる。放出調節製剤は、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出およびプログラム放出を包含する。
【0049】
本発明の目的に適している放出調節製剤については、米国特許第6,106,864号に記載されている。高エネルギー分散剤ならびに浸透および被覆粒子剤などの他の適当な放出技術の詳細は、Verma他によるPharmaceutical Technology On−line、25(2)、1〜14(2001)中に見いだすことができる。制御放出を実現するためのチューインガムの使用については、WO−A−00/35298に記載されている。
【0050】
本発明の化合物は、血流中、筋肉中、または内臓中に直接投与することもできる。そのような非経口投与は、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内または皮下経路を介してであってよい。非経口投与に適している装置は、針(極微針を包含する)注射器、無針注射器および注入技法を包含する。
【0051】
通常、非経口製剤は、塩、炭水化物および緩衝剤(3〜9のpHが好ましい)などの賦形剤を含有してもよい水溶液であるが、一部の応用例については、滅菌非水溶液として、または乾燥形態として製剤化し、滅菌した発熱物質を含まない水などの適当なビヒクルと併せて使用することがより適当である。
【0052】
無菌条件下、例えば、凍結乾燥による非経口製剤の調製は、当業者によく知られている標準的製薬技法を用いて容易に行うことができる。
【0053】
非経口投与のための製剤は、即時放出および/または放出調節であるように製剤化することができる。放出調節製剤は、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出およびプログラム放出を包含する。すなわち、本発明の化合物は、本発明の化合物の放出調節を提供する埋込型デポー剤として投与するための固体、半固体、もしくはチキソトロピックな液体として製剤化することができる。そのような製剤の例は、薬物をコーティングしたステントおよびdl−乳酸/グリコール酸共重合体(poly(dl−lactic−coglycolic)acid)(PGLA)ミクロスフェアを包含する。
【0054】
本発明の化合物は、皮膚または粘膜へ局所的に、すなわち、経皮的に(dermally)または経皮的に(transdermally)投与することもできる。この目的に典型的な製剤は、ゲル剤、ヒドロゲル剤、ローション剤、液剤、クリーム剤、軟膏剤、散布剤、包帯剤、フォーム剤、フィルム剤、皮膚用パッチ剤、ウエハー剤、インプラント剤、スポンジ剤、ファイバー剤、絆創膏剤およびマイクロエマルジョン剤を包含する。リポソームも使用することができる。典型的な担体は、アルコール、水、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールを包含する。透過促進剤を組み入れることができる。例えば、FinninおよびMorganによるJ.Pharm.Sci.、88(10)、955〜958(1999年10月)を参照されたい。
【0055】
局所投与の他の手段は、エレクトロポレーション、イオントフォレーシス、フォノフォレーシス、ソノフォレーシスおよび極微針または無針(例えば、Powderject(商標)、Bioject(商標))注射による送達を包含する。
【0056】
局所投与のための製剤は、即時放出および/または放出調節であるように製剤化することができる。放出調節製剤は、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出およびプログラム放出を包含する。
【0057】
本発明の化合物は、鼻腔内に、または吸入により、通常、乾燥粉末インヘイラーから乾燥粉末(単独で、例えば、ラクトースとの乾燥ブレンドにおける混合物として、または、例えば、ホスファチジルコリンなどのリン脂質と混合された混合成分粒子として)の形態で、または1,1,1,2−テトラフルオロエタンもしくは1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンなどの適当な噴射剤の使用の有無にかかわらず加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー(好ましくは、細かい霧を発生するための電気流体力学を用いるアトマイザー)、もしくはネブライザーからのエアゾールスプレーとして投与することもできる。鼻腔内使用の場合、粉末は、生体接着剤、例えば、キトサンまたはシクロデキストリンを含むことがある。乾燥粉末インヘイラーからの乾燥粉末の形態での投与は、送達の特に好ましい形態である。
【0058】
加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザーまたはネブライザーは、例えば、エタノール、水性エタノールまたは活性物質の分散、可溶化もしくは延長放出のための適当な代替試剤、溶媒としての1種または複数の噴射剤およびソルビタントリオレエート、オレイン酸、またはオリゴ乳酸などの任意選択の界面活性剤を含む本発明の化合物の溶液または懸濁液を含有する。
【0059】
乾燥粉末または懸濁液製剤における使用に先立って、薬物製品は、吸入による送達に適しているサイズ(通常5ミクロン未満)まで微粉化される。これは、スパイラルジェットミリング、流動床ジェットミリング、ナノ粒子を形成するための超臨界流体プロセシング、高圧均質化または噴霧乾燥などの任意の適切な粉砕方法により行うことができる。
【0060】
インヘイラーまたはインサフレーターにおいて使用するためのカプセル剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース製)、ブリスター剤およびカートリッジ剤は、本発明の化合物、ラクトースまたはデンプンなどの適当な粉末基剤およびl−ロイシン、マンニトールまたはステアリン酸マグネシウムなどの動作調整剤の粉末ミックスを含有するように製剤化することができる。ラクトースは、無水であるか、または一水和物の形態であってよく、後者であることが好ましい。他の適当な賦形剤は、デキストラン、グルコース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、スクロースおよびトレハロースを包含する。
【0061】
細かい霧を発生するための電気流体力学を用いるアトマイザーにおいて使用するのに適している溶液製剤は、1動作につき本発明の化合物1μg〜20mgを含有してよく、動作容積は、1μlから100μlまで変化してよい。典型的な製剤は、式Iの化合物、プロピレングリコール、滅菌水、エタノールおよび塩化ナトリウムを含むことがある。プロピレングリコールの代わりに使用することができる代替溶媒は、グリセロールおよびポリエチレングリコールを包含する。
【0062】
吸入/鼻腔内投与を目的とする本発明のそれらの製剤には、メントールおよびレボメントールなどの適当な矯味剤、またはサッカリンもしくはサッカリンナトリウムなどの甘味料を添加することができる。
【0063】
吸入/鼻腔内投与のための製剤は、即時放出および/または、例えば、PGLAを用いる放出調節であるように製剤化することができる。放出調節製剤は、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出およびプログラム放出を包含する。
【0064】
乾燥粉末インヘイラーおよびエアゾール剤の場合、用量単位は、一定量を送達するバルブにより決定することができる。全1日量は、1回量か、またはより一般的には1日を通して分割量として投与することができる。
【0065】
本発明の化合物は、例えば、坐剤、膣坐薬または浣腸の形態で経直腸的または経膣的に投与することができる。カカオ脂は、伝統的な坐剤基剤であるが、必要に応じて様々な代替物を使用することができる。本発明の化合物は、眼または耳の経路により投与することもできる。
【0066】
本発明の化合物は、シクロデキストリンもしくは適当なその誘導体またはポリエチレングリコール含有ポリマーなどの可溶性高分子と混ぜ合わせ、前述の投与様式のいずれかにおいて使用するために、それらの溶解性、溶出速度、味覚マスキング、生物学的利用能および/または安定性を改善することができる。
【0067】
例えば、薬物−シクロデキストリン錯体は、大部分の剤形および投与経路にとって一般的に有用であることが判明している。包接錯体と非包接錯体の双方を使用することができる。薬物との直接錯体化の代替法として、シクロデキストリンを、補助添加剤として、すなわち担体、希釈剤、または可溶化剤として使用することができる。これらの目的のためにα−、β−およびγ−シクロデキストリンが最も一般的に使用され、その例は、WO−A−91/11172、WO−A−94/02518およびWO−A−98/55148中に見いだすことができる。
【0068】
ヒト患者への投与の場合に、本発明の化合物の全1日量は、通常、言うまでもなく投与様式に応じて、0.002mg/kg〜100mg/kgの範囲になるであろう。全1日量は、1回量または分割量で投与することができ、医師の判断で、本明細書に示される典型的な範囲から外れることがある。
【0069】
誤解を避けるために、本明細書における「治療」への言及は、治癒的、姑息的および予防的治療への言及を包含する。
【0070】
本発明の化合物などのSykキナーゼ阻害薬は、特に喘息などの呼吸器疾患の治療において、1種または複数の他の治療薬と組み合わせて有利に投与することができる。そのような他の治療薬の例は、(i)5−リポキシゲナーゼ(5−LO)阻害薬または5−リポキシゲナーゼ活性化タンパク質(FLAP)拮抗薬、(ii)LTB、LTC、LTD、およびLTEの拮抗薬を包含するロイコトリエン拮抗薬(LTRA)、(iii)H、HおよびH拮抗薬を包含するヒスタミン受容体拮抗薬、(iv)鼻充血除去薬使用のためのα−およびα−アドレナリン受容体作動薬血管収縮交感神経様作用薬、(v)ムスカリンM受容体拮抗薬または抗コリン作用薬、(vi)PDE阻害薬、例えば、PDE、PDEおよびPDE阻害薬、(vii)テオフィリン、(viii)クロモグリク酸ナトリウム、(ix)非選択的と選択的なCOX−1またはCOX−2阻害薬両方のCOX阻害薬(NSAID)、(x)DAGR(コルチコイド受容体の解離性作動薬)などの経口および吸引用グルココルチコステロイド、(xi)内因性炎症性物質に対して活性なモノクローナル抗体、(xii)抗腫瘍壊死因子(抗TNF−α)薬、(xiii)VLA−4拮抗薬を包含する接着分子阻害薬、(xiv)キニン−B−およびB−受容体拮抗薬、(xv)免疫抑制薬、(xvi)マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の阻害薬、(xvii)タキキニンNK、NKおよびNK受容体拮抗薬、(xviii)エラスターゼ阻害薬、(xix)アデノシンA2a受容体作動薬、(xx)ウロキナーゼの阻害薬、(xxi)ドーパミン受容体に作用する化合物、例えば、D作動薬、(xxii)NFκβ経路のモジュレーター、例えば、IKK阻害薬、(xxiii)p38MAPキナーゼまたはJAKキナーゼ阻害薬などのサイトカインシグナル伝達経路のモジュレーター、(xxiv)粘液溶解薬または鎮咳薬として分類することができる薬剤、(xxv)抗生物質、(xxvi)HDAC阻害薬、(xxvii)PI3キナーゼ阻害薬、(xxviii)β作動薬、ならびに(xxix)β作動薬およびムスカリンM受容体拮抗薬として活性な二重化合物を包含する。そのような治療薬の好ましい例は、(a)グルココルチコステロイド、特に、全身性副作用の減少した吸入用グルココルチコステロイド、フルニソリド、トリアムシノロンアセトニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ブデソニド、プロピオン酸フルチカゾン、シクレソニド、およびフランカルボン酸モメタゾン、(b)臭化物などのイプラトロピウム塩、臭化物などのチオトロピウム塩、臭化物などのオキシトロピウム塩、ペレンゼピン(perenzepine)およびテレンゼピンを包含するムスカリンM受容体拮抗薬または抗コリン作用薬、ならびに(c)サルブタモール、テルブタリン、バンブテロール、フェノテロール、サルメテロール、フォルモテロール、ツロブテロールを包含するβ作動薬を包含する。具体的に述べられている薬剤のいずれも、場合により、薬学的に許容できる塩の形態で使用することができる。
【0071】
活性化合物の組合せを投与することが望ましい場合、少なくとも1つは本発明の化合物を含有する2つ以上の医薬組成物を、同時投与に適しているキットの形態で都合良く組み合わせることができる。
【0072】
そのようなキットは、少なくとも1つは本発明の化合物を含有する2つ以上の別々の医薬組成物および容器、分割されたボトル、または分割されたホイルパケットなどの前記組成物を別々に保持するための手段を含む。そのようなキットの一例は、錠剤、カプセル剤などの包装に使用されるよく知られているブリスターパックである。
【0073】
そのようなキットは、様々な剤形、例えば、経口および非経口剤形を投与するのに、様々な投与間隔で別々の組成物を投与するのに、またはお互いに対して別々の組成物を用量設定するのに特に適している。コンプライアンスを補助するため、キットは、通常、投与説明書を含み、いわゆる記憶補助を提供することができる。
【0074】
調製実施例
以下の実施例は、N4−[(2,2−ジフルオロ−4H−ベンゾ[1,4]オキサジン−3−オン)−6−イル]−5−フルオロ−N2−[3−(メチルアミノカルボニルメチレンオキシ)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンのキシナホ酸塩の調製を例示している。
【0075】
【化7】

【0076】
メチルエチルケトン(MEK)(23.6L、20ml/g)中の2−{3−[4−(2,2−ジフルオロ−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]オキサジン−6−イルアミノ)5−フルオロ−ピリミジン−2−イルアミノ]フェノキシ}N−メチル−アセトアミド(1.18kg、2.49mmol、1当量)の懸濁液を55℃まで加熱し、水(1.18L、1ml/g)を加えるとすぐに溶液になった。溶液を、清澄化のためにフィルターに通し、次いで、1時間にわたって55℃に保った。続いて、MEK(4.72L、4ml/g)中の1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸(515g、2.74mol、1.1当量)の前もって作ったスペックフリーの溶液を加えると、約10分後に白色の固体が沈殿した。反応物を周囲温度まで冷却し、一夜(18時間)にわたって撹拌し、次いで、2時間にわたって5℃まで冷却し、濾過した。濾過した固体を、MEK(2×2.36L、2×2ml/g)で洗浄し、16時間にわたって50℃において減圧下で乾燥した。生成物、2−{3−[4−(2,2−ジフルオロ−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]オキサジン−6−イルアミノ)5−フルオロ−ピリミジン−2−イルアミノ]フェノキシ}N−メチル−アセトアミド1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩は、白色の固体(1.32kg、80%)として単離された。
【0077】
従来のプロトンNMR(300MHz、d−DMSO)により分析した場合、キシナホ酸塩は、以下のスペクトルを与える:δ 2.65(d、J 4.5Hz、3H)、4.34(s、2H)、6.46〜6.52(m、1H)、7.10(t、J 8.0Hz、1H)、7.23〜7.28(m、2H)、7.36〜7.41(m、2H)、7.45〜7.48(m、1H)、7.55〜7.62(m、2H)、7.64〜7.71(m、1H)、7.73〜7.77(m、1H)、7.86〜7.95(m、2H)、8.14(d、J 4.0Hz、1H)、8.26〜8.32(m、1H)、9.14(s、1H)、9.56(s、1H)、11.90〜11.96(m、1H)。
【0078】
示差走査熱量測定(DSC)(サンプル8.588mgを、窒素ガスを流しながら、オートサンプラーならびに四つ穴側壁通気式のアルミニウム皿および蓋付きのPerkin Elmer Diamond DSCを用い、毎分20℃で25から250℃まで加熱した)により分析した場合、キシナホ酸塩は、233℃±2℃に鋭い吸熱融解ピークを示す。DSCトレースを図1に示す。
【0079】
粉末X線回折(PXRD)により特徴付けた場合、キシナホ酸塩は、図2に示されるパターンを与える。特徴的なピークを以下の表1に示す。主な特徴的なピークは、8.0、8.9、11.6、24.5および27.7度2θ(±0.1度)にある。
【0080】
【表1】

【0081】
粉末X線回折パターンは、自動サンプルチェンジャー、θ−θゴニオメーター、自動ビーム発散スリット、およびPSD Vantec−1検出器を取り付けたBruker−AXS LtdのD4粉末X線回折計を用いて決定した。サンプルは、低バックグラウンドシリコンウエハー試料台上に設置することにより分析用に調製した。試料を、40kV/30mAで動作するX線管により銅のK−αX線(波長=1.5406オングストローム)を照射しながら回転させた。分析は、2°〜55°の2θ範囲にわたり、0.018°のステップ毎に0.2秒カウントに設定した連続モードで実行するゴニオメーターで行った。ピークは、Bruker−AXS Ltdの評価ソフトウェアを用い、手動で選択した。データは、21℃において集めた。
【0082】
当業者により理解されているように、以下に示す表1内の様々なピークの相対強度は、例えば、X線ビームにおける結晶の配向効果または分析されている材料の純度またはサンプルの結晶化度などの多くの要因により変化することがある。ピーク位置も、サンプル高の変動のためにシフトすることがあるが、ピーク位置は、所与の表1に定義されている通りに実質的に留まるであろう。また、当業者は、異なる波長を用いて測定すると、ブラッグの式−nλ=2dsinθに従って異なるシフトが得られることを理解しているであろう。それにもかかわらず、代替波長の使用によりもたらされるそのような代替PXRDパターンは、同じ材料を表すものである。
【0083】
単結晶X線分析からシミュレートされた主なPXRDピークを以下の表2に列挙し、対応するシミュレートされたパターンを図3に示す。
【0084】
【表2】

【0085】
フーリエ変換赤外(FT−IR)分光法により特徴付けた場合、キシナホ酸塩は、図4に示されるパターンを与える。指紋領域を図5に拡大形態で示す。特徴的なピークを以下の表3に示す(w=弱い、s=強い、m=中程度)。主な特徴的なピークは、1228(m)、1152(m)、1078(s)および858(s)である。
【0086】
【表3】

【0087】
FT−IRスペクトルは、「DurasamplIR」単反射ATRアクセサリー(セレン化亜鉛基材上のダイアモンド表面)およびd−TGS KBr検出器を備えたThermoNicolet Nexus FTIR分光計を用いて取得した。スペクトルは、すべての化合物について2cm−1の分解能および256スキャンの同時加算(co−addition)で集めた。Happ−Genzelアポディゼーションを使用した。FT−IRスペクトルは、単反射ATRを用いて記録したため、サンプル調製は必要なかった。ATR FT−IRを用いると、赤外バンドの相対強度が、KBrディスクまたはヌジョールムルサンプル調製を用いる透過FT−IRスペクトルに見られる赤外バントと異なる原因になるであろう。ATR FT−IRの性質のため、低めの波数におけるバンドは、高めの波数におけるバンドよりも強い。他に指示のない限り、実験誤差は、±2cm−1であった。ピークは、ThermoNicolet Omnic 6.0aソフトウェアを用いて選別した。
【0088】
フーリエ変換ラマン分光法により特徴付けた場合、キシナホ酸塩は、図6に示されるパターンを与える。指紋領域を図7に拡大形態で示す。特徴的なピークを以下の表4に示す(w=弱い、s=強い、m=中程度)。主な特徴的なピークは、1626(m)、1205(m)、998(s)、156(s)および91(s)である。
【0089】
【表4】

【0090】
ラマンスペクトルは、1064nmのNdYAGレーザーおよびLN−Germanium検出器を備えたBurkerのRamIIモジュール付きVertex70 FT−Raman分光計を用いて集めた。スペクトルは、2cm−1の分解能およびBlackman−Harris 4−タームアポディゼーションを用いて記録した。レーザー出力を300mWとし、2048の同時加算(co−added)スキャンを集めた。各サンプルをガラスバイアルに入れ、レーザー放射にさらした。データは、ラマンシフトの関数として強度として示し、基準ランプからの白色光スペクトルを用いて機器応答および周波数依存性散乱について補正する。Bruker Raman Correct関数を用いて補正を行った。(Brukerソフトウェア−OPUS6.0)。実験誤差は、他に指示のない限り、±2cm−1であった。ピークは、ThermoNicolet Omnic 6.0aソフトウェアを用いて選別した。
【0091】
プロトンデカップル(decoupled)13C固体NMRにより特徴付けた場合、キシナホ酸塩は、図8に示されるスペクトルを与える。特徴的なシフトを以下の表5に示す。主な特徴的なシフトは、176.8、159.4、137.1、118.2、104.9および25.4ppmである。強度は、実際の実験パラメーター設定およびサンプルの熱履歴に応じて変わることがあり、したがって、必ずしも定量的ではない。
【0092】
【表5】

【0093】
サンプル約80mgを、4mmのZrOスピナーに固く詰め込んだ。スペクトルは、ワイドボアBruker−Biospin Avance DSX 500MHz NMR分光計内に配置されたBruker−Biospin 4mm BL HFX CPMASプローブで周囲条件にて集めた。サンプルは、マジック角に配置し、15.0kHzにて回転させた。速い回転速度は、スピニングサイドバンドの強度を最小限に抑えた。スキャン数を調整し、十分なS/Nを得た。13C固体スペクトルは、プロトンデカップル交差双極マジック角回転実験(CPMAS)を用いて集めた。約85kHzのプロトンデカップリング磁場を適用した。80秒に調整されたリサイクルディレイで656のスキャンを集めた。スペクトルは、その高磁場共鳴を29.5ppmに設定した結晶性アダマンタンの外部標準を用いて参照した。
【0094】
フッ素固体NMRにより特徴付けた場合、キシナホ酸塩は、図9に示されるスペクトルを与える。特徴的なシフトは、−69.2、−72.4および−164.0ppmである。強度は、実際の実験パラメーター設定およびサンプルの熱履歴に応じて変わることがあり、したがって、必ずしも定量的ではない。
【0095】
13Cスペクトルを取得するために使用した機器と同じ機器を用い、フッ素NMRスペクトルを取得した。19F固体スペクトルは、プロトンデカップルマジック角回転(MAS)実験を用いて集めた。約85kHzのプロトンデカップリング磁場を適用し、8つのスキャンを集めた。リサイクルディレイを750sに設定し、定量的スペクトルの取得を保証した。プロトン縦緩和時間(H T)は、フッ素検出プロトン反転回復緩和実験に基づいて計算した。フッ素縦緩和時間(19F T)は、フッ素検出フッ素反転回復緩和実験に基づいて計算した。スペクトルは、その共鳴を−76.54ppmに設定したトリフルオロ酢酸(HO中50容積%)の外部サンプルを用いて参照した。
【0096】
安定性データ
遊離塩基と対照的に、N4−[(2,2−ジフルオロ−4H−ベンゾ[1,4]オキサジン−3−オン)−6−イル]−5−フルオロ−N2−[3−(メチルアミノカルボニルメチレンオキシ)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンのキシナホ酸塩は、実質的に非吸湿性である。吸湿性は、動的蒸気吸着装置(Surface Measurement Systems Ltd、モデルDVS−1)を用いて評価した。分析は、毎分200ccの窒素ガスを流しながら30℃において行った。水の吸着および脱着は、15%のRH間隔を用い、相対湿度(RH)0〜90%の範囲で測定した。暴露は、各湿度において最低限2時間または重量変化率が毎分0.0003%未満になるまで(平均10分かけて)とした。サンプル重量は、12.6mgとした。サンプルは、装置の一体部分であるセブンプレースデジタル記録式天秤CAHN D−200を用いて秤量した。化合物は、90%RHにおいて0.6%の水吸収を示したに過ぎなかった。さらに、ジェットミリングを用いる微粉化後、固体形態に変化はなく、結晶化度の低下は無視できる程度であり、吸湿性に有意な変化はなかった(90%相対湿度における0.9%の水吸収)。
【0097】
さらに、キシナホ酸塩は、いかなる水和および溶媒和も示さない。溶媒和/水和は、開放白金皿において試料8.8mgの重量減少を測定するTA Instruments Hi−Res TGA2950機器を用いる熱重量分析(TGA)により評価した。サンプルは、窒素炉パージガスを利用し、周囲から300℃まで20℃/分にて加熱した。これまでは、キシナホ酸塩の単一形態が識別されてきたが、遊離塩基は、水和してヘミ水和物を形成し、テストされた9種の溶媒の各々で様々な溶媒和形態を形成した。
【0098】
固体安定性および賦形剤適合性をテストするため、キシナホ酸塩のサンプルをジェットミリングにより微粉化し(粒径:D10=0.24μm;D50=1.15μm、D90=4.29μm)、得られた粉末を、ラクトース一水和物(Respitose等級SV008)と1:100の重量比でブレンドした。サンプルを、25℃/60%相対湿度および40℃/75%相対湿度にて12週間にわたって保存し、4、8および12週目に、残っている薬物含量および不純物についてアッセイした。結果を表6に示す。対照サンプルは、5℃/0%湿度にて保存した。
【0099】
【表6】

【0100】
結果は、キシナホ酸塩のラクトースブレンドが、良好な安定性を有することを示している。実験中、物理的形態の変化は検出されず、有意な分解は観察されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】キシナホ酸塩の示差走査熱量測定(DSC)トレースを表したものである。
【図2】キシナホ酸塩の粉末X線回折(PXRD)パターンを表したものである。
【図3】キシナホ酸塩の単結晶X線分析からシミュレートされたPXRDパターンを表したものである。
【図4】キシナホ酸塩のフーリエ変換赤外(FT−IR)分光法によるパターンを表したものである。
【図5】キシナホ酸塩のフーリエ変換赤外(FT−IR)分光法によるパターンの指紋領域を拡大形態で表したものである。
【図6】キシナホ酸塩のフーリエ変換ラマン分光法によるパターンを表したものである。
【図7】キシナホ酸塩のフーリエ変換ラマン分光法によるパターンの指紋領域を拡大形態で表したものである。
【図8】キシナホ酸塩のプロトンデカップル13C固体NMRのスペクトルを表したものである。
【図9】キシナホ酸塩のフッ素固体NMRのスペクトルを表したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N4−[(2,2−ジフルオロ−4H−ベンゾ[1,4]オキサジン−3−オン)−6−イル]−5−フルオロ−N2−[3−(メチルアミノカルボニルメチレンオキシ)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンのキシナホ酸塩。
【請求項2】
−76.54ppmにおける共鳴に割り当てられるトリフルオロ酢酸(HO中50容積%)の外部試料を基準としたフッ素固体NMRにより特徴付ける場合に、約−69.2、−72.4および−164.0ppmにおけるシフトを有する、請求項1に記載のキシナホ酸塩。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のキシナホ酸塩および薬学的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項4】
哺乳動物においてSyk阻害薬が適応とされる疾患を治療する方法であって、それを必要としている哺乳動物に、治療有効量の請求項1または請求項2に記載のキシナホ酸塩を投与することを含む方法。
【請求項5】
医薬品として使用するための請求項1または請求項2に記載のキシナホ酸塩。
【請求項6】
Syk阻害薬が適応とされる疾患の治療において使用するための請求項1または請求項2に記載のキシナホ酸塩。
【請求項7】
Sykキナーゼ阻害薬が適応とされる疾患を治療するための医薬品を製造するための請求項1または請求項2に記載のキシナホ酸塩の使用。
【請求項8】
Syk阻害薬が適応とされる疾患が喘息である、請求項4に記載の方法、請求項6に記載のキシナホ酸塩または請求項7に記載の使用。
【請求項9】
請求項1または請求項2に記載のキシナホ酸塩と第二の薬理活性物質の組合せ。
【請求項10】
請求項1に記載のキシナホ酸塩の製法であって、N4−[(2,2−ジフルオロ−4H−ベンゾ[1,4]オキサジン−3−オン)−6−イル]−5−フルオロ−N2−[3−(メチルアミノカルボニルメチレンオキシ)フェニル]−2,4−ピリミジンジアミンおよび1〜1.1モル当量の1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を最小量の適当な有機溶媒に溶解し、溶液から塩が沈殿するまで、場合により撹拌しながらゆっくりと溶液を冷却することを含む製法。
【請求項11】
溶媒が、アセトン、アセトニトリルまたはメチルエチルケトン(MEK)であり、各々が、少量の水を含有していてもよい請求項10に記載の製法。
【請求項12】
溶媒が、約5容積%の水を含有するメチルエチルケトンである請求項11に記載の製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−84270(P2009−84270A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−225403(P2008−225403)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(597014501)ファイザー・リミテッド (107)
【氏名又は名称原語表記】Pfizer Limited
【住所又は居所原語表記】Ramsgate Road, Sandwich, Kent, England
【Fターム(参考)】