説明

増速機とそれを備えた発電装置

【課題】 構造が簡単で、コンパクトに構成することができ、かつ、回転トルクの伝達効率が良い増速機を備えた発電装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 外力によって回転する入力軸と、回転自在に支持された出力軸と、前記出力軸の軸心と同心で固定された固定外歯車と、前記出力軸の軸心に対して偏心しており、前記出力軸と結合され、前記出力軸の軸心の回りに前記出力軸と一体に回転する偏心輪と、前記偏心輪を内部に摺動回転自在に支持する軸受部と前記固定外歯車と噛み合う内歯車とを有するローターと、前記ローターに設けられた外歯車と、当該外歯車と噛み合う内歯車を有する回転輪であって、前記入力軸と連結され、前記入力軸の回転に伴って前記出力軸の軸心の回りに回転する回転輪とを有している増速機を備える発電装置を提供することによって解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力軸の回転を増速して出力軸に伝達する増速機と、それを備えた発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、風力や水力等の自然エネルギーを利用して発電を行う発電装置が知られている。これらの発電装置においては、風車や水車の回転を発電機の回転子に伝達するに際して、主軸と回転子の間に増速機を介在させ、主軸の回転速度を増速して回転子に伝えることが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、水の持つエネルギーによって水車を回転させ、その回転を増速機によって増速して発電機に伝えるようにした用水路用水力発電装置が、特許文献2には、風、すなわち、大気の持つエネルギーによって風車を回転させ、その回転を遊星歯車式の増速機によって増速して発電機に伝えるようにした増速機付き風力発電装置が、また、特許文献3には、同じく大気の持つエネルギーによって風車を回転させ、その回転をスター型遊星ローラ式トラクションドライブと、プラネタリ型遊星ローラ式トラクションドライブを組み合わせた増速機によって増速して発電機に伝えるようにした風力発電装置が、それぞれ開示されている。
【0004】
しかしながら、従来から用いられている増速機には、構造が複雑で、部品点数が多く、高価であるという欠点があった。すなわち、例えば特許文献2で用いられているような遊星歯車式の増速機は、その構造上、用いる歯車の数が多く、構造も複雑となり、嵩張るとともに、製造コストが掛かるという欠点がある。また、例えば特許文献3で用いられているトラクションドライブ形式の増速機は、騒音や振動は少ないものの、やはり部品点数が多く、構造が複雑で、嵩張る上に、回転トルクの伝達効率が安定せず、また、単体で大きな増速比を得ることが難しいといった問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−269315号公報
【特許文献2】特開2001−304094号公報
【特許文献3】特開平5−079450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、構造が簡単で、コンパクトに構成することができ、かつ、回転トルクの伝達効率が良い増速機と、それを備えた発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決すべく種々試行錯誤を重ねた結果、ロータリーエンジンで採用されている位相歯車に着目し、入力軸の回転によってロータリーエンジンにおけるローターに相当する部材を回転させ、その回転を偏心輪を介して出力軸に伝達すれば、構造が簡単で効率の良い増速ができるのではないかとの発想を得た。そして、この発想の下、さらに研究を重ねた結果、固定外歯車の周囲に固定外歯車と噛み合う内歯車を内蔵したローターを回転させる構造とし、ローターにはその内側に偏心輪を摺動回転自在に収容させ、ローターを入力軸に、偏心輪を出力軸に、それぞれ接続することによって、簡単な構造で、入力軸の回転を低速の場合から高速の場合まで幅広く、効率の良い増速が可能であることを見出して本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、外力によって回転する入力軸と;ベースフレームと;前記ベースフレームに回転自在に支持された出力軸と;前記出力軸の軸心と同心で前記ベースフレームに対して固定された固定外歯車と;前記出力軸の軸心に対して偏心しており、前記出力軸と結合され、前記出力軸の軸心の回りに前記出力軸と一体に回転する偏心輪と;前記偏心輪を内部に摺動回転自在に支持する軸受部と、前記固定外歯車と噛み合う内歯車とを有するローターと;前記入力軸の回転を前記ローターに伝達する回転伝達機構とを有する増速機を提供することによって上記の課題を解決するものである。
【0009】
本発明の増速機においては、複雑な遊星歯車機構を用いる必要がなく、固定外歯車と、内歯車を備えたローターと、ローター内部に摺動回転自在に支持される偏心輪という極めてシンプルな構成要素によって、入力軸の回転を増速して出力軸に伝達することができる。増速率は、固定外歯車の歯数と、ローター内の内歯車の歯数の比、すなわちギヤ比によって決まり、例えば、固定外歯車の歯数とローター内の内歯車のギヤ比が、2:3であれば、ローターの1回の回転によってローターに内蔵される偏心輪は3回転し、3倍の増速率が得られる。また、固定外歯車の歯数とローター内の内歯車のギヤ比が、1:2であれば、ローターの1回の回転によってローターに内蔵される偏心輪は4回転し、4倍の増速率が得られる。なお、位相歯車機構におけるギヤ比と回転数との関係については、例えば、GP企画センター編、「マツダ・ロータリーエンジンの歴史」、株式会社グランプリ出版、2003年2月10日初版発行、28〜36頁、44頁に詳述されている。
【0010】
また、本発明の増速機においては、入力軸の回転によってローターを回転させることにより、偏心輪を回転させるので、偏心輪を回転させるにあたって、偏心輪の回転中心からローターによる回転力の作用点までの距離を腕の長さとするモーメントを利用することができる。したがって、偏心輪を介さずに入力軸と出力軸を同心で回転させる場合よりも回転トルクが上昇することとなり、効率の良い増速が可能である。
【0011】
本発明の増速機は、その好適な一態様において、前記入力軸の回転をオルダム継手機構によって前記ローターに伝達するのが好ましい。すなわち、ローターは、内蔵する内歯車を固定外歯車と噛み合わせながら固定外歯車の周囲を自転しながら公転するので、ローターの中心は一点に静止しておらずに移動するが、回転伝達機構としてオルダム継手機構を用いる場合には、ローターの中心の移動がオルダム継手機構によって吸収され、回転中心が一点に静止して回転する入力軸の回転を、効率良くローターに伝達してローターを回転させることができる。
【0012】
上述のオルダム継手機構は、その好適な一態様において、入力軸と連結された駆動板と、駆動板と前記ローターとの間に介在する中間節とを有しており、中間節は、駆動板と対向する面に第1の凸部又は凹部を有するとともに、ローターと対向する面に第2の凸部又は凹部を有しており、第1の凸部又は凹部と第2の凸部又は凹部は互いに直交する位置関係にあり、駆動板は、第1の凸部又は凹部と摺動移動自在に嵌合する第3の凸部又は凹部を有し、ローターは、第2の凸部又は凹部と摺動移動自在に嵌合する第4の凸部又は凹部を有している。互いに摺動移動自在に嵌合されている凸部又は凹部の摺動移動を滑らかなものとするために、第1〜第4の凸部又は凹部のうちの少なくともいずれか1つの凸部又は凹部には、軸受機構が設けられているのが望ましい。軸受機構としては、例えば、フラットローラーベアリング、ドライベアリング、油含浸軸受などが挙げられる。
【0013】
また、本発明の増速機は、その好適な一態様において、前記入力軸の回転を前記ローターに伝達する回転伝達機構として、前記ローターに設けられた外歯車と、当該外歯車と噛み合う内歯車を有する回転輪であって、前記入力軸と連結され、前記入力軸の回転に伴って前記出力軸の軸心の回りに回転する回転輪とを有している回転伝達機構を備えている。本発明の増速機がこのような回転伝達機構を備える場合には、回転中心が一点に静止して回転する入力軸の回転を、前記内歯車と外歯車とを介して、前記ローターに伝達することができるので、入力軸の回転をより効率良くローターに伝達することが可能となる。なお、前記回転輪に設けられた内歯車と前記ローターに設けられた外歯車とは平歯車であっても良いが、噛み合いが滑らかになり、振動、騒音が小さくなるという観点からは、はすば歯車とするのが好ましい。
【0014】
また、本発明の増速機は、その好ましい一態様において、前記固定外歯車と、前記偏心輪と、前記ローターと、前記回転伝達機構とを、前記出力軸の軸方向に沿った両側に有しており、前記両側のローター及び偏心輪の偏心回転の位相が180度異なっている。このように本発明の増速機が、前記偏心輪を始めとする回転機構を互いの回転位相を180度異ならせて出力軸の両側に有している場合には、偏心回転する偏心輪やローターの回転に伴う振動が打ち消されて、より静かで振動の少ない運転を実現することができる。
【0015】
また、本発明の増速機は、前段の増速機の出力が後段の増速機の入力となるように2段又は3段以上に連結して用いることによって、高い増速率を得ることが可能である。例えば、上記ギヤ比が1:2の本発明の増速機を2段に連結すれば、1段当たりの増速率が4倍であるので、入力軸の回転を4×4=16倍に増速することができ、3段に連結する場合には、4×4×4=64倍に増速することができる。本発明の増速機は、構造がシンプルでコンパクトに構成できるので、2段又は3段以上に連結した場合でも、全体がそれほど嵩張らず、比較的小型で増速率の大きい増速機とすることができる。
【0016】
なお、本発明の増速機を多段に連結する場合には、前段の増速機と後段の増速機との間に、前段の増速機の出力軸の回転を増速して後段の増速機の入力軸に伝達する適宜の増速機構を介在させても良い。この増速機構によって、前段の増速機の出力軸の回転を、例えば1.5倍程度に増速して後段の増速機の入力軸に伝達する場合には、増速率をさらに高めることが可能となる。
【0017】
本発明は、また、流体が持つエネルギーによって回転する主軸と、発電機と、前記主軸の回転を前記発電機に伝達する動力伝達部とを有し、前記動力伝達部が本発明の増速機を備えている発電装置を提供することによって上記の課題を解決するものである。流体としては、水、空気(大気)、水蒸気などが代表的なものとして挙げられ、それらが持つエネルギーを利用する発電装置としては、各種水力発電装置、各種風力発電装置、火力又は原子力によって生み出される熱エネルギーを水蒸気のエネルギーに変換してタービンを回転させる火力発電装置や原子力発電装置などが挙げられる。本発明の増速機は、これらいずれの発電装置においても増速機として利用することができる。
【0018】
本発明の増速機によれば、増速機の構造を簡単にすることができるので、増速機をコンパクトにし、かつ、製造コストを下げることができるという利点が得られる。また、出力軸に連結された偏心輪を回転させるにあたり、偏心輪の回転中心からローターによる回転力の作用点までの距離を腕の長さとするモーメントを利用することができるので、回転トルクの伝達効率が良い増速が可能になり、入力される回転力が比較的小さな場合から大きな場合まで、安定した増速が可能になる。さらに、本発明の増速機を動力伝達部に有する本発明の発電装置によれば、流体の持つエネルギーを無駄なく利用して、効率の良い発電が、よりコンパクトな構成で可能になるという利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の増速機の一例を示す断面側面図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】図2のX−X’断面図である。
【図4】図2のY−Y’断面図である。
【図5】オルダム継手機構の分解図である。
【図6】ローターの回転により偏心輪を介して出力軸が回転する動作の説明図である。
【図7】ローターの回転により偏心輪を介して出力軸が回転する動作の説明図である。
【図8】ローターの回転により偏心輪を介して出力軸が回転する動作の説明図である。
【図9】ローターの回転により偏心輪を介して出力軸が回転する動作の説明図である。
【図10】本発明の増速機の他の一例を示す断面側面図である。
【図11】図10の部分拡大図である。
【図12】図11のX−X’断面図である。
【図13】固定外歯車の右端部においてローターの内歯車と固定外歯車とが噛み合う状態を示す断面図である。
【図14】図13に回転輪と内歯車とを併せて示した断面図である。
【図15】回転輪の回転によりローター及び偏心輪を介して出力軸が回転する動作の説明図である。
【図16】回転輪の回転によりローター及び偏心輪を介して出力軸が回転する動作の説明図である。
【図17】回転輪の回転によりローター及び偏心輪を介して出力軸が回転する動作の説明図である。
【図18】本発明の増速機のさらに他の一例を示す断面側面図である。
【図19】本発明の増速機を2段に連結した2段式増速機の一例を示す断面側面図である。
【図20】本発明の増速機を3段に連結した3段式増速機の一例を示す平面図である。
【図21】本発明の増速機を動力伝達部に有する本発明の発電装置の一例を示す概念図である。
【図22】本発明の増速機を動力伝達部に有する本発明の発電装置の他の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明が図示のものに限られないことは勿論である。
【0021】
図1は、本発明の増速機の一例を示す断面側面図である。図1において、1は本発明の増速機であり、2は入力軸、3は出力軸、4はベースフレーム、5はベアリング、6は固定外歯車、7はローター、8は偏心輪、9は内歯車、Gは設置面であり、増速機1は、ベースフレーム4を介して適宜の設置面Gに設置される。
【0022】
図に示すとおり、入力軸2と出力軸3は、それぞれベアリング5、5、5・・・によってベースフレーム4に回転自在に支持されている。一方、固定外歯車6はベースフレーム4に固定されている。固定外歯車6の中央には固定外歯車6を軸方向に貫通する貫通孔6hが設けられており、この貫通孔6hの内部を出力軸3が貫通している。なお、固定外歯車6の中心位置は出力軸3の軸心と同心である。
【0023】
ローター7の内部には、ベアリング5を介して、偏心輪8が摺動回転自在に支持されており、ローター7内部のベアリング5は、偏心輪8を摺動回転自在に支持する軸受部を構成している。偏心輪8は、出力軸3と結合され、出力軸3の軸心の回りに出力軸3と一体に回転するが、その中心は、出力軸3の軸心に対して偏心している。ローター7の内部には内歯車9が設けられており、内歯車9の一部は固定外歯車6の一部と噛み合っている。ローター7は、内歯車9の一部を固定外歯車6と噛み合わせながら回転することによって、固定外歯車6の周囲を自転しながら公転する。
【0024】
10は中間節、11は駆動板、12は駆動板11と入力軸2とを結合する固定部材である。ローター7の入力軸2側の側面に設けられた凸部7aと、中間節8、及び駆動板9は、後述するとおり、回転伝達機構としてオルダム継手機構を構成しており、入力軸2の回転は、この回転伝達機構を介してローター7に伝達される。
【0025】
図2は、図1の部分拡大図である。図2において、6gは固定外歯車6の歯、9gは内歯車9の歯を、それぞれ示している。図に示すとおり、内歯車9の歯9gと、固定外歯車6の歯6gとは一部(図2においては上部)で噛み合っており、ローター7は、内歯車9の歯9gの一部を固定外歯車6の歯6gの一部と噛み合わせながら、固定外歯車6の周囲を回転し、固定外歯車6の周囲を自転しながら公転する。10bは、中間節10のローター7側の側面に設けられた凹部であり、この凹部10bにはローター7の凸部7aが摺動自在に嵌合しているが、これについては後述する。
【0026】
本発明の増速機1は上述のように構成されており、ローター7は、その内部に、出力軸3の軸方向に沿って、偏心輪8を摺動回転自在に支持する軸受部であるベアリング5と、固定外歯車6と噛み合う内歯車9とを備えている。また、ローター7は、中間節10、駆動板11、及び固定部材12を介して入力軸2と結合されているので、入力軸2が回転するとローター7も回転し、ローター7が、その内歯車9の一部を固定外歯車6と噛み合わせながら固定外歯車6の周囲を自転しながら公転することによって、ローター7内にベアリング5によって摺動回転自在に支持されている偏心輪8が回転し、その結果、偏心輪8と結合されている出力軸3が回転することになる。このとき、上述したとおり、固定外歯車6の歯数と、内歯車9の歯数の比であるギヤ比に応じて、入力軸2の回転は増速して出力軸3に伝達されることになる。因みに、固定外歯車6と内歯車9のギヤ比が2:3であると、入力軸2の回転は3倍に、1:2であると、入力軸2の回転は4倍に増速されて、出力軸3に伝えられることになる。
【0027】
図3は図2におけるX−X’断面図である。図3に示すとおり、ローター7内部には内歯車9が設けられており、図に示す状態では、内歯車9はその上部において固定外歯車6と噛み合っている。6gは固定内歯車6の歯、9gは内歯車9の歯であるが、省略して歯先の輪郭線のみで示してある。6hは、前述したとおり、固定外歯車6を貫通する貫通孔である。3cは出力軸3の軸心であり、固定外歯車6の中心と一致している。
【0028】
図4は図2におけるY−Y’断面図であり、便宜上、出力軸3とその軸心3cも併せて示してある。図4に示すとおり、偏心輪8はローター7の内部に、ベアリング5を介して、摺動回転自在に支持されている。8cは偏心輪8の中心であり、偏心輪8の中心8cは、出力軸3の軸心3cから距離eだけ偏心している。これにより、ローター7が軸心3cの回りに回転すると、その回転力は、軸心3cから偏心輪8の中心8cを通って、偏心輪8の外周までの距離を腕の長さとするモーメントとなって出力軸3に効率良く伝達されることになる。これにより、入力軸2の回転は増速されて効率良く出力軸3に伝達されることになる。
【0029】
図5は、ローター7の凸部7aと、中間節10と、駆動板11とによって構成されるオルダム継手機構の分解図である。図に示すとおり、ローター7の端部には、凸部7a、7aが互いに180度の間隔をあけて設けられており、中間節10のローター7側の側面には、凸部7a、7aと対向する位置に、凹部10b、10bが互いに180度の間隔をあけて設けられている。中間節10の駆動板11側の側面には、凹部10a、10aが同じく180度の間隔をあけて設けられているが、その位置は、溝10b、10bと90度ずれており、凹部10a、10aと凹部10b、10bとは直交する位置関係にある。また、駆動板11には、凹部10a、10aと対向する位置に、凸部11a、11aが互いに180度の間隔をあけて設けられている。
【0030】
オルダム継手機構は、ローター7の凸部7a、7aを中間節10の凹部10b、10bと嵌合させ、駆動板11の凸部11a、11aを中間節10の凹部10a、10aと嵌合させることによって組み立てられる。凸部7a,7a、及び、凸部11a、11aは、それぞれ、凹部10b、10b、及び凹部10a、10a内を摺動移動自在であるので、入力軸2を回転させてローター7を回転させたとき、ローター7駆動板11に対して、凹部10a、10aを結ぶ方向、及び、それとは90度ずれた凹部10b、10bを結ぶ方向のいずれの方向に移動しても、その移動は凸部7a、7a、及び凸部11a、11aが、それぞれ凹部10b、10b内、及び凹部10a、10a内を摺動移動することによって吸収され、駆動板11の中心、すなわち、入力軸2は移動しない。このようにオルダム継手機構を用いることにより、軸心が移動しない入力軸2の回転を、回転に伴いその中心が移動するローター7に効率良く伝達することができるという利点が得られる。
【0031】
なお、図示の例では、凸部7a、7a、凹部10a、10a、及び10b、10b、凸部11a、11aは、180度の間隔をあけて直線状に配置された2個一対の凸部又は凹部として形成されているが、これらは、それぞれ一対の凸部又は凹部を延長して、連続した1個の凸部又は凹部としても良いことは勿論である。また、これら凸部と凹部とは互いに嵌合して、摺動自在であれば良いので、凸部の凹部の関係が図示のものと逆であっても良いことはいうまでもない。すなわち、中間節10には、駆動板11と対向する面に第1の凸部又は凹部、ローター7と対向する面に第2の凸部又は凹部があり、第1の凸部又は凹部と第2の凸部又は凹部が互いに直交する位置関係にあり、駆動板11には、中間節の第1の凸部又は凹部と摺動移動自在に嵌合する第3の凸部又は凹部があり、ローター7には、中間節の第2の凸部又は凹部と摺動移動自在に嵌合する第4の凸部又は凹部があれば良い。
【0032】
なお、互いに嵌合する凸部と凹部の摺動移動をよりスムースに行わせるために、凸部と凹部が嵌合する接触面には、適宜の軸受機構を設けるのが望ましい。用いうる軸受機構としては、例えば、リニアフラットローラベアリングや、ドライベアリング、油含浸軸受などが挙げられ、これらの軸受機構を上述した第1〜第4の凸部又は凹部のうちの少なくともいずれか1つに設けることによって、ローター7,中間節10、及び駆動板11相互の摺動移動をよりスムースに行わせ、入力軸2の回転力をより効率良くローター7に伝えることができる。
【0033】
なお、入力軸2の回転をローター7に伝える回転伝達機構としては、上述したオルダム継手機構に限られず、入力軸2に対してローター7の回転軸が偏心しても入力軸2の回転をローター7に伝達することができる機構であればどのような機構を採用しても良い。例えば、ゴム軸継手機構やダイヤフラム軸継手などのたわみ軸継手機構を用いることも可能であるが、伝達する回転力のロスが少ないという観点からはオルダム継手機構を用いるのが好ましい。
【0034】
次に、図6〜図9を用いて、本例の増速機1の動作を説明する。図6〜図9において、各図の(a)は、入力軸2の回転によってローター7が、その内歯車9の歯9gを固定外歯車6の歯6gと噛み合わせながら、固定外歯車6の周囲を回転する運動を示しており、各図の(b)は、そのときの偏心輪8の運動をローター7の運動と共に示しており、各図の(c)は、そのときの出力軸3の運動を示している。なお、便宜上、内歯車9の歯9g及び固定外歯車6の歯6gは、その歯先の輪郭線でのみ示し、各図の(b)においては、出力軸3を併せて示してある。
【0035】
図6〜図9の各図の(a)に示すように、ローター7が内歯車9の一部を固定外歯車6と噛み合わせながら固定外歯車6の周囲を回転すると、それに伴い、各図の(b)に示すとおり、ローター7の内部に摺動回転自在に支持されている偏心輪8は、出力軸3の軸心3cを中心に図中矢印方向に回転し、その結果、各図の(c)に示すとおり、偏心輪8と結合されている出力軸3も図中矢印方向に回転する。このとき各図の(b)に示すように、偏心輪8の中心8cは、偏心輪8の回転の中心、すなわち、出力軸3の軸心3cから前述した距離eだけ偏心しているので、ローター7によって偏心輪8に加えられる回転力は、軸心3cから偏心輪8の中心8cをとおって偏心輪8の外周までの距離を腕の長さとするモーメントとなって出力軸3に効率良く伝達されることになる。これにより、本発明の増速機1においては、低速域から高速域まで、効率の良い増速が可能である。
【0036】
図10は、本発明の増速機1の他の一例を示す断面側面図であり、これまでと同じ部材には同じ符号を付してある。本例の増速機1は、入力軸2の回転をローター7に伝達する回転伝達機構として、オルダム継手機構ではなく、回転輪13、内歯車14、及び外歯車15を用いている点において、図1に示した増速機1とは異なっている。すなわち、入力軸2には、入力軸2の回転に伴って出力軸3の軸心の回りに回転する回転輪13が結合されており、回転輪13の出力軸3側に突出した円筒状部分の内側には内歯車14が、また、ローター7の外周面には、内歯車14と一部分で噛み合う外歯車15がそれぞれ設けられているので、入力軸2が回転すると、その回転は回転輪13、内歯車14、及び外歯車15を介してローター7に伝達される。本例の増速機1においては、入力軸2の軸心は出力軸3の軸心と一致しているので、回転輪13は固定部材12を介して入力軸2に対して同心に結合されることによって、入力軸2の回転に伴い出力軸3の軸心の回りに回転するようになっているが、入力軸2の軸心と出力軸3の軸心とが一致していない場合には、回転輪13を出力軸3の軸心の回りに回転自在に支持するとともに、適宜の軸継手を介して、入力軸2の回転を回転輪13に伝達すれば良い。
【0037】
図11は、図10の部分拡大図である。図11において、14gは内歯車14の歯、15gは外歯車15の歯を示している。図に示すとおり、回転輪13の内歯車14の歯14gと、ローター7の外歯車15の歯15gとは一部(図11においては下部)で噛み合っており、入力軸2の回転に伴って回転輪13が回転すると、その回転は内歯車14と外歯車15を介して、ローター7に伝達され、ローター7は、固定外歯車6の周囲を自転しながら公転する。このとき、ローター7の外歯車15も固定外歯車6の周囲を自転しながら公転するが、外歯車15の出力軸3の軸心3cから最も遠い位置にある点の軌跡は出力軸3の軸心3cを中心とする円を描くので、この円の半径に対応する半径の内歯車14を、出力軸3の軸心3cと同心に回転輪13に設けることによって、ローター7が回転し、外歯車15が固定外歯車6の周囲を自転しながら公転しても、回転輪13の内歯車14とローター7の外歯車15とは、その噛み合い位置を変化させながらも常に一部で噛み合い、入力軸2の回転に伴う回転輪13の回転を内歯車14と外歯車15を介して連続してローター7に伝達することが可能となる。
【0038】
この点を図面を用いて詳述すれば以下のとおりである。すなわち、図12は図11のX−X’断面図であるが、図12において、3cは出力軸3の軸心、7cはローター7の中心である。ローター7の中心7cは、前述した偏心輪8の中心8cと一致しており、出力軸3の軸心3cから距離eだけ偏心している。図12に示す状態では、ローター7の内歯車9は、固定外歯車6の図中頂部で固定外歯車6と噛み合っており、ローター7に設けられた外歯車15の図中最下端の点Pが、外歯車15の出力軸3の軸心3cから最も遠い位置にある点となる。ローター7の中心7cからローター7の外周面に設けられている外歯車15の歯15gの先端までの距離、つまりは外歯車15の半径をrとすると、軸心3cから点Pまでの距離はe+rとなる。ローター7がその内歯車9を固定外歯車6と噛み合わせながら固定外歯車6の周囲を自転しながら公転すると、ローター7と固定外歯車6との位置関係は変化し、出力軸3の軸心3cから最も遠い位置にある点Pも移動するが、出力軸3の軸心3cから点Pまでの距離は常にe+rであり、変化しない。
【0039】
すなわち、例えば図13に示すように、図12に示す状態からローター7が固定外歯車6の周囲を自転しながら公転して、固定外歯車6の図中右端部においてローター7の内歯車9と固定外歯車6とが噛み合う状態になると、ローター7の外歯車15の図中最左端の点Pが出力軸3の軸心3cから最も遠い位置にある点となるが、この点Pの軸心3cからの距離もe+rである。このように、出力軸3の軸心3cから最も遠い位置にある点Pまでの距離は、ローター7が固定外歯車6の周囲を回転して、ローター7と固定外歯車6との位置関係が変化しても変わらずe+rである。つまり、出力軸3の軸心3cを中心として、半径がe+rとなる円Cを想定すると、ローター7が固定外歯車6の周囲を自転しながら公転しても、ローター7の外歯車15の軸心3cから最も遠い位置にある点Pは、常にこの円Cに内接していることになる。したがって、図14に示すように、距離e+rに対応した半径を有する内歯車14を、その歯14gがローター7の外歯車15の歯15gと一部分で噛み合うように、出力軸3の軸心3cと同心に回転輪13に設けることによって、ローター7が回転して外歯車15が固定外歯車6の周囲を自転しながら公転しても、内歯車14と外歯車15とは常にその一部分で噛み合い、入力軸2の回転に伴う回転輪13の回転を連続してローター7に伝達することが可能となる。
【0040】
次に、図15〜図17を用いて、本例の増速機1の動作を説明する。なお、図15〜図17において、各図の(a)は、図11におけるX−X’断面図に相当し、入力軸2の回転に伴う回転輪13の回転よってローター7が、その内歯車9の歯9gを固定外歯車6の歯6gと噛み合わせながら、固定外歯車6の周囲を回転する運動を示している。また、各図の(b)は、図11におけるY−Y’断面図に相当し、回転輪13の回転に伴う偏心輪8の運動をローター7の運動と共に示しており、各図の(c)は、そのときの出力軸3の運動を示している。
【0041】
各図の(a)に示すように、入力軸2の回転に伴って回転輪13が図中矢印方向に回転すると、その回転は、回転輪13の内歯車14及びローター7の外歯車15を介してローター7に伝達され、ローター7は内歯車9の一部を固定外歯車6と噛み合わせながら固定外歯車6の周囲を回転する。このローター7の回転に伴い、各図の(b)に示すとおり、ローター7の内部に摺動回転自在に支持されている偏心輪8は、出力軸3の軸心3cを中心に図中矢印方向に回転し、その結果、各図の(c)に示すとおり、偏心輪8と結合されている出力軸3も図中矢印方向に回転する。このとき各図の(b)に 示すように、偏心輪8の中心8cは出力軸3の軸心3cから前述した距離eだけ偏心しているので、ローター7によって偏心輪8に加えられる回転力は、軸心3cから偏心輪8の中心8cをとおって偏心輪8の外周までの距離を腕の長さとするモーメントとなって出力軸3に効率良く伝達されることになる。また、入力軸2の回転は、回転輪13の内歯車14及びローター7の外歯車15という歯車機構を介してローター7に伝達されるので、オルダム継手機構を用いる場合のように摺動摩擦によるエネルギーロスが少なく、低速域から高速域まで、より効率の良い増速が可能である。
【0042】
本例の増速機1は、上記のように構成されているので、入力軸2が回転すると、その回転は回転輪13を介してローター7に伝達され、ローター7が、その内歯車9の一部を固定外歯車6と噛み合わせながら固定外歯車6の周囲を自転しながら公転することによって、ローター7内にベアリング5によって摺動回転自在に支持されている偏心輪8が回転し、その結果、偏心輪8と結合されている出力軸3が回転することになる。このとき、固定外歯車6の歯数と、内歯車9の歯数の比であるギヤ比に応じて、入力軸2の回転は増速して出力軸3に伝達されることになるのは先に示した例におけると同じである。また、本例の増速機1においては、回転輪13の内歯車14の歯数と、ローター7の外歯車15の歯数の比に応じて、入力軸2の回転が、増速されてローター7に伝達されることになるので、より一層の増速率を期待することができる。
【0043】
図18は、本発明の増速機1のさらに他の一例を示す断面側面図である。本例の増速機1は、固定外歯車6、ローター7、偏心輪8、回転輪13等の増速機構を、出力軸3の軸方向に沿った両側に有している。出力軸3の両側に位置する各部材はそれぞれ左右で同じものであるが、便宜上、出力軸3の軸方向に沿った右側に位置する各部材の符号には「’」をつけて左側に位置する対応する各部材と区別して示してある。ただし、出力軸3の軸方向に沿った左側に位置するローター7及び偏心輪8と、出力軸3の軸方向に沿った右側に位置するローター7’及び偏心輪8’とは、その回転位相が180度異なっている。また、本例においては、出力軸3は中空シリンダであり、左右のローター7及び7’並びに偏心輪8及び8’の前記中空シリンダの中空部に対応する部分にも孔7h、7’h、8h、8’hがそれぞれ設けられている。出力軸である前記中空シリンダ及び孔7h、7’h、8h、8’hの内側には連結シャフト16が挿通され、左側の回転輪13と右側の回転輪13’とは連結シャフト16によって相互に連結されている。17は出力軸3の回転を外部に取り出す歯車である。
【0044】
このような増速機1において、入力軸2及び/又は入力軸2’を回転させると、その回転に伴い回転輪13及び13’は出力軸3の軸心3cの回りに回転し、その回転は、内歯車14及び14’と外歯車15及び15’を介してそれぞれローター7及び7’に伝達される。これにより、ローター7及び7’は、その内歯車9及び9’を固定外歯車6及び6’に噛み合わせながら固定外歯車6及び6’の回りを自転しながら公転し、それぞれ偏心輪8及び8’を出力軸3の軸心3cの回りに偏心回転させ、出力軸3を回転させる。このとき、出力軸3の軸方向に沿った左側に位置するローター7及び偏心輪8と、右側に位置するローター7’及び偏心輪8’とは、その回転位相が180度異なっているので、偏心回転に伴って発生する偏心力は相殺され、振動や騒音の発生を抑制することができるという利点が得られる。
【0045】
入力軸2と入力軸2’とは、その双方を外力によって回転させても良いし、そのいずれか一方だけを外力によって回転させるようにしても良い。回転輪13と回転輪13’とは、前述したとおり、連結シャフト16によって連結されているので、入力軸2又は入力軸2’のいずれか一方を回転させると、その回転に伴い、回転輪13及び回転輪13’の双方が回転することになる。
【0046】
また、図18には、回転伝達機構として回転輪13を用いる場合を示したが、回転伝達機構がオルダム継手機構であっても同様であり、回転輪13、13’に代えて、駆動板11、11’及び中間節10、10’を出力軸3の軸方向の両側に配置して、駆動板11及び11’を、出力軸3である中空シリンダの中空部、中間節10及び10’、ローター7及び7’、偏心輪8及び8’のそれぞれに設けられた孔を挿通する連結シャフトで連結すれば良い。なお、回転伝達機構がオルダム継手機構であっても、左側のローター7及び偏心輪8と、右側のローター7’及び偏心輪8’の回転位相が180度異なるように、ローター7、7’と偏心輪8、8’とが配置されるのは勿論である。
【0047】
図19は、図1に示す本発明の増速機1を2段に連結した2段式増速機の一例を示す断面側面図である。すなわち、図に示すとおり、前段(図中左側)の増速機1の出力軸3が、適宜の継手18を介して、後段(図中右側)の増速機1の入力軸2と結合されている。前段の増速機1と後段の増速機1における固定外歯車6と内歯車9とのギヤ比がいずれも1:2である場合には、各段においてそれぞれ4倍の回転速度の増速が得られるので、2段に連結した本例の増速機全体では、4×4=16倍の増速が得られることになる。このように、本発明の増速機1は、多段に連結することによって、大きな増速率を実現することができる。また、本発明の増速機1は、構造が簡単であるので、嵩張らず、コンパクトに構成できるので、多段に連結することに適している。なお、連結段数は2段に限られず、3段以上、何段でも構わない。また、前段と後段とで、内歯車9と固定外歯車6のギヤ比を異ならせたり、構造を異ならせたりして、それぞれ異種の本発明の増速機を連結しても良い。
【0048】
図20は、図18に示す本発明の増速機1を3段に連結した3段式増速機の一例を示す平面図である。すなわち、図に示すとおり、1段目の増速機1の出力軸3に取り付けられた歯車17が、2段目の増速機1の入力軸2に取り付けられた歯車19と結合され、同様に、2段目の増速機1の出力軸3に取り付けられた歯車17が、3段目の増速機1の入力軸2に取り付けられた歯車19と結合されている。各段の増速機1〜1における固定外歯車6と内歯車9とのギヤ比がいずれも1:2である場合には、各段においてそれぞれ4倍の回転速度の増速が得られるので、3段に連結した本例の増速機全体では、4×4×4=64倍の増速が得られることになる。また、歯車17及び17の歯数を、それぞれ、歯車19及び19の歯数よりも多くすることによって、前段の増速機の出力軸の回転をさらに増速して後段の増速機に伝えることが可能であり、多段に連結された本発明の増速機全体の増速率をさらに高めることが可能である。
【0049】
なお、前段の増速機1における出力軸3の回転を後段の増速機1の入力軸2に伝える機構は図20に示したものに限られず、例えば、前段の増速機1における出力軸3に取り付けられた歯車17の回転をチェーン等を介して後段の増速機1の入力軸2に取り付けた歯車19に伝達するようにしても良い。
【0050】
図21は、本発明の増速機1を動力伝達部に有する本発明の発電装置の一例を示す概念図である。図21において、20は水、すなわち水流が持つエネルギーによって回転する水車であり、21は動力伝達部、22は発電機、23は結合部、24はクラッチである。水車20の回転は、結合部23を介して、動力伝達部21に伝えられ、動力伝達部21に備えられている2段に連結された本発明の増速機1、1によって増速され、発電機22の回転子に伝えられ、発電が行われる。
【0051】
図22は、本発明の増速機1を動力伝達部に有する本発明の発電装置の他の一例を示す概念図である。図22において、25は大気、すなわち風が持つエネルギーによって回転する風車であり、21は動力伝達部、22は発電機、23は結合部、24はクラッチである。風車25の回転は、結合部23を介して、動力伝達部21に伝えられ、動力伝達部21に備えられている3段に連結された本発明の増速機1、1、1によって増速され、発電機22の回転子に伝えられ、発電が行われる。
【0052】
本発明の発電装置が利用できるエネルギーは水や大気が持つエネルギーに限られない。火力や原子力によって生み出される熱を変換して得られる水蒸気が持つエネルギーであっても良いし、その他の流体の持つエネルギーであっても良い。また、本発明の増速機は、入力軸2を回転させる力が小さくても、効率良く増速することができるので、用水路や、落差の小さな水路などのエネルギーのそれほど大きくない流水を利用した水力発電装置や、強風の期待できない地域に設置される風力発電装置などに用いて好適であり、加えて、通常の水力発電施設や火力、原子力発電施設における使用済みの水流や水蒸気を水車やタービンを回転させるエネルギー源として再利用することを可能にし、種々の流体が持つエネルギーを無駄なく利用することを可能にする極めて優れた有用な増速機である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の増速機によれば、簡単でコンパクトな構造で、効率良く入力軸の回転を増速して出力軸に伝えることができるので、増速を必要とするあらゆる分野において極めて有用である。また、本発明の増速機を動力伝達部に備えた発電装置によれば、流体が持つ大きなエネルギーはもとより、比較的小さなエネルギーでも無駄なく発電に利用することができるので、発電装置や発電施設におけるエネルギー効率を高め、極めて有用、且つ優れた産業上の利用可能性を有するものである。
【符号の説明】
【0054】
1 増速機
2 入力軸
3 出力軸
3c 出力軸の軸心
4 ベースフレーム
5 ベアリング
6 固定外歯車
7 ローター
8 偏心輪
9 内歯車
10 中間節
11 駆動板
12 固定部材
13 回転輪
14 内歯車
15 外歯車
16 連結シャフト
17 歯車
18 継手
19 歯車
20 水車
21 動力伝達部
22 発電機
23 結合部
24 クラッチ
25 風車
G 設置面
e 偏心距離
r ローターに設けられている外歯車の半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸の回転を増速して出力軸に伝達する増速機を備えた発電装置であって、前記増速機が、外力によって回転する入力軸と、回転自在に支持された出力軸と、前記出力軸の軸心と同心で固定された固定外歯車と、前記出力軸の軸心に対して偏心しており、前記出力軸と結合され、前記出力軸の軸心の回りに前記出力軸と一体に回転する偏心輪と、前記偏心輪を内部に摺動回転自在に支持する軸受部と前記固定外歯車と噛み合う内歯車とを有するローターと、前記ローターに設けられた外歯車と、当該外歯車と噛み合う内歯車を有する回転輪であって、前記入力軸と連結され、前記入力軸の回転に伴って前記出力軸の軸心の回りに回転する回転輪とを有している発電装置。
【請求項2】
前記固定外歯車と、前記偏心輪と、前記ローターと、前記ローターに設けられた前記外歯車と、前記回転輪とを、前記出力軸の軸方向に沿った両側に有し、両側の前記ローター及び偏心輪の偏心回転の位相が180度異なっている請求項1記載の発電装置。
【請求項3】
前記増速機を2段又は3段以上に連結して備えており、連結された二つの前記増速機は前段の増速機の出力が後段の増速機の入力となるように前段の前記増速機の出力軸と後段の前記増速機の入力軸とが連結されている請求項1に記載の発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−147665(P2012−147665A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−35668(P2012−35668)
【出願日】平成24年2月21日(2012.2.21)
【分割の表示】特願2011−552260(P2011−552260)の分割
【原出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(504232594)
【Fターム(参考)】