説明

塩酸ドネペジルを含有する固形薬学的組成物

本発明は、塩酸ドネペジル水和物を含有する固形薬学的組成物、およびその調製のためのプロセスの関する。具体的には、塩酸ドネペジルが、その多形形態を保持し、そして、それゆえ、他の多形形態への変換に対して非常に安定であるような組成物およびプロセスに関する。本発明に従う固形薬学的組成物は、塩酸ドネペジルと賦形剤とを含有し、そして、Karl Fischerにより決定した場合に、3〜10重量%、好ましくは、4〜7重量%、そしてより好ましくは、5〜6重量%の含水率を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩酸ドネペジルを含有する固形薬学的組成物と、その調製のためのプロセスに関する。具体的には、本発明は、塩酸ドネペジルが、その多形形態を保持し、そして、それゆえ、多形形態の変換に対して非常に安定である、組成物およびプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
塩酸ドネペジル、その多形形態、および、塩酸ドネペジルを含有する薬学的組成物は、公知である。
【0003】
特許文献1は、塩酸ドネペジルの多形形態I〜IVと、無定形形態の調製方法を記載する。多形は、粉末X線回折パターンにおける固有ピークと、臭化カリウムの赤外吸収スペクトルの波数(cm−1)とによって特徴付けられる。塩酸ドネペジルの形態Iを製造するための異なる方法が記載される。しかし、具体的な固形薬学的組成物については開示されておらず、まして、このような組成物中に組み込んだ際の、無定形または異なる結晶形態のいずれかの塩酸ドネペジルの安定性に関するデータは開示されていない。
【0004】
特許文献2は、有機酸の添加によって、光および熱の作用に対して安定化したドネペジルの組成物を開示する。また、有機酸を使用すると、塩酸を使用した場合と比較して、この組成物を高温で保存した後に、不純物の生成が少ないことが、実施例によって示されている。
【0005】
特許文献3は、無定形形態の塩酸ドネペジルを含有する薬学的組成物を記載する。この文献においては、さらに、所望の多形形態の塩酸ドネペジルを含む組成物を再現可能に調製することは、容易い課題ではないことが議論されている。なぜならば、塩酸ドネペジルは、多形を示し、そして、それにもかかわらず、同様の手順が、異なる結晶形態をもたらし得るからである。
【特許文献1】国際公開第97/046527号パンフレット
【特許文献2】欧州特許出願公開第1 086 706号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1 378 238号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、先行技術は、塩酸ドネペジルを所望の固形組成物へと加工する際に、塩酸ドネペジルの多形形態の変換を回避するという問題に対処していない。さらに、先行技術は、対応する固形組成物の有効期限の間に、塩酸ドネペジルの多形形態を安定化させる問題についても対処していない。
【0007】
これらの問題は、驚くべきことに、本発明によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従う固形薬学的組成物は、塩酸ドネペジルと賦形剤とを含有し、そして、Karl Fischerにより決定した場合に、3〜10%、好ましくは、4〜7%、そしてより好ましくは、5〜6重量%の含水率を有する(試験を、例えば、Karl Fischer titrator Metrohm 7012 KF Titrinoにおいて、Ph.Eur.2.5.12に従って行なった)。塩酸ドネペジルは、水和物の形態、好ましくは、一水和物の形態で使用する。
【0009】
予想外なことに、組成物中の塩酸ドネペジルの特定の多形形態の、他の水和された多形形態、もしくは、無水の多形形態への所望されない変換を回避するために、組成物の含水率を制御して、上記の範囲内におさめることが重要であることが分かった。具体的には、水和形態の無水形態への変換が、従来の組成物の問題である。
【0010】
塩酸ドネペジルは、結晶形態で本発明の組成物中に存在する。より好ましくは、塩酸ドネペジルは、種々の多形形態のうちの一つ(特に、多形Iまたは多形IV)として存在する。塩酸ドネペジルのこれらの多形形態ならびにその調製は、WO 97/46527に開示されており、この文献の内容は、本明細書中に参考として援用される。従って、本発明の組成物は、好ましくは、水和物の形態の塩酸ドネペジルの多形Iおよび/または多形IVを含有する。
【0011】
塩酸ドネペジルが、多形形態Iの塩酸ドネペジル、特に、多形形態Iの一水和物である組成物が特に好ましい。このような組成物は、活性成分の他の多形形態への所望されない変化に対して非常に安定であることが分かった。
【0012】
さらに好ましい実施形態において、本発明に従う組成物は、塩酸ドネペジルの平均粒子サイズが、5〜300μm、好ましくは、10〜150μmであるような組成物である。平均粒子サイズは、10 Malvern Mastersizerにおいて、レーザ法によって決定される。
【0013】
形態Iまたは形態IVの塩酸ドネペジルは、好ましくは、溶媒中に塩酸ドネペジルを懸濁することによって調製される。あるいは、塩酸ドネペジルは、ドネペジル塩基および塩酸から調製され得る。好ましくは、メタノールと水との混合物が溶媒として使用される。必要に応じて、エタノールもしくはイソプロパノールのような他のアルコール、または、アルコールと水との混合物が、使用され得る。塩酸ドネペジル水和物形態Iまたは形態IVの形成は、溶媒混合物中の含水率に依存する。塩酸ドネペジルが、溶媒中に完全に溶解されるまで、懸濁液が加熱される。必要に応じて、この溶液は、1μmの濾過カートリッジを通して濾過され得る。次いで、この塩酸ドネペジルの溶液は、約40℃まで冷却される。形態Iまたは形態IVの塩酸ドネペジル水和物は、イソプロピルエーテル、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、酢酸ブチル、イソブチルメチルケトン、tert−ブチルメチルエーテル、またはヘプタンの添加によって、この溶液から沈殿させられる。
【0014】
さらに、本発明の薬学的組成物において使用される他の賦形剤の粒子サイズは、圧縮混合物の均一性と、均一な造粒および圧縮を確実にするために、D90<500μmの範囲内、好ましくは、D90<350μmの範囲内であることが好ましい。D90とは、粒子の少なくとも90容量%または重量%が、特定の値よりも小さい粒子サイズを有することを意味する。
【0015】
本発明に従う組成物中に存在する賦形剤は、微結晶性セルロース、粉末セルロース、ラクトース(無水または好ましくは一水和物)、圧縮性の糖(compressible sugar)、フルクトース、デキストラン、他の糖(例えば、マンニトール、ソルビトール、ラクチトール(lactitol)、サッカロース(sacharose)、またはこれらの混合物)、シリコン化(siliconised)微結晶性セルロース、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウムのような賦形薬、または賦形薬の混合物であり得る。好ましくは、賦形剤は、微結晶性セルロースおよびラクトース一水和物から選択される、少なくとも一種の賦形薬を含有する。
【0016】
本発明に従う組成物はまた、ポリビニルピロリドン、微結晶性セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(low−substituted hydroxypropyl cellulose)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、もしくは、他のセルロースエステル、デンプン、アルファ化デンプン、または、ポリメタクリレートのような結合剤、あるいは、これらの結合剤の混合物を含有し得る。賦形剤は、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン(特に、トウモロコシデンプン)、アルファ化デンプン)、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される少なくとも一種の結合剤を含有することが好ましい。低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、5〜16重量%のヒドロキシプロピル基を含むヒドロキシプロピルセルロースである。適切な低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、LH−11、LH−20、LH−21、LH−22、LH−30、LH−31およびLH−32の商品名の下で、Shin−Etsu Chemical Co.,Ltd.より市販されている。
【0017】
さらに、デンプン(例えば、アルファ化デンプン、トウモロコシデンプンなど)、グリコール酸ナトリウムデンプン、クロスポビドン、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポラクリリンカリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、またはこれらの混合物のような崩壊剤もまた存在し得る。崩壊剤として使用される場合、微結晶性セルロースは、好ましくは5〜15重量%の量で使用される。賦形剤は、デンプン、クロスポビドンおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロースから選択される少なくとも一種の崩壊剤を含有することが好ましい。
【0018】
崩壊剤は、造粒プロセス、および/または、圧縮混合物の調製のいずれかにおいて、当該分野の技術常識において使用されるプロセスに従って、他の賦形剤に加えられ得る。
【0019】
さらに、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、水素化植物油、水素化ヒマシ油、ステアリルフマル酸ナトリウム、滑石、もしくは、マクロゴール、またはこれらの混合物のような滑沢剤もまた、賦形剤として存在し得る。賦形剤は、水素化ヒマシ油、滑石およびステアリン酸マグネシウムから選択される少なくとも一種の滑沢剤を含有することが好ましい。
【0020】
以下:
(A)1〜50重量%の、好ましくは、1〜40重量%の、より好ましくは、1〜30重量%の塩酸ドネペジル、
(B)1〜90重量%の、好ましくは20〜85重量%の賦形薬、
(C)1〜90重量%の、好ましくは、10〜40重量%の結合剤、
(D)1〜40重量%の、好ましくは、10〜40重量%の崩壊剤、そして、必要に応じて、
(E)0.1〜10重量%の、好ましくは0.1〜5重量%の滑沢剤
を含有する組成物が特に好ましい。
【0021】
上記の好ましい賦形剤を含有する組成物が、なおより好ましい。そうでないと示されていない場合、本明細書中に示される全ての割合は、組成物の総重量に基づく重量の割合である。
【0022】
研究はまた、使用される塩酸ドネペジルの多形形態の変換を回避するという点で、安定な組成物を達成することは、驚くべきことに、塩酸ドネペジルと賦形剤との含水率の比較的小さな差によって可能となることを示している。こうして、本発明の組成物中で使用される活性成分および種々の賦形剤の含水率は、賦形剤から塩酸ドネペジルへ、または、塩酸ドネペジルから賦形剤への水の移動が防止されるような方法で調整される。
【0023】
好ましい実施形態において、本発明は、以下:
(a)塩酸ドネペジルと、
(b)賦形剤であって、組成物の総重量に基づいて、11%より多い量(例えば、11%より多い〜99%)、好ましくは、15%より多い量(例えば、15%より多い〜99%)、より好ましくは、20%より多い量(例えば、20%より多い〜99%)で、組成物中に存在する、賦形剤と、
(c)賦形剤であって、組成物の総重量に基づいて、11%未満の量(例えば、0.1%〜11%未満)、好ましくは、15%未満の量(例えば、0.1%〜15%未満)、より好ましくは、20%未満の量(例えば、0.1%〜20%未満)で、組成物中に存在する、賦形剤と、
を含有する固形薬学的組成物に関し、ここで、この賦形剤(b)の含水率の重量%−活性成分(a)の含水率の重量%が、4.0重量%未満、好ましくは、3.0重量%未満、最も好ましくは、2.0重量%未満(Karl Fischerにより決定、試験を、例えば、Karl Fischer titrator Metrohm 7012 KF Titrinoにおいて、Ph.Eur.2.5.12に従って行なった)である。賦形剤(c)は、存在しない場合もあるが、賦形剤(c)は存在する方が好ましい。
【0024】
賦形剤(b)は、ラクトース一水和物、微結晶性セルロース、粉末セルロース、デキストラン(dextrate)(水和物)、ラクチトール(水和物)、シリコン化微結晶性セルロース、サッカロース、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、または、その混合物であるのが好ましい。
【0025】
賦形剤(c)は、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポラクリリンカリウム(polacriclin potassium)、デンプン、グリコール酸ナトリウムデンプン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、もしくは、他のセルロースエーテル、ポリメタクリレート、クロスポビドン、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、水素化植物油、水素化ヒマシ油、ステアリルフマル酸ナトリウム、滑石、マクロゴール、またはこれらの混合物であるのが好ましい。
【0026】
塩酸ドネペジル(a)は、好ましくは、塩酸ドネペジル水和物、より好ましくは、多形形態IV、そして、特に、形態Iの水和物である。
【0027】
この組成物の成分の含水率における小さな差は、塩酸ドネペジルから賦形剤への、または、賦形剤から塩酸ドネペジルへの水の移動を効率的に防止し、それによって、塩酸ドネペジルを、最初に使用される形態に安定化させる、すなわち、例えば、塩酸ドネペジルの多形形態Iの、別の多形形態への変換を防止する、と考えられる。
【0028】
本発明に従う組成物は、好ましくは、コーティングされた錠剤またはコーティングされていない錠剤(例えば、高速崩壊錠、または、口腔内崩壊錠)、カプセルの形状、または、ペレットの形状である。組成物はまた、カプセル中に充填された粉末混合物、顆粒もしくはミニ錠剤の形状をとり得る。即時放出組成物が好ましい。
【0029】
本発明に従う組成物は、塩酸ドネペジルおよび賦形剤を混合し、所望の組成物へと加工する工程を包含するプロセスによって調製され得る。
【0030】
組成物が、上に示される特定の含水率によって特徴付けられる場合、その成分(特に、その量およびその含水率)、および組成物への加工方法は、組成物において所望の含水率が達成されるように選択される。これは、特に、一部または全ての賦形剤を水で湿らせること(例えば、水または水性の造粒液(granulation liquid)を用いる造粒工程の過程において、別々の工程において、もしくは、製造プロセスの一部として達成され得る)によって達成され得る。
【0031】
特に、一水和物の形態の塩酸ドネペジル(例えば、形態Iの塩酸ドネペジル)が、無水形態へと変換し得るという問題に起因して、非常に安定な最終生成物を生じる、組成物の所望の含水率、または、塩酸ドネペジルおよび賦形剤の含水率に関する所望の小さな差を達成するためには、プロセスおよび賦形剤の選択が重要である。
【0032】
賦形剤を湿らせることは、従来の技術により賦形剤中に精製水を噴霧することによって、従来の造粒機器において行なわれ得る。湿らせることはまた、適切な混合デバイス(例えば、高せん断ミキサーにおける混合操作の間に、賦形剤の混合物に精製水を直接加えることによっても達成され得る。
【0033】
賦形剤の混合、または、賦形剤の塩酸ドネペジルとの混合は、従来の、粉末を混合するために使用されるデバイス(例えば、静止型(受動的)ミキサー(motionless(passive)mixer)、流動床ミキサー、拡散ミキサー、二重円錐型拡散(biconic diffusion)ミキサー、二重円錐型(biconic)ミキサー、ターブラー(turbula)ミキサー、キュービック(cubic)ミキサー、平床式(planetary)ミキサー、Y字型ミキサー、V字型ミキサー、または、高せん断ミキサー)において達成され得る。
【0034】
この場合、組成物は、塩酸ドネペジルおよび賦形剤の含水率に関する差によって規定され、次いで、そのそれぞれの含水率は、その調製のためのプロセスにおいてそれ相応に調整されるべきである。
【0035】
本発明に従う組成物を調製するためのプロセスは、造粒プロセスまたは直接圧縮プロセスとして行なわれ得る。
【0036】
好ましい実施形態において、造粒プロセスは、以下:
(i)造粒液として水を使用して、賦形剤の混合物を造粒し、顆粒(granulate)を得る工程、
(ii)顆粒に塩酸ドネペジルおよび賦形剤を添加して、圧縮混合物を得る工程、
(iii)圧縮混合物を所望の形態に圧縮する工程、ならびに
(iv)必要に応じて、コーティングを塗布する工程
を包含する。
【0037】
従って、この実施形態においては、活性成分である塩酸ドネペジルを含まない顆粒が、工程(i)において調製される。
【0038】
別の実施形態において、造粒プロセスは、以下:
(i’)造粒液として水を使用して、塩酸ドネペジルおよび賦形剤の混合物を造粒し、顆粒を得る工程、
(ii’)顆粒に賦形剤を添加して、圧縮混合物を得る工程、
(iii’)圧縮混合物を所望の形態に圧縮する工程、ならびに
(iv’)必要に応じて、コーティングを塗布する工程
を包含する。
【0039】
従って、この実施形態においては、活性成分を含む顆粒が、工程(i’)において調製される。
【0040】
工程(ii)および(ii’)のそれぞれにおいて使用される賦形剤は、工程(i)および(i’)のそれぞれにおいて使用される賦形剤と同じであっても異なっていてもよい。
【0041】
造粒プロセスにおける顆粒の温度は、造粒工程の間に、50℃を超えないことが好ましいことが分かった。これは、特に、造粒プロセスの後に、造粒液を除去するために高温を使用する際に生じ得る他の形態への、使用される多形の、所望のされない変化を防止するのに有用であると考えられる。
【0042】
特に、湿った顆粒を乾燥させる際に使用される温度は、低い温度であるべきであり、例えば、流動床乾燥機における吸気の温度は、顆粒の温度が50℃を超えないことを確実にするためには、70℃付近もしくはそれより低いべきである。高温を使用すると、水和された形態の、他の水和された形態、もしくは、無水の形態への変換が加速される。さらに、顆粒の含水率を、0.5〜2.5重量%、好ましくは、1.0〜2.0重量%(85℃、20分での乾燥減量として、例えば、Mettler Toledo HR73ハロゲン湿度計を用いて決定した場合)に調整することが有益であることも見出された。
【0043】
また、圧縮混合物の含水率は、1.0〜6.0重量%、好ましくは、1.5〜5.0重量%(85℃、20分での乾燥減量として、例えば、Mettler Toledo HR73ハロゲン湿度計を用いて決定した場合)であることが好ましい。
【0044】
従来の顆粒を乾燥させるために、流動床乾燥機、または、乾燥チャンバのような、従来の乾燥デバイスが使用され得る。
【0045】
さらに、直接圧縮プロセスの好ましい実施形態は、以下:
(i”)塩酸ドネペジルおよび賦形剤を混合して、圧縮混合物を得る工程、
(ii”)得られた圧縮混合物を所望の形態に圧縮する工程、ならびに
(iii”)必要に応じて、コーティングを塗布する工程
を包含する。
【0046】
また、直接圧縮プロセスにおいては、圧縮混合物の含水率は、1.0〜6.0重量%、好ましくは、1.5〜5.0重量%(85℃、20分での乾燥減量として、例えば、Mettler Toledo HR73ハロゲン湿度計を用いて決定した場合)であることが好ましい。
【0047】
本発明に従う上記プロセスにおいて、特に、錠剤への圧縮は、種々の製造メーカー製の輪転機(rotary press machine)を用いて達成され得る。必要に応じて、錠剤は、フィルムコーティングのために使用される従来の物質(すなわち、Pharmaceutical Coating Technology,1995,Graham Cole編に記載される物質)でコーティングされ得る。フィルムコーティング処方物は、好ましくは、以下の成分:ポリマー、可塑剤、着色料/乳白剤、ビヒクル(vehicle)を含有する。フィルムコーティング用の懸濁液において、少量の香料、界面活性剤および蝋が使用され得る。フィルムコーティングにおいて使用されるポリマーの大半は、好ましくは、セルロースエーテルのようなセルロース誘導体か、または、アクリル性ポリマーもしくはアクリル性コポリマーのいずれかである。高分子量ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、および蝋様物質もまた使用され得る。
【0048】
代表的なセルロースエーテルは、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロースである。適切なアクリル性ポリマーとしては、種々の官能基を有する合成ポリマーが挙げられる。これらは、さらに、フィルムの完全な分解/溶解を確実にするために、水溶性セルロースエーテルおよびデンプンのような物質を組み込むことによって、膨潤性および透過性を増大させるように改変させ得る。
【0049】
コーティング物質において使用するための適切な可塑剤は、以下の三つの群に分類され得る:ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、マクロゴール)、有機エステル(フタル酸エステル、セバシン酸ジブチル、クエン酸エステル、トリアセチン)、油/グリセリド(ヒマシ油、アセチル化モノグリセリド、ヤシ油)。
【0050】
適切な着色料/乳白剤は、いくつかの群に分類され得る:有機染料およびそのラッカー、無機着色料、天然着色料。各群からの異なる物質の組み合わせは、規定される割合で組み合され得る。フィルムコーティング用の懸濁液は、市場で入手可能な、直ぐに調製可能なもの(ready−to−make preparation)として使用され得る。
【0051】
フィルムコーティング分散剤は、異なる溶媒(水、アルコール、ケトン、エステル、塩素化炭化水素(好ましくは、水))を使用して調製され得る。
【0052】
以下:
(A’)1〜99重量%のポリマー、好ましくは、1〜95重量%のポリマー、
(B’)1〜50重量%の可塑剤、好ましくは、1〜40重量%の可塑剤、
(C’)0.1〜20重量%の着色料/乳白剤、好ましくは、0.1〜10重量%の着色料/乳白剤
を含有するコーティング懸濁液の組成(乾燥物質について計算)が特に好ましい。
【0053】
Wursterコーティングシステムまたは従来のコーティングパンのような従来の機器が、コーティングを塗布するために使用され得る。
【0054】
フィルムでコーティングされた錠剤の含水率は、3〜10重量%、好ましくは、4〜7重量%、そして、より好ましくは、5〜6重量%(Karl−Fischer法により決定、試験を、例えば、Karl Fischer titrator Metrohm 7012 KF Titrinoにおいて、Ph.Eur.2.5.12に従って行なった)であることが有益であることが分かった。
【0055】
驚くべきことに、本発明に従うプロセスは、出発物質として使用される塩酸ドネペジルの、他の形態への所望されない変換を実質的に起こさないことが分かった。これは、特に、塩酸ドネペジル水和物を使用する際に示され、塩酸ドネペジル水和物は、他の水和された形態、もしくは、他の無水形態への感知できるほどの変換を受けなかった。さらに、示される最終組成物もまた、保存時に、塩酸ドネペジル(特に、塩酸ドネペジル水和物)の所望されない変換に対して驚くほど高い安定性を示した。
【0056】
安定性試験のために、加速度的な条件(50℃)を使用し、そして、錠剤は、小型の包装材料(例えば、ブリスター)中に包装しなかったが、塩酸ドネペジル水和物は変わらないままであった。本発明に従う組成物の安定性は、粉末X線回折パターンにおける固有ピークによって明らかとなった。この試験の結果を図1に示す。図1は、塩酸ドネペジル水和物を含有する錠剤(上の曲線)、および、純粋な塩酸ドネペジル水和物(下の曲線)のX線回折パターンを示す。錠剤のパターンに他の回折ピークが存在しないことから、塩酸ドネペジルの他の形態が存在しないことが示唆される。
【0057】
本発明は、ここで、実施例および図面を参照して、さらに例示される。
【実施例】
【0058】
(実施例1:直接圧縮プロセスによる、フィルムコーティング錠)
111.8gの塩酸ドネペジル水和物、1587gのラクトース一水和物、857gのアルファ化デンプンおよび429gのトウモロコシデンプンを、二重円錐型ミキサーにおいて、10分間、6rpmにてホモジナイズした。最後に、16gのステアリン酸マグネシウムを加え、そして、混合を3分間続けた。得られた圧縮混合物を、自動輪転機で圧縮し、丸型穿孔機に嵌めて、錠剤のコアを生じた。10個のコアの重量は、300mgであった。その後、これらのコアを、10個のフィルムコーティング錠の平均重量が308mgになるまで、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(70重量%)、ポリエチレングリコール(5重量%)、二酸化チタン(20重量%)、滑石(4重量%)、および酸化鉄(1重量%)を含有するコーティング懸濁液でコーティングした。
【0059】
塩酸ドネペジル水和物の含水率は、5.0%であった(Karl Fischer法により決定、試験を、Karl Fischer titrator Metrohm 7012 KF Titrinoにおいて、Ph.Eur.2.5.12に従って行なった)。
【0060】
得られた錠剤中の水分の量は、6.0重量%であった(Karl Fischer titrator Metrohm 7012 KF Titrinoにおいて、Ph.Eur.2.5.12に従って行なったKarl−Fischer法により決定)。
【0061】
(実施例2:造粒プロセスによる錠剤)
5030gの微結晶性セルロース、1920gのラクトース一水和物、840gのトウモロコシデンプン、および250gのヒドロキシプロピルセルロースを、高せん断ミキサー中でホモジナイズした。このホモジナイズした混合物に、精製水を噴霧し、そして、高せん断ミキサー/造粒機で造粒した。湿らせた混合物を、70℃の吸気温度を用いて、流動床乾燥機で乾燥させた。この得られた乾燥顆粒を、篩い機を用いて、篩にかけた。その後、313gの塩酸ドネペジル水和物を、二重円錐型ミキサーにおいて上記顆粒と混合した。最後に、45gのステアリン酸マグネシウムを混合して、圧縮混合物を得た。
【0062】
この圧縮混合物を圧縮して錠剤を得た。これらの錠剤のいくつかには、実施例1に記載したフィルムコーティングを提供した。得られた錠剤中の水分の量は、5.4重量%であった(Karl Fischer titrator Metrohm 7012 KF Titrinoにおいて、Ph.Eur.2.5.12に従って行なったKarl−Fiseller法により決定)。
【0063】
(実施例3:造粒プロセスによる錠剤)
5030gのラクトース一水和物、1920gの微結晶性セルロースおよび250gのヒドロキシプロピルセルロースを、高せん断ミキサー中でホモジナイズした。このホモジナイズした混合物に、精製水を噴霧し、そして、高せん断ミキサー/造粒機で造粒した。湿らせた混合物を、70℃の吸気温度を用いて、流動床乾燥機で乾燥させた。この得られた乾燥顆粒を、篩い機を用いて、篩にかけた。その後、313gの塩酸ドネペジル水和物および840gの低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを、二重円錐型ミキサーにおいて上記顆粒と混合した。最後に、45gのステアリン酸マグネシウムを混合して、圧縮混合物を得た。
【0064】
この圧縮混合物を圧縮して錠剤を得た。これらの錠剤のいくつかには、実施例1に記載したフィルムコーティングを提供した。
【0065】
得られた錠剤中の水分の量は、5.1重量%であった(Karl Fischer titrator Metrohm 7012 KF Titrinoにおいて、Ph.Eur.2.5.12に従って行なったKarl−Fischer法により決定)。
【0066】
(実施例4:造粒プロセスによる錠剤)
(a)調製プロセス
3540gのラクトース一水和物、1430gの微結晶性セルロース、600gのトウモロコシデンプンおよび180gのヒドロキシプロピルセルロースを、高せん断ミキサー中でホモジナイズした。このホモジナイズした混合物に、精製水を噴霧し、そして、高せん断ミキサー/造粒機で造粒した。湿らせた混合物を、70℃の吸気温度を用いて、流動床乾燥機で乾燥させた。この得られた乾燥顆粒を、篩い機を用いて、篩にかけた。顆粒は、以下のような粒子サイズ分布を示した:
【0067】
【表1】

乾燥顆粒について、Karl−Fischer法により決定した含水率は、4.8%であった。水分量の決定は、titrator Metrohm 7012 KF Titrinoにおいて、Ph.Eur.2.5.12に従って行なった。
【0068】
その後、223gの塩酸ドネペジル水和物を、二重円錐型ミキサーにおいて上記顆粒と混合した。最後に、32gのステアリン酸マグネシウムを混合して、圧縮混合物を得た。
【0069】
この圧縮混合物を錠剤へと圧縮した。10個の錠剤の平均重量は200mgであった。これらの錠剤の一部には、実施例1に記載したフィルムコーティングを提供した。
【0070】
得られた錠剤中の水分の量は、5.5重量%であった(titrator Metrohm 7012 KF Titrinoにおいて、Ph.Eur.2.5.12に従って行なったKarl Fischer法により決定)。
【0071】
(b)錠剤の安定性試験
安全性試験のために加速度的な条件を使用した。塩酸ドネペジル水和物を含有する錠剤を、50℃にて30日間保存した。錠剤は、ブリスターのような小型の包装材料中には包装しなかった。本発明に従う組成物の安定性は、粉末X線回折パターンにおける固有ピークによって明らかとなった。この試験の結果を図1に示す。
【0072】
図1は、塩酸ドネペジル水和物を含有する錠剤のX線回折パターンを示す。錠剤を、湿式造粒により調製し(上の曲線)、そして、50℃/乾燥状態にて30日間保存した(真ん中の曲線)。塩酸ドネペジル水和物が、下の曲線に示される。50℃/乾燥状態に30日間保存した、錠剤のパターンに他の回折ピークが存在しないことから、塩酸ドネペジルの他の(無水物、および水和物)形態が存在しないことが示唆される。本発明に従う組成物における塩酸ドネペジル水和物は、変わらないままであった。
【0073】
(実施例5:造粒プロセスによる錠剤)
180gのヒドロキシプロピルセルロースを、180gのヒドロキシプロピルメチルセルロースで置き換えたことを除いては、実施例4を繰り返した。
【0074】
得られた錠剤中の水分の量は、5.3重量%であった(titrator Metrohm 7012 KF Titrinoにおいて、Ph.Eur.2.5.12に従って行なったKarl−Fischer法により決定)。
【0075】
(実施例6:造粒プロセスによる錠剤)
279gの塩酸ドネペジル水和物、4491gの微結晶性(macrocrystalline)セルロース、1714gのラクトース一水和物、223gのヒドロキシプロピルセルロース、および750gの低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを、高せん断ミキサー中でホモジナイズした。このホモジナイズした混合物に、精製水を噴霧し、そして、高せん断ミキサー/造粒機で造粒した。湿らせた混合物を、70℃の吸気温度を用いて、流動床乾燥機で乾燥させた。この得られた乾燥顆粒を、篩い機を用いて、篩にかけた。最後に、40gのステアリン酸マグネシウムを混合して、圧縮混合物を得た。
【0076】
この圧縮混合物を錠剤へと圧縮した。錠剤の平均中慮は、250mg/錠剤であった。これらの錠剤のいくつかには、実施例1に記載したフィルムコーティングを提供した。
【0077】
得られた錠剤中の水分の量は、5.8重量%であった(titrator Metrohm 7012 KF Titrinoにおいて、Ph.Eur.2.5.12に従って行なったKarl−Fischer法により決定)。
【0078】
(実施例7:造粒プロセスによる錠剤)
4491gの微結晶性セルロースおよび1714gのラクトース一水和物を、4491gのラクトース一水和物および1714gの微結晶性セルロースで置き換えたことを除いては、実施例6を繰り返した。流動床乾燥機での乾燥時間は、19分であった。錠剤混合物の粒子サイズ分布の結果は、以下のとおりであった:
【0079】
【表2】

錠剤中の水分の量は、5.7%であった(titrator Metrohm 7012 KF Titrinoにおいて、Ph.Eur.2.5.12に従って行なったKarl−Fischer法により決定)。
【0080】
(実施例8:塩酸ドネペジル形態Iの調製)
50.6gのドネペジル塩基を、室温でメタノール(300ml)中に懸濁し、そして、60℃に加熱して、透明な溶液を得た。25〜30℃で11mlの濃塩酸を加え、pHを測定した(3.2±0.2)。塩酸ドネペジルの溶液を40〜45℃まで暖め;これを、冷やした(0〜5℃)ジイソプロピルエーテル(600ml)にゆっくりと加え、温度を5〜10℃に維持した。この懸濁液をさらに30分間撹拌した。生成物を濾過し、そして、30〜35℃の温度において、真空中で乾燥させた。乾燥は、含水率を測定することによって制御した(Karl Fischerが4.5%以下)。収量は、52.66g(91%)であった。
【0081】
(実施例9:塩酸ドネペジル形態Iの結晶化)
50gの塩酸ドネペジルを、メタノール(300ml)および8mlの水中に懸濁し、そして、60〜65℃に加熱して、透明な溶液を得た。次いで、この溶液を、冷やした(0〜5℃)ジイソプロピルエーテル(600ml)にゆっくりと加え、温度を5〜10℃に維持した。この懸濁液をさらに30分間撹拌した。生成物を濾過し、そして、30〜35℃の温度において、真空中で(30〜50mbarr)乾燥させた。乾燥は、実施例8に記載するようにして含水率を測定することによって制御した。収量は、47.39g(91%)であった。
【0082】
(実施例10:塩酸ドネペジル多形Iの調製)
5gの塩酸ドネペジルを、メタノール(300ml)および0.8mlの水中に懸濁し、そして、60〜65℃に加熱して、透明な溶液を得た。次いで、この溶液を、冷やした(0〜5℃)ジイソプロピルエーテル(60ml)にゆっくりと加え、温度を5〜10℃に維持した。この懸濁液をさらに30分間〜1時間撹拌した。生成物を濾過し、そして、30〜35℃の温度において、真空中で(30〜50mbarr)乾燥させた。乾燥は、実施例8に記載するようにして含水率を、そして、乾燥減量を測定することによって制御した。収量は、1.8〜4.9gであった。
【0083】
(実施例11:塩酸ドネペジル多形IVの結晶化)
1gの塩酸ドネペジルを、メタノール(6ml)および1mlの水中に懸濁し、そして、還流まで加熱して、透明な溶液を得た。次いで、この熱い溶液を、冷やした(0〜5℃)ジイソプロピルエーテル(12ml)にゆっくりと加え、温度を5〜10℃に維持した。この懸濁液をさらに30分間〜1時間撹拌した。生成物を濾過し、そして、30〜35℃の温度において、真空中で(30〜50mbarr)乾燥させた。乾燥は、実施例8に記載するようにして含水率を、そして、乾燥減量を測定することによって制御し、0.98gの塩酸ドネペジルの形態IVを生じた。
【0084】
(実施例12:塩酸ドネペジル多形Iの調製)
4.98gのドネペジル塩基を、室温(20〜25℃)でメタノール(30l)中に懸濁し、そして、60〜65℃に加熱して、透明な溶液を得た。この溶液を30℃まで冷却し、1μmの濾過カートリッジを通して濾過し、そして、20〜25℃まで冷却した。25〜30℃において1.05lの濃塩酸を加え、pHを測定した(3.2±0.2)。塩酸ドネペジルの溶液を40〜45℃まで暖め、そして、冷やした(0〜5℃)ジイソプロピルエーテル(60l)にゆっくりと加え、温度を5〜10℃に維持した。この懸濁液をさらに30分間、5〜10℃で撹拌した。次いで、生成物を濾過して除き、そして、8.45kgの湿った物質を得た。この湿った塩酸ドネペジル水和物(57%)を、以下の手順を用いて、真空中で(30〜50mbarr)乾燥させた:まず、この生成物を、25℃にてわずかな窒素流下で乾燥させた。可能になると、この生成物を、3×3mmの篩を通し、そして、1.2×1.2mmの篩を通して造粒した(プロセスの制御において、乾燥減量LOD(loss of drying)は、24.3%であった)。LODが5.1%になると、乾燥温度を30〜35℃に上げた。乾燥はまた、水分含有量を測定することによっても制御した。1時間後、水分含有量は2.77%であり、そして、LODは、3.60%であった。乾燥を止め、そして、物質を、湿った空気(60%より下の相対湿度)に曝露して、4.34%(Karl Fischer)の水分含有量を達成した。乾燥生成物の収量は、4.9kgであった。
【0085】
(実施例13:塩酸ドネペジル多形Iの結晶化(crystalization))
10.2kgの塩酸ドネペジルを、62lのメタノールおよび1.6lの水中に懸濁し、そして、60〜65℃に加熱して、透明な溶液を得た。この溶液を50℃まで冷却し、1μmの濾過カートリッジを通して濾過し、そして、40〜45℃まで冷却した。次いで、この熱い溶液を、冷やした(0〜5℃)ジイソプロピルエーテル(122l)にゆっくりと加え、温度を5〜10℃に維持した。この懸濁液をさらに30分間、5〜10℃で撹拌した。この生成物を濾過して、15.9kgの湿った物質を得た。この湿った塩酸ドネペジル水和物(58%)を、以下の手順を用いて、真空中で(30〜50mbarr)乾燥させた:まず、この生成物を、25℃にてわずかな窒素流下で乾燥させた。次いで、この生成物を、3×3mmの篩を通して造粒した(プロセスの制御において、乾燥減量(LOD)は、21.4%であった)。1時間ごとに、1.2×1.2mmの篩を通して篩いをかけて、乾燥を続けた。LODが5.8%になると、乾燥温度を30〜35℃に上げた。乾燥はまた、水分含有量を測定することによっても制御した。30℃での2時間の乾燥後、水分含有量は3.66%であり、そして、LODは、3.75%であった。乾燥を止め、そして、物質を、湿った空気(60%より下の相対湿度)に曝露して、4.14%(Karl Fischer)の水分含有量を達成した。乾燥生成物の収量は、9.2kgであった。
【0086】
あるいは、塩酸ドネペジル水和物を乾燥するために、真空濾過乾燥機、回転式真空乾燥機、または、エアドライヤが使用され得る。
【0087】
さらに、50〜70%の水分含量を有する湿った塩酸ドネペジル水和物はまた、真空下で、または、以下の工程のうちの一つ以上を用いて、空気流動床乾燥機によって乾燥され得る:
−塩酸ドネペジル水和物を、塩酸ドネペジル水和物が30〜50重量%の溶媒を含有するように乾燥させる工程、
−所定の期間ごと(例えば、1時間ごと)に撹拌または造粒しながら、乾燥させる工程、
−乾燥減量(LOD)が6%を下回るまで、20〜25℃において乾燥させる工程、
−かすかな窒素流下で、20〜25℃において乾燥させる工程、
−50mbarより下の真空下で、20〜25℃において乾燥させる工程、
−乾燥減量(LOD)が4.8%を下回るまで、30〜35℃において乾燥させる工程、
−水分含有量が4.1%を下回ったときに、湿った空気(60%より下の相対湿度)に曝露して、5.0%(Karl Fischer)以下の水分含有量を達成する工程。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1は、実施例4に記載される、塩酸ドネペジル水和物を含有する錠剤のX線回折パターンを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水和物の形態の塩酸ドネペジルと賦形剤とを含有し、3〜10重量%(Karl Fischerにより決定)の含水率を有する、固形薬学的組成物。
【請求項2】
4〜7重量%(Karl Fischerにより決定)の含水率を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記塩酸ドネペジルが、塩酸ドネペジル一水和物である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記塩酸ドネペジルが、結晶形態である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記塩酸ドネペジルが、多形形態IまたはIVの塩酸ドネペジルである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記賦形剤が、微結晶性セルロースおよびラクトース一水和物から選択される少なくとも一種の賦形薬を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記賦形剤が、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デンプン、およびアルファ化デンプンから選択される少なくとも一種の結合剤を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記賦形剤が、デンプン、クロスポビドン、および低置換度ヒドロキシプロピルセルロースから選択される少なくとも一種の崩壊剤を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
賦形剤として、以下:
(A)1〜50重量%の塩酸ドネペジル、
(B)1〜90重量%の賦形薬、
(C)1〜90重量%の結合剤、
(D)1〜40重量%の崩壊剤、そして、必要に応じて、
(E)0.1〜10重量%の滑沢剤
を含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物であって、前記塩酸ドネペジル水和物、および該組成物において使用される種々の賦形剤の含水率が、該賦形剤から該塩酸ドネペジルへの水分の移動、または、該塩酸ドネペジルから該賦形剤への水分の移動が防止されるような方法で調整される、組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の組成物であって、以下:
(a)塩酸ドネペジルと、
(b)賦形剤であって、組成物の総重量に基づいて、11重量%より多く、好ましくは、15重量%より多く、より好ましくは、20重量%より多い量で、該組成物中に存在する、賦形剤と、
(c)賦形剤であって、組成物の総重量に基づいて、11重量%未満、好ましくは、15重量%未満、より好ましくは、20重量%未満の量で、該組成物中に存在する、賦形剤と、
を含有し、該賦形剤(b)の含水率の重量%−活性成分(a)の含水率の重量%が、4.0重量%未満、好ましくは、3.0重量%、最も好ましくは、2.0重量%未満(Karl Fischerにより決定)である、組成物。
【請求項12】
錠剤の形態である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物の調製のためのプロセスであって、所望の該組成物に、塩酸ドネペジルおよび賦形剤を混合および加工する工程を包含する、プロセス。
【請求項14】
請求項13に記載のプロセスであって、以下:
(i)造粒液として水を使用して、賦形剤の混合物を造粒し、顆粒を得る工程、
(ii)該顆粒に塩酸ドネペジルおよび賦形剤を添加して、圧縮混合物を得る工程、
(iii)該圧縮混合物を所望の形態に圧縮する工程、ならびに
(iv)必要に応じて、コーティングを塗布する工程
を包含する、プロセス。
【請求項15】
請求項13に記載のプロセスであって、以下:
(i’)造粒液として水を使用して、塩酸ドネペジルおよび賦形剤の混合物を造粒し、顆粒を得る工程、
(ii’)該顆粒に賦形剤を添加して、圧縮混合物を得る工程、
(iii’)該圧縮混合物を所望の形態に圧縮する工程、ならびに
(iv’)必要に応じて、コーティングを塗布する工程
を包含する、プロセス。
【請求項16】
前記混合物および前記顆粒の温度が、前記造粒工程の間に、50℃を超えない、請求項14または15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記顆粒の含水率が、85℃、20分での乾燥減量として決定した場合、0.5〜2.5%、好ましくは、1.0〜2.0%である、請求項14〜16のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記圧縮混合物の含水率が、85℃、20分での乾燥減量として決定した場合、1.0〜6.0%、好ましくは、1.5〜5.0%である、請求項14〜17のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項19】
請求項13に記載のプロセスであって、以下:
(i’)塩酸ドネペジルおよび賦形剤を混合して、圧縮混合物を得る工程、
(ii’)該得られた圧縮混合物を所望の形態に圧縮する工程、ならびに
(iii’)必要に応じて、コーティングを塗布する工程
を包含する、プロセス。

【図1】
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【公表番号】特表2008−517022(P2008−517022A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537202(P2007−537202)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【国際出願番号】PCT/EP2005/011249
【国際公開番号】WO2006/045512
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(506322260)
【Fターム(参考)】